・ルール
参加希望者は1〜5レスを目処にSSを自由に作成して下さい。お題が欲しい場合は各自で希望して下さい。お題の提案や作品の感想は随時受け付けとします。覆面先生(SS作者)からのアドバイスも絶賛受け付け中とします。
289: ◆pYm.eDkX8Q:2014/5/2(金) 18:16:46 ID:SNYFmpReb2
桃色並木は時間を経て濃緑の葉から陰を射し、皆々に太陽の光をと切磋琢磨する下で人々は初夏の涼をとった。揺れる風鈴の音が風と共に身体中に抜ける。
「はじ坊か。」
あぜ道へ出ると、聞き慣れた声が僕の足を止めた。
「おばば、・・・びっくりした。元気そうだね。」
「ひっひっひ、やっぱり大きくなってもはじ坊だがなぁ。ひい孫の顔もみたけそろそろ逝っても良いと思うんだけどなぁ。」
記憶と違わぬその笑みに感じた懐かしさが、帰郷した事実を僕のなかで一層強くさせる。
「ちぃちゃんもべっぴんさんになったで。」
笑みを崩さぬまま、小声で告げられる情報。
それは彼女がまだ此処にいると言うことだ。
『どこにもいかんって、いったが!!!』
幾度も、脳内で繰り返される記憶。
悲しみに溢れた喉を振り絞って叩き付けられた言葉。
『はっちゃん・・・やだよ・・・。』
泣き崩れる彼女が霞む所で終わっている記憶。
まだ僕に、続きを紡ぐ勇気はない。大人になっても、まだ。
「おばば、そう言えば何あれ?」
「あぁ、恋山形駅ちってなぁ・・・ごっついだろ。」
最寄り駅はドのつくピンク色に染められていた。
恋の叶う駅、恋山形駅。昔も今も田舎の無人駅。
もう少し僕が若ければ、彼女との続きをそんな駅にお願いしていたかもしれない。
「おばばー!おにぎり食おうお腹減っ・・・。」
これもまた聞き慣れた声。
ピンク色の駅以外、僕の故郷は何も変わってないらしい。
「は・・・はっ・・・えっ・・・はっちゃん!!!?」
「ただいま、千鶴。」
この感情が恋だと気付いたのは、僕がこの村を出てからだったんだ。
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