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【初心者】ヘタッピSS道場【歓迎】
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1: 名無しさん@読者の声:2013/7/1(月) 22:41:24 ID:i9LVyGoa8Y
・ルール
参加希望者は1〜5レスを目処にSSを自由に作成して下さい。お題が欲しい場合は各自で希望して下さい。お題の提案や作品の感想は随時受け付けとします。覆面先生(SS作者)からのアドバイスも絶賛受け付け中とします。



144: 1/3:2013/9/7(土) 23:14:46 ID:HWt.i/IoXo
『おとうさん ありがとう』
珈琲の香りが漂う我が家のリビング。
僕は飲み干したカップにそのまま手をかけ、息子からの手紙を見つめていた。
つい最近5才を迎えた息子が、一生懸命に書いてく れた手紙。 大きさや色、バランス、向きすらも違う文字たち。
"ちゃからもの"である動物シールをたくさん貼ってくれている。
「それね、幼稚園から帰ってきてから着替えもせず に1人で書いてたのよ、あの子。シールなんてお友 達の手紙にも使わないのに、ベタベタ貼っちゃって !」
風呂上がりの妻が僕の頭に顎を乗せて、クックッと 笑う。
振動で頭が痛い。
さりげなく妻の顎をそっと掴み、優しく肩に誘導する。
「それでね、私には隠すのよ?見せてってお願いし ても見せてくれなかったのよー?」
肩のツボを顎でゴリゴリと刺激しながら、息子の様子を報告してくれる妻。
痛い。
「絶対"お"は反対になるねぇ。」
妻の顔は穏やかだ。
美しい母の顔。
多分僕は無表情だろう。
頭の中では、花畑でスキップしながら息子をジャイ アントスイングしているのだか。
いや、ジャイアントスイングはダメだ、高い高いにしよう。
待て待て肩車の方が...と眉間にシワが寄ったところで、妻はふふっと微笑み、頬にキスをしてくれた。

「おい、おっさん。」
唐突に目の前が白くなった。
薄く目を開けると、懐中電灯の光ごしに見える、男たちの姿。
顔は見えない。
手には金属バットが握られている。
いつの間にか僕は地面に寝かされ、元寝床は燃やされていた。
なるほど、夢で痛みを感じたのはこの為か。
幸せな痛み。
目を瞑り、肩を撫でた。
心はまだ花畑でスキップしている。
しかしそこに息子の姿は無い。
僕は独りだ。
頭の中で、鈍い音が響いた。
145: 名無しさん@読者の声:2013/9/7(土) 23:20:07 ID:2244WXDvuI
「...おーい」「おーい、大丈夫かよー」
右頬をペチペチと叩かれ、僕は目を開けた。
視界を支配する青い空。
暖かな陽射しが差し込み、爽やかな風を感じる。
僕はそれらを堪能し、また目を瞑りそうになる。
すると、また右頬を叩かれた。
今度は少し強めに。
「痛...くない。」
「せっかく起こしてやってんのに寝んなよ!」
見ると僕の腹の上に、中学生位の学ランを着た少年 がブスッとした顔をして跨がっていた。
見覚えのない子だ。
退いてと手を払うと、少年は更にむくれた顔になり、ドスンっと腹の上に座り直した。
「うぐっ...退いてって。ほら。」
半ば強引に少年を退かし、辺りを見回すと、そこは息子が通った小学校の花壇の中だった。
サルビア、マリーゴールド、パンジーと彩り良く咲 いている。
6年生の夏休みに当番だからと一緒に水やりに来た が、こんなに花が咲いているのは初めて見た。
「すごく綺麗な花壇だったんだな、ここ。」
「あったり前だろー!俺が世話してんだもん。」
少年はむくれた顔はどこへやら、誇らしげに両手を 広げ、笑顔で僕を見上げてきた。
「1人で?学校の花壇だろう。」
そこまで言って、僕はようやく気づいた。
人気が全くない。 校舎やグラウンドはおろか、学校外の車道にも車一 台通っていない。
そうか、夢なんだな。
少年は花壇への水やりを始めていた。
この子は誰だろう。
何だか他人ではないような、懐かしいような、不思 議な子だった。
水やりが終わると、今度は草むしりを始めた。
少年はとても楽しそうだ。
僕も隣に並んで、草をむしる。
「君はずっと花壇の世話をしてるのか。」
「そうだよ。」
「一日中?」
「一日と言われれば、そうかな。まぁずっと。」
草を追って、離れていく少年と僕。
しばらくして、花壇を一周した。
少年の額にはうっすら汗が浮かんでいた。
そういう僕は腰から下が痺れて立てそうにない。
頭の中では呻きながら、無表情で目の前にあるマリ ーゴールドを見つめていた。
少年がむしった草を集めに行く。
痺れが治まってから立ち上がると、不意に背中が引 っ張られる感覚があった。
いつの間にか少年が正面に立ち、花壇の中から手を 振っている。
「おじさん、ありがとう。」
少年の顔は穏やかだ。
徐々に視界が暗くなっていく中で、僕は確かに聞いた。
「俺はね、  なんだよ。」
146: 3/3前レス入れ忘れです:2013/9/7(土) 23:23:00 ID:pJBvYJFsYQ

「...朝か。」
朝日が目に染みる。
痛みで身体を捻るのがやっとだ。
湿った地面にはタバコの吸い殻、元寝床の残骸、ス ニーカーの足跡が少々。
一撃で気を失ったおかげで、早々に退散したようだ った。
しかし、こんな姿を道行く人に見せるわけにはいか ない。
早く移動しようと、立ち上がった時だった。
上着の破れた縫い目から、ひらりと一枚の紙。
5才だった息子からの手紙だ。
記憶よりも黄ばみ、色はかなり薄くなっているが、かろうじて読めた。
そして手紙の裏には、久しぶりに見る妻の書いた文字があった。
『御守り代わりに。私も息子も見守っています。あなた、ありがとう。』
全身から力が抜けた。
妻も息子も、ずっと側にいてくれたのか。
僕だけ置いていかれたんじゃなかったのか。
嬉しい。
嬉しくて、僕は笑っていた。
頭の中は花畑だ。
家族3人手を繋いで、スキップしている。
悲しみなんて、どこにもなかった
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