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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編その2】
[8] -25 -50 

1:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:00:58 ID:/WYEXwH6vk
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-10

1スレ(少年「ボクが世界を変えてみせる」)

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1385288769/1-10

2スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」)

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1416136192/1-10

3スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】)

あらすじはそれぞれの1参照(考えるのがめんどくかったんです。ごめんなさい)

>>2から本編になります!


925:🎏 容量と残りレス数が心配 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:05:24 ID:u8oh19UNDM
魔導師「うわ…痛そう。脛ザックリ刺された」ドンビキ

フィクサー「グ、オェォ…!ギザマァ…!!」ダラダラ

ヒメ「(ファルージャ…!?)」ハッ

ファルージャ「息のある者が残っていたか。なんたるしぶとさよ」

ヒメ「(気絶してた間に癒されたのか…。身体が軽い…。けど、なぜみんなが倒れてる?)」チラッ

ファルージャ「ほとほと呆れるわ…。そなたらは何度、妾の前に立ちはだかろうというのか」フー

ヒメ「(状況が読めない…。だが確実に悪い予感がする…!)」ギロッ

ファルージャ「フィクサー!」

フィクサー「」ビクッ

ファルージャ「誰が膝を付けと申した?」

フィクサー「ウッ……ゥウグ」ググッ

ファルージャ「もたつくな。情けない男は好かぬぞ」

ヒメ「(フィクサー…そうだ、あいつにやられて、そこから記憶が……)」
926:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:05:47 ID:u8oh19UNDM
ファルージャ「…そなたで最後となろうか」ジッ

ヒメ「……!?」ジャキッ

ファルージャ「ふむ。青いが、瑞々しい」クスッ

ヒメ「仲間に何をした…!」カッ

ファルージャ「熟した実の肉々しい甘味も良い…。なれど未熟さもまた味よ」

ヒメ「質問に答えろ!」ズイッ

ファルージャ「クスス…その反抗的な眼差し。噛みごたえのありそうな?」フッ

ヒメ「……!」ゾワッ

ファルージャ「ちょうど三銃士も欠けておること。そなたに一席預けてもよいぞ」

ヒメ「なに…!?」

ファルージャ「妾に忠誠を誓ってもよいと…そう申しておるのじゃ」ニタァァァ

ヒメ「ふざけるな!誰が……」

ファルージャ「ならばそこに転がる仲間と運命を共にするか?」

ヒメ「なっ…!」

ファルージャ「なぁに。難しいものでもない。生きるか死ぬか、ただそれだけのこと」ニヤニヤ

ヒメ「お、おまえ…!」

ファルージャ「…女の誘いには黙って頷け。それが男の甲斐性というものぞ?」ニヤニヤ

ヒメ「〜〜〜!」ギリッ

ファルージャ「返事は…?」ニヤニヤ

ヒメ「死んでも断る!!」キッ

ファルージャ「……馬鹿な男」ボソッ

フィクサー「ウゴォアアアア!!!」バウンッ

ヒメ「くっ…!?」サッ

バゴォォン!

フィクサー「ヴゥグルルル…!!」ガラッ

ヒメ「(っ…石床がひび割れた!?なんて怪力だ…!)」チャッ
927:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:06:32 ID:u8oh19UNDM
フィクサー「ハァグアアァア!!!」バウンッ

ヒメ「!?」ピョンッ

ゴシャアッ!!

ヒメ「あっ…つ…!」ゴロゴロ

魔導師「」ヒュッ

ヒメ「うっ…!」バサッ

ビシャッ

魔導師「咄嗟にマントで防いだかぁ…。素早い判断だねぇ」ゴソッ トプンッ

ヒメ「…起きろカロル!!なにやってるんだ!?」ムクッ

カロル「」クタァァ

ヒメ「おまえが倒れたら誰が仲間を助けるんだ!?癒しの力はおまえにしかないんだぞ!?」

魔導師「ムダムダ。呼び掛けたって聞こえやしないよ」

ヒメ「諦めないのがおまえの取り柄だろ!?諦めたらおまえに何が残るんだ!?」

カロル「……」

ヒメ「家族や仲間を失う前に自分を失ってどうする!?」

ヒメ「おまえが守ろうとした絆は…おまえ自身にも繋がってるんだぞ!!」

カロル「」ピクッ

ヒメ「起きろ!起きて救え!仲間も自分自身も!!」

フィクサー「グラァアアッ!!」ブゥンッ

ヒメ「うっ…!」ササッ

ガァァンッ!!

ヒメ「(防いでも吹き飛ばされかねない剣圧だっ…!こいつ、いったい…!?)」サッ
928:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:11:32 ID:7TPSqG30CI
ファルージャ「フゥ〜…無意味よな。声を枯らしたとて死人には響くまいに」

魔導師「叫ぶしかないのさ。絶望に立たされたら…」

ファルージャ「それで何が変わると言うのじゃ?」

魔導師「何も……ただ虚しいだけ」

ファルージャ「つまりは無意味ではないか」

魔導師「…そう。無意味だよ。助けを求めるなんて……」

ファルージャ「フゥン。往生際の悪いこと……パカラゥロ」

魔導師「ん?」

ファルージャ「出し惜しみせずともよい。一思いに始末なさいな」ニヤッ

魔導師「……」

ファルージャ「ン…?いかがした?」

魔導師「いやぁ……うん、分かったよ。危険だから女王は避難してて」

ファルージャ「…なんぞ気掛かりかえ?」

魔導師「別に…あんなのに使うのはもったいないと思っただけさ」

ファルージャ「あやつは妾を侮辱した。そこらに転がる仲間も……捨て置く訳にはいかぬ…。
女として、魔性の異名を取る妾の誇りがあやつらの存在を許せぬのよ」

魔導師「そうかい…。それは良くないねぇ」

ファルージャ「…この世界は無情なるモノ。一つの輝きを得る為にはいくつもの代償を払わねばならぬ。
妾の魅力は虜となる有象無象がいて初めて成り立つのよ」

ファルージャ「なれば…その価値を認めぬ輩は排除せねばなるまい?」

魔導師「……」

ファルージャ「妾の為…頼んだぞ?愛しき従者よ?」ナデリ

魔導師「」コクッ

ファルージャ「では地上で待っておるぞ?」ヒタヒタ

魔導師「うん、すぐ行くよ…。待っていておくれ」

ヒタヒタ ヒタヒタ………

魔導師「………」
929:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:13:11 ID:u8oh19UNDM
ドゴォッ!

ヒメ「くそっ!どうなってる…!急にこんな怪力……」

フィクサー「グッ!ブフゥウ!!ムゴハッ!!」ゴホゴホ

ヒメ「(吐血…?)」

フィクサー「バァオ゛…!グフゥゥ…!」ゼェゼェ

ヒメ「(苦痛に呻いてる。突然の豹変と何か関係があるのか…?)」

魔導師「やれやれ」ザッ

ヒメ「!」ピクッ

魔導師「いつだってそうさ。自分らは玩具。気まぐれに翻弄されて、飽きられたら棄てられる」ボソボソ

ヒメ「(まずいな。一人でも手一杯なのに…カロルたちも目を覚まさないままだし)」アセアセ

魔導師「だけどそれでいいんだ。遊ぶのも棄てるのも満たされた上での特権。自由を楽しんだ証拠」ゴソッ

ヒメ「(また何か容器を取り出した…。液体じゃなさそうだが……)」

魔導師「この世は彼女の楽園さ。全ての喜びは彼女に恵まれる。だから美しいんだ。恵まれた彼女は」カパッ

ヒメ「(仮面を外した…?)」ピクッ

魔導師「ふぅ」スッ

ヒメ「……女!?」ギョギョッ

魔導師「自分も一緒になんて浅ましかった。楽園に住めるのはただ一人……」キュッ

シュコォォォ

ヒメ「!」ハッ

魔導師「う゛っ!!ぐえ゛っ!!」ギュウウ

ヒメ「(こ、れは…猛毒の霧、か!?)」ゴボッ

魔導師「さぁ、君も自分も糧となろう。彼女を楽園に導くんだ…っ」サァァ

ヒメ「おまえっ…っ!」クラッ
930:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:14:06 ID:u8oh19UNDM
フィクサー「グモォッ…ムグッ!ヴゥガァアアア!!!」ジタバタ

ヒメ「う゛……お゛ぅえ」バタッ

魔導師「うぶ…ふぅえ…!」クラッ

魔導師「(くるしい…。こんなに……自分で作ったとは…おもえないなぁ)」ケホッ

魔導師「(ま、それもそうか…試したことなんてないし)」ガクガク

魔導師「あぐぅ…!」ガシッ

魔導師「(息がまるで、大量の砂を飲まされてるみたいだ。喉に…空気が通らない…!)」ガクッ

魔導師「(この苦しみも……女王の喜び……あぁ…)」ウツラウツラ

魔導師「(死……死……死が……女王の…ため…死……死!)」フッ

魔導師「(死…!!)」ゾワァッ

魔導師「〜〜〜!」ゾクゾク

魔導師「ひ、ひぃ。ひぃぃ…」ズルズル

魔導師「うぇっぐ!ごふ……」コヒューコヒュー

魔導師「う……」ギュッ

魔導師「(女王……)」ウルッ

魔導師「(…じょ、お…う!)」ボロッ

パァァァァアアアア!!!
931:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:16:58 ID:7TPSqG30CI
シーン………

ヒメ「な、なんだ…なにが、起きた?」パチクリ

カロル「う…ん」ムクッ

ヒメ「カロル…!」

カロル「あ、ヒメくん…」ムニャッ

ヒメ「お、おまえがやったのか……今の…」

カロル「今の…?」キョトン

ヒメ「突然、ヤツが撒いた毒の霧が晴れたんだ!おまえじゃないのか?」

カロル「あ……」

ヒメ「え?」

カロル「アピシナさま…」ホワンホワン

ヒメ「アピシナ…?大樹を育てた伝説の…?」

カロル「…少し夢を見てたみたい」ニコッ

ヒメ「夢…?」

カロル「あんまり覚えてないけど、いい夢だったよ」ニコニコ

ヒメ「はぁ?」チンプンカンプン

カロル「ヒメくん」ジッ

ヒメ「? な、なんだよ?」タジッ

カロル「みんなで帰ろう!」

ヒメ「!」

カロル「約束だよ?」ウインク

ヒメ「あぁ、当然だ!!」グッ

カロル「ふふ、なんだろ。ふしぎな気分」クスクス

ヒメ「?」

カロル「こういう気持ちになれるから頑張ろうって思えるんだろうね」ニコニコ

ヒメ「そうかもな…」ニコッ
932:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:18:53 ID:u8oh19UNDM
魔導師「そうか…そんなことも出来るのか」ジャリッ

カロル「?」

ヒメ「!」ハッ

魔導師「完敗だよ。成す術もない…。やっぱり本物は違うなぁ。君は特別だ」ボソボソ

ヒメ「……?」

魔導師「は、はは…は……」ブルッ

カロル「パカラーロさん、もう…」

魔導師「…偽物」ガリッ

カロル「!?」

魔導師「偽物だ、こんな……化け物のふりも、散々だ」ボリボリ

ヒメ「(か、顔を掻きむしってる…?)」

魔導師「醜さが、醜さが欲しい。女王が愛してくれた、醜さが」バリバリ

カロル「やめなよ!血が出てる!」パシッ

魔導師「触れるなぁ!!」バチンッ

カロル「っ……」ゴクリ

魔導師「血が乾かない…。息苦しさがない…。腹の底から冷えきった、あの感覚がない…」ボリボリ

カロル「パカラーロさん!」アセアセ

魔導師「……触れるだけで傷も、毒も、苦痛も、歪みも……」ブルブル

カロル「パカラーロ…さん?」

魔導師「自分から"特別"がごっそり消滅した…」

カロル「とくべつ…?」

魔導師「怖い力だよ。黒魔術なんかより、よっぽど恐ろしい。まるで過去を無かったことにされたみたいだ…」

魔導師「仰々しく覆うローブも目深に被ったフードも素顔を秘めるマスクもまやかしだ…」ブツブツ

魔導師「…もう、誤魔化しきれない」キュッ

ヒメ「…事情がよく飲み込めないが要は利用されてるだけじゃないか。なんでファルージャに固執するんだ?」

魔導師「……」ピタッ
933:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:22:24 ID:7TPSqG30CI
魔導師「ん、ふふ……ふふふ」プルプル

ヒメ「な、なんだよ。いきなり笑いだして?」

魔導師「なにも分かっちゃない…」

ヒメ「……?」

魔導師「献身と享受。それが愛だ。自分らなんかは献身、女王はもちろん享受。利害なんて求めてない」

ヒメ「あ、愛…?」

魔導師「自分は昔、思い知った。ある国から連れ去られて…何年もこの地下に閉じ込められてから」

ヒメ「連れ去られた…?」ピクッ

魔導師「可笑しくなるくらい不運だった…。どれだけ待ちわびても幸運の兆しなんて訪れなかった…。呪ったよ。不運を。その裏側にある真実も」

魔導師「故郷、家族、友達、覚えてる限りの絆……当たり前に信じてた繋がりは全部、全部まやかしだったのさ」

ヒメ「おまえ、まさか……」ハッ

魔導師「……愛されてなかった。だから自分には不運しか訪れなかった」

魔導師「だけど彼女は違う。愛された。幸運に満ちてた。自分の不運を感謝したいくらい、美しかった」

魔導師「全てを捧げる喜びが自分を生かしてる…。女王との間にあるのは至純の愛だけさ」

ヒメ「共依存関係だ…。そんなの愛とは呼べない」

魔導師「ん、ふふ…子供には早すぎたかなぁ。その内知るよ。自分らの愛がどれだけ空っぽでちっぽけな物か」

ヒメ「おまえは知らないだろうけど…ブルードル陛下は……東の国はおまえたちを見捨ててなんかいないぞ」

魔導師「!」

ヒメ「あの方はずっとおまえたちの身を案じてた。いつか必ず助け出そうと力を蓄えてたんだ」

魔導師「……」

ヒメ「遅すぎたと言えば、それまでかもしれない。でも…おまえは確かに愛されてたよ」

魔導師「…哀しくなるなぁ。響かないんだよ。今さら…そんな話で喜べるほど静謐な過去じゃないんだ」

カロル「だけど信じようとしたんでしょ…?」

魔導師「……」

カロル「信じても…助けてもらえなかった。だから辛いんだよね」

魔導師「ふん…」
934:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:23:28 ID:u8oh19UNDM
魔導師「忌々しいなぁ…。どうして、どいつもこいつもうざったい過去を持ち出すのかね」

カロル「…パカラーロさんはしあわせだったの?」

魔導師「ん…?」

カロル「ファルージャさんのそばで悲しいことも楽しいことも…しあわせって感じてた?」

魔導師「感じてたさ。自分は特別だった。女王もそう褒めてくれた」

カロル「うん…」

魔導師「君がいなければ全部うまくいってたんだ…。ずっと特別でいられて、この命も女王に捧げられた」

魔導師「偽物は…取り繕っても偽物だ。こうして化けの皮を剥がされてみて、よく分かった」

カロル「そうなのかな」

魔導師「……?」

カロル「特別って、そういうものじゃないと思うよ」

魔導師「なに…?」

カロル「ただ便利な物を特別っていうなら人じゃなくてもいいでしょう?」

魔導師「?」

カロル「ボクたちは物じゃないよ。生きてる。だからいろんな感情を一緒に分かち合えるんだ」

魔導師「……!」

カロル「そうやって過ごしてきた思い出とか、信頼を特別っていうんじゃないかな?」

魔導師「詭弁だ…!そんな戯れ言、なんの意味もない!」

カロル「……」

魔導師「な、にも……うっ」ズキッ

カロル「パカラーロさん……」ジッ

魔導師「〜〜〜!!」ドクンッ
935:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:24:20 ID:7TPSqG30CI
『あぁ……くるしぃ…』

『たすけて…おねえちゃん……』

『かえり、たい……ママ、パパ……あいたいよぅ』

魔導師「!!!」ゾワァッ

『わたしとおねえちゃん、ふたりになっちゃったね……ごほっ』

魔導師「……!」ゾクゾク

『ねぇ、だいじょうぶって言って…?いつもみたいに優しく撫でて…?』

魔導師「(やめ、ろ。思い出させるな…!)」ガリッ

『ナニゴレ!?ぎぼぢわるい!ごんなの!ワダシじゃナイ!!げほっう゛ぇぶぅごぼはっ』

魔導師「聞きたくない!イヤだ!やめてくれっ!!」ボリボリ

ヒメ「お、おい!どうした!?」アセアセ

『ヴゾヅギィ!!ガエレルッデ!!イッダノニィ!!?』

魔導師「あっあっひやぁ!うやぁぁああああ!!!?」バリボリ

カロル「」パシッ

魔導師「!!?」ビクッ

カロル「血が出てる…」ギュッ

魔導師「へ、あ……」フワッ

カロル「大丈夫」ニコッ

魔導師「あ、あぁ……」ブルブル

カロル「大丈夫だよ」ニコニコ

魔導師「ふ、う……」ジワァァ
936:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:25:59 ID:7TPSqG30CI
魔導師「…自分には、なにもない」グシッ

魔導師「特別だった物を失ってきた…。助けられなかった…!」ググッ

魔導師「女王だけなんだ…。どんなに醜くなっても…愛してくれたのは…」

カロル「…だからホビットの里を襲ったの?」

魔導師「……?」

カロル「あの日、たくさんの人が大切な物を奪われたんだよ…?」

魔導師「なんの…はな、し」

カロル「ボクは覚えてるよ。パカラーロさんがボクを探しに来た時のこと」

魔導師「あ……」ハッ

カロル「悲しむ人。怒る人。我慢する人。復讐しようとする人。耐えられなくて、おかしくなっちゃう人…いろんな人がいた」

魔導師「……」

カロル「誰かの為にしたことなら、誰かを不幸にしてもいいの?」

魔導師「っ…そうやって成り立つもんさ。イヤって言うほど経験してきた…!」

カロル「……」

魔導師「自分の為に生きてるヤツなんか一握りさ!みんな誰かに使われて生きてるんだ!その中で意味を探すのが大変だから…愛を求めるんだ!」
937:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:26:50 ID:7TPSqG30CI
魔導師「女王の為なら、いくらでも手を汚す…!全ては献身……愛がそうさせるんだ!」

カロル「…とっても怯えてたね。なにを思い出したの?」

魔導師「」ビクッ

カロル「…パカラーロさんがしてきたこと?それともされてきたこと?」

魔導師「言うな…!」ブルッ

カロル「悲しいね。憎んできた人たちと同じことをしてるなんて」

魔導師「言うなぁ!!!」

カロル「お母さまがいつも言ってた。自分たちもいつそうなるか分からないって…」

カロル「だから大切な人を愛するんだ。愛情は心の拠り所なんだって…そう言ってたよ」

魔導師「〜〜〜!!」

カロル「愛にもいろんな形があるんだね。でも人を繋げて希望になる。そういう愛をボクは知ってるよ」

ヒメ「……」

カロル「…きちんと伝えた方がいいと思う。ホントに好きで一緒にいたいなら」

魔導師「っ…だったら死んでくれ!めんどくさいんだ、説教なんていらないんだよ!自分はただ女王の役に立ちたいだけなんだ!」

ヒメ「ここで死んでも無駄だぞ」

魔導師「!?」

ヒメ「おまえが二度とあいつの役に立つことはなくなる。死んだら、そこで終わりなんだよ」

魔導師「……!」ギリッ

カロル「お互いに、だよ」

ヒメ「……」

カロル「愛は人と人を結ぶものでしょう。欠けてしまったら、どうして喜べばいいの?」

魔導師「ぐ、ぐ……」プルプル
938:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:27:37 ID:u8oh19UNDM
カロル「行こ?」

魔導師「ど、こ…?」

カロル「本当の気持ちを聞いてみたらいいよ。ファルージャさんに」

魔導師「女王に…今の自分をさらけ出せって言うのかい…!?」

カロル「…本当に特別なら関係ないよ。どんな形でも好きになってくれる」

魔導師「……!」ブルッ

カロル「平気だよ。信じて?」

魔導師「なにを…!?」

カロル「ファルージャさんと自分の気持ちを」

魔導師「っ……」ギュッ

カロル「ヒメくん、いいかな…?」

ヒメ「良い訳ないだろ。そいつは何度も僕たちを殺そうとしてきたんだぞ。なんの利もないし時間の無駄だ」

カロル「そんな……」シュン

ヒメ「…けど、東国の民だと分かった以上、手出しは出来ないな」フー

カロル「!」

ヒメ「亡きブルードル陛下への義理を果たす意味でも、この場は不問にしておいてやる」ニコッ

カロル「〜〜〜!」パァァ

ヒメ「さ、皆を起こして行くぞ」

カロル「うん!」
939:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:28:21 ID:7TPSqG30CI
カロル「宣教師さま!ラムくん!へいき?」ユサユサ

ヒメ「おーい団長生きてるかー?国王命令だ、起きて働けー」ゲシゲシ

カロル「(ふ、踏みつけてる…)」ハラハラ

魔導師「(なんなんだ、こいつらは……)」

魔導師「(敵だ…女王を否定し、憎まれた敵……)」

魔導師「(あんな戯れ言に動じるような自分じゃなかった…)」

魔導師「(なのになんで……自分は……)」

『そなたの命は妾の為に使え……』

魔導師「……」チラッ

フィクサー「」スースー

『妾はそなたを愛しておる……』

魔導師「(女王……)」スッ

魔導師「(大丈夫…自分もだよ)」クスッ
940:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:29:57 ID:u8oh19UNDM
ドバッ

プシャアアアアア

カロル「へ?」クルッ

ヒメ「なっ…!?」ハッ

フィクサー「ちっ…」ザッ

魔導師「ぁ……ふ」ドシャッ

フィクサー「下衆が…」ヒュンッ ピシュッ

カロル「パカラーロさん!」ダッ

ヒメ「やめろ!行くな!」ガッ

カロル「な、なにするの!パカラーロさんが!?」ジタバタ

ヒメ「おまえ…なんでもかんでも助ければいい訳じゃないんだぞ!ラムにも叱られただろ!?」カッ

カロル「」ビクッ

ヒメ「下がってろ!」バッ

カロル「……!」サッ

ヒメ「フィクサー!!」ジャキッ

フィクサー「ふっ…」ニィィ
941:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:30:57 ID:u8oh19UNDM
ヒメ「どうあっても僕とおまえの間には決着が必要らしいな!」キッ

フィクサー「…傍らには救い主、か」ジロッ

カロル「……!」キュッ

フィクサー「……なるほど、これが……ずいぶんと研ぎ澄まされた心地だ」グッパッ

魔導師「ん、ふふふ……」ダラァァン

カロル「っ……どうして!」

魔導師「なにも…自分じゃなくても、いい。守れたら…それで……」ジャリッ

カロル「……!?」

魔導師「あいし、てる」ズズッ

カロル「死なないで…!死んじゃダメだよ!!」

魔導師「あい…てるよ、じょ……」ズリズリ

ドスッ!

魔導師「ぶっ…!」ゴフッ

フィクサー「耳障りだ。黙っていろ」グリィッ

魔導師「んぅ!!」ブシュッ

ヒメ「……!?」

カロル「!!!」ダッ

ヒメ「お、おい!カロル!」アセアセ

カロル「……!」タタタッ

フィクサー「迷信だとばかり考えていたが、いざ体感すると疑いようもないな」ズボッ

魔導師「」ピクピク

カロル「〜〜〜!!」バッ

フィクサー「」ヒュンッ

カロル「あつっ!?」バシンッ
942:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:32:04 ID:u8oh19UNDM
カロル「くぁっ…」ズサッ

ヒメ「カロル!?」

フィクサー「心配するな。刃は当てていない」ザッ

ヒメ「このっ…!」ザッ

フィクサー「が、懲らしめる必要がありそうだ」ズシッ

カロル「ぐっき…ぁぁあああ!!!」バタバタ

ヒメ「やめろぉ!!足をどかせ!?」

フィクサー「手は痛みの宝庫だ。与えるにも受けるにも関わらず、ほとんどの痛みは手から生み出される」グリグリ

カロル「ひあぁっ!ひっ…いぎゃああああ!!!」バタバタ

フィクサー「だが貴様はその手で人を癒し、痛みを取り除く。酔狂なものだ」グリグリ

カロル「う゛っ!!はぁ!はぁ!」ゼェゼェ

フィクサー「空いた手をなおも伸ばすか。貴様を脅かす敵の為に……」パッ

カロル「いま…いや、すから」ピトッ

魔導師「」フワッ

カロル「」ホッ

魔導師「」ダラン

カロル「……!?」パチクリ

フィクサー「」ズシッ

カロル「うっ!あぐぅ…!」ズシャッ

フィクサー「遅かったな」グリグリ

カロル「そん…な……いや…ぁぁあああ!!!」バタバタ

ヒメ「!!」ダッ ブンッ

フィクサー「」ヒュンッ

カァァァンッ
943:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:38:06 ID:u8oh19UNDM
フィクサー「激昂しているのか?」ギギギッ

ヒメ「…!?」グググッ

フィクサー「」シュッ

ヒメ「おぅっ…」ドフッ

フィクサー「剣に集中しすぎだ。胴ががら空きだったぞ」ニヤッ

ヒメ「うっ…」ゲホゲホ

フィクサー「…わたしもだ。とてつもなく憤怒に駈られたよ」

ヒメ「…うぅ!」ジャリッ

フィクサー「誤算ばかりだった。予測し得る対策はほぼほぼ講じていた筈なのにだ」

フィクサー「ファルージャの……我が妃の魅力。このわたしがもはや恋に堕ち、情欲に溺れるとは……思えばアレが全てだったか。
本来の目的にズレが生じるほどに…単なる男女の営みではない未知の感覚に支配されたのだ」

フィクサー「西国の統治、長期作戦による王国の権威剥奪。どれも予定していた計画とは違う。だが妃を手に入れる為には必要だった。だからこそ杜撰(ずさん)なものになってしまった」

フィクサー「わたしは彼女に踊らされた道化に過ぎないのかもしれん」フッ

フィクサー「彼女はまさしく……魔性の女だ」

ヒメ「はぁっ…!」ムクッ

フィクサー「どうやらこいつもわたしも取り憑かれていたらしい」ゲシッ

魔導師「」ゴロン

フィクサー「しかし頂けないな。愛の為に命を捧ぐなど、まったく愚かな決断だ」

ヒメ「ふん!女に溺れたヤツが言っても説得力がないな…!」ヨロッ

フィクサー「愛も野望も手に入れればいい。欲望がある限り、夢は見られるのだから」

ヒメ「…じゃあおまえの目的ってなんなんだよ!国の未来も見ていないのに争いを望む理由はなんだ!?」ジャキッ

フィクサー「…いろいろあるさ。その時々に感じた物の積み重ねだ」

ヒメ「僕はこの戦いを通して何一つ意味なんか感じられなかった!なぜこんな事をしてるのか自分でも分からない!」

フィクサー「そうか…」

ヒメ「やめる気はないのか…!もうたくさんだ…!」ググッ
944:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2017/4/12(水) 22:39:46 ID:u8oh19UNDM
フィクサー「やめる気など毛頭ない。思考を取り戻した今となってはむしろ本来の目的を果たすのが最優先だ」

ヒメ「なに…!?」

フィクサー「ここまでの犠牲を踏まえても有り余る成果が…ここにあるからな」ズシッ

カロル「ひぐ…!」ググッ

フィクサー「圧倒的な暴力と死者を産み出す技術……近代までの軍事はそればかりに費やし、同様に戦略も組み立てられた。その真逆をいく発想がコレだ……」チラッ

カロル「はっ…あぁぐ…」ピクピク

フィクサー「生命を保管し、不死を完成させる魔力……ふ、はは。なんたる嘘めいた絵空事だ!想像の域を遥かに越えている!」ワナワナ

フィクサー「かつての教団が起こした国家反逆……あの鼻白む愚行の意味がようやく分かった。
妃をして欲望に狂わせたのも頷ける。わたしも今、果てしない野心に埋もれそうだ…!」

ヒメ「……!」ブチィッ

フィクサー「不死の兵、不死の民、不死の帝国!!不死の軍による戦乱!!」

フィクサー「まさに終わらない!終わりようのない争いだ!比喩でない血の海をじかに見られるぞ?はっははは!!」ゲラゲラ

ヒメ「喋るな!!」バッ

フィクサー「っ…」ギィィンッ

ヒメ「なんなんだ、なんなんだよ、おまえは!?」ビュバッ

フィクサー「……」ガィンッ ギギンッ

ヒメ「争い、争い、争い…!なにがしたいんだよ!今もその先もぶち壊してどうしたいんだ!?」ガァンッ ギャリンッ

フィクサー「」サッ

ヒメ「!?」ズザッ
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うpろだ
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