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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編その2】
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1: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:00:58 ID:/WYEXwH6vk
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-10

1スレ(少年「ボクが世界を変えてみせる」)

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1385288769/1-10

2スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」)

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1416136192/1-10

3スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】)

あらすじはそれぞれの1参照(考えるのがめんどくかったんです。ごめんなさい)

>>2から本編になります!


855: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 21:47:21 ID:EZ0/NsJFHM
ファルージャ「たとえ僅かなれど……逃げおおす時は稼げよう」

ラム「ふん…僕とカロルくんはそんなの効かないよ」

ファルージャ「承知の上よ。じゃが…そのおなごはどうする?」

宣教師「くっ…!」ギリッ

ファルージャ「犠牲はやむ無しと割りきれるか。己らの振りかざす正義は醜いものよなぁ」クスクス

ラム「っ…」

宣教師「悪あがきはよしなさい!その場逃れではどのみち凌げませんよ!」

ファルージャ「勘違いするな。妾はただ…そなたらに権利を与えてやっているまでよ」

ラム「権利…!?」

ファルージャ「そのおなごを捨てるか、妾の前から消え失せるか…選ばせてやろうぞ」

ラム「……!」ゴクリ

ファルージャ「クスス…どうじゃ?妾は寛大であろう?」ニヤニヤ
856: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 21:49:35 ID:6FAwtITC1A
宣教師「そ、そんな物を放出したらあなただって無事では済まないでしょう!」

ファルージャ「普通であればな。されど妾には不死の肉体がある…」ニタァァァ

カロル「……!」

ファルージャ「これまで数えきれぬ貢ぎ物を受け取ってまいったが……そなたの贈り物は実に気に入っておるぞよ?」ニヤニヤ

カロル「」プイッ

宣教師「なにが贈り物ですか…!彼の気持ちを踏みにじった上、拷問にまでかけておいて!!」カッ

ラム「宣教師さん、ここは一旦退こう!」ガシッ

宣教師「お構い無く!このような傲慢女の卑劣な仕打ちに屈する謂れはありません!」

ラム「け、けど…そしたら」

宣教師「時間がないんです!ここを逃したら、また大勢を犠牲にしてしまいますよ!」

ラム「〜〜〜!」

宣教師「君が止めても私はやりますから…!」ザッ

ファルージャ「それでよいのであれば妾とて遠慮はせぬぞ」グッ

宣教師「やれるものならやってみなさい!そんなことをしてもあなたは破滅を歩むだけです!」

ファルージャ「クスス…楽しみじゃな。そなたのもがき苦しむサマをじっくり堪能するとしよう…?」クイッ

ラム「まっ…」

カロル「やめて!!」

ファルージャ「」ピクッ
857: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 21:51:56 ID:6FAwtITC1A
シーン

宣教師「……!?」クルッ

ラム「カロルくん…」

カロル「そんなこと、しなくていい…しちゃダメだよ」

ファルージャ「……」ジッ

カロル「二人はヒメくんを探してきて」

宣教師「で、ですが…」

カロル「やっぱりよくないよ。暴力でおどかしたって納得できる筈ないもの…」

ラム「君が話したところで何ができるのさ…。こいつには言っても無駄だよ」

カロル「それならまた違う方法を考えるしかないよ。戦ってる人間たちに呼び掛けてみてもいいし…」

ラム「同じだよ!そいつらも結局、大きなきっかけがなかったら変われない!」

カロル「……」

ラム「君がしてることは思いやりなんかじゃない!単なる自己満足だ!」

カロル「っ……」
858: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 21:53:29 ID:EZ0/NsJFHM
ラム「たしかに僕も宣教師さんもヒメも…教団も王国も変わったよ!君が訴え続けたから!」

ラム「だけどそれもきっかけがあったからだ!全部が全部、君のおかげじゃない!」

ラム「この国と僕たちはお互いをなんにも知らないんだ!そもそも説得できるような環境がないんだよ!」

カロル「…分かってるよ。ボクのおかげだなんて思ってないもん」

ラム「は…!?じゃあなんだって言うのさ…!」

カロル「同じ世界に生まれて、変わらない時間を過ごして、みんな幸せを夢見て生きてる」

ラム「……!?」

カロル「たくさん違いはあるけど、それだけは変わらないんじゃないかな」

ラム「そ、そんな理屈でどうにかなる訳ないだろ…!」
859: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 21:54:43 ID:6FAwtITC1A
ラム「君は甘過ぎるよ…!また前みたいに都合よくいくと思ってるのかい!あんな奇跡、そう簡単には……」

カロル「ラムくんが間違ってないの、分かるよ。だけど…」

ラム「だけどなんなのさ…」ジトッ

カロル「もしあの巡礼の時もそうしてたら…ボクたちはともだちでいれたかな」

ラム「は…?」

カロル「ラムくんはあの時、どうして人間を許そうと思ったの」

ラム「それは…キミが……」

カロル「ホントにそれだけ?」

ラム「……」

カロル「みんなの言葉とかいろんな出来事があったからって知ってるよ。でも最後には自分で決めたよね」

ラム「そうだけど…」

カロル「ボクもそうだよ。何回も反対されたし、諦めちゃったりしたけど…そうしたいって思ったから続けられたんだ」

ラム「……」

カロル「続けるのもやめるのも大事なことだから自分で決めないとね…」

カロル「じゃないと、なんにも満足できないで終わっちゃうもん」

ラム「この女にも…それが出来るって言うのかい」チラッ

ファルージャ「……」ニヤッ

ラム「っ…!」プイッ

カロル「どうかな。それを決めるのはボクじゃないから…」

ラム「だったら…!」

カロル「それでも話しておきたいんだ」

ラム「……!」

カロル「ボクはまたみんなと笑って過ごしたいから…後悔して笑えなくなるのはイヤなんだ?」ニコッ

ラム「はぁ……もういいよ」
860: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/15(土) 22:04:06 ID:6FAwtITC1A
ラム「どうする?こうなったら聞かないよ」

宣教師「…仕方ありませんね」

カロル「……」

宣教師「非情に徹してでも守る意思を貫いてきたヒメくんの決意や、この戦いに平和を願った人々の心を思えば…正直、賛同しかねますが」

カロル「!」ズキッ

宣教師「キミはそういう風に割りきれない子だということもよく分かってます」

カロル「ホントにごめんなさい。いつもワガママばっかり…」

宣教師「いいんですよ。私自身、このやり方が真の解決に結び付くかは分かりませんでしたから」

カロル「どうなんだろ…。ホントはヒメくんの言う通りにするのがいいのかも」

宣教師「…でしたら、そうしてみますか?」

カロル「……」

宣教師「自分が正しいと思うのなら自信を持ちなさい。でなければ私達もキミを信じてあげられませんよ」

カロル「ボクは…やっぱり違うと思う」

宣教師「それならキミのやり方にお任せします。私達も信じますから」ニコッ

カロル「はい…!」コクッ
861: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/16(日) 21:40:31 ID:egsNPOvF9c
―――地下迷宮(通路)―――

ラム「あれでいいのかい?」

宣教師「……」

ラム「たしかにカロルくんは嘘がつけないから信用しやすいけど、とても通用する相手とは思えないよ」

宣教師「…どうでしょうか」

ラム「へ?」

宣教師「結局のところ人心が彼女に靡いている限り、捕縛して呼び掛けても火に油を注ぐだけかもしれませんよ」

ラム「で、でもヒメは…」

宣教師「彼に落ち度はありませんが…理屈で納得できる相手でないからこそ私はカロルくんに懸けてみたくなりました」

ラム「……」

宣教師「あの子は物事を深く考えていないようでありながら…実は私達が思うより、ずっと繊細な子です」

宣教師「きっと…なにか思うところがあって説得を試みたのではないでしょうか」

ラム「そうかな…。何も考えてないだけな気がするけど…」

宣教師「どうなるかは分かりませんが信じてみましょう。
彼はいつだって、こうした逆境に立ち向かってきたのですから」

ラム「前から思ってたけどカロルくんに甘くない?」ジトッ

宣教師「ふふ、そうでしょうか?」

ラム「はぁ……ま、僕もあんまり言えないけどさ」プイッ

宣教師「」クスッ
862: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/16(日) 21:44:00 ID:5kGwsSNxvs
―――地下迷宮(隠し部屋)―――

ファルージャ「ンッ…」ゴクゴク

ファルージャ「フゥ〜…香に浸れず美酒にも酔えず……」

ファルージャ「よもや肉体に求められる快楽は貪り尽くしてしもうたか…」

ファルージャ「また新たな趣向を探さねば時をもて余すばかりよなぁ…」カランッ

ファルージャ「……」

ファルージャ「して、一人残ってまで妾に何を話すつもりじゃ?」

カロル「……」

ファルージャ「再び飼われたいと申すのではあれば一向に構わぬぞ?とくと可愛がってやろう?」ニィィッ

カロル「…どうしてあんなウソついたの」

ファルージャ「ウソ…とな?」ピクッ

カロル「それ、ただの香水だよね」

ファルージャ「……」

カロル「パカラーロさんがそんなの渡すはずないもの」

ファルージャ「ハァン…なにを根拠に」

カロル「それを使ったらファルージャさんも苦しい思いをするよ。
大好きな人を守りたいのに…そんな方法は選ばないんじゃないかな」

ファルージャ「そなたにあやつの何が分かるというのかえ…?」

カロル「知ってるよ」

ファルージャ「……?」

カロル「パカラーロさんも、この城の人間たちも…みんなファルージャさんが大好きだって」

ファルージャ「フゥン…」
863: ◆WEmWDvOgzo:2016/10/16(日) 21:50:32 ID:5kGwsSNxvs
ファルージャ「フフン!よくぞ見抜いた。誉めて遣わそう」クスクス

カロル「やっぱり…」

ファルージャ「たしかにこれは単なる香水よ。開けてもこの通り害はない」パカッ

ファルージャ「が、それを見抜いておったなら、なぜ口にせなんだ?妾を捕らえる好機であったろうに?」

カロル「それは…」

ファルージャ「クスス…さては今頃になって我が魅力に堕ちたのかえ」

カロル「ボクはまだ…なんで争わなきゃいけなかったのか、よく分かってないから」

ファルージャ「……?」

カロル「敵だからとか考え方が違うとか…そういう理由で納得したくないんだ」

カロル「なんにも知らない人のことを悪いって決めつけたくない…」キュッ

ファルージャ「ほう…」

カロル「だから話してみようって思ったんだ…。ちゃんと向き合ってみたくて…」

ファルージャ「フゥン…さようであったか」ガッ キュポッ

ファルージャ「ゥゥン……」グビグビ

ファルージャ「フゥ〜…良い気分じゃ」ボー

カロル「お酒は体によくないってお母さまが言ってたよ…」

ファルージャ「どうせ永遠に生き永らえる身よ。娯楽がなくてなんとする?」ニヤッ

カロル「……」

ファルージャ「さすれば…」ポイッ

バリンッ

カロル「」ビクッ

ファルージャ「存分に語らおうではないか、心いくまで?」クスッ

カロル「っ…」ゴクッ
864: 名無しさん@読者の声:2016/11/16(水) 22:56:06 ID:2f74OR/8Q6
保守
865: 長引かせてすみません!m(__)m ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 22:42:15 ID:2f6ATVrpfk
ファルージャ「くちゃっ……くち……」モグモグ

ファルージャ「そなたも食すかえ?我が国原産のクリームチーズじゃぞ?」クスッ

カロル「いらない…」

ファルージャ「この部屋には妾の好物のみが取り揃えられておる。いくらでもある故つまんでも構わぬのだぞ」クスクス

カロル「いい…」

ファルージャ「フゥン……ではそろそろ話とやらを聞こうではないか。なんなりと申すがよ……」

パラパラ パラパラ

ファルージャ「ン……なにやら上が騒がしいのう。埃が舞いよるわ」

カロル「戦ってる人間たちの足音が地下に響いてるんじゃないかな…」

ファルージャ「フゥン……よう飽きもせずやるものよ」

カロル「……」

ファルージャ「なにをそう熱くなっておるのやら…これだから男というのは」

カロル「…必死にもなるよ」

ファルージャ「ハ…?」

カロル「勝たなきゃいけないって、そう信じてるんだもの」

ファルージャ「なにゆえじゃ…?」

カロル「……」

ファルージャ「ハッ…問われ押し黙るそなたになぜ彼奴らの胸の内を語れるのか」

カロル「…戦う理由があるからだよ」

ファルージャ「戦う理由…とな?」

カロル「一人一人違うからボクには分からない…。でも戦わなきゃいけない理由があるんだ」

ファルージャ「ずいぶんと大雑把じゃのう」

カロル「ファルージャさんはどうしたいの…?」

ファルージャ「ンゥ…」

カロル「理由なんてないのに戦いを続けて…ホントはなにがしたかったの?」

ファルージャ「……」
866: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 22:45:24 ID:Ou70Vp7aU.
ファルージャ「はて……」

カロル「」ジーッ

ファルージャ「クスス……あまり見つめるな。妾とて返答に困ろうが」

カロル「止めてあげてよ」

ファルージャ「……」

カロル「ファルージャさんが止めれば、みんながやめる理由になるんだよ」

ファルージャ「そうねぇ、どうしたものか…」クスクス

カロル「ここでじっとしてるならそうしてよ…。みんなを意味なく死なせないで」

ファルージャ「そなたは勘違いをしておる」

カロル「へ…?」

ファルージャ「いくら情熱的な戯言をほざこうと我が胸を打つことはなかろうよ」

カロル「どうして…ファルージャさんは戦わなくてもいいんでしょ?」

ファルージャ「うむ、どちらでもよい」

カロル「なら…」

ファルージャ「心底どうでもよいのじゃ」

カロル「え…?」
867: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 22:46:58 ID:Ou70Vp7aU.
カロル「どういうことなの…?」

ファルージャ「フフ……それはこちらの言い分よ」

カロル「……?」

ファルージャ「なぜそなたらの身勝手な振る舞いを妾に結びつけようとするのか」

カロル「みがって…?」

ファルージャ「戦うもやめるも好きにせよ。止めはせぬ」

カロル「なにを…言ってるの?」

ファルージャ「まったく押し付けがましいわ」フンッ

カロル「……」

ファルージャ「話というのはそれだけか?」

カロル「なにもしてないって言うの…?」

ファルージャ「ハァ…?」

カロル「ボクはお母さまやみんなと離れたくなかった……」

カロル「大好きな人たちが戦わなくちゃいけなかったのも悲しかった……」

カロル「それでも……ファルージャさんを信じて、ここにいるんだよ?」

ファルージャ「クスス……」

カロル「……?」ブルッ

ファルージャ「美しく高貴なる帝のそばに置かれ、感謝すらせず不平不満を漏らすとは……」

カロル「……」ブルブル

ファルージャ「それ以上の誉れを求めようというのが……つくづく浅ましいのよ」

カロル「……!」
868: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 22:48:50 ID:Ou70Vp7aU.
カロル「そんなのおかしいよ…!」

ファルージャ「ほう、まだ食い下がるか?」

カロル「みんながみんなファルージャさんの為にいるんじゃないんだよ…!?」

ファルージャ「なれば意識を改めるがよかろう」

カロル「……!?」

ファルージャ「広大なる西の大地に立つ全ての命は帝たる妾にひれ伏し、身命を賭して尽くそうと願うが必然」

ファルージャ「代々の皇帝もなんちゃらとかいう神話になぞらえ、民にそうさせてきた」

ファルージャ「それより他になにを望むと?」ジロッ

カロル「ファルージャさんも…その内の一人だったんでしょ?」

ファルージャ「」ピクッ

カロル「なのにどうして分からないの…?奪われて傷付けられる気持ちを……どうして繰り返そうとするの!?」

ファルージャ「…ほんにそなたはむず痒く苛立たしい物言いをしてくれるものさな」

カロル「……?」

ファルージャ「確かに妾は下賤な貧民の出よ。別にその過去を恥じてもおらぬ」

ファルージャ「じゃが……なにも知らぬホビットの童ごときに説教を受ける謂れはない」

ファルージャ「ただひたすら耳障りじゃ…」

カロル「ぼ、ボクは…」

ファルージャ「一つ良いことを教えてやろう」

カロル「へ?」

ファルージャ「貧民、隷属、物乞い、盗人、罪人、カタワ……下には下がいくらでもあるものじゃが」

ファルージャ「それら全てを踏まえても……何より劣るのがホビットという下等種であろうな?」

カロル「っ……!」
869: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 22:50:32 ID:2f6ATVrpfk
ファルージャ「そなたの口から出る言葉はどれも賤しい種族の妬み嫉みからくる……実に見苦しい妄言よ」

カロル「!」ドクンッ

ファルージャ「妾は貧民ではあったが人の子……ゆえに多少の強引を押してでも帝の座に収まれた」

ファルージャ「しかしホビットのそなたにはそれも叶うまい?」

カロル「……」グッ

ファルージャ「寛大な妾なればこそ、そなたの価値を買ってやったまでのこと」

ファルージャ「とはいえ所詮はホビット……あまり思い上がるな」

カロル「思い上がってなんか……」

ファルージャ「妾に意見を申し入れたくばマシな身分を持て」

ファルージャ「さすれば少しは耳を傾けてやってもよいぞ…?」ニヤァァ

カロル「…」
870: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 23:03:15 ID:Ou70Vp7aU.
ファルージャ「語るに落ちるとはまさにこのこと。まことに願いを聞き入れてもらいたくば、まず頭を垂れるが筋というものよ」

ファルージャ「無知なホビット風情が……無謀にも帝を説き伏せようというのがそもそもの間違いなのじゃ」

カロル「……!」グッ

ファルージャ「されど慈悲に満ち、心身共に美しき妾はなおも寛容に尽くそうぞ」ニヤッ

ファルージャ「今一度、傅くと誓うのであれば、そなたを再び我が従属に加えてやってもよい」

カロル「……」

ファルージャ「そなたはホビットに生まれた不幸を授かりながらも癒しの力という素晴らしい才を賜っておる」

ファルージャ「…妾と同様に多大な価値を持ちながら認められなかった類いなのであろうよ」

ファルージャ「しからば同じ痛みを分ける者として、そなたを救い上げてやらぬでも……」

カロル「ホビットとか価値とか……」

ファルージャ「ン……」

カロル「もう聞き飽きたよ、そういうの」

ファルージャ「聞き飽きたとは…?」

カロル「そんな話の方が全然どうでもいーよ」

ファルージャ「……妾の誘いを一蹴するか。ほとほと呆れた童よな」

カロル「ボクはもうそこで悩んでないもの」

ファルージャ「……?」
871: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 23:07:32 ID:2f6ATVrpfk
カロル「お父さまは人間で…お母さまはホビット。もしかしたらボクは人間に生まれることもあったかもしれないんだね」

カロル「でもボクはお母さまの血を引いてホビットに生まれてよかったって思ってる」

カロル「お母さまがいなかったらボクはボクじゃないし、ホビットじゃなかったら知れなかったこともたくさんあったもの」

カロル「だから偉くなりたいとか、そういうのは考えてないよ」

カロル「差別なんて気にしなくていいって言ってくれるともだちが…ボクにはいるから」

ファルージャ「あの小娘らのことかえ…?」

カロル「うん、そうだよ」ニコッ

ファルージャ「あの程度の者らに妾の魅力が劣ると申すか…」

カロル「ファルージャさんにはいないの?」

ファルージャ「……?」

カロル「一緒にいるだけで楽しい気分になれるともだち…」

ファルージャ「稚拙な……この美を愛し、永遠の忠誠を誓う果報者であれば大勢おるわ」

カロル「その人たちはファルージャさんの大切な人?」

ファルージャ「…はて、な」

カロル「……?」

ファルージャ「愛してやることもある。気が向けばの話じゃが?」クスッ

カロル「そう……やっぱり」

ファルージャ「やはりとは?」

カロル「お話してみてファルージャさんのこと分かった気がする。ちょびっとだけ」

ファルージャ「ふむ、なんと?」

カロル「ファルージャさんもひとりぼっちなんだね」

ファルージャ「……ハァ?」
872: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 23:10:48 ID:2f6ATVrpfk
ファルージャ「妾が孤独…?」

カロル「うん」

ファルージャ「そなたを靡かせぬまでも……多くの男に愛され、守られる妾がなぜ孤独と言える?」

カロル「ファルージャさんが寂しそうだから」

ファルージャ「寂しい…?フフ…どこを見て、そう思うのじゃ?」

カロル「だってファルージャさんは誰にも本心を見せてないじゃない」

ファルージャ「なんじゃと……」

カロル「そうやって割りきらないと人を信じられないの?」

ファルージャ「」イラッ

カロル「キレイだから慕われてるって思い込んで自分の気持ちを隠してる…」

ファルージャ「抜かせっ…」

カロル「……」

ファルージャ「己の才能を誇って何が悪い…。事実、妾は美のみで全てを手に入れた」

ファルージャ「帝の寵愛も皇族の冠も配下の忠誠も……全てはこの美で勝ち取ったものじゃ」

カロル「それでも満足できないんでしょ?」

ファルージャ「ッ……」ギリッ

カロル「受け入れてもらえないのが怖いから心を開けないでいるんだよね」

ファルージャ「図に乗るでない…!」

カロル「ホントは誰にも愛されてないのかもって……」

ファルージャ「煩いっ!!」

カロル「っ…」ビクッ
873: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 23:15:05 ID:Ou70Vp7aU.
ファルージャ「薄気味悪い眼をしおって…!」キッ

カロル「……?」

ファルージャ「お前のようなホビットが見透かしたように……不愉快極まりないわ…!」ワナワナ

カロル「…ホビット、だからだよ」キュッ

ファルージャ「……!?」

カロル「分かるんだ。ボクも……そうやって疑ってたから」

ファルージャ「……どういう意味じゃ」

カロル「…たまに不安になるの。ホビットのボクと一緒にいて迷惑じゃないかなとか…ホントは嫌われてるんじゃないかって」

カロル「そんな風に考えるのはみんなを信じてないことになるからいけないって分かってるんだけど、どうしても考えちゃうんだ…」

カロル「そのたびにツラくなる…。ともだちになってくれたみんなを裏切ってるみたいで」

ファルージャ「そなたと妾のどこが通ずるというのじゃ…?」

カロル「…自信がないところ」

ファルージャ「自信が…ない?」

カロル「ホビットだから、キレイだから…そういうのを気にして自分の気持ちを打ち明けないでいるもん…」

ファルージャ「……!?」イラッ
874: ◆WEmWDvOgzo:2016/11/24(木) 23:18:34 ID:2f6ATVrpfk
カロル「ホビットでも気にしない人はたくさんいるのに一人で勝手に悩んでた…」

カロル「だから、そうじゃないんだって気付いた時にすごく安心したんだ」

カロル「自信を持って、ともだちだと思えるようになったから…」ニコッ

ファルージャ「……」

カロル「ファルージャさんも無理しないで…ちゃんと向き合うところから始めてみたら?」

カロル「きっとキレイだけじゃないファルージャさんを好きになってくれる人、見つかるよ」

ファルージャ「戯けが…」

カロル「?」

ファルージャ「くだらぬ話で妾を籠絡せしめようと企むか。哀れな奸知よなぁ…」

カロル「…ボクはファルージャさんがどういう人間なのか知りたかっただけだよ?」

ファルージャ「そなたごときに計れる器と侮るな…」

カロル「なんで怒るの…?」

ファルージャ「そなたが無闇に愚弄するからよ…」

カロル「……」
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