2chまとめサイトモバイル

2chまとめサイトモバイル 掲示板
カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編その2】
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:00:58 ID:/WYEXwH6vk
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-10

1スレ(少年「ボクが世界を変えてみせる」)

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1385288769/1-10

2スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」)

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1416136192/1-10

3スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】)

あらすじはそれぞれの1参照(考えるのがめんどくかったんです。ごめんなさい)

>>2から本編になります!


71: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:45:29 ID:Sx9bep0/Fk
〜〜〜明け方〜〜〜

―――西の国(砂漠地帯)―――

ザスッザスッ ザスッザスッ

参謀「……」

軍師「顔色が悪うございますが到着まで眠られては?」

参謀「そうもいきませんよ。いつイアマンの反逆者共が刺客を放つか分からないですからね」

軍師「ここ2年ほどは閣下も落ち着いておられましたが…いやはやまた卑しい目を向けられるとは」

参謀「…"そこ"だけはあの"妾"に感謝してたのですがね。
まぁ閣下も我欲の強い男…王位から退かれたとはいえ、一応の皇族である僕をなぶって自己満足に浸っているのでしょうよ」

軍師「…辛いですな」

参謀「そう言ってくださるのは貴方だけですよ。師匠殿」

軍師「師匠だなどと恐れ多い?私はただの配下にございまする?」

参謀「…ご心配には及びませんよ。僕はまだ諦めておりませんから」

軍師「それは良うございました。私も微力ながら貴方様の背を押させていただきたいと存じておりまする。"皇帝陛下"」

参謀「気が早いですよ」

軍師「いずれはそうなるのですから同じことかと」

参謀「あの妾の台頭で一度は失敗に終わりましたが…まぁ問題ありませんね。
むしろ正統な王位を継ぐ次期皇子共を皆殺しにしてくれたので助かりましたよ…」

軍師「……」

参謀「この国の長所は軍の強大さにあらず…独裁制を許される政治的圧力の強さに起因します」

軍師「(軍事のみならず政治の才も一線を画する…。やはり私の目に狂いはない!)」

参謀「僕もそろそろ軍の一指揮官から…ちょうど良い位置まで駆け上がりましょうかねぇ?」ニヤリ

軍師「(この方こそ王の器なり…!)」
72: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:49:11 ID:Sx9bep0/Fk
〜〜〜1ヶ月後〜〜〜

―――王国軍の砦―――

フィクサー「…読まれた、か」コトンッ

副官「えぇ、えぇ、そのようで?」

ドレッド「どういうことだ!西の国の貿易拠点に流布したんじゃないのか?」

フィクサー「奴らが動くそぶりが見られない。作戦を見破られたようだ」

ドレッド「見破られただぁ!?野蛮で愚図な西の連中にそんな勘のいい野郎がいるってのか!?」

フィクサー「敵の戦力を見誤ったかも知らんな」

ドレッド「ちぃっ…!救い主をエサに奴らが不利な国境・山岳地帯に誘きだして一網打尽にする手筈だったんだろうが!?
ここで大々的に勝利の狼煙をぶち上げて一気に西の本国を詰めりゃ終わる話だったんだぞ!?」

フィクサー「さすがにそうはいかんよ。地理を把握する者ならばある程度の予測は立てられる。ましてや敵は百戦錬磨の強国だ」

ドレッド「なにぃ!?だがあんたの作戦じゃ…?」

フィクサー「だからこそ敢えてこちらの誘いを外し、貿易拠点から少々離れた高原地帯に侵入し、奇襲を迫ってくるかと考えていたが……」

ドレッド「結局はあてが外れたんだろう?全部台無しだ!くそっ!?」ガタンッ
73: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/13(木) 09:50:13 ID:rjm0FZnxdY
副官「どうも引っ掛かる?」

ドレッド「なにがだ!」

副官「政務官殿の話では以前にも西の国が予想だにしない政治戦略に打って出たとか?」

ドレッド「こっちとは関係ねぇだろ!」

副官「西の国は軍事国家、あくまで軍主体の統治を掲げている?
その証拠に女王直属の配下、三銃士にも政務に携わる者はおりませんよねぇ?
しかし今はどちらかと言えば外交や同盟破棄の手引きなど政治色の強いやり方が目立っている…」

フィクサー「軍略、政治、どちらにも長けた切れ者がいるのかもな」

ドレッド「…軍の最高指揮官は"殺戮将カカドゥーラ"だろう?それ以外で目立った奴は知らんぞ?」

フィクサー「どうやら…甘く見過ぎていたようだ」

副官「ふむ。非常にまずい立ち回りとなりましたねぇ。
敵に攻め入る気が無ければ動きようがないですから?」

ドレッド「お、おい…それじゃどうすんだ!?」

フィクサー「…敵が誘いに乗らない以上、わたしに軍を動かす権限はない。
来るべき日に向け、軍備を強化し、各地に防衛線を張り巡らすぞ」

副官「ははっ!」

ドレッド「また一からやり直しかよ…。西の蛮人の分際でしゃらくせぇ真似を…!」ギリッ

フィクサー「(…時代が少しずつ我ら軍人に傾いてきた。この機を逃す手はない。西国の内部に探りを入れてみるとするか)」

フィクサー「(どの史実をめくってみれど…血にまみれた時代が最も面白いからな)」ニヤリ
74: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:04:21 ID:YUaqlqK50k
―――王国(議場)―――

ヒメ「ふっ…」クスッ

ウダウダ ギャーギャー

高官1「であるからして…それは…!」ギャーギャー

高官2「ここは万に一つの望みを賭けて武力行使に打って出るべきだ!!」ギャーギャー

ネバル「西の国の人達はお腹空いてるです!ごはんをあげて説得するです!!」ギャーギャー

高官3「救い主を差し出してはいかんのか!?血を流すよりマシだろう!?」

高官4「貴様!!救い主様は陛下のご友人だぞ!?」

政務官「奴らは争いそのものを楽しむ感覚の持ち主だ!たとえ目的を遂げたとしてもおとなしく引き下がるとは思えん!
奴らを説得するのではなく奴らが納得せざるを得ない状況を作らねばならない!!」

ヒメ「(戻してやった貴族上がりの高官達も積極的に意見を出すようになった。
政務官の本格復帰で息を吹き返したんだろうが…さすが王国1の弁舌家だ。
周囲を煽り、明確な目的意識を促す力に長けている)」

ネバル「おいらの知り合いに美味しい大根を作ってる農家があるです!そこの大根おろしは絶品です!西の国の人達も飛び上がって和睦するです!!」ギャーギャー

ヒメ「(とりあえずあいつは後でぶっ飛ばすとして…良い流れに入ってきた。
これなら絶望的な状況を退ける上策が生まれるかもしれない)」

政務官「陛下の意見をお聞きしたい?」

ヒメ「そうだな…。奴らを強引に納得させるのには賛成だ。具体的な手段はないのか?」

政務官「西の国と平和協定加盟国の貿易が本格実施される前に各国との連携を強化するのが妥当かと!」

ヒメ「…それしかないよな。やっぱり?」

政務官「…不服かもしれませぬが、やはりあの方に頼るべきかと存じます」

ヒメ「そうだな。強化する前に…まず盟が生きていると証明するのが重要だ」

政務官「では…!」

ヒメ「あぁ、僕と東の国へ行ってくれるか?政務官!」

政務官「すぐに手配を!」

ネバル「はいはーい!おいらも行きたいです!」

ヒメ「どうせまたなんかやらかすからダメだ?」

ネバル「そんな!?」ガーン
75: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:08:20 ID:T0csLKu60c
〜〜〜1ヶ月後〜〜〜

―――東の国―――

ザッザッ ザッザッ

ワァァァァアアアア!!

パチパチ パチパチ

政務官「(なんという事だ…!城下のみらなず王宮内でさえ多大なる歓迎を受けている!?)」スタスタ

ネバル「あ、前にお話した貴族さんたちです!どーもー!」フリフリ

ヒメ「浮かれるな!バカ!」ポカッ

政務官「(…物珍しさに群がる他国民に歓迎を受けるのはある意味、当然だ。
しかし役人や騎士族までが微笑ましく迎え入れるとは…裏がないとすればヒメ様の人望は相当なものであると考えていい!)」

ブルードル「遂に答えを出したようだな!ヒメ君!!」

ヒメ「お待たせして申し訳ございません。ブルードル陛下」ザッ

ミリア「今日はずいぶん可愛らしいお衣装ですのね?」ニコニコ

ヒメ「ど、どうも…」ヒクヒク

政務官「好感触ですな?ヒメ様…!」コショコショ

ヒメ「(ブルードル陛下は変態じゃないと何度言えば…!こんな派手なヒラヒラした衣装、用意する必要ないんだよ…!)」イライラ

ネバル「孫の衣装です?」ニコニコ

ヒメ「(それを言うなら馬子にも衣装だ!こいつも結局、付いてきた…!)」イライラ

ブルードル「あぁ…緋色と琥珀の色彩…短い手足に余る袖…なんと眼福なものか!
あとで肖像を描かせてくれたまえ!彫像に彫り直して我が宮に飾りたい!」ハァハァ

ヒメ「(やっぱり変態かもしれない)」

ミリア「陛下、落ち着きましょ?」ポンポン

ブルードル「ごほんっ!むふんむふん!」ゲフンゲフン

ヒメ「ブルードル陛下、此度は何も衣装をお見せしに来たのではございません」

ブルードル「う、うむ!もちろんだとも!いやー私としたことが……」

ヒメ「大事な話をしに参りました…!」ジッ

ブルードル「」ピクッ
76: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:11:35 ID:T0csLKu60c
ヒメ「今一度、お頼み申し上げます!王国に力をお貸しください!!共に西の国を打倒しましょう!!」

ブルードル「おぉ…!こちらの条件を受け入れてくださるか!?」

ミリア「」クスクス

政務官「いえ、養子縁組に関しましてはお断りさせていただきたいと存じます!」

ブルードル「…そなたは?」

ヒメ「紹介が遅れました。私の後見人としてそばに仕えてくれている政務官です」

政務官「リルラと申します。どうかお見知り置きを?」

ブルードル「ふむ…まぁ非常識は自覚しておったが…それにしても悪い話ではなかったはずだ?」

ヒメ「…私が東の国の王位に乗り出してしまったら両国共に滅びます」

ブルードル「無用な心配だよ?」

ヒメ「……」

ブルードル「以前より私は君を見ていた。国交の場…協議の場…そして記念すべき少年王聖誕祭、正面に座して君との話を楽しんだ日だ?」

ヒメ「……」

ブルードル「私は認めておるよ。そうでなければ易々と王位など譲れん?」

宰相「我々、東国の高官一同も納得しております」ザッ

ヒメ「…いいえ、僕では無理です」

ブルードル「なぜ断定するのだね?分からないじゃないか?」

ヒメ「東の国は豊かで国土も整っており、民は窮する事なく穏やかに過ごしている。御しやすいと言えば…そうなのかもしれません」

政務官「ぎょ、御しやすいなどと…お言葉を選ばねば…!?」コショコショ

ヒメ「いい。この際、はっきりさせる必要がある!」

ブルードル「構わんよ。続けてくれたまえ…」
77: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:14:01 ID:T0csLKu60c
ヒメ「富に溢れ、文明は広まり、大勢の人が行き交う城下の景色は実に調和が取れていました。
しかしそれらの平穏な生活は賢い王族の下にあると彼らも理解しているはず…」

ブルードル「褒められてしまった…!」ポッ

ミリア「はい、よしよし?良かったですわねー?」ナデナデ

ヒメ「…いかにお世継ぎがおられないとはいえ、余所の国からやって来た者を民は受け入れられないでしょう。それほどに陛下の威厳は深い?」

ブルードル「ならば民に示せばよい。君にはその力がある?」

ヒメ「不可能です!」キッパリ

ブルードル「ほ!?」ビクッ

ヒメ「今の統治に満足している彼らには私の成す、いかなる変化も煙たく感じるでしょう!
時には民に無理を強いる場面も先々に多く出てきます!そうなった時、彼らは必ずこう囁くはずです!」

ヒメ「『今の王ではダメだ』『前の王はよかった』『正統な王でもないのになぜ従うのか』と…」

宰相「……!」ググッ

ヒメ「此度の件にしても…西の国と衝突間近にある状況下で決戦が他の王による決定であれば誰も争いには向かえない!」

ヒメ「東の国は貴方の人望に支えられているのです!なれば国民も役人達も…貴方による統治を望まれる!!」

宰相「……!」プルプル

ブルードル「…私はただの傀儡だよ。役を演じて客を喜ばすのは人形だが演目を組み立て、糸に括って操るのは有能な演出家だ?どうだね、宰相?」

宰相「へ、陛下…」

ヒメ「確かにそうかもしれません。ですがそこに揺るぎない説得力を産み出すのは他ならぬ演者自身です!」

ブルードル「私はただ妃とのほほんと微笑ましく贅沢に溺れた愚王だ。
君のように自ら何かを産み出そうとする行動力も能もない」

ブルードル「そう…何も産まず、何も守れず、ただ面白可笑しく生き永らえただけだ」フッ

ミリア「陛下…」ポンポン

ヒメ「そこの宰相は貴方を操っている訳じゃない!貴方の人格に合った政治を成しているだけだ!」

ブルードル「私に合った…?」

宰相「!?」
78: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:17:29 ID:YUaqlqK50k
ヒメ「その者は貴方が望まれる政治を実行する為に尽くしているのです!」

ブルードル「……」

ヒメ「でなければ子の無い王に野心無くして付き従う利はない!
西の国との貿易を断るといった自滅行為はありえない!
なにより他国民に王位を譲るなど…賛同出来る筈がない!!」

宰相「……!」パチクリ

ブルードル「ふ…フホホ!君は…宰相の思惑に裏があるとは考えないのか?」

ヒメ「それはありえません!」

ブルードル「ホ?」

ヒメ「万人に愛される貴方だからこそ東の国は成り立っているのです!!」

ブルードル「やはり…聡明だよ、君は?」ニコッ

ヒメ「……!」
79: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:18:35 ID:T0csLKu60c
ブルードル「よく尽くしてくれているよ。彼は…?」

宰相「くっ……」ウルッ

ブルードル「だが宰相も私も年寄りだ。せいぜい10年……もう長くはないだろう。
しかし貴族や王家直属の家臣達は…有能かもしれんが王の器かと問われれば…なんとも?」

ブルードル「となれば…せめてこの眼で確かめた上で信を置ける世継ぎが欲しい」

政務官「…そ、それでヒメ様に白羽の矢が立った訳か」

ネバル「陛下すごいです!」

ブルードル「フホホ!お前があと20若ければ…のう?宰相?」ニコッ

宰相「ご冗談を…!?」

政務官「…なぜ子を成さなかったのです?」

ヒメ「成さなかったんじゃない。成せなかったんだ」

政務官「存じ上げております。しかし王の血を残すは至上の使命…最も真剣に取り組むべきはそこにあったのでは?」

ブルードル「フホホ…耳の痛い話だ…?」

ミリア「…話してあげましょうよ?」

ブルードル「よいのか?」

ミリア「えぇ、ここまで言ってくれたのですから…全てをさらけ出してしまいましょう?」

ブルードル「うむ…聞いてくれるかな?王国のお客人よ?」

政務官「はっ!」

ネバル「はっ!」

ヒメ「…お願いします!」
80: 名無しさん@読者の声:2015/8/14(金) 21:21:33 ID:M3gqXJXWA6
初めてリアタイ遭遇してしまった…
支援せねばなるまいっ!!
CCCCCCCCCCCC
81: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:21:34 ID:YUaqlqK50k
〜〜〜回想(ブルードル)〜〜〜

東の高官「…報告します!拐われた子らの所在、生死共に不明!派遣した300の調査隊も同様です!」

ブルードル「…分かった」

東の高官「引き続き調査隊を派遣しますか!?」

ブルードル「…宰相、どうだろうか?」

宰相「お気持ちは重々…ですがこれ以上は…犠牲を増やすばかりやもしれませぬ」

ブルードル「西の皇帝に宛てた抗議文はどうなった?」

東の高官「…早馬にて送らせたのですが返答はおろか抗議文を届けた伝者も帰って参りません」

宰相「向こうは話し合う気もないようですな。西の地を踏めば死に直結する…。もはや立て続けに抗議をするのも危険過ぎます」

ブルードル「…そうか。中止しろ」

東の高官「よろしいのですか…!?」

ブルードル「明日、遺族を城に招いておくれ?城下の民には私が直接、顔を見せて説明しよう」

東の高官「へ、陛下自らがそこまでなさらずとも!」

ブルードル「…私はこういう時、どういった言葉をかけてやればよいか知らぬ。
宰相よ、なんと言えば遺族の傷に響かせず僅かでも慰められるだろうか?」

宰相「必要ありません」

ブルードル「?」

宰相「王の言葉には光が宿っております。陛下の心の赴くまま遺族に語りかけて差し上げればよろしい」

ブルードル「フホホ…何が光なものか?何よりも失ってはならぬ純然たる希望の欠片を手放した愚か者が…?」

宰相「自棄になりなさるな!陛下がそれでは失われた命どころか残された命までもが浮かばれませぬぞ!」

ブルードル「フホホ…悲しみを癒す間もなく他者を労らねばならぬか。王とは難儀だな…」
82: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:24:08 ID:YUaqlqK50k
宰相「史実・歴王典にあるように…嘆きを安らがせ、暴走を諌め、戸惑いは導き、悲哀には励まし、喜楽あらば共にする。王とは陰りなき永遠の光と説きます」

ブルードル「王とは光……なるほど、偉大なる先人方はやはり美しい教えを遺される?」

ブルードル「だが子のない私達には…この国の今を楽しみ、未来を待ちわびる無数の瞳は…一点の曇り無く輝ける存在なのだ…!」ググッ

東の高官「」ビクッ

ブルードル「王であれ、使命であれ…あと20年保つか分からぬ…老い先短い微かな灯し火…!
いかに貧しかろうと…卑屈を強いられようと…身分が低かろうと……80年、100年先の未来を生きたかもしれない…眩い命!どちらが優先されて然るべきか!?」ウルッ

宰相「……」

ブルードル「明日、遺族には救出不可能として調査隊を撤退させる旨をしかと伝えなくてはならぬ。
すなわち愛すべき子らを見捨てると断じた王の慰めに耳を傾けさせねばならぬのだ…!」

ブルードル「分からぬ…分からぬよ。宰相…。
私が遺族であったなら…王の慰めも豪奢な宮の煌めきもひしめく屈強な護衛、家臣らさえも…。
王家の栄光の全てが憎しみを増幅させ、拐われた民に射し込まぬ偽りの光を決して許しはしないだろう…!」

宰相「そうであっても…陰りを悟らせてはなりませぬ」

ブルードル「ぐぅっ……」ググッ

宰相「東の地を照らす大いなる光が褪せてはならぬのです!」

ブルードル「…ふ、フホホ……光…」
83: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:26:52 ID:T0csLKu60c
〜〜〜〜〜〜

ブルードル「苦しゅうない。一同、面を上げられよ」

遺族's「」スッ

ブルードル「……」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

ブルードル「(はかり知れん…)」

宰相「……」

遺族's「」ジーッ

ブルードル「(…この感情はとても受け止めきれるものではない。複雑だ…あまりにも……)」ゴクリ

宰相「陛下、ご説明を」

ブルードル「うむ…。此度の拉致騒動だが…」

遺族's「!!!!」ギンッ

ブルードル「…すまぬ」ペコッ

遺族's「!!!!!」カッ

ブルードル「余計な言葉は要るまい…。全ては王である私の責任だ。力不足でまことに申し訳ない」

遺族's「」ブルブル

ブルードル「(…複雑な感情を受け入れられないのは彼らも同じか)」

ウオオオオオオオオ!!!

ガタンッ ドガッ ガンッ

遺族1「※★→】゙}@△#!!!」ギャーギャー

遺族2「ふごぉおおお!!むごぉぉふぉっふぉっ!!」ポロポロ

遺族3「メイ…ヒヨ……」ボーッ

遺族4「返せぇエエエエ!!!返せヨォォオオ!!?」ガァーッ
84: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:29:07 ID:T0csLKu60c
宰相「鎮まれ!王の御前であるぞ!?」

遺族5「関係あるかぁ!?」ダンッ

宰相「なっ…!?」

遺族6「私達の子供は…どうなってるの!?生きてるの!?死んでるの!?」

遺族7「西の国がやったんだろ!!分かっててどうして何もしないんだ!?」

宰相「…ま、まだそうと決まった訳では!」

遺族8「西の軍旗を掲げた兵が迫ってくるのをこの目で見たんだ!?」

遺族9「奴ら、わざと俺達に旗を振ってた!!混乱したのを見計らってはぐれた子供らを最初から街に仕込んでた間者を使って拐わせたんだ!?」

宰相「さ、幸い街自体の被害は少ない!まずは探りを入れて……」

遺族10「街が無事なら、それでいいのか!?そこに住まう民の被害など…どうでもいいと言うのか!?」

遺族11「どうなんだ、陛下!?」

ブルードル「(なんとも言えぬ、な…)」

宰相「」ギャーギャー

遺族12「おぉぉおおおお!!おおおお!!!」ポロポロ

遺族13「許さない!!許さなぁぁぁい!!!」ポロポロ

遺族14「あっ…ひ……あぁぁああああ!!!」ワシャワシャ

ブルードル「(かける言葉がない…。予想はしていたが…ここまでとは)」
85: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:31:20 ID:YUaqlqK50k
宰相「これ以上、騒ぎになるようなら衛兵に取り押さえさせるぞ!?」

ギャーギャー ギャーギャー

ブルードル「(打ち合わせた通り、宰相が傍らで憎まれ役を買って出てくれているが…そんな易い感情ではない)」

ブルードル「(憤怒…悲哀…喪失…諦め…孤独…希望…絶望……私の語彙力では語りきれない)」

遺族15「ふぇっ…ぇっ…ぇ……いき…できな…」ドクンドクン

遺族16「考えたくない…信じない…そんなはずない…夢…そう、これは悪い夢……」ブツブツ

ブルードル「(たった120名の遺族が向ける感情は万にも及ぶ…。
果てしない怒りと悲しみは紡がれていき…やがて私は民を裏切った王として世に知れ渡るだろう)」

ブルードル「(ならばもう…光だなどと…くだらない)」スクッ

宰相「お前たち!しずま……へ、陛下!?」

遺族17「…立った」ジーッ

遺族18「陛下が…立った!」ジーッ

ブルードル「そなたらの子は取り戻せぬ。西の国から無事に奪い返すだけの力が今の我が軍にはない」

遺族's「あぁ…!?」ビキビキィッ

ブルードル「…よって西の国に深く踏みいるのは危険と判断し、調査も終了。
抗議も中止し、この件に関する活動を全面停止する!」

遺族19「冗談ですよね…?」ヒクヒク

ブルードル「冗談ではない」

遺族20「こ、この…!!」

遺族21「どう責任を取るんだ!?」

宰相「責任だと?貴様、平民の分際で……」

ブルードル「よい!」

宰相「は…!?」

ブルードル「もうよいのだ、宰相…悪を演じるのは」

宰相「陛下…?」

ブルードル「暗闇に佇む者らに強い光を浴びせかけても…目を焦がし、光を失わせるやもしれぬ」

宰相「…お待ちください!何を言うおつもりですか!?」
86: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:37:00 ID:T0csLKu60c
ギャーギャー ギャーギャー

ブルードル「聞け!皆の者!」

宰相「……」

ブルードル「私は決して西の国を許しはしない!」

遺族's「」ピタッ

ブルードル「時を待て!いつの日か必ずや…皆の無念を晴らしてみせよう!!」

遺族21「どの口が言うんだ!?」

ブルードル「…それまで皆に深く刻まれた傷を……我が国が受けた屈辱を…未来永劫、忘れさせぬ為にも城下に拐われた子らの彫像を建てる!!」

宰相「」ビクビクゥッ

遺族's「」ギョギョッ

ブルードル「決して忘れるな!!決して許すな!!決して諦めるな!!
我々は一蓮托生、血の通わぬ悪逆非道な野蛮国に報復を誓いし同士なり!!」

遺族's「お、お、おぉぉぉ…!?」ガクガク

宰相「陛下!!今すぐ撤回なさいませ!?」アセアセ

ブルードル「……」

宰相「陛下ぁっ!!」

ブルードル「…撤回はせん!!」カッ

宰相「(い、いかん!王族の権威が…光が……闇に支配されてしまう…!?)」

ブルードル「そなたらはまさしく…光を失い、闇に囚われておる。
無根拠に諭す救いの言葉で照らしてみせたところで影はいっそう深まるばかりだろう」

ブルードル「しからば闇の中にあればよい。絶望の淵にて希望を見出だすのだ」

宰相「なりません!!なりませんぞ!?」ザッ

ブルードル「私には彼らの意を汲んでやる義務がある」

宰相「お、おやめください!?それだけは…絶対に…!?」

ザワザワ ザワザワ
87: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:39:19 ID:T0csLKu60c
ブルードル「血を分けた愛し子を失う痛みは…私も知るところだ!!」ギリッ

遺族21「」ビクッ

遺族22「そ、そんなの…分かる訳ないじゃない?」カタカタ

遺族23「こ、国王様は…子などおられないでしょう?」ワナワナ

ブルードル「いたとも!最愛の我が子が…私は今も…愛している!!」プルプル

宰相「衛兵!陛下はお疲れのご様子!奥に連れ立って休ませよ!?」

東の衛兵1「はっ!!」

ブルードル「私は疲れてなどいない!!王の身に触れる者あらば断じて許さぬ!!」カッ

東の衛兵's「っ…」タジッ

ブルードル「我が妻ミリアは3度、子を宿し、3人の子らは光を浴びる事なく世の涯へと流れた!!」

ブルードル「第一子の名はサリアドル、第二子の名はヨードル、第三子の名はルクアドル!
性別も分からず王位を継いだかも分からぬが…紛れもなく私とミリアの子だ!!」

遺族's「ひっ…ひっ……」

衛兵's「ま、まことなのか…?」ヒソヒソ

宰相「あ、あぁぁあ……」ヘナヘナ

ヒエエエエエエエエエエエエ!!!

ブルードル「案ずるな!遺族達よ…いや、我が同士よ!!私はお前達を見捨てはせんぞ!!」

遺族's「」パァァ

ブルードル「その日が来るまで復讐の剣を研ぎ澄ませ!!お前達と戦える日を余は楽しみにしておるぞ!?」

ウオオオオオオオオ!! ウオオオオオオオオ!!

バンザーイ!! バンザーイ!!

…………………
88: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:41:26 ID:YUaqlqK50k
政務官「城外に飾られた少年少女の石像は…遺児を祀り偲ぶものだったのか」ワナワナ

ネバル「3回も流産しちゃった…ですか?」ガタガタ

ブルードル「うむ…。もはや妃の身に負担はかけられなかったので…私は子を諦めた」

ミリア「…天に与えられた3人の命を地上へと放ってあげられなかった私の責任ですわ?」

政務官「…で、でしたら別の宮女に役目を代わらせれば?」

ミリア「私もそのように勧めたのですが…」

ブルードル「私は我が儘でね…」

政務官「?」

ブルードル「愛した妻との子でなければ嫌だったのだよ」

政務官「い、嫌だった…!?」

ネバル「かっちょいいです!よっ!王様!?」ヒューヒュー

ブルードル「フホホ!また褒められてしまった?」テレッ

ミリア「ねー?よしよし?私も愛してますよー?」ナデナデ

ブルードル「私もさ…?」ジッ

ミリア「……」ジッ

ブルードル「んーっ…」スッ

ミリア「んーっ…」スッ

宰相「うぉっほん!!」

ブルードル&ミリア「」ビクッ

宰相「お客様の御前ではしたないマネはおよしください!」

ブルードル「す、すまないな?」テレッ

ミリア「……」ポッ

ネバル「ひゅーひゅー!アツアツですー!」

政務官「貴様は少し黙っていろ!」アセアセ

ヒメ「っ…!」ドキドキ
89: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:43:07 ID:T0csLKu60c
政務官「宰相殿は何も言わなかったのですか?」

宰相「国王にその気がないのならどうにもなるまい…」

ブルードル「フホホ!よく言うな?ある時期は毎晩のように我が宮に女をあてがっておいて?」

ミリア「あらあらまぁ?宰相殿も頑張ってらしたのね?」ニコニコ

宰相「そ、それはどうかご内密にと!?」アセアセ

ヒメ「……」

ネバル「そういえばうちの陛下はどうなんです?許嫁とかいるですか?」ヒソヒソ

政務官「…私や大臣ら反王族勢力で固められた頃は王族にあらゆる制限を課していたのでな。
継承の儀に迫るまで何者も近付けぬようにしていたのだ。
その上、陛下自身も人付き合いを嫌っていて深い仲に至った相手は今まで一人もいない…」ヒソヒソ

ネバル「それって…うちの王様もまずいんじゃ…?」ヒソヒソ

政務官「そうだな。まだ小さいからと考えていたが…深刻化する前に対策を講じねばならないかもな…?」ヒソヒソ

ヒメ「…おまえら、なんの話をしてるんだ?」ジロッ

政務官「…いえ」

ネバル「な、なんでもないですー!」アタフタ

ブルードル「フホホ!」

ミリア「」クスクス
90: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/14(金) 21:45:34 ID:YUaqlqK50k
ヒメ「…西の国に対する遺恨、陛下と妃様の経緯(※いきさつ)、共に包み隠さず教えてくださり、ありがとうございます。
改めて口に出すのは心苦しいものと思われますが…おかげでこちらも本心から話を進められます」

ブルードル「そうか。話した甲斐があったよ」ニコニコ

ヒメ「私からも改めてお願い申し上げます。養子縁組は断らせてください!」

ブルードル「……」

ヒメ「そちらの事情を考慮しても…やはり明確に断ち切らなければならない選択肢であると見ます!」

ブルードル「聞かせてくれたまえ…」

ヒメ「東の国と王国は隣接地に境があり、問題化した事案や衝突に至った経歴もありません。
もしも国土を繋げるとして弊害は少ないように感じられますが…それでも両国には重大な不安要素があります」

ブルードル「…分かっているとも?」

ヒメ「!」ピクッ

ネバル「へ?なんです?不安要素って?」

政務官「…黙れ。お二方の話に集中しろ」

宰相「……」

ミリア「」ニコニコ

ブルードル「子を生むべきか、だね?」

ヒメ「…はい!」

ネバル「???」
973.18 KBytes

名前:
sage:


[1] 1- [2] [3]最10

[4]最25 [5]最50 [6]最75

[*]前20 [0]戻る [#]次20

うpろだ
スレ機能】【顔文字