http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-10
1スレ(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1385288769/1-10
2スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1416136192/1-10
3スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】)
あらすじはそれぞれの1参照(考えるのがめんどくかったんです。ごめんなさい)
>>2から本編になります!
616: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/19(金) 23:13:33 ID:m4Uz9RrgRI
―――廃屋―――
クンバヤ「悪いが椅子はこれ一つでな。ゴザ敷いてあるから床に座ってな」ストッ
ヒメ「うっ…固い…」ザリッ
宣教師「けほっ…ほ、埃が……」ゴホゴホ
団長「灯りもないのか…?暗くてかなわんぞ…?」
クンバヤ「何度も言わせんなよ。蝋燭も敷き床も椅子もねぇ。屋根もねぇし壁は穴だらけだ?
あんたらにとっちゃあって当然なんだろうが…俺達にとっちゃこれが当たり前だ?」
ヒメ「二人とも…我慢しろ」
宣教師「…はい」
団長「はっ…」
クンバヤ「ま、水くらいは出してやる?喉が渇いたら、そこの湧き水に口付けて飲め?」クイッ
宣教師「湧き水…?」チラッ
ヒメ「(割れた地面に小さな水溜まりがあるだけじゃないか…)」
団長「(あ、あんな泥水を飲んだら腹を下すぞ…!?)」
クンバヤ「糞や小便はそこの壺にしろ。間違っても湧き水にすんじゃねぇぞ?」
ヒメ「(き、気分が悪くなってきた…)」サァァ
宣教師「(…恵まれた日々への感謝が足りなかったですね。もっとこういった環境に目を向けていかなければ…)」
団長「(噂には聞いておったが…こんな場所に陛下をいつまでも置いておけん!)」
617: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/19(金) 23:17:20 ID:m4Uz9RrgRI
クンバヤ「さて、改めて自己紹介しようか。俺はクンバヤ。いわゆるレジスタンスの一員だ」
ヒメ「レジスタンスって、さっき言ってた…?」
クンバヤ「そう。イアマンだ?」ニヤリ
ヒメ「…一時期、波紋を呼んでた女帝暗殺を企てる過激派集団か」
クンバヤ「ほう?知っててくれたのかい?王様の耳に入ってたなんて光栄だね?」
ヒメ「結果的に戦争を後押しした一因だからな。気にも留めるよ」
クンバヤ「そうかい。そりゃ悪いことをしたな」
ヒメ「…そのレジスタンスが僕らになんの用だ?」
クンバヤ「用って程でもねぇが…王国軍の侵略を邪魔してやろうと乗り込んでみたら、たまたまあんたらがいてな?」
ヒメ「それで…?」
クンバヤ「事情は知らんが仲間割れしてんだろう?こりゃうまくいきゃ…俺達に運が傾きそうだ?」ニヤリ
団長「……!」バッ
クンバヤ「おぉ待て待て!早とちりすんな?」
団長「このお方をどなたと心得るか!!貴様らごときに易々と利用させてたまるか!?」
ヒメ「よせ!団長!!」サッ
団長「!?」
ヒメ「すまなかったな…。続けてくれ」
クンバヤ「…どうやら、あんたは話せる性格みたいだな?」
ヒメ「世辞はいい。余さず事情を教えてくれ」
クンバヤ「……」
618: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/19(金) 23:27:18 ID:m4Uz9RrgRI
クンバヤ「ま、ざっくり言うとだな…俺達は重大な使命を抱えて地道に戦ってきたんだが今は窮地に立たされていると」
ヒメ「…王国軍の侵攻か?」
クンバヤ「それもそうだが…根本的な問題だ」
ヒメ「?」
クンバヤ「レジスタンスはもう残ってない」
ヒメ「壊滅させられたのか?」
クンバヤ「…そうでもないんだが、あーややこしいな」
ヒメ「ちゃんと説明してくれないと分からないぞ。全滅したなら、ここにいる奴らはなんなんだ?」
クンバヤ「あいつらは…生き残ったレジスタンスと西軍の残兵、侵略される前にいち早く救助した領民の寄せ集めだ」
団長「なぜ敵対するレジスタンスと西軍が…?」
宣教師「何があったんですか…?」
クンバヤ「実は連合軍との戦争の真っ只中に…全区域に召集が掛かったんだ。
イアマン総出で主力軍の出払った帝都を襲撃し、女帝ファルージャを討ち取れとな」
団長「っ…どうなったのだ?」ゴクリ
クンバヤ「恐ろしいほどうまくいったよ。都はものの数時間であっさり落ちた」
宣教師「で、ではなぜファルージャが生きているのです?」
クンバヤ「…城に雪崩れ込んだ時、展望台からとてつもない美女が現れて…皆、目を奪われて一瞬でピタリと止まっちまった」
クンバヤ「その美女はもちろんファルージャだったんだが…あの女が何も言わず俺達に視線を落として手を振ったらだ?
まるで帝都全体を揺るがすんじゃないかってくらいの歓声と地響きが城を包んだ!」
クンバヤ「そして誰かが叫び始めた。あれは女神だと」
ヒメ&団長「……」
クンバヤ「……どうした?」
ヒメ「いや、途中からなんの話を聞かされてるのか分からなくなって…」シラー
クンバヤ「…真面目な話だぞ」
ヒメ「ご、ごめん」
シーン
619: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/19(金) 23:30:29 ID:m4Uz9RrgRI
ヒメ「えっと…つ、つまりファルージャに腑抜けて負けたのか?」
宣教師「はしたない…」ジトッ
クンバヤ「分かってないな!お前達もあの女を見れば頷ける筈だ!」
宣教師「実際に会いましたけど…そ、そんな大したこと…な、なかった、ですよ?」モジモジ
クンバヤ「嘘つけ!?体が反応してるじゃないか!?」
宣教師「っ…!」カァァ
ヒメ「そ、そんなすごいのか?」
クンバヤ「あぁ、あれはまさしく"魔性"だ!この世に魔法なんて物があるんだとしたら…あの女は色気を操る魔女に違いない!!」
ヒメ「……あ、うん。そうなんだ」シラー
クンバヤ「俺も危うく落とされかけたが理性でなんとか持ちこたえた…」
クンバヤ「だがイアマンは分解し、とても革命を続けられるような状態じゃなくなってな。
ファルージャに乗せられた大勢の仲間を残して俺と一部のレジスタンスは帝都を脱出した」
ヒメ「じゃあその後は…」
クンバヤ「そこからだ。話の肝は!」
ヒメ「?」
ワァァァァァァァァァアアアアア!!!!
ヒメ&団長&宣教師「」ビクビクゥゥ
クンバヤ「ちょうどいい…そこで待ってな!」スクッ
ヒメ「あ、あぁ…」
620: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/19(金) 23:32:43 ID:m4Uz9RrgRI
―――廃村―――
賊徒3「見ろ!ドレッドの旦那がまたやってくれたぜ!」ジャラジャラ
賊徒4「侵略者共を蹴散らして武器やら馬を根こそぎ奪ってやったぜ!」ガラガラ
賊徒5「酒と食糧もあるぞぉ!!今夜は宴だぁ!!」ゲラゲラ
ワラワラ ワラワラ
ドレッド「へっ…普段は死んだようなツラして見向きもしねぇのにイイ時ばっか擦り寄りやがって?」パカラッパカラッ
クンバヤ「ドレッドぉ!!」
ドレッド「あぁん…!?」ギロッ
クンバヤ「…いろいろと話してぇ事がある。来な?」クイッ
ドレッド「……先に始めろ!」
賊徒's「ヒャッホーイ!!」ヒューヒュー
ドレッド「……」ジッ
クンバヤ「……」ジッ
賊徒1「火ぃ起こせ!!水を溜めろ!!」
賊徒2「ついでにそこらの野犬を捕まえてこい!今日はめいっぱい食うぞぉ!!」
ワイワイガヤガヤ
621: 投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2016/2/19(金) 23:37:58 ID:m4Uz9RrgRI
―――廃屋―――
ドレッド「よっこらしょと…あぁ〜くたびれたぜ?」ドスンッ
ヒメ「」ジッ
ドレッド「ちっ!相変わらずケツ痛めるな!ゴザ敷いてる意味あんのか…ってか砂利被ってんじゃねぇか!洗えや!?」ブツブツ
クンバヤ「文句の多い野郎だな…。拾ってやっただけありがたく思え?」
ドレッド「なぁ〜に抜かしやがる?誰のおかげで、ここまで勢力伸ばしたと思ってんだ?」
クンバヤ「はぁ…?」
ドレッド「てめぇら素人だけじゃ何も出来やしねぇだろう?俺様が指揮してやったから……」
クンバヤ「んだぁおらぁ!!」ガタッ
ドレッド「やんのかぁ!?」ガタッ
団長「おい!貴様ら……」
ヒメ「座れ!!」カッ
クンバヤ&ドレッド「」ピタッ
ヒメ「もう一度言うぞ。座れ」
クンバヤ「あんた…口の聞き方ってぇのを覚えた方がいい?屍肉になりたくなきゃな?」ギロッ
団長「なにを貴様ぁ!?」ダンッ
ドレッド「へっ!」ドスンッ
クンバヤ「あ?」
ドレッド「座ろうぜ。しらけちまった?」
クンバヤ「ちっ!」ドスンッ
団長「(た、立ち上がったもののやり場がない…)」
ヒメ「なにしてんだ?おまえも座れよ?」
団長「は、はい…」スッ
ドレッド「…ククッ!何から話しゃいいもんか」
ヒメ「決まってるだろ。知っていること全てだ」
ドレッド「」ニヤリ
622: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/26(金) 12:39:28 ID:NA5BbxDVyU
遅蒔きながらランキング1位ありがとうございました!
すみません、更新と同時にお礼しようと考えてたのですが全然更新できないんでお礼だけ書いておきます…
投票してくださった皆様!本当にありがとうございました!
自分もすでに投票しましたが次のランキング結果が気になりますね!
はたして栄冠は誰の手に!
では乱文失礼しました!お目汚しすみません!
623: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:32:22 ID:7ZmvR.FKR.
ドレッド「その前に聞きてぇことがある?」
ヒメ「なんだ?」
ドレッド「国王陛下ともあろうお方が…あんなとこで何してたんだ?」
ヒメ「あぁ…僕達はフィクサーの暴挙を止める為、貧民に紛れて帝都に侵入する手筈だったんだ」
ドレッド「そうじゃねぇだろ?」
ヒメ「?」
ドレッド「なぜあんた自らが危険を犯してまでやってきたのか…。その理由を聞いてんだ?」
ヒメ「……」
ドレッド「それにあんた?」ビッ
宣教師「わ、私…ですか?」
ドレッド「教団の司祭だよな?有名人だから一目で分かったぜ?」
クンバヤ「ほ〜?またでけぇ宗派の……にしちゃ、ずいぶんとお若いね?」ジッ
宣教師「は、はぁ…それがなにか?」オロオロ
ヒメ「…なんでおまえがこいつを知ってるんだ?西の国の人間じゃないのか?」
ドレッド「へっ…お偉方にゃ俺の存在なんざ見えちゃねぇか?」
団長「何者だ、貴様…!?」
ドレッド「俺はドレッド。元王国軍長さ?」ニヤリ
ヒメ「なに…!?」
宣教師「王国軍…!?」
団長「軍長だと…!?」
624: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:34:05 ID:7ZmvR.FKR.
団長「そ、それが本当だとするなら貴殿こそ、なぜこのような場所におるのだ!?」
ドレッド「俺にゃどうも奴のやり方が気に食わなくてな。軍を離脱してやったのさ?」
団長「離脱だと…?」
ドレッド「まぁその代償といっちゃなんだが…こんな土産を貰っちまったがな?」バッ
ヒメ「……!?」
宣教師「!」プイッ
団長「刺されたのか…」
ドレッド「背中から見事に貫通したが…腕のいい医術師に救われて、なんとか一命を取りとめる事ができた?」
宣教師「医術師…?」
ドレッド「そいつはクーペって言うんだが…あんたの知り合いだと聞いてるぜ?」
宣教師「クーペさんが!?」
団長「誰だ?」
宣教師「以前に聖堂で預かっていたホビットの方です!クーペさんもここにいらっしゃるんですか!?」
ドレッド「クーペなら外で怪我人の手当てを施してるぜ?会いたいなら行ってくるといい?」
宣教師「いいですか…?」チラッ
ヒメ「いいよ。行ってこい」
宣教師「ありがとうございます!では失礼します!」スクッ
ガチャッ バタンッ
625: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:36:17 ID:7ZmvR.FKR.
ドレッド「さて、と…さっきの質問に答えてもらおうか?」
ヒメ「僕がここに来たのは……」
ドレッド「ぅおい!待ちな?」バッ
ヒメ「なんだよ…?」
ドレッド「適当な事は抜かすなよ?発言一つであんたの置かれる立場も変わるからな?」ジッ
ヒメ「……」
団長「黙って聞いておれば…元は陛下に仕える身でありながら、なんと無礼な…!?」
ドレッド「へっ…俺はもう王国軍でもなんでもねぇ。国王陛下の御前だろうが膝は崩すし丁寧に喋ってやる気もねぇよ?」
団長「なにを…!?」ビキッ
ヒメ「」サッ
団長「なっ…陛下…?」タジッ
ドレッド「覚悟は定まったか?」ニヤニヤ
ヒメ「別に覚悟するような事じゃない。ありのままを話すだけだ」
ドレッド「ほーう…?」
ヒメ「僕がここに来たのはフィクサーを止める為だ」
ドレッド「それはさっきも聞いたぜ…?俺が聞いてんのは、なぜ国王のあんたが……」
ヒメ「国王だからなんだ?」
ドレッド「はぁ…?」
ヒメ「誰かがやらなきゃいけないなら、それは誰であってもいい筈だ」
クンバヤ「へぇ…?」ニィィッ
ドレッド「だからよ…。そりゃ王様の役目じゃねぇだろ?配下にやらせときゃ……」
ヒメ「そんなの知るか?」
ドレッド「あ…?」
ヒメ「おまえの思う国王像なんかどうでもいい。どうするかを決めるのは僕だ」
ドレッド「……」
クンバヤ「ハハハ……たまげたね、こりゃ?」ニヤニヤ
626: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:37:40 ID:YSi2nOfsJM
ヒメ「納得いったか?」
ドレッド「いくもんかよ?なんの理由にもなっちゃいねぇ?」
ヒメ「どう言われても他に思い当たる理由なんかないぞ」
ドレッド「じゃあなにか?ガキらしく正義の味方ごっこしてますってか?」
団長「その言いぐさはなかろう…!侮辱にも程があるぞ!?」
ドレッド「どうにでも受け取れよ?」
団長「たたっ切るぞ!青二才がぁ!?」イラァッ
ドレッド「よしな?年寄りの冷や水だぜ?」
団長「よかろう…!素っ首、跳ね落としてくれる…!?」ビキッビキィッ
ヒメ「…団長」
団長「はっ…!ただちに!」
ヒメ「話の邪魔」バッサリ
団長「なぬっ!?」ガガガガガーーーン
クンバヤ「ぶふっ!」ニヤニヤ
ドレッド「くっ…くっくっく…!」プルプル
団長「笑うな、貴様らぁ!?」ガァーッ
627: "クンバヤ"と"クソバカ"って似てますね ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:39:37 ID:7ZmvR.FKR.
ヒメ「なにがそんなに気に入らないんだ?僕がいて困る事でもあるのか?」
ドレッド「そうじゃねぇがよ…。多少なりと見ておきてぇだろ?」
ヒメ「なにを?」
クンバヤ「あんたってぇ存在に値打ちがあるのかどうか、だ?」
ヒメ「値打ち…?」
クンバヤ「何をしようにも足手まといは増やしたかねぇのさ?」
ヒメ「心外だな…」
クンバヤ「温室育ちのお坊っちゃんには分からねぇだろうが…俺達は革命を起こそうとしてんだ。それこそ命懸けでな?」
ドレッド「腸煮えくり返るぐれぇムカつく野郎だがよ。
はっきし言ってフィクサーは歴代王国軍長と並べても異彩を放つ策士家だ。用心に越したこたぁねぇ?」
クンバヤ「そいつのことはよく知らねぇが…加えてウチの女王も待ち受けてっからな」
ドレッド「へっ…魔性のファルージャか。たかが女だろ?」
クンバヤ「バカが……俺達、西の国民がとことん恐れて逆らえなかった皇帝一族をあっさりと葬っちまった、とんでもねぇ女だぞ?
あれに勝る悪女は後にも先にも現れねぇと言い切れる?」
ドレッド「けっ?どーだかな?」
ヒメ「……」
クンバヤ「王様さんよ…?あんたは本気で奴らを止められると踏んで、この国に来たのかい?」
ドレッド「甘い考えでやらかしたってんなら…そりゃ勇気でもなんでもねぇぞ?無謀なだけのクソバカだ?」
ヒメ「そうだな…」
ドレッド&クンバヤ「」ジッ
団長「」ズーン
ヒメ「団長、気が散るからへこむのやめろ」
団長「(落ち込む事すら禁止された……だと…?)」ピシィィッ
628: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:42:15 ID:7ZmvR.FKR.
ヒメ「おまえらの言い分は分かったよ。でも僕だって命懸けなのは変わらない」
ドレッド「口じゃなんとでも言えんだよ?」
クンバヤ「そのとーり?なんにしたって、やることやんなきゃダメなのよ?」
ヒメ「正直、勝算の少ない賭けに出た自覚はあった」
ドレッド「だろうな?」
クンバヤ「帝都内部の構図も知らねぇおたくらが少数で乗り込んだって、なんも出来やしないだろうよ?」
ヒメ「けどそうするしかなかったんだ」
クンバヤ「ほー?と言うと?」
ヒメ「この戦いはあまりにも時間が無さすぎる。短期決戦に持ち込むしか道はない」
ドレッド「……」
ヒメ「僕の考えでは婚礼を目処に決着を付けるつもりだったけど…予想外の事態に見舞われて全部、水の泡になってしまった」
クンバヤ「水の泡、ね…。なぜそう思うんだい?」
ヒメ「3日もすれば貧民街の騒動が帝都に届き、フィクサーは予定を早めるだろう。
そして奴が皇位に着いたら本格的に国家として始動し、外交を開けるようになる…」
クンバヤ「そうすっと、どうなるんだい?」
ヒメ「この戦争を止める手立ては無くなり、王国と結託した連盟国はまとめて滅ぼされるだろうな」
団長「っ…!?」ゾクッ
クンバヤ「戦うってぇ手は?」
ヒメ「こんな烏合の衆じゃ無理だ」
クンバヤ「おー?言ってくれるね?」
ヒメ「事実だからな」
ドレッド「要約すりゃ…無謀な蛮勇に駈られてきたんじゃねぇと?」
ヒメ「」コクッ
629: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:46:44 ID:YSi2nOfsJM
ドレッド「だがそれだけじゃ話になんねぇな?どっちにしたって、あんたの出る幕はなかったんじゃねぇか?」
ヒメ「…そう言われてもな」
ドレッド「懐刀のおっさんに託して自分はのんびり安全圏で報告を待ちゃいいだろ?」
ヒメ「……」
ドレッド「それともやっぱしガキの遊びか?」
クンバヤ「え?どうなんだい?」
ヒメ「…僕なら、いざという時、フィクサーを表舞台に引きずり出す事が出来る」
ドレッド「あぁ?」
ヒメ「連合軍の盟主である僕の命は3国の国家元首に相当する価値があるからな…」
クンバヤ「なんのこっちゃだが…それがどうしたって?」
ヒメ「どんなにフィクサーが用心深い男でも僕を処刑するとなれば、その目で一部始終を見届ける筈だ」
団長「なっ…!?」
ヒメ「婚礼の義を逃した場合は…そうなる覚悟もしてた」
ドレッド「ククッ…勝つ為なら囮も辞さねぇってか?」ニヤリ
クンバヤ「なるほどね?並外れてらっしゃるわ?」ニヤリ
630: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:48:24 ID:YSi2nOfsJM
ドレッド「どうだ?うちの王様は?」
クンバヤ「俺ぁ気に入ったね?お値打ちは十分だ?」
ドレッド「決まりだな?」ニヤリ
団長「決まり…?どういう意味だ?」
クンバヤ「王様さんよ?ここから巻き返すあてはあんのかい?」
ヒメ「今は…ない」
クンバヤ「なら…もし俺達に策があるとしたら?」
ヒメ「……?」
団長「まだ方法があるのか…!?」
クンバヤ「俺達がなんのあてもなく奴らとやり合ってたと思うのかい?」ニヤリ
団長「……!」ゴクリ
クンバヤ「なぁ?ドレッド?」
ドレッド「おうよ。お世辞にも奴ほどたぁ言えねぇが…俺だって兵を率いる軍長だ?無駄な体力は使わねぇ?」
団長「もったいぶらずに教えんか!?」
ドレッド「放流された西の残軍を引き入れ、可能な限り、奴らから領民を奪取した。
今は方々に散らせてあるが合流すりゃ3万は数えられる?」
団長「3万…!?」
クンバヤ「奴らの推定兵力が10万だとしてもよ。正面からぶつかるんじゃなく固まったとこを襲撃するんだとすりゃ…十分、事足りる数だ?」
ヒメ「確かに……でも守りの硬い帝都を襲撃させるのは厳しいんじゃないか?」
ドレッド「そこで、だ」ニヤリ
ヒメ「……?」
631: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:51:36 ID:7ZmvR.FKR.
ドレッド「あんたを利用さしてもらう?」
ヒメ「どうするんだ…?」
ドレッド「人質としてフィクサーに差し出すんだよ?」ニヤァァァ
団長「な、なんだと…そんな馬鹿な真似は許さんぞ!?」ジャキッ
クンバヤ「おーいおいおい…その覚悟でいたんじゃなかったのか?」
ヒメ「それが手段になるなら従ってもいい」
団長「!?」
ヒメ「聞かせてみろ」
クンバヤ「王族ってのも、なかなか肝が据わってるじゃないか?いいね、ますます気に入ったぜ?」
団長「ならん!!」ダンッ
ドレッド「あぁ?陛下がそれでいいと言ってんだぜ?」
団長「ならばワシが行く!!」
ドレッド「聞き分けねぇこと言ってんじゃねぇよ?そもそもあんたに人質の価値なんざねぇだろが?」
団長「ではワシが単身、乗り込んでフィクサーの首を取ってきてやる!それでよかろうが!?」
ドレッド「寝言は寝て言えってんだよ?」
団長「寝言かどうか、その身に思い知らせてやろうか…!?」ズイッ
ヒメ「よせ」
団長「聞けませんな…!陛下は事態の重さを分かっておられんのか!?」
ヒメ「分かってるよ」
団長「いいえ、分かっておられませぬ!!こいつらは陛下の命を一切顧みず……」
ヒメ「黙れ」
団長「」ビクッ
ヒメ「僕は戦争が始まった時から命懸けで戦ってる。今さら惜しんでる場合か?」
団長「し、しかし…しかし!!」ワナワナ
ヒメ「まだ口答えする気か?」
団長「〜〜〜!!」
632: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:53:19 ID:7ZmvR.FKR.
団長「わ、ワシは一人息子を亡くしております!」
ヒメ「っ…そ、それと今の話となんの関係がある?」ズキンッ
団長「ワシごときがこのように申すのは大変、差し出がましいと心得ますが…しかし言わせていただきたい!!」
ヒメ「…な、なんだよ?」ジトッ
団長「ワシにとって陛下は……ヒメ様は!主君である前に…もう一人の息子のように想う…かけがえのないお方なのです!!」プルプル
ヒメ「え…?」
団長「幼少の頃よりお父君に放任され、寂しげになさる貴方を…憚りながらも気の毒に思っておりました…!」
団長「ワシが剣術指南役を仰せつかり、身近に接するようになってからも…一度として笑顔を見せた事はなく、それどころか成長と共に塞ぎこむ一方で…」
団長「…なんとかしてやれぬものかと、そればかりに思案しておりました!」
団長「ですからワシは…お父君に代わって貴方の成長を見守り、いずれ来るその日、最も信頼の置ける配下として力になろうと決めたのです!!」
ヒメ「だ、団長…」
団長「家庭をないがしろにしてしまい、ラキアには恨まれましたが…それでもワシは…ヒメ様を…立派な国王に育てたかった…!その一心においては今も変わりませぬ!!」
ドレッド「エゴだな。だいたい図々しいんだよ?近衛の分際でなにが息子のように想うだ?」
団長「ぐっ…!なんと言われようと結構だ…!どうか考え直してはいただけませぬか!?」
ヒメ「……」
団長「陛下!!」カッ
ヒメ「私情を押し付けるな」キッパリ
団長「は…!?」
ヒメ「生半可な気持ちで、ここにいる訳じゃない。おまえだって覚悟してきたんだろ?」
団長「……!!」ジワァァ
ヒメ「…戦いを終えて、カロルとラムを取り戻して、また平和な日々に帰るんだ」ポツリ
団長「」ハッ
ヒメ「…その為ならなんだってする。分かってくれるな?」
団長「……くっ…!」プルプル
ヒメ「……」
633: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:55:52 ID:YSi2nOfsJM
ドレッド「…くだらねぇ」ケッ
ヒメ「くだらなくなんかない…」キッ
ドレッド「……!?」
ヒメ「……」ジーッ
ドレッド「ちっ…変人が?」プイッ
クンバヤ「ハハハ!なんだがよく分からねぇが…王国ってぇ国はなかなか面白いみたいだね?」ニヤニヤ
ドレッド「あぁ?」
クンバヤ「うちの国にもあんたみたいなお坊っちゃんがいてくれたらなぁ…ちったぁマシになっただろうによ?」
ヒメ「…ならおまえが変えたらどうだ?」
クンバヤ「は?」
ヒメ「フィクサーをどうにかした後、どうしていくかはおまえ達が決めればいい」
クンバヤ「なんだい、もらえる収穫もいらねぇと?」
ヒメ「そんな目的で戦った訳じゃないからな」
クンバヤ「かぁ〜…?呆れた?」
ドレッド「甘ちゃんもいいとこだぜ…」シラー
ヒメ「もういいだろ。そろそろ策を教えてくれ」
クンバヤ「だとよ…?」
ドレッド「へっ…」ニヤリ
634: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:57:07 ID:7ZmvR.FKR.
―――廃村―――
ドンチャン ドンチャン
ギャハハハハハハハハハハ!!!
宣教師「すごい騒ぎですね…」
クーペ「戦いに勝った夜はいつもですよ?」クスッ
宣教師「そうなんですか…。それにしてもまさかこんな所でクーペさんに会えるとは思ってもみませんでしたよ?」
クーペ「わたしもです…。司祭様がいらしてくださるなんて…しかも国王陛下までご一緒なんですよね?」
宣教師「えぇ、まぁ…」
クーペ「……どうかされました?」キョトン
宣教師「(足も指先も所々擦りきれて…衣服も砂や血の染みが……大変だったんでしょうね)」ジーッ
クーペ「……?」オロオロ
宣教師「……すみませんでした」ペコッ
クーペ「へ?」パチクリ
宣教師「私が行かせた為に…このような事になってしまって…」
クーペ「…謝る理由が分かりません」
宣教師「……」ズキンッ
クーペ「司祭様は正しいと思ったから、そうされたんでしょう?」ニコッ
宣教師「……ですが、それは私の勝手な都合で」
クーペ「いいじゃないですか。それでも?」ニコニコ
宣教師「え?」
クーペ「わたしもあなたが正しいと思ったから、こうしたんです?」ニコニコ
宣教師「クーペさん…」ジーン
635: ◆WEmWDvOgzo:2016/2/27(土) 22:58:43 ID:7ZmvR.FKR.
クーペ「それに救い主様が拐われてらっしゃるんですよね?」
宣教師「あ、はい…。そういえばクーペさんも彼に会ったことがあるんでしたね?」
クーペ「えぇ、とてもお世話になりました。あの子、お母さんと一緒に司祭様を健気に探してましたよ?」
宣教師「そうだったみたいですね…。山間の村以外にも西の領土と南の領土を行き来していたとか…」
クーペ「あれからお会いできたんですか…?」
宣教師「はい。聖堂で…」
クーペ「あー…よかった。わたしも弟と心配してたんです。憲兵に追われてたようなので何かあったらと……」
『…ボクのことは忘れて?』
宣教師「……」
クーペ「司祭様?」
宣教師「…あ、いえ」
クーペ「お助けできるといいですね…?」
宣教師「…助けますよ。必ず…!」ググッ
クーペ「…ふふ。その意気です。ではわたしは…まだ怪我人が残ってるので?」
宣教師「でしたら私もお手伝いしますよ」
クーペ「へ?」
宣教師「実践経験は少ないですが多少なりと医術は身に付けてますので!」ニコッ
クーペ「ふふ。ではお願いしていいですか?」ニコッ
宣教師「はい!お任せください?」ニコニコ
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【うpろだ】
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