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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編その2】
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/1(土) 00:00:58 ID:/WYEXwH6vk
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-10

1スレ(少年「ボクが世界を変えてみせる」)

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1385288769/1-10

2スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」)

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1416136192/1-10

3スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】)

あらすじはそれぞれの1参照(考えるのがめんどくかったんです。ごめんなさい)

>>2から本編になります!


440: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:28:36 ID:PFgfnAqhNQ
酋長「たく…どこをほっつき歩いてるかと思えば?」ブツクサ

ルイ「……」シュン

宣教師「あの!すみません?あなたはこの集落を束ねてらっしゃる方ですか…?」

酋長「……チッ!人間め?」ジロッ

宣教師「え?」

酋長「このところ、しつこく絡んでくるのう?
城から使者を寄越すわ、勝手に領地を横切るわ…なんなんだ、うぬらは?」

宣教師「わ、私達は王国から来ました!あなた方に助けを……むぐっ!」グワシッ

酋長「王国だとぉ…!?」ググッ

宣教師「痛っ…!」ギュウウウ

酋長「殺されたくなきゃさっさと消えな!?」バッ

宣教師「うっ……!」ヒリヒリ

ヒメ「せめて話を聞いてくれ!僕はその王国の国王だ!?」

酋長「ガキの分際で何が国王だ!?話す事などないわ!?うぬぼれるな!?」

ヒメ「僕たちは変わったんだ!もうホビットと人間は争わなくても……」

酋長「知るか!?失せろ!?」ブンッ

ヒメ「あぐ!?」バキッ

ルイ「お、お爺ちゃん…!」オロオロ
441: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:30:45 ID:M3wYd3wb5.
酋長「ルイ!帰るぞ!」ガシッ

ルイ「っ……う、うん」グイッ

ヒメ「うぅ…頼むから…聞いてくれよ!?」ボタボタ

酋長「くどい!!四肢を引きちぎって狼共に喰わせるぞ!?」

ヒメ「このままじゃ…おまえたちも危ない…!西の国が侵攻してくるぞ…!?」

酋長「……?」

ヒメ「ブルードル陛下が西の刺客に暗殺された…!東国軍も壊滅してる…!残ってるのは王国軍だけなんだ…!」

酋長「…また戦争か。懲りん奴らめ?」フンッ

ヒメ「ぼ、僕だって好きでしてるんじゃない!仕方なかったんだ!」ムッ

酋長「うぬら人間はアピシナ様の犠牲から何も学んでおらんな…」

ヒメ「は?アピシナ…?」
442: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:31:09 ID:PFgfnAqhNQ
宣教師「アピシナ……伝説の大樹にまつわるおとぎ話の?」

酋長「ふん…とぼけおって?うぬら王国がアピシナ様を現世から抹消したのだろうが?」

宣教師「い、今では伝承を改めて真実のみを伝えています!教団もかつての物ではなくなりました!」

酋長「バカが…アピシナ様の名を聞いても覚えがないような反応じゃないか。真実もへったくれもないわい?」

ヒメ「そ、そういえば…ブルードル陛下とミリア王妃がアピシナの争いがどうとかって……」

酋長「」ピクッ

ヒメ「大陸全土を巻き込んだ…終わらない争いを凌ぐ歴史上、最大規模の戦争……」

宣教師「え…?な、なんですか?そんな話…聞いた事もないですが…?」

ヒメ「あぁ…僕も知らなかった。というか…そんな史実はどこにも残ってない」

酋長「うぬらが得意とする嘘で塗り替えられた書物に真実など一文字も綴られておるまいが?」

ヒメ&宣教師「……」

酋長「…いいか?これだけは教えてやる?」

ヒメ「……?」

酋長「ホビット族と人間が手を取り合うなど未来永劫ありえん?
どちらかが滅びる、その日まで…うぬらは我らの敵だ!」ケッ

シーン

ルイ「……」シュン
443: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:32:40 ID:M3wYd3wb5.
ヒメ「……そんなのダメだ」ボソッ

宣教師「同意見です…」ボソッ

酋長「!」ピクッ

ヒメ「後世に受け継ぐべきモノは憎しみじゃない!友愛だ!」カッ

宣教師「あなた方の抱える負の遺産を未来にまで背負わせていいのですか!?」

酋長「なにぃ…!?」

宣教師「いつまでも過去に縛られ、憎しみを蔓延させ続けては真の平穏など訪れません!次世代に希望を繋げようとは考えないのですか!?」

ヒメ「変わらなきゃいけないんだよ!今、変わらなきゃ…また何度でも戦争は起こる!?
おまえも…そこの孫娘も!そのまた曾孫も…産まれてくる筈だった命まで…何もかも奪われる時が来る!!」

酋長「うぬら人間が始めたんだろうがぁ…!?」ブチブチィッ

ヒメ「そうだ!だから…僕たちは変わる!!絶対に変わってみせる!!」

宣教師「それを私達に気付かせてくれたのはあなた方の仲間……ホビット族の少年です!!」

酋長「!?」

ルイ「……!」
444: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:33:57 ID:M3wYd3wb5.
ヒメ「そいつは女みたいにか弱くて…泣き虫で!おまけにドジでバカでアホだけど…大切な事をたくさん教えてくれた!!」

宣教師「彼は純粋な真心と優しさで私達を憎しみから解き放ってくれました!
どんなに虐げられても…裏切られても…利用されても…信じ抜く勇気を持って王国を変えてくれたんです!!」

酋長「だ…だからどうしたぁ!?我々には関係ないだろうがぁ!?」

ヒメ「あるんだよ!!この戦争は…そいつを巡って巻き起こってるんだ!?」

酋長「あぁ!?どういう意味だ!?」

宣教師「彼の持つ癒しの力が大樹に注がれた時、永遠の生命を宿す実が成る!!それを知った西の女帝が彼を狙ってるんです!!」

酋長「癒しの…力…?」ピタッ

ルイ「え?だって…アピシナ様はもう……」

ヒメ「アピシナじゃない!!カロルだ!!どういう訳か分からないけど、なぜかあいつは癒しの力を使えるんだよ!?」

宣教師「その力を持っていた為に以前も大きな争いが生まれたんです!!」

酋長「な、なんのこっちゃ分からん!いっぺんに言われても…!?」

ルイ「カロル……親愛…?」
445: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/19(土) 20:34:32 ID:M3wYd3wb5.
ヒメ「時間がないんだよ!!もうその時が迫ってるんだ!!
カロルが誘拐されてから…1ヶ月近く経ってる!!」

宣教師「信じてください!!お願いします!!」

酋長「な…な……」タジッ

ルイ「お爺ちゃん!この人間たちウソついてるようには見えないよ!」ユサユサ

酋長「……!い、いかん!耳貸すとこだった!」ブルンブルン

ルイ「え!?」

酋長「こんな人間共の戯言なぞ信じられんわ!!
お前たち!こいつらを拘束して集落の籠に閉じ込めろ!?」

東のホビット's「」コクリ

ルイ「お爺ちゃん!?」ユサユサ

酋長「お前は黙ってろ!!」バッ

ルイ「そ、そんな…!」ウルッ

ヒメ「疑ってしまうのは分かる!!でも本当なんだよ!!」ギチギチ

宣教師「考えを放棄せず、話に向き合ってください!!私達は騙したりしませんから!!」ブランブラン

酋長「うぬらもだ!!黙っとれ!?さぁ連れていけ!?」

ガッガッ グイッ ドサッドサッ ズルズル
446: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 21:59:35 ID:IHQ0bs/URY
―――ホビッツの里(木編みの檻)―――

ヒメ「はぁ…ダメだったか」

東の騎士「某が付いていながら面目ない…」

外交官「や、奴ら…我らをどうする気でいるのだろうか?」ブルブル

ヒメ「さぁな?串焼きにでもするんじゃないか?」

外交官「ひ、ひぃぃぃぃ!!!」ガクブル

ヒメ「騒ぐな。冗談だ?」

外交官「し、しかしこのままでは城塞を守っている兵が倒されてしまいます!何か手を打たないと…!」

ヒメ「うーん…武具も奪われちゃったしな…。それにこの籠、見た目は柔そうに見えるけど、かなり頑丈に造られてる。素手で脱け出すのは難しそうだな?」

東の騎士「これだけの人数を乗せても揺らがぬとは大した技術だ…。
しかも宙に浮いてる以上、下手に暴れて転落しようものなら即死でしょうな」

外交官「くぅぅ…!し、下に群がってる連中は全部ホビットなのか…!?」

宣教師「それはそうでしょう。ホビットの里なのですから?皆さーん!ごきげんよう?」フリフリ

ザワザワ ザワザワ

ヒメ「よくこの状況でノンキに手なんか振れるな?連中も戸惑ってるじゃないか?」

宣教師「これを機会に親睦を深めたいですからね」ニコニコ

ヒメ「おまえもカロルもすごいよな?なんでいつも先行きを見送って大胆な行動に出れるんだか…?」

宣教師「危険を顧みずに自分を人質に取らせたキミに言われる筋合いはありませんよ!」

ヒメ「あぁ…懐かしいな。あの時はホント自分でも何してるのか分かんなかったよ」

外交官「思い出話に浸ってる場合ですか!?」
447: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:01:45 ID:9v4P6Xr0tU
〜〜〜夜〜〜〜

ヒメ「さむっ……」ブルッ

宣教師「……真っ暗ですね」

東の騎士「夜はあまり活動しないのですな。日が落ちてからめっきりと姿が見えなくなった」

外交官「我々はどうなるんだぁ…」ガクブル

ガラッ ガラガラ

ヒメ「」ビクッ

宣教師「? 降りて…る?」

東の騎士「何奴か!?」スクッ

外交官「ひぃぃ!!と、とうとう処刑されるのか…!?」ガクブル

ゴトンッ

ブチッ ビリビリィィッ ガコンッ

パカッ

ヒメ「あ、開いた……?」
448: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:04:01 ID:IHQ0bs/URY
宣教師「! キミは先ほどの……」

ルイ「よっ!」ニコッ

外交官「っ……?」ビクビク

ルイ「ほい!」ポイッ

ドサドサッ

宣教師「この袋は…?」

東の騎士「おぉ…某らの武具ではないか!?」シュルッ バサァァァ

東兵's「」ワラワラ

ヒメ「ルイ…だっけ?」

ルイ「さんを付けな!デコスケ!」

ヒメ「誰がデコスケだ!そんなことより、おまえ…自分が何をしてるか分かってるのか?」

宣教師「私達を助け出してくださるのですか…?」

ルイ「松明持って!」スッ ボォォ

ヒメ「な、なんなんだよ?」パシッ ボォォ

ルイ「こっち来なよ。面白いの見せたげるから」スタスタ

宣教師「どうします?」

ヒメ「…付いてくしかないだろ」

東の騎士「某らもお供致そう」スクッ

外交官「わ、私も参ります…」

ルイ「なにボサッとしてんのさ?早く来なっての!」クルッ
449: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:05:12 ID:IHQ0bs/URY
―――ホビッツの里(御神木)―――

ズォォォォン

ヒメ「なんだ、これ…?」

宣教師「ずいぶん精巧に造られてますが…」

東の騎士「見事だな…。我が国の最先端石膏技術を以てしても、ここまでの傑作は産まれぬだろう」

外交官「英霊を称える遺物か…?歴史的価値が高そうだ…!」

ルイ「すごいでしょー!ウチらの御先祖様が掘ったんだから?」エッヘン

宣教師「はぁ…なんとも言えない儚さというか…まるで木像その物に命が宿ったような神々しさを感じられますね」

東の騎士「石像では表現し得ぬ細かなシワ…太く絡む根の曲線…繊細な技巧が窺える…」

ルイ「まぁ当然だよね!樹齢5000年の御神木を掘って祀られたホビット族のお宝だもん!」

ヒメ「…そんな大事な物をなんで僕らに見せびらかすんだ?盗み出そうと狙うかもしれないぞ?」

ルイ「え!?どうやって!?」

宣教師「…しっかり地面に根を張ってますし、そもそも人が持ち運べる大きさでもないと思うのですが?」

ヒメ「いや、例えばの話だよ!不用意にこんな価値のある物を見せたりしていいのかって聞いてんの!?」

外交官「こ、これを持ち帰れば王国に一躍、芸術の風が吹くぞ…!他国からも見物人が訪れ、巨額の財が動く…」ブツブツ

ヒメ「ほら見ろ!こういう奴だっているんだぞ!?」ビッ

ルイ「あー」

宣教師「なるほど」

外交官「」ハッ
450: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:09:38 ID:9v4P6Xr0tU
ルイ「これね、アピシナ様を象ってるんだって?」

ヒメ「あぁ…昼間におまえの爺さんが言ってたやつか」

ルイ「そっ!」

宣教師「アピシナ様とは何者なんですか?
王国に伝わる限りでは伝説の大樹を癒しの力で育て上げたホビットと聞いてますが?」

ルイ「まぁそうなんだけど…何から話したらいいんだろ。
とりあえず一言でまとめるとアピシナ様は"ホビットを世界から切り離した"お方なんだよね」

宣教師「世界から切り離した…?どういう事ですか?」

ルイ「昔ね、300年も前くらいにアピシナ様はホビット族の中に現れたんだって」

ヒメ「現れた…?」

ルイ「うん。どこから来たのかも分からない。何から産まれたのかも分からない…だけどホビット族の中にいたの」

東の騎士「ホビットではないのか?」

ルイ「だからホビットだってば?」

東の騎士「???」チンプンカンプン

ルイ「アピシナ様を語った当時の仲間は口々にこう言うの。"アピシナはおかしい"って」

ヒメ「おかしい?現代まで祀られる程の奴がか?」

ルイ「アピシナ様は愛に溢れすぎていたの。同族はもちろん人間だって分け隔てなく接するし…。
動物なんかの生き物はもちろん目に見えないものにまで慈しむように愛を囁いてたんだって?」

宣教師「素晴らしい…!聖者さながらの徳を備えたお方なのですね…!」

ヒメ「いや、行き過ぎてるだろ…。どう考えても…?」

ルイ「アピシナ様はいつだって世界の素晴らしさと一生のときめきを諭そうとするんだけど…誰にも理解してもらえなかった。
癒しの力でたくさんの命を救って、暖かい心で依り場のない者たちの嘆きを慰めても…それでもみんなアピシナ様を不気味がって遠ざけたの」

宣教師「……」

ルイ「…自分は受け入れてもらえないと知ったアピシナ様は癒しの力を一つの種粒に注いで大樹を実らせた。
自分がいなくなっても誰も傷付き苦しむ事のないように…すべての命を争いから解き放ってあげられるようにって願いを込めて」

ルイ「けど…その大樹が原因で争いは大きくなって…世界は殺伐とした混沌の闇に迷いこんでしまった」

宣教師「…永遠の命を奪い合って、ですか?」

ルイ「……そっ。それで絶望したアピシナ様は自殺しちゃったってわけ」
451: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:14:34 ID:9v4P6Xr0tU
ヒメ「要するに昔も今もやってる事は同じって訳か。おまえの爺さんが頑なに耳を貸そうとしないのも頷けるな?」

宣教師「かといって、このまま見過ごす道理はありません」

東の騎士「うむ。王妃様をお守りする為にもなんとしても危機的状況を打破せねばならぬ」

ルイ「……」

ヒメ「それで?おまえはどうしたいんだ?」

ルイ「…もう少しだけウチの話、聞いてくれる?」

宣教師「えぇ、構いませんよ?ぜひ聞かせてください?」ニコッ

ルイ「……」ジッ

宣教師「?」

ルイ「なんか…お姉さんの笑顔、すごくキレイ」

宣教師「え?そ、そうでしょうか?」ポッ

ルイ「うん…笑い方に含みがないもん。素敵だなぁ」

宣教師「そ、それほどでも…?」テレテレ

ルイ「この里にはね、嘘の笑顔がいっぱい?」

宣教師「と言いますと…何か不満が?」

ルイ「ううん。楽しいよ?居心地もいーし…何も困らないから」

宣教師「ではなぜ…?」

ルイ「お姉さん、ホビットと仲良しだって言ってたよね?」

宣教師「はい。仲良しですよ?」ニコニコ

ルイ「じゃあホビットが一番、求めてる物がなにか分かる?」

ヒメ「一番、求めてる物…?」

東の騎士「人間への復讐か?」

外交官「貨幣制を取り入れてないとするならば…食料を確保出来る土地や水源?」

ルイ「……正解は」

宣教師「自由、ですかね」

ルイ「…あたり!」
452: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:18:55 ID:IHQ0bs/URY
ルイ「自由に歩き回れて平等に生きられる。そんな夢みたいな話が現実になったら素敵じゃない?」

ヒメ「……そうだな」

宣教師「賛同します」ウンウン

ルイ「ウチのパパとママはさ、外の世界に出たことがあるんだ?」

ヒメ「外って言われても…範囲が広すぎて、なんかあんまりピンと来ないよな?」ヒソヒソ

宣教師「野暮を言うのはおよしなさい?」ヒソヒソ

ルイ「外の景色をいつかウチにも見せてくれるって約束してたんだけど…パパもママも帰ってこなかった」

宣教師「……」

ルイ「後で、ここに流れてきたホビットに聞いたらね。たぶん人間に捕まったんだって教えてもらったの」

ヒメ「……」

ルイ「ヘマ…バザーだっけ?なんかそういうウチらを捕獲して回ってる組織とか、ホビットだからって見境なく殺す人間とか…とんちんかんな噂を広めてる宗教があるから…きっと帰ってこないよって」

宣教師「」ズキンッ

ルイ「……まぁいいけどさ。20年近く経ってるし」

東の騎士「!? お主、子供ではないのか!?」

ルイ「子供?もう28だよ?」

東の騎士「ジーザス……」oh....

ヒメ「(どうりで見た目の割りに大人びた言葉を使うと思った…?)」
453: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:21:08 ID:9v4P6Xr0tU
ルイ「話、戻すけどさ。ウチはパパとママが見たかった景色ってのを見てみたいんだよね」

ルイ「火を噴く山、黄金の湖、雪の降り積もる谷、嵐の海、そして……人間が作る未知の文明!」

ルイ「好奇心をくすぐるのがありすぎて、どこから目指していいのか分からない!けどウチは知りたいの!」ウキウキ

ルイ「たくさんの感動が世界には溢れてるってパパが教えてくれたから!」

宣教師「ふふ…そうですね。この世界は不思議がいっぱいです」ニコッ

ヒメ「期待を越えるかは別だが見ても損はないかもな?」ニコッ

ルイ「じゃ、よろしく!」スッ

宣教師「こちらこそ?」パシッ

ルイ「あー楽しみ!」キャッキャッ

ヒメ「言っとくけど、その前に大事な戦いが控えてるんだからな?」

ルイ「まっかせなさい!ウチらは狩猟民俗だから弓と槍の使い方ならバッチリだよ!」

東の騎士「おぉ!それは頼もしい!」

ルイ「ふふん!」エッヘン

外交官「(は、はたしてこんなチビ共を、どこまで信用していいものやら…)」ハラハラ
454: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:22:29 ID:9v4P6Xr0tU
ルイ「アハハ!仲間にも声かけとくよ!自由を求めてるのはウチだけじゃないもんね!」

宣教師「ありがとうございます!」ペコッ

ヒメ「けど、そう簡単に説得出来るのか?」

ルイ「え?むりむり。だからあんた達に協力してほしいの!」

ヒメ「ふーん…どうすればいい?」

ルイ「明日、お爺ちゃんをまた説得してよ!」

ヒメ「あの頑固な爺さんをか?それこそ無理だろ?」

ルイ「だいじょーぶだって?その間、ウチがみんなに話して回るからさ。お爺ちゃんも怖そうに見えて、案外優しいところあるんだよ?」

ヒメ「不安だなぁ…」

宣教師「まず聞いてもらえるかどうかですよね…」

ルイ「…お爺ちゃんが一番、怒ってるのはパパとママを人間に奪われたことなの。アピシナ様の話を引き合いに出してたけど…」

ヒメ「ていうか…そのアピシナとかいうのは結局、おまえらにとってなんなんだ?」

ルイ「んー……呪縛、かな」

ヒメ「…そんな怨念めいたものなのか?」

ルイ「アピシナ様は豊かな愛で世界を変えようとして失敗した…。
けれど、それがあったからホビット族は争いから離れて静かに暮らす決意が出来た…」

ルイ「でもウチらの世代になってみると…狭い場所に押しやられてるみたいで窮屈なんだよね」

宣教師「……」

ルイ「だからウチはアピシナ様の呪縛から抜け出したいんだ?もっとたくさんの世界をみられる内に?」

ルイ「ヨボヨボのお婆ちゃんになっちゃったら、どこにも行けないじゃん?」クスッ

ヒメ「なるほどな…」

宣教師「私達にお任せください!必ず酋長さんを説得してみせます!」

ルイ「ん!頼むよ!」グッ

「ずいぶんと懐いたものだな?」ザッ

ルイ「」ビクッ
455: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:25:04 ID:9v4P6Xr0tU
ボッ ボッ ボッ ボッ ボッ

宣教師「周囲の松明が一斉に…!?」

ヒメ「囲まれてるぞ…!?」

東の騎士「我々の背後にお隠れください!!」スラッ

外交官「」アワアワ

酋長「やりかねんとは思ったが…お前という奴は本当に?」ヤレヤレ

ルイ「っ…!」

酋長「人間共よ。下手な抵抗はよせ?一族の中でも特に優れた弓の使い手で囲んどる?剣では勝負にならんぞ?」

東の騎士「ちぃっ…!」

ヒメ「騎士殿。ここは素直に従おう」

東の騎士「よろしいのか…?」

ヒメ「あぁ、四方八方、民家の屋根や高台からも狙われてる。どう足掻いたって矢の餌食になるだけだ」

東の騎士「承知した…。剣を鞘にしまえ!!」チャキンッ

東兵's「」チャキンッ

酋長「さすがに一国の王とあっては肝の据わりようも違うな?迷わず武器をしまえるとは?」

ヒメ「……」

酋長「ルイを盾にすれば或いは我らの動きを鈍らせたかもしれんものを…」

ルイ「え…?」

ヒメ「…そうしたら、もうおまえ達と信頼を築けなくなるだろ」

酋長「まぁだほざきよるか…」
456: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:27:10 ID:9v4P6Xr0tU
ヒメ「で、どうするんだ?僕らを殺すのか?」

外交官「な、な、何を言っておられます!?い、命ばかりは…!?」

酋長「はてさて…どうしてくれようか?」ニィィッ

宣教師「お待ちください!どうか今一度、こちらの話に耳を傾け……」

ルイ「」バッ

宣教師「えっ」

ヒメ「ルイ…?」

東の騎士「……!?」

外交官「ま、まさか…私供を庇って…!?」

ルイ「お願い!この人間たちに手を出さないで!?」

酋長「……」
457: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:29:34 ID:9v4P6Xr0tU
酋長「ルイ!!」

ルイ「」ビクッ

酋長「同族に立ちはだかり、人間を庇う気か?」ジロッ

ルイ「」プルプル

ヒメ「お、おい…やめておけよ?」ポンッ

宣教師「そうですよ…。無理をなさってはいけません?」

ルイ「そんなんじゃ…ないから」プルプル

ヒメ&宣教師「?」

ルイ「いい加減にしてよ!お爺ちゃん!!」

酋長「……?」

ルイ「もう…いいじゃん!!外に出たって!?この人間たちがホントにウソついてると思う!?」

ザワッ

ルイ「アピシナ様、アピシナ様ってさぁ!アピシナ様を言い訳にして逃げてるだけでしょ!?」

ルイ「ウチも里のみんなも本当は外の世界を知りたがってるんだから!?
なのにお爺ちゃんたちの世代が頑固だから……だからパパもママも勝手に出てったんじゃん!?」

酋長「……」

ルイ「…ウチは信じてる。パパもママも死んでなんかない!どこかで絶対に生きてる筈だよ!」

酋長「探しに行くとでも言うのか?」

ルイ「」コクッ

宣教師「ルイさん…」

ヒメ「(単なる好奇心で協力するなんて妙だと思ったけど、そういうことか…)」
458: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:32:00 ID:9v4P6Xr0tU
酋長「おい、小僧!」

ヒメ「なんだよ…?」

酋長「アピシナ様の話を聞いても引き下がろうとは思わんのか?」

ヒメ「…そのつもりだ」

酋長「癒しの力を持った同族が出現した。それが事実だとするならば…うぬらもまた力を狙う人間の一味ではないのか!」

ヒメ「だとしたら?」

酋長「あぁん…?」

ヒメ「たとえそうだとして…阻止しなかったら結局、癒しの力は王国か西の国に渡り、人間の手に落ちるぞ?」

酋長「ぬ、ぐぐ…!」

ヒメ「おまえらが危惧するアピシナとやらの過ちは繰り返される。それでもいいのか!」

酋長「…我らが参戦しなければ癒しの力を悪用せんとする訳か」

宣教師「むっ…誓って悪用なんかしませんよ!」

ルイ「そんなのなんだっていいから!もう難しい話はいーよ!」

ヒメ「なんだっていいって、そっちにしてみれば重要だと思うんだけどな…?」

ルイ「みんなだってそうだよね!?外に行ってみたいでしょ!?」

東のホビット's「……」マゴマゴ

ルイ「ほらね!そうなんだよ!」

酋長「チッ…」

ルイ「アピシナ様が本当に望んでたのは世界の繋がりじゃんか!?」

ルイ「今のウチらがやってる事ってアピシナ様の望んだ形なの!?違うじゃん!!
外と向き合いもしないで溝を深めて…!人間のせいだって恨むけど結局、ウチらがそうしてるんじゃん!!」

ルイ「ここに移ってくる仲間はこの里を"最後の楽園"なんて呼ぶけど…ウチからしてみたらホビット族を閉じ込める檻みたいにしか思えないよ!?」

ルイ「この広い大陸の中で…小さな山一つで一生を過ごせなんて残酷すぎるじゃんか!!」

酋長「ルイ…お前…!」

東のホビット1「私もだ」ズイッ

酋長「!?」
459: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:35:04 ID:IHQ0bs/URY
東のホビット1「酋長の息子夫婦とは旧知の仲だった…。
よくこっそりと里を抜け出しては変装して一緒に外界を散策したものだ」

酋長「い、いつの間にそんな…!?」

東のホビット1「あの二人の血を継ぐルイちゃんなら…止めどない好奇心に揺らぐのも無理はない」

東のホビット2「だけどなぁ…。人間って生き物は融通が利かないんだ?
何かにつけて自分たちが絶対に正しいと思い込んでる?」

東のホビット3「俺も同感。移住してくるまでは、ずっと人間を避けて生きなきゃならなかったから大変だった」

東のホビット4「…そうかな。僕は見てみたい。ルイさんから色々聞いて…いつか外を冒険しようかなって考えてた」

東のホビット5「俺も!今時、故郷に永住なんて流行んないよ?男なら冒険しなきゃな!」

東のホビット6「にしたって協力したら人間と戦うんだろ?人間に付き合って血を流す必要があるか?」

東のホビット7「そうだよ。外の世界を見るだけなら別に方法はいくらでもある」

東のホビット8「いや、話の争点はそこだけじゃない。癒しの力を悪用される可能性があるのも…」

東のホビット9「なんだかややこしいわね…。あたしは今まで通りでいいわよ」

東のホビット10「だいたい癒しの力なんて本当にあるの?アピシナ様だって実在したかも分からないんだぞ?」

東のホビット11「実在するとしたら人間に力を渡すのは危険なんじゃないか?」

東のホビット12「むしろ俺達が癒しの力を手に入れたら…永遠の命をもらえるかも」

東のホビット13「そりゃ夢みたいな話だなぁ!」

ザワザワ ザワザワ

酋長「くっ…!?」
973.18 KBytes

名前:
sage:


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うpろだ
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