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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


42: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:27:49 ID:7ZmvR.FKR.
ファルージャ「よくぞ参られた?
そなたが神の教えを尊ぶ穢れなき民、王国の使者かえ?」

大臣「とうに失脚させられた身ですがねぇ〜。
それにしても世にも名高い美の化身と謳われる女王陛下の御前に立てるなど身に余る光栄……ぐふふ、ふひひ、ブヒヒヒヒ」

側近「貴様……」イラッ

ファルージャ「クスス…王国の殿方は世辞がうまくていらっしゃいますのネェ?」

大臣「ぶほほほ!いやはや世辞などではございませんぞ!実にお美しい!
その豊満な胸に顔を埋め、艶めかしく滴る汗をべろんべろん舐めて差し上げたい…!」ハァハァ

側近「貴様ぁぁ!!」ブチィッ

ファルージャ「クスス!左様か、それはそれは……」クツクツ

側近「へ、陛下!ご命令を!」

ファルージャ「よいではないか?愉快、愉快!」クツクツ

側近「し、しかし!」

大臣「まぁまぁまぁ?そう邪険にしないでくださいよぉ?
わたくしもねぇ、何も土産物を持たずに来た訳じゃございませんから?」

ファルージャ「ほぉ?土産物とな?」

大臣「ぐふふ!えぇ、女王陛下には何よりの手土産を持参致しましたぞぉ?」ニシシ

ファルージャ「フゥン?それは楽しみじゃな?」
43: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:33:16 ID:7ZmvR.FKR.
大臣「〜〜〜という訳ですよ?」

ファルージャ「それは…まことかえ…!」

大臣「まこともまこと!わたくしの口から偽りは出てきませんよぉ〜!」

ファルージャ「癒しの力……永遠の命……王国にかような秘宝が眠っておったとは……!」

側近「…馬鹿馬鹿しい。そんな話が信じられるか」

大臣「では貴方は信じなければよろしい?
わたくしは陛下に信じていただければ、それでよいのですからねぇ?」ニタニタ

側近「き、貴様…やはり処刑台に…!」

ファルージャ「キャハハハハ!!!」ケラケラ

側近「」ビクッ

大臣「」ニヤリ
44: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:35:04 ID:7ZmvR.FKR.
ファルージャ「なんともはや……これ以上に妾を魅了する土産は他にあるまいぞ!!」キラキラ

側近「陛下!?」

ファルージャ「気に入ったぞ、そなた!望みを言うがいい!いかなる要求も認めようではないか!?」キラキラ

大臣「ぐふふ!よろしければ一晩を共に……」

側近「なにぃ!?」

大臣「と、言いたいところですが……何よりの望みは滅びいく王国を我が目に焼き付けたい……それだけです」

ファルージャ「フゥ〜!王国を攻め滅ぼせと言うのか?」

側近「しかし…王国は各国との平和協定を結ぶ架け橋となった国……こちらが兵を差し向ければ6国の軍と争わなければなりません」

ファルージャ「フゥン……我が西の国が世界最大の武力国家とはいえ、あまり現実的な話ではないのう?」

大臣「ぶほほほ!なにをおっしゃる?簡単ではございませんか!」

側近「はぁ?」

大臣「先に永遠の命を手に入れたらよろしい!
不死の力を持ってすれば100国の軍も恐るるに足らず!そうでしょう!?」

側近「そのような事が可能なのか!?」

大臣「ブヒヒヒヒ!これを陛下に差し上げましょう」つ【地図】【人相描き】

ファルージャ「それは?」

大臣「大樹の地図と癒しの力を持つホビットの人相描きにございます」

ファルージャ「…手際のよいこと?側近、持って参れ?」ニヤリ

側近「はっ!」パシッ タタタッ
45: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:45:41 ID:YSi2nOfsJM
ファルージャ「はぁん…?これが癒しの力を…?」ピラッ

大臣「元はわたくしの買い付けた奴隷だったのですがねぇ…。小賢しい事に王子と手を組み、反乱を起こしたのですよ」

ファルージャ「…フゥ!なんと愛らしい顔立ち…?
妾のそばに仕えさせ、昼夜の境も無く愛でてやりたくなる?」

側近「へ、陛下……」

ファルージャ「妾の美には劣るが…クスス?」ニヤニヤ

大臣「言っておきますが癒しの力を持つホビットはオスですぞぉ?」

ファルージャ「なんと…!男に生まれながら、これ程に愛らしいのか…!?」

大臣「えぇ、わたくしも最初はメスだと思って買ったんですがねぇ…。とんだ詐欺ですよぉ…」ブツクサ

ファルージャ「…クスス!一度でよいから…こういう愛らしい男を嬲ってみたかったんじゃ…?」

側近「陛下…?」オロオロ

ファルージャ「側近よ、三銃士を呼べ?」

側近「はっ…」
46: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:49:40 ID:YSi2nOfsJM
ザザッ

将軍「」ザッ

魔導師「」ザッ

女装家「」ザッ

ファルージャ「よくぞ揃ってくれた?妾の愛しき従者たちよ?」

将軍「我ら三銃士!陛下のお望みとあらば何処へなりと推参致す所存!」

魔導師「ご機嫌麗しゅう、陛下?本日も誠にお美しい?」

女装家「我らは陛下のご命令にのみ従う駒。なんなりとご命令ください」

ファルージャ「良い心構えネェ?」スラリ

将軍「(ナマ足…!女王陛下のナマ足ぃ…!)」ジュルリ

魔導師「……!」ジーッ

女装家「(オネェ様ぁぁ)」ハァハァ
47: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:51:43 ID:7ZmvR.FKR.
大臣「あのお三方は?」ボソボソ

側近「あの方々は陛下に忠誠を誓いし我が国の英雄、三銃士だ」ボソボソ

大臣「はぁ…銀製の甲冑に身を包む武人と物々しく全身を覆うローブの方はなんとなく分かりまするが……。
あの寸法の合わないフリルドレスを身に纏い、明らかな金髪のカツラを被った厳つい御仁はなんなんですかぁ?」シゲシゲ

側近「あのお方は女装家のシャルウィン様だ。元は名だたる宝石商だったのだが……陛下の美しさに憧れるあまり、女装家に転職したらしい。
主に美容顧問官として健康管理と体型維持、肌のケアを担当しており、陛下の御身に全身マッサージを施すなど羨ましすぎる権限の持ち主なのだ」ボソボソ

大臣「それって英雄…なんですかねぇ〜?」

側近「甲冑を装備しているお方はカカドゥーラ将軍、我が国の軍事を指揮する最強の武人だ」ボソボソ

大臣「んぅ〜…なるほど」

側近「不気味なローブのお方は大魔導師パカラゥロ様だ」ボソボソ

大臣「魔導師…?」

側近「あぁ、黒魔術に精通しており、両の掌から摩訶不思議な術を繰り出す…なんとも信じがたいお方だ」ボソボソ

大臣「なんだかインチキ臭いですねぇ〜?ホントにできるんですかぁ?」ジロジロ

魔導師「」ギロッ

大臣「おや?聞こえてしまったかな?」ニタニタ

魔導師「…なんなら体験してみるかい?」

大臣「ぐふふ…いいんですか?赤っ恥かいても知りませんぞ?」ニタニタ

魔導師「陛下……許可を頂けますかな」

ファルージャ「…好きにするがいい?」ニヤリ

魔導師「んふふ…んふ……許可が降りたぞ?」モミモミ

大臣「ぶほほほ!どうぞお好きに?」ニタニタ

側近「お、おい…あまりパカラゥロ様を刺激するな…!殺されるぞ…!?」

大臣「癒しの力のような術がこの世に二つとあるのなら見てみたいものですなぁ?
ま、どうせインチキでしょうから…そのからくりを暴いてやりますかねぇ?」ニタニタ

魔導師「んふふふふ…」モミモミ
48: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:56:36 ID:7ZmvR.FKR.
魔導師「さて、これからその身に起こる不幸……受け入れる覚悟は出来たかい?」モミモミ

大臣「気色悪いですなぁ…」

側近「揉み手を作って丹念に掌を擦り合わせているだろう?」

大臣「はい?あぁ、そういえば?」

側近「…あの手が開かれた時、恐ろしい魔術を放たれるんだ」

大臣「はぁ〜いぃ〜?」

魔導師「さてさて、さてさて、さてさてと」パッ

大臣「」ドキッ

魔導師「……」スッ

大臣「(両手を眼前に…?だ、だが何も……)」

魔導師「」グワシッ

大臣「なっ…ぶぐっ!ふおお!ぶぁぁ!」モガモガ

魔導師「口から直接、邪悪な念を流し込み…卑しく欲深な豚の魂を食い尽くす…」ガッ

大臣「ぶぐっ!むが!ふごぉぉ………っ」クラッ

大臣「」バタッ

魔導師「もがき苦しむサマもいい…?
だが憎らしい相手には…もがく事すら許されぬ苦しみを与えたいものだねぇ……」クックッ

大臣「(体が…言うことを……)」バクンバクン

大臣「っ……!っ……!」バクンバクン

大臣「ぶほあぁっ!?」ブバァッ

側近「ひっ」

大臣「」ピクピク

魔導師「これが世にも恐ろしい黒魔術の真髄……味わっていただけたかな?」
49: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 22:58:50 ID:7ZmvR.FKR.
大臣「」ピクピク

ファルージャ「フゥ〜…いつ見ても惚れ惚れするのう?そなたの摩訶不思議な術は?」

魔導師「お誉めに預かり光栄にございます。
この豚は助かりませんがよろしいか?」

ファルージャ「構わぬ。もう用はない」

将軍「陛下!そろそろ我らを呼び寄せた理由を伺わせていただけませぬか!」

女装家「アタシ達、三銃士が揃い踏みだなんてただ事じゃなさそうよねぇ?」

ファルージャ「おぉ、そうじゃった、そうじゃった?
貴殿らに頼みたい重要な話があるのだった?」ニヤリ

女装家「はっ!」

将軍「なんなりと!」

魔導師「……」

ファルージャ「はぁん…可愛い奴らよ…?では言うぞ…?」
50: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 23:01:26 ID:7ZmvR.FKR.
ファルージャ「〜〜〜という訳じゃ?」

将軍「永遠の命…?」

女装家「……」ポカーン

魔導師「んふふふ……」ニヤニヤ

ファルージャ「そなたらは妾に必要な物がなにか分かるかえ?」

将軍「そ、それは…やはりお世継ぎかと」

女装家「いいや!オネェ様に必要なのは完成された美を超えた更なる美よぉ!」

魔導師「……」ニヤニヤ

ファルージャ「いずれも正しい?確かに妾は美を手放せぬあまり、子を孕むという大事を拒んでおった?」

女装家「あーん!妊娠などなされては体型が崩れてしまいますものぉん!」

ファルージャ「しかし…永遠の命を手に入れたらば世継ぎなど不要じゃ?
妾は不朽の美を手に入れ、西の国の女帝として君臨出来る?」

将軍「おぉ!それはめでたい!」

女装家「陛下の美が永久に保たれるなんて……ステキ!」キラキラ

魔導師「……」ニヤニヤ

ファルージャ「クスス……誰でも構わぬ?妾の前に永遠の命と癒しの力を持って参れ?」

将軍「ヌハハハハ!たやすいこと!このカカドゥーラが成し遂げましょうぞ!」

女装家「いいや!アタシが陛下に永遠の美を約束してみせる!」

魔導師「……」

ファルージャ「フゥ〜…頼もしき子らよ?成功した暁にはそなたらの望む褒美を取らせようぞ?」

三銃士「」ピクッ

ファルージャ「では…しかと頼んだぞ?」

将軍「ははぁっ!」ザッ

女装家「はっ!」ザッ

魔導師「」ザッ
51: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/18(火) 23:03:44 ID:YSi2nOfsJM
―――宮殿(回廊)―――

将軍「ムフフ……」スタスタ

女装家「なにニヤついてんのよぅ?気持ち悪いわねぃ?」スタスタ

将軍「なにをぅ!?」

女装家「なによぅ!?」

魔導師「褒美……」ボソッ

将軍「」ピクッ

女装家「」ピクッ

魔導師「…んふふ、図星だね?」

将軍「ふん…」

女装家「アタシはぁ〜陛下に永遠の命をお裾分けしてもらおうかなぁ〜なんて」

将軍「ゲスめ…!陛下と同等の望みを求めるか…!」

女装家「いいじゃなぁい?アタシも陛下のように美しくありたいのよぅ?」キャピキャピ

将軍「貴殿は鏡を見たことがないのか…?」

魔導師「将軍は何を望むんだい?」

将軍「ムフフ…厚かましくも畏れ多い願いだが……我輩の顔面を踏みつけ、罵倒していただきたいと……」

女装家「それでよくアタシをゲス呼ばわり出来たわねぃ…?」ドンビキ

魔導師「悪くはないね」

将軍「話が分かるな?」ニヤリ

女装家「はぁ〜やだやだ。で、そういうアンタはどうなのよぅ?」

魔導師「…癒しの力」

女装家「あぁ〜それも確かに魅力的よねぃ?どんな傷や病も癒せちゃうなんて夢みたい?」

魔導師「んふふ…欲しいなぁ。是非とも…物にしたい魔術だ」

将軍「…確かに貴殿がそのような術を心得れば我が軍の武力に加え、完全な回復……鬼に金棒ではないか!」

女装家「そんなんどうでもいいけどぉ〜」

魔導師「んふふふふ…欲しいなぁ…」ニヤニヤ
52: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:40:09 ID:aMQyUdLMrI
―――王国(議場)―――

政務官「では前期の消費と利益を踏まえ、来期の予算案はこのように検討する、と」

高官1「うむ。しかし前期は出費ばかりで見返りが少なかったですな」

高官2「然り。バックヤードを閉鎖した結果、大規模な資金源を失いましたからな」

高官3「新たにホビットを迎えて国家を形成するとありますが……そんな余裕があるのですか?」

高官4「すでにホビットが人里に住もうとする動きもありまするな?その居住区と職の保障も予算で賄うので?」

政務官「…以前から進めていた交易も差し支えなく進めている。利鞘に目を向けるのはそれからでもよろしいのでは?」

高官1「うーむ…しかしそれではホビットを迎えた分の負担は?」

政務官「仮にホビットを国民とした場合、我が国の人口推移は大幅な拡大が期待出来るだろう。
人口が多ければ多い程、国は活気立ち、目標の幅も広がる」

高官3「しかし巡礼以降、国力は著しく低下しておりまするしな…。それだけの土台が現在あるのか…?」

政務官「土台を作るのは民であり、その土台をいかにして最大限まで活かせるかが我々の職務だ」

高官4「そ、そりゃそうなんですけどね?何て言うのかな〜…」ポリポリ

政務官「人の数だけ労働力は増し、人の数だけ新たな可能性を見いだせる。
特に他種族のホビットともなれば文化も違う。人では捉えられない観点から文明の視野を広げてくれるかもしれないな?」

高官2「…これまでの歴史から考えると、あまり良いとは言えなさそうですが」

政務官「歴史とは常に変わるものだ。
これまでの民意を修正していくには国を預かる我々の意思がしかと定まっていなければならない。
そして我々の使命は国王の意思の下にあるという事もまた重要な事実だ」
53: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:42:15 ID:aMQyUdLMrI
政務官「国王がホビットとの融和を糧に更なる飛躍を望むと仰るのなら…我々、役人の仕事はそれらを可能にした国作りに努めること」

高官1「は、はぁ…」

政務官「現段階での損失は謂わば投資だ?
愛すべき国家がより繁栄を遂げられるよう、国の綻びを取り除いて再生する活動資金と考えようじゃないか?」

政務官「これからは王政認可の下、余所との商いが展開可能になる事で商家は人手を求めるだろう。
各地に溢れる難民は確実に減り、職の充実による経済効果も見込める」

政務官「手付かずにしていた田舎町などは特にそうだ?
有り余る資源に利用法を見いだせず無意味にもて余してきた訳だが……。
聞くところによると鉄鋼や鉱石資源の採掘が可能な鉱山や未開拓の山々、森林が多くあるらしい?」

政務官「田舎の隅々まで憲兵団の支部を設立し、治安の維持を厳重に強化した上で王都への繋ぎとなる領主を立てれば円滑に意思の疎通が図れるじゃないか?」

政務官「それらの有効資源確保に人員を当てれば難民問題はほぼ解決し、働き手が増える事で納税率は格段に上昇する?」

高官1「おぉ…!」

高官2「な、なるほど!?」

高官3「た、確かに…それなら財政難を防げる!」

政務官「援助もせずに奪うだけ奪い、搾取するのでは下銭な賊と変わらない。
国というのは民と共にあるべきだ。
我々は民の暮らしと安全を約束する。民は国の利益や必要資源を産み出す。
それでこそ国家と言えるのではないだろうか?」

高官's「おぉっ」ザワッ

政務官「この形が最も健全だと私は思う。
そしていずれは現在の損失を遥かに上回る利益が巡ってくる事だろう」

高官's「おぉぉっ!!!」
54: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:44:51 ID:brIb.FAqgM
政務官「…沈黙を貫いていらっしゃいますが国王はいかが思われる?」

ヒメ「…いいんじゃないか?」シラー

政務官「ではこの方向で進めさせていただきます」

ヒメ「あぁ、あと……お前らの好きな納税義務は当然、ホビットにも課すから心配するな」

高官's「」オロオロ

ヒメ「人口の増加に伴い、様々な問題が産まれるだろうが……。
お前たちの仕事はそういった変化に対する良し悪しの判断だ?」

高官's「はっ!」

ヒメ「新たな職種を増やすとすれば民にしてみても未知の領域だろうな。
お前たちの職務にはそういった発展途上の部分に対する積極的な支援も含まれてる。
身分だ階級だと贅沢を貪る怠け者には務まらないものと思えよ?」

高官's「」ゴクリ

ヒメ「余にある権利は物事の最終判断とお前たちの提案していく政策に是非を下す決定権のみ。
……あくまで民を活かし、育てていけるかはお前たちにかかっている事を忘れるな?」

高官's「」ゴクリ

ヒメ「欲に駆られた今までのやり方を貫けると思うな?
お前たち自身が真剣に取り組み、民と一丸にならねば欲しい見返りは望めぬものと心得よ?」

高官's「ははぁっ!!!!」

ヒメ「以上だ」

政務官「はっ!」

ヒメ「……」

政務官「(やはりヒメ様は聡明だ。このお方と共に歩めば……王国の繁栄は間違いない!)」
55: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:46:44 ID:aMQyUdLMrI
政務官「見事に引き締めてくださいましたな。役人たちの顔付きも変わりましたぞ」

ヒメ「ん…うん、まぁな?」

政務官「…どうかなされたか?」

ヒメ「……いや、なんでもない」

政務官「はぁ…?」

コンコン コンコン

政務官「入れ」

団長「失礼」ガチャッ

政務官「おぉ、団長殿か。城を離れて久しかったが帰っておられたか」

団長「政務官殿も一緒でござったか?」

ヒメ「団長!」

団長「ヒメ様!」

ヒメ「名前で呼ぶな!それよりあいつの捜索は…?」

団長「…かたじけない。鋭意捜索中ですが未だ影さえ掴めておりません」

ヒメ「……!」

団長「支部設立に伴い、手配書を回して参りましたので目撃情報もじきに集まるかと」

ヒメ「分かった…。お前に任せるよ」

団長「…はっ!」

ヒメ「じゃあ政務官、あとは頼む。僕は自室にいるから」

政務官「承りました」

団長「(ヒメ様……)」
56: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:49:21 ID:brIb.FAqgM
団長「…早く見つけてやらんとな」

政務官「ああ、ところで……前大臣の行方を知らないか?」

団長「む?追放した後の足取りは知らんが…あの豚がどうかしたのか?」

政務官「巡礼での出来事が国外に漏れたようでな」

団長「……!癒しの力と大樹の事もか!?」

政務官「あぁ…ある国から、その話について伺いたいと申し出があった」

団長「いったいどこの国なのだ…!?」

政務官「西の国だ」

団長「……!?"魔性のファルージャ"か…!」

政務官「やはり知っていたか?」

団長「世界情勢に気を配る我々、役人がファルージャを知らん訳がなかろう!?」

政務官「…確かに西の女帝ファルージャは有名だな。
妾の身でありながら夫である皇帝を殺害し、第1夫人から第11夫人までことごとく始末した挙げ句に次期皇帝になるであろう皇子達を皆殺しにした悪魔のような女だ」

団長「うむ…何より恐ろしいのはそれらの行為を全て知っていながら西の役人共が黙認している事だ…!」

政務官「凄まじい程に妖艶で…男のみならず女までも虜にしてしまう色香の持ち主らしい?」

団長「しかし国一つ支配する程の蠱惑さとは……いささか信じがたいな」

政務官「その気になれば世界全土を魅了出来るとさえ囁かれている…。
だからこそ平和条約も結ばず、同盟にも加入せず悠々と国を成せるのだろう」

団長「……まさに最悪の相手に目を付けられたな…!」

政務官「ヒメ様にはまだ報告していないが…私がなんとか穏便に取り計らってみよう」

団長「……」

政務官「もしもアントリアが思い描いたような永遠の国などを創らせれば…ファルージャは間違いなく世界を掌握しようと動き出すぞ?」

団長「…それだけはなんとしても避けねばならんな」
57: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:54:22 ID:brIb.FAqgM
政務官「ところでヒメ様が探させている友人だが……」

団長「む?小童なら未だ捜索中だが……」

政務官「そうか。発見したらどうする気だ?」

団長「無論、彼も我が国に迎え入れる!」

政務官「…出来れば発見したら即座に始末してもらいたい」

団長「なにぃ!?」

政務官「癒しの力を持っている彼が消えてくれれば…ファルージャがいくら探りを入れようと徒労に終わるだろう?」

団長「正気か、貴様…!?彼のおかげで我々はこうして…!」

政務官「きれいごとで済ませられるような問題なら私もそうしたい。
だが時には非情さを求められるのが政だ……」

団長「黙れ!ワシは認めんぞ!?」

政務官「……」

団長「貴様!ヒメ様の理想を聞いて心を入れ替えたのではなかったのか!?」

政務官「そのつもりだ。ヒメ様ならば…この国を豊かにしてくださる」

団長「だったら何故ヒメ様から大切な友人を奪おうとするのだ!?」

政務官「国の為だ」

団長「ふざけるなぁ!?歪みきった我が国を変えてくれた恩人を始末するのが国の為か!?」
58: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:56:16 ID:aMQyUdLMrI
政務官「まぁ聞け?たとえ西の国を説得出来たとしても癒しの力がある限り、利用しようと企む輩は内にも外にも現れる?
確かに彼は我が国を変えてくれたかもしれないが…今となっては争いの火種でしかない?」

団長「……!貴様はヒメ様の前でも同じ事が言えるのか!?」

政務官「…始末した後は隠せばいい。これまで通り、探してるが見つからないと……それで十分だ」

団長「この薄情者がぁ!?」ダンッ

政務官「……誰かに聞かれても困る。声を抑えろ」

団長「知るかぁ!!ホビットは今まで我々、人間の身勝手に付き合わされ、苦心してきたのだぁ!?
彼はそんな境遇を嘆いて……たった一人で道を切り開き、多くの仲間を得たんじゃないか!!」

政務官「ふん…その仲間に黙って姿を消した訳だが」

団長「何かの間違いだ!理由があるに決まってる!」

政務官「ならそう思ってればいい?」

団長「やっと…!やっとホビットは解放されたんだぞ…!?
それを貴様は…またも裏切り、踏みにじろうと言うのか!?」

政務官「ホビット族は受け入れる。癒しの力が邪魔だと言ってるだけだ」

団長「同じ事だ!彼を裏切るのに変わりはなかろう!?」

政務官「…熱い男だ?」

団長「愚かだと罵られても構わん…!たとえ西の国と戦争する事になろうと……彼を殺させはせんぞ!!」

政務官「……」

団長「彼の捜索はワシが一任されておる!貴様がなんと言おうがワシは彼を王国に迎え入れるぞ!?」

政務官「…好きにしろ」

団長「失礼する!」ダンッ

政務官「……」

ガチャッ バタァンッ!

政務官「……!」ギリッ
59: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:58:25 ID:aMQyUdLMrI
政務官「ふん…忠義面しているが…元を正せば奴も私もホビット族を差別してきた側だ」スッ カサッ

政務官「まるで正義はこちらにあり…とでも言いたげな口振りだったな」ピッピッ

政務官「」シュボッ

政務官「」スパー

コンコン コンコン

政務官「入れ」

役人1「はっ!失礼します!」スタスタ

政務官「どうだった?」

役人1「政務官のご命令通り、捜索隊を結成しましたが……」

政務官「使えそうなのか?」

役人1「腕は確かかと……しかしよろしいのですか?陛下や団長殿に黙って兵を動かすなど…?」

政務官「問題ない」スパー

役人1「はぁ…ではこちらで取得した情報を元に捜索隊を動かしていきます」

政務官「分かっているとは思うが……」

役人1「はっ!癒しの力を見つけたら……その場で!」

政務官「ならいい?お前は聞き分けがよくて助かる?」

役人1「…しかし、もし陛下に知れれば……」

政務官「知られたくなければ急いだ方がいいだろうな。近衛のようにダラダラやっていると間延びするぞ?」

役人1「……」

政務官「高官の席を一つ空けておく」

役人1「」ピクッ

政務官「私は有能な人間しか認めない。椅子取り合戦は熾烈だぞ」

役人1「……!」

政務官「…有能であると証明出来る人間は出世が速いのだよ。分かるか?」スパー

役人1「お任せを…!すぐに癒しの力を始末します!」

政務官「あぁ、君には期待しているよ」ジュッ
60: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 20:00:56 ID:brIb.FAqgM
―――王室―――

ヒメ「……」カキカキ

コンコン コンコン

ヒメ「入っていいぞ」パタンッ

団長「失礼、王子…ではなく国王」

ヒメ「…好きに呼べよ。堅苦しいのは嫌いだ」ジトー

団長「おぉ…!ではヒメ様!」

ヒメ「名前で呼ぶな」プイッ

団長「」ガクッ

ヒメ「で、なんの用だ?」

団長「おや、急かされるとは…もしや何かなされてましたか?」

ヒメ「あぁ…邪魔された?」ジロッ

団長「へ?あ、いや、かたじけない…」オロオロ

ヒメ「なんてな?返事を書いてただけだよ?」ニコッ

団長「は?」

ヒメ「これだよ?」スッ

団長「これは…?」パシッ

ヒメ「あいつらから届いた手紙だ。全部、アルバムに保管してる」

団長「あぁ!なるほど?孤児院の?」ペラッ

ヒメ「元気にしてるってさ?この前は全員で初めて海に行ったらしいぞ?」ニコニコ

団長「はっはっは…彼らとやり取りしておられたのですか?」パラパラ

ヒメ「…ともだちは大事にしないとな?あいつとの約束だ?」ニコニコ

団長「……」
61: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 20:05:16 ID:aMQyUdLMrI
ヒメ「」カキカキ

団長「何枚も…?」

ヒメ「ルーボイ達と宣教師、4人分の返事だからな。毎回分厚くなるよ」カキカキ

団長「……!」ホロリ

ヒメ「」カキカキ

団長「(やはり…言うべきではないか。政務官の提案を話せば…ヒメ様は即刻、処分を下されるに違いない)」

団長「(悔しいが政務官の政治手腕は確かだ。奴がいなければ現在、進めている外交は見直されてしまうだろう…)」

団長「(…きれいごとで政は成せん、か。嫌でも痛感させられる……)」ググッ

ヒメ「」ジーッ

団長「…ワシの顔になにか?」

ヒメ「働き過ぎじゃないのか…?
激務の合間に時間を取ってあいつを探してくれてるのはありがたいけど……無理はするなよ?」

団長「な、何をおっしゃいますか!?ワシは疲れてなど……」

ヒメ「……じゃあなんで泣いてんだよ?」ボソッ

団長「む?」ピトッ

団長「え…?」ハッ

ヒメ「気付いてなかったのか?やっぱり疲れてるんじゃ……」

団長「と、とんでもない!ヒメ様も日夜、政に励んでおられるのですからワシなどは……」

ヒメ「……」

団長「あっ…も、申し訳ない!国王…でしたな?」アセアセ

ヒメ「好きに呼べって言ったろ?それに僕の名前は役職じゃない?」

団長「さ、先ほどと言ってる事が違いませぬか?」

ヒメ「いいよ。お前だけは許してやる」

団長「……?」

ヒメ「お前は僕が最も信頼を置く家臣だ。だから許してやる」

団長「ひ、ヒメ…さま…!」プルプル
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うpろだ
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