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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


882: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:36:11 ID:XBpzw2ybEc
ヒメ「アリアス!」

初老の女(アリアス)「」ビクッ

ヒメ「ここから出たいか?」

アリアス「あ、あぁうっ…あふぅぅうう!!」コクコクコクコク

ヒメ「それなら僕らの質問に偽る事なく答えろ」

アリアス「あた…し…出してぇ…!」ウルッ

ヒメ「アントリアはここで誰と何を話していた?」

アリアス「だじでょぉぉお!!!」ガシャンガシャン

ヒメ「答えられないのか!?」

アリアス「ダセェェエエエエイイィィアアアヤァァァイ!!!!」ガシャンガシャン

ヒメ「……」

団長「こ、これでは話になりませんな…」アセアセ

アントリア「クックッ…気は済んだかな?」ニヤニヤ

団長「黙れぃっ!!」カッ

ヒメ「…拘束を解いてやれ」

団長「は!?」

見張り1「よ、よろしいのですか!?激しく暴れてますが…!?」

ヒメ「多少はもがくだろうが死人同然の中年女だ。何もできないさ」

見張り1「わ、分かりました…」

アントリア「……?」
883: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:37:38 ID:rR12EivkCY
〜〜〜夜〜〜〜

―――王宮(広間)―――

バクバク ガツガツ ムシャムシャ

給仕1「……」アゼン

給仕2「うわぁ……」ドンビキ

給仕3「うっ…」ウプッ

アリアス「ぐふぅ…!ウゥゥゥ…!」ギロッ

団長「そ、そうがっつかんでも誰も奪いはせん?」アセアセ

アリアス「ぶっ…ングッングッ」ジュルルルル

ヒメ「追加を寄越せ?」

給仕1「は、はい!只今お持ちします!!」ガラガラ

給仕2「た、食べ終えたお皿を下げさせていただきますね…?」ビクビク

アリアス「グァアアア!!」シャッ

給仕2「いっ…!?」サッ

団長「こ、こら!?引っ掻くな!?食器を片付けようとしただけだ!?」

アリアス「ふぅ…!ふぅ…!」ワナワナ

ヒメ「構わないから空の皿に料理を重ねろ」

給仕3「か、かしこまりました…」ビクビク

ヒメ「今日から、この女の身の回りに付いて世話してやってくれ」

侍女1「は、はい…」

侍女2「分かりました…」オロオロ

侍女3「お任せください!」シャキッ
884: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:41:04 ID:rR12EivkCY
―――宮廷(大浴場)―――

ザァァァァァアアア

侍女1「お、お身体を洗わせていただきますぅ…」スッ

アリアス「……」ボーッ

侍女2「わ、私たちだけで大丈夫でしょうか…?」ビクビク

侍女3「手早く済ませて浴槽に放り込んじゃいましょ…?何されるか分かったもんじゃない…!」ブルブル

ゴシゴシ シャワシャワ

アリアス「あっく…!」ズキンッ

侍女1「ひっ!?」サッ

侍女2「い、痛かったですか!?」

侍女3「構わないから続けるわよ!」ゴシゴシ

アリアス「うぅぅぅ……」ボーッ

侍女1「……!」

侍女2「へ、平気そうですね。続けましょうか」

侍女3「すごいアカ?泡がまっ茶色じゃない。汚いわね?なんで私たちがこんな女の世話なんか…!」ブツクサ

アリアス「」ボーッ
885: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:44:14 ID:rR12EivkCY
―――客間―――

アリアス「あぁぁぁうぅぅぅ〜〜………」ファサッ

侍女1「ほ、本当にいいのでしょうかぁ?拘束も無しに寝かせてしまってぇ……」

侍女2「食事中もさんざん暴れた上に嘔吐するまで食べてたって聞くし怖いわ?」ブルブル

侍女3「…あぁやだやだ!汚ならしい!」

ジワァァァァァァァ

侍女1「え?毛布が湿って……」

侍女2「くさっ!」

侍女3「ま、まさか漏らしたの!?」

アリアス「えぅぅううわぁぁあ」モゾモゾ

侍女1「あぁ!だ、大丈夫ですかぁ?すぐに替えの毛布と寝間着をご用意しますからねぇ?」バサッ

侍女2「ベッドもびしょびしょ…別の部屋を用意しないと…」

侍女3「はぁ〜!やだやだ!陛下の頼みじゃなかったら、とてもじゃないけど出来ないわよ!こんな汚い"おばさん"の世話なんて!?」

アリアス「おば……さん?」ピクッ

侍女1「はーい、一旦ベッドから出ましょうねぇ!自分で立てますかぁ?」ガシッ

侍女2「非力な私たちが掴んでも折れそうな身体だし慎重に支えないと…」ガシッ

侍女3「あたしは嫌よ!あんな地下で2年間も埃被ってた"お漏らしババア"なんかバッチくて触れやしない!?」

アリアス「ば、ば…あ」ピクッピクッ

侍女1「そう言わずに手伝ってくださいよぉ」

侍女2「そうですよ。私たちだって我慢してるんですから?」

侍女3「じゃあもうそのまま小水まみれのベッドに寝かしときなさいよ!臭いしベタつくし気持ち悪いのよ!」

侍女1「そんなことしたら陛下に叱られますぅ」

侍女2「それにこれは私たちの評価を上げる絶好の機会だっておっしゃったのは貴女じゃないですか?」

侍女3「そ、そりゃね?普段の陛下は隙がないし、ろくにお世話もさせてもらえないから…お近付きになるには良い機会だと言いましたけれど…」モジモジ

侍女1「(要するに玉の輿狙いでしょ)」シラー

侍女2「(陛下があんたなんかに振り向く訳ないじゃないのよ。身の程知らず…)」シラー
886: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:46:10 ID:rR12EivkCY
侍女3「なによ、その目は?」ギロッ

侍女1「い、いえぇ…べつに?」アセアセ

侍女2「なんでも?」

アリアス「……!?」ブチブチィッ

侍女1「ほえ…!?」ビクッ

侍女2「!?」ギョギョッ

侍女3「は?なによ?」

アリアス「…ぇうぐ…!!」ギリッ

侍女1「お、怒ってるぅ!?」パッ

侍女2「こわっ!」パッ

サササッ

侍女3「あ、あんたたち!?」

アリアス「」ジリッジリッ

侍女3「こ、来ないで!叫ぶわよ!?」ズザザッ

アリアス「」ジリッジリッ

侍女3「え、衛兵さ……」

アリアス「」バッ ガシッ

侍女3「ギャーッ!?」ギョギョッ

ギャーギャー ジタバタ

侍女1「た、大変…!衛兵さん達を呼んでくるぅ!」ダッ

侍女2「わ、私も!」ダッ

侍女3「あ、あんたたち!?たすけ……いだぁっ!?噛みつかれたぁ!?」ジタバタ

アリアス「あえんやあいあよ、おうふえあぁ!?」ガブカブ

イヤァァァァァァァ!!
887: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:47:27 ID:XBpzw2ybEc
〜〜〜1週間後〜〜〜

ガチャッ ガラガラ

侍女1「は、はーいぃ…お食事お持ちしましたよぉ?起きてますかぁ?」オソルオソル

アリアス「……」

侍女1「お、おはようございますぅ。置いておきますねぇ」ビクビク

コトッ コトッ

アリアス「……」

侍女1「…で、では失礼しま……」スッ

アリアス「」ツツー

侍女1「え!?」ギョギョッ

アリアス「ふっ…く……」ポロポロ

侍女1「(な、なになに?なに!なんなの!?)」アワアワ

アリアス「っ…なんでも、ないわよ!」グシッ

侍女1「喋ったぁ!?」

アリアス「はぁ…?喋って何が悪いのよ?」ジロッ

侍女1「あ、いやや、べ、べべ別に悪くなんて…!?」アタフタ

アリアス「…いただくわ」スッ

カチャカチャ パクッ モグモグ

侍女1「(さ、昨夜までずっとおかしかったのに…!?)」

アリアス「(あぁ…美味しい)」フッ

侍女1「(あ…意識が戻ったら陛下にお伝えしないと!)」ハッ
888: 名無しさん@読者の声:2015/7/30(木) 22:48:45 ID:6iwqECQfdc
侍女1と2は優しい人みたいだ
889: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:51:02 ID:XBpzw2ybEc
―――王宮(謁見の間)―――

ヒメ「目が覚めたそうだな?」

アリアス「はい。はっきりと」

ヒメ「そうか」

アリアス「まことに感謝申し上げるよりほかございません」ペコッ

ヒメ「気にするな」

アリアス「地下で過ごした2年は地獄そのものでした」

ヒメ「……」

アリアス「ですが陛下の恩情によって、こうして再び地上に戻る機会をいただけて…久しぶりに人間らしい生活を送らせてもらえました」

ヒメ「…どうだった?久しぶりの地上での生活は?」

アリアス「…本心から、本心から……後悔しております」

アリアス「浅ましい欲に駈られ、ノワール司祭の側で見過ごし、自らも犯してきた過ちを……」

アリアス「この一週間、言葉を忘れ、眩しさに目を痛め、身体中から力が失われたように何をするにも不自由致しました。
食器を持つ手がおぼつかなく…身体を清める湯の熱に強張って…与えていただいた柔らかなベッドに横たわって眠ることさえ落ち着きがなく……」プルプル

アリアス「当たり前に出来ていたことが…まるで初めてのように感じられて…!」ググッ

アリアス「これまで普通に思えていたこと全てが…恵まれた物だったのだと気付かされました…。
自分が裁かれた理由も……今なら受け止められます」

ヒメ「そうか…」
890: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:54:20 ID:XBpzw2ybEc
ヒメ「…これからも地上で暮らしたいと思うか?」

アリアス「許されるのであれば…そうさせていただきたいと願います。ですが…私の罪はあまりにも……」

ヒメ「…罪は大きいよ。あれだけ多くの人とホビットを巻き込んでしまったんだから」

アリアス「っ…!」ブルッ

ヒメ「でも…軽い罪だって簡単に許していい訳じゃない。
その逆で重い罪にしたって絶対に許されない訳じゃないんだ」

アリアス「……?」

ヒメ「おまえが本気で許されたいと願うなら…反省を忘れず地上で暮らせ」

アリアス「へ?」

ヒメ「人は厳しい。きっとほとんどの者がおまえを許しはしないだろう」

アリアス「……」ズーン

ヒメ「それでも腐らないで穏やかに、誰も恨まずに生きてくれたら…僕はおまえを許すよ。
たとえ死んでも…おまえが罪に報いてまっとうな人生を送った事を僕が覚えておく?」

アリアス「……!」

ヒメ「もう地下には戻るなよ?国王は罪人の嘘に踊らされた大馬鹿者だったと国民達に囁かれるのは御免だからな?」

アリアス「〜〜〜…はい!!」ウルウル

ヒメ「…心なしか顔色も良くなったな?」ニコッ

アリアス「そうでしょうか…?」グシッ

ヒメ「うん。10歳くらい若返ったんじゃないか?」ニコニコ

アリアス「……!そ、そうでしょうか!?」デレデレ

ヒメ「(まぁ見た目70から60になったくらいの変化だけど)」

アリアス「ふ、ふふ…ふふふ…!」ニヤニヤ
891: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:56:19 ID:XBpzw2ybEc
スタスタ スタスタ

ヒメ「来たか」

アリアス「は?」クルッ

団長「遅くなりまして申し訳ない。連れて参りましたぞ」

衛兵1「ほら、自分で歩け!」グイッ

アントリア「クッ…!老いさらばえた身に容赦なく縄引くとは…君は家臣にどういう教育をしているのだね?」ギシギシ

アリアス「あ、アントリア…!?」

アントリア「やあ、アリアス君。少し見ない間にずいぶん生気を取り戻したじゃないか?」クスッ

アリアス「あんたが…あんな言葉をかけてきたから…!?」ワナワナ

アントリア「ふっ…」

ヒメ「なにかあったのか?」

アリアス「こいつが…地下であたしに語りかけてきたのよ!
あの暗く気味悪い地下で…身体も心も動かせない最低な状況下で…絶望を煽るような言葉を…ずっとずっとしつこく何度も何度も何度も繰り返し繰り返し……」ブツブツ

ヒメ「……」

アリアス「…おかしくならない訳がないじゃない…!
こいつのくぐもった笑い声が今も焼き付いて離れやしない…!!」クシャッ

アントリア「クックッ…」

アリアス「笑うなぁっ!?」キーッ

団長「こいつめ…!?」ギリッ

ヒメ「……」
892: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 22:59:49 ID:rR12EivkCY
ヒメ「…役者が揃ったな」ボソッ

アリアス「!?」クルッ

政務官「これは…いったい?」ポツン

ヒメ「遠方視察、ご苦労だったな。戻ってきて早々になるが付き合ってもらうぞ?」

アントリア「…リルラ君」ジッ

政務官「な、なぜ貴様が…!?」ハッ

ヒメ「静かにしろ」

政務官「陛下…!」

アントリア「……」

ヒメ「アリアス、おまえに聞きたい」

アリアス「え?」ビクッ

ヒメ「これまでアントリアは地下で政務官と何を話してきた?」

政務官「なっ…なんのことだ!?」アセアセ

団長「知らばっくれても無駄だ!すでに調べは付いておるわ!!」カッ

政務官「だ、黙れ!そんな罪人に何が証明出来る!?」

ヒメ「アリアスは地下でアントリアの隣に閉じ込められてたんだ。当然、会話は聞こえてたよな?」

アリアス「……」

団長「正直に言え!?」ズイッ

アリアス「ひっ」ビクッ

ヒメ「よせ、団長!」

団長「は…!」スッ

ヒメ「…頼む。僕の力になってくれ」ジッ

アリアス「!!!」ポッ

政務官「くっ…!」ギリッ
893: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:01:54 ID:rR12EivkCY
政務官「よ、読めたぞ!貴様ら、この女に好条件を持ちかけ、私を貶める証言を言わせる気だろう!?」

団長「何を言う!?陛下が卑劣な手段を用いたとでも言うのか!?」

政務官「こんなものは茶番劇に過ぎない!絶対に認めんぞ!?」

団長「えぇいっ!見苦しい奴め!それ以上しのごの抜かすと叩っ切るぞ!?」

ヒメ「落ち着け!!」

シーン

ヒメ「…アリアスはただ聞いたままの事を話すだけだ。おまえの疑いを晴らすには絶好の機会だろ?」

政務官「そちらが虚偽を促している可能性がある以上、この場においてのやりとりは公平ではない!!」

団長「なにを貴様ぁぁ!?」

ヒメ「アリアスは昨夜まで精神的に衰弱していて会話もままならなかった。それは城の人間全員が証明してくれる」

政務官「だ、だが…!」アセアセ

ヒメ「今のアリアスは絶対に嘘はつかない」

政務官「なぜそう言い切れる!?」

ヒメ「過去の罪を懺悔して心を入れ換えたからだ!」

アリアス「」キュンッ

政務官「そんなのは何の意味も成さん!罪人の言葉など信じられるか!!」

アリアス「(陛下………)」ドキドキ

ヒメ「アリアス!おまえは真実を知ってるんだろ!包み隠さず全てを話せ!?」

アリアス「…い、いいわよ。私の知ってる限りでよければ話してあげても?」テレッ

政務官「なに…!?」ギロッ

アントリア「……」ジッ

ヒメ「アリアス…!」パァァ
894: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:06:59 ID:XBpzw2ybEc
アリアス「アントリアはその男より前に大臣と会っていたわ」

団長「大臣…!?あの豚か!?」

アリアス「えぇ、そうよ」

政務官「あ、アントリア…どういう事だ!?」ジッ

アントリア「……」

アリアス「…話の内容はほとんど理解してないけれど、ある指示を促していたのは覚えてるわ」

ヒメ「それは?」

アリアス「永遠の命にまつわる癒しの力と伝説の大樹の情報を…西の女王に聞かせてやれ、と」

ザワッ

アリアス「その後、何度かそこの政務官と会っていたのはぼんやり覚えてるけれど…。
それについては正直、話せる事はないわ。あの時にはもう…私は正気でなかったから」

ヒメ「十分だ。よく打ち明けてくれたな。助かったよ?」ニコッ

アリアス「!!!」ドッキュン

政務官「き…さま…!い、今の話は本当か…!?」ワナワナ

アントリア「…あぁ、そうそう。そうだった。思い出したよ?」

政務官「……!?」

アントリア「このままでは領地と財産を没収され、果ては追放されてしまうと…憔悴しきった大臣から助言を頼まれたものでね?」ニヤリ

団長「またしても…!」ギリッ

ヒメ「僕らは全員、こいつに踊らされてたようだな」

政務官「おのれぇぇええ!!」ガッ

アントリア「ぐっ…!」ギシッ

ヒメ「団長、止めろ!」

団長「やめんか、貴様ら!?」バッ

政務官「離せぃ!!殺してやる!?こいつは……」ジタバタ

団長「こらえろ!陛下のご命令に従えんのか!?」ガッチリ

アントリア「まったく困ったものだ?」ゴホッゴホッ
895: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:11:15 ID:rR12EivkCY
ヒメ「よくもまぁ懲りないよな?」シラー

アントリア「……」

ヒメ「カロルを始末させようとしたのも、西の国とこじれさせたのも…復讐を狙っての事か?」

アントリア「…クックッ!復讐?そんな生易しいものではないよ?」ニヤニヤ

ヒメ「?」

アントリア「君たちは無知で無力で無価値な無能そのもの…。
烏合の衆が依り集まって治世の真似事をしてみたところで…この国は滅びを待つばかりだ。ならば滅んでしまえばいい」

政務官「なんだとぉ!?」ジタバタ

団長「くっ…!」ガッ

アントリア「僕は君たちに一度、敗北を喫した。それは認めてやってもいいが…あんな勝利は言うなれば偶然だ?」

アントリア「たまたま君たちに都合のよい出来事が重なっただけであって…知恵も采配も何もかも全て僕が上回っていた?」

ヒメ「相変わらずくだらない奴だな?」

アントリア「認めたまえよ?全てを失い、誰一人味方さえ居なくても…僕の才知は君たちの遥か上を行くと証明されたのだ?」

アントリア「もう西の国との衝突は免れまい?君たちは敗北したのだよ。この僕に!?」ニタァァァァ

政務官「ぐっ…く…!?」

団長「っ……たったそれだけの理由で…こんな事態を招いたと言うのか!?」ギリギリ

アリアス「な、なんて…おぞましい……!?」ゾクッ

アントリア「さぁ閉じ込めるなり殺すなりどうとでもするがいいさ!間抜けな敗北者諸君!?」

団長「陛下!ここはワシに…!」

ヒメ「ふん…」
896: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:15:07 ID:rR12EivkCY
団長「陛下!ご命令を!?」

ヒメ「殺したところでこいつの思うつぼだ」

団長「し、しかしそれではまたいつ何をしでかすか…!?」

ヒメ「…西の国と王国をぶつけて滅ぼすのが目的だったんだろ?」

アントリア「そうさ。出来れば最期まで見届けたかったがね」

ヒメ「なら…この勝負、おまえの敗けだ?」

アントリア「…なに?」ピクッ

ヒメ「王国はこれからも続いていく。おまえの起こした些末な問題など苦にせずな?」

アントリア「どうやって…!?」

ヒメ「それはこれから考えていくさ?そうだろ、政務官!」

政務官「は…!?」ビクッ

団長「も、もしやリルラまでも許されようとなさって…!?」

ヒメ「…甘いのは分かってるよ。けど今は一人も欠けていられないだろ?」

団長「し、しかしですな!?」

ヒメ「しかし、しかし、うるさいな!決めるのは僕だ!?」ムキーッ

政務官「よ、よろしいのですか…!?」

ヒメ「…頼る相手を間違えただけで国を良くしたかった気持ちは変わらないんだろ?」

政務官「…は、はい。陛下のお側に仕え、王国の繁栄に尽力したいと願っております」

ヒメ「なら、もう一人で先走るな!頼るべき王はここにいる!」

政務官「陛下……」

ヒメ「子供だろうと経験が浅かろうと関係ない!おまえの君主は僕だ!」

政務官「……!」

ヒメ「もしそれでも頼りないと感じるなら…おまえら役人が団結して僕を素晴らしい国王に盛り立てろ!?」

政務官「……ははーっ!!!」ザッ

団長「ははーっ!!」ザッ
897: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:18:11 ID:XBpzw2ybEc
アントリア「ハハハハハハ!!!」

団長「む…?何がおかしい!?」ギロッ

アントリア「まったく成長しないものだ…?」クスクス

ヒメ「成長してないのはおまえだ。いつまでも同じ事を繰り返してみじめにならないのか?」

アントリア「クックッ…みじめな末路を辿る君たちに言われる筋合いはないよ?」

ヒメ「おまえの思い描く予想なんて軽く覆してみせるさ?」

アントリア「君では無理だと思うがね?」

ヒメ「僕一人の力じゃない。全員の力で解決してやる!」

アントリア「皆で造り上げる国家か…。君が最初に掲げた政策だったね」

ヒメ「…そうさ。必ず実行に移してみせる!」

アントリア「…いいだろう。楽しみにしているよ。君たちがどこまでやれるのかをね?」ニヤニヤ

ヒメ「…おまえが負けたらどうする?」

アントリア「……?」

ヒメ「もしこの問題を解決したら僕の命令を一つ聞いてもらうぞ?」

アントリア「…国王が罪人に何を命じると言うのだね?」

ヒメ「…空白の歴史を埋めてもらう」

政務官「……!」ハッ

アントリア「……!…なるほど、君もそういった物に関心を持てる程度には視野が広まったか?」ニヤリ

団長「な、なんだ!空白の歴史とは?」

政務官「おそらく70年前に起こった終わらない争い…その抹消された歴史を蘇らせようとなさっているのだろう…!」

団長「終わらない争い…!?」

政務官「その時代を生きた人間の中でも…ラーダ家の者は特に関わりが深かった筈だ」
898: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:20:55 ID:rR12EivkCY
ヒメ「腐ってもノワール司祭とおまえは元歴史学の権威だったんだろ?
ならこれくらいの頼みは快く引き受けてくれるよな?」

アントリア「…もちろんだとも?」

ヒメ「誓ったな?」

アントリア「口約束でいいのかね?」

ヒメ「これはおまえが仕掛けた勝負だ。決着がどうあれ勝敗は潔く認めてもらうぞ!」

アントリア「…クックッ!」

団長「貴様、なにがおかしい!?」

アントリア「…やはり成長が見られない。だが…それでこそ、なのかもしれないね?」ニヤリ

ヒメ「なに言ってるんだ、おまえは…?」キョトン

アントリア「せいぜい無意味なあがきを続けてくれたまえ。
地上から断末魔の悲鳴が上がるのを…地の底で聞き耳たてながら待っていてあげよう?」ニヤニヤ

ヒメ「…それまでにおまえの寿命が尽きなければいいけどな?」フンッ

アントリア「クックッ…減らず口ばかり達者だね」ニヤニヤ

ヒメ「衛兵!そいつを地下に戻せ!」

衛兵1「はっ!来い!」グイッ

アントリア「っ…!扱いが乱暴じゃないか…!?」ギシッ

衛兵2「この者はいかがなさいますか?」

アリアス「えっ」ビクッ

ヒメ「そいつは今日から晴れて自由の身だ。住居が見つかるまで客間に宿泊させてやれ」

衛兵2「ははっ!」

団長「まことによろしいので…?」コショコショ

ヒメ「約束は守るさ。それが出来ない奴は罪人よりも罪深い」

団長「…承知しました」

アリアス「あぁぁ…!陛下ぁぁ……」ウットリ
899: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:22:57 ID:XBpzw2ybEc
政務官「…大変申し訳ございませんでした」

団長「まったくだ!貴様、なぜあんな奴に助言など求めた!?」

政務官「……」

団長「はっきりせんか!?」

政務官「昔から…そうだったのだ」ボソッ

団長「あぁ!?なんだ、聞こえんぞ!?」

政務官「私の家柄は爵位が低く…役人となった後も様々な隔たりに悩まされた」

団長「だからどうした!」

政務官「奴しか頼れなかった…。ラーダの名を冠するアントリアの力を借りなければ…意見はおろか発言の一つも認めてもらえなかったのだ!」ダンッ

団長「!?」

政務官「…まさか奴の支配を逃れてさえも容易く操られてしまう程、自分という物を確立出来ていなかったとは…!」ググッ

ヒメ「もういい。さっさと切り替えろ」

政務官「……!」

ヒメ「こんな所で突っ立ってたって何も解決しないだろ?」

政務官「…はっ!」ウルッ
900: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:25:00 ID:XBpzw2ybEc
団長「ではワシも力になれるよう奮闘するとしますかな…」スッ

ヒメ「あぁ団長、ご苦労だった。おまえはしばらく休んでいいぞ?」

団長「は!?」ギョギョッ

ヒメ「休暇をやるから、たまには家族と過ごせ」

団長「な、なりませぬ!この恐ろしい状況下でワシだけが……」アタフタ

ヒメ「だってなぁ…?」ポリポリ

団長「な、なんだと言うのです!?」

ヒメ「西の国との問題は頭を使う事になるし…そうなるとあんまり役に立たないじゃん?」

団長「んなっ!?」ガーン

政務官「ここはひとまず我々に任せておけ」ポンッ

『あんまり役に立たないじゃん』
『あんまり役に立たないじゃん……』
『あんまり役に立たないじゃん……………』

団長「そん……な…バカな………」ズーン

ヒメ「じゃあ政務官、行くか!団長、とりあえず1ヶ月、ゆっくり静養しろよ?」スタスタ

政務官「よかったな。ではまた後程…」スタスタ

団長「……」

スタスタ スタスタ…………

団長「」ガクッ

団長「なぜワシばかり、こんな仕打ちをぉぉ…!」シクシク

団長「うおおおおお!!!!」ダンッ

ダンッダンッ ダンッダンッ
901: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/30(木) 23:32:16 ID:XBpzw2ybEc
>>888
優しい人に介護させた方がアリアスを改心させるのも違和感ないかなーと思って意地悪な侍女は一人だけにしましたw
感想ありがとうございます!

ところで容量が1000に達しそうなのですが…もしかして1000を越えると書けないんですかね?
次スレ立てた方がいいんでしょうか?
902: 名無しさん@読者の声:2015/7/30(木) 23:39:43 ID:6iwqECQfdc
1000を越えると書けなくなりますので、次スレをたてるのが良いと思いますよ
すごく面白いから、次スレがたったら絶対に読みます!!
903: ◆WEmWDvOgzo:2015/7/31(金) 08:26:20 ID:L1eSiQSdPw
>>902
ご親切にありがとうございます!
かれこれ次で4スレ目になってしまいますが、それでもお付き合いいただけるなんてものすごく嬉しいですw

ではこのスレは保管庫依頼して次回の更新と同時にスレを立てさせていただきますね!
ここまで読んでくださってありがとうございました!
904: 名無しさん@読者の声:2015/8/6(木) 15:27:44 ID:f00VG4nklY
次スレも見るよ!C
905: ◆WEmWDvOgzo:2015/8/7(金) 22:23:26 ID:ZFPiUvN3BQ
>>904
ありがとうございます!
おかげさまでモチベーションがMAXに達してますw
次スレで完結させてみせます!
906: 真・スレッドストッパー:停止
停止しますた。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
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