1スレ
少年「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10
2スレ
カロル「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10
―――あらすじ―――
それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました
しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました
そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです
戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました
布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました
それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします
62: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 20:10:31 ID:aMQyUdLMrI
ヒメ「…ごめんな。こんな事でしか労ってやれないけど…すごく感謝してるんだぞ?」
団長「こ、こんな事なんて滅相も…!ワシには…もったいのうございます…!」グシグシ
ヒメ「……落ち着いたら、ちゃんと休暇も取らせるから。家族に会えなくて辛いだろ?」
団長「うぅ…!か、感無量にござる…!
貴方様のお気遣いくださり……それだけでワシは力がみなぎりまするぞ!」ズズッ
ヒメ「おかしな奴だな…?もっと欲張ってもいいんだぞ?なんなら捜索も中止していいし……」
団長「なりません!」
ヒメ「……?」
団長「貴方様にとってかけがえのない友人を離ればなれになど…このワシがさせませんぞ!!」
ヒメ「でも…それは……僕のわがままだ。
一部の人間からは無駄に人員を割いて国力低下を煽ってるとも囁かれてる…」シュン
団長「陰口など言わせておけばいいのです!!
我々の主である限り、貴方にはわがままを言う権利があるのです!!」
ヒメ「……」
団長「ヒメ様こそ!もっと欲張られてはいかがか!?」
ヒメ「え…?」
63: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 20:12:20 ID:brIb.FAqgM
団長「そうして手紙でのやり取りを続けている間も……本当は会いたくて仕方がないのでしょう!?」
ヒメ「……!」グッ
団長「我々は国を預かる責任者である前に…一人の人間なのです!
全てを国に捧げる必要などござらん!民も役人も国王も一丸となって支え合うのが国家というもの!
時には立場を忘れ、羽目を外したっていいんです!!」
ヒメ「う、うるさいな!そうもいかないから……」カッ
団長「思い出してみなされ!今、ワシが言った事は…かつての貴方がおっしゃった事ですぞ!?」
ヒメ「」ピクッ
団長「…責任に縛られ、自由を諦めるくらいなら身分などいらないと…おっしゃったではありませんか?」
ヒメ「……」
団長「いいのですよ…。わがままで…?」
ヒメ「…まだ早い」
団長「は?」
ヒメ「僕はまだ…あいつに約束した国作りを出来てない」
団長「……!」
ヒメ「わがままを言うのはきちんと約束を果たしてからだ。
そうしないと…あいつに一生会えないかもしれないじゃないか」
団長「……くっ!」ギリッ
ヒメ「…でも一つだけならいいかもな」
団長「!」
ヒメ「必ずあの親子を見つけて…僕に会わせてくれ?またあいつと他愛なく笑って話したいんだ?」ニコッ
団長「…お約束致します!このワシが絶対に見つけてみせますぞ!!」
64: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 20:17:01 ID:aMQyUdLMrI
ヒメ「よし…」
団長「書き終えましたか?」
ヒメ「まぁな。悪いけど配達所に送ってもらっていいか?」スッ
団長「お安いご用です!」パシッ
ヒメ「…あ、そうだ」
団長「? なにか?」
ヒメ「いや、お前…なんか用があって来たんじゃないのか?」
団長「」ハッ
『癒しの力を始末してもらいたい』
団長「……!」
ヒメ「……?」
団長「いえ!何もございません!ただ久しぶりに戻って参りましたのでヒメ様のお顔を拝見したく!」
ヒメ「は…?」ススー
団長「ど、どうなさいました?」
ヒメ「い、いや…なんか言い回しが気持ち悪かったから…?」ドンビキ
団長「っ!?」ガーン
65: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:41:38 ID:zZ0LLNhnzs
―――王国(西の領土)―――
山賊1「しけてんなぁ…マジで一文無しかよ」
カロル「」ピョンピョン
山賊2「いつまで跳ねんだ!ジャラジャラ言わねぇのにうっとうしんだよ!」
カロル「飛べって言うから…?」スタッ
頭目「ガキぃ…おめぇ、なんでこんな山奥に入った?」
カロル「えっと…食べ物、探しに来たんです」マゴマゴ
頭目「けっ…山はよ、山賊のモンだ?おめぇ、税金払わずに入ったよな?」
カロル「ぜ…きん?」キョトン
山賊1「金でも食料でも女でもいいから払えや!」
山賊2「さもなきゃ町でかっぱらいでもさせるか?」
カロル「ご、ごめんなさい!ボク…なんにも分かんなくて……」
山賊1「んだとぉ!?」
頭目「よせよせ、それよか俺に考えがある」
山賊2「なんすか?考えって?」
頭目「こいつ綺麗なツラしてると思わねぇか?」
山賊1「確かに…最初メスと間違えましたぜ」
山賊2「……」ゴクリ
カロル「(あれ…?前にもこんなことあったような気がする?)」
頭目「どっかの変態に売ればいいんだよ!」
山賊1「おお!なるほど!」
カロル「やっぱり!?」ガーン
山賊2「いやいや、頭、俺たちで食っちゃうってのも……」
頭目「は?」
山賊1「おめぇそっちなの?」
カロル「……?」キョトン
66: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:43:28 ID:zZ0LLNhnzs
〜〜〜想像(カロル)〜〜〜
グツグツ グツグツ
山賊1「お、煮えてきた、煮えてきた。頭!ホビットのスープが出来ましたぜ!」
山賊2「犬の丸焼きも出来ましたぜ!」
頭目「よーし、食うか!」
ガツガツ ムシャムシャ
…………………
カロル「……!」ブルッ
マルク「くぅん?」
山賊2「これぐらい綺麗ならイケますって!」
山賊1「うーん、それもそうか」
頭目「最近、溜まってるしなぁ…」
カロル「マルク!逃げるよ!?」ダッ
マルク「あんっ!」ダッ
山賊1「あ!待て!」
頭目「取っ捕まえろぉ!!」
山賊2「たりめぇよ!!」ダッ
ダダダーッ
67: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:44:43 ID:zZ0LLNhnzs
〜〜〜〜〜〜
カロル「はぁ……危なかったね、マルク?」
マルク「わんっ!」
カロル「…キノコしか取れなかったよ。足りるかな?」
マルク「うぅ〜…」
カロル「ごめん…。マルクもお腹空いてるでしょ?」
マルク「」ブンブン
カロル「無理しなくていいのに…?そういえばマルクはなんでみんなと行かなかったの?」
マルク「?」
カロル「ボクといるよりみんなといた方がよかったと思うな?」
マルク「クゥーン」スリスリ
カロル「…ボク一人じゃマルクにひもじい思いさせちゃうもの。そんなのやだよ」
マルク「わぅんっ」シッポフリフリ
カロル「それでもいいの?」
マルク「あんっ!」コクリ
カロル「ふふ…変なの?」ニコッ
マルク「」ペロペロ
カロル「あはは!もう…マルクったら」ニコニコ
マルク「わん?」キョロキョロ
カロル「うん。もう追ってきてないよ?戻ろっか!」
68: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:46:32 ID:0fd8NEJ9sQ
―――山小屋―――
ガチャッ
カロル「ただいまー!」
マルク「わうんっ」
母「…おかえりなさい。食べ物採ってこれた?」
カロル「あ…えと…キノコしかなくて…」
母「キノコが採れたの?すごいじゃない!」
カロル「えへへ…ちょびっとだけど」テレテレ
母「…ごめんなさいね。本当はあたしが……」
カロル「ううん、いいの!外で遊ぶついでだから!ね、マルク?」
マルク「あんっ!」
母「…人間に会わなかった?」
カロル「平気だよ!誰とも会ってないから!」
母「そう…じゃあご飯にしましょうか。キノコ貸して?」
カロル「はい?」スッ
69: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:48:17 ID:0fd8NEJ9sQ
キノコ料理「」プスプス
カロル「わぁー!真っ黒けでおいしそー!」パァァ
母「そう?よかったわ?」ニコッ
マルク「……」ゼツボウ
母「マルクも体大きいんだから食べなきゃダメよ?あたし達に遠慮しないで?」
マルク「あうぅ〜ん…」シュン
カロル「」モグモグ
母「どう?」
カロル「おいしーよ!」ニパッ
母「…王都で食べたのはもっとおいしかったでしょう?」
カロル「ううん?ボクね、お母さまが作るの全部好き!」
母「……!」ジーン
カロル「お母さまが作ってくれるから毎日ご馳走なんだ?」ニコニコ
母「…ありがとう。作った甲斐があるわ?」
カロル「マルクも食べなよ?お腹ペコペコでしょ?」
マルク「……」パクッ
マルク「!?」ゲキマズ
母「やっぱりおいしくなかった…?」ハラハラ
カロル「そんなことないよ!ね?」
マルク「あ、あんっ!」シッポフリフリ
カロル「ほら!おいしーって?」
母「そう…?」ニコッ
70: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:51:28 ID:0fd8NEJ9sQ
カロル「お母さまー!一緒に寝ていい?」
母「毎日一緒に寝てるでしょう?」クスッ
カロル「うん!マルクもおいでよ!」
マルク「わふーん!」バッ
母「甘えんぼさんね?」クスクス
カロル「甘えんぼでいいもん!ねー?」ギュッ
マルク「わぅんっ」スリスリ
母「あらあら…?」ニコッ
71: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 21:00:11 ID:0fd8NEJ9sQ
マルク「」スヤスヤ
カロル「ねぇねぇ、お母さま」グイッ
母「なぁに?坊や?」
カロル「…明日はいっぱい食べ物取ってくるからね!」
母「いいのよ。坊やとマルクの分だけあれば…」
カロル「お母さまにもお腹いっぱい食べさせたいの!」
母「うふふ…二人がお腹いっぱいならあたしもお腹いっぱいよ?」
カロル「そんなのダメ!今日はボクが食べたから明日はお母さまが食べてね?」
母「坊やが食べないならあたしも食べないわよ…?」
カロル「えー!やだよ、そんなの!」
母「…昔みたいにあたしが取りに行けたらいいんだけど」
カロル「いいよ。ボクがいるもの?」
母「…ごめんなさい。あたしが人間を嫌がるから」
カロル「気にしなくていいってば?」
母「あれからどれくらい経ったのかしらね…」
カロル「…わかんない」
母「あたしのせいでごめんね…。ホントならみんなと幸せになれたのに…」
カロル「言ったでしょ?ボクが決めたんだって!」
母「…不幸な昔に逆戻りさせちゃったわね」
カロル「不幸じゃないもん!」
母「あたしは幸せよ?でも…坊やの幸せはこんな形じゃない筈よ」
カロル「ボクはお母さまと一緒がいいの!」
母「…優しい坊やに無理させて母親失格ね」シュン
72: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 21:10:35 ID:zZ0LLNhnzs
カロル「お母さま、お母さま」グイグイ
母「なぁに?」
カロル「ボクを見てよ?」
母「…いつも見てるでしょう?」
カロル「じゃあいつもツラそうに見える?」
母「…あたしに気を遣ってるかもしれないじゃない?」
カロル「…ボク、お母さまにウソつかないよ?」
母「…知ってるわ?あなたは優しい子だから」
カロル「ボクね、お母さまがいると安心するんだ?」
母「あたしもよ?」
カロル「遊びに行く時、お母さまに『いってらっしゃい』って言われないと落ち着かない…」
母「……?」
カロル「帰ってきて『おかえりなさい』って言ってくれるのがお母さまじゃなかったらやだ…」
母「……」
カロル「お母さまが作ってくれる真っ黒けなご飯、食べれなくなったら悲しい…」
母「……」
カロル「どんな幸せよりもお母さまと一緒がいいんだもの?」
母「……!」ウルッ
カロル「…不幸になったって平気だよ?
お母さまがそばにいてくれたら何回でも幸せになれるもの?」ニコッ
母「〜〜〜!」ウルウル
カロル「おやすみなさい?」
母「……ゔん、おやすみなさい?」グスッ
73: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/21(金) 21:51:41 ID:3wYAsB3RjM
―――山林(畑)―――
カロル「マルク、ちょっぴり重たいけど我慢してね?」ブチッ
マルク「あん!」ガッチリ
カロル「じゃあ篭に入れるよ?」ポイッ
マルク「わんっ!」
カロル「よかったー!こんな所に果物が成ってて」ブチッ ポイッ
老ホビット「ん…おい、ボウズ!儂の畑で何をしとる!?」スタスタ
カロル「え?」クルッ
マルク「わう?」
老ホビット「儂が丹精込めて育てたハグの実に何をしとると言うとるんじゃ!」
カロル「この果物…おじいさまのなの?」
老ホビット「そうじゃ!この泥棒め!」
カロル「ご、ごめんなさい!返します!」ガサゴソ
老ホビット「もいだ後じゃ遅いわ!?」
カロル「あう……」シュン
老ホビット「あ〜あ!なにしてくれとんじゃか?せっかくの実が台無しじゃ!」
カロル「……」ズーン
老ホビット「見て分からんか?どれもまだ熟しておらんじゃろうに?」
カロル「は、はい…」
老ホビット「こいつが立派に実るにはな、あと4ヶ月かかるんじゃ!老体にむち打ち世話してきたっちゅうのに」
カロル「あ…その……」
老ホビット「あぁ!?言い逃れなんぞさせんぞ!?」
カロル「」パシッ
老ホビット「ボウズ!まだ実をもぐ気か!?子供じゃからと大目に見とれば調子に……」
74: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/21(金) 21:53:15 ID:3wYAsB3RjM
フワッ
老ホビット「……あ!?」
カロル「これで食べられますか?」スッ
老ホビット「ぼ、ボウズ…何をした?青い実が……一瞬で熟成してしまったじゃないか!?」
カロル「おじいさまの実を取ったお詫びに全部実らせてあげるね?」パシッ
フワッ フワッ フワッ フワッ
老ホビット「お、おぉ…!?おぉぉ……!?」ワナワナ
カロル「取った実も返しますね?ごめんなさい?」スッ
老ホビット「い、いや…そんなことより一体どうやって?」
カロル「……ナイショです?」
老ホビット「…も、もしよかったら他の作物も頼めんか?礼にいくらか分けてやるぞ?」
カロル「ホント!?」
老ホビット「あ、あぁ!世話なしに実るならそれ以上にいい事はない!」
カロル「やったー!マルク!今日は篭が重たくなるよ?」
マルク「わふーん!!」
老ホビット「…こっちじゃ。来てくれ!」スタスタ
カロル「はーい!」スタスタ
75: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/21(金) 21:57:15 ID:lBZMgJx./k
老ホビット「やあ助かったわい!ボウズのおかげでどっさり実が成った!」
カロル「ホントにいいんですか!こんなにたくさん!?」
老ホビット「あぁ、いいんじゃよ!新しい芽が出たら、また頼むかもしれんしなぁ!」
カロル「えへへ!ボクの袋いっぱいになっちゃった!マルクの篭もぎっしり?」ズシッ
マルク「う〜…あんっ!」プルプル
老ホビット「ボウズはここで暮らしとるのか?」
カロル「はい、お母さまとマルクと三人で!」
老ホビット「ふーむ…片親か。苦労しとるんじゃのう?」
カロル「ううん!お母さまはおいしいご飯作ってくれるし、マルクが山菜集めるの手伝ってくれるからちっとも大変じゃないです!」
老ホビット「はぁ…幼いのに気丈じゃなぁ。しかし風呂や寝床はどうしとるんじゃ?」
カロル「使ってなさそうな小屋があったからそこに住んでます!」
老ホビット「そうか…」
カロル「はい!」
老ホビット「…この辺は山賊や獰猛な獣も少なからずおるしな。ボウズもあまり動き回ると危険じゃぞ?」
カロル「へぇ…でもボクにはマルクがいますから。ね?」ナデナデ
マルク「うぉんっ!」エッヘン
老ホビット「むぅ…確かに体も大きく、逞しい犬じゃが…それでも精々、ボウズの背丈くらいじゃしなぁ。
グリズリー等に襲われたら一溜まりもないぞ?」
カロル「マルクは鼻がいいんです。大きい獣が近くにいたら教えてくれるもんね?」ナデナデ
マルク「わふん」ルンルン
老ホビット「ほう…そこまで鼻が効くのか。利口じゃのう?」
マルク「あうーん!」テレテレ
カロル「昨日は夢中で山賊の人間に見つかっちゃったけどね?」ナデナデ
老ホビット「なんじゃと?すでに出くわしておったのか?よく助かったなぁ?」
カロル「なんとか走って逃げたけど…もう少しで食べられちゃうとこでした!」テヘッ
老ホビット「お、おぉ…!それはよかっ……ん!?」
76: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/21(金) 21:59:53 ID:lBZMgJx./k
老ホビット「ち、近頃の山賊はホビットを食うのか…。儂も用心しないとな」ブルッ
カロル「怖いですよね。ボクもびっくりしました!」
老ホビット「本当にのう…」
カロル「そういえばおじいさまは一人なの?」
老ホビット「儂か?ほほ……一人じゃよ」
カロル「へぇ!一人でこんなにたくさんの畑を世話するなんてスゴいですね!」
老ホビット「まぁ…の」
カロル「?」
老ホビット「ここはな、儂のふるさとなんじゃよ」
カロル「え……」
老ホビット「この山は元々ホビット族の物じゃったが…60年前に理不尽な侵略を受けて滅ぼされた」
カロル「王国の人間たち…?」
老ホビット「いや、王国だけではない。ここはどうやら王国と他国の国境だったらしくてのう。
この山を越えさせまいと互いに競り合い、儂らは争いに巻き込まれた形じゃ」
カロル「……」
老ホビット「幸いにも火を放たれなかったので畑や家屋は今も無事じゃがな」
カロル「…ふるさとにあった思い出をおじいさまが守ってるんだね」
老ホビット「そんないいもんじゃないぞ?
家屋のほとんどは山賊の寝床になっちまっとるし、作物も獣に荒らされるわ、山賊に掠め取られるわ……」ブツブツ
カロル「あはは…?ぼ、ボクも勝手に住んじゃって…ごめんなさい?」
老ホビット「何を言う!ボウズは儂の恩人じゃ!ずっといてくれて構わんぞ?」
カロル「ホント!?」パァァ
老ホビット「おう、本当じゃとも!こんなに言葉を交わしたのは久しぶりじゃ…可愛い孫が出来たようで嬉しいわい!」ニコッ
カロル「えへへ…!」テレテレ
マルク「あんっ!」シッポフリフリ
77: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/21(金) 22:08:13 ID:3wYAsB3RjM
老ホビット「それに…同族の顔を拝めたのは久しぶりじゃ…。人間の差別が過激になってからは数を減らしたと言うしのう…」
カロル「……」
老ホビット「ボウズも人里から逃げてきたクチか?」
カロル「…そうかも」
老ホビット「ふぅ……やはり人間とホビットは分かり合えんか。これでも90年前にはまだ交流があったりもしたんじゃがなぁ」
カロル「…90年前?おじいさまはいくつなの?」
老ホビット「む?117歳じゃよ?」
カロル「117歳!?」
老ホビット「ホビット族は寿命が長いんじゃよ。儂のじいちゃんなど140歳を過ぎても畑仕事をしとったぞ?」
カロル「へぇ…!すごーい!」
老ホビット「…まぁ儂はそんなに長生き出来んじゃろうな。こんな山奥に何十年も一人でいたんじゃから…」
カロル「…寂しくないの?」
老ホビット「寂しいとも…。すごく寂しい…」
カロル「……」
老ホビット「湿っぽくてすまんの…。年を取ると感情が押さえられなくなってくるんじゃ」
カロル「ううん…おじいさまは山から出ようと思わないの?」
老ホビット「思わんよ。人間と相容れる訳もなし、同族の集落もここのように滅ぼされたじゃろうし…辛い旅になるだけじゃ」
カロル「……そう」
老ホビット「山賊にいびられながらも生活はやっていけてる。それで十分じゃ」
カロル「……」
老ホビット「日の沈まぬ内に帰りなさい。収穫した作物を見ればボウズの母さんも喜ぶぞ?」ニコッ
カロル「…ありがとうございました」ペコリ
マルク「わぅ…!」プルプル
78: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/21(金) 22:12:05 ID:lBZMgJx./k
―――山小屋―――
母「こ、これ全部……坊やとマルクだけで採ってきたの!?」ズッシリ
カロル「う、うん!そうだよ!」アセアセ
マルク「はっ!はっ!」シッポフリフリ
母「見たこともない野菜……果物までたくさんあるのね…。あら、これ…?」マジマジ
カロル「……?」
母「ハグの実ね…。懐かしいわ?」
カロル「知ってるの?」
母「えぇ、お母さんが昔住んでた集落でも作られてたのよ?
ホビットしか栽培法を知らないから人間の住む場所じゃ取れない実なんですって?」
カロル「そうなんだ…」
母「この山にもホビットが住んでたのかしらね…」シミジミ
カロル「……」
母「これは調理しないでそのまま食べられるの。甘くて瑞々しいから坊やとマルクのおやつにするといいわ?」
カロル「はーい!」
マルク「わぅ…」ホッ
79: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/22(土) 21:27:50 ID:BI5nI7D34A
―――山林(畑)―――
カロル「おじいさまー」タッタッ
マルク「」タッタッ
老ホビット「おぉ、よう来たな!今日も食料探しか?」
カロル「ううん!遊びに来たの!」
老ホビット「遊びに?儂みたいな老いぼれを相手してもつまらんじゃろうに?」
カロル「そんなことないよ。またお話聞きたいもの!」
老ホビット「……そうか!」パァァ
カロル「あ、そうだ!ボクたちも何か手伝わせてください?
この前、いっぱいもらっちゃったからお礼します!」
老ホビット「ほほほ!では土は耕しちまったから…種まきをしてみるか?」
カロル「やってみたーい!」
マルク「あぉんっ!」シッポフリフリ
80: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/22(土) 21:35:04 ID:QFizjqWWJ6
カロル「ん…ん…」タシタシ
老ホビット「終わったか?」
カロル「あ…えと…」アセアセ
老ホビット「あぁあぁ、そんなに土を固めてはいかん。種が窮屈じゃと嫌がっておるぞ?」
カロル「あうぅ…」シュン
老ホビット「ほほほ…まあ初めてじゃしな。種一つ植えるのも意外と大変じゃろ?」
カロル「はい…。腕と腰がクタクタになっちゃいました」
老ホビット「もう昼になるしのう。それくらいでいいぞ?」
カロル「でも…種、いっぱい残ってる…」カサッ
老ホビット「急ぐ訳でもなし?ゆっくりやったらいいんじゃ?それより儂の家で飯でも食ってかんか?」
カロル「え…でも……」
老ホビット「ボウズが手伝ってくれたおかげで作業がだいぶ捗ったからのう!」
カロル「そ、そんな…お礼したかっただけで……」
老ホビット「礼には礼をじゃ!大切なことじゃぞ?」ニカッ
カロル「……!じゃあお母さまも呼んでいいですか?」
老ホビット「もちろんじゃ!ボウズの親にも礼を言いたかったからな!」
カロル「じゃあ呼んできますね!」
老ホビット「おう、待っとるぞ!」
81: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/22(土) 21:36:49 ID:QFizjqWWJ6
―――老ホビットの家―――
母「すみません、あたしまで招いていただいて…」
老ホビット「構わんよ!賑やかでいいわい!」トンットンッ
母「この頃、妙にたくさん食べ物を集めてくると思ったら…そういうことだったのね?」
カロル「えへへ…お母さまに言ったら叱られると思って?」
母「叱らないけど…ちょっと貰いすぎじゃないかしら?」
老ホビット「いいんじゃよ!儂が好きでやっとるんじゃから!」トンットンッ
カロル「だって…お母さまにもちゃんと食べてもらいたくて……」
母「気にしなくていいのよ?あなたが食べれたらいいんだから……」
老ホビット「いやいや、それはいかんぞ?いくら子供の為とは言え、親がしっかりしていないと始まらん!」クルッ
カロル「そうだよ。お母さまったら、ここに来てからスゴく痩せちゃったもの?」
母「太ってるよりいいでしょう?」ニッ
カロル「ううん!ちゃんと食べないとダメ!ボク、お母さまがお腹ブクブクでもぜんぜん気にしないよ?」
母「そ、それは…あたしが嫌かも…?」
老ホビット「ほほほ!なんでもいいが今日は儂が目一杯ごちそうしてやるからな!腹一杯食って精を付けろ!」
カロル「やったー!」バンザーイ
マルク「わふーん!」シッポフリフリ
母「ふふ…あたしがご飯作る時よりはしゃいじゃって?」
カロル「えー!そんなことないよ!」
マルク「」ドキンッ
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