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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


197: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/11(木) 23:12:49 ID:eiHvlEoF06
ホルウィ「この町も元は貧しかったようですが?あたくしが治めるようになって早1年!
どうです?とどまる事を知らない隆盛ぶりは?ぶははっ!」

修道女「町人たちも豊かそうで…あまり不満は見られなそうでしたね?」

教徒「外の人間を寄せる事で町の財政を潤してるんでしょう」

ホルウィ「その通り!特にあたくしの主宰する催し物はウケがよくて?
剣術大会や舞踊コンテスト、仮装大賞など皆々様に楽しんでいただけるよう多様な部門で開催しているのですよ!」

修道女「はー…商いをなさる方の発想力はやはり私共とは違いますね?」

教徒「本当ですよ。僕みたいな平民ではとても思い付きません」

ホルウィ「どれも日別、月1で開催してますので、もしよろしければ教団の方々もお越しください!特別枠で歓迎致しますぞ!」

宣教師「遠慮しておきます。それはそうと本日の要件なのですが」

ホルウィ「はいはい!なんでしょう!?」

宣教師「まずはこちらの資料に目を通していただけますか」スッ

ホルウィ「はぁ…?なになに?貧困救済とみなしごの育成支援計画書…?」パラッ

宣教師「これまではホビット族への差別を改めさせる為、布教活動に励んでおりましたが…。
これからは人間同士の綻びにも目を向けて活動する事に致しました」

ホルウィ「ふんふん!なるほど!里親募集の本格的な実施、勉学を育む修道院の設立、各孤児院への資金投資……。
いろいろありますが要はあたくし共から協賛金を募りたいと?」

宣教師「手を差し伸べなければ開かれない未来が多くあるのです。
どうか持たざる者たちに救いの手を差し伸べてはいただけませんか?」

ホルウィ「まぁ慈善活動であれば良い宣伝になりますし…やぶさかではありませんが」

宣教師「……」

ホルウィ「しかし着服される恐れもありますからねぇ。現に王国の高官がそうでした?」ジロッ

宣教師「王政時代の悪しき習わしは絶たれています。ご安心ください」

ホルウィ「…いいですよ?では毎月、そちらに届けさせますから?周辺への援助も惜しまないと誓いましょう?」

宣教師「ありがとうございます」ペコリ

司教「おぉ!これでまた多くの人々が救われますぞ!」

ホルウィ「いやいや、社会貢献しておいて損はないですしね?
まあでも…あたくしにも言い分があります?」

宣教師「…なんでしょう?」キョトン
198: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/11(木) 23:16:04 ID:jZkTi8yDIE
ホルウィ「金とは人の積み上げた努力の結晶です?
確かにあたくしはその辺の方より多くの金を持っているでしょうが…それはつまりあたくしがそれだけの努力をしてきたからですよ」

宣教師「えぇ。大変ご苦労なされたのだと存じます」

ホルウィ「努力で得た金は何にも代えられません?
この命の次に大事な物と言えるでしょう?」

教徒「……?」

ホルウィ「貧困層の方々は社会的弱者として哀れな環境にいるのでしょう。
やれ自分は可哀想だ、やれあいつらはズルい金持ちだと嫉妬してるかもしれませんがね?」

ホルウィ「しかしねぇ?あたくしに言わせれば、あんなものらは怠け者同然?」

ホルウィ「貧乏?生活が苦しい?ならば何故、金を稼ごうと努力しないのです?
文句ばかり言う暇があったら命懸けて働きなさいよ?」

ホルウィ「何もしやしない分際で…いざ金持ちが施してやれば遠慮なしにタカる?
はっきり言ってねぇ…なんにも可哀想じゃござんせんよ?」

宣教師「…そうした方々の中にはやむを得ず貧しさに耐える人もおられます」

ホルウィ「そうですか?それならあたくし共から無償で金をもらってもしょうがないと?」

宣教師「そうは言いません。これから貧困層の方々が更正し、新たな道を歩めるようにと……」

ホルウィ「…あたくしはねぇ。こうした職業柄、たくさんの貧乏人や追い詰められた商家を見てきましたよ」

宣教師「……」

ホルウィ「見返りなしに助けてやって、まともに更正した奴なんか一人もいやしません?
大抵はすぐ落ちぶれて、また金を寄越せとせびる人間ばかりです?
たとえ成功しても感謝するどころか…図に乗ってあたくしの商いを妨害する奴までいましたよ」

修道女「…そ、そんな人ばかりじゃないですよ?」

ホルウィ「誰かをあてにしてるような奴は…結局そうやってしがみつくんですよ?
どいつもこいつも自分が大好きですからねぇ?」

宣教師「…私はそうは思いません。人と人の間にあるのは必ずしも利害だけではない筈です」

ホルウィ「金で買えない物もある、とか言うんですか?」

宣教師「えぇ。お金で心は買えません。人の絆は…そんなにたやすい物ではないのです」

ホルウィ「ぶははっ!」

宣教師「……」

ホルウィ「失敬…確かに金では命や才能、見た目、心、どれも本物は買えませんよ?代用品ならいくらでも買えますがね?」
199: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/11(木) 23:18:48 ID:jZkTi8yDIE
司教「も、もうよろしいのではないだろうか?言い合いをする為に来たのではないのですから……」オロオロ

ホルウィ「しかしねぇ!世の中、金で買える物が多すぎるんですよぉ!?」ダンッ

司教「」ビクッ

ホルウィ「生きてく為に必要な何もかもが金でやり取りされる時代です?
おまけに金があれば、この庭のように自分の好きな趣味を増やせる?」

ホルウィ「生きてくには金がいる!楽しむにも金がいる!金、金、金!金が世界を動かしてるんですよ!?」

ホルウィ「あなた方が協賛金を募るのも!貧困層に金を分け与えるのも!世の中、金だと認めてらっしゃるようなもの!?」

宣教師「…そうかもしれませんね」

ホルウィ「…こんなのは助け合いでもなんでもない?弱者という剣を一方的に振るった、単なる強奪ですよ?
どうぞ富裕層から奪った金で義賊さながら正義の味方を演じてください?」

宣教師「分かりました。協賛金は結構です。帰りましょう」ガタッ

司教「は!?」

教徒「ちょ、ちょ、司祭様!?」

宣教師「そのような心持ちでは救えるものも救えません。
私達の活動は真に他者を思いやり、互いを育んでいける環境作りの一環。
あなたの考え方は私達のそれとはっきり異なるようです」

ホルウィ「……」

宣教師「慈善活動は商売の宣伝になるから嫌々ながらやってやる?こっちから願い下げですよ!」

ホルウィ「いいのですか?あたくし、多額の投資をお約束しますが?」

宣教師「いいえ、結構です!」スタスタ

教徒「し、司祭様!!」スタスタ

修道女「お待ちください!」

司教「も、申し訳ございません!また改めてお詫び致します!」ペコペコ

ホルウィ「…いやいやお気になさらず」
200: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/11(木) 23:23:01 ID:eiHvlEoF06
>>192
おぉ!またも新規の読み手さんが!とても嬉しいです!
更新出来ないかもなんて言っておいてぬけぬけと更新しちゃってるのも続きを待ってくださる方のおかげです!
ありがとうございます!

201: 名無しさん@読者の声:2014/12/12(金) 14:16:37 ID:Ed5ZJ.6kZA
支援!!
宣教師のなまえは1さんがつけるべきだと思いますよw
202: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/13(土) 23:35:56 ID:DPz2SFX2Rw
>>212
支援ありがとうございます!
やっぱりそうですよねw
3スレ目になって今さら急に付けるのもおかしいと思ったんで募集してみちゃいましたw
まだ名前が出てくる場面は遠いのでゆっくり考えてみます!
ご意見ありがとうございました!
203: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/14(日) 22:32:05 ID:Z5wDWglJyY
―――ホルウィの町(正門前)―――

司教「お待ちくだされ!領主様の屋敷へ戻りませんと!」アセアセ

宣教師「なぜ戻るのですか?話は終わりました!交渉決裂です!」

修道女「ま、まぁまぁ司祭様、落ち着いて?深呼吸しましょ?ね?」

教徒「確かにホルウィ様の言い方も良くなかったですけど事実、我々はお金を要求しているのですから…?」

宣教師「…そうでしょうね。貧困救済の名目で富裕層を脅迫しているように見えてもしかたないでしょうね!」

教徒「い、いえ…そうじゃなくて……」アセアセ

司教「もう少し姿勢を下げられませんか?あれでは向こうが苛立つのも当然ですぞ?」

宣教師「ではへりくだって地面に頭を擦り付け、領主の靴でも舐めてみせましょうか?それで満足ですか?」

司教「そうは申しておりません!あなたの考えは極端過ぎる!」

宣教師「別に構いませんよ?
私が恥をかく事で多くの人が救われるのでしたらなんだってしますよ…」

司教「ですから!私が言うのは感情的にならず、冷静に話し合えないかと…!」

教徒「そうですよ。協賛金も出していただけるという事ですし、多少の言い分は受け入れませんと…?」

宣教師「あの方はそもそも私達の活動に関心がない…」

司教「そういった相手にも関心を向けられるよう説得するのが我々の仕事でしょう!」

宣教師「…おっしゃる通りですよ。
ただ単に職務として徹底し、淡々と進めていけば手早く済むでしょう」

宣教師「ですが…それでは結局、その場しのぎにしかなりません。
ただお金を集めるのではなく貧困層と富裕層が互いに手を取り合い、寄り添わなければならないのです」

修道女「だ、だけど…まず問題をなくさない事には…?」

宣教師「私はただ差別や貧困を無くすのではなく…二度と生まれないようにしたいと考えています」

宣教師「その為には人々の認識を変えていかなければなりません。
自分さえ良ければそれでいい…そうした堕落意識を変えない事には真の助け合いは成立しないのです!」
204: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/14(日) 22:34:38 ID:Z5wDWglJyY
宣教師「満たされないから妬み、恨む。満たされているから見下し、突き放す…。
どうあっても根深く残る遺恨は…いつしか膨れ上がり、大きな争いを生むでしょう」

宣教師「貧困、差別、戦争、至るところで憎しみが生まれる世界に永遠の幸福などありえません…。
共に意識し、共に助け合えたら、どんなに素晴らしいでしょうか?」

司教「……」

教徒「……」

修道女「……」

宣教師「…どう思いますか?」

教徒「ちょっと…ついてけないですね」オロオロ

修道女「現実的な範囲で問題解決に取り組んだ方がいいと思います…」オロオロ

司教「理想ばかりが先行して目の前の課題をないがしろにされては……」オロオロ

宣教師「…もちろん現状に向き合い、少しずつ変えていくつもりです。
それでもあの領主に協賛金を求めるのはやめておきましょう」

司教「はぁ……」

宣教師「あのような感覚で寄付を頂いても良い影響は見込めないでしょう。
あくまでも自分の意思で協力しようと考える方にお願いしたいのです」

司教「…ではまた別の地に?」

宣教師「えぇ。ここは裕福で人々も不自由なく暮らせています。
私達に出来る事はないでしょうから…このまま担当の神父さんに任せておきましょう」

司教「…かしこまりました。馭者を呼び戻してくれ。
宿泊する筈だった教会にも事情を説明してお詫びをな?」

教徒「わ、分かりました」スタスタ

修道女「…三日ぶりにベッドで眠れそうだったのに残念ですね」

司教「そう言うな?司祭様も同じように感じておられる?」

宣教師「…すみません」

司教「謝る事はございません。彼女も教徒も正式に位を頂いてない修行の身、いい勉強になるでしょう」
205: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/14(日) 22:39:57 ID:mWNMm1VxPM
宣教師「」チラッ

修道女「」シュン

宣教師「……」

司教「ふむふむ?次はトペルカ伯爵の領地か…。慈善活動に理解ある方だといいですな?」ペラッ

宣教師「…やはり一晩、泊まりましょうか。
長旅で疲れているでしょうし、私の独断で振り回してしまうのは申し訳ないので」

修道女「いいんですか!」

司教「は…!?」

宣教師「はい。まだ来て間もないですし観光するのも構いませんよ?」

修道女「……!」パァァ

宣教師「少ないですが…これで教徒さんと楽しんできてください?」スッ

修道女「そ、そんな……お金なんてもらえません!景色を楽しむだけで十分です?」

司教「そうですぞ?あまり甘やかしては為になりません?」

宣教師「…こうして共にしている時間もあなたの人生です。
それを私の自己満足に付き合わせてしまっているのですから…。
せめて自分の時間をゆっくりと過ごしてください?」

修道女「わ、私は司祭様にお供出来て光栄に思ってますよ!なので…そんな…」

宣教師「遠慮は入りません?このお金は私の物ではないですから?」

修道女「?」

宣教師「これまでの旅先で寄付してくださった善意ある方々の施しです」

修道女「な、なおさら遊びになんて使えませんよ…!」

宣教師「いいんですよ。大事にしまっていても仕方がありませんから。
このお金の使い道を決めるのは元の持ち主ではなく私達自身です」

宣教師「頂いた善意に恥じない使い方であれば…誰も咎めはしません?」

修道女「……」

宣教師「このお金で僅かでもあなたの苦労が報われるのであれば…この上ない意味があります?」ニコッ

修道女「司祭様……!」パァァ

宣教師「…宣教師です?」ニコニコ
206: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/14(日) 22:44:33 ID:mWNMm1VxPM
司教「…はぁ」

宣教師「では予定通り教会に伺いましょうか?」

司教「司祭様…やはりもう一度説得なされては?」

宣教師「その話は終わりましたよね?」

司教「確かにあの方の人柄は褒められたものではない。
ですが…これまでの方々も笑顔で承諾してくださった裏で同じように嘲笑っていたかもしれませんぞ?」

宣教師「…心の内は読めませんからね」

司教「そうです…。たとえ本心があれでも…我々の活動にはああいった人間の援助が必要なのですから」

宣教師「…あの方は私達の活動を商売に活かしたいだけですよ」

司教「しかし…!」

宣教師「貧困層の方々が社会復帰出来るよう…一部の人達は富裕層に職をいただかなければなりません。
王国が進めている各地の開発計画や新規のお仕事の斡旋だけではあぶれてしまいますからね」

司教「……」

宣教師「…それだけに私達の見極めも大切なのです。
これから社会復帰しようと奮起する方々を預けるに値するだけの人間かどうか……」
207: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/14(日) 22:45:46 ID:Z5wDWglJyY
宣教師「ホルウィという男は…自分が良ければそれでいいの典型です。
死に物狂いで働いてもろくに給金も寄越さないでしょうし、いざとなれば替えがきくからと平気で切り捨てるでしょう」

司教「そ、それは…」

宣教師「…借りを作ればむしゃぶりつくケダモノですよ。
そんな危険な輩を、この活動には加えさせません。
それでもまだ…協賛金目当てに頭を下げたいですか?」

司教「い、いえ…」

宣教師「私の言う意識とは…そういうことなんですよ。
助けようという気など微塵もない人間が…本当に無償で協力してくれるとでも?」

司教「う、うむぅ…」ウーン

宣教師「この活動はそんなに簡単ではありません?
お金をくださるからと誰彼構わず受け入れれば…貧困救済の筈がいつの間にか富裕層の貧困商法に変わってしまう可能性もあるのです」

宣教師「私達が最も注意しなければならないのは…この活動を正しく導けるよう、不安要素を排斥する事です。
ただお金を集めて紙面通りに淡々と計画を進めればいい訳ではありません」

宣教師「人と人…心と心が繋がって大きな絆となった時…初めて実現されるのです」

司教「あ、浅はかな思慮でございました…!申し訳ございません!」ペコリ

宣教師「…謝らなくていいですよ。司教さんがよく考えてくださっているのも分かっています」

司教「司祭様がそこまで見通しているとも気付かずに説教がましく…」ググッ

宣教師「今は目の前の問題を一つずつ解決していくしかない…。
それは正しいですが…その為に妥協して近道を求めるのは違う気がしませんか?」

司教「は、はい…」

宣教師「理想を唱えるのは簡単ですが…叶えられなければただの妄想になってしまいます。
遠く困難な道筋を辿らなければ得られない物があるのなら…時間が掛かると分かっていても地道に歩んでいきましょう」

司教「っ……どこまでも付いていきますぞ!」

宣教師「ありがとうございます」ニコッ
208: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/14(日) 22:48:06 ID:mWNMm1VxPM
〜〜〜夜〜〜〜

―――ホルウィの町(領主邸)―――

イチャイチャ イチャイチャ

女「んねぇ〜ホルウィちゃ〜ん」ダキッ

ホルウィ「なんだぁい?」デレデレ

女「あたし〜?新しいピアスが欲しいの〜?
最近、王都から入ってきたタイディーズ・ブランドのピアスなんだけど〜?」ギュッ

ホルウィ「ほぉ〜?それはまた贅沢な品だ?」

女「ん〜…欲しいなぁ…?」ジッ

ホルウィ「ぶははっ!いいとも!ピアスでもネックレスでも買ってやる!」

女「やたっ!ホルウィちゃん大好き?男らしくてステキ〜!」チュッ

ホルウィ「うほっ!いやぁ照れるなぁ」デレデレ

女「そうだ!ドレスも買ってよ?またパーティーに連れてってくれるんでしょ〜?」

ホルウィ「あぁ、いいとも!いいとも!それじゃ…?」

女「ん〜?なぁにぃ?」

ホルウィ「今夜は前祝いに二人きりのパーティーをしようかぁ?」グシシ

女「え〜?なにするの〜?」

ホルウィ「こうするんだよぉ!?」ガバッ

女「キャアッ!?ホルウィちゃんのエッチ〜!?」

ホルウィ「ぶははっ!今夜は寝かせないぞぉ!?」ヌギヌギ
209: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/14(日) 22:49:42 ID:mWNMm1VxPM
ホルウィ「ふぅ」クタァ

女「もうおしま〜い?」ツンツン

ホルウィ「……。湯浴びして寝る」ムクッ

女「遊び人って終わったらすぐ賢者になるよね〜」

ホルウィ「……そうだ」

女「ん〜?」

ホルウィ「お前は世の中で一番必要なの、なんだと思う?」

女「え〜?なにそれ〜?」

ホルウィ「いいから答えろよ」

女「……ホルウィちゃん!」ダキッ

ホルウィ「ぶははっ!そりゃいい?だが…本当のところはあたくしの金だろ?」

女「…そんなことないよ〜?」

ホルウィ「間があったぞ?」

女「……まぁね〜?金も大事かな〜?」

ホルウィ「そうだよなぁ?金だよなぁ?」

女「うんうん」

ホルウィ「なぁにが貧困救済だ…?40年も騙くらかしてインチキ宗教が……」

女「だね〜」テキトー
210: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/14(日) 22:51:27 ID:Z5wDWglJyY
コンコン コンコン

ホルウィ「あぁん?なんだ?こんな時間に?」

司会「失礼します!ご主人様!」ガチャッ

ホルウィ「お前なぁ…わかんねぇか?こっちはお楽しみ中だぞ?」

女「ほんと空気読んでほしいよね〜」

司会「申し訳ございません!今月の上がりを持って参りました!」ジャラッ

ホルウィ「あぁそうか、そうか。ご苦労さん。そこに置いといて」

剣士「どうも…ホルウィの旦那?」ズイッ

ホルウィ「おぉ!ヴァージス!いやいやご苦労だった!今回もよくやってくれたな?」

ヴァージス「大した商売ですな?
出来レースの大会開いてほとんど費用も掛けずに大儲けしちまうとは…俺もあやかりたいものだぜ?」クククッ

ホルウィ「ぶははっ!なんたって優勝者には金貨200枚だ?貧乏人がわんさか群がるのもしょうがないさ?」

司会「参加費だけなら銅貨100枚と安いもんですからね!安易に出場してケガするバカばっかですよ!」

ヴァージス「ま、しかし…あんまケガされちゃ出場人数が減っちまうからな?
来月もお客さんらが無駄金はたいてくださるように…ちゃーんと手加減しといてやったぜ?」

ホルウィ「つっても元王国騎士のヴァージスが混じってたんじゃ勝ち目なんかないだろう?可哀想になぁ?」

司会「今回の上がりも締めて銀貨30枚分にはなりましたよ!
至急品と会場さえ用意しちまえば開催費用はタダ同然ですし…まったくボロい商売ですわ?」

ホルウィ「まぁな!それもあたくしの商才あってのことさ!」

司会「よっ!王国1の商売人!」

女「ホルウィちゃん天才〜!」パチパチ

ホルウィ「おいおい、事実だけどさぁ〜?照れちゃうよぉ〜?」ヘラヘラ
211: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/14(日) 22:54:43 ID:mWNMm1VxPM
ヴァージス「しかしあいつら…本当に賞金が手に入るとでも思ってんのかねぇ?」クククッ

ホルウィ「思ってるんだよ?だから身の程知らずが沸くのさ?」

ヴァージス「ま、あぶく銭に群がる小物共だもんな?
一発逆転狙って高望みしたくもなんのかねぇ?」

ホルウィ「なんにせよあんたが賞金を守ってくれる限りは安心だ。これからもしっかり働いてもらいますよ?」

ヴァージス「分かってるよ?一回の賞金より、あんたから報酬を受け取り続けた方がやりやすい?」

ホルウィ「そうさ?あくまで賞金は客寄せのエサだ?一度で終わらせるのはもったいない?」

司会「貧乏人はバカな夢見て何度でも挫折してりゃいいんすよ?」

ヴァージス「それもそうだな?現実は甘くねぇってのを叩き込んでやるまでさ?」

司会「今じゃヴァージスさんは大会3連覇した町の英雄でご主人様は町を栄えさせる絶対君主。誰も疑いやしません?」ニヤニヤ

ホルウィ「まぁこれからも頼むよ?
内外の貧乏人がなけなしの金を突っ込んでくれりゃ…あんたの分け前も増えるからさ?」

ヴァージス「あぁ、期待してるぜ?」ニヤリ

ホルウィ「ところでさ…?話は変わるけど…世の中で一番必要なのはなんだと思う?」

ヴァージス「はぁ?」キョトン

司会「……?」

ホルウィ「なんとなく気になってな?答えてみてくれよ?」

ヴァージス「そんなもん決まってんだろ?」

ホルウィ「ほぉ〜?」

ヴァージス「金だよ?」クククッ

司会「それっきゃない!」ウンウン

ホルウィ「……だよなぁ〜?」ニタァァ
212: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/15(月) 22:50:57 ID:AXPz/dDb7M
―――ホルウィの町(教会)―――

修道女「ふふ〜ん」ニコニコ

教徒「にやけてないで掃除手伝ってよ」ゴシゴシ

修道女「ごめん、ごめん!町巡りなんて久しぶりで楽しかったから!」フキフキ

教徒「そうだね。いい気分転換になったよ」キュッキュッ

修道女「うん!その町の文化に触れるだけで十分楽しめるもんね!」フキフキ

教徒「前から欲しかった純文学の本も買えたし、来て良かったよ」キュッキュッ

修道女「最近の司祭様、張り詰めててちょっと怖かったよね…?」

教徒「…一番熱心に考えてるのは司祭様だからね。遊びじゃないんだし当然だよ」

修道女「そうね…。でもさ、私に語りかけてくださった時、すごく目が優しかったんだよ?」

教徒「……?」

修道女「あの人は私達のことも大事に思ってくれてるんだなーって…?」

教徒「……」

修道女「…力になりたいね。修行も終えてない私達じゃ頼りないけど」

教徒「…うん」

ガチャッ

司教「お前たち!掃除は終わったのか!?」

修道女「す、すみません!」アセアセ

教徒「す、すぐ終わらせます!」アセアセ

司教「掃除も修行の内だぞ!くっちゃべっとる暇があったら一宿一飯の恩に恥じぬ程、清潔にしてみせんか!」

修道女&教徒「はいっ!!」ピシッ
213: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/15(月) 22:53:49 ID:8p876osaNo
―――客間―――

バタンッ

司教「まったく…困ったものだ」

神父2「まぁまぁ?掃除はシスターが毎朝、きちんとやってくれてますので、そんなに気負わせずとも?」

司教「いーや、ダメだ!最近の若いもんは…わしの修行時代などはとにかく雑用もこなし、寝ずに教典を読み漁り、布教に励んだものだが…」

神父2「懐かしいですなぁ。思えばあの頃は…ノワール司祭を親のように崇め、でたらめな教典だったと気付かずに1ページ、1ページ、大切に読んでおりました」シミジミ

司教「…そうだな。すべてでたらめだった」

神父2「…無実のホビット族を蔑み、心底憎んでましたなぁ」

司教「…布教に訪れた地に住んでいたホビットたちを追い出させた事もあったか」

神父2「私など旅の道中で飢えたホビットが助けを求めてきた折に買い込んでおいた食糧があったにも関わらず知らん顔を決め込みましたよ」

司教「……」

神父2「…今、思えばあの時になぜ助けてやれなかったのかと悔やむばかりです」

司教「私もだ…。何も疑わずにホビットたちの一生を狂わせてしまった自分の愚かさを恨んでいるよ」

神父2「…なぜホビットは和睦に応じた…というより和睦を求めたのでしょうね」

司教「…差別に耐えられなかったからじゃないのか?」

神父2「それだけで…自分たちをさんざ苦しめてきた相手が許せますか?」

司教「……」

神父2「…私が思うに今の司祭様がいなければ、こうはならなかったんじゃないかと」

司教「あぁ、私もそう思う…。司祭様は誰よりも早く真実を知り、差別をやめさせようと奮闘した」

神父2「…そして救い主様と友情を築き上げました」

司教「真実に気付いたのがあの方でなければ…おそらく人間とホビットは分かり合えなかっただろう」

神父2「…あの方で良かった」

司教「あぁ、私達でなくて本当に良かった」
214: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/15(月) 22:57:05 ID:AXPz/dDb7M
―――礼拝堂―――

宣教師「……」ギュッ

ガチャッ

シスター「司祭様、夕餉の支度が整いました」

宣教師「…恩に着ます。それから私は宣教師です」クルッ

シスター「お祈りしてらっしゃったんですか?」

宣教師「えぇ、毎日欠かさず祈るようにしてますので」

シスター「今でも信仰をお捨てになられないのですか?」

宣教師「…私にとっての信仰とは己の戒めです。
自分自身を支え、導くには何か一つ信じるものを持っておくと良いのですよ」

シスター「はぁ…では主に捧ぐ祈りではないんですか?」

宣教師「…祈りというよりは祈願ですかね。大事な相手の無事を想う…端から見れば、あまり意味のない時間ですよ」

シスター「そんなことは…?」

宣教師「前に教え子から『祈りでお腹いっぱいにはならない』と言われましたしね」

シスター「ひ、ひねくれてますのね?」

宣教師「実際、その通りなんですよ。祈りを終えると無力感に苛まれるばかりです」

シスター「ではどうして続けるのですか?」

宣教師「自分が無力であるが故に縋りたくなるのかもしれませんね。
こうして絶やさず想い続ければ…もしかしたら、もう一度巡り会えるのではと」

シスター「それって救い主様の……」

宣教師「…ふふ。とはいえ、現実は時になによりも優しく、またある時にはなによりも無情なもの。
空っぽの掌に救いを求めて祈ってみても…行き場のないまま彷徨うだけでしょうが……」

宣教師「それでも私は信じたいのです。
無情なこの世界が救いの手を差し伸べてくださる日を……」

シスター「……」
215: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 22:55:37 ID:02Flk6/uEY
〜〜〜昼〜〜〜

―――ホルウィの町(孤児院)―――

キャッキャッ タタタッ

宣教師「……」ニコニコ

院長8「あ、あのー…?」ドキドキ

宣教師「この屋上は見晴らしが良くていいですね。子供たちの笑顔がまんべんなく見渡せます」ニコニコ

院長8「あ、ありがとうございます!」ペコリ

宣教師「お礼を言うのは私の方です。素敵な景色をありがとうございます」ペコリ

院長8「そ、そんなとんでもない!?」ブンブン

宣教師「…何をそんなに慌ててらっしゃるんですか?」

院長8「へ!?い、いやぁその……」マゴマゴ

宣教師「?」

院長8「う、運営方針を指摘されたら…どうしようかと」モジモジ

宣教師「問題があれば指摘しますし、無ければ何も言いませんが…?」

院長8「そ、そうですよねぇ…」アセアセ

宣教師「何か身に覚えでも?」

院長8「い、いえ…頑張ってるつもり…ですけど」モジモジ

宣教師「……?」

院長8「せ、先日…本部に集められた各院の役員が運営方針を指摘されて憲兵に突き出されたと…お聞きしまして」マゴマゴ

宣教師「…ふむ。それで先程から怯えていたのですか」

院長8「い、いえ!怯えたりなんか…!?」ブルッ

宣教師「」ポンッ

院長8「」ビクッ

宣教師「一度、肩の力を抜きましょうか…?」ニコッ

院長8「……!」
216: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 22:56:53 ID:02Flk6/uEY
宣教師「私が院を見る際に決め手としているのは子供たちの表情です」

宣教師「子供は良くも悪くも素直で無垢なもの…。楽しければ笑いますし、つまらなければ退屈そうにしています」

宣教師「…そして辛ければ浮かない顔をするものです」

院長8「……」

宣教師「敷地内を見渡してごらんなさい」

キャッキャッ キャッキャッ

院長8「……」

宣教師「隅々まで笑い声が響き、走り回る子供たちの姿が見えますね」

院長8「…は、はい」

宣教師「彼らにとって、ここは素晴らしい人生の始まり…。
前向きに生きていく上で欠かせない…喜びに満たされている」

宣教師「良いか悪いかを決めるのは私ではありません。もしも運営に迷いが生じた時は子供たちの表情を見てください?」

宣教師「大人のようにうまく嘘を付けない彼らは正直な答えを出してくださいますよ?」

院長8「…は、はい!」パァァ

宣教師「……?」

院長8「ど、どうかなさいました?」

宣教師「どなたか敷地内に入ってきましたが…確か昨日の…?」

院長8「……あっ!領主の召し使いです!また…!」

宣教師「領主の?なぜこちらに?」

院長8「じ、実は……」
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