前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
673: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/27(金) 21:32:18 ID:kg947O/4iY
ヒメ「なになに〜〜?王子を助けたかったら全員ジッとしてろだと〜〜?」ボーヨミ
近衛兵8「で、できるかぁ!無抵抗になってやられてしまうではないか!」
ヒメ「くそ〜〜!従うしかないな!だって王子いなかったら困るもんな〜〜!」ボーヨミ
近衛兵9「そ、そうは参りません!」
ヒメ「え?なになに?その代わり、ホビットにも攻撃させない?ホビットは怪我人を連れて壇上に集まれだって?信用できないな〜〜?」ボーヨミ
近衛兵7「そ、そうだ!信用できるか!?」
ヒメ「でもまぁ従うしかないな〜〜?やっぱオレ王子だし?」ボーヨミ
近衛兵11「ぐぐっ!」ギリッ
近衛兵12「て、敵の言いなりになってたまるか!強行するぞ!?」
ヒメ「えっ」
近衛兵13「そ、そうだ!奴も人質を失ったら手が無くなる!かかるぞ!」
カロル「え?え?どうするの?来ちゃうよ?」アセアセ
ヒメ「ま、ま…!王子だよ?オレ王子だよ!?死んじゃったらどうすんの!?」
近衛兵13「立派な墓を建て、生涯悼み続けましょう!」
ヒメ「死ぬ前提なの!?」
カロル「あわわ!」ビクビク
ザッザッ ザッザッ
ヒメ「ば、バーカ!バーカ!バカバカバーカ!お前らもう少し自国の王子大切にしろよ!?」アタフタ
ヒメ「(ひ、人質になって呼び掛ければ治まると思ったのに!)」
674: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/27(金) 21:33:44 ID:HyvtXC.lJU
団長「全隊!止まれぇぇぇぇぇい!!!」クワッ
シーン
団長「王子の安全が最優先だ!愚か者共が!?」
近衛兵8「だ、団長…!」
近衛兵9「よいのですか!戦場で身動きを制限されるなど死活問題ですぞ!」
団長「…人質を取られる前に対処出来なかった我々の責任だ!こうなっては従う他ない!」
ヒメ「」ホッ
団長「」チラッ
ヒメ「」コクン
ヒメ「…カロル。お前の仲間を呼び戻せ?」ボソボソ
カロル「うん!みんな!こっちに来て!今なら回復できるよ!?」
オオオオオオ!
675: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/27(金) 21:34:49 ID:HyvtXC.lJU
カロル「はい?」パシッ
フワッ
バンパ「…はぁぁ!助かったぁ!もうダメかと思ったぜ?」
「これで反撃できるぞ!」
「仕切り直しだ!」
ラム「それにしても…どうやって敵の王子を人質にしたんだい?」
カロル「えへへ!実はね?ボク王子さまと友達なんだ!」
シープ「えー!?なんで、なんで!?」
カロル「一緒にアイスキャンディ食べたんだよ?ねー!」ニコニコ
ヒメ「ねー!じゃない!…人質と親しく話すな!」
カロル「あ、ごめんなさい!」パッ
ラム「アイスキャンディ?」
シープ「なにそれ?」
カロル「いろんな果物の味があって!甘くっておいしいの!しかも氷の棒なんだよ!?」
ラム「(何一つ伝わってこない)」
シープ「いいなー?食べてみたーい?」
バンパ「果物の味がする氷の棒?どういうことだ?」
黒装束1「わからないけどおいしそう」
黒装束2「氷って食べれるんだ?」
カロル「みんなにも食べさせてあげたいなー!王子さま、また一緒に食べに行こうよ!」
ヒメ「だからオレ人質なんだって?気安く話しかけるなよ?」
676: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/27(金) 21:36:07 ID:HyvtXC.lJU
近衛兵1「だ、団長…あいつら和気あいあいとしてますが…」
団長「うむ。してるな」
近衛兵1「ひょっとしたら隙だらけなのでは?今なら一気に攻めて取り返せるんじゃ…?」
団長「あれはわざと隙を見せて、こちらの攻撃を誘っているのだ」
近衛兵1「そうですかねぇ?試しに切り込んでみては……」
団長「今、攻撃を仕掛ければ我々は罠にはまり、あっという間に全滅するぞ?」
近衛兵1「え?それはいくらなんでもないですよ?」
団長「ワシの読みを信用しないのか?」ギロッ
近衛兵1「そ、そうじゃないですけど…」
団長「とりあえず今は他の兵が勝手な動きをしないように注意して見張るんだ。よいな?」
近衛兵1「お、仰せのままに」
677: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/27(金) 21:37:20 ID:HyvtXC.lJU
ラム「…じゃあ全員、回復したことだし始めよっか」
カロル「あ、待って!ラムくん、王子さまとも話したんだけど…」
ラム「関係ないね?人間はみんな殺すから?」
カロル「え…?」
ヒメ「は?」
ラム「その王子も人間だろ?人質として利用し終わったら殺さないとね?」
ヒメ「な、なんだと!」ムッ
ラム「なに?文句あるの?汚い人間のクセに?」
ヒメ「き、貴様…オレは協力してやってるんだぞ!?」
ラム「あ、そうだったの?ありがと?僕らに協力して死んでくれるなんて優しいね?」ニコッ
ヒメ「ふざけるなぁ!!」ガッ
バンパ「お、おい?やめろって!」ガシッ
シープ「ラムに触るな!」ガシッ
ラム「はぁ…汚いなぁ。人間の匂いが付いちゃう」パッパッ
ヒメ「くっ…!お前、本気で言ってるのか?」
ラム「…カロルくんの友達だかなんだか知らないけど、僕らは同族の為に戦ってるんだ。
勝って僕らだけの居場所を手に入れたら力を蓄えて人間なんか絶滅させてやる?」キッ
ヒメ「……!」ワナワナ
カロル「……」
ラム「そういうことだから?カロルくんも納得してくれるよね?」
パシンッ!
ラム「……」ヒリヒリ
カロル「……」キッ
678: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/27(金) 21:38:56 ID:HyvtXC.lJU
ラム「え?な、なにするのさ?痛いじゃないか?」
カロル「王子さまに謝って?」
ラム「謝る?なにを?」キョトン
カロル「…今の言葉、全部謝って!」
ラム「……は?」ピクッ
バンパ「な、なにやってんだ!お前ら!仲間割れしてどうすんだ!?」アタフタ
シープ「そうだよ?カロルお兄ちゃんもなに怒ってるの?」
ヒメ「……」
ザワザワ ザワザワ
カロル「…みんなもラムくんと同じ考えなの?」
「え?ま、まぁ…」
「人間だし…敵だし…」
カロル「……」
ラム「君だけだよ?人間と親しくして勝手に手を組んで…バカみたいに氷の棒を一緒に食べたとか自慢してるのは?」
ヒメ「バカはお前らだろ!なんで分からないんだよ!」
ラム「関係ないんだから引っ込んでなよ?君は敵の動きを封じる為の人質なんだから?」
バンパ「ま、まあまあ!カロル、こっからだから!あと一歩だし頑張ろうぜ!」
カロル「やだ。ボク戦うのやめる」
ラム「……!?」
バンパ「カロル!」
シープ「えー!ダメダメ!カロルお兄ちゃんいなかったらどうやって回復するの!?」
黒装束1「敵はまだいっぱいいる!」
黒装束2「カロルがいないと勝てない!」
679: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/27(金) 21:40:26 ID:HyvtXC.lJU
カロル「王子さま、行こ?」パシッ
ヒメ「あ、あぁ…?」グイッ
バンパ「待て待て!人質をどこに連れてくんだ!?」
カロル「兵隊さんに返してくるの」スタスタ
ヒメ「い、いいのか?そんなことしたらお前…」オロオロ
カロル「いいよ。もう知らない」スタスタ
ラム「やめろ!」ガシッ
ヒメ「ちょっ!何す……」グイッ
カロル「離してよ」グイッ
ラム「君はなに考えてるんだよ!人質を返したら敵が攻めてくるだろ!?」グイッ
ヒメ「イタタタタ!痛い!痛いから!腕伸びちゃうから!引っ張るな!」ギュゥゥゥ
ラム「君はホビットなのに人間の味方をするのかい!?今までの戦いはなんだったのさ!?」
カロル「…ボクが戦うのは人間に復讐したいからじゃないもの」
ラム「じゃあなんだよ!なんの為に戦ってるんだよ!?」
カロル「普通に暮らしたいだけだよ」
ラム「は?」
カロル「争いも差別もない場所でみんなと笑って過ごしたいから…ホントはイヤだけど戦ってた」
ラム「そ、それなら同族だけで暮らせば……」
カロル「どうして同族にこだわるのさ!ボクたちに偏見のない人間まで殺すことないじゃない!」
ラム「人間がいたら僕らに安らげる日は来ないよ!ここにいるみんなだって同じ気持ちだ!」
カロル「そうやって区別するから仲良くできないんじゃないの!?」
ラム「人間は何度でも繰り返すさ!そういう生き物じゃないか!」
680: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/27(金) 21:42:22 ID:kg947O/4iY
ギャーギャー ギャーギャー
近衛兵1「団長、隙だらけです。めちゃくちゃがら空きです。攻めましょう?」
団長「いやいや、そう焦るな?ああ見えて実はこちらの攻撃を狙ってるのだ?」
近衛兵1「ないですって!今なら絶対、王子助けられますって!」
団長「ところがどっこい、それが狙いなんだなぁ?まったく狡猾極まりない!」
近衛兵1「あれ仲間割れしてる空気ですもん!会話からしてそんな感じですもん!この機を逃したらまずいですよ!」
団長「うーむ。これは持久戦になるなぁ」
近衛兵1「聞いてます!?」
団長「聞いてる、聞いてる」
近衛兵1「っていうか、なんか王子も敵に協力してるような会話じゃなかったですか?」
団長「そう見せかけて脱出する機会を探ってるのであろう。さすが王子だ!」
近衛兵1「絶対違いますって!」
団長「(王子、なにかするならお早めに…!正直、誤魔化しきれませぬ!)」
681: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:19:45 ID:imv0BbiqFU
ギャーギャー ギャーギャー
グイグイッ グイグイッ
ヒメ「痛いってもう!なんでオレを挟むんだよー!王子だぞ、王子!無礼だろー!」
カロル「は・な・し・て・よ〜!?」ググッ
ラム「君が離せばいいだろ!?」ググッ
カロル「ラムくんの…分からず屋!」ググッ
ラム「カロルくんこそ…わがままだ!」ググッ
カロル「王子さまに謝らないなら…離さないから!」ググッ
ラム「ごめんごめん。これでいい?」ググッ
カロル「ちゃんと…謝ってよ!」ググッ
ヒメ「ちぎれるちぎれる!ちぎれるって!?」ピーン
ラム「」パッ
カロル&ヒメ「えっ」ズルッ
すってんころりん!
カロル「いた…た…」ゴロリ
ヒメ「き、急に離すな!?」プンスカ
682: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:20:55 ID:x2Uy2NZngQ
ラム「君はなんでそこまでして人間を庇うの?」
カロル「…ラムくんこそ協力してくれた王子さまにいじわるしないでよ」ムスッ
ラム「……」
カロル「人間もホビットもおんなじだもの。憎み合うのはよくないよ」ムクッ
ラム「でも君は戦うって決めたじゃないか?」
カロル「ボクたちを騙したり、いじめたりする人間とは戦うよ?」
ラム「そんな中途半端な気持ちでいるから騙されるんじゃないの?」
カロル「なんでも疑ってたら何もできないよ?信じてみてからでも遅くないでしょ?」
ラム「…信じて騙されてたら意味ないだろ」
カロル「王子さまは騙したりしないもの!」
ラム「証拠は?」
カロル「証拠?」キョトン
ラム「騙さない保証はあるか聞いてるんだよ」
カロル「あるよ!友達だもん!」
ラム「ふーん。言ってみなよ?どんな証拠?」
カロル「へ?だから…友達だよ?」
ラム「?」
カロル「友達は友達を裏切らない!そうでしょ?」ニコッ
ラム「…またきれいごと?いい加減聞き飽きたんだけど?」
カロル「違うもん!ホントなの!」
683: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:22:29 ID:imv0BbiqFU
ラム「くだらないね?君はそうやって今までも周りを巻き込んできたんだろ?」
カロル「う…」グサッ
ヒメ「おい、お前!さっきから黙って聞いてれば!」
ラム「なに?」ジロッ
ヒメ「カロルはお前らの為に言ってるんだぞ!なんにも分かってないだろ!?」
ラム「違うね?カロルくんは頭が悪いだけさ?」
カロル「」グサッグサッ
ヒメ「オレが人質になってるのは何もお前らを回復させる為じゃない!人間とホビットの争いを止める為だ!」
ラム「……?」
バンパ「な、なんだって?」
シープ「止まる訳ないじゃん?」
ヒメ「オレを人質にして兵士たちと交渉する筈だったんだよ!」
ラム「……!」
ヒメ「それをお前があんなこと言うから台無しだ!」
ラム「そう…だったの?」
カロル「うん…。兵士さんたちも戦いたくない筈だもの。これ以上、命を賭けてもしょうがないじゃない…」ズーン
ラム「…悪いけど反対だね。僕は人間と和解したくない」
カロル「ラムくんの意地っ張り…?」イジイジ
ラム「…なおさら安心したよ。そんなの最初から願い下げだ」
684: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:24:56 ID:x2Uy2NZngQ
ヒメ「ならどうするんだ?一人残らず命を落とすまで戦うのか?」
ラム「人間が…ね?」
ヒメ「確実に負けるぞ?」
ラム「それを決めるのは君じゃない」
ヒメ「最初にいた人数を知らないが…見た目どのくらい減ってる?」
カロル「……40人くらいかな」
ザワザワ ザワザワ
ヒィィィィィイイ!
ラム「…そ、それは」
「そ、そういえば…かなりいなくなってる!」
「さっき死体が転がってるの見たぞ!」
ザワザワ ザワザワ
カロル「ボク一人で回復させるのにも限界があるんだよ?」
ヒメ「当たり前だ!命を落とさない戦争なんてない!」
「あ…うああ…!」
「し、死にたくない!」
ヒメ「死にたくないなら和解しろ!もう十分だろ!?」
シープ「で、でも〜…」
バンパ「…痛いとこ突かれたな?ヘマトに捕まってた奴らは死に敏感だ?」
ラム「こいつは人間だよ?和解なんてさせると思うかい?」
ザワザワ ザワザワ
ラム「油断させようとしてるのさ?僕には分かるよ?みんなだって今まで甘い言葉に騙されてきただろ?」
「た、確かに…そうかもな」
「そ、そうだよ!人間はいつもそうだ!」
ヒメ「…お前らの命は僕が保証する!」
ホビット's「えっ」
685: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:26:33 ID:imv0BbiqFU
ヒメ「僕は王子だ!将来は国を統べる立場にある!」
ラム「騙されるな!」
ヒメ「約束する!僕が国王に即位したらホビットへの価値観を見直して人間と共存できるようにしてみせる!」
ザワザワ ザワザワ
「し、信じていいのか…?」
「ま、まさか?嘘に決まってるって?」
ヒメ「嘘じゃない!僕を信じろ!」
カロル「ボクからもおねがい!王子さまを信じて!」
ラム「信じちゃダメだ!」
カロル「いつまでこんなことを続けるの?ボクたちは争う必要なんてないんだよ!?」
カロル「ホントに人間が憎いの!?命を奪わないと消えない憎しみなの!?」
カロル「もうやめようよ!こんなにたくさんの血を流して、まだ意地を張るの!?」
シーン
ラム「み、みんな…」
カロル「人間に怯えて隠れ暮らしてた毎日を思い出してよ?辛かったでしょ?」
カロル「人間から歩み寄ってくれたんだよ?あとはボクたちが一歩踏み出すだけでいいんだ!」
カロル「人間とかホビットとか気にするのはやめようよ!同じ命でしょう!?」
シーン
カロル「ずっとこのままでいいの!?ずっとずっと…ずっとこのままだよ!?」
686: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:28:47 ID:imv0BbiqFU
スタスタ スタスタ
カロル「!」
「お、おれ…和解したい」
「わたしも……」
「ほ、本当は戦いたくなかった…」
「…人間が改めてくれるなら」
ゾロゾロ ゾロゾロ
カロル「みんな…!」パァァ
ヒメ「ハハハ!やったな!」パァァ
ラム「……!」ギリッ
バンパ「あ〜あ…みんな向こう側に立っちまった」
シープ「…なんかぼくらだけ仲間外れみたいじゃない?」
黒装束1「」スタスタ
黒装束2「」スタスタ
ラム「」ジロッ
バンパ「お前らもか?」
黒装束1「悪いな」スタスタ
黒装束2「ラムの考えも分かるけどカロルの言い分も間違ってない」スタスタ
シープ「べーっだ!あっち行っちゃえ!」シッシッ
ヒメ「…意地張ってないで来いよ?」
ラム「お前らの口車には乗らない」
バンパ「ふん…」
シープ「…の、のらないぞー!」アセアセ
687: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:30:10 ID:x2Uy2NZngQ
カロル「ラムくんたちもおいでよ!仲直りしよ?」
ラム「……」プイッ
カロル「…二人は本当に戦いたいの?」
バンパ「…それを聞かれちゃな?」
シープ「…た、戦いたくは…ないけど…」
カロル「人間の町って楽しいよ?石のお家とか鉄の塔とか地面から水が噴き出す広場があったり、おいしい食べ物もいっぱいあるんだ!」
バンパ「く、食い物か…」ジュルリ
シープ「そういえば…二日もごはん食べてない」グー
カロル「お店とかたくさん並んでて珍しい物がすごくあって!お祭りとかもするの!」
バンパ「へ、へぇ…そうなのか」
シープ「楽しそう…」
カロル「ホントだよ?ね?」
ヒメ「そうそう!それに武芸や芸術、他にもダンスとか運動なんかの競技で一番を決めるコンテストだってあるんだぞ!」エッヘン
バンパ「おぉ!俺、力なら自慢できるぞ?」ワクワク
シープ「踊るのやってみたいなー!」ワクワク
688: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:31:46 ID:imv0BbiqFU
カロル「ふふふ!こっちへおいでよ?」ニコニコ
バンパ「え、えーと」チラッ
ラム「……」
シープ「ら、ラム?な、なんかさ…楽しそうな気もしない?」
ラム「じゃあ行けば?」
バンパ「お、お前も来いよ!俺ら3人、兄弟みたいなもんじゃねーか?」
シープ「うん!うん!」コクコク
ラム「二人は好きにしたらいいよ。僕は行かない」
バンパ&シープ「……」シュン
カロル「もっとあるよ!」
バンパ「……」
シープ「……」
カロル「ホビットと人間が一緒に暮らせばお互いに楽しいことを共有できるでしょ?」
ラム「……」
カロル「一緒に楽しめる遊びもいっぱい考えてさ!みんなが幸せでわくわくする毎日にしようよ!」
カロル「そういう風に暮らしていったら、いつか好き嫌いも無くなって人間もホビットも仲良しになれるよ!」ニコッ
ヒメ「そうだな!」ウンウン
バンパ「仲良し、か…。想像もつかねぇな」
シープ「…でもこんなに戦った後に仲良くなんてなれっこないよ」
ヒメ「そんなの恨みっこなしだ。ケンカなんてどっちも悪いんだからな」
ヒメ「ただ…失うモノが多すぎた。だからもうやめよう。ここで許し合えないと、また逆戻りするだけだぞ?」
689: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:33:16 ID:imv0BbiqFU
バンパ「ラム…どうだ?」
ラム「は?なにが?」
バンパ「俺はいいと思うんだよ。なんてーか、もう…いいと思う」
ラム「」チラッ
シープ「ぼ、ぼくも…バンパの言うとーりかなーって…」モジモジ
ラム「ふーん…まだ夢を見るんだ」
バンパ「…見たくもなるだろ?なんにもねぇんだから?俺らには?」
ラム「……」
バンパ「底の破れた靴で歩き回って…腹空かしてよ…。
着た切り雀で冷たい風にさらされながら野宿するのにも…疲れたんだ」
シープ「足音とか馬の鳴き声がすると人間がいると思って…ヘトヘトでも移動したりして全然休めなかったもんね?」
バンパ「ちょこっとでいいんだよ。デケー夢は見ねぇ。ホントちょこっとでいいんだ」
バンパ「暖けぇ飯が当たり前に出てきて、足りなきゃおかわりして、他愛なくその日にあった事を話しながら皿やお椀を空っぽにしてよ?」
バンパ「ちゃんと沸かした湯で体を流してスッキリしたら歯でも磨いて、お日様のぬくもりを感じられる毛布にくるまって…うるせぇイビキでもかきながら、いつも通りの変わらない朝を待つ…」
バンパ「最高じゃねーかよ?お前だってそう思うだろ?」
シープ「えー…それはなんかおじさんみたいでやだなー?もっと色々あるじゃん?」
バンパ「だからお前はガキなんだよ!安定してた方がいいだろ?」
ヒメ「叶うさ!」
シープ「……」
バンパ「……」
ヒメ「絶対に叶う!安定もときめきも…誰にだって手に入れられる!」
カロル「ふふ!」ニコニコ
690: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:35:20 ID:x2Uy2NZngQ
ラム「行ってきなよ」
バンパ「……」
シープ「……」
ラム「僕が決めることじゃないしね?二人の意思で決めればいいよ?」
バンパ「…お、俺は」
シープ「」タタタッ
バンパ「シープ…!?」ギョギョッ
ヒメ「よし?えらいぞ!」
シープ「…ごめんね」チラッ
ラム「……」
バンパ「ら、ラム!やっぱり俺らも!」
ラム「"俺ら"?勝手に僕を入れないでくれる?」
バンパ「い、いいじゃねーか!これっきりにしてまともな生活送ろうぜ?」
ラム「僕を気遣って行けないなら…消えてあげる」クルッ
バンパ「はぁ?消えるって…どこに消えんだよ!」
ラム「」スタスタ
バンパ「おい!ラム!」
シープ「そっち来た方向と逆だよ!?」
カロル「ラムくん!」
スタスタ スタスタ……
ヒメ「放っておけよ。いくら説得しても聞かないんだから」
カロル「…ラムくん」
691: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/30(月) 21:22:48 ID:reOEUJ6NnU
ヒメ「おい!近衛師団長!」
団長「ははっ!」ピシッ
ヒメ「どうやら僕を解放するには条件があるらしい。呑まないと王子である僕の命が危ない!」
団長「かしこまりました!なんなりとお申し付けください!」
ヒメ「今すぐ全員、武器を捨てて戦いを中止しろ!」
団長「御意!」ポイッ
カランカラン
近衛兵1「だ、団長?よいのですか!」
団長「…王子の命令が聞こえなかったのか?」ギロッ
近衛兵1「大臣たちにどう言い訳するおつもりです!」
団長「この国で最も重いのは王族の言の葉よ?高官の出る幕などない!」
近衛兵1「し、しかし…」
団長「まぁ聞け!」
ザワザワ ザワザワ
団長「我が国には考える者が少なすぎる!何を思い、何をすべきか、己に問う決断力があまりに欠けている!」
団長「押し付けがましい平穏と引き換えに窮屈な暮らしを強いられ、不信感を口にする者は少なくない!だがあくまで口にするだけだ!」
団長「非常時に陥れば扉を固く閉ざし、窓越しに眺めながら外は危ない、きっと誰かがなんとかする…無関心を是とした究極の堕落だ!」
団長「己を知り、己に問え!高官に命令されたから動くのではなく、誰に従うべきかを考えろ!」
団長「真に国を想い、民を想い、我々を正しく導いてくださるのは誰だ!?」
近衛兵1「……」
692: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/30(月) 21:25:38 ID:reOEUJ6NnU
団長「…過去に悲劇の町や辺境の村が焼かれた。
そのどれもが目を背けたくなるような惨劇だったそうな」
団長「その時の話を泥酔した高官が高笑いしながら語ってくれた。
真っ赤に燃え上がる炎が町を覆い尽くすサマは美しく、何度見ても飽きぬとな?」
近衛兵1「」ブルッ
団長「それにワシは憲兵という職業柄、様々な事件を扱い、同時に闇へと葬ってきた」
団長「年に数回はどこぞで行方不明者が出て、その捜索が真実に近付くたびに圧力が掛かり……」
団長「式典の際には高官の前を横切った老人が衛兵に切り捨てられ…。
ある喫茶店では働き盛りの若者が不意に貴族の衣服に水をこぼしてしまい、死刑になった」
団長「ある時には貧しい家の少女が僅かな小遣いを貯め、誕生日に父親への贈り物に一本の安い酒を買った…。
家路までの道のりを駆け足で向かっていた少女は馬の足音に気付かず…無残にも轢かれてしまった」
団長「人の行き交う城下で構わず馬を走らせていたのはやはり貴族のバカ息子で…もちろん罪は裁かれる事なく…。
幸いにして少女のケガは浅く、命に別状は無かったが…。
あろうことかバカ息子は少女の不注意によって馬から落ちてしまうところだったと言い張り、罰として親子を王都から追放した!」
近衛兵1「……」
団長「その全てが…変わりなく今も続いている!」
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