前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
501: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:07:58 ID:5bX6FC1ZO6
教団員「これまで大聖堂で行われた巡礼では多くの信者が集まれど…全ての者とまではいきませんでした。
こうして志を同じくする全信者と教団員が集まり、共に神への祈りが捧げられるなんて夢のようです!」
司教「まことその通りでございます。
修道子の君たちもこのような機会に立ち合えた幸運に感謝せねば?」
ルーボイ「ちぇっ!なにが大樹だよ!遠すぎて全然見えねーじゃん!」
ナラ「…だ、だめ……だよ。おこられ、ちゃうよ?」オロオロ
司教「き、君たち?」
ルーボイ「もっと近くで見せろよな!司祭様のケチ!」
ナラ「る、ルーボイ…くん!」
司教「き、貴様ら!なんという罰当たりな!?」
ミシング「まーまー!神父さん!子供相手に大人げないですよー?」
司教「は、はぁ!?この私を神父だとぉ…!?」
ミシング「退屈だよねー?あたしも正直、帰りたいもん」
ルーボイ「だよなー!姉ちゃん、分かってんじゃん!」
ナラ「…だ、だれ?」
ミシング「ん?あたしは美人シスターのミシングお姉さんだよ!」
ルーボイ「美人?どっこがー?」
ミシング「あ、生意気!ちびのくせに!」
ルーボイ「う、うっせー!ちびじゃねーし!?」
ナラ「」クスッ
502: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:08:56 ID:5bX6FC1ZO6
ザワザワ ザワザワ
司教「〜〜〜!貴様ら、列から外れろ!!」
ミシング「えー?争いはいけませんとか言ってたのに怒鳴るんだー?」
ルーボイ「じーちゃん、大人げねーぞ!」
ナラ「ね、ねーぞ…!」プルプル
司教「むっきゃー!!!」
教団員1「お、落ち着きましょう!子供と出来損ないの戯れ言です!」
ルーボイ「へっへーんだ!宣教師様はもっと上手に叱ってくれたぞー!」
ミシング「宣教師…!」
ナラ「……おねーさん?」
ミシング「ううん…なんでもないよ?ただ懐かしい響きだったから…」
ナラ「そう、なんだ」
ミシング「あの子…元気でやってんのかなー」
司教「目障りだ!消えろ!」
ミシング「ヤな感じー?向こう行こっか?」
ルーボイ「そうだな!さっきからうっせーし!」
ナラ「」コクリ
司教「こんのぉ…冒涜者共め!!」
教団員「お、おさえておさえて」
信者's「」シラー
503: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:10:27 ID:6YNmmCSTg6
ルーボイ「姉ちゃん、宣教師様知ってんの?」
ミシング「うん。君の言ってる宣教師かは知らないけど、マジメでおせっかいな女の宣教師なら知ってるよー?」
ルーボイ「やっぱり!」
ナラ「わたし…たちも」
ミシング「…もしかして大聖堂の近くにあった村の子たち?」
ルーボイ「おう!ルーボイってんだ!」
ナラ「な…ナラ…」オドオド
ミシング「ほんとにー!?あの子、ちゃんと布教やってるの!?」
ルーボイ「……」
ナラ「……」
ミシング「…あれれ?あたしなんか変なこと聞いちゃった?」
ルーボイ「…知らねー。最後に会ったの2ヶ月前だし」
ナラ「わたしも…」
ミシング「なにそれー?イヤになって逃げちゃったりとか?」
ルーボイ「ナラ!言ってやれよ?」
ナラ「」ビクッ
ミシング「え?なに?どしたの?」
ナラ「あ、アリアス…さま、が…」
ミシング「アリアス?あームッツリスケベのダガと一緒に付き人やってた嫌味なおばさんね?」
ナラ「こわいひとに…あげたって……だから、せんきょうしさま…いなくなったの」
ミシング「えっ」
504: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:15:22 ID:5bX6FC1ZO6
ミシング「な、なにそれー?ウソでしょー?」ヘラヘラ
ルーボイ「ウソじゃねーよ!!」
ナラ「……!」コクコク
ミシング「す、スミマセン」タジッ
ルーボイ「俺、今日は宣教師様に会いたくて来たんだ。
だから勉強とかめんどくさかったけどすげー頼んで修道子にしてもらった」
ナラ「…じゅんれいにでれば、あえるとおもったから」
ミシング「…そっか」
ルーボイ「でも…いねーんだよ。ナラが言ってるの…ホントかも」
ナラ「…ごめん、ルーボイ…」
ミシング「ナラちゃんが謝ることないんだよ?」
ルーボイ「そうだよ。ナラは悪くねーじゃん」
ナラ「あり…がと…」
ミシング「二人はどうして宣教師に会いたいの?」
ルーボイ「…謝りたいから」ボソッ
ナラ「わたし…も」
ミシング「謝る?なんかしちゃったの?」
ルーボイ「カロルっていう…ホビットの友達がいたんだけど、俺…あいつに八つ当たりして…ひでーこと言った」
ナラ「わたしも…カロルをだましてた…。いけないって…しってたのに…」
ミシング「…それって宣教師に謝ること?」
ルーボイ「宣教師様なら絶対に俺たちを叱ってた!
カロルと俺を友達にしてくれたのは宣教師様で…最初にカロルと友達になったのは宣教師様だから!」
ナラ「せんきょうしさまとやくそくしたの。じぶんのきもち…しんじるって!」
ミシング「あらら、ホビットとお友達?向こうの列の人達に聞かれたら怒られちゃうよ?」
ルーボイ「いいよ!あんな大人の言う事なんて信じてねーし!」
ミシング「お、大声出したらホントに聞かれちゃうってば?」アセアセ
ナラ「……」
505: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:25:12 ID:kh6s4Xhrmc
ミシング「うーん。思い詰めすぎじゃないかなー?」
ルーボイ「あいつと友達になってからたくさんひどい目に遭ったし、それを全部あいつのせいにしてきたけど…やっぱり俺が間違ってた」
ルーボイ「父ちゃんを殺した悪い奴…カロルと遊ぶのを止めた奴ら…あの時は大人がみんな嫌いだった」バッ
ルーボイ「でもだんだんみんながおかしくなって…フツーだった毎日もおかしくなるんだよ」ブルブル
ルーボイ「親友だったパッチもいなくなって…最後は母ちゃんも死んじゃって…俺、どうしていいか分かんなくなって…」ハァッハァッ
ルーボイ「宣教師様も戻ってこねーし、村も焼けちまうし…俺だって村と一緒に死んだんだと思った」ガクガク
ミシング「(な、なんか壮絶すぎてついてけない)」
ルーボイ「でも…助かったんだ。カロルが助けてくれた…」
ミシング「どうやって?」
ルーボイ「…癒しの力」
ミシング「ふーん…やっぱりホントにあるんだ。今まで見てきたホビットは知らないって言ってたけど…」
ルーボイ「あいつに助けられてさ。俺すげーホッとしたんだ。あいつなんにも変わってねーんだもん」
ルーボイ「みーんなおかしくなったのにあいつだけ…」
ルーボイ「でも逆にそれがムカついてきて…宣教師様も遠くに行って会えないって言われて…殺したくなるくらいムカついたから首絞めてやったんだ!」
ミシング「その子ショックだったろーね」
ルーボイ「うん…あいつにさんざん八つ当たりして…バカだよな、俺…」
ルーボイ「大聖堂に来てからナラに聞かされたんだよ。
あいつが辛い目に遭ってたのも…なんで宣教師様がいなくなったのかも」
ミシング「……」
506: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:34:14 ID:SfPoNrhlRE
ルーボイ「俺ってガキだから…大人の言う事聞かないフリして、ずっと大人の言う通りに考えてたんだ」
ナラ「わたしも…そう。だから…こわくて…うらぎってた」シュン
ミシング「へぇ。あたし達が信じてた教団にもいろいろ裏があるんだ?
こんなかわいいお子ちゃま達を悲しませるなんて…あーやだやだ」
ルーボイ「…もう教団なんてどーでもいい。会って謝りたいんだ」
ミシング「…なでなでしちゃうっ!」ナデナデ
ルーボイ「…な、なにすんだよっ!?」ワシャワシャ
ミシング「会えるといーね?」ニコッ
ルーボイ「う、うん…」
ミシング「ほらー!二人とも元気出しなよ?」
ルーボイ「カロルにも会いたいけど…あいつはたぶん、もう……」
ナラ「うっ…うぅ…」シクシク
ミシング「あーあ…泣いちゃった」
ミシング「(それにしてもあの子、ホビットを庇ったんだぁ。教えと真逆じゃん?)」クスクス
ルーボイ「姉ちゃん、なんで笑ってんだよ!?」
ナラ「……?」グスッ
ミシング「ごめんごめん!なんかあの子らしいなと思って?」
ルーボイ「宣教師様が?」
ミシング「うん。思うままに行動しちゃうとこ、変わってないなーって?」
ルーボイ「……」
ミシング「あたしも久々に会いたいなー」
507: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:38:03 ID:SfPoNrhlRE
―――大樹の根元―――
宣教師「こんなにそば近くで見られるとは…感動的ですね!」キラキラ
カロル「わぁ…!」キラキラ
母「こんなに大きな木…見た事がないわ?」
司祭「わしらはこれから聖地巡礼の儀を取り仕切らねばならん。くれぐれも勝手に動き回るん……」
カロル「頂上まで登ったらお空に行けるかなー?」ヨジヨジ
司祭「ってコラぁぁぁ!?言ってるそばから!?」アタフタ
母「ダメでしょ、坊や!落ちたらどうするの!」
宣教師「あ、マルクくん!いけませんよ!?」
司祭「な、なんじゃ!?」クルッ
マルク「」シャー
司祭「や、やめんかぁぁ!?神聖な大樹に小便するでないわぁぁ!!」
アントリア「…後は君たちに任せるよ?僕とノワールが戻ってくるまで何事もないように?」
アリアス「は、はぁ…かしこまりました」
ダガ「…けっ」
508: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 19:07:37 ID:UX0rWjdZaA
―――大樹―――
アントリア「お集まりの皆様。大変お待たせ致しました」
パチパチ パチパチ
アントリア「本日は辺境の村々や近郊の町、そして国境を経て遥々と他国からも大勢の信心深い教徒の方々が集ってくださったとあって…誠に喜ばしい限りです」
アントリア「かれこれ50年…教団を立ち上げ、地道に布教活動に勤しんできた訳だが…。
ここまで大きな集まりを募る事が可能となったのはひとえに皆様の信仰への深い想いによるものでしょう」
ワイワイガヤガヤ
アントリア「しかし宗教というのは繋がりを得る一つのきっかけに過ぎません。
我々に課せられた使命はどのように人と人との心が寄り添い、絆を保ち続けるかにある」
アントリア「今、時代は急速に変化しております。それは過去の精算と未来の飛躍を願う恐るべき人間の進化だ」
アントリア「文明の発展。身近に備わる利便。不満と満足感の沸き上がる混沌とした雑念。
遂げるべき進化を阻む声と変えてはならない物を変えようとしてしまう声」
アントリア「まるで馬鹿馬鹿しく、されど必要とされた議論が度重なって日常を変化させる」
アントリア「誰を信じるべきか。誰の言葉がより真実に近いのか。
自分の意思を貫き通すには無力感が勝り、誰かの言葉に縋るほかない…」
アントリア「あまりに曖昧な世界で人は迷わずにはいられないのです」
シーン
アントリア「だからこそ…今日という日が成せる意味は何よりも大きいのだ!」
ザワザワ ザワザワ
アントリア「…ただ一心に!多くの心が一つとなって祈りを捧げられる!」
アントリア「この人々の姿こそ神が想い描いた人間の理想図に他ならない!」
アントリア「大樹を見上げ、一礼せよ!天空の彼方から見下ろす神に最大限の敬意を払って祈りを捧げるのだ!」
オォォォォォォォオ
アントリア「…それではノワール・バントン司祭。お願い致します」スッ
司祭「うむ。…黙祷!」パシッ
509: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 19:11:13 ID:7q09sjg7uo
―――平原―――
教団員「…大樹の方から旗が上がりました!」
司教「一同!黙祷!」パシッ
信者's「」ギュッ
教団員's「」ギュゥッ
ミシング「ほら、これだけはちゃんとしないとね?叱られちゃうよ?」
ルーボイ「わかってるよ!」ギュッ
ナラ「…せんきょうしさまもカロルもぶじでありますよーに」ギュゥゥゥ
ミシング「な、ナラちゃん?お願い事じゃなくてお祈りするんだよー?」アセアセ
ルーボイ「いーじゃん。別に!どっちも変わんねーだろ!」
ナラ「」コクリ
ミシング「い、いいんだけどさ?あははのは…?」ヘラヘラ
司教「冒涜者共め…。巡礼を終えたら直ちに破門にしてくれるわ…!」ギリギリ
ミシング「司教さーん。邪念が覗いてますよー?心を無にして祈りましょう!」ギュッ
司教「ぐ…くく…!」イライラ
510: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 19:14:56 ID:7q09sjg7uo
………………
司祭「…解いてよし!」パッ
アントリア「皆様もどうぞ楽になさってください」パッ
ワイワイガヤガヤ
司祭「本日の趣旨はこれだけではございませんぞ。まだまだ趣向を凝らしておりますでな!」
アントリア「…ではヘマトバザールの企画するホビットの贖罪をご覧に入れたいと思います。舞台にご注目ください」
国王「待て!」ガタッ
ザワザワ ザワザワ
司祭「…なにか?」
国王「なんだ、ヘマトバザールとは?そのような話は聞いておらんぞ!」
大臣「まぁまぁ!陛下!他国からいらした客人の目もありまするぞ?」
国王「黙れ!余は認めぬぞ!直ちに中止しろ!」
大臣「あのねぇ…いいですか、陛下〜?」ヤレヤレ
政務官「いや、陛下のおっしゃる事はもっともだ。私からも説明を要求する」
大臣「せ、政務官殿?なにを…?」
政務官「(要は私が流れを誘導し、滞りなくショーに移行させればいいのだろう?)」
司祭「…アントリア神官、説明じゃと?」クイッ
アントリア「では私から説明させていただきます。ヘマトバザールとは……」ズイッ
国王「ヘマトバザールは存じておる!
数年前にそこの大臣が独断にて認可を通した…ホビットを痛め付けるのを旨とする見世物集団であろう?」
大臣「」ヘッ
アントリア「言葉に悪意が込められておりますが…概ね合っています」
国王「認める訳にはいかぬ!これは巡礼であろうが?
なぜそのような催しが必要なのか!?」
アントリア「この巡礼の真の目的はホビットの贖罪と浄化にございます」
国王「…じ、浄化だと?」
511: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 19:24:46 ID:UX0rWjdZaA
アントリア「この大樹はホビットの禍々しき罪により、哀れにも枯れ果ててしまった…」
アントリア「…こうして国王の理解を頂き、ようやく大樹を救ってやる機会が訪れたのです」
国王「余の理解を頂いた?冗談もほどほどにしておけ!余は当初から反対しておったわ!」
アントリア「それはそれは…愚かな選択をなされましたな?」
国王「なっ…!お、愚かだとぉ!?」グッ
大臣「おんやぁ〜?陛下が落ち着かないご様子ですぞ?
誰ぞ気が休まるまで別の席へ案内差し上げてくだされ?」
アントリア「その必要はございません?国王にも是非、最後まで見届けていただきたく存じます」
国王「一体…!なにを企んでいる!?」ギリッ
アントリア「申し上げました通りにございます」
政務官「ではその浄化とやらについて説明してもらおう?
ヘマトバザールの拷問ショーが贖罪だとして、浄化はどのように結び付く?」
アントリア「ホビットの犯した罪が計り知れないものである事は明白だ。
清らかな大地を穢れた足で踏み、人間が神に賜った癒しの力を妬んで奪った事実はもはや…許されざる冒涜としか言いようがない」
国王「世迷い事を申すな…!貴様も知っている筈だ!そんな事実は存在しな……」
大臣「あー!!あー!!うぉっほん!!!うぉっほん!!!」ゴホンッ
政務官「陛下!お気を確かに!"客人"がいらしてるのをお忘れか!?」
国王「」ハッ
国王「(他国の人間は伝承を信じている…。我が国が広めた嘘だと知れば……)」
アントリア「貴方の放たれるたった一言によって…歴史は繰り返される。
それでも構わないとお考えならばどうぞお好きにしていただこう?」
国王「くっ…な、なんでも…ない!続けろ!」ググッ
512: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 19:34:14 ID:UX0rWjdZaA
アントリア「眼前に聳え立つ大樹は神の住まう天上への架け橋にございます」
大臣「もちろん知っておりますぞ〜?
伝承にも記された!れっきとした!事実に!…ございますからなぁ〜?」ニタニタ
国王「う、うむ…!」ワナワナ
政務官「それで?」
アントリア「これより大樹の根元にホビットの不浄の血を注ぎます。
根を伝い、体内を流れ、樹皮が色付き、頂にまで登った暁には…天に届いた不浄の血が浄化され、大樹が蘇る事でしょう」
国王「」ポッカーン
大臣「はぁ?」
政務官「し、神官!」
オォォォォォオォォオ
政務官「(ま、まずい!皆にまで聞かれている…!)」
大臣「あなたバカですかぁ!?そんなのありえないでしょうが!?」ガタッ
アントリア「信じられないのであればご自身の目で確かめたらよろしい」
政務官「今すぐ!今すぐに訂正してください!他国の人間もいる中で…そのような約束はさせられないぞ!?」ガタッ
大臣「そ、そうですぞぉ!これで何も起こらなければ我が国は大恥をかく事になる!?」アタフタ
アントリア「クックッ!この国交そのものが茶番劇だとなれば…当然怒りを買うのは免れません?」ニヤァ
国王「き、貴様の狙いはそれか!?王国の名を地に落としたいのだな!?」
アントリア「邪推してはいけない?これでも愛国心は強い方です?」
政務官「(な、何故でまかせを言う…!大樹へ赴く名目とヘマトバザールの宣伝が目的だった筈だ…!)」
513: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 19:38:32 ID:7q09sjg7uo
アントリア「恐れながら我々教団の発言力は…国王を遥かに上回り、各国へと伝わります?
あなた方が抗おうとも既に手遅れなのですよ?」
大臣「ま、待った!それでしたら司祭殿の発言力はどうです!」
政務官「そ、そうだ!ノワール司祭!これは神官の空想なのだろう!?」
司祭「はて?アントリア神官に説明を促したのは紛れもなくわしじゃ?
こやつの言葉はそれすなわち、わしの言葉と思ったがええ?」
国王「ば、バカな…!貴様ら組織ぐるみで母国を陥れるつもりか…!?」
アントリア「…バカはお前らだ」
国王「……!?」
大臣「し、神官…?あなた…今なんとおっしゃいました?」プルプル
政務官「(神官…!これ以上は私も庇いきれないぞ!?)」
アントリア「せいぜいそこで見ていたまえ?大いなる生命が息を吹き還す瞬間を?」スタスタ
司祭「失敗ばかりを恐れていては成功を手には出来んぞ?ほっほっ!」スタスタ
514: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 19:55:39 ID:UX0rWjdZaA
大臣「と、とんでもない奴らだ…!
ここに来て我々を裏切るとは…帰ったら真っ先に極刑に処して今日の出来事を闇に葬らねば…!」ギリギリ
政務官「もう無理だ。これだけ自国、他国の有力者が集まる場での出来事は隠せんよ」
大臣「な、ならどうすると!?」
政務官「祈るしかあるまい。神官の言葉が事実であることを…」
大臣「あ、ありえませんよぉ!枯れた木がホビットの血で蘇るなんて…どんな手を使っても無理!」
国王「(余は救いようのない愚か者だ…。己を無力だと信じ、流されるままに政を行ってきた報いが来たのだ…)」
大臣「ま、まぁ…いざとなれば陛下と教団に全責任を擦り付けてしまえばいいでしょう!
元より王族なんてその為だけに残しておいた生け贄なんですから…」コショコショ
政務官「(バカめ。よもや王族の首だけで済まされるか!)」
政務官「(かつて終わらない争いを止めた功績と教団の発足から我が国は唯一無二の王国として国家間で優位に立ってきた)」
政務官「(これでもし大樹が蘇らなければ教団の信用は地に堕ちる…)」
政務官「(伝承の信憑性そのものが危ぶまれ…長きに渡り、各国を騙していた事が知られる)」
政務官「(…そうなれば王国は終わりだ)」
政務官「(あのお方は何を考えている?一体なにが狙いだ?)」
政務官「(勝算のない賭けに出るような人ではなかった…)」
政務官「(何より一役人だった私が一度の失態もなく政務官にまで登り詰めたのは…全てあのお方の指示を受け入れてきたからだ)」
政務官「(信じるしかない…。信じるしか…)」
515: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/2(月) 21:15:47 ID:MLrZ7onf8Q
ザワザワ ザワザワ
ヒメ「な、なにが起きてる?父上たちの会話はなんだったんだ?」
団長「さ、さぁ…ワシにもよく分かりませんが…」
他国の役人1「ファンタスティック!大樹ガ蘇ル!マルデ、マジックネ!」
他国の役人2「Oh!トッテモ楽シミデース!」
妃「オホホ!そんな趣向を凝らしていたなんて流石ですわ?まさにおもてなしの精神ですわね!」
ヒメ「な、なんか黒付くめの集団が現れたぞ?」
団長「むむ…大樹の前に設置された舞台で何かするようですな?余興の類いか…?」
ヒメ「荷車が一台運ばれてきた…?」
団長「…余興に使う仕掛けでは?」
ヒメ「それにしてもあの黒付くめ…見たことあるような…?」
団長「人違いかと思われますぞ?あのような輩が城内に立ち入った事はございません」
ヒメ「そうか…。けど、どこかで…?」
516: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/2(月) 21:17:53 ID:T8J8lxPkS6
―――大樹(舞台)―――
ウォルター「ハッハー!紳士淑女の皆々様!王国の裏庭遊び!ヘマトバザールの世界へようこそ!」
パチパチ パチパチ
ウォルター「知る人ぞ知る名物劇にございます!視覚の快楽を存分に御堪能あれ!」
ガガガ ガガガ
手下1「出ろ!」ガラッ
ホビット1「」ブルブル
手下1「けっ!引きずり出してやらぁ!」ガッ ブンッ
ズシャアッ!
ホビット1「がっ!?」ズルッ
ウォルター「まずは挨拶代わりに血飛沫を一発浴びていただきましょう!?」
手下2「へへっ!今日の為に特注で作らせた巨大金槌だ!」ズッズッ
ホビット1「ひやあぁっ!?ゃ…やめっ…」ズサァッ
手下1「手足の枷が重くてろくに動けねぇだろ?すぐに軽くしてやらぁ!」
手下2「ひっひっ!イイ声で鳴けよぉ?ウラァッ!!」ブンッ
ドチャッ
ホビット1「っ……あっあぁぁぁあぁぁああ!!!!」ジタバタ
517: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/2(月) 21:21:50 ID:T8J8lxPkS6
オォオォオォオ ヒャッホーイ ヒューヒュー
ウォルター「ハッハー!片足潰したくらいじゃ死にゃしねぇよ!?
それより聴いてみな!お前の反応が良かったおかげで大歓声が上がったぜ?」
ホビット1「あっ…がぐぐぐぐぅぅぅいぃぃ」ブシャー
手下1「ギャッハッハッ!なんだ、こりゃ?脛っからひしゃげて奇妙な事になってらぁ?」ゲラゲラ
手下2「あー…なんだかんだとたまんねぇなぁ。弱い奴をとことんいたぶるってなぁ最高級の快楽だぜぇ…!」ハァハァ
ウォルター「いかがかな!これがヘマトバザールです!憎きホビットに制裁を与える正義の使者だ!
癒しの力を盗まれた人間の怒りはこんなもんじゃ済まねぇだろう!?」
ウォルター「徹底的に痛め付けて反省させてやりましょうや!
人間様に逆らうとどうなるか…こいつらの身体にたっぷりと刻み込んで!」
ウォルター「八つ裂きにして!骨も細かく砕いて!肉塊にして!魂さえ残しゃしねぇ!」
ウォルター「こいつらが罪深き種族でいてくれる限り…俺達はこいつらにいくらでも罰を与えていいのさ!?」
ウォルター「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」ゲラゲラ
手下1「おっ?ウォルターさんも初っぱなから本調子に入ったな?」
手下2「ケケケ!こりゃ〜今日はヤバい盛り上がりになんぞ!?」
ワァァァァァァァア ヒューヒュー パチパチ
518: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/2(月) 21:24:29 ID:T8J8lxPkS6
ヒメ「く、狂ってる…」ゾワァッ
団長「お、王子!見てはなりませぬ!」バッ
他国の役人1「」ヒューヒュー
他国の役人2「ホビット、コロセ!モットヤレ!」
ヒメ「な、なんで…なんであいつらは喜んでるんだ…?」ブルブル
団長「…王子は知らなくて当然でしょう。それほどまでにホビットは人々に憎まれているのです」
ガシュッ
ギャァァァァァァア
ヒメ「うぷっ…」
団長「み、耳も塞いで!何も考えずに!」
妃「なりませぬ」
団長「は!?」
妃「しっかり見なさい。これしきで狼狽えるようでは国王は務まりませぬぞ!」
ヒメ「母…うえっ!」ゲロゲロ
団長「わ、ワシの持参致した小袋にどうぞ!」サッ
妃「はしたない…!それでも次期国王ですか!?」
団長「お、恐れながら申し上げます!あのような残酷な見世物を見て体調を崩されるのは至極当然!
苦しむ我が子を叱咤なさるとは何事でござるか!?」
妃「お前は黙ってなさい!」
団長「っ…!」
ヒメ「おえっ…えふっ」ゲロゲロ
妃「他国のお客様がおられる席で自国の催しから目を背けるなど恥を知りなさい!」
団長「(この女は…!それでも人の親か!?)」ワナワナ
団長「(王子は貴様の地位を守る為の道具ではないのだぞ…!)」ギリッ
519: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/2(月) 21:28:08 ID:MLrZ7onf8Q
―――大樹の根元―――
母「向こうの方から何か聴こえない?」
カロル「そうかな?」
母「気のせいかしら…?」
カロル「宣教師さまは聞こえた?」
宣教師「いえ…私も特には?」
母「うーん…じゃあやっぱりあたしの勘違い?」
宣教師「そうとも限りませんよ?
樹木が太い為に裏側にいる私たちとは距離が離れていて向こうの音や声が届きにくいのかもしれません」
母「そうよね!向こうでたくさんの人間が集まってるんですもの?きっと声がこっちまで届いてきたのよ!」
マルク「うぅ〜…わんっ!わんっ!」
カロル「…どうしたの?」キョトン
マルク「わんっ!わんっ!」
母「あら?おとなしくしなきゃダメよ?司祭さんたちに言われたでしょ?」
カロル「お腹空いたの?」
宣教師「そうなんですか?」
マルク「」ブンブン
母「あたし達に何かを訴えかけてるの?」
カロル「マルクもなにか聞こえたのかな?」
宣教師「まさか…!」ハッ
カロル「え?」
宣教師「始まってるのかもしれません…!ホビットの拷問が…!」
カロル「えぇっ!?」ギョギョッ
520: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/2(月) 21:30:22 ID:T8J8lxPkS6
母「ど、どうしましょう!?」
宣教師「私が行って確認します!お二人はここに残っていてください!」
カロル「ボクも行くよ!」スクッ
母「だ、ダメよ!あたしが行くから坊やはここで待ってなさい!」
宣教師「な、何を言ってるんですか…!お母様も待っていてください!」
アリアス「あなた達、なに行く前提で進めてるの?」
ダガ「司祭様から待ってるように言われたろ」
宣教師「…止めても無駄です!やましい事がないのでしたら見に行っても問題ないでしょう!」
アリアス「大ありよ?私達がお叱りを受けるのだから?」
ダガ「もう説教は懲り懲りだ…。おとなしくしとけ」
母「約束が違うわ?あたし達は同族を守る為にここまで来たのよ!」
カロル「そ、そうだよ!行かせてよ!」
アリアス「…心配しなくても今は巡礼の真っ最中よ」
宣教師「考えてみれば巡礼でここまで届くような騒ぎになる筈がありません!」
ダガ「あぁ?なんにも聞こえねぇだろうが…?」
マルク「ぐるる…!」キッ
ダガ「…ちっ!」
アリアス「犬の尻に敷かれてんじゃないわよ」
ダガ「うるせっ!」
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