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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


493: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/30(金) 21:13:43 ID:KiugUyO4Uw
アントリア「しかし長かった。この日を迎えるまで予定よりだいぶ長引いてしまったよ」

司祭「お前さんが小僧を甘やかしとったせいじゃろうが?」

アントリア「万が一にも失敗は許されないからね。不安要素を削る意味でも彼の状態を安定させたかったのだ?」

司祭「…ここまでさせておいて出来ませんでしたで済ませられるか!」

アントリア「だが実際…謎の多い力だ。成功するかどうかは時の運だろうね」

司祭「む?確信があったから、ここまで手を回したのではなかったのか?」

アントリア「いや?」

司祭「な、何を考えとるんじゃ…!もはや後戻りは効かん大事になっとるんじゃぞ!?」

アントリア「癒しの力と大樹が揃っても他に条件があるとすれば…?時間や天候、鍵となる言葉、もしくは何か特別な道具が必要かもしれない」

司祭「し、しかし古文書には…!」

アントリア「古文書など所詮は作為を持って書かれた文字に過ぎない。王国の歴史書のようにね」

司祭「……!」

アントリア「君が偶然見つけた癒しの力は確かに古文書の内容を裏付けた。だが…それが果たして大樹に影響を及ぼすかはまた別の話だ」

司祭「な、納得できん!それではわしらのやろうとしている事は…博打と変わらんではないか!?」

アントリア「クックッ!」

司祭「な、なにがおかしい!?」

アントリア「ノワール…君はなにも分かってない」

司祭「なにぃ!?」

アントリア「緻密に積み上げた土台と僅かな勝算を糧に70を過ぎた老人が最期の夢を見る……だから面白いんじゃないか!」

司祭「はぁ…!?」

アントリア「人生はロマンだよ。勝利の美酒をグラスに注ぐには…それ相応の対価、すなわち敗北を覚悟しなければならないのさ?」

司祭「つ、付いていけん…!」

アントリア「何よりロマンを追いかけた君のセリフとは思えないな?」

司祭「わしにさんざん現実を見るよう促したお前のセリフとは思えんわい!」

アントリア「あぁ、夢を見させてくれてありがとう?」ニヤリ

パカラッパカラッ
494: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/30(金) 21:18:20 ID:KiugUyO4Uw
―――馬車2―――

パカラッパカラッ

ガララララッ ガタンッゴトンッ

母「暗いわねぇ?」キョロキョロ

宣教師「逃げられないよう全面、壁で覆われてますからね。
外から開けてもらわない限り、出られない仕組みなのでしょう」

カロル「…まだ着かないのかなぁ」

マルク「くぅーん」ションボリ

母「焦らないの?待ってれば着くわ?」

宣教師「…伝説の大樹、一体どれほどの大きさなんでしょう」

母「見たことないの?」

宣教師「えぇ。初めて見ることになります」

カロル「わくわくするね!」

宣教師「はい。とても楽しみです?」ニコッ

母「ふーん。あたしは心配ですけど」

カロル「どうして?」

母「だって…もし大樹に癒しの力が効かなかったら…」

宣教師「まぁ不確かな可能性には違いありませんし…あなた達の同族も人質に取られているようなものですからね…」

カロル「な、なんとかなるよ!ううん!なんとかする!」

宣教師「…そもそもなんでキミがそんな事をしなければならないのか…」

母「さんざん苦しめられて…挙げ句に同族の命まで背負わされて…この子が何をしたって言うのよ」

カロル「あーもう!またそうやって悪く考えるの!?」

母「だって…」

宣教師「不安ですから…」

カロル「で、でも…!もう3回も同じやりとりしてるじゃない!」

母「……だって心配なんですもの」シュン
495: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/30(金) 21:19:47 ID:KiugUyO4Uw
ヒヒーン

ガガガッ ガタンッ

カロル「と、止まった…?」ドキドキ

母「みたい…ね?いきなりでびっくりしたわ?」ドキドキ

宣教師「……」

カロル「宣教師さま?」

母「どうしたの?着きましたよ?」チョンッ

宣教師「」コロリン

カロル「……」

母「……」

宣教師「」

カロル「暗くてよく見えないけど、もしかして…」

母「そうね。たぶん気を失って…」

マルク「わんっ!!」

宣教師「きゃっ!?」ビクゥッ

宣教師「」ハッ

カロル「…な、なにも見てないよ?暗かったから…ね?」ツツー

母「そ、そうよ?気を失うなんてよくあることですもの?」アセアセ

宣教師「」ガーン

宣教師「お二人が心配で付いてきたのに…自分が情けない…」ガクッ

カロル「お母さま!なんでそういうこと言うの!?」アセアセ

母「ご、ごめんなさい!つい!」アセアセ

マルク「…あぅん?」キョトン
496: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/30(金) 21:21:15 ID:RjnDqIgWTE
―――巡礼地―――


パカラッパカラッ

アントリア「長旅、お疲れ様。問題なく合流できてよかった」

宣教師「あのような籠に閉じ込めてよく言いますよ」ムスッ

母「ま、まぁ?見て!?」

ズラァァァァァァァァァァァッ

カロル「すごーい!あれって何人いるの!?」ズイッ

司祭「窓から身を乗り出すな!危ないじゃろが!?」

カロル「ご、ごめ…なさい」シュン

司祭「ったく!行列の殆どは信者達じゃ。ザッと見積もって3万はおるじゃろうな!」

母「人間ってあんなにたくさんいるのね…」

宣教師「門を潜った後も馬車で移動しなくてはならないなんて、物凄く広い敷地なんですね?」

司祭「それもあるがお前さんらの存在が気付かれんように大樹まで先回りしとく必要があるんじゃ」

アントリア「この土地は今まで巨大な壁に隔てられ、人の手が一切加わっていないので馬車を走らせにくいんだが…。
この林を抜ければ平原に出る。少しは乗り心地もよくなるだろう」

母「生い茂る草花が懐かしい…?
昔はこういう自然に戯れて夫と日向ぼっこしたり…将来を語り合ったり…」クスクス

カロル「いいなー?ボクも一緒にしたかった?」

母「そうね…。今度一緒に日向ぼっこしましょっか?」

カロル「うん!するー!」

宣教師「……そういえばアリアスたちは?」

司祭「む?あやつらなら……」
497: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/30(金) 21:23:55 ID:KiugUyO4Uw
………………

パカラッパカラッ

ダガ「ちっ!」

アリアス「……」

ダガ「ちっ!」

アリアス「……」

ダガ「ちっ!」

アリアス「…いい加減にしてくれる?しょうがないじゃないのよ?」

ダガ「ちっ!」

ウォルター「おい、いい子にしてねぇと引きずり降ろしちまうぞ?」

ダガ「あぁ!?」ズイッ

アリアス「やめなさい!?」ガシッ

ウォルター「チッチッチッチッうるせぇんだよ。筋肉ダルマ!」

ダガ「んだとぉ…!?」ギリギリ

アリアス「やめなさいって言ってるでしょ!?」

ウォルター「お互い神官と繋がってたとはなぁ?ま、なかよく楽しもうや?」ヘラヘラ

ダガ「てめぇなんかとなかよくできるかっ…」

アリアス「同感だけれどそうも言ってられないわよ」

ウォルター「頼むから足だきゃ引っ張らんでくれよ?」

ダガ「ぐぬぬ…!」ワナワナ

ウォルター「ククク!今日は荒れるぜぇ…!」ニタァ
498: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:04:08 ID:6YNmmCSTg6
―――大樹―――

ズオォォォン

兵士1「な、なんて大きさだ…」タジッ

兵士2「これが…伝説の大樹か…!?」マジマジ

国王「……!」ギリッ

大臣「ほー?こりゃまさしく大樹と言って差し支えありますまい!
遥かなる平原の中央に悠然と聳えるサマは正に壮観ですな!
この壮大な眺めが我が国の保有する資源であり、こうして他国の方々にまで自慢…いやいやお見せできる機会が来るとはいやはや誇らしい!」

政務官「初めて見るが…確かに大したものだ?
枯れているとはいえ、これほど見栄えのよい有力な資源を放置してきたとは…な?」チラッ

国王「くっ…」ギロッ

政務官「おっと…なにも陛下に向けた訳ではございません?
これほどの貴重な資源に利用法を見出だせなかった私めの無能さを恥じているのです?」ニヤリ

国王「(とうとう高官の牛耳る政が他国にまで及ぶ日が来たか…。余はなんと無力なのだ…!)」ググッ

大臣「ささっ!陛下も席に付きましょうぞ!我々は最前列で大樹を目の当たりにできるのですから!」

政務官「ふっ!ご案内差し上げろ!」

兵士1「は、ははぁっ!」

兵士2「こちらにございます!」サッ
499: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:05:47 ID:6YNmmCSTg6
他国の役人1「」ペラペラ

他国の役人2「」ペラペラ

ヒメ「…なんで僕はここなんだ。父上は最前列にいるじゃないか!」

団長「そうおっしゃらず…わざわざおいでくださった客人の手前もありますゆえ」

ヒメ「誰だ?あいつら?」

団長「しっ!口が過ぎますぞ!?」

妃「ヒメ!」ピシャリッ

ヒメ「」ビクゥッ

団長「お、王妃さま!」

妃「何をしているのです!貴方も挨拶して参りなさい!」

ヒメ「は、母上…今までどこに?」オロオロ

妃「お客様方への挨拶回りです!貴方も愛想よくなさい!
そんなことではお父上のような立派な国王にはなれませんよ!」

ヒメ「……」

団長「わ、ワシもお供いたしましょう!」

妃「要人との親密な交流は政に欠かせぬ肝心要!本来でしたら、まず貴方が真っ先にお声かけしなければならないのですよ!?」

ヒメ「存じておりますっ!」プイッ

妃「なっ…それが母にする態度ですか!?はしたない!?」

団長「お、王子!参りましょう!」

ヒメ「ふん!」ムスッ
500: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:06:56 ID:6YNmmCSTg6
―――平原―――

ゾロゾロ ゾロゾロ

信者1「おぉ…ありがたや。この目で大樹を拝めるとは!」

教団員「これも司祭様の計らいあってのもの。遠目ではありますが…。
我々のような末端の教団員から入ったばかりの修道子まで行き渡るようにご招待くださったご配慮にただただ感謝するばかりです…」

信者2「最後尾からでも間近にあるように見えますよ!」

信者3「枯れ果てて葉を失った今も雄々しく聳えている…。
やはり神のおわす天空へと続く大樹は実在したんだ!」

信者4「当然だ!今まで司祭様の御言葉に偽りがあったか!?」

司教「これこれ、争いはいけませんぞ?
ここは謂わば神の膝元…すなわち我々は神の御前に立っているのだから?」スタスタ

信者3「し、司教様!」

信者4「し、失礼しました」

司教「分かればよろしい?」ニコッ
501: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:07:58 ID:5bX6FC1ZO6
教団員「これまで大聖堂で行われた巡礼では多くの信者が集まれど…全ての者とまではいきませんでした。
こうして志を同じくする全信者と教団員が集まり、共に神への祈りが捧げられるなんて夢のようです!」

司教「まことその通りでございます。
修道子の君たちもこのような機会に立ち合えた幸運に感謝せねば?」

ルーボイ「ちぇっ!なにが大樹だよ!遠すぎて全然見えねーじゃん!」

ナラ「…だ、だめ……だよ。おこられ、ちゃうよ?」オロオロ

司教「き、君たち?」

ルーボイ「もっと近くで見せろよな!司祭様のケチ!」

ナラ「る、ルーボイ…くん!」

司教「き、貴様ら!なんという罰当たりな!?」

ミシング「まーまー!神父さん!子供相手に大人げないですよー?」

司教「は、はぁ!?この私を神父だとぉ…!?」

ミシング「退屈だよねー?あたしも正直、帰りたいもん」

ルーボイ「だよなー!姉ちゃん、分かってんじゃん!」

ナラ「…だ、だれ?」

ミシング「ん?あたしは美人シスターのミシングお姉さんだよ!」

ルーボイ「美人?どっこがー?」

ミシング「あ、生意気!ちびのくせに!」

ルーボイ「う、うっせー!ちびじゃねーし!?」

ナラ「」クスッ
502: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:08:56 ID:5bX6FC1ZO6
ザワザワ ザワザワ

司教「〜〜〜!貴様ら、列から外れろ!!」

ミシング「えー?争いはいけませんとか言ってたのに怒鳴るんだー?」

ルーボイ「じーちゃん、大人げねーぞ!」

ナラ「ね、ねーぞ…!」プルプル

司教「むっきゃー!!!」

教団員1「お、落ち着きましょう!子供と出来損ないの戯れ言です!」

ルーボイ「へっへーんだ!宣教師様はもっと上手に叱ってくれたぞー!」

ミシング「宣教師…!」

ナラ「……おねーさん?」

ミシング「ううん…なんでもないよ?ただ懐かしい響きだったから…」

ナラ「そう、なんだ」

ミシング「あの子…元気でやってんのかなー」

司教「目障りだ!消えろ!」

ミシング「ヤな感じー?向こう行こっか?」

ルーボイ「そうだな!さっきからうっせーし!」

ナラ「」コクリ

司教「こんのぉ…冒涜者共め!!」

教団員「お、おさえておさえて」

信者's「」シラー
503: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:10:27 ID:6YNmmCSTg6
ルーボイ「姉ちゃん、宣教師様知ってんの?」

ミシング「うん。君の言ってる宣教師かは知らないけど、マジメでおせっかいな女の宣教師なら知ってるよー?」

ルーボイ「やっぱり!」

ナラ「わたし…たちも」

ミシング「…もしかして大聖堂の近くにあった村の子たち?」

ルーボイ「おう!ルーボイってんだ!」

ナラ「な…ナラ…」オドオド

ミシング「ほんとにー!?あの子、ちゃんと布教やってるの!?」

ルーボイ「……」

ナラ「……」

ミシング「…あれれ?あたしなんか変なこと聞いちゃった?」

ルーボイ「…知らねー。最後に会ったの2ヶ月前だし」

ナラ「わたしも…」

ミシング「なにそれー?イヤになって逃げちゃったりとか?」

ルーボイ「ナラ!言ってやれよ?」

ナラ「」ビクッ

ミシング「え?なに?どしたの?」

ナラ「あ、アリアス…さま、が…」

ミシング「アリアス?あームッツリスケベのダガと一緒に付き人やってた嫌味なおばさんね?」

ナラ「こわいひとに…あげたって……だから、せんきょうしさま…いなくなったの」

ミシング「えっ」
504: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:15:22 ID:5bX6FC1ZO6
ミシング「な、なにそれー?ウソでしょー?」ヘラヘラ

ルーボイ「ウソじゃねーよ!!」

ナラ「……!」コクコク

ミシング「す、スミマセン」タジッ

ルーボイ「俺、今日は宣教師様に会いたくて来たんだ。
だから勉強とかめんどくさかったけどすげー頼んで修道子にしてもらった」

ナラ「…じゅんれいにでれば、あえるとおもったから」

ミシング「…そっか」

ルーボイ「でも…いねーんだよ。ナラが言ってるの…ホントかも」

ナラ「…ごめん、ルーボイ…」

ミシング「ナラちゃんが謝ることないんだよ?」

ルーボイ「そうだよ。ナラは悪くねーじゃん」

ナラ「あり…がと…」

ミシング「二人はどうして宣教師に会いたいの?」

ルーボイ「…謝りたいから」ボソッ

ナラ「わたし…も」

ミシング「謝る?なんかしちゃったの?」

ルーボイ「カロルっていう…ホビットの友達がいたんだけど、俺…あいつに八つ当たりして…ひでーこと言った」

ナラ「わたしも…カロルをだましてた…。いけないって…しってたのに…」

ミシング「…それって宣教師に謝ること?」

ルーボイ「宣教師様なら絶対に俺たちを叱ってた!
カロルと俺を友達にしてくれたのは宣教師様で…最初にカロルと友達になったのは宣教師様だから!」

ナラ「せんきょうしさまとやくそくしたの。じぶんのきもち…しんじるって!」

ミシング「あらら、ホビットとお友達?向こうの列の人達に聞かれたら怒られちゃうよ?」

ルーボイ「いいよ!あんな大人の言う事なんて信じてねーし!」

ミシング「お、大声出したらホントに聞かれちゃうってば?」アセアセ

ナラ「……」
505: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:25:12 ID:kh6s4Xhrmc
ミシング「うーん。思い詰めすぎじゃないかなー?」

ルーボイ「あいつと友達になってからたくさんひどい目に遭ったし、それを全部あいつのせいにしてきたけど…やっぱり俺が間違ってた」

ルーボイ「父ちゃんを殺した悪い奴…カロルと遊ぶのを止めた奴ら…あの時は大人がみんな嫌いだった」バッ

ルーボイ「でもだんだんみんながおかしくなって…フツーだった毎日もおかしくなるんだよ」ブルブル

ルーボイ「親友だったパッチもいなくなって…最後は母ちゃんも死んじゃって…俺、どうしていいか分かんなくなって…」ハァッハァッ

ルーボイ「宣教師様も戻ってこねーし、村も焼けちまうし…俺だって村と一緒に死んだんだと思った」ガクガク

ミシング「(な、なんか壮絶すぎてついてけない)」

ルーボイ「でも…助かったんだ。カロルが助けてくれた…」

ミシング「どうやって?」

ルーボイ「…癒しの力」

ミシング「ふーん…やっぱりホントにあるんだ。今まで見てきたホビットは知らないって言ってたけど…」

ルーボイ「あいつに助けられてさ。俺すげーホッとしたんだ。あいつなんにも変わってねーんだもん」

ルーボイ「みーんなおかしくなったのにあいつだけ…」

ルーボイ「でも逆にそれがムカついてきて…宣教師様も遠くに行って会えないって言われて…殺したくなるくらいムカついたから首絞めてやったんだ!」

ミシング「その子ショックだったろーね」

ルーボイ「うん…あいつにさんざん八つ当たりして…バカだよな、俺…」

ルーボイ「大聖堂に来てからナラに聞かされたんだよ。
あいつが辛い目に遭ってたのも…なんで宣教師様がいなくなったのかも」

ミシング「……」
506: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:34:14 ID:SfPoNrhlRE
ルーボイ「俺ってガキだから…大人の言う事聞かないフリして、ずっと大人の言う通りに考えてたんだ」

ナラ「わたしも…そう。だから…こわくて…うらぎってた」シュン

ミシング「へぇ。あたし達が信じてた教団にもいろいろ裏があるんだ?
こんなかわいいお子ちゃま達を悲しませるなんて…あーやだやだ」

ルーボイ「…もう教団なんてどーでもいい。会って謝りたいんだ」

ミシング「…なでなでしちゃうっ!」ナデナデ

ルーボイ「…な、なにすんだよっ!?」ワシャワシャ

ミシング「会えるといーね?」ニコッ

ルーボイ「う、うん…」

ミシング「ほらー!二人とも元気出しなよ?」

ルーボイ「カロルにも会いたいけど…あいつはたぶん、もう……」

ナラ「うっ…うぅ…」シクシク

ミシング「あーあ…泣いちゃった」

ミシング「(それにしてもあの子、ホビットを庇ったんだぁ。教えと真逆じゃん?)」クスクス

ルーボイ「姉ちゃん、なんで笑ってんだよ!?」

ナラ「……?」グスッ

ミシング「ごめんごめん!なんかあの子らしいなと思って?」

ルーボイ「宣教師様が?」

ミシング「うん。思うままに行動しちゃうとこ、変わってないなーって?」

ルーボイ「……」

ミシング「あたしも久々に会いたいなー」
507: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 00:38:03 ID:SfPoNrhlRE
―――大樹の根元―――

宣教師「こんなにそば近くで見られるとは…感動的ですね!」キラキラ

カロル「わぁ…!」キラキラ

母「こんなに大きな木…見た事がないわ?」

司祭「わしらはこれから聖地巡礼の儀を取り仕切らねばならん。くれぐれも勝手に動き回るん……」

カロル「頂上まで登ったらお空に行けるかなー?」ヨジヨジ

司祭「ってコラぁぁぁ!?言ってるそばから!?」アタフタ

母「ダメでしょ、坊や!落ちたらどうするの!」

宣教師「あ、マルクくん!いけませんよ!?」

司祭「な、なんじゃ!?」クルッ

マルク「」シャー

司祭「や、やめんかぁぁ!?神聖な大樹に小便するでないわぁぁ!!」

アントリア「…後は君たちに任せるよ?僕とノワールが戻ってくるまで何事もないように?」

アリアス「は、はぁ…かしこまりました」

ダガ「…けっ」
508: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 19:07:37 ID:UX0rWjdZaA
―――大樹―――

アントリア「お集まりの皆様。大変お待たせ致しました」

パチパチ パチパチ

アントリア「本日は辺境の村々や近郊の町、そして国境を経て遥々と他国からも大勢の信心深い教徒の方々が集ってくださったとあって…誠に喜ばしい限りです」

アントリア「かれこれ50年…教団を立ち上げ、地道に布教活動に勤しんできた訳だが…。
ここまで大きな集まりを募る事が可能となったのはひとえに皆様の信仰への深い想いによるものでしょう」

ワイワイガヤガヤ

アントリア「しかし宗教というのは繋がりを得る一つのきっかけに過ぎません。
我々に課せられた使命はどのように人と人との心が寄り添い、絆を保ち続けるかにある」

アントリア「今、時代は急速に変化しております。それは過去の精算と未来の飛躍を願う恐るべき人間の進化だ」

アントリア「文明の発展。身近に備わる利便。不満と満足感の沸き上がる混沌とした雑念。
遂げるべき進化を阻む声と変えてはならない物を変えようとしてしまう声」

アントリア「まるで馬鹿馬鹿しく、されど必要とされた議論が度重なって日常を変化させる」

アントリア「誰を信じるべきか。誰の言葉がより真実に近いのか。
自分の意思を貫き通すには無力感が勝り、誰かの言葉に縋るほかない…」

アントリア「あまりに曖昧な世界で人は迷わずにはいられないのです」

シーン

アントリア「だからこそ…今日という日が成せる意味は何よりも大きいのだ!」

ザワザワ ザワザワ

アントリア「…ただ一心に!多くの心が一つとなって祈りを捧げられる!」

アントリア「この人々の姿こそ神が想い描いた人間の理想図に他ならない!」

アントリア「大樹を見上げ、一礼せよ!天空の彼方から見下ろす神に最大限の敬意を払って祈りを捧げるのだ!」

オォォォォォォォオ

アントリア「…それではノワール・バントン司祭。お願い致します」スッ

司祭「うむ。…黙祷!」パシッ
509: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 19:11:13 ID:7q09sjg7uo
―――平原―――

教団員「…大樹の方から旗が上がりました!」

司教「一同!黙祷!」パシッ

信者's「」ギュッ

教団員's「」ギュゥッ

ミシング「ほら、これだけはちゃんとしないとね?叱られちゃうよ?」

ルーボイ「わかってるよ!」ギュッ

ナラ「…せんきょうしさまもカロルもぶじでありますよーに」ギュゥゥゥ

ミシング「な、ナラちゃん?お願い事じゃなくてお祈りするんだよー?」アセアセ

ルーボイ「いーじゃん。別に!どっちも変わんねーだろ!」

ナラ「」コクリ

ミシング「い、いいんだけどさ?あははのは…?」ヘラヘラ

司教「冒涜者共め…。巡礼を終えたら直ちに破門にしてくれるわ…!」ギリギリ

ミシング「司教さーん。邪念が覗いてますよー?心を無にして祈りましょう!」ギュッ

司教「ぐ…くく…!」イライラ
510: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 19:14:56 ID:7q09sjg7uo
………………

司祭「…解いてよし!」パッ

アントリア「皆様もどうぞ楽になさってください」パッ

ワイワイガヤガヤ

司祭「本日の趣旨はこれだけではございませんぞ。まだまだ趣向を凝らしておりますでな!」

アントリア「…ではヘマトバザールの企画するホビットの贖罪をご覧に入れたいと思います。舞台にご注目ください」

国王「待て!」ガタッ

ザワザワ ザワザワ

司祭「…なにか?」

国王「なんだ、ヘマトバザールとは?そのような話は聞いておらんぞ!」

大臣「まぁまぁ!陛下!他国からいらした客人の目もありまするぞ?」

国王「黙れ!余は認めぬぞ!直ちに中止しろ!」

大臣「あのねぇ…いいですか、陛下〜?」ヤレヤレ

政務官「いや、陛下のおっしゃる事はもっともだ。私からも説明を要求する」

大臣「せ、政務官殿?なにを…?」

政務官「(要は私が流れを誘導し、滞りなくショーに移行させればいいのだろう?)」

司祭「…アントリア神官、説明じゃと?」クイッ

アントリア「では私から説明させていただきます。ヘマトバザールとは……」ズイッ

国王「ヘマトバザールは存じておる!
数年前にそこの大臣が独断にて認可を通した…ホビットを痛め付けるのを旨とする見世物集団であろう?」

大臣「」ヘッ

アントリア「言葉に悪意が込められておりますが…概ね合っています」

国王「認める訳にはいかぬ!これは巡礼であろうが?
なぜそのような催しが必要なのか!?」

アントリア「この巡礼の真の目的はホビットの贖罪と浄化にございます」

国王「…じ、浄化だと?」
511: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 19:24:46 ID:UX0rWjdZaA
アントリア「この大樹はホビットの禍々しき罪により、哀れにも枯れ果ててしまった…」

アントリア「…こうして国王の理解を頂き、ようやく大樹を救ってやる機会が訪れたのです」

国王「余の理解を頂いた?冗談もほどほどにしておけ!余は当初から反対しておったわ!」

アントリア「それはそれは…愚かな選択をなされましたな?」

国王「なっ…!お、愚かだとぉ!?」グッ

大臣「おんやぁ〜?陛下が落ち着かないご様子ですぞ?
誰ぞ気が休まるまで別の席へ案内差し上げてくだされ?」

アントリア「その必要はございません?国王にも是非、最後まで見届けていただきたく存じます」

国王「一体…!なにを企んでいる!?」ギリッ

アントリア「申し上げました通りにございます」

政務官「ではその浄化とやらについて説明してもらおう?
ヘマトバザールの拷問ショーが贖罪だとして、浄化はどのように結び付く?」

アントリア「ホビットの犯した罪が計り知れないものである事は明白だ。
清らかな大地を穢れた足で踏み、人間が神に賜った癒しの力を妬んで奪った事実はもはや…許されざる冒涜としか言いようがない」

国王「世迷い事を申すな…!貴様も知っている筈だ!そんな事実は存在しな……」

大臣「あー!!あー!!うぉっほん!!!うぉっほん!!!」ゴホンッ

政務官「陛下!お気を確かに!"客人"がいらしてるのをお忘れか!?」

国王「」ハッ

国王「(他国の人間は伝承を信じている…。我が国が広めた嘘だと知れば……)」

アントリア「貴方の放たれるたった一言によって…歴史は繰り返される。
それでも構わないとお考えならばどうぞお好きにしていただこう?」

国王「くっ…な、なんでも…ない!続けろ!」ググッ
512: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/1(日) 19:34:14 ID:UX0rWjdZaA
アントリア「眼前に聳え立つ大樹は神の住まう天上への架け橋にございます」

大臣「もちろん知っておりますぞ〜?
伝承にも記された!れっきとした!事実に!…ございますからなぁ〜?」ニタニタ

国王「う、うむ…!」ワナワナ

政務官「それで?」

アントリア「これより大樹の根元にホビットの不浄の血を注ぎます。
根を伝い、体内を流れ、樹皮が色付き、頂にまで登った暁には…天に届いた不浄の血が浄化され、大樹が蘇る事でしょう」

国王「」ポッカーン

大臣「はぁ?」

政務官「し、神官!」

オォォォォォオォォオ

政務官「(ま、まずい!皆にまで聞かれている…!)」

大臣「あなたバカですかぁ!?そんなのありえないでしょうが!?」ガタッ

アントリア「信じられないのであればご自身の目で確かめたらよろしい」

政務官「今すぐ!今すぐに訂正してください!他国の人間もいる中で…そのような約束はさせられないぞ!?」ガタッ

大臣「そ、そうですぞぉ!これで何も起こらなければ我が国は大恥をかく事になる!?」アタフタ

アントリア「クックッ!この国交そのものが茶番劇だとなれば…当然怒りを買うのは免れません?」ニヤァ

国王「き、貴様の狙いはそれか!?王国の名を地に落としたいのだな!?」

アントリア「邪推してはいけない?これでも愛国心は強い方です?」

政務官「(な、何故でまかせを言う…!大樹へ赴く名目とヘマトバザールの宣伝が目的だった筈だ…!)」
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うpろだ
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