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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


461: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:23:31 ID:rN40KpPEII
ダガ「どけ?」ギロッ

カロル「やだ!」

ダガ「ちっ!ならどかしてやる…」ズイッ

ビュンッ ガバッ

ダガ「ぐおっ!?」ドカッ

マルク「ぐるるるる…!」ガブッ

ダガ「ぎゃっ!び、ビゴパノチェス!?」ジタバタ

アリアス「……」

カロル「アリアスさんもやめて…おねがい?」

アリアス「…しかたないわね。貴方の頑固さは知ってるのだし?」

カロル「ありがとう?」ニコッ

司祭「たわけぇっ!偽善もいい加減にせんか!こやつは…むぐっ」ガッ

宣教師「近所迷惑になりますから、しばらく口を閉じていただけますか?」ガシッ

司祭「もがもぐ!」ジタバタ

カロル「ねぇ、おじさま」クルッ

乞食「な、なんだよ」

カロル「どうしてあんなことしちゃったの?」

乞食「おめぇみてーなガキに言ったって…」

カロル「」ファサッ

乞食「え…おま…」

カロル「うん。ホビットだよ」

乞食「…あ、あわわ…!?」

カロル「怖がらなくていいんだよ?ボクはおじさまをいじめない」

乞食「あ…へあ?」

カロル「教えて?」
462: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:25:37 ID:lG3iGIaQjY
カロル「そう…」

乞食「し、しかたねぇだろ。俺たち敗残者は奪われた分だけ奪い返さなきゃ生きてけねぇんだ」

カロル「そんなことないよ?おじさまたちならもっと違う生き方があると思う」

乞食「ホビットに慰められたって嬉しかねぇや…」

カロル「……」

乞食「俺たちだって…こうはなりたくなかった。運が悪かったんだ」

カロル「ボクね、おじさまの気持ち…知ってるんだ」

乞食「え?」

カロル「ひもじくて…寂しくて…こわくて…でもどうにもならなくて……」

カロル「誰かの幸せを見つけると羨ましくてボクも欲しくなるの…」

カロル「だけど…幸せな誰かを恨まないで?」

乞食「……」

カロル「不幸せな誰かをいじめれば幸せになれるのかもしれないね?」

カロル「でも…そしたらもっと幸せな誰かがキミをいじめるかも?」

乞食「ケケケっ…まさに今の状況だ?」

カロル「ごめんなさい…。でもあのままだとみんなが傷付くから…」

乞食「いいよ。自業自得さ」

カロル「ふふ…ちょっと待っててね?」

乞食「あ…?」
463: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:27:52 ID:rN40KpPEII
母「まぁ…!」

宣教師「か、カロルくん!何をしてるのですか!」ガッ

司祭「もがーっ!」ジタバタ

母「…坊やったら」クスッ

アリアス「神官…」

アントリア「好きにさせてあげなさい…。もし何かあれば…もう一働きしてもらうよ?」

アリアス「かしこまりました」

シスター「な、なに考えてるの…あのホビット?」ガタガタ

マルク「わぐぅ!」ガブリンチョ

ダガ「分かった!分かった!分かったっつの!いででで!」ジタバタ
464: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:28:57 ID:lG3iGIaQjY
カロル「はい!これでおしまい?」フワッ

「あ、あれ…?おらぁ何を?」ムクッ

ザワザワ ザワザワ

乞食「な、なんてこった…。俺は夢を見てんのか?」

カロル「おじさまは?ケガしてない?」

乞食「し、してねぇよ」

カロル「そっか?じゃあ…頑張ってね!」フリフリ

乞食「は!?」

カロル「おじさまは幸せになれるよ。こんなにたくさんのともだちがいるんだもの?」ニコッ

乞食「……!」

カロル「」スタスタ

乞食「ま、待てよ」

カロル「…なに?」クルッ

乞食「憲兵に突き出さねぇのか?」

カロル「うん。しないよ」

乞食「」ホッ

カロル「でもね…シスターさんの悲しみ、辛さ、苦しみ、悔しさ…いろんな気持ちを考えると許しちゃいけないって言うのも分かるんだ?」

乞食「」ズキィッ

カロル「シスターさんにはちゃんと謝らないとね…?もうこんなことしちゃダメだよ?」

乞食「は、はい…」

カロル「それから…おじさまたちが幸せになったら、今度はおじさまたちが不幸せな誰かを幸せにしてあげてね?」ニコッ

乞食「…はい」ブワッ

カロル「」スタスタ

乞食「うぐっ…えぐっ…」ポロポロ
465: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:31:14 ID:rN40KpPEII
カロル「待たせちゃってごめんなさい」スタスタ

宣教師「構いませんが…何を話していたのですか?」ググッ

カロル「約束してきたの!」

宣教師「約束?」ググッ

司祭「もが…ぶはっ!離さんかぁ!?」バッ

宣教師「きゃっ!す、すみません。忘れてました」パッ

母「…あの人間たち、どこかに向かっていくみたい」

アントリア「方角的には憲兵団の本部だが…。まさか自首を促したのかね?」

カロル「ううん。自分で決めたんじゃないかな…」ニコッ

シスター「…ひっ…ひぃっ」

アントリア「…大丈夫。もう大丈夫だ」サスサス

カロル「……」

マルク「」ガブゥゥゥ

ダガ「か、帰ったらビーフジャーキーやるから…!も、もう勘弁してくれ…!」プルプル

カロル「マルク?」

マルク「あんっ!」パッ タタタッ

カロル「いいこいいこ!」ナデナデ

マルク「くぅーん」シッポフリフリ

ダガ「(どこがいいこだ、ちくしょうめ…)」ピクピク
466: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:32:45 ID:rN40KpPEII
―――教会―――

シスター「……」

アントリア「どうかね?キレイなものだろう?」

母「あれからみんなで協力して全部屋、掃除したんです。そうすればシスターさんの苦労が分かると思って…」

シスター「……」

カロル「……」シュン

宣教師「まだ気分が優れませんか?顔色もよくないみたいですし…」

シスター「……」ボーッ

司祭「ひどく混乱しとるんじゃろう。時間が経過してから冷静になってみれば判断の付かん状況に戸惑い、その時の恐怖感を思い返してしまうものじゃよ…」

アントリア「まずは休ませるのが先決だ。明日、彼女が落ち着いてから話を聞いてあげよう」

宣教師「…そうですね。癒しの力で外傷は消えましたが心の傷までは癒えません」

カロル「……」

シスター「」ボーッ

アリアス「私が自室まで連れていきましょう」ガシッ

司祭「…うむ」
467: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:34:39 ID:rN40KpPEII
―――教会(シスターの部屋)―――

シスター「……」ボーッ

シスター「……」ガバッ

シスター「……」キョロキョロ

シスター「(あれ?私、破門されたのに…)」

ガチャッ

シスター「?」チラッ

アントリア「起こしてしまったかな?」バタンッ

シスター「しん……」

シスター「」ハッ

シスター「」ガタガタ

シスター「あ、アァァァァァ」ブルブル

アントリア「…大丈夫。大丈夫だとも」


シスター「や、いやっやだ」アタフタ

アントリア「怯えなくていいのだよ。今はゆっくり寝ていなさい」

シスター「わた…し…ど…して」

アントリア「カロル君のおかげだよ。癒しの力で君を救ったのだ」スッ

シスター「いやし…のちから?」キョトン
468: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:36:53 ID:lG3iGIaQjY
アントリア「ハーブティーを淹れてみたのだが…口に合うかどうか?」つ【ハーブティー】

シスター「……」パシッ

シスター「」ゴクゴク

アントリア「感想は?」

シスター「ふ…つう。ちょっぴり…あつい、です」つ【空のティーカップ】

アントリア「ふっふっ…なるほど、まだまだ勉強不足だな。君が淹れてくれた物とは程遠い」パシッ

シスター「……」

アントリア「味はともかく、そのハーブには心を落ち着かせる作用がある。きっと寝付きもよくなるだろう」

シスター「そ…ですか」ボソッ

アントリア「おやすみ、ロデル?」ガチャッ

バタンッ

シスター「……ロデル?」

シスター「(あ、そだ。私、シスターじゃなくなったんだ)」


469: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:38:15 ID:lG3iGIaQjY
シスター「……」ポケーッ

シスター「(…見も知りもしない浮浪者の集団に暴行された。どのくらいだったか、よく覚えてない)」

シスター「(でも助けられたのは覚えてる。あのホビットに触れられた時、全身の鈍い痛みが無くなって…意識もはっきりした)」

シスター「(その後、しばらく会話した後にホビットは倒れた浮浪者に一人一人、手をあてがった)」

シスター「(そうしたらみんな起き上がって…まるで死人が蘇ったような…なんとも言えないけどふしぎな光景だった)」

シスター「…そっか。私、死んだんだ」ポツリ

シスター「……」

シスター「…この体はホビットの呪われた力で再生された偽りの肉体」

シスター「神官は私を破門にするだけじゃなくて…聖職者としての尊厳すら奪ったのね」
470: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:40:02 ID:lG3iGIaQjY
シスター「……」クスッ

シスター「ふふ……」

シスター「アハハハハハハ」

シスター「」ボフッ

シスター「(私の信じてきたものってなんだったの?)」ゴロン

シスター「涙も出ない。悲しくはないの?」ギュッ

シスター「…ああ、これもホビットの呪いなんだ」

シスター「もう神のしもべどころか人間でさえない。
過ちに気付いた時には遅く、主に見放されて人でもホビットでもない異形の化け物になったラーダマァシみたいに…この肉体には暖かい血が通ってないのでしょうね」

シスター「(ごめんなさい、神官)」

シスター「(一時の怒りから負の感情に支配された私に情けをかけてくれたのですね)」

シスター「(呪われた肉体とはいえ、こうして償える最後の機会を……)」

シスター「」ムクッ

シスター「小さな体で見上げたあなたの大きさと頭上から降り注ぐ暖かい眼差しに心を奪われて…シスターになろうと決意したんです」スッ

シスター「…償う前に想いを綴る身勝手な私を…どうかお許しください」カキカキ
471: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:49:59 ID:lG3iGIaQjY
〜〜〜朝〜〜〜

―――教会(客間2)―――

アントリア「」ペラッ カサッ

司祭「その遺書を書き終え…喉笛にペンを突き刺したのか」

アントリア「……」ペラッ

司祭「分からん…。なぜなんじゃ…なぜ自殺など…」

アントリア「ふむ…」

司祭「…なんとあった?」

アントリア「」チラッ

カロル「ひっく!えぐっ!うぅぅ…!」ギュゥゥッ

母「……」ナデナデ

宣教師「っ…!」ググッ

マルク「……」ションボリ

アントリア「我々の理解を超える精神状態だったようだ…。思いとどまれなかったのが悔やまれるよ」
472: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:51:13 ID:rN40KpPEII
アントリア「まともな内容ではなかったよ。
ホビットに呪われた。偽りの肉体を与えられたとあったり、暴行に罪を償わせてくれてありがとう等とおかしな文脈が続いていたり…ある種の被害妄想と強迫観念に囚われていたのは明らかだ」

司祭「そうか…。誰かが付いてやるべきじゃったな」

アントリア「…丁寧な性格に似合わず、12枚もの便箋に綴られた字は走り書きだったのか、ひどく汚いものだ」ペラッ

アントリア「普段の彼女なら1文字たりとも誤らずにまとまりのある文章を書けたはずだ。
そもそも…この内容は拡大解釈と妄想が大部分を占めていて、自殺に至る明確な経緯と理由の説明がなされていない」

司祭「…かわいそうなことをしたわい。よくよく考えれば相当追い詰められていたじゃろうに」

カロル「…ボクが、悪いんだ。床を汚したから……」グスンッグスンッ

母「自分を責めないの?あなたは悪くない」ナデナデ

宣教師「そうです…。キミは悪くありません。ゴミ拾いの際に私が余計なことを言わなければ……」

母「そうじゃないわ?誰も悪くないのよ?」

アントリア「その通りだよ。こうした場合には誰しも己を責めたくなるものだ」

カロル「……」グスッ

宣教師「ですが…」

母「二人はまだ若いから親しい相手との別れが受け入れられなくて当然よ?」

母「彼女をああしてしまった原因はここにいるみんなが心当たりがあるでしょうけど…それを口に出して訴えかけてもどうすることもできないわ?」

母「いっぱい悲しんで、いっぱい悩んで、いっぱい思い出して…彼女を忘れないように生きていきましょう?
それが死んでしまった彼女にとって良いのかは分からないけど、大事なのはあたしたちまで生きる希望を見失わないことだと思うの」

カロル「ぅ……」ブワッ

カロル「うぇぇぇん…!」シクシク

宣教師「……!」グッ
473: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:55:38 ID:rN40KpPEII
アントリア「……さて、とりかかろうか。
彼女の遺体を清め、埋葬してあげるのが我々にできる唯一の償いだ」

司祭「…城下の教団員を集めてやらせればよかろう?アリアスとダガが憲兵団に知らせるついでに人手を集めておるはずじゃ」

アントリア「そうはいかないさ。彼女は直接、僕に尽くしてくれた人間だ」

司祭「…死者の救済、もとい後始末も教団の務めとはいえ、やりきれぬもんじゃな」

アントリア「せめて僕の手で弔ってやらなければ彼女の魂も浮かばれないだろう。泣き言ばかり言えないよ」

司祭「…辛いのう」

――私に〜〜ての信〜〜神官に捧げ〜〜〜〜りました。あなたに会え〜〜〜〜〜〜〜〜〜

アントリア「……呪われて涙も出ないと書いてあるにも関わらず、最後の文章は滲んでいるじゃないか」

アントリア「(信じる相手を間違えた代償だよ。さよなら、シスター・ロデル)」
474: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/25(日) 17:15:23 ID:69WgDaIQEE
〜〜〜数日後〜〜〜

―――憲兵団本部(集会場)―――

団長「諸君らもすでに耳にしたであろうが来月の巡礼は国を挙げてのものとなる。
他国の役人もいらっしゃるので事実上の国交行事と言えるだろう」

団長「故にワシは兼任する近衛兵団を率いて要人を警護する運びとなるが…お前たちには城下に残ってもらい、普段通りの活動を命じる」

団長「国の重要人物が一時的とはいえ不在になり、国の最大武力が離れる間、これまで以上に犯罪率が高まり、治安の悪化が予想されるだろう」

団長「諸君にはくれぐれも緊張感を持って取り締まり活動を行ってもらいたい。以上だ!」

ザワザワ ザワザワ

団長「総員、持ち場に戻れ!」

ワイワイガヤガヤ



475: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/25(日) 17:26:24 ID:SsI1b17tBk
―――憲兵団本部(休憩所)―――
憲兵1「団長が抜けるのか…」スパー

憲兵2「参ったな。書面を相手にしてる部署の連中にしてみりゃ大した支障もねぇだろうが…」プカプカ

憲兵3「あの人は生粋の現場指揮官だからな…。
俺たちみたいに実際の取り締まり活動に当たる部署としてはでかい穴だ」シュボッ

憲兵1「ここ最近は特に大きな事件が多発してっからよ?
ああいう連中がここぞとばかりに暴れまわるかと思うと…俺たちだけじゃ不安だぜ?」スパー

憲兵2「…そうも言ってられねぇさ?
こないだも教会で自殺者が出たんだ。今は事件が起きない日がねぇ」プカプカ

憲兵3「訳の分からん浮浪者が一斉に出頭してきたしな?
強盗にしろ、誘拐にしろ、最近慌ただしすぎねぇか?」フー

憲兵1「…やっぱ団長がまとめてくれなきゃキツいよ」

憲兵4「…そういえば団長ってなんで憲兵と近衛を兼任してるんですか?」

憲兵1「なんだ、新入り?そんなことも知らねぇのか?」ジュッ

憲兵4「はぁ…聞いたことがないもので?」

憲兵2「まぁ理由って言っていいのかも分からんが…あの人に勝る武人がいないからだろうな」

憲兵3「16の頃には王都の剣術大会で近衛の腕利きを一蹴して優勝したと言われる程だしな」

憲兵1「忠義に厚い人間性から王族にも信頼されてるし、実際に剣術指南役として面倒を見てる王子に親身に接してる。
人望のない国王に本気で忠誠を誓ってるのはあの人くらいだ」

憲兵4「へー…信頼されてるんですねー」

憲兵1「そういや国王と王子が最近、和解したって聞いたか?」

憲兵2「聞いた、聞いた。団長が一番、頭悩ませてたんだよな」

憲兵3「だから最近の団長は上機嫌なのか?一昨日なんかミスしても笑い飛ばしておとがめなしだったぜ?」

憲兵4「自分も見回り中に食事をご馳走してもらいましたよ」

憲兵1「いいな、お前ら。俺なんて……」

バァンっ!!

憲兵's「」ビクッ

団長「休憩時間はとっくに過ぎたぞ!持ち場に付け!?」

憲兵's「は、はいぃぃぃ!!!」ピシッ
476: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/25(日) 17:30:23 ID:SsI1b17tBk
―――教会(客間2)―――

アントリア「…彼はどんな様子だね?」

アリアス「三人共、客室に籠ったまま…まだ立ち直れてないようです」

司祭「…短い付き合いとはいえ、身近な存在の死は受け入れがたいものがあろうな」

アントリア「それは困ったな?巡礼の日に彼の力が十分に発揮されないかもしれない?」

司祭「む?ま、まぁのう?」

アリアス「一番身近にいた神官はなんとも思ってないのですか?」

アントリア「どんな形であれ、彼女なりに悩んで出した答えだ。僕はその意思を尊重しよう」

アリアス「…冷たいお方」

アントリア「さて…計画の為にも彼には元気を取り戻してもらわなければね」

司祭「どうするんじゃ?」

アントリア「気分転換させればいいじゃないか?
嫌なことは忘れてしまう。それが人生を健やかに生きる秘訣だ?」ニヤリ
477: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/25(日) 17:31:31 ID:69WgDaIQEE
―――教会(客室1)―――

カロル「絵のコンクール…ですか?」

アントリア「あぁ。君が描いた信者の似顔絵を見させてもらったが素晴らしい才能を感じた?
そのままにしておくのはもったいないと思ってね?」

カロル「そんな…大げさです…」

アントリア「ならば大げさかどうか君自身で確かめてみるといい。
実力が結果として明かされるのがコンクールなのだから?」

母「出てみたら?坊や、お絵描き大好きでしょ?」

宣教師「そうですよ。せっかく頂いた機会ですし…」

カロル「でも…ボク…ホビットだもの」

アントリア「関係ないさ。対象は10歳以上の絵に自信がある者とあるからね」

宣教師「それでしたら十分、入賞の見込みもありますよ!」

母「そうよ!試しに出てみましょう?」

カロル「やっぱりいいです…。そんな気になれませんから…」

アントリア「そうか…。まぁこちらとしても無理強いはしないが」

カロル「ボク…マルクとお散歩してくる」スクッ

母「坊や…」

スタスタ ガチャッ バタンッ
478: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/25(日) 17:33:26 ID:69WgDaIQEE
アントリア「随分と引きずってるようだね?」

母「ごめんなさい。せっかくお誘いくださったのに…」

宣教師「…しかたありませんよ。
単なるケンカ別れなら、またいつかと希望が持てますが…わだかまりを残しての死は二度と修復できませんから」

アントリア「彼は未だに自分を責めているのかね?」

母「あの後も言い聞かせたんですけど…落ち込んだままで…」

宣教師「シスターさんの遺書にホビットに呪われたという一文があったのを気にしているんです…」

アントリア「…信仰とは恐ろしいな。普通に考えれば馬鹿馬鹿しく思えることでも真剣に信じてしまう」

宣教師「その恐ろしさは私もよく知っています…。今にして思えば様々な事柄を疑わなさすぎました」

アントリア「やはりこんな教えは無くすべきだ。今はまだ王国の手前もあって布教を続けなければならないが…」

宣教師「教えだけではありませんよ。
協力したら約束通り、人々の誤解を解いて彼らの居場所を作ってあげてくださいね」

アントリア「もちろんだとも?」

母「…信仰、ですか」

宣教師「え?」

母「助けられた相手を恨んでしまうなんて…確かに恐ろしいですわね?」フッ

アントリア「……」

宣教師「…私、もう一度説得してみます」スタスタ

母「……」

ガチャッ バタンッ
479: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/25(日) 17:35:20 ID:69WgDaIQEE
―――城下町(噴水広場)―――

ジャージャー

マルク「あんっ!あんっ!」クルクル

カロル「キレイなお水だね。どこから流れてくるんだろ?」

アリアス「…わざわざ呼び出してどういうつもり?」

カロル「いつも外に出たら付いてくるじゃない?」

アリアス「気付かれてたの?」

カロル「ううん。ダガさんに言われたの。あんまり外に出られると追わなきゃいけないからめんどくさいって」

アリアス「あのバカ…」

カロル「癒しの力ってさ」

アリアス「へ?」

カロル「なんなの?」

アリアス「なんなのって…言われても…」

カロル「どうしてボクが触ると傷が治るの?どうしてボクにそんな力があるの?」

アリアス「し、知らないわよ。私に聞かれても…」

カロル「…司祭さまとアントリアさんに聞いたら分かるかな?」

アリアス「多分…でもそんなの知ってどうするの?」

カロル「気になっただけ?どうしてかなって?」

アリアス「…なんで急に」
480: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/25(日) 17:37:52 ID:SsI1b17tBk
アリアス「気にしなくていいんじゃない?
特別な力や才能は選ばれた者に与えられる特権よ。私はあなたが羨ましいわ」

カロル「そうかな…。ボク、そんなに嬉しくないや」

アリアス「それは単にあなたが力の価値に気付いてないだけよ」

カロル「…誰も喜んでくれないもの」

アリアス「なにが?」

カロル「ボクの力で治った人間はみんな嫌がってた」

アリアス「…あなたねぇ?まだシスターの件を気にしてるの?」

カロル「シスターさんだけじゃないよ。神父さまもナラもルーボイくんもお城の女の子も…みんな喜ばないもん」

アリアス「それを言ったら王子はどうなるの?あなたに感謝していたんじゃなくて?」

カロル「でも団長さんが怒ってたよ?」

アリアス「だから…状況の問題よ。
伝承を信じてる人はあなたが何をしても拒むけれど、そうじゃない人は普通に感謝するんじゃない?」

カロル「うーん…」

アリアス「神官が言ってたでしょう。あなたが協力してくれたら差別を無くす手助けをするって?
そうすればいつか癒しの力を持っていて良かったと思える日が来るんじゃない?」

カロル「…ホントに無くなるのかな」

アリアス「…そんな調子じゃ一生差別されたままよ?」

カロル「森に帰りたいな…」

アリアス「」ピクッ

カロル「ツラいよ…。お母さまと暮らしてた頃に戻ってやり直したい…」

アリアス「ちょっと!?今さら何言ってるの!?」

カロル「だって…」シュン

アリアス「(このガキ…!まさかやめるとか言い出す気!?)」
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名前:
sage:


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