前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
441: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:01:03 ID:zswvbVqyF6
カロル「はい!できたよ!」
町娘「ありが…きゃー!」
宣教師「え?」
町娘「え!え!絵…なの?これ?」
カロル「あぅ…」シュン
宣教師「あのー…彼が描いてるのを目の前でご覧になってましたよね?」
町娘「だってこれ…見てください!」バッ
宣教師「は、はぁ…?上手に描けていると思いますが?」
町娘「そ、そうですよ!こ、こんなに上手なんですよ!?びっくりしません!?」
宣教師「あ、そういうことでしたか」
カロル「……!」ギュゥゥッ
宣教師「カロルくん、嬉しい気持ちは分かりますが、そんなに強く抱えるとスケッチブックがクシャクシャになってしまいますよ?」
442: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:02:22 ID:/pUKsmKd4s
宣教師「喜んでもらえてよかったですね?」
カロル「うん!」ルンルン
ガチャッ
母「あら、宣教師様と遊んでたの?」
カロル「あ、お母さま!」
宣教師「おはようございます」
母「二人ともいないから…また何かあったかと思って心配したのよ?」
カロル「あはは…お母さまったら心配性なんだから?」
宣教師「教会を出たりしない限り、そうそう何も起こりませんよ?」
「やい、おまえ!」
母「……?」
カロル「……ボク?」
宣教師「…彼になにか用ですか?」
青年「見てたぞ?さっき町娘さんの絵を描いてたろ?」
カロル「は、はい」
青年「お、俺も描いてくれ…」
カロル「クスッ…いいですよ!」
青年「できれば…その…か、彼女と…一緒に並んでる感じで…」モジモジ
カロル「えっ」
宣教師「それって…あなたの隣に先ほどの彼女がいると仮定して描くということですか?」
青年「そ、そう…だ」モジモジ
母「…もしかしてあの子が好きなのかしら?」
宣教師「だとしたら愛情の種類が危険ですよ」
青年「どうだっていいだろ!?描けるのか、描けないのか!?」
カロル「い、いい…です、よ?」シドロモドロ
443: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:04:28 ID:zswvbVqyF6
青年「おー!お、俺の…俺の隣にあの子が…!?」ワナワナ
カロル「さっきのを思い出して描いてみたんだ?どう?」
青年「あ、ありがとう!ほんっとにありがとう!!」ガシッ ブンブン
カロル「う、うん!ど、どういたしまして?」ブンブン
青年「アァァ…笑顔だァァ…俺の女神がニッコリ…!」ウヘヘヘ
カロル「……!」ゾクッ
宣教師「危険ですね」
母「危険ねぇ」
青年「ひゃっほー!ヒューヒュー!ヒューイ!」ピューン
カロル「……」
宣教師「恋は盲目と言いますが…あそこまでいくとよくないですよね」
母「その内に想いが溢れて過ちを犯さないといいですけど…あら?」
カロル「……」ピキーン
宣教師「固まってますね…」
母「まぁ…この子も恋をしたら分かるでしょうね」
………………
444: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:05:44 ID:/pUKsmKd4s
宣教師「(とまぁそんなこんなで評判が広まって今に至る訳ですが)」
若者「ひょー!すげーな!俺そのものじゃん!?」マジマジ
カロル「気に入ってくれた?」ニコニコ
若者「おう!ありがとな!」
カロル「どういたしまして?」ニコニコ
宣教師「(彼も慣れてきたのか実物の三割増し程の絶妙なバランスで描いてますし)」
母「そろそろお散歩の時間じゃない?」
カロル「あっ!そうだった!」
「やっとあたしの番!」
宣教師「すみません。彼は用事があるので、ここまでとさせていただきます」
「えー!?」
ブーブー ブーブー
カロル「ごめんなさい!マルクが待ってるから行かなくちゃ!」
母「じゃあこれお弁当よ?張り切って作ったから残さず食べてちょうだいね?」つ【お弁当】
カロル「わーい!ありがとう!」パシッ
宣教師「はい!教会に用のない方は帰ってくださいね!解散です!」パッパッ
バラバラ バラバラ
445: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:07:04 ID:zswvbVqyF6
カロル「いってきまーす!」フリフリ
マルク「わんっ!」シッポフリフリ
母「いってらっしゃーい!暗くなる前に帰ってきてね!」フリフリ
宣教師「迷子にならないように知らない道は避けてくださいね!」フリフリ
カロル「はーい!」タタタッ
マルク「」タタタッ
母「……あっ」
宣教師「……え?」
アリアス「」サササッ
ダガ「クソッ…!まだ飯も食ってねぇのによ…!」ダッ
母「見張られるのも窮屈ですけど見張る方も大変なのねぇ…」
宣教師「まぁそれがあの二人のお仕事ですから」
446: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 21:41:33 ID:lG3iGIaQjY
〜〜〜夕方〜〜〜
―――教会―――
ガチャッ
カロル「ただいま!」ドロンコ
マルク「はっ!はっ!」シッポフリフリ
シスター「あ、おかえりなさ…い?」ビクッ
母「おかえりなさい、二人とも!楽しんできた?」ニコッ
カロル「楽しかったよー!お弁当も全部食べたんだ!」ドタドタ
マルク「あんっ!あんっ!」ベタベタ
シスター「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
カロル「」ビクッ
マルク「わう?」キョトン
母「し、シスターさん?」
バンッ
司祭「なんじゃ!何事じゃ!?」
ダダダッ
宣教師「ひ、悲鳴が聞こえてきましたが…!」
ガチャッ
アントリア「……」
447: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 21:43:02 ID:rN40KpPEII
シスター「非常識です!!」
司祭「まぁそう頭ごなしに怒鳴ってはいかん?小僧も悪気はなかろうに?」
シスター「だって…だって…掃除するの私なのに…お構い無しに汚しちゃうんですもん!」
カロル「ごめんなさい…」シュン
マルク「クゥン」オスワリ
母「い、今まで森に暮らしてましたから俗世に疎いんです…。本当に申し訳ありません」ペコペコ
シスター「だ、だからって泥まみれで屋内を歩き回られたら困ります!」
カロル「ボクたち掃除します…ね?マルク?」チラッ
マルク「わぅん」コクッ
宣教師「その前にお風呂に入りましょうか。服は私が洗っておきますので」
母「あたしも手伝うわ?お弁当箱も洗わなくちゃね?貸してちょうだい?」
カロル「はい…」つ【お弁当箱】
シスター「…いいです!掃除も洗い物も自分でやりますから!」プンスカ
カロル「……」ズキンッ
アントリア「気に病む必要はないよ。間違いは誰にでもある」ポンッ
カロル「…アントリアさん」
448: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 21:49:53 ID:lG3iGIaQjY
シスター「神官は甘やかしすぎですよ!この子たちも優しくされるから調子に乗ってるんじゃないですか!?」
アントリア「いいじゃないか?そこまで騒ぎ立てる事でもないだろう?」
シスター「ここに来た時も犬が床でおしっこして大変だったんですからね!
だいたいマナーがなってないんですよ!最初から!ずーっとお客様気分で!?」
カロル「あう……」マゴマゴ
マルク「くぅ……」
母「…すみません」
宣教師「……」
シスター「神官からも叱ってあげたらどうですか!?
こんなホビットに常識なんて言い聞かせてもムダでしょうけど!」
宣教師「い、いくらなんでもその言い方は…!」
アントリア「ロデル!」カッ
シスター「!?」ビクゥッ
アントリア「…今の君はとても不安定だ。後片付けは僕がしておくから自室で休んでいたまえ」
シスター「……!」ワナワナ
シスター「なんで…ですか」ボソッ
アントリア「……?」
シスター「この人たちは…神官が騙してるんじゃないかと疑ってるんですよ?」プルプル
アントリア「……」
シスター「贖罪行事の日にそう言ってたんです!はっきりと聞きました!」
宣教師「あ…」
母「……」プイッ
シスター「それなのに…神官からの好意は受け取って!
お金も取らずに衣食住を提供して観光案内までしてもらって…利用してるのはどっちなのよ!?」
司祭「うむ。まったく厚かましい連中……」ウンウン
アントリア「ノワール…」
司祭「ウォッホン!オホンッ!」
449: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 21:52:54 ID:rN40KpPEII
シスター「どうせホビットはホビット…ずる賢く人間を利用してせせら笑う意地汚い種族なんだわ!」
カロル「……!」
母「そんなつもりは…」アセアセ
アントリア「はぁ…いいかね?シスター?」
シスター「なんです?私が間違ってるって言うんですか!?」
アントリア「あぁ、君は大きく間違った考えを叫び、意図的に…悪意を持って彼らを貶めようとしている?」
シスター「なっ…なんで私が…!」
アントリア「彼らは客人なのだからもてなされて当然だ?」
シスター「で、でも…!いくらお客様だからって神聖な教会で非常識な振る舞いを許していいんですか!」
アントリア「…君はノワール司祭にも同じ言葉が言えるのかね?」
シスター「えっ」
司祭「うむ。わしも客人として招かれた身。謂わばこやつらと変わらぬ立場じゃの?
わしもお嬢さんの素晴らしいもてなしを当然に受け入れておった訳じゃが…頭を下げた方がよいか?」
シスター「…め、滅相もございません」アセアセ
アントリア「目上のノワールは立てるが…ホビットの二人や宣教師君には好き勝手に物を言えるのだね?」
シスター「……」
アントリア「相手を選んで客人を不平等に扱うようでは…聖職者失格だ」
シスター「」ピシィッ
アントリア「…荷物をまとめてきなさい」
シスター「な、なん…なんなんで…?」ヨロッ
アントリア「君にシスターの位を与えるのは時期尚早だった。修道女として一から修行したまえ?」
シスター「!?」ガーン
450: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 21:56:52 ID:rN40KpPEII
カロル「あ、アントリアさん…もうやめて?悪いのはボクだもの。泥んこで歩いたから…」
シスター「……!」キッ
カロル「へ?」
シスター「…あんたのせいよ!」
カロル「ご、ごめんなさい…」アセアセ
シスター「ごめんなさい…?謝って済むの?わたし…わたし…あなたのせいで破門されてるのよ!?」
カロル「アントリアさん…シスターさんを破門にしないで?」
アントリア「…取り消せと?」
母「あたしからもお願いします…。彼女の言い分もすべて間違ってる訳じゃありません。あたし達、確かに皆さんの優しさに甘えていた部分もあるわ…?」
アントリア「ふむ…」
司祭「取り消してやったらどうじゃ?たかだか床が汚れた程度のくだらん話を大きくすることもあるまい?」
アントリア「それもそうだね」
シスター「う、うふふふふ。ふふふのふ」クックッ
全員(シスター以外)「?」
シスター「ホビットが同情?たかだか床が汚れただけ?」
シスター「バカにしないでよっ!?」
アントリア「やれやれ…」
451: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 21:59:51 ID:rN40KpPEII
アントリア「我を忘れるとは君らしくもないな。何が不満なのだね?」
シスター「私、子供の頃から神官に憧れてて…いつか一緒に働けたら…そう思って頑張ってきたんです」
シスター「頑張って…頑張って…やっと憧れの人と同じ教会で働けるようになったのに…」
シスター「それなのに…この客人達がいらしてから神官は人が変わりました!」
アントリア「僕自身、変わったつもりはないのだがね?」
シスター「今まで上流階級の方々や貧しい方々、たくさんの客人がいましたけど…どんな相手にも同じ姿勢で向き合うのがあなたでした!」
シスター「それが…今はなんです?
ホビットばかり贔屓して…民にとって心の支えとなる大切な懺悔室を留守にしてまでホビットをもてなすんですか…?」
母「(そうよね…。あたし達が観光していた時、アントリアさんは教会を留守にしてたのよね…)」
シスター「ここを訪れる方々がいつでも気持ちよく入れるように隅々まで清潔に保つのが私の役目だと思って…一度だって手抜きしないで掃除に励んできたんです…!」
シスター「たかが床の汚れだなんて…簡単に口にしないでください!!」
司祭「す、すまん」
シスター「急になんなんですか…。神官や司祭様が教えを曲げてまでホビットを贔屓する理由って…なんなんですか?」
アントリア「…理由はないさ。贔屓にした覚えもない」
シスター「…うそ言わないでください!絶対に……」
アントリア「君には失望したよ。主観で造り上げた理想像を押し付けて喚き散らし、挙げ句には嘘つき呼ばわりか」
シスター「えっ」
アントリア「出ていってくれないか?」
シスター「……」ポケーッ
宣教師「(……)」ジーッ
宣教師「(私が司祭様に裏切られた時と…重なって見える…)」
452: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:03:16 ID:lG3iGIaQjY
シスター「わかりました」
シスター「」フラッフラッ
カロル「ま、待っ…」
母「シスターさん?どこへ行くの!?」
ガチャッ バタンッ
アントリア「……」
宣教師「…神官」
アントリア「すまなかったね?彼女の度重なる暴言は僕が代わりに謝罪しよう」ペコリ
宣教師「…私たちではなく彼女に謝ってください」
アントリア「……」
宣教師「あなたは彼女の信頼を裏切り、自分の目的に走った…聖職者失格です!」
アントリア「分からないな」
司祭「また始まりよったか!根拠もないクセに説教がましく……」
宣教師「根拠?そんなものは明白でしょう?」
司祭「な、なんじゃと…!」イラッ
宣教師「夢を叶えたいからカロルくんの力を借りたい…そうおっしゃったのはあなた方ですよ!」
司祭「ぐっ…」
宣教師「彼女に偽りの伝承を信じさせたままにしているのもあなた方です!
だからこそホビットへの偏見が抜けず、あのような事になったのですよ!」
司祭「や、やかましいっ!」
453: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:04:26 ID:rN40KpPEII
司祭「元はと言えば貴様らがシスターの前でアントリアを侮辱したのがきっかけじゃろうが!?」
宣教師「そ、それは…」
司祭「それまでは不満など一切見せずに尽くしておったぞ!違うか!?」
宣教師「…確かに私たちにも非はあります」
司祭「ふん!じゃろうが?まったく口ばかり達者で行動が釣り合わん…かわいくない奴じゃ!」
アントリア「…君は何をしているのだね?」
宣教師&司祭「えっ」クルッ
フキフキ キュッキュッ
宣教師「……!」
カロル「汚れた床をキレイにしたら…探しに行って、ちゃんと謝るの!」フキフキ
司祭「今さら遅いわい…。だいたいお前たちが陰口など叩かなければ……」ブツブツ
カロル「誰が悪いか話し合うより仲直りすることを考えようよ」
司祭「な、なにをっ!?」ムカッ
カロル「悪いって決めたらどうするの?またその人を仲間はずれにして責めるの?」
司祭「うっ…」
宣教師「……」
カロル「そうやって繰り返してると最後は誰も残らないよ。そんなの寂しいもの」
母「……」キュッキュッ
マルク「」タシッタシッ
アントリア「…我々も手伝おうか?」
司祭「そ、そうじゃな」
宣教師「……」
454: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:06:42 ID:lG3iGIaQjY
〜〜〜夜〜〜〜
―――城下町(広場)―――
シスター「(なんで…?なんで私なの?私はただ神官を侮辱したあの人達が許せなかっただけなのに……)」ヨロッヨロッ
シスター「おかしいじゃない…。私、何が間違ってたの…?」フラッフラッ
「おい!嬢ちゃんよ!」
シスター「ひゃっ!だ、だれ!?」
乞食「ここぁ俺たちの縄張りだ!余所に行け!」プーン
シスター「ひっ…」ゾワッ
シスター「(な、なにこの人…ひどい匂い?)」ゾゾゾ
乞食「出てかねぇと……」
シスター「こ、ここは公共の広場ですよね?あなたの場所じゃ……」
乞食「あぁ?」ピクッ
シスター「」ビクッ
ゾロゾロ ゾロゾロ
シスター「あ…あぁぁ…!」ビクビク
乞食「見たとこ嬢ちゃんは教団の人間だよなぁ?」
シスター「そ、そうです!私は信仰に殉ずる穢れなき神のしもべ!大勢で取り囲んで乱暴狼藉を働こうと言うなら…その身に天罰が下るわよ!」
乞食「いいよなぁ…。お前らはよぉ?」
シスター「え?」
455: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:08:53 ID:rN40KpPEII
乞食「善人ヅラして裏じゃたんまり稼いでるクセに…修行だなんだと俺たちを差し置いて施しを受けやがる」
乞食「…お前らなんかより俺たちの方がよっぽど施しが必要なのによぉ」
「そうだそうだ!」
「贅沢三昧しやがって!」
シスター「あ、あなたたちは何者なの…?」ブルブル
乞食「見りゃ分かるだろ?職も家も失って外で暮らしてるはぐれ者よ!」
シスター「そ、そんな…ここは城下よ!この国で一番豊かな地!仕事も家もあって当たり前じゃないですか!」
乞食「…ここ何年かで難民が増えてんのを知らねぇのか?」
シスター「……?」
乞食「今なぁ。バックヤードから進出した店舗に乗っ取られて表通りの店はジャンジャン潰れてんだよ!」
シスター「」ビクッ
乞食「昼間の賑わいなんざウソっぱちよ!ほとんど儲からずに店じまいを迫られてんだ!」
乞食「他にも納税やら維持費やら金がかかるってんで人手不足だろうがどんどんクビ切られる!」
乞食「余所に行こうとしてもよっぽどの経歴がなきゃどこも雇っちゃくれねぇ!」
乞食「食ってけねぇとなりゃ女房子供は見限って家を出てく!その家も金がなきゃ土地ごと国に没収される!」
乞食「難民が増える訳だぜ!とーぜんお国はなんも手助けなんざしねぇ!」
乞食「…俺の店も潰れた。稼ぎを失って土地ごとお国に没収されて…俺の店があった場所は今じゃバックヤードから進出した賭場に変わってやがる」
シスター「それでしたら私たちに…」
乞食「教団にだって相談したさ。だがもらったのは飯の種にもならねぇありがたい説教だ!」
シスター「……!」
456: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:11:07 ID:lG3iGIaQjY
乞食「嫌いなんだよ…。俺たち以外の人種が!ぬくぬくと安定した生活を送る奴らが!」
シスター「お、同じ人間同士で憎み合ってはいけません!」
乞食「恨むならホビットをってか?」
シスター「え…」
乞食「こうなって初めて分かったぜ…。俺たちはてめぇら教団に騙されてたんだ!」
乞食「ホビットが癒しの力を盗んだだの…ホビットは人間を騙すだの…ガキの頃から叩き込まれて全然気付かなかった!」
乞食「今まさに俺たちを苦しめてるのはホビットじゃねぇ…。善良な庶民をバカにして踏みにじってニタニタ笑いやがるお前らだ!!」
シスター「違い…ます」ブルブル
乞食「おう、みんな!構うこたぁねぇ!この嬢ちゃんから金目のモンを奪ってやれ!」
ジリ…ジリ… ジリ…ジリ…
シスター「い、いやっ…こないでぇ…」ウルウル
乞食「これは罰だぜ…。たぁぷりと反省させてやるからなぁ!やっちまえ!!」
ドドドドドドドドドッ
シスター「たすっ…」
457: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:13:56 ID:rN40KpPEII
―――1時間後―――
シスター「」ビクンッビクンッ
タタタッ
シスター「(だれか…くる。まだ…なにかするの…!?)」ピクッピクッ
???「シスター!」ガバッ
シスター「(こ…この声は…?)」プルプル
アントリア「僕だ!分かるかね!?」ユサユサ
司祭「女人の身ぐるみを剥ぐとは卑劣な…!しかも全身に浮かぶ痛々しい痣から見て複数人で暴行を働いたのは間違いないわい!」
宣教師「怪我人を揺らしてはなりません!一度、教会に戻って手当てを…!」
カロル「だいじょうぶ!ボクが…!」パシッ
シスター「」フワァッ
シスター「」ハッ
アントリア「よかった!気が付いたのだね?」
シスター「え……」
司祭「すぐに見つかってよかったわい!」
母「マルクが匂いを辿ってくれたおかげよ?」ナデリ
マルク「わふーん!」エッヘン
宣教師「それに…カロルくんが私達の言い合いを咎めていなければ…きっと間に合いませんでした」
シスター「え?え?」
カロル「さっきは床を汚しちゃってごめんなさい」ペコッ
アントリア「僕も言い過ぎてしまったね…」ペコッ
司祭「双方の立場に立って仲裁できず申し訳ない」ペコッ
母「泥んこの坊やを注意できなくてすみませんでした」ペコッ
宣教師「神官への侮辱、申し訳ございません」ペコッ
マルク「わんっ!わわんっ!あんっ!クゥン…」ペコッ
シスター「…?」ポカーン
458: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:16:25 ID:rN40KpPEII
アントリア「さぁ帰ろうか」
シスター「は、はい…」
「待ちな!」
シスター「」ビクッ
乞食「お前ら嬢ちゃんの仲間だな?」
アントリア「…だったらなんだと言うのだね?」
乞食「生きて帰さねぇよ?憲兵に走られたら困るしな」
ゾロゾロ ゾロゾロ
司祭「貴様らか…!女人相手に乱暴を働いた愚か者は…!」
カロル「お母さまと宣教師さまは下がってて…!絶対にボクが守るから!」ザッ
母「だ、ダメよ!坊やは下がってなさい!」ガシッ
宣教師「逃げましょう!これだけの数です!とても太刀打ちできませんよ!」
乞食「ケケケ!逃がすかよぉ?お前ら全員の身ぐるみ剥がしゃ、さすがに金になんだろ?」
ドカッ バキッ ドスンッ
「ぎゃはっ!」
「ぐえっ!」
「おうっ!?」
「あっがぁっ!」
乞食「は…?」クルッ
ダガ「とうとうやってきたぜぇ…!俺様の見せ場がよぉ…!?」ムッキムキィ
アリアス「さ、何人でもお好きにどうぞ?相手になってあげる?」クイックイッ
ザワザワ ザワザワ
乞食「な、なんだ、あいつら?」
司祭「ほっほっほ!ようやく懐刀の本領発揮といったところか。お前さんも年貢の納め時じゃな?」
乞食「くっ!るせぇっ!納める年貢がねぇから乞食やってんだ!?」
459: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:19:41 ID:rN40KpPEII
ギャァァァァア グアァァァァア
乞食「ちくしょっ!ちくしょう!」
司祭「今さらジタバタするでない?神に仕える者として殺しはせんよ?」
乞食「黙れっ!お前らが悪いんだ!裕福なお前らが…俺たち貧乏人を産み出してんだ!」
司祭「誰が悪いか話し合う前に解決策を模索せい?」
宣教師「(カロルくんの言葉をそのまま使ってる…)」
乞食「くそっ!」ダッ
ドンッ
乞食「ぶっ」ドサッ
ダガ「いってぇな、コラ…?」
アリアス「最後の一人、どっちがやる?」
ダガ「ふ…わりぃが俺がもらうぜ」ズイッ
乞食「……!」ガクガク
司祭「安心せい。目が覚めれば憲兵団の留置所じゃ。念願の飯にありつけるぞ?」
460: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:21:55 ID:lG3iGIaQjY
ダガ「ふ……」コキッコキッ
アリアス「うふふ……」スッ
乞食「あぁぁ……」ガタガタ
カロル「待って!」
ダガ「あ?」
宣教師「カロルくん!?」
母「ぼ、坊や!危ないわ!?」
カロル「乱暴しちゃダメ!もういいでしょ!?」バッ
司祭「小僧!そやつはシスターを集団で暴行したんじゃぞ!報いを受けて当然じゃろうが!」
シスター「」ブルッ
アントリア「…僕の上着で悪いが着ておきなさい」ファサッ
シスター「…!」ウルッ
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