前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
433: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/11(日) 22:59:14 ID:DHWdN/RtSU
町長「大変長らくお待たせしました!ただいま集計を終えましたので発表に移りたいと思います!」
ワァーワァー! ワァーワァー!
町長「今年の優勝者は……」
ドキドキ ドキドキ
カロル「誰なのかな!?」ワクワク
母「坊やかもしれないわよ?」
宣教師「(それはないと思いますが…)」
マルク「はっ!はっ!」シッポフリフリ
カロル「マルクなら優勝できるかも!」
母「そうね。篭いっぱいに入ってるもの!」
宣教師「私達も地面を掃いて回りましたから可能性はありますよ!」
町長「…………」
町長「ダガさん!アリアスさん!同時優勝おめでとうございます!」
キャァーキャァー!
カロル「へ?」キョトン
母「」ズルッ
宣教師「」バタッ
マルク「ぐるるるぅ…!」フシューフシュー
434: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/11(日) 23:00:56 ID:DHWdN/RtSU
町長「おめでとうございます!景品の金の箒を差し上げます!」
アリアス「…いる?」
ダガ「…いらねぇよ」
町長「しかしこれだけのゴミをよく集められましたね?篭3つ分なんて普通じゃ考えられませんよ!」
アリアス「ま、まぁ…」
ダガ「(司祭様にお叱りくらって1週間前から町のゴミ拾いさせられてたなんて言えねぇよ…)」
アリアス「(集めたゴミを回収する日って聞いたから…癒しの力を見張るついでに渡してみたら…)」
町長「ともかく!今年の優勝者はアリアスさん!ダガさんのお二人に決まりました!
参加してくださった町の皆さん、外から訪れた方々もありがとうございました!」
パチパチ パチパチ
カロル「おめでとー!」パチパチ
母「そういえば…あの二人、掃除させられてたんでしたっけ?」
宣教師「…だから不自然なゴミが多かったんですね。
町がキレイ過ぎて危機感を持った親切な人達がゴミを捨てて回ったんでしょう」
カロル「楽しかったね!」
マルク「あんっ!」
435: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/11(日) 23:03:35 ID:DHWdN/RtSU
〜〜〜夜〜〜〜
―――城下町(教会)―――
司祭「教団の人間が優勝するとは何事じゃあっ!?」ガミガミ
アリアス「も、申し訳ありません…」
ダガ「くっ…」
司祭「ああいう時には教団以外の人間に花を持たせねば八百長と疑われかねんじゃろうが!?」
アリアス「おっしゃる通り…返す言葉もありません」
ダガ「(…町の掃除して反省しろって言われたからやってたんじゃねぇか…!)」ググッ
カロル「…なんで司祭さま怒ってるの?」ヒソヒソ
宣教師「大人の事情です」
母「坊やはまだ知らなくていいのよ?」
カロル「…マルク。分かる?」
マルク「」ブンブン
カロル「ボクも…。大人って難しいね?」
マルク「」ウンウン
436: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 22:54:28 ID:zswvbVqyF6
〜〜〜2日後〜〜〜
―――教会(懺悔室)―――
アントリア「これは…?」ピラッ
町娘「ウフフ!どうです?キレイに描けてません!?」
アントリア「…驚いたな。まるで紙の中に君がそのまま入り込んでいるようだ…?」
町娘「びっくりするでしょー?すごいでしょ?」
アントリア「あぁ、今にも動き出すんじゃないかと思うよ。どこの画家に描かせたのだね?」
町娘「画家じゃないですよー!表にいる修道子の子が描いてくれたんですー?」
アントリア「修道子…?」
町娘「あの子すごいですねー?どこの子なんですか?」
アントリア「……ふむ」
町娘「神官?」
アントリア「いや、なんでもないよ…。告白したい旨は?」
町娘「告白?」
アントリア「ここは懺悔室なのだがね?」
町娘「えぇ…と。忘れちゃいましたーなんて?」テヘッ
アントリア「ふむ、悩みが晴れたのか。それはよかった?」
町娘「迷惑…でした?」
アントリア「いや、悩みばかり聞いていると疲れるものだよ。とても微笑ましい?」ニコッ
町娘「ウフフ!やっぱり神官って優しい!」ニコニコ
437: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 22:55:35 ID:zswvbVqyF6
―――城下町(教会の前)―――
ワイワイガヤガヤ
「次あたしね!」
「僕が先だよ?」
「うんにゃ!わっちどすえ?」
「おいどんでごわす!」
「あたしゃっさ!」
ギュウギュウ ギュウギュウ
宣教師「はい、押さないでくださいね!順番ですよ!?」
若者「かっこよく頼むぜ!」キリッ
カロル「はーい!」キュッキュッ
母「お絵描きしてただけなのに…いつの間にか行列ができちゃったわねぇ?」
438: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 22:56:33 ID:/pUKsmKd4s
〜〜〜数時間前〜〜〜
カロル「」カキカキ
ガチャッ
宣教師「おや、外にいたんですか?」
カロル「あ、宣教師さま!おはようございます!」
宣教師「おはようございます」ニコッ
カロル「いい天気だね!お日さまが早起きしてくれたからポカポカして気持ちいいよ?」
宣教師「そうですね。雲も疎らでちょうどよい陽射しです」ニコニコ
カロル「後でマルクとお散歩するんだ!」カキカキ
宣教師「ふふ。きっと飛び上がって喜びますよ?今までお留守番ばかりで拗ねていましたからね?」
カロル「一緒に行きたかったんだけど建物の中に入れちゃダメって言われたから…」
宣教師「今日はどんなお散歩を考えているんですか?」
カロル「この前、王子さまと遊んだ公園に行って!ゴミ拾いの時にマルクが拾ってきたおもちゃでうーんと遊ぶの!」
宣教師「(あのゴミ、もらって帰ったんですね…)」
カロル「あとはお母さまがお弁当作ってくれるから噴水広場でお昼ごはん食べて…町を見て歩きながら帰ろうかなって?」
宣教師「(お、お母様のお手製弁当…マルクくんには申し訳ありませんが、ご冥福をお祈りします)」チーン
カロル「…どうかな?宣教師さまは喜んでくれると思う?」テレッ
宣教師「えぇ。とても楽しいお散歩になると思いますよ?」ニコニコ
439: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 22:58:43 ID:zswvbVqyF6
カロル「」キュッキュッ
宣教師「…それ、たしか」
カロル「アントリアさんが買ってくれた画材だよ?」カキカキ
宣教師「そういえばキミは絵が上手でしたね。外の風景を描いているのですか?」
カロル「うん…。まだ新しいペンに慣れないから練習しようと思って」カキカキ
宣教師「勉強熱心ですね?とても良いことですよ?」
カロル「……」ピタッ
宣教師「どうしました?」
カロル「…前にボクが描いた絵、神父さまが渡してくれたの覚えてる?」
宣教師「もちろん……」
宣教師「」ハッ
カロル「……貴族のおじさまがね?宣教師さまからもらったって言ってたんだ…?」
宣教師「あ、あれは…その……」
カロル「だからボク思ったんだ」
宣教師「う……」
カロル「もっと上手にならなくちゃって!」ギュッ
宣教師「えぇっ!?」ズルッ
カロル「…どうしたの?」キョトン
宣教師「え、いや…てっきり怒ってらっしゃるのかと…」
カロル「なんで怒るの?」
宣教師「だ、だって…せっかく頂いた絵を他人に渡してしまった訳ですし…」
カロル「しょうがないよ。ヘタッピだったんだもの」
宣教師「いえ…絵が嫌いだったのではなく…事情があって…」
カロル「次は気に入ってもらえるようにするね?練習してびっくりさせたいんだ!」
宣教師「…た、楽しみ…です」
宣教師「(うぅ…罪悪感が胸に染みます…。申し訳ございません…)」ガクッ
440: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:00:10 ID:zswvbVqyF6
町娘「お絵描き遊びですか?」
カロル「うん!」
宣教師「あ、教会にご用の方ですか?」
町娘「はい。神官に聞いてもらいたいことがあって」
宣教師「そうですか。どうぞお入りください」スッ
町娘「あ、いいんですよ。急ぎじゃないから?
それにしてもお絵描き遊びなんて懐かしい?
子供の頃はよく目に入ったものを描いたりしましたけど…」
宣教師「彼は絵が得意なんです。特に写生の腕前は画家顔負けですよ?」
町娘「そうなの?それなら一枚描いてもらいたいわ!」
カロル「いいよ!」
441: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:01:03 ID:zswvbVqyF6
カロル「はい!できたよ!」
町娘「ありが…きゃー!」
宣教師「え?」
町娘「え!え!絵…なの?これ?」
カロル「あぅ…」シュン
宣教師「あのー…彼が描いてるのを目の前でご覧になってましたよね?」
町娘「だってこれ…見てください!」バッ
宣教師「は、はぁ…?上手に描けていると思いますが?」
町娘「そ、そうですよ!こ、こんなに上手なんですよ!?びっくりしません!?」
宣教師「あ、そういうことでしたか」
カロル「……!」ギュゥゥッ
宣教師「カロルくん、嬉しい気持ちは分かりますが、そんなに強く抱えるとスケッチブックがクシャクシャになってしまいますよ?」
442: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:02:22 ID:/pUKsmKd4s
宣教師「喜んでもらえてよかったですね?」
カロル「うん!」ルンルン
ガチャッ
母「あら、宣教師様と遊んでたの?」
カロル「あ、お母さま!」
宣教師「おはようございます」
母「二人ともいないから…また何かあったかと思って心配したのよ?」
カロル「あはは…お母さまったら心配性なんだから?」
宣教師「教会を出たりしない限り、そうそう何も起こりませんよ?」
「やい、おまえ!」
母「……?」
カロル「……ボク?」
宣教師「…彼になにか用ですか?」
青年「見てたぞ?さっき町娘さんの絵を描いてたろ?」
カロル「は、はい」
青年「お、俺も描いてくれ…」
カロル「クスッ…いいですよ!」
青年「できれば…その…か、彼女と…一緒に並んでる感じで…」モジモジ
カロル「えっ」
宣教師「それって…あなたの隣に先ほどの彼女がいると仮定して描くということですか?」
青年「そ、そう…だ」モジモジ
母「…もしかしてあの子が好きなのかしら?」
宣教師「だとしたら愛情の種類が危険ですよ」
青年「どうだっていいだろ!?描けるのか、描けないのか!?」
カロル「い、いい…です、よ?」シドロモドロ
443: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:04:28 ID:zswvbVqyF6
青年「おー!お、俺の…俺の隣にあの子が…!?」ワナワナ
カロル「さっきのを思い出して描いてみたんだ?どう?」
青年「あ、ありがとう!ほんっとにありがとう!!」ガシッ ブンブン
カロル「う、うん!ど、どういたしまして?」ブンブン
青年「アァァ…笑顔だァァ…俺の女神がニッコリ…!」ウヘヘヘ
カロル「……!」ゾクッ
宣教師「危険ですね」
母「危険ねぇ」
青年「ひゃっほー!ヒューヒュー!ヒューイ!」ピューン
カロル「……」
宣教師「恋は盲目と言いますが…あそこまでいくとよくないですよね」
母「その内に想いが溢れて過ちを犯さないといいですけど…あら?」
カロル「……」ピキーン
宣教師「固まってますね…」
母「まぁ…この子も恋をしたら分かるでしょうね」
………………
444: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:05:44 ID:/pUKsmKd4s
宣教師「(とまぁそんなこんなで評判が広まって今に至る訳ですが)」
若者「ひょー!すげーな!俺そのものじゃん!?」マジマジ
カロル「気に入ってくれた?」ニコニコ
若者「おう!ありがとな!」
カロル「どういたしまして?」ニコニコ
宣教師「(彼も慣れてきたのか実物の三割増し程の絶妙なバランスで描いてますし)」
母「そろそろお散歩の時間じゃない?」
カロル「あっ!そうだった!」
「やっとあたしの番!」
宣教師「すみません。彼は用事があるので、ここまでとさせていただきます」
「えー!?」
ブーブー ブーブー
カロル「ごめんなさい!マルクが待ってるから行かなくちゃ!」
母「じゃあこれお弁当よ?張り切って作ったから残さず食べてちょうだいね?」つ【お弁当】
カロル「わーい!ありがとう!」パシッ
宣教師「はい!教会に用のない方は帰ってくださいね!解散です!」パッパッ
バラバラ バラバラ
445: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:07:04 ID:zswvbVqyF6
カロル「いってきまーす!」フリフリ
マルク「わんっ!」シッポフリフリ
母「いってらっしゃーい!暗くなる前に帰ってきてね!」フリフリ
宣教師「迷子にならないように知らない道は避けてくださいね!」フリフリ
カロル「はーい!」タタタッ
マルク「」タタタッ
母「……あっ」
宣教師「……え?」
アリアス「」サササッ
ダガ「クソッ…!まだ飯も食ってねぇのによ…!」ダッ
母「見張られるのも窮屈ですけど見張る方も大変なのねぇ…」
宣教師「まぁそれがあの二人のお仕事ですから」
446: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 21:41:33 ID:lG3iGIaQjY
〜〜〜夕方〜〜〜
―――教会―――
ガチャッ
カロル「ただいま!」ドロンコ
マルク「はっ!はっ!」シッポフリフリ
シスター「あ、おかえりなさ…い?」ビクッ
母「おかえりなさい、二人とも!楽しんできた?」ニコッ
カロル「楽しかったよー!お弁当も全部食べたんだ!」ドタドタ
マルク「あんっ!あんっ!」ベタベタ
シスター「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
カロル「」ビクッ
マルク「わう?」キョトン
母「し、シスターさん?」
バンッ
司祭「なんじゃ!何事じゃ!?」
ダダダッ
宣教師「ひ、悲鳴が聞こえてきましたが…!」
ガチャッ
アントリア「……」
447: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 21:43:02 ID:rN40KpPEII
シスター「非常識です!!」
司祭「まぁそう頭ごなしに怒鳴ってはいかん?小僧も悪気はなかろうに?」
シスター「だって…だって…掃除するの私なのに…お構い無しに汚しちゃうんですもん!」
カロル「ごめんなさい…」シュン
マルク「クゥン」オスワリ
母「い、今まで森に暮らしてましたから俗世に疎いんです…。本当に申し訳ありません」ペコペコ
シスター「だ、だからって泥まみれで屋内を歩き回られたら困ります!」
カロル「ボクたち掃除します…ね?マルク?」チラッ
マルク「わぅん」コクッ
宣教師「その前にお風呂に入りましょうか。服は私が洗っておきますので」
母「あたしも手伝うわ?お弁当箱も洗わなくちゃね?貸してちょうだい?」
カロル「はい…」つ【お弁当箱】
シスター「…いいです!掃除も洗い物も自分でやりますから!」プンスカ
カロル「……」ズキンッ
アントリア「気に病む必要はないよ。間違いは誰にでもある」ポンッ
カロル「…アントリアさん」
448: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 21:49:53 ID:lG3iGIaQjY
シスター「神官は甘やかしすぎですよ!この子たちも優しくされるから調子に乗ってるんじゃないですか!?」
アントリア「いいじゃないか?そこまで騒ぎ立てる事でもないだろう?」
シスター「ここに来た時も犬が床でおしっこして大変だったんですからね!
だいたいマナーがなってないんですよ!最初から!ずーっとお客様気分で!?」
カロル「あう……」マゴマゴ
マルク「くぅ……」
母「…すみません」
宣教師「……」
シスター「神官からも叱ってあげたらどうですか!?
こんなホビットに常識なんて言い聞かせてもムダでしょうけど!」
宣教師「い、いくらなんでもその言い方は…!」
アントリア「ロデル!」カッ
シスター「!?」ビクゥッ
アントリア「…今の君はとても不安定だ。後片付けは僕がしておくから自室で休んでいたまえ」
シスター「……!」ワナワナ
シスター「なんで…ですか」ボソッ
アントリア「……?」
シスター「この人たちは…神官が騙してるんじゃないかと疑ってるんですよ?」プルプル
アントリア「……」
シスター「贖罪行事の日にそう言ってたんです!はっきりと聞きました!」
宣教師「あ…」
母「……」プイッ
シスター「それなのに…神官からの好意は受け取って!
お金も取らずに衣食住を提供して観光案内までしてもらって…利用してるのはどっちなのよ!?」
司祭「うむ。まったく厚かましい連中……」ウンウン
アントリア「ノワール…」
司祭「ウォッホン!オホンッ!」
449: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 21:52:54 ID:rN40KpPEII
シスター「どうせホビットはホビット…ずる賢く人間を利用してせせら笑う意地汚い種族なんだわ!」
カロル「……!」
母「そんなつもりは…」アセアセ
アントリア「はぁ…いいかね?シスター?」
シスター「なんです?私が間違ってるって言うんですか!?」
アントリア「あぁ、君は大きく間違った考えを叫び、意図的に…悪意を持って彼らを貶めようとしている?」
シスター「なっ…なんで私が…!」
アントリア「彼らは客人なのだからもてなされて当然だ?」
シスター「で、でも…!いくらお客様だからって神聖な教会で非常識な振る舞いを許していいんですか!」
アントリア「…君はノワール司祭にも同じ言葉が言えるのかね?」
シスター「えっ」
司祭「うむ。わしも客人として招かれた身。謂わばこやつらと変わらぬ立場じゃの?
わしもお嬢さんの素晴らしいもてなしを当然に受け入れておった訳じゃが…頭を下げた方がよいか?」
シスター「…め、滅相もございません」アセアセ
アントリア「目上のノワールは立てるが…ホビットの二人や宣教師君には好き勝手に物を言えるのだね?」
シスター「……」
アントリア「相手を選んで客人を不平等に扱うようでは…聖職者失格だ」
シスター「」ピシィッ
アントリア「…荷物をまとめてきなさい」
シスター「な、なん…なんなんで…?」ヨロッ
アントリア「君にシスターの位を与えるのは時期尚早だった。修道女として一から修行したまえ?」
シスター「!?」ガーン
450: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 21:56:52 ID:rN40KpPEII
カロル「あ、アントリアさん…もうやめて?悪いのはボクだもの。泥んこで歩いたから…」
シスター「……!」キッ
カロル「へ?」
シスター「…あんたのせいよ!」
カロル「ご、ごめんなさい…」アセアセ
シスター「ごめんなさい…?謝って済むの?わたし…わたし…あなたのせいで破門されてるのよ!?」
カロル「アントリアさん…シスターさんを破門にしないで?」
アントリア「…取り消せと?」
母「あたしからもお願いします…。彼女の言い分もすべて間違ってる訳じゃありません。あたし達、確かに皆さんの優しさに甘えていた部分もあるわ…?」
アントリア「ふむ…」
司祭「取り消してやったらどうじゃ?たかだか床が汚れた程度のくだらん話を大きくすることもあるまい?」
アントリア「それもそうだね」
シスター「う、うふふふふ。ふふふのふ」クックッ
全員(シスター以外)「?」
シスター「ホビットが同情?たかだか床が汚れただけ?」
シスター「バカにしないでよっ!?」
アントリア「やれやれ…」
451: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 21:59:51 ID:rN40KpPEII
アントリア「我を忘れるとは君らしくもないな。何が不満なのだね?」
シスター「私、子供の頃から神官に憧れてて…いつか一緒に働けたら…そう思って頑張ってきたんです」
シスター「頑張って…頑張って…やっと憧れの人と同じ教会で働けるようになったのに…」
シスター「それなのに…この客人達がいらしてから神官は人が変わりました!」
アントリア「僕自身、変わったつもりはないのだがね?」
シスター「今まで上流階級の方々や貧しい方々、たくさんの客人がいましたけど…どんな相手にも同じ姿勢で向き合うのがあなたでした!」
シスター「それが…今はなんです?
ホビットばかり贔屓して…民にとって心の支えとなる大切な懺悔室を留守にしてまでホビットをもてなすんですか…?」
母「(そうよね…。あたし達が観光していた時、アントリアさんは教会を留守にしてたのよね…)」
シスター「ここを訪れる方々がいつでも気持ちよく入れるように隅々まで清潔に保つのが私の役目だと思って…一度だって手抜きしないで掃除に励んできたんです…!」
シスター「たかが床の汚れだなんて…簡単に口にしないでください!!」
司祭「す、すまん」
シスター「急になんなんですか…。神官や司祭様が教えを曲げてまでホビットを贔屓する理由って…なんなんですか?」
アントリア「…理由はないさ。贔屓にした覚えもない」
シスター「…うそ言わないでください!絶対に……」
アントリア「君には失望したよ。主観で造り上げた理想像を押し付けて喚き散らし、挙げ句には嘘つき呼ばわりか」
シスター「えっ」
アントリア「出ていってくれないか?」
シスター「……」ポケーッ
宣教師「(……)」ジーッ
宣教師「(私が司祭様に裏切られた時と…重なって見える…)」
452: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 22:03:16 ID:lG3iGIaQjY
シスター「わかりました」
シスター「」フラッフラッ
カロル「ま、待っ…」
母「シスターさん?どこへ行くの!?」
ガチャッ バタンッ
アントリア「……」
宣教師「…神官」
アントリア「すまなかったね?彼女の度重なる暴言は僕が代わりに謝罪しよう」ペコリ
宣教師「…私たちではなく彼女に謝ってください」
アントリア「……」
宣教師「あなたは彼女の信頼を裏切り、自分の目的に走った…聖職者失格です!」
アントリア「分からないな」
司祭「また始まりよったか!根拠もないクセに説教がましく……」
宣教師「根拠?そんなものは明白でしょう?」
司祭「な、なんじゃと…!」イラッ
宣教師「夢を叶えたいからカロルくんの力を借りたい…そうおっしゃったのはあなた方ですよ!」
司祭「ぐっ…」
宣教師「彼女に偽りの伝承を信じさせたままにしているのもあなた方です!
だからこそホビットへの偏見が抜けず、あのような事になったのですよ!」
司祭「や、やかましいっ!」
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