前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
301: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 21:34:11 ID:ZEkiw00z1I
子供1「わーい!」ブラーンブラーン
子供2「ひゃあっ!たっかーい!」ブラーンブラーン
カロル「へぇ…!ああやって遊ぶんだ!」キラキラ
母「ふふ。坊やも並んできなさい?順番こで貸してくれるから?」
カロル「いってきまーす!」タタタッ
アントリア「…では何か飲み物を買ってこようか」スッ
母「え?だ、大丈夫ですよ…?そんなお気遣いなく?」オロオロ
アントリア「……僕に孫でもいれば今頃は彼ぐらいの歳なのかもしれないね」
母「……?」キョトン
アントリア「…そういう風に考えた時期もある。
仮想的な現実の中で…こうして一緒に遊べたらと思った事も幾度となくあったのだよ?」
母「失礼ですけどご結婚なされてないんですか?」
アントリア「生まれが上流階級だった為に親の決めた許嫁がいたが…向こうの家がしくじって地位を失くしてしまったものでね?
縁も切れて、それからは浮わついた話に発展するような出来事もなかったよ」
母「…愛する女性とかは?」
アントリア「ははは…若い時分は社交場に顔を出してはそれなりに楽しんでいたが…愛するとなると難しい」
母「見かけによらず遊び人でしたのね?真面目な方かとばかり…」
アントリア「命に限りがある内は楽しんでおかないと損だと…頭の悪い生き方をしてたものさ」
母「あら?でしたらあたしも坊やもクルクルパーですよ?」クスッ
アントリア「君らは頭が悪い訳じゃない。素直で純粋なのだよ?」
母「言い方一つに聞こえますけど?」ニコニコ
アントリア「かなわないね…。なんにしても今が楽しくてしかたないのだ?
老いぼれに思い出をくれる礼に飲み物の代金くらいは出させてくれないか?」
母「…こちらの方が素敵な思い出をもらってますよ?」
302: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 21:36:34 ID:YIdUJJ0I4U
「お母さまー!アントリアさーん!」
母&アントリア「?」
カロル「見てみてー!たっかいよー!?」ビューン
母「すごーい!」パチパチ
カロル「あははははは!」グルンッ
母「ちょっ…なにしてるのー!危ないでしょー!?」アタフタ
アントリア「……」
アントリア「」スタスタ
子供1「スゲー!かっきー!」キャッキャッ
子供2「回るのどうやんの!?」キャッキャッ
カロル「たくさん漕いだらできたよ!」キャッキャッ
母「坊やー!」タタタッ
カロル「あ、お母さまー!こっちこっち!」フリフリ
母「こっちこっちじゃ…ないでしょー!?」ガァー
カロル「」ビクッ
母「あんな危ないの絶対ダメよ!!わかった!?」ガミガミ
カロル「は、はい…。ごめんなさい…」シュン
子供1「スゲーだっせー」
子供2「回るの…」
カロル「……」ショボーン
303: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 21:39:22 ID:YIdUJJ0I4U
子供1「神父のにーちゃんも一緒にあそぼうぜー!」
カロル「いいの!?」キラキラ
子供2「いいんだぜー!グリーンだぜー!」
母「お母さん、ベンチで休んでるわ?遠慮しないでいっぱい遊びなさい?」ニコニコ
カロル「はーい!」
子供1「チャンバラしようぜー!」スチャッ
子供2「しようぜー!」スチャッ
カロル「しよー!」エイエイオー
子供1「神父のにーちゃん!剣は?」
カロル「剣?」キョトン
子供2「これだよ!これこれ!」つ【クルクル巻いた紙】
カロル「……」ポカーン
子供1「チャンバラすんだから剣がないと切られちゃうぞ!」
カロル「切られちゃうの!?」ガーン
子供2「もしかしてチャンバラしらねー!?」
カロル「ちゃ、ちゃんちゃんこ…バラバラ?」アセアセ
子供1「じゃあ見てろよ!」
子供2「いくぞー!」
カロル「う、うん」ドキドキ
子供1「えいっ!やぁっ!とうっ!」ブンッ
子供2「うちとったりー!」パシンッ クシャッ
子供1「うわー!やられたー!」コケッ
子供2「かったー!」ピョンッ
子供1「こうやんだぞ!」スクッ
カロル「えっと…もう一回みせ……」タジタジ
304: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 21:41:44 ID:YIdUJJ0I4U
子供2「いざ!いざ!」スチャッ
子供1「あ、決闘だぞ!にーちゃんの番だ!これ使え!」つ【クルクル巻いた紙】
カロル「え?う、うん!」パシッ
子供2「やあっ!」ブンッ
カロル「わっ!」サッ
子供2「このオレの剣をかわすとはやるな、おぬし!腕前の達人か!」
カロル「う、腕前の達人…なのかな?」オロオロ
子供2「よけてばっかじゃ勝負になんないぞ!」ブンッ
カロル「」サッ
子供2「うぅ!なんだよ、よけてばっか!つまんねー!」プンスカ
カロル「ご、ごめんね…!ちゃんとやるから怒らないで?」アセアセ
子供1「」ガシッ
カロル「え?」グッ
子供1「いまだ!オレもろともこいつを切れー!」ガッ
子供2「友よ!おぬしをわすれないぞー!スキありー!」パシンッ
カロル「あうっ!」
子供2「わーい!かったー!」ピョンピョン
子供1「オレがおさえたからだぞー!」
カロル「…負け、ちゃった」クスッ
カロル「(よくわかんないけど楽しいや!)」ニコニコ
305: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 22:06:48 ID:XjQnO/2/qc
カロル「ねぇ!もう一回やろ?」
子供1「いいんだぜー!」
子供2「だぜー!」
母「ふふ」ニコニコ
アントリア「チャンバラごっこか…。兵士を間近で見てきたせいか、都の子供は剣への憧れが強いな」ストンッ
母「あ、おかえりなさい!」ペコリ
アントリア「麦茶でよかったかな?」スッ
母「お構い無く?ありがとうございます」パシッ
アントリア「彼には後で渡した方がよさそうだね」
母「何を買ってきたんですか?」
アントリア「僕は同じく麦茶だ。彼にはハニーミルク。ハニービーの蜜を混ぜたミルクで評判の飲み物なのだよ?」
母「まぁ?ハニービーの蜜!坊やの大好物ですわ?」
アントリア「ひとまず安心したよ。飲めなかったらどうしようかと思っていたところだ」
母「あの子に好き嫌いはありませんから大丈夫ですよ?」
アントリア「ふむ……」ゴクゴク
306: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 22:08:15 ID:uXoiEP5.4c
アントリア「それにしても打ち解けるのが早いな…。
小さい子供同士ということもあるのだろうが…」
母「前にも同じようなことがあって、その時もああやって仲良しになってたんですよ?」
アントリア「たしかに彼は好かれやすそうだね?」
母「人間もホビットも関係ないって証明してくれたの。
今は眼を隠して接しているけど、前に友達になってくれた人間の子供はあたし達の黄色い瞳を見ても受け入れてくれました」
アントリア「……」
母「アントリアさん達を疑う訳ではないけど、いつかそんな日が来たらってどこかで願ってたの…」
アントリア「そう思い始めた矢先にノワール達が余計なことをしてくれた訳か」
母「あ、いえ!そういう意味じゃ…!」アタフタ
アントリア「…僕らが夢を叶えられるのは君たちが歩み寄ってくれたからだ。
全てが終わったらホビットの住める場所を作れるよう、署名を集めて国に嘆願書を出すよ」
母「……本当に差別はなくなるんでしょうか?」
アントリア「答えはこの先にあるさ。自分の目で確かめるといい?」
母「そう……あら?」
アントリア「別の子供が来たね?高価な服を身につけているが、あれは確か……?」
307: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 22:10:34 ID:uXoiEP5.4c
???「庶民の遊びに付き合ってやってもいいぞ?」
子供1「あっかんべー!」
子供2「お前なんかえらそうだからヤダよーだ!」ベロベロバー
???「な、なんだと!庶民のクセに!」
カロル「えいっ!やあっ!」ブンッ
???「ん?あいつは…!」
子供1「あいつ?ぜんっぜん攻撃しねーから稽古してるんだ!」
???「ふーん。面白いな!あいつに勝ったらオレも混ぜろ!」
子供1「えー?どうする?」
子供2「うーん…」
???「いいから貸せ!」バッ
子供2「あ、オレの剣取るなよ!」プンスカ
???「また会ったな!」スチャッ
カロル「へ…?あっ!…王子さま!?」ビックリ
子供1&2「えっ」
ヒメ「光栄に思え!特別にオレが手ほどきしてやろう?」ニヤリ
308: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 22:14:13 ID:XjQnO/2/qc
子供1「あいつ王子なの!?スゲー!かっきー!」キャッキャッ
子供2「王子だー!」キャッキャッ
ヒメ「(身分が分かるとすぐに掌を返す…庶民も貴族も根は同じじゃないか)」
カロル「こんにちは?王子さま!」ニコッ
ヒメ「……お前に決闘を申し込む!嫌だとは言わせないぞ!」
カロル「いいよ!決闘しよ?」ニコニコ
ヒメ「…もっと色々ないのか?緊張感が出ないし…」
カロル「?」
ヒメ「まぁいい!いくぞ!」
カロル「うん!」
ヒメ「くらえ!必殺!ハヤブサ切り!」ビュンッ
カロル「ひゃっ!」ペチッ
ヒメ「……は?」キョトン
カロル「あはは!負けちゃった?」スリスリ
ヒメ「…お前、弱すぎ。ちゃんとした剣だったら死んでるぞ?」
カロル「えへへ。王子さまの攻撃が速くて見えないんだもん」ニコニコ
ヒメ「そ、そうか?」テレッ
子供1「すごかった!シュバーッて!」シュバーッ
ヒメ「ん?うん…まぁな!」エッヘン
子供2「オレもハヤブサ切りしたい!教えて!」
ヒメ「いいぞ!この技を会得するには20年、修行しなきゃいけないけどな!」ドヤッ
子供1「スゲー!20年スゲー!」
子供2「オレも20年しゅぎょーする!」
ヒメ「よし!稽古するぞ!」
カロル「20年…王子さまって何歳なの?」
ヒメ「…う、うるさい!オレはいいの!天才だから!」カァァ
309: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/9(日) 21:58:48 ID:iluM/Oud42
アントリア「驚いたな…」
母「え?」
アントリア「いや、珍しい子がいるものでね?」
母「坊やとチャンバラしてた子ですか?」
アントリア「あぁ。まさかこんな場所にいる筈はないんだが…」
母「お知り合い?」
アントリア「見かけた事がある程度だ。普段はお近付きにもなれない相手だよ」
母「…あの子が?」
ヒメ「持ち方でたらめすぎ。あともっと腰引け。あぁ引きすぎだよ!」グイッグイッ
子供1「あ、うん…ごめん」オズオズ
子供2「王子めんどくさい…」ボソッ
カロル「…こうかな?」クイッ
ヒメ「ちがうちがう!そうじゃないって!こうだよ!こう!」ガシッ
カロル「あはは…む、難しいや?」
子供1「あ、オレ帰んなきゃ!昼御飯できちゃう!」
子供2「お、オレも!母ちゃんに怒られる!」
ヒメ「もう帰るのか?庶民のクセに忙しいんだな?」
子供1「そ…その剣やるよ!」ダッ
子供2「じゃあな!」ダッ
ヒメ「いらないよ。本物持ってるし、なんなら余ってるし、逆に分けてやりたいよ」
カロル「またねー!」フリフリ
タタタッ……
ヒメ「…なんか逃げるように帰っていったぞ」
カロル「そう?」
ヒメ「(態度が不自然に見えたけど庶民にはあれが当たり前なのか?)」
310: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/9(日) 22:02:48 ID:iluM/Oud42
ヒメ「一緒だった二人、今日はいないのか?」
カロル「王子さま!これやってみよ?」ビッ
ヒメ「おまえ受け身かと思ったら意外と他人の話聞かないヤツなんだな」
カロル「あ、ごめんなさい!なんの話?」クルッ
ヒメ「いい、いい。それより…あれ、なんだ?」シゲシゲ
カロル「わかんない!」ニコッ
ヒメ「…わかんない?」キョトン
カロル「遊んでみようよ!」ダッ
ヒメ「遊ぶって…ちょっと待て!どうやって遊んだらいいんだ?」ダッ
カロル「階段があるから上がるんじゃないかな?」トットッ
ヒメ「う……」タジタジ
カロル「王子さまも上がっておいでよ!」
ヒメ「い、いい!オレは下で見てるから!」アタフタ
カロル「……?」
ヒメ「まずはおまえが試せ!」
カロル「王子さまも……」
ヒメ「」ジロッ
カロル「…もしかして高い所が苦手なの?」
ヒメ「」ビクッ
カロル「他のにしよっか?」ニコッ
ヒメ「ば、バッカじゃん!平気だし!ぜんぜん怖くないし!」トットッ
カロル「む、無理して上がってこなくていいよ?」オロオロ
ヒメ「してないし!王族に無理な事なんてないし!」ガタガタ
カロル「(震えてる…)」
311: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/9(日) 22:04:31 ID:iluM/Oud42
ヒメ「ほら、上がったぞ!どうする!?」ドンッ
カロル「たぶんここから降りるんだと思う。ボクから降りてみるね?」
ヒメ「は、はやく!はやくしろ!」ブルブル
カロル「ふふ!いっくよー!」シュー
カロル「わー!滑ったよ!見た?見た!?」キャッキャッ
ヒメ「…滑ったくらいではしゃぐな!」
カロル「王子さまも滑ってみなよ!結構速くておもしろいよ?」
ヒメ「(上るより降りる方が怖い…)」
カロル「ボクも一緒にやるから?」トットッ
ヒメ「え?」
カロル「二人なら怖くないでしょ?ね?」ウインク
ヒメ「うっ…ば、バカにするなよ?怖い訳じゃないぞ?
オレは王子だからな!高い所からおまえたち庶民を見下ろすのが落ち着くんだ!」ブルブル
カロル「ふふ…そうなんだ?」ガシッ
ヒメ「な、なんだ?庶民のクセにオレの肩を押さえるなんて…無礼だぞ!」バッ
カロル「はいはい!いっくよー!」グッグッ
ヒメ「おっ…押すな…!」アワアワ
シューン!
ヒメ「うわあぁぁぁ……あ?」ストンッ
カロル「ね?そんなに怖くなかったでしょ?」ニコニコ
ヒメ「お、おまえなぁ…!」イラッ
312: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/9(日) 22:06:33 ID:IkYx9owoHI
カロル「全部はじめてで楽しいね!」
ヒメ「ふん…そうかー?どれも子供だましでつまらなかったけど?」ムスッ
カロル「そういえば王子さま、お城にいなくていいの?また憲兵さん達が心配してるんじゃない…?」
ヒメ「…平気だよ。誰も興味ないから」
カロル「そんなことないよ?この前だって……」
ヒメ「おまえは何も知らないだろ?余計なお世話だ?」
カロル「う、うん…」
ヒメ「まぁ母上は激怒してるかな。立て続けに無断で外出してるし」
カロル「え?た、た、大変!ご飯抜きにされちゃうよ?」
ヒメ「ご飯…?あぁ食事のことか?」
カロル「…そうだよ?お母さまは怒ったらご飯食べさせてくれないんだ?」
ヒメ「…よほど貧しい家に生まれたんだな。可哀想に」ウルッ
カロル「ど、どうして泣きそうなの?」ビクッ
ヒメ「いや…そうだな。庶民には庶民の苦労がある。無神経な発言が多くてすまなかったよ」ペコリ
カロル「あ、あれ?泣いてないって言わないの?」オロオロ
ヒメ「正直泣きそうだよ。食事も満足に与えられないなんて…噂には聞いてたけどさ」
カロル「や、やめてよ!お母さまが悪いみたい!そうじゃないもん!」アセアセ
ヒメ「…事情があるのは分かるさ。教団は寄付と施しで賄うんだろ?
さすがにおまえの歳でそんな生活を強いられてるとは思わなかったよ…」
カロル「えっと…キミってボクより年下だよね?」アタフタ
ヒメ「城に来るか?僕が頼めば下仕えくらいには……」
カロル「へ、へいき!だいじょうぶだから!」ブンブンブンブン
ヒメ「そうか…。もし本当に困った時は城を訪ねていいぞ?
僕の知り合いだと言えば悪いようにはしないだろうから」
カロル「あ、ありがとう?でも今は大丈夫だよ?」ヒクヒク
大男「んじゃオレサマを雇ってくれよぅ?」ズシンッ
カロル「へ?……わぁっ!」ビクッ
313: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:36:39 ID:3iR/3Imybo
大男「なぁ?いいだろぅ?そんなガキより腕っぷしは立つぜぃ?」
ヒメ「なんだ、貴様は…誰に許しを得て口を訊いている?」
カロル「(おっきい……)」マジマジ
大男「へへへ!パレードで見た王子様そのものだ?高飛車じゃねぇの?」
ヒメ「…僕の顔を覚えてるのか。庶民はいつも憎々しげに父上を睨み付けている印象しかないが」
大男「オレサマはお金が大好きな貧乏人だからよぅ?あんたみてぇな金ヅルの顔を眺めんのが大好きなんだぁ?」
ヒメ「…物乞いに恵むようなモノは持ち合わせてないぞ」
大男「いやいやぁ?あんたの身体一つで十分だよぅ?」
ヒメ「僕を誘拐して強請る気か?命知らずな男だ?」
大男「命知らずぅ?護衛もいねぇ無防備なガキ一匹拐うのなんてなぁお茶のこさいさいだぜぃ?」
ヒメ「こんな人目に付く場所でか?」
大男「野次馬は多い方がいいぜぃ?オレぁ目立ちたがりだからよぅ?」ニタァ
ヒメ「」トンッ
カロル「え?」
ヒメ「なにボーッとしてるんだ?逃げろ?」ボソボソ
カロル「で、でも…」
ヒメ「…おまえが逃げないと僕も動けないだろ?余計な心配はいいから逃げろ?」
カロル「わ、わかっ……」コクリ
大男「うぉっと?」ムンズッ
カロル「!」フワッ
ヒメ「な、なにを…!」フワッ
大男「なんの相談?オレサマも混ぜてくれよぅ?」ニタニタ
ヒメ「こ、この…無礼者!」ジタバタ
314: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:40:07 ID:3iR/3Imybo
大男「王子様よぅ?世の中甘く見ちゃダメダメ?あんたみてぇなお偉いさんが一人で出歩くとロクなことねぇぜぃ?」ブランブラン
ヒメ「黙れ!」ジタバタ
カロル「は、離して…ください!」ジタバタ
大男「こういう目にあっちゃうから良いとこのボンボンはみーんな護衛を引き連れて歩くんだろぅ?」
ヒメ「目的は僕だろ?無関係の人間を巻き込むな!」
大男「へへへ!あんたよぅ?立場分かってねぇんじゃねーのぅ?」
ヒメ「くっ!」ギリッ
母「何をしてるの!」タタタッ
大男「あぁん?」
ヒメ「……!?」
カロル「お母さま!来ちゃダメ!」
母「二人から手を離しなさい!」
大男「誰だ、おめぇ?」
母「あたしはその子の母親よ!」
ヒメ「……!」パチクリ
大男「へひゃひゃひゃひゃ!おかあちゃ〜ん!?」ゲラゲラ
母「な、何がおかしいのよ!」
アントリア「やれやれ…とんだ場面に遭遇したね」スタスタ
大男「あぁ?おかあちゃんの次は旦那かぁ?」
アントリア「今、思いとどまってくれれば憲兵団に掛け合う事はしないよ?」
大男「大きなお世話だよぅ?教団さんも儲からねぇから公園でガキに寄付金たかるようになったのかぁ?」
アントリア「忠告しておくが金銭目当てならやめた方がいい。見返り以上に手痛いしっぺ返しを喰うよ?」
大男「へへへ!オレサマに怖いもんなんかねぇよぅ!老いぼれと女はすっこんでろぃ!?」
カロル「ぼ、ボクもすっこんでいいですか?」プラーン
大男「おめぇ…ナメてんの?」ギョロッ
カロル「ごめんなさい…」モジモジ
315: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:41:55 ID:3iR/3Imybo
ヒメ「はぁ…分かった。言う通りにする。だからそいつは解放してやれ?」
大男「いいともよぅ?……なーんて言うか、ぶわぁ〜か!!」
ヒメ「……!?」
大男「へへへ!人質は多くたって困らねぇ?」ニタニタ
母「冗談じゃないわ!子供を人質にするなんて情けないと思わないの!?」
大男「思わないのぅ〜!ぎゃははは!」ゲラゲラ
ヒメ「くそっ!離せ!」ジタバタ
大男「いい子だからおとなしくしようねぃ?じゃあな、老いぼれにおかあちゃん!」ズシンズシン
カロル「お母さまー!」ジタバタ
母「坊や!」ダッ
アントリア「待ちたまえ!」ガシッ
母「止めないでください!坊やが…連れてかれちゃう!」
アントリア「分かってる!だが追ったところで我々ではどうにもならない!」
母「あぁ…見えなくなって…!」
アントリア「…問題ないさ。あの巨体で子供を二人抱えて闊歩してるんだ。
嫌でも目立つし通報も受けるだろう。後で目撃証言を集めれば居場所はすぐに割り出せる」
母「そんな悠長に構えてられないですよ!その間に何をされるか分からないじゃない!?」
アントリア「城下に住む人間の8割は教団の純粋な信者だ。バックヤードに逃げたとしても僕の人脈が及ぶ。絶対に助け出す事はできるのだよ?
だが下手に追って大男を刺激してしまい、奴が二人に危害を加える暴挙に出たらどうする?」
母「……!それなら早く!手を打ってください!?」
アントリア「もちろんだ。ノワールと合流して信者の協力を仰ぐ。君は教会に戻って付き人の二人に知らせてくれないか?」
母「分かりました…!頼みましたよ!」ダッ
アントリア「承ったよ…」
アントリア「…厄介な事になったな。なんとしても王国側の人間より先に捕らえなければ…」
アントリア「(それにしてもなぜ王子が……まぁいい。考えるより行動だ)」スタスタ
316: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:46:05 ID:3iR/3Imybo
―――バックヤード(裏通りの酒場)――――
大男「おらぁ!」ポイッ
ヒメ「っ…!」ドサッ
小男「さっさとしやがれ、このぉ!」ドカッ
カロル「いっ…!」ドンッ
大男「へへへ!酒蔵でおとなしくしてろぃ?樽なら好きなだけ空けていいからよぅ?」ニタニタ
小男「ひひひ!兄ぃ!せっかくの酒をガキにはもったいねぇぜ!」
ヒメ「こんな事をしてタダで済むと思うなよ…!」キッ
カロル「うぅ…いたた…」サスサス
大男「たーんまり銭を頂いたら無事に解放してやるよぅ?へへへ!」バタンッ
ヒメ「くそっ!最悪だ!」
カロル「…お酒くさいね」ツーン
ヒメ「狭いし暗いし埃臭いし…まるで馬屋だな!」ドカッ
カロル「…」ペタペタ
ヒメ「なにしてるんだ?」
カロル「壁を触ってるの」ペタペタ
ヒメ「見れば分かるよ…。なんで壁に手を這わせてるのか聞いてるんだ?」
カロル「ボクね、何回か閉じ込められたことがあって…ほら、こうやって壁を触ると薄い部分があるでしょ?叩いてみるとよく分かるよ。王子さまもやってみる?」
ヒメ「いいけど…そんなの調べてどうするんだ?」スッ
カロル「ん…とね。あ、ここかな?」コンッ
ヒメ「?」
カロル「穴を空けたいんだけど何か持ってないかな?」
ヒメ「まさか…壁を壊して出るのか?」
カロル「うん。ここは壁も床も木で出来てるからなんとかなりそうじゃない?」
ヒメ「バカ…!そんなの見つかるに決まってるだろ!」
カロル「音を立てないように少しずつ広げて誰か来そうになったら樽で隠そうよ?一回捕まっちゃうとジッとしてたらなかなか出してもらえないもの?」ペタペタ
317: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:47:53 ID:3iR/3Imybo
ヒメ「捕まったって…さっきからなんの話だ?おまえ、犯罪者なのか?」
カロル「あはは。違うよ?いろいろ誤解されちゃって……」
ヒメ「誤解って…どうしたらおまえみたいなチビが閉じ込められたりするんだよ?」
カロル「…今はいいじゃない。それより何か持ってない?」
ヒメ「……護身用に忍ばせておいた短剣ならあるぞ。あいつらが雑な性格で助かったよ」つ【短剣】
カロル「わぁ…!カッコいい?」キラキラ
ヒメ「そう?無駄に宝飾が散りばめられてて悪趣味じゃないか?」
カロル「でもおとぎ話に出てきそう!こういうピカピカした剣!」
ヒメ「ふぅん…おとぎ話、ねぇ。読まないから知らないけどさ」
カロル「ちょっと借りるね?」スッ
ヒメ「はい」パッ
318: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:50:59 ID:3iR/3Imybo
カロル「ん…!」グリグリ
ヒメ「……」
カロル「んぅ…ぅん!」グググッ
ヒメ「…なにしてんの?」
カロル「い、言ったじゃない?壁に穴を空けるの……ん!」グッグッ
ヒメ「あのなぁ…!壁にグリグリ押し付けたってムリだよ!貸せ!」バッ
カロル「あっ…」パッ
ヒメ「チャンバラの時から感じてたけど、おまえって剣術の素養が一切ないだろ?」
カロル「う、うん。実は刃物を持ったのも初めて…?」テレッ
ヒメ「いいか?柄を握りしめて一気に刺すんだよ。こういう風に…な!」ドンッ
カロル「刺さった!」ビックリ
ヒメ「で、抜いて…」スポッ
ヒメ「刺す!」ドンッ
カロル「王子さま、すごーい!」パチパチ
ヒメ「とりあえず言われた通りにやってみたぞ。小さく四角形に…」スポッ
カロル「すきま風が入ってきてる?きっと外に繋がってるよ!」
ヒュールリラルー
ヒメ「覗いてみるか」チョコン
カロル「どう?」
ヒメ「…おまえって意外と勘がいいんだな。誉めて遣わす!」
カロル「ありがとう!」パァァ
ヒメ「(本当に外に通じてるな…。ここ一階だし、僕とこいつならそんなに大きい穴じゃなくても……)」
ダダダッ
カロル「あ、待って!誰か来るよ?」
ヒメ「樽!空樽、持ってこい!」
カロル「は、はい!」ゴロゴロ
319: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:54:12 ID:3iR/3Imybo
ガチャガチャ バアンッ!
小男「おぅい!なんかこそこそやってんなぁ!」ズカズカ
ヒメ「……」プイッ
カロル「……」プイッ
小男「逃げようったってそうはいかねぇんだからな?分かってんだろな、このぉ?」グリグリ
ヒメ「くっ…!」ギリッ
小男「生意気な目ぇしやがって?なんとか言ってみやがれってんだ?」グリグリ
ヒメ「……!」キュッ
小男「ん?なんだ?こんなとこに樽なんか置いてたか?」
ヒメ「!」ビクッ
カロル「!」ドキッ
小男「……」
カロル「」タタタッ
小男「あ、おぅい!」
カロル「」ピタッ
小男「…あやしい。あやしいぞぉ?なんで樽の前に立ちふさがる?」
カロル「た、樽?樽なんて知らないよ?どこにあるの?」キョロキョロ
小男「お前の真後ろにあんだろがぁ!?」
ヒメ「(バカ…!)」ワナワナ
小男「こいつはあやしいなぁ?あやしいから調べちゃうしかないなぁ?」ジリジリ
カロル「……!」ゴクッ
ヒメ「(こうなったら一か八か、こいつを倒して…!)」チャキッ
小男「ひひひ!誘拐犯と人質の間で隠し事なんかさせねぇよ?」ジリジリ
320: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:56:23 ID:3iR/3Imybo
小男「どけ!その樽になにかあんだろ?」
カロル「」ファサッ
小男「おぅん?なにフードなんか取って……げげぇっ!?」ビクッ
ヒメ「!?」ピタッ
カロル「……」ジーッ
小男「お、お、おま…おまままま……」プルプル
ヒメ「…なんだ?」
小男「いや、まだわからねぇ!松明を点けるか!マッチ…マッチ、と…」シュッシュッ シュボッ
ボォッ
カロル「……」ジーッ
小男「ひ、ひひ!ひひひひひ!まちがいねぇや!ホビットだ!?」
ヒメ「えっ」
小男「あ、兄ぃ!ちょいと来てくれよぉ!?」
カロル「……」
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