前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
281: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:24:43 ID:YvuzyYVhZU
大臣「…しかしですなぁ?
あの大樹がホビットによって育てられたなんて世に広まっておりませんし、むしろ神様のおわす天へと繋ぐ架け橋であると伝承にはございますぞ?」
国王「元はと言えば我が父の代に仕えた高官がでっち上げた物!伝承など意味を持たん!」
政務官「御言葉ですが…口が過ぎますぞ?その伝承により、我が国は平穏無事に健全な国家を取り戻したのです。
今さらになって全てをさらけ出してしまえば、また無益な争いが生まれ、手にした平和も泡と消えましょうな?」
国王「……」
大臣「陛下は全てがでっち上げだと知りながら、何故ホビットを拒むのです?
便利な種族ではありませんか?汚れてもらうにはうってつけですしねぇ」
国王「黙れ!余の他に却下を推す者はおらんのか!?」
シーン
大臣「では…賛成を推す方は拍手をちょうだいしたい?」
政務官「無論、承認すべきだ!諸君もそう思わないか?」パチパチ
パチパチ パチパチ
大臣「決まりですな?日時の指定は追って連絡致しますので、国交行事の一つであると念頭に入れていただきたい!」
パチパチ パチパチ
国王「……〜〜〜!」ワナワナ
大臣「陛下もそのようにご理解いただけますか?」ニヤリ
政務官「ふっ…くくく…」ニヤニヤ
国王「」ガタッ
大臣「おんやぁ〜?陛下、どちらへ行かれ……」
バタンッ
大臣「やれやれ…」
政務官「さて、これにて終了か。では解散するとしましょう」ガタッ
ガヤガヤ スタスタ ガヤガヤ スタスタ
282: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:26:30 ID:UavECGF.sw
大臣「政務官殿の鮮やかな弁舌、実にお見事!おかげで皆さんにも納得していただけましたぞ?」
政務官「私にきっかけを作らせただけでしょうに?皆も既に手懐けていたのは明らかだ?」
大臣「なんだ、ご存知でしたかぁ?」
政務官「怖いですなぁ?敵には回したくない…」
大臣「利害が一致する以上は協力関係を築きますよぉ?ですがもし反旗を翻そうものなら…」
政務官「此度のように陛下さえ、力業で黙らせる貴方を目にして妙な気を起こそうとは考えられませんよ」
大臣「ふひひ…それはあなたも同じことでは?」ブヒッ
政務官「なんにせよ国交行事の大幅な拡大は願ってもない。
陛下の意を汲むか、国家の繁栄に尽力するか、天秤にかけた結果としましょうか?」
大臣「わっはっは!政務官殿はまことに弁が立ちまするな!?」ゲラゲラ
政務官「では会食がありますので失礼」スタスタ
大臣「お忙しいようで」
バタンッ
大臣「…さぁて、これで教団のジジイ共も満足だろう。
ヘマトバザールに依頼を済ませて、招待状も用意しなければ…と」スタスタ
283: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/23(日) 22:27:34 ID:tVDyKCFPzs
―――城(謁見の間)―――
国王「……」
ヒメ「遅くまでご苦労様です」
国王「誰に断って腰を据えている…?」
ヒメ「玉座とは意外に固いものですね?お尻が痛くなります?」
国王「そこは余の場所だ!」ペイッ
ヒメ「いたた…!乱暴にどかさずとも…今日の習い事は昼前に済ませましたが?」
国王「そんな心配はしておらん…。一人にしてくれまいか?」ストッ
ヒメ「たまにはいいじゃないですか。親子の会話があっても?」
国王「…妃がおろうが?」
ヒメ「母上との会話は胸焼けがいたします。あの方は私を父上の後釜としてしか見ておりませぬ?」
国王「余に何を望んでおる?」
ヒメ「先に申しました通りです」
国王「急に何を言い出すかと思えば…余にはお前が分からんよ」
ヒメ「でしょうね。貴方は僕と接しようとしないのですから」
国王「……」
ヒメ「こうして向き合ってみていかがですか?」
国王「…分からんよ。まるで分からん」
ヒメ「…そうですか」シュン
国王「もういいだろう。お前の気まぐれには十分付き合ってやった…」
ヒメ「気まぐれなんかじゃありません…」ボソッ
国王「一人にしてくれ。誰にも会いたくないのだ」
ヒメ「……イヤです」
国王「いい加減に…!」ガタッ
ヒメ「いけませんか?」ジーッ
国王「うっ…!」ググッ
284: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/23(日) 22:29:44 ID:5Hag5NEFy2
国王「……下がれ」ストッ
ヒメ「……」
国王「下がれ!!」ダンッ
ヒメ「…そこまでおっしゃるなら」スクッ
国王「手間を取らすな…」
ヒメ「」スタスタ
国王「……」
ヒメ「」ガチャッ
ヒメ「…父上、最後によろしいでしょうか?」クルッ
国王「はぁ…なんだ?」
ヒメ「貴方にとって僕はどういう存在なのですか?」
国王「質問の意図が分からん」
ヒメ「どういった解釈でも結構です。お答え願えますか?」
国王「…知らん。下がれ」
ヒメ「答えていただけるまで下がりません」
国王「……余の後継ぎだ。それ以上でもそれ以下でもない」
285: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/23(日) 22:30:24 ID:tVDyKCFPzs
ヒメ「…後を継ぐのであれば誰でもよいのですか?」
国王「は?」キョトン
ヒメ「僕は紛れもなく貴方の子です。
だからこそ運命に従い、教養を身に付け、貴方の後継者として相応しい人間になろうとしています」
国王「……?」
ヒメ「ですが僕は貴方の事をあまり知りません。
どうすれば貴方にとって大切な存在になれるのか、教えていただきたいのです」
国王「よかろう…。一度しか申さぬ。しかと耳にしておけ」
ヒメ「…はい」
国王「興味がない」
ヒメ「は……?」ドクンッ
国王「満足か?分かったら下がれ。これ以上、父を疲れさせるな…」シッシッ
ヒメ「……」
ヒメ「」ペコリ
バタンッ
286: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/23(日) 22:32:32 ID:tVDyKCFPzs
―――城(通路)―――
団長「……」コキッコキッ
団長「近衛、憲兵の兼任も楽じゃないな。結局こんな時間になってしまったか」フゥー
ヒメ「」ボーッ
団長「…王子!?」ギョギョッ
ヒメ「」ビクッ
団長「な、な…何をしておられるのです!?」タタタッ
ヒメ「なんだ、お前か」
団長「お身体を労ってくだされ!このような吹きさらしに身を置いては冷えてしまわれます!?」
ヒメ「…そういえば」
団長「は?」
ヒメ「お前、僕が城下に降りた時に父上が心配してたと言ってたな?」
団長「え…!む、無論!いてもたってもいられぬご様子で…私共に王子の捜索を指示なされ……」アタフタ
ヒメ「どうせならもっとマシな嘘をつけ」
団長「」ドキンッ
ヒメ「たった今、陛下に会ってきた」
団長「お、お許し…くださいませ…!ワシは…ワシはただ……」ズルッ ガクッ
ヒメ「……」
団長「王子の為を思い…!それだけなのです!決してからかおうと企んだ訳では……」ガバッ
ヒメ「気休めか。お前から見て僕はそんなに哀れなのか?」
団長「い、いえ…滅相もござりませぬ!」
ヒメ「まぁ…概ね正しい。微かでも気に留めてくれたら、なんて淡い期待もあった」
287: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/23(日) 22:34:19 ID:tVDyKCFPzs
団長「わ、ワシの失態です!
ワシが報告していれば、父君はきっと王子の心配をなさった筈!」
ヒメ「…ほんの僅かだが父上と言葉を交わして懐かしさを感じたよ」
団長「よ、よいではありませんか!これを期にもっと積極的に会話を……」
ヒメ「懐かしい声ではっきりと言われたよ。
『お前は後継ぎだ。それ以上でも以下でもない』とさ?」
団長「…つ、つまり後継者として期待をですな……」
ヒメ「……」
団長「いえ、分かりますとも!
王子が望んでいたのは親子の会話…ですが急には陛下も心の準備が億劫で…やがては曇りのち晴れ、じゃない!
えーと、春が冬になり桜は枯れる…じゃなくて!」アタフタ
ヒメ「ハハッ…。お前が取り乱してどうする?」クスクス
団長「あ、いや…ですからワシが言うのは……」アタフタ
ヒメ「いいんだ。もう…」スッ
団長「おう……じ…」
ヒメ「つまらない話に付き合わせて悪かったな」スタスタ
団長「あ……」
スタスタ スタスタ……
288: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:23:22 ID:DS2DCCPo0c
〜〜〜朝〜〜〜
―――教会(客間)―――
ダガ「くぅ…あぁぁ!よく寝たぜ!」ノビッ
アリアス「よく寝たって…小娘の見張りはどうしたの?もうすぐ昼になるわよ?」カキカキ
ダガ「うるせぇなぁ。ビゴパノチェスが威嚇してて見張れなかったんだ…。んな事よりお前だけか?」
アリアス「えぇ、神官は今日も二人を連れて観光してる。司祭様も出掛けたけれど?」カキカキ
ダガ「なぁに書いてんだ…?」ジロジロ
アリアス「招待状よ。有力な信者に向けて準備しているの」カキカキ
ダガ「準備…?なんのだ?」
アリアス「予定を変更して名目を聖地巡礼にしたんですって?
だから急遽、こうして便箋にしたためてるのよ。
暇なら見てないで手伝いなさい?」カキカキ
ダガ「けっ…めんどくせぇ」ストッ
アリアス「あなたも元宣教師なのだし読み書きくらいは出来るでしょう?
そこに見本と名簿があるから、それに習って書いて?」
ダガ「ちっ!ところで宣教師といやぁ…あのガキはどうした?」カキカキ
アリアス「知らないけれど?まだ寝てるんじゃない?」カキカキ
ダガ「…いい気なもんだぜ」
アリアス「無駄口はいいから手を動かしなさい?」カキカキ
ダガ「何枚あるんだ?」
アリアス「一部の信者と幹部に宛て、そこから枝分かれ的に拡散させるだけだから大した量でもないわ。
でも昼までに届けなきゃ伝達所が閉まるし急いでくれないと困るわよ?」カキカキ
ダガ「…つまりはなんだ?お前がこの手紙を届けに行ったら、俺はまたあのガキと留守番しなきゃなんねぇのか?」
アリアス「そうなるでしょうね。シスターもさっき買い出しに行ったし…」カキカキ
ダガ「ふ……そうか。たまったもんじゃねぇな」ニヤニヤ
アリアス「…なににやけてるのよ?」
ダガ「なんでもねぇよ…。さっさと終わらせちまうぞ?」カキカキ
289: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:26:19 ID:HUyNmpQ.3E
アリアス「じゃあ行ってくるわね」ガチャッ
ダガ「おう…」
バタンッ
ダガ「」ニヤリ
ダガ「クク……ククク…!」ゴソゴソ
ダガ「ふ……まさかこんな早く機会が回ってくるたぁな?買っておいて正解だったぜ…?」つ【媚薬】
ダガ「あの生意気な小娘をこいつでぎゃふん!と言わせてやるぜ…」ノソノソ
290: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:27:37 ID:DS2DCCPo0c
―――教会(客室1)―――
ガチャッ
ダガ「ククク……」ソローリソローリ
「……」スースー
ダガ「ふ……毛布を被ってぐっすり寝てやがる…?」ニヤァ
ダガ「(覚悟しろよ…?
バカ丸出しで眠りこけたてめぇの口に媚薬を瓶ごと突っ込んで一本まるごと飲ませてやるぜ…!)」
ダガ「(効き目は強力…薬剤師のお墨付きだぁ?
一瞬でキマって普段からお高く止まったしたり顔もだらしなく歪むんだよ…!)」
ダガ「(そんでもって……)」
〜〜〜妄想〜〜〜
宣教師「…はぁ……はぁ……ど、どうなって…!体が……言うことを聞かない…!」
ダガ「ふ……おいおい、いつもの威勢はどこに行った?」ニヤニヤ
宣教師「わ、私に…何を飲ませたんですか…!?」
ダガ「あぁ?」ガシッ
宣教師「きゃっ!や、やめなさい!どこ触ってるんですか!?」ビクッ
ダガ「嫌なら抵抗してみろよ?」モミモミ
宣教師「あっ…うぅ…あぁんっ!いやっ…やめ…!」ビクンビクン
ダガ「どうしたぁ?えぇ?」モミモミ
宣教師「だ、だめっ…もう…もう…!」キュッ
ダガ「ふ……どうしてほしいか言ってみろよ?」
宣教師「うぅ…す、好きにすればいいでしょう!?」
ダガ「それが他人にモノを頼む態度かぁ?」
宣教師「……もう我慢できません!私をあなたのモノにして!」ダキッ
ダガ「ふ…ふっふっふ…!そこまで言うなら何べんでも抱いてやらぁ!?」ガバッ
〜〜〜〜〜〜
291: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:30:35 ID:HUyNmpQ.3E
ダガ「うへへ…うへへへへ…」ヘラヘラ
宣教師「さっきから何をぶつぶつ言ってるんですか?気色が悪いんですけど?」
ダガ「っ!?」ビクッ
宣教師「どいていただけますか?入り口に立たれては部屋に入れません」
ダガ「て、てて…てめめめめっ!?なな、ななんでここにいやがる!?」プルプル
宣教師「はい?」キョトン
ダガ「寝てたんじゃ……」
宣教師「昨夜おみやげを頂いたお礼にビスケットを焼いてあげると約束したので炊事場を借りてたのですが…それがなにか?」
ダガ「じ、じゃあ…ベッドにいるのは…!?」ワナワナ
宣教師「毛布をめくってみてはいかがです?」
ダガ「ちぃっ!」ガッ ブワサッ
マルク「う…?」ムクリ
ダガ「げぇっ!?」ギョギョッ
宣教師「また置いてきぼりにされて寂しかったらしく、カロルくんのいたベッドでふて寝してたんです」
マルク「うー…グルルルルル!」イライラ
ダガ「ま、待て!話せば分かる!?」アセアセ
マルク「わぉんっ!!」ガブッ
ダガ「ぎゃああああ!」ズサッ
バリンッ!!
宣教師「なにか落としまし……あ、割れちゃいましたね」
ダガ「あぁぁっ!?俺の……俺の……!」
マルク「わぐぅ!」ガブガブ
ダガ「いってぇ!?くっそぉ!?あああチクショウ!!!」
宣教師「……ビスケット、棚の上に置いておきます。つまみ食いしたら承知しませんからね?」コトッ
ダガ「やめろぉぉ!?昨日と同じとこ噛むんじゃねぇぇぇ!?」ジタバタ
宣教師「では私も出掛けますので…ごゆっくり?」ニコッ
292: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:32:18 ID:HUyNmpQ.3E
―――城下町(大通り)―――
ワイワイガヤガヤ
アントリア「…宣教師君はなにもなかったと?」スタスタ
母「えぇ、そうおっしゃってましたよ?ねぇ坊や?」スタスタ
カロル「うん。司祭さまの気にしすぎじゃないかな?」スタスタ
アントリア「ふむ…」
カロル「宣教師さま、今日も断っちゃったね?」
母「そうねぇ?宣教師様も一緒にこうして廻れたら、もっと楽しかったでしょうに…残念だわ?」
カロル「ボクがビスケット食べたいなんて言っちゃったからかなぁ…?」シュン
母「ふふ。すごく張り切ってたものね?」
カロル「嬉しいけど、やっぱり一緒に廻りたかったなー」ションボリ
母「じゃあ楽しかったって言えるように思い出を作って、帰ったらお話をたくさん聞かせてあげましょ?
きっと明日は一緒に来たいって言うと思うわ?」ニコッ
カロル「…うん!宣教師さまがうらやましいって思うくらい、めいっぱい楽しまなきゃ!」
アントリア「それなら楽しい所を案内してあげないといけないな?」ニコッ
母「ふふふ!よろしくお願いします?」ペコッ
カロル「今日はどこに行くの?」
アントリア「そうだね…。昨日は有名な場所ばかりを教えたから、今日は趣向を変えて隠れた名所を案内しようか?」
母「まぁ!とても楽しみ!」ニコニコ
カロル「わーい!ボクかくれんぼする!」キャッキャッ
アントリア「かくれんぼ?……うん、まぁ行ってみようか」スタスタ
293: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:33:58 ID:DS2DCCPo0c
―――憲兵団本部(団長室)―――
団長「よく来てくれた!まぁ座んなさい?」サッ
宣教師「失礼します」ストッ
団長「…さっそく本題に入るが決心はついたのか?」
宣教師「」コクン
団長「そうか、そうか…国外へ行ってもらうにも即座に手配することはできない。
しばらくはこちらにいてもらうが納得してもらえるか?」
宣教師「」スッ
団長「…ん?その手はなんだ?」
宣教師「出頭しに来ました。どうぞお縄にかけてください」
団長「どういう意味だ?」
宣教師「意味もなにも…そのままですが?」
団長「落ち着きなさい?なにを考えてるんだ?」
宣教師「一晩、考えた結果です。大臣の下に戻ると決めました」
団長「なぜだ!」ガタンッ
宣教師「…私には大切な方々がいます」
団長「なんの話だ!?」
宣教師「分からなくても構いませんが…その方々を守る為にはこうする他ない、それだけです」
団長「ま、まさか君を連れ出した犯人と通じてか?あの男を庇っているんだな!?」
宣教師「……」
団長「違う…のか?」
宣教師「あなたには関係ありません…」
団長「他に誰が…!?」
団長「」ハッ
294: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:36:17 ID:DS2DCCPo0c
団長「…ワシの予感が正しければ…君を軽蔑することになるぞ!」ググッ
宣教師「どう思われても結構です。曲げるつもりはないですから?」
団長「くっ…!昨日言っていたやり残しというのはそいつを逃がしてやることじゃないだろうな?」
宣教師「さぁ?今頃は悠々と東の地を踏んでるんじゃないでしょうか?」クスリ
団長「夜の内に国外へ出したのか…?
内外を隔てる門は厳重に警備されているんだぞ!」ダンッ
宣教師「方法はご自身で解き明かしていただけますか?
まぁ彼を捕らえられたらの話ですが?」
団長「ハッタリだな!
もし、そうだったとしても必ず捕らえて首を跳ねてやる!」
宣教師「彼に罪はないのに…ですか?」
団長「罪深い種族に生まれた…それだけで十分、極刑に値するんだよ!」
宣教師「固定観念を捨てきれず、本質を見極める目も持たない…。
仮にも治安維持に取り組む憲兵の長とは思えませんね?」
団長「黙れ!なんにしろ罪人を逃がしたのだ!お前も罪は免れんぞ!?」
宣教師「首でも跳ねてみますか?」
団長「っ…!なぜ、そこまでしてそいつを庇う!?」
宣教師「…あなたのような人間がいるからですよ」キッ
団長「!?」
295: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:38:32 ID:HUyNmpQ.3E
宣教師「さしたる理由も意思もなく、ただ流されて闇雲に悪意を差し向ける…。
あなたのような人間が彼らを陥れているのです!」
団長「奴らが罪深いと教えたのは貴様ら教団ではないか!?」
宣教師「そう広めるよう指示したのはあなた達が仕える王国ですよ!」
団長「なぜそうなる!苦し紛れにでたらめをぬかすな!」
宣教師「でたらめだと思うなら高官を問い詰めてみなさい!」
団長「うっ」
宣教師「…と言って出来ないでしょうね?恐ろしいですもんね?」
団長「黙れっ!ワシを謀ろうなど…そうはいかんぞ!?」
宣教師「そうして逃げれば楽なのでしょう?嘘だと決め付けて……」
団長「」ガタッ グワシッ
宣教師「っ…?」ガッ
団長「黙れ…!」ギロッ
宣教師「……」
団長「貴様の御託など聞かん…!
逃がしたホビットも捕らえてやるから覚悟しておけ!」
宣教師「暴力をちらつかせて脅すなんて…ますます憲兵の風上にも置けませんね?」クスッ
団長「うおおぉぉお!!!」ブンッ
宣教師「ひっ…」グワッ
ドカァッ!
宣教師「っ…うぅ…」ボロッ
団長「ふぅっ…ふぅっ…!」ゼーゼー
宣教師「つつ…い、息が…上がってますよ?動揺しているのでは?」ヨロッ
団長「ふぅっ…まだ黙らないか…!」ピキィッ
宣教師「あ、あなたも…気付き始めてるんじゃないですか…?」
団長「いいだろう。女だろうが容赦はせん…」ズイッ グワシッ
宣教師「う……」グイッ
296: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:41:17 ID:DS2DCCPo0c
団長「罪深き種族に加担するのなら…貴様も同様に罪深い!」ダンッ
宣教師「かはっ!」ドンッ
団長「今なら…まだ許してやってもいいぞ?ホビットをどこへ逃がした?」
宣教師「…分か…りました」ケホッ
団長「…ふん。最初から素直に……」
宣教師「その代わり…王子様に会わせてください。それが…条件です」
団長「…馬鹿が!何を言い出すんだ!?」イラッ
宣教師「はぁ…はぁ…私が大臣の慰み者だったのは…隠しておけばいいのでは?」
団長「…会ってどうする?」
宣教師「あなたは…彼がホビットでありながら、王子様と接したのが問題だと…言いましたね?」
団長「だからどうした?」ギロッ
宣教師「王子様に…聞いてみればいいでしょう?それは…はたして罪なのか……どうかを」
団長「聞くまでもないな!時間の無駄だ!」
297: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:42:11 ID:DS2DCCPo0c
コンコン
団長「なんだ!?」
「し、失礼しました!先ほど大きな物音と言い争うような声が聞こえましたので何かあったのかと!」
団長「…ワシの不注意で机が倒れただけだ!見回りにでも行ってこい!」
「そ、それが…もう一つ…!」
団長「あぁなんだ!?」イラッ
「はっ!また王子が城を抜け出したと!」
団長「なにぃ!なぜそれを先に言わないんだ!?」
宣教師「…こ、好都合…ですね?」ニコッ
団長「……」
「いかがいたしましょう!」
団長「馬鹿が!捜索するに決まってるだろう!いいから入ってこい!」
憲兵「はっ!し、失礼いたします!」ガチャッ
団長「受け取れ!」ブンッ
憲兵「おわっ!?ひ、人!?」ドッ
宣教師「……な、なにをするんですか!」
団長「その女を牢屋に放り込んでおけ!ワシは手勢を集め、王子の捜索に向かう!」ズカズカ
宣教師「ちょ、ちょっと…!」
憲兵「おとなしくしろ!!」ガシッ
宣教師「……!どうしてこうも頭ごなしに…!ホビットの方がよっぽど柔軟で素直ですよ!」
憲兵「行くぞ!」グイッ
298: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 21:25:08 ID:YIdUJJ0I4U
―――城下町(公園)―――
アントリア「こんな場所でよかったのかね?他にも……」
カロル「いいの!一回大きな公園で遊んでみたかったんだ!」
母「マルクも連れてきてあげたらよかったわねぇ…」
カロル「そうだね…。アントリアさん、明日はマルクも一緒に来ていいですか?」
アントリア「いいとも?首輪を用意してからになるがね?」
カロル「やったー!」パァァ
母「ふふ。よかったわね?かわいい首輪を選んであげましょ?」
カロル「あ、でも…首輪、嫌がらないかな?」
母「?」
カロル「だって今までしてこなかったから…」
母「…あらあら、坊やは心配性ね?」
カロル「ボクがマルクだったら…友達に首輪なんてされたくないもの」
母「ふふ…いいこいいこ!」ナデナデ
カロル「えっ?な、なんで?」ビックリ
母「お母さん、優しいあなたが大好きよ?」ニコニコ
カロル「お、お母さま…どうしたの?」オロオロ
母「でもね。あたしがマルクだったら首輪をされるより、置いてきぼりにされる方がイヤだと思うの?」
カロル「あ…」
母「マルクなら、坊やの思いやりに気付いてくれるわ?首輪くらいで嫌われたりしないわよ?」ニコッ
カロル「…ありがとう」ニコッ
299: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 21:26:44 ID:ZEkiw00z1I
アントリア「二人とも向こうを見てみたまえ」ビッ
カロル「え……あはっ!」
キャッキャッ ワンッワンッ
母「うふふ。あの人間とワンちゃん、仲良くじゃれあってる?」ニコニコ
アントリア「首輪は一見、繋ぎ止めて自由を制限しているようにも思えるが…ああした絆を形にする為の物なのかもしれんよ?」
カロル「…ボク勘違いしてたみたい?マルクに似合う首輪、選んであげなくちゃ!」
アントリア「帰りに雑貨屋に寄ろう?色々な種類の首輪がある筈だ?」
母「その前にせっかく公園に来たんだから遊んでいきましょ!」
カロル「はーい!」
300: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 21:32:30 ID:ZEkiw00z1I
カロル「あれやってみたい!」ビシッ
母「ブランコじゃない?懐かしいわ!」パァァ
カロル「ボク初めて見た!おもしろそう!」
母「あたしも久しぶりよ?最後に乗ったのは確か…20年近く前かしら?」
アントリア「どうやって遊ぶか知ってるかね?」
カロル「え、えと……お、お母さま!どうするの!」アセアセ
母「ヒントあげる!鎖に繋がれてるから前と後ろに板が揺れるのよ?」ニコニコ
カロル「…わかった!あの板を投げて戻ってきたら掴むんだね!」ピコーン
母「あちゃぱっ」ズルッ
アントリア「はは…そんな危険な遊び方はしないな?」
カロル「へ?じゃあどうするの?」
母「ちょうど子供達が使うみたいだから見てみたら?」
アントリア「初めて公園で遊ぶ時はケガをしやすい。こういう集団の中でたくさん学ぶ事で子供らは自由気ままに遊び回る権利を得るのだよ」
カロル「……」
母「大丈夫。そんなに難しいことじゃないわ?」
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