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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


273: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/16(日) 21:20:05 ID:QsZCryh2P.
アントリア「美的感覚など人それぞれでしょう…?
自由な見方ができるからこそ様々な発展を遂げられるのが創作物の面白さでは?」

貴族1「ま、まぁ…庶民の感覚になぞらえるとすれば…それも一つの意見としましょうかぁ?」フンスッ

貴族2「庶民の描いた絵を庶民が賛美するというのなら納得だ?
芸術への深い理解と敬意が著しく欠けているのだろうな?」フンスッ

アントリア「いかように解釈していただいても構いませんよ。では僕らはこれで失礼します」スタスタ

カロル「(…なんで決め付けるんだろう?)」

母「坊や?行きましょ?」スタスタ

カロル「…うん」スタスタ

貴族1「…庶民は庶民らしく路上の絵描きにジャリ銭でも撒いてろ」ボソッ

貴族2「ククッ…」ニヤニヤ

カロル「……!」ズキンッ

アントリア「…言わせておけばいい」スタスタ

母「そうよ?相手にしたらダメ!」スタスタ

カロル「う、うん」スタスタ

アントリア「稲妻のような形をした髭を蓄えて人前に立てる彼らの審美眼なんてあてにはならないさ。
芸術を語る前に恥を知るべきだ」クスッ

カロル「ぷっ!」

母「うっ…ふふ…ふ!ち、ちょっと…やめてくださいな…!?」プルプル
274: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:03:48 ID:YvuzyYVhZU
〜〜〜夜〜〜〜

―――教会―――

ガチャッ

シスター「あ、神官!おかえりなさいませ!」

アントリア「ただいま。遅くまで留守にしていてすまなかったね」

カロル「えへへ!」ニコニコ

母「ふふ!よかったわね!」ニコニコ

カロル「うん!ずっと欲しかったんだ!」ギュッ

司祭「遅い!?」

カロル&母「」ビクッ

アントリア「ノワール…帰ってそうそうなんだと言うのだね?」

司祭「宣教師が憲兵に連れていかれたんじゃ!!」

カロル&母「えっ」

アントリア「…詳しく聞かせてくれないか?」

司祭「むっ…そ、それがのう。分からんのじゃよ」ゴニョゴニョ

シスター「昼間に憲兵団の方が訪ねてきまして…。幸い本人は帰ってきたんですけど…」

アントリア「帰ってきた…?」

司祭「うむ。軽く取り調べを受けたが何もないと言っておってなぁ…」ポリポリ

アントリア「…それはおかしな話だな。
こんなにも早く捜査をかけられるとは思わなかったが…。
それ以上にシスターやダガ君もいる中で宣教師君だけが調べを受けて何事もなく帰ってくるというのは…」

司祭「じゃろう?わしもおかしいと思い、問いただしたんじゃが…何もないの一点張りじゃわい」

アントリア「ふむ…なんにせよ本人の話を聞かない事にはどうにもならないな」

司祭「…しかしなぁ。奴はろくに喋ろうともせんぞ?」

アントリア「では頼んだよ?」ポンッ

カロル「えっ」

母「…まぁそうなるわよね」
275: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:05:43 ID:YvuzyYVhZU
―――教会(客室1)―――

ガチャッ

宣教師「……」ペラッ

ダガ「咬むな!咬むなぁぁぁぁ……!ビゴパノチェスゥゥゥゥ!!!!」ジタバタ

マルク「わぐぅぅ!」ガブッ

カロル「ただい…ま?」

母「な、なんか大変なことになってるわね?」ヒクヒク

宣教師「おや、二人ともおかえりなさい?都見物は楽しめましたか?」ニコッ

マルク「あんっ!」パァァ

カロル「う、うん!とっても楽しかったよ?」

母「置いていってごめんなさいね。ちゃんといい子にしてた?」ナデナデ

マルク「わぅんっ!」コクリ

ダガ「…てめぇの目は節穴か?」ズキズキ

母「…マルクの面倒を見てくださってありがとうございました?」ニコッ

ダガ「…お、おう」ドキンッ

母「すみませんけど一度席を外してもらえますか?」

ダガ「あぁ?」

母「アントリアさんがお呼びでしたよ?」

ダガ「そ、そうか…?分かった…」スクッ

母「(あんなに咬まれてたのにピンピンしてるのね…)」

マルク「がうぅぅるるる!!」フシューフシュー

ダガ「う…!で、出てくっつってんだろ!?」ドタドタ

ガチャッ バタンッ
276: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:08:15 ID:UavECGF.sw
宣教師「画材を一式、買ってもらえたんですか?」

カロル「うん!アントリアさんがボクの絵、見たいって言うんだ!」

宣教師「カロルくんは上手ですもんね?ジョーさんもキミの絵を見て感心してましたよ?」

母「ふふ。これ、お土産です?あたしの好みだからお口に合うか分からないけど…」つ【パン】

宣教師「そんな…わざわざすみません」

母「焼いたパンに砂糖をまぶしただけの単純なものらしいんだけど、ことのほか美味しくて…あなたにも食べてもらいたくなったの?」ニコッ

宣教師「ありがとうございます。後でいただきますね!」ニコッ

カロル「ボクからもおみやげ!」つ【ネックレス】

宣教師「純銀製の首輪ですか。高価だったのでは…?」

カロル「アントリアさんにねだってみたの!かわいいから宣教師さまにピッタリかなと思って?」ニコニコ

宣教師「…な、なるほど」

母「あら?お気に召しませんでした?」

カロル「あ…ご、ごめんなさい。ボク…こういうのあんまり知らないから、宣教師さまの趣味に合わないかも」マゴマゴ

宣教師「あ、いや…そうじゃないんです!ただ私はこういった装飾品を身に付けた事がありませんので……。
なんだか照れくさくて、少し戸惑ってしまいました…」アセアセ

母「…きっとお似合いになりますよ?付けてみては?」

カロル「ボクも見たい!付けて、付けて!」

宣教師「そうですね。緊張しますが…付けてみます!」カチャカチャ
277: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:13:19 ID:YvuzyYVhZU
カロル「」ワクワク

母「」ニコニコ

宣教師「…ど、どうでしょう?」チャラッ

カロル「わぁ…!すっごく似合うよ!かわいい!」パチパチ

宣教師「そ、そう…ですか?」モジモジ

母「金と比べて銀の光沢は控えめな印象があるけど…謹み深さがあなたらしくて、とても素敵よ?」ニコニコ

宣教師「あ、あはは…そんな…私など…」テレテレ

カロル「気に入ってくれた?」ニコニコ

宣教師「もちろんです。大切にしますね?」ニコリ

カロル「よかった!」

宣教師「これでキミからの贈り物は二度目でしたよね。前に頂いたカリアムのお花も私の教会に活けてあるんですよ?」

カロル「そうなの?宣教師さま、あんまり嬉しそうじゃなかったから捨てちゃったのかなと思ってた?」

宣教師「捨てたりしませんよ。本当は嬉しくてたまらなかったんですから。
キミからの贈り物は全て私にとって大事な宝物ですよ?」

カロル「…そ、そうなんだ?」テレテレ

母「ふふ。照れてる?」クスクス

カロル「えへへ」テレテレ

宣教師「おやおや」クスクス
278: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:16:11 ID:UavECGF.sw
カロル「あ、そうだ。宣教師さま、今日なにかあったの?」

宣教師「おや…司祭達から聞いたんですか?」

母「アントリアさんに何があったか聞いてくれって頼まれちゃったのよ?」テヘペロ

宣教師「えぇー…それを私に言いますか?」タジタジ

カロル「ドアの外にはマルクがいるから誰かがこっそり聞いたりしないよ?」

ワンッ!!

宣教師「それは頼もしいですね…。さっきまで猛犬と化してましたし…」ヒクヒク

母「ここにはあたし達とあなただけしかいないわ…?ね?教えてちょうだい?」ウインク

宣教師「…うーん。ホントに何もないんですけど」

母「え?司祭さんだから話さなかったんじゃないんですか?」

宣教師「あはは…違います、違います。何もないのにしつこく聞いてくるので少し強めに言いましたが…」

カロル「なーんだ!司祭さまも心配性だね?」

宣教師「あの方は昔からそうなんですよ。おせっかいが過ぎると言いますか…余計な心配が多くて面倒なんです」ブツブツ
279: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:20:03 ID:UavECGF.sw
母「ふふ。思春期の娘とお父さんみたいな関係なのね?」クスッ

宣教師「…つい最近まではそういう信頼もあったのですがね」

カロル「今は信頼してないの?」

宣教師「ないですね」キッパリ

カロル「!?」

宣教師「これは即答させていただきます。何度も信頼を裏切られてきましたから」

母「今は反抗期の娘と空気の読めないお父さんみたいな関係なのね?」

宣教師「…親子で例えられるのは心外です」プイッ

母「あらあら、ごめんなさい?冗談ですから怒らないで?」

宣教師「怒ってはいませんが…」

カロル「また信頼し合えたらいいね!」

宣教師「どうでしょう…。少なくともあの方が考えを改めるまでは出来ないと思います」

カロル「出来るよ、きっと!」

母「ダガさんの時みたいに仲直りしてみたら?」

宣教師「また謎の勝負をさせられるんですか!?」

母「ふふ。いいじゃないですか?ダガさんも許せたんだし、司祭さんも許してあげたら?
険悪な人と一緒にいるのって息苦しくなるもの?」クスクス

宣教師「そもそもダガと仲直りした覚えもありません!」
280: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:21:51 ID:YvuzyYVhZU
―――城―――

政務官「…私からは以上。他になければ、これにて……」

大臣「あぁ、リルラ政務官?もう一つ議題に上げたいのですが?」スッ

政務官「どうぞ」

大臣「陛下には前にお伺いを立てさせていただいたのですがね…。実は伝説の大樹を借りてある式典を行おうと考えているのですよぉ?」

ザワザワ ザワザワ

国王「却下すると申した筈だ!」ジロッ

大臣「えぇ、却下されましたとも。なのですぐに取り下げました!
やはり陛下の意向に添わない興行などすべきではないと!わたくし、そう思うに至りましたところ……」

国王「……?」

大臣「こんな書類が出てきましてなぁ…?」ピラッ

政務官「内容は?」

大臣「大樹を聖地と定め、年に一度、巡礼の場としたいという教団からの嘆願書でしてなぁ」

国王「……」

大臣「もう何年も承認待ちのまま、ほったらかしにされていたようで…たまさか似たような内容だったので判を押して、こうして議題に上げてみた所存です!」

国王「くだらん!あの忌まわしき大樹を聖地にだと?馬鹿も休み休み申せ!」

大臣「んぅ〜…皆様もそのように思われますかなぁ?」

政務官「…事前の連絡も無しに上げる議題ではないでしょうな」

大臣「では却下と?」

政務官「いや、私は賛成だ。あの大樹は長年、国で管理していながら手付かずのままだった。
教団の信者は同盟国にも大勢いるのだ。聖地巡礼といった一つのまとまりある行事を開催すれば、すなわち国交を潤滑に進める起爆剤となろう!」

国王「余は認めんぞ!あの大樹は罪深きホビットが育てた物だ!
あのような呪われた樹を崇め、巡礼するなど正気の沙汰ではない!」ダンッ

ザワザワ ザワザワ
281: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:24:43 ID:YvuzyYVhZU
大臣「…しかしですなぁ?
あの大樹がホビットによって育てられたなんて世に広まっておりませんし、むしろ神様のおわす天へと繋ぐ架け橋であると伝承にはございますぞ?」

国王「元はと言えば我が父の代に仕えた高官がでっち上げた物!伝承など意味を持たん!」

政務官「御言葉ですが…口が過ぎますぞ?その伝承により、我が国は平穏無事に健全な国家を取り戻したのです。
今さらになって全てをさらけ出してしまえば、また無益な争いが生まれ、手にした平和も泡と消えましょうな?」

国王「……」

大臣「陛下は全てがでっち上げだと知りながら、何故ホビットを拒むのです?
便利な種族ではありませんか?汚れてもらうにはうってつけですしねぇ」

国王「黙れ!余の他に却下を推す者はおらんのか!?」

シーン

大臣「では…賛成を推す方は拍手をちょうだいしたい?」

政務官「無論、承認すべきだ!諸君もそう思わないか?」パチパチ

パチパチ パチパチ

大臣「決まりですな?日時の指定は追って連絡致しますので、国交行事の一つであると念頭に入れていただきたい!」

パチパチ パチパチ

国王「……〜〜〜!」ワナワナ

大臣「陛下もそのようにご理解いただけますか?」ニヤリ

政務官「ふっ…くくく…」ニヤニヤ

国王「」ガタッ

大臣「おんやぁ〜?陛下、どちらへ行かれ……」

バタンッ

大臣「やれやれ…」

政務官「さて、これにて終了か。では解散するとしましょう」ガタッ

ガヤガヤ スタスタ ガヤガヤ スタスタ
282: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:26:30 ID:UavECGF.sw
大臣「政務官殿の鮮やかな弁舌、実にお見事!おかげで皆さんにも納得していただけましたぞ?」

政務官「私にきっかけを作らせただけでしょうに?皆も既に手懐けていたのは明らかだ?」

大臣「なんだ、ご存知でしたかぁ?」

政務官「怖いですなぁ?敵には回したくない…」

大臣「利害が一致する以上は協力関係を築きますよぉ?ですがもし反旗を翻そうものなら…」

政務官「此度のように陛下さえ、力業で黙らせる貴方を目にして妙な気を起こそうとは考えられませんよ」

大臣「ふひひ…それはあなたも同じことでは?」ブヒッ

政務官「なんにせよ国交行事の大幅な拡大は願ってもない。
陛下の意を汲むか、国家の繁栄に尽力するか、天秤にかけた結果としましょうか?」

大臣「わっはっは!政務官殿はまことに弁が立ちまするな!?」ゲラゲラ

政務官「では会食がありますので失礼」スタスタ

大臣「お忙しいようで」

バタンッ

大臣「…さぁて、これで教団のジジイ共も満足だろう。
ヘマトバザールに依頼を済ませて、招待状も用意しなければ…と」スタスタ
283: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/23(日) 22:27:34 ID:tVDyKCFPzs
―――城(謁見の間)―――
国王「……」

ヒメ「遅くまでご苦労様です」

国王「誰に断って腰を据えている…?」

ヒメ「玉座とは意外に固いものですね?お尻が痛くなります?」

国王「そこは余の場所だ!」ペイッ

ヒメ「いたた…!乱暴にどかさずとも…今日の習い事は昼前に済ませましたが?」

国王「そんな心配はしておらん…。一人にしてくれまいか?」ストッ

ヒメ「たまにはいいじゃないですか。親子の会話があっても?」

国王「…妃がおろうが?」

ヒメ「母上との会話は胸焼けがいたします。あの方は私を父上の後釜としてしか見ておりませぬ?」

国王「余に何を望んでおる?」

ヒメ「先に申しました通りです」

国王「急に何を言い出すかと思えば…余にはお前が分からんよ」

ヒメ「でしょうね。貴方は僕と接しようとしないのですから」

国王「……」

ヒメ「こうして向き合ってみていかがですか?」

国王「…分からんよ。まるで分からん」

ヒメ「…そうですか」シュン

国王「もういいだろう。お前の気まぐれには十分付き合ってやった…」

ヒメ「気まぐれなんかじゃありません…」ボソッ

国王「一人にしてくれ。誰にも会いたくないのだ」

ヒメ「……イヤです」

国王「いい加減に…!」ガタッ

ヒメ「いけませんか?」ジーッ

国王「うっ…!」ググッ
284: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/23(日) 22:29:44 ID:5Hag5NEFy2
国王「……下がれ」ストッ

ヒメ「……」

国王「下がれ!!」ダンッ

ヒメ「…そこまでおっしゃるなら」スクッ

国王「手間を取らすな…」

ヒメ「」スタスタ

国王「……」

ヒメ「」ガチャッ

ヒメ「…父上、最後によろしいでしょうか?」クルッ

国王「はぁ…なんだ?」

ヒメ「貴方にとって僕はどういう存在なのですか?」

国王「質問の意図が分からん」

ヒメ「どういった解釈でも結構です。お答え願えますか?」

国王「…知らん。下がれ」

ヒメ「答えていただけるまで下がりません」

国王「……余の後継ぎだ。それ以上でもそれ以下でもない」
285: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/23(日) 22:30:24 ID:tVDyKCFPzs
ヒメ「…後を継ぐのであれば誰でもよいのですか?」

国王「は?」キョトン

ヒメ「僕は紛れもなく貴方の子です。
だからこそ運命に従い、教養を身に付け、貴方の後継者として相応しい人間になろうとしています」

国王「……?」

ヒメ「ですが僕は貴方の事をあまり知りません。
どうすれば貴方にとって大切な存在になれるのか、教えていただきたいのです」

国王「よかろう…。一度しか申さぬ。しかと耳にしておけ」

ヒメ「…はい」

国王「興味がない」

ヒメ「は……?」ドクンッ

国王「満足か?分かったら下がれ。これ以上、父を疲れさせるな…」シッシッ

ヒメ「……」

ヒメ「」ペコリ

バタンッ
286: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/23(日) 22:32:32 ID:tVDyKCFPzs
―――城(通路)―――

団長「……」コキッコキッ

団長「近衛、憲兵の兼任も楽じゃないな。結局こんな時間になってしまったか」フゥー

ヒメ「」ボーッ

団長「…王子!?」ギョギョッ

ヒメ「」ビクッ

団長「な、な…何をしておられるのです!?」タタタッ

ヒメ「なんだ、お前か」

団長「お身体を労ってくだされ!このような吹きさらしに身を置いては冷えてしまわれます!?」

ヒメ「…そういえば」

団長「は?」

ヒメ「お前、僕が城下に降りた時に父上が心配してたと言ってたな?」

団長「え…!む、無論!いてもたってもいられぬご様子で…私共に王子の捜索を指示なされ……」アタフタ

ヒメ「どうせならもっとマシな嘘をつけ」

団長「」ドキンッ

ヒメ「たった今、陛下に会ってきた」

団長「お、お許し…くださいませ…!ワシは…ワシはただ……」ズルッ ガクッ

ヒメ「……」

団長「王子の為を思い…!それだけなのです!決してからかおうと企んだ訳では……」ガバッ

ヒメ「気休めか。お前から見て僕はそんなに哀れなのか?」

団長「い、いえ…滅相もござりませぬ!」

ヒメ「まぁ…概ね正しい。微かでも気に留めてくれたら、なんて淡い期待もあった」
287: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/23(日) 22:34:19 ID:tVDyKCFPzs
団長「わ、ワシの失態です!
ワシが報告していれば、父君はきっと王子の心配をなさった筈!」

ヒメ「…ほんの僅かだが父上と言葉を交わして懐かしさを感じたよ」

団長「よ、よいではありませんか!これを期にもっと積極的に会話を……」

ヒメ「懐かしい声ではっきりと言われたよ。
『お前は後継ぎだ。それ以上でも以下でもない』とさ?」

団長「…つ、つまり後継者として期待をですな……」

ヒメ「……」

団長「いえ、分かりますとも!
王子が望んでいたのは親子の会話…ですが急には陛下も心の準備が億劫で…やがては曇りのち晴れ、じゃない!
えーと、春が冬になり桜は枯れる…じゃなくて!」アタフタ

ヒメ「ハハッ…。お前が取り乱してどうする?」クスクス

団長「あ、いや…ですからワシが言うのは……」アタフタ

ヒメ「いいんだ。もう…」スッ

団長「おう……じ…」

ヒメ「つまらない話に付き合わせて悪かったな」スタスタ

団長「あ……」

スタスタ スタスタ……
288: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:23:22 ID:DS2DCCPo0c
〜〜〜朝〜〜〜

―――教会(客間)―――

ダガ「くぅ…あぁぁ!よく寝たぜ!」ノビッ

アリアス「よく寝たって…小娘の見張りはどうしたの?もうすぐ昼になるわよ?」カキカキ

ダガ「うるせぇなぁ。ビゴパノチェスが威嚇してて見張れなかったんだ…。んな事よりお前だけか?」

アリアス「えぇ、神官は今日も二人を連れて観光してる。司祭様も出掛けたけれど?」カキカキ

ダガ「なぁに書いてんだ…?」ジロジロ

アリアス「招待状よ。有力な信者に向けて準備しているの」カキカキ

ダガ「準備…?なんのだ?」

アリアス「予定を変更して名目を聖地巡礼にしたんですって?
だから急遽、こうして便箋にしたためてるのよ。
暇なら見てないで手伝いなさい?」カキカキ

ダガ「けっ…めんどくせぇ」ストッ

アリアス「あなたも元宣教師なのだし読み書きくらいは出来るでしょう?
そこに見本と名簿があるから、それに習って書いて?」

ダガ「ちっ!ところで宣教師といやぁ…あのガキはどうした?」カキカキ

アリアス「知らないけれど?まだ寝てるんじゃない?」カキカキ

ダガ「…いい気なもんだぜ」

アリアス「無駄口はいいから手を動かしなさい?」カキカキ

ダガ「何枚あるんだ?」

アリアス「一部の信者と幹部に宛て、そこから枝分かれ的に拡散させるだけだから大した量でもないわ。
でも昼までに届けなきゃ伝達所が閉まるし急いでくれないと困るわよ?」カキカキ

ダガ「…つまりはなんだ?お前がこの手紙を届けに行ったら、俺はまたあのガキと留守番しなきゃなんねぇのか?」

アリアス「そうなるでしょうね。シスターもさっき買い出しに行ったし…」カキカキ

ダガ「ふ……そうか。たまったもんじゃねぇな」ニヤニヤ

アリアス「…なににやけてるのよ?」

ダガ「なんでもねぇよ…。さっさと終わらせちまうぞ?」カキカキ
289: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:26:19 ID:HUyNmpQ.3E
アリアス「じゃあ行ってくるわね」ガチャッ

ダガ「おう…」

バタンッ

ダガ「」ニヤリ

ダガ「クク……ククク…!」ゴソゴソ

ダガ「ふ……まさかこんな早く機会が回ってくるたぁな?買っておいて正解だったぜ…?」つ【媚薬】

ダガ「あの生意気な小娘をこいつでぎゃふん!と言わせてやるぜ…」ノソノソ
290: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:27:37 ID:DS2DCCPo0c
―――教会(客室1)―――

ガチャッ

ダガ「ククク……」ソローリソローリ

「……」スースー

ダガ「ふ……毛布を被ってぐっすり寝てやがる…?」ニヤァ

ダガ「(覚悟しろよ…?
バカ丸出しで眠りこけたてめぇの口に媚薬を瓶ごと突っ込んで一本まるごと飲ませてやるぜ…!)」

ダガ「(効き目は強力…薬剤師のお墨付きだぁ?
一瞬でキマって普段からお高く止まったしたり顔もだらしなく歪むんだよ…!)」

ダガ「(そんでもって……)」

〜〜〜妄想〜〜〜

宣教師「…はぁ……はぁ……ど、どうなって…!体が……言うことを聞かない…!」

ダガ「ふ……おいおい、いつもの威勢はどこに行った?」ニヤニヤ

宣教師「わ、私に…何を飲ませたんですか…!?」

ダガ「あぁ?」ガシッ

宣教師「きゃっ!や、やめなさい!どこ触ってるんですか!?」ビクッ

ダガ「嫌なら抵抗してみろよ?」モミモミ

宣教師「あっ…うぅ…あぁんっ!いやっ…やめ…!」ビクンビクン

ダガ「どうしたぁ?えぇ?」モミモミ

宣教師「だ、だめっ…もう…もう…!」キュッ

ダガ「ふ……どうしてほしいか言ってみろよ?」

宣教師「うぅ…す、好きにすればいいでしょう!?」

ダガ「それが他人にモノを頼む態度かぁ?」

宣教師「……もう我慢できません!私をあなたのモノにして!」ダキッ

ダガ「ふ…ふっふっふ…!そこまで言うなら何べんでも抱いてやらぁ!?」ガバッ

〜〜〜〜〜〜
291: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:30:35 ID:HUyNmpQ.3E
ダガ「うへへ…うへへへへ…」ヘラヘラ

宣教師「さっきから何をぶつぶつ言ってるんですか?気色が悪いんですけど?」

ダガ「っ!?」ビクッ

宣教師「どいていただけますか?入り口に立たれては部屋に入れません」

ダガ「て、てて…てめめめめっ!?なな、ななんでここにいやがる!?」プルプル

宣教師「はい?」キョトン

ダガ「寝てたんじゃ……」

宣教師「昨夜おみやげを頂いたお礼にビスケットを焼いてあげると約束したので炊事場を借りてたのですが…それがなにか?」

ダガ「じ、じゃあ…ベッドにいるのは…!?」ワナワナ

宣教師「毛布をめくってみてはいかがです?」

ダガ「ちぃっ!」ガッ ブワサッ

マルク「う…?」ムクリ

ダガ「げぇっ!?」ギョギョッ

宣教師「また置いてきぼりにされて寂しかったらしく、カロルくんのいたベッドでふて寝してたんです」

マルク「うー…グルルルルル!」イライラ

ダガ「ま、待て!話せば分かる!?」アセアセ

マルク「わぉんっ!!」ガブッ

ダガ「ぎゃああああ!」ズサッ

バリンッ!!

宣教師「なにか落としまし……あ、割れちゃいましたね」

ダガ「あぁぁっ!?俺の……俺の……!」

マルク「わぐぅ!」ガブガブ

ダガ「いってぇ!?くっそぉ!?あああチクショウ!!!」

宣教師「……ビスケット、棚の上に置いておきます。つまみ食いしたら承知しませんからね?」コトッ

ダガ「やめろぉぉ!?昨日と同じとこ噛むんじゃねぇぇぇ!?」ジタバタ

宣教師「では私も出掛けますので…ごゆっくり?」ニコッ
292: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:32:18 ID:HUyNmpQ.3E
―――城下町(大通り)―――

ワイワイガヤガヤ

アントリア「…宣教師君はなにもなかったと?」スタスタ

母「えぇ、そうおっしゃってましたよ?ねぇ坊や?」スタスタ

カロル「うん。司祭さまの気にしすぎじゃないかな?」スタスタ

アントリア「ふむ…」

カロル「宣教師さま、今日も断っちゃったね?」

母「そうねぇ?宣教師様も一緒にこうして廻れたら、もっと楽しかったでしょうに…残念だわ?」

カロル「ボクがビスケット食べたいなんて言っちゃったからかなぁ…?」シュン

母「ふふ。すごく張り切ってたものね?」

カロル「嬉しいけど、やっぱり一緒に廻りたかったなー」ションボリ

母「じゃあ楽しかったって言えるように思い出を作って、帰ったらお話をたくさん聞かせてあげましょ?
きっと明日は一緒に来たいって言うと思うわ?」ニコッ

カロル「…うん!宣教師さまがうらやましいって思うくらい、めいっぱい楽しまなきゃ!」

アントリア「それなら楽しい所を案内してあげないといけないな?」ニコッ

母「ふふふ!よろしくお願いします?」ペコッ

カロル「今日はどこに行くの?」

アントリア「そうだね…。昨日は有名な場所ばかりを教えたから、今日は趣向を変えて隠れた名所を案内しようか?」

母「まぁ!とても楽しみ!」ニコニコ

カロル「わーい!ボクかくれんぼする!」キャッキャッ

アントリア「かくれんぼ?……うん、まぁ行ってみようか」スタスタ
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名前:
sage:


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うpろだ
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