前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
293: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:33:58 ID:DS2DCCPo0c
―――憲兵団本部(団長室)―――
団長「よく来てくれた!まぁ座んなさい?」サッ
宣教師「失礼します」ストッ
団長「…さっそく本題に入るが決心はついたのか?」
宣教師「」コクン
団長「そうか、そうか…国外へ行ってもらうにも即座に手配することはできない。
しばらくはこちらにいてもらうが納得してもらえるか?」
宣教師「」スッ
団長「…ん?その手はなんだ?」
宣教師「出頭しに来ました。どうぞお縄にかけてください」
団長「どういう意味だ?」
宣教師「意味もなにも…そのままですが?」
団長「落ち着きなさい?なにを考えてるんだ?」
宣教師「一晩、考えた結果です。大臣の下に戻ると決めました」
団長「なぜだ!」ガタンッ
宣教師「…私には大切な方々がいます」
団長「なんの話だ!?」
宣教師「分からなくても構いませんが…その方々を守る為にはこうする他ない、それだけです」
団長「ま、まさか君を連れ出した犯人と通じてか?あの男を庇っているんだな!?」
宣教師「……」
団長「違う…のか?」
宣教師「あなたには関係ありません…」
団長「他に誰が…!?」
団長「」ハッ
294: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:36:17 ID:DS2DCCPo0c
団長「…ワシの予感が正しければ…君を軽蔑することになるぞ!」ググッ
宣教師「どう思われても結構です。曲げるつもりはないですから?」
団長「くっ…!昨日言っていたやり残しというのはそいつを逃がしてやることじゃないだろうな?」
宣教師「さぁ?今頃は悠々と東の地を踏んでるんじゃないでしょうか?」クスリ
団長「夜の内に国外へ出したのか…?
内外を隔てる門は厳重に警備されているんだぞ!」ダンッ
宣教師「方法はご自身で解き明かしていただけますか?
まぁ彼を捕らえられたらの話ですが?」
団長「ハッタリだな!
もし、そうだったとしても必ず捕らえて首を跳ねてやる!」
宣教師「彼に罪はないのに…ですか?」
団長「罪深い種族に生まれた…それだけで十分、極刑に値するんだよ!」
宣教師「固定観念を捨てきれず、本質を見極める目も持たない…。
仮にも治安維持に取り組む憲兵の長とは思えませんね?」
団長「黙れ!なんにしろ罪人を逃がしたのだ!お前も罪は免れんぞ!?」
宣教師「首でも跳ねてみますか?」
団長「っ…!なぜ、そこまでしてそいつを庇う!?」
宣教師「…あなたのような人間がいるからですよ」キッ
団長「!?」
295: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:38:32 ID:HUyNmpQ.3E
宣教師「さしたる理由も意思もなく、ただ流されて闇雲に悪意を差し向ける…。
あなたのような人間が彼らを陥れているのです!」
団長「奴らが罪深いと教えたのは貴様ら教団ではないか!?」
宣教師「そう広めるよう指示したのはあなた達が仕える王国ですよ!」
団長「なぜそうなる!苦し紛れにでたらめをぬかすな!」
宣教師「でたらめだと思うなら高官を問い詰めてみなさい!」
団長「うっ」
宣教師「…と言って出来ないでしょうね?恐ろしいですもんね?」
団長「黙れっ!ワシを謀ろうなど…そうはいかんぞ!?」
宣教師「そうして逃げれば楽なのでしょう?嘘だと決め付けて……」
団長「」ガタッ グワシッ
宣教師「っ…?」ガッ
団長「黙れ…!」ギロッ
宣教師「……」
団長「貴様の御託など聞かん…!
逃がしたホビットも捕らえてやるから覚悟しておけ!」
宣教師「暴力をちらつかせて脅すなんて…ますます憲兵の風上にも置けませんね?」クスッ
団長「うおおぉぉお!!!」ブンッ
宣教師「ひっ…」グワッ
ドカァッ!
宣教師「っ…うぅ…」ボロッ
団長「ふぅっ…ふぅっ…!」ゼーゼー
宣教師「つつ…い、息が…上がってますよ?動揺しているのでは?」ヨロッ
団長「ふぅっ…まだ黙らないか…!」ピキィッ
宣教師「あ、あなたも…気付き始めてるんじゃないですか…?」
団長「いいだろう。女だろうが容赦はせん…」ズイッ グワシッ
宣教師「う……」グイッ
296: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:41:17 ID:DS2DCCPo0c
団長「罪深き種族に加担するのなら…貴様も同様に罪深い!」ダンッ
宣教師「かはっ!」ドンッ
団長「今なら…まだ許してやってもいいぞ?ホビットをどこへ逃がした?」
宣教師「…分か…りました」ケホッ
団長「…ふん。最初から素直に……」
宣教師「その代わり…王子様に会わせてください。それが…条件です」
団長「…馬鹿が!何を言い出すんだ!?」イラッ
宣教師「はぁ…はぁ…私が大臣の慰み者だったのは…隠しておけばいいのでは?」
団長「…会ってどうする?」
宣教師「あなたは…彼がホビットでありながら、王子様と接したのが問題だと…言いましたね?」
団長「だからどうした?」ギロッ
宣教師「王子様に…聞いてみればいいでしょう?それは…はたして罪なのか……どうかを」
団長「聞くまでもないな!時間の無駄だ!」
297: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/26(水) 21:42:11 ID:DS2DCCPo0c
コンコン
団長「なんだ!?」
「し、失礼しました!先ほど大きな物音と言い争うような声が聞こえましたので何かあったのかと!」
団長「…ワシの不注意で机が倒れただけだ!見回りにでも行ってこい!」
「そ、それが…もう一つ…!」
団長「あぁなんだ!?」イラッ
「はっ!また王子が城を抜け出したと!」
団長「なにぃ!なぜそれを先に言わないんだ!?」
宣教師「…こ、好都合…ですね?」ニコッ
団長「……」
「いかがいたしましょう!」
団長「馬鹿が!捜索するに決まってるだろう!いいから入ってこい!」
憲兵「はっ!し、失礼いたします!」ガチャッ
団長「受け取れ!」ブンッ
憲兵「おわっ!?ひ、人!?」ドッ
宣教師「……な、なにをするんですか!」
団長「その女を牢屋に放り込んでおけ!ワシは手勢を集め、王子の捜索に向かう!」ズカズカ
宣教師「ちょ、ちょっと…!」
憲兵「おとなしくしろ!!」ガシッ
宣教師「……!どうしてこうも頭ごなしに…!ホビットの方がよっぽど柔軟で素直ですよ!」
憲兵「行くぞ!」グイッ
298: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 21:25:08 ID:YIdUJJ0I4U
―――城下町(公園)―――
アントリア「こんな場所でよかったのかね?他にも……」
カロル「いいの!一回大きな公園で遊んでみたかったんだ!」
母「マルクも連れてきてあげたらよかったわねぇ…」
カロル「そうだね…。アントリアさん、明日はマルクも一緒に来ていいですか?」
アントリア「いいとも?首輪を用意してからになるがね?」
カロル「やったー!」パァァ
母「ふふ。よかったわね?かわいい首輪を選んであげましょ?」
カロル「あ、でも…首輪、嫌がらないかな?」
母「?」
カロル「だって今までしてこなかったから…」
母「…あらあら、坊やは心配性ね?」
カロル「ボクがマルクだったら…友達に首輪なんてされたくないもの」
母「ふふ…いいこいいこ!」ナデナデ
カロル「えっ?な、なんで?」ビックリ
母「お母さん、優しいあなたが大好きよ?」ニコニコ
カロル「お、お母さま…どうしたの?」オロオロ
母「でもね。あたしがマルクだったら首輪をされるより、置いてきぼりにされる方がイヤだと思うの?」
カロル「あ…」
母「マルクなら、坊やの思いやりに気付いてくれるわ?首輪くらいで嫌われたりしないわよ?」ニコッ
カロル「…ありがとう」ニコッ
299: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 21:26:44 ID:ZEkiw00z1I
アントリア「二人とも向こうを見てみたまえ」ビッ
カロル「え……あはっ!」
キャッキャッ ワンッワンッ
母「うふふ。あの人間とワンちゃん、仲良くじゃれあってる?」ニコニコ
アントリア「首輪は一見、繋ぎ止めて自由を制限しているようにも思えるが…ああした絆を形にする為の物なのかもしれんよ?」
カロル「…ボク勘違いしてたみたい?マルクに似合う首輪、選んであげなくちゃ!」
アントリア「帰りに雑貨屋に寄ろう?色々な種類の首輪がある筈だ?」
母「その前にせっかく公園に来たんだから遊んでいきましょ!」
カロル「はーい!」
300: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 21:32:30 ID:ZEkiw00z1I
カロル「あれやってみたい!」ビシッ
母「ブランコじゃない?懐かしいわ!」パァァ
カロル「ボク初めて見た!おもしろそう!」
母「あたしも久しぶりよ?最後に乗ったのは確か…20年近く前かしら?」
アントリア「どうやって遊ぶか知ってるかね?」
カロル「え、えと……お、お母さま!どうするの!」アセアセ
母「ヒントあげる!鎖に繋がれてるから前と後ろに板が揺れるのよ?」ニコニコ
カロル「…わかった!あの板を投げて戻ってきたら掴むんだね!」ピコーン
母「あちゃぱっ」ズルッ
アントリア「はは…そんな危険な遊び方はしないな?」
カロル「へ?じゃあどうするの?」
母「ちょうど子供達が使うみたいだから見てみたら?」
アントリア「初めて公園で遊ぶ時はケガをしやすい。こういう集団の中でたくさん学ぶ事で子供らは自由気ままに遊び回る権利を得るのだよ」
カロル「……」
母「大丈夫。そんなに難しいことじゃないわ?」
301: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 21:34:11 ID:ZEkiw00z1I
子供1「わーい!」ブラーンブラーン
子供2「ひゃあっ!たっかーい!」ブラーンブラーン
カロル「へぇ…!ああやって遊ぶんだ!」キラキラ
母「ふふ。坊やも並んできなさい?順番こで貸してくれるから?」
カロル「いってきまーす!」タタタッ
アントリア「…では何か飲み物を買ってこようか」スッ
母「え?だ、大丈夫ですよ…?そんなお気遣いなく?」オロオロ
アントリア「……僕に孫でもいれば今頃は彼ぐらいの歳なのかもしれないね」
母「……?」キョトン
アントリア「…そういう風に考えた時期もある。
仮想的な現実の中で…こうして一緒に遊べたらと思った事も幾度となくあったのだよ?」
母「失礼ですけどご結婚なされてないんですか?」
アントリア「生まれが上流階級だった為に親の決めた許嫁がいたが…向こうの家がしくじって地位を失くしてしまったものでね?
縁も切れて、それからは浮わついた話に発展するような出来事もなかったよ」
母「…愛する女性とかは?」
アントリア「ははは…若い時分は社交場に顔を出してはそれなりに楽しんでいたが…愛するとなると難しい」
母「見かけによらず遊び人でしたのね?真面目な方かとばかり…」
アントリア「命に限りがある内は楽しんでおかないと損だと…頭の悪い生き方をしてたものさ」
母「あら?でしたらあたしも坊やもクルクルパーですよ?」クスッ
アントリア「君らは頭が悪い訳じゃない。素直で純粋なのだよ?」
母「言い方一つに聞こえますけど?」ニコニコ
アントリア「かなわないね…。なんにしても今が楽しくてしかたないのだ?
老いぼれに思い出をくれる礼に飲み物の代金くらいは出させてくれないか?」
母「…こちらの方が素敵な思い出をもらってますよ?」
302: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 21:36:34 ID:YIdUJJ0I4U
「お母さまー!アントリアさーん!」
母&アントリア「?」
カロル「見てみてー!たっかいよー!?」ビューン
母「すごーい!」パチパチ
カロル「あははははは!」グルンッ
母「ちょっ…なにしてるのー!危ないでしょー!?」アタフタ
アントリア「……」
アントリア「」スタスタ
子供1「スゲー!かっきー!」キャッキャッ
子供2「回るのどうやんの!?」キャッキャッ
カロル「たくさん漕いだらできたよ!」キャッキャッ
母「坊やー!」タタタッ
カロル「あ、お母さまー!こっちこっち!」フリフリ
母「こっちこっちじゃ…ないでしょー!?」ガァー
カロル「」ビクッ
母「あんな危ないの絶対ダメよ!!わかった!?」ガミガミ
カロル「は、はい…。ごめんなさい…」シュン
子供1「スゲーだっせー」
子供2「回るの…」
カロル「……」ショボーン
303: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 21:39:22 ID:YIdUJJ0I4U
子供1「神父のにーちゃんも一緒にあそぼうぜー!」
カロル「いいの!?」キラキラ
子供2「いいんだぜー!グリーンだぜー!」
母「お母さん、ベンチで休んでるわ?遠慮しないでいっぱい遊びなさい?」ニコニコ
カロル「はーい!」
子供1「チャンバラしようぜー!」スチャッ
子供2「しようぜー!」スチャッ
カロル「しよー!」エイエイオー
子供1「神父のにーちゃん!剣は?」
カロル「剣?」キョトン
子供2「これだよ!これこれ!」つ【クルクル巻いた紙】
カロル「……」ポカーン
子供1「チャンバラすんだから剣がないと切られちゃうぞ!」
カロル「切られちゃうの!?」ガーン
子供2「もしかしてチャンバラしらねー!?」
カロル「ちゃ、ちゃんちゃんこ…バラバラ?」アセアセ
子供1「じゃあ見てろよ!」
子供2「いくぞー!」
カロル「う、うん」ドキドキ
子供1「えいっ!やぁっ!とうっ!」ブンッ
子供2「うちとったりー!」パシンッ クシャッ
子供1「うわー!やられたー!」コケッ
子供2「かったー!」ピョンッ
子供1「こうやんだぞ!」スクッ
カロル「えっと…もう一回みせ……」タジタジ
304: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 21:41:44 ID:YIdUJJ0I4U
子供2「いざ!いざ!」スチャッ
子供1「あ、決闘だぞ!にーちゃんの番だ!これ使え!」つ【クルクル巻いた紙】
カロル「え?う、うん!」パシッ
子供2「やあっ!」ブンッ
カロル「わっ!」サッ
子供2「このオレの剣をかわすとはやるな、おぬし!腕前の達人か!」
カロル「う、腕前の達人…なのかな?」オロオロ
子供2「よけてばっかじゃ勝負になんないぞ!」ブンッ
カロル「」サッ
子供2「うぅ!なんだよ、よけてばっか!つまんねー!」プンスカ
カロル「ご、ごめんね…!ちゃんとやるから怒らないで?」アセアセ
子供1「」ガシッ
カロル「え?」グッ
子供1「いまだ!オレもろともこいつを切れー!」ガッ
子供2「友よ!おぬしをわすれないぞー!スキありー!」パシンッ
カロル「あうっ!」
子供2「わーい!かったー!」ピョンピョン
子供1「オレがおさえたからだぞー!」
カロル「…負け、ちゃった」クスッ
カロル「(よくわかんないけど楽しいや!)」ニコニコ
305: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 22:06:48 ID:XjQnO/2/qc
カロル「ねぇ!もう一回やろ?」
子供1「いいんだぜー!」
子供2「だぜー!」
母「ふふ」ニコニコ
アントリア「チャンバラごっこか…。兵士を間近で見てきたせいか、都の子供は剣への憧れが強いな」ストンッ
母「あ、おかえりなさい!」ペコリ
アントリア「麦茶でよかったかな?」スッ
母「お構い無く?ありがとうございます」パシッ
アントリア「彼には後で渡した方がよさそうだね」
母「何を買ってきたんですか?」
アントリア「僕は同じく麦茶だ。彼にはハニーミルク。ハニービーの蜜を混ぜたミルクで評判の飲み物なのだよ?」
母「まぁ?ハニービーの蜜!坊やの大好物ですわ?」
アントリア「ひとまず安心したよ。飲めなかったらどうしようかと思っていたところだ」
母「あの子に好き嫌いはありませんから大丈夫ですよ?」
アントリア「ふむ……」ゴクゴク
306: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 22:08:15 ID:uXoiEP5.4c
アントリア「それにしても打ち解けるのが早いな…。
小さい子供同士ということもあるのだろうが…」
母「前にも同じようなことがあって、その時もああやって仲良しになってたんですよ?」
アントリア「たしかに彼は好かれやすそうだね?」
母「人間もホビットも関係ないって証明してくれたの。
今は眼を隠して接しているけど、前に友達になってくれた人間の子供はあたし達の黄色い瞳を見ても受け入れてくれました」
アントリア「……」
母「アントリアさん達を疑う訳ではないけど、いつかそんな日が来たらってどこかで願ってたの…」
アントリア「そう思い始めた矢先にノワール達が余計なことをしてくれた訳か」
母「あ、いえ!そういう意味じゃ…!」アタフタ
アントリア「…僕らが夢を叶えられるのは君たちが歩み寄ってくれたからだ。
全てが終わったらホビットの住める場所を作れるよう、署名を集めて国に嘆願書を出すよ」
母「……本当に差別はなくなるんでしょうか?」
アントリア「答えはこの先にあるさ。自分の目で確かめるといい?」
母「そう……あら?」
アントリア「別の子供が来たね?高価な服を身につけているが、あれは確か……?」
307: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 22:10:34 ID:uXoiEP5.4c
???「庶民の遊びに付き合ってやってもいいぞ?」
子供1「あっかんべー!」
子供2「お前なんかえらそうだからヤダよーだ!」ベロベロバー
???「な、なんだと!庶民のクセに!」
カロル「えいっ!やあっ!」ブンッ
???「ん?あいつは…!」
子供1「あいつ?ぜんっぜん攻撃しねーから稽古してるんだ!」
???「ふーん。面白いな!あいつに勝ったらオレも混ぜろ!」
子供1「えー?どうする?」
子供2「うーん…」
???「いいから貸せ!」バッ
子供2「あ、オレの剣取るなよ!」プンスカ
???「また会ったな!」スチャッ
カロル「へ…?あっ!…王子さま!?」ビックリ
子供1&2「えっ」
ヒメ「光栄に思え!特別にオレが手ほどきしてやろう?」ニヤリ
308: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/2(日) 22:14:13 ID:XjQnO/2/qc
子供1「あいつ王子なの!?スゲー!かっきー!」キャッキャッ
子供2「王子だー!」キャッキャッ
ヒメ「(身分が分かるとすぐに掌を返す…庶民も貴族も根は同じじゃないか)」
カロル「こんにちは?王子さま!」ニコッ
ヒメ「……お前に決闘を申し込む!嫌だとは言わせないぞ!」
カロル「いいよ!決闘しよ?」ニコニコ
ヒメ「…もっと色々ないのか?緊張感が出ないし…」
カロル「?」
ヒメ「まぁいい!いくぞ!」
カロル「うん!」
ヒメ「くらえ!必殺!ハヤブサ切り!」ビュンッ
カロル「ひゃっ!」ペチッ
ヒメ「……は?」キョトン
カロル「あはは!負けちゃった?」スリスリ
ヒメ「…お前、弱すぎ。ちゃんとした剣だったら死んでるぞ?」
カロル「えへへ。王子さまの攻撃が速くて見えないんだもん」ニコニコ
ヒメ「そ、そうか?」テレッ
子供1「すごかった!シュバーッて!」シュバーッ
ヒメ「ん?うん…まぁな!」エッヘン
子供2「オレもハヤブサ切りしたい!教えて!」
ヒメ「いいぞ!この技を会得するには20年、修行しなきゃいけないけどな!」ドヤッ
子供1「スゲー!20年スゲー!」
子供2「オレも20年しゅぎょーする!」
ヒメ「よし!稽古するぞ!」
カロル「20年…王子さまって何歳なの?」
ヒメ「…う、うるさい!オレはいいの!天才だから!」カァァ
309: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/9(日) 21:58:48 ID:iluM/Oud42
アントリア「驚いたな…」
母「え?」
アントリア「いや、珍しい子がいるものでね?」
母「坊やとチャンバラしてた子ですか?」
アントリア「あぁ。まさかこんな場所にいる筈はないんだが…」
母「お知り合い?」
アントリア「見かけた事がある程度だ。普段はお近付きにもなれない相手だよ」
母「…あの子が?」
ヒメ「持ち方でたらめすぎ。あともっと腰引け。あぁ引きすぎだよ!」グイッグイッ
子供1「あ、うん…ごめん」オズオズ
子供2「王子めんどくさい…」ボソッ
カロル「…こうかな?」クイッ
ヒメ「ちがうちがう!そうじゃないって!こうだよ!こう!」ガシッ
カロル「あはは…む、難しいや?」
子供1「あ、オレ帰んなきゃ!昼御飯できちゃう!」
子供2「お、オレも!母ちゃんに怒られる!」
ヒメ「もう帰るのか?庶民のクセに忙しいんだな?」
子供1「そ…その剣やるよ!」ダッ
子供2「じゃあな!」ダッ
ヒメ「いらないよ。本物持ってるし、なんなら余ってるし、逆に分けてやりたいよ」
カロル「またねー!」フリフリ
タタタッ……
ヒメ「…なんか逃げるように帰っていったぞ」
カロル「そう?」
ヒメ「(態度が不自然に見えたけど庶民にはあれが当たり前なのか?)」
310: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/9(日) 22:02:48 ID:iluM/Oud42
ヒメ「一緒だった二人、今日はいないのか?」
カロル「王子さま!これやってみよ?」ビッ
ヒメ「おまえ受け身かと思ったら意外と他人の話聞かないヤツなんだな」
カロル「あ、ごめんなさい!なんの話?」クルッ
ヒメ「いい、いい。それより…あれ、なんだ?」シゲシゲ
カロル「わかんない!」ニコッ
ヒメ「…わかんない?」キョトン
カロル「遊んでみようよ!」ダッ
ヒメ「遊ぶって…ちょっと待て!どうやって遊んだらいいんだ?」ダッ
カロル「階段があるから上がるんじゃないかな?」トットッ
ヒメ「う……」タジタジ
カロル「王子さまも上がっておいでよ!」
ヒメ「い、いい!オレは下で見てるから!」アタフタ
カロル「……?」
ヒメ「まずはおまえが試せ!」
カロル「王子さまも……」
ヒメ「」ジロッ
カロル「…もしかして高い所が苦手なの?」
ヒメ「」ビクッ
カロル「他のにしよっか?」ニコッ
ヒメ「ば、バッカじゃん!平気だし!ぜんぜん怖くないし!」トットッ
カロル「む、無理して上がってこなくていいよ?」オロオロ
ヒメ「してないし!王族に無理な事なんてないし!」ガタガタ
カロル「(震えてる…)」
311: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/9(日) 22:04:31 ID:iluM/Oud42
ヒメ「ほら、上がったぞ!どうする!?」ドンッ
カロル「たぶんここから降りるんだと思う。ボクから降りてみるね?」
ヒメ「は、はやく!はやくしろ!」ブルブル
カロル「ふふ!いっくよー!」シュー
カロル「わー!滑ったよ!見た?見た!?」キャッキャッ
ヒメ「…滑ったくらいではしゃぐな!」
カロル「王子さまも滑ってみなよ!結構速くておもしろいよ?」
ヒメ「(上るより降りる方が怖い…)」
カロル「ボクも一緒にやるから?」トットッ
ヒメ「え?」
カロル「二人なら怖くないでしょ?ね?」ウインク
ヒメ「うっ…ば、バカにするなよ?怖い訳じゃないぞ?
オレは王子だからな!高い所からおまえたち庶民を見下ろすのが落ち着くんだ!」ブルブル
カロル「ふふ…そうなんだ?」ガシッ
ヒメ「な、なんだ?庶民のクセにオレの肩を押さえるなんて…無礼だぞ!」バッ
カロル「はいはい!いっくよー!」グッグッ
ヒメ「おっ…押すな…!」アワアワ
シューン!
ヒメ「うわあぁぁぁ……あ?」ストンッ
カロル「ね?そんなに怖くなかったでしょ?」ニコニコ
ヒメ「お、おまえなぁ…!」イラッ
312: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/9(日) 22:06:33 ID:IkYx9owoHI
カロル「全部はじめてで楽しいね!」
ヒメ「ふん…そうかー?どれも子供だましでつまらなかったけど?」ムスッ
カロル「そういえば王子さま、お城にいなくていいの?また憲兵さん達が心配してるんじゃない…?」
ヒメ「…平気だよ。誰も興味ないから」
カロル「そんなことないよ?この前だって……」
ヒメ「おまえは何も知らないだろ?余計なお世話だ?」
カロル「う、うん…」
ヒメ「まぁ母上は激怒してるかな。立て続けに無断で外出してるし」
カロル「え?た、た、大変!ご飯抜きにされちゃうよ?」
ヒメ「ご飯…?あぁ食事のことか?」
カロル「…そうだよ?お母さまは怒ったらご飯食べさせてくれないんだ?」
ヒメ「…よほど貧しい家に生まれたんだな。可哀想に」ウルッ
カロル「ど、どうして泣きそうなの?」ビクッ
ヒメ「いや…そうだな。庶民には庶民の苦労がある。無神経な発言が多くてすまなかったよ」ペコリ
カロル「あ、あれ?泣いてないって言わないの?」オロオロ
ヒメ「正直泣きそうだよ。食事も満足に与えられないなんて…噂には聞いてたけどさ」
カロル「や、やめてよ!お母さまが悪いみたい!そうじゃないもん!」アセアセ
ヒメ「…事情があるのは分かるさ。教団は寄付と施しで賄うんだろ?
さすがにおまえの歳でそんな生活を強いられてるとは思わなかったよ…」
カロル「えっと…キミってボクより年下だよね?」アタフタ
ヒメ「城に来るか?僕が頼めば下仕えくらいには……」
カロル「へ、へいき!だいじょうぶだから!」ブンブンブンブン
ヒメ「そうか…。もし本当に困った時は城を訪ねていいぞ?
僕の知り合いだと言えば悪いようにはしないだろうから」
カロル「あ、ありがとう?でも今は大丈夫だよ?」ヒクヒク
大男「んじゃオレサマを雇ってくれよぅ?」ズシンッ
カロル「へ?……わぁっ!」ビクッ
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