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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


213: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 16:50:05 ID:YVcGscXd6c
―――教会(客間2)―――
アントリア「まずはおめでとう。ささやかながら僕達から再会のお祝いだ」

料理「」ズラリ

宣教師「」ジュル

母「……!」ゴクリッ

カロル「わーい!ご馳走だー!」パァァ

マルク「あうーん!」シッポフリフリ

アントリア「どうしたね?遠慮はいらないよ?」

宣教師「…こ、こんな物でこれまでの仕打ちをうやむやにしようなんて…そうはいきませんからね!」

司祭「……」

宣教師「」ジーッ

司祭「ふん」プイッ

宣教師「っ…」

カロル「おいひーい!!」モグモグ

母「」パクッ

宣教師「ってなに普通に食べてるんですか!?」

カロル「宣教師さまも食べようよ!すっごくおいしいよ!」モグモグ

母「うん、おいし!今度、作ってみようかしら?」パクパク

カロル「ホント?お母さまが作ったら、もっとおいしいね!」パァァ

母「ふふ!坊やと宣教師さまを満足させてみせるわ!あ、マルクにも…ね?」チラッ

マルク「!?」ゾワァッ

アントリア「ハハハ。賑やかになりそうだね。ぜひご相伴に預かりたいものだ」

司祭「……」ムスッ
214: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 16:56:03 ID:YVcGscXd6c
アントリア「ノワール」

司祭「分かっとる。お前に合わせるわい…!」

アントリア「宣教師くんもお食べ?毒など入っていないから」

宣教師「そういう問題では…!」

司祭「…お前も腹が減ってるじゃろ。意地を張らずに食え」

宣教師「あなたが勧めるなら、なおさら遠慮させていただきます!」キッ

司祭「勝手にせい…」

カロル「アントリアさん!助けてもらって、ご飯も食べさせてくれてありがとう!」ペコッ

アントリア「いいのだよ、カロルくん。僕は約束を守っただけだ」

母「アントリアさんとおっしゃるの?」

アントリア「王都で神官をしております、アントリアと申します。
容態が落ち着いたようで安心しましたよ」

母「これはご丁寧に…。カロルの母のマリーと言います」ペコッ
215: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 16:57:01 ID:zefuhseCio
アントリア「あなた方、親子には謝らねばならないな。
ノワールや教団の人間たちがだいぶ食い違いを生んでしまったようだ」

母「いえいえ…」

宣教師「現在進行形で迷惑を被ってますよ」

アントリア「手厳しいな。なにも君たちに敵意を持ってる訳じゃないんだが」

母「なぜ…あたし達を捕らえたりしたんですか?」

司祭「わしらは仮にも教団じゃ。害あるホビットの存在を許……」

アントリア「というのは表向き。実際、ここにいる面々は無差別主義者だ」

司祭「む…!」

母「そうなんですか…?あの方などは…」

ダガ「」ガツガツ

アントリア「ふむ。彼は紛れもなく差別主義者だ」

母「……」

アントリア「だが僕らには逆らわない。安心していいのだよ?」

母「目的は…なんなんです?」

アントリア「…目的、か」カチャッ
216: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 17:01:13 ID:YVcGscXd6c
アントリア「そうだね。協力してもらおうにも話を聞かない事には納得しかねるだろう」

宣教師「当然です」

カロル「?」モグモグ

母「是非…聞かせてくださる?」

司祭「……」

アリアス「……」

ダガ「うめぇか?」ナデナデ

マルク「」ガツガツ

アントリア「癒しの力を一度だけ僕らの為に使ってほしい」

カロル「……」

母「…坊やの?」

宣教師「なんでも…とある枯れた樹を蘇らせたいそうですよ」

アントリア「その通り。そして君ならそれが可能だ」

カロル「…樹を?」

母「樹って…枯れてしまったものが蘇ったりするんですか?」

司祭「おそらくな」ムシャムシャ

宣教師「確信があるのですか…?」

司祭「古くにわしの解読した古文書によれば、その樹は癒しの力を注がれて実ったという」

母「…それってもしかしてアピシナの樹じゃ」

司祭「…やはり知っておったか」

母「あたし達の種族に伝わるおとぎ話ですわ?ですが実際には……」

司祭「存在するぞ?王国が管理しとるがな」

母「え?」

アントリア「あとは癒しの力が揃えば完璧なのだよ」

カロル「」ゴックン
217: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 17:06:14 ID:YVcGscXd6c
宣教師「王国の認可を得る為に大樹の足元でホビットの拷問ショーを行うんでしたっけ?」ジトー

アントリア「もちろん本気ではないさ。
ただ…前向きな理由でホビットを大樹まで通すのは難しいというだけの話だ」

宣教師「そういった組織と交流があるというだけでおぞましいですがね」

母「助けていただいて恐縮だけど…聞いてる限りでは坊やを連れていきたくないわ」

アントリア「…残念だ。もう申請は済ましてしまったのだが」

母「…すみません。お断りさせてください」

アントリア「まぁ構わないよ。僕も無理強いはしたくない」

司祭「アントリア!」

アントリア「ただし、その場合は本当にホビットの拷問ショーを行わなければならなくなるがね?」

母「? 先ほどはそんなことしないと…」

アントリア「命で遊ぶようなマネは遠慮したいが…今さらやめますとも言えない。王国を怒らせると怖いからね」

司祭「…なるほどな!確かにそうせざるを得まい!」

宣教師「例えばカロルくんが付いていったとして…どのように拷問ショーを中止するのです?
すでにその名目で申請してしまったのでしょう?」

アントリア「枯れた大樹が目の前で鮮やかに色付けば誰もが目を奪われるに違いない。
騒ぎに乗じてホビットを逃がす事など雑作もないさ」

司祭「うむ。お前さんらにしてみればショーの為に捕らえられた同族を救い出すまたとない好機じゃ。特別難しく考えることもなかろう?」

宣教師「…なぜそこまでして」

カロル「いいよ!」

母「坊や…!?」

カロル「ボクにできることならやります!それで大勢の仲間が助かるんだもの!」

司祭「そうか!やってくれるか!?」
218: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 17:11:06 ID:YVcGscXd6c
カロル「約束、ちゃんと守ってくれたもん!お礼しなくちゃ!」ニコッ

アントリア「ありがとう。とても助かるよ?」ニコリ

母「だ、ダメよ!坊や、落ち着きなさい!」

宣教師「そうですよ!元はと言えばこの方々のせいでひどい仕打ちを受けてきてるんですよ!」

アリアス「なによ?教団員としてホビットの差別を煽ってきたのはあなたも同じじゃなかった?」

宣教師「うっ…!わ、私はしかと真実を見極めて改心しました!」

司祭「ほっほっほ!わしらも同様に改心したのじゃよ。今までは王国の言いなりになっとっただけじゃ!」

宣教師「そんなのは屁理屈です!あなた方はこの子を利用したいだけでしょう!?」

カロル「そうなの?アントリアさん?」

アントリア「違うよ?」ニコニコ

カロル「違うってさ!」キラキラ

宣教師「あーもう!この子は!ようやく疑う目を持ってくれたと思ったら!」ガシガシ

母「思い出すのよ!それで何回騙されたの!?」

カロル「樹も枯れたままじゃかわいそう。咲かせられるなら咲かせてあげたいな?」

宣教師「それはいいんですが…企みが読めないでしょう?」

母「そうよ?こればっかりは聞き分けてちょうだい!」

カロル「利用されてもいいじゃない?ボクは平気だよ?」

宣教師「キミが平気でも私たちが心配なんです!!」ガーッ

カロル「っ!?」ビクッ
219: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 17:15:46 ID:zefuhseCio
カロル「うー…」マゴマゴ

母「よく考えて?今、あなたを想って話してるのはどっちだと思うの?」

カロル「わ、わかるけど…」

アントリア「それはもちろん君たちに違いない?」

宣教師「やけにあっさりと認めるんですね?」

アントリア「これは互いに利益のある交渉だ。我々は私情を含まないよ」

宣教師「それでしたら目的をお聞かせ願えますか?
相手が何かを隠していると分かった上で交渉に応じるほど、浅はかではありませんので?」

アントリア「別に何も隠したりしないさ?
我々はただ伝説の大樹の蘇った姿をこの目に焼き付けたいだけなのだ?」

司祭「さぞ美しかろうな?天寿を全うする前に一目拝みたいものじゃわい」

宣教師「…カロルくん。キミは本気で信用できるのですか?」

カロル「でも…約束、守ってくれたし…ボクらの仲間だって助けたいし…木が咲くの見たいし…」モジモジ

母「……」

カロル「いい?」チラッ

母「ダメって言ったら…考え直してくれるの?」

カロル「う…うん。それでもいいよ?
今までずっとわがまま言ったから。どうしてもダメなら…我慢する」

母「……ダメ。何があるか分からないし、ホントだとも限らない」

カロル「ごめんなさい、アントリアさん。やっぱり……」

司祭「貴様ら…それが何を意味するか分かっとるのか?」

母「……」

司祭「同族を見捨て、差別にさらされたまま生きていくのじゃな?」

母「あたしは初めから…坊やと静かに暮らせればいいと思ってたもの」

カロル「……」

司祭「……!」
220: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 17:47:01 ID:zefuhseCio
アントリア「親子二人でしみじみと…ささやかな幸せを選ぶか」

母「…誰も不幸にならないじゃない。いけないの?」

アントリア「ま、それもいい。どちらかが生きてる間はね」

宣教師「何が言いたいんです?」

アントリア「…先が見えていなさすぎる。心中でもしない限り、いずれはどちらかが孤独になるじゃないか」

母「……!」

アントリア「君らの哀れな境遇はよく分かるよ。目の前の物だけで安心できるのなら迷わずそっちに傾くだろう」

母「」ブルッ

アントリア「…残された方はどうしたらいい?埋まらない穴を空けたまま、ひとりぼっちで生きていけと言うのかね?」

宣教師「わ、私だっています!」

アントリア「君がいても同じだよ。人間とホビットでは寿命が違う。文献によると最長で173年も生きた例がある」

母「…今はそんなに長生きできないわよ。人間に迫害されてまともに生きていけないもの」

アントリア「だからなんだね?子の幸せを優先したくはならないのか?」

母「脅し……」

アントリア「脅しじゃない。忠告だ」

母「……!」

アントリア「少なくとも僕らに協力すれば…そんな未来を恐れる必要はなくなるのだがね」

母「…どうしてそんな事が分かるのよ!?」
221: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 17:50:04 ID:zefuhseCio
アントリア「時に君はもしも差別が無かったら…と考えたことはあるかな?」

カロル「う、うん。ある…よ」コクリ

宣教師「ない訳がないでしょう。差別を促しておいて…」

司祭「しからば無くしてしまえばええわい」

宣教師「!?」

母「そんなこと…できっこないわ!出来てたら…こんなことにはならなかった…!」ダンッ

アントリア「まぁ落ち着きたまえ。可能だよ?癒しの力にはそれだけの可能性がある」

母「…傷を治せるだけでしょう!?他に何があるのよ!?」

アントリア「傷を治せるだけじゃない。あらゆる生命を癒す力だ」

カロル「……?」

アントリア「その為にも大樹を復活させてほしい。君にしかできないことなのだ」

カロル「(差別が…無くなる?)」

カロル「もし…そうなったら」ボソリ

宣教師「本当に無くなるのでしたら、ですがね」

カロル「……」
222: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 17:55:51 ID:YVcGscXd6c
カロル「ボクが差別をなくす…。そんなことができるんですか?」

司祭「そうじゃとも?わしらもそれを願っておる」

アントリア「君が大勢の民衆の前で力を証明すれば間違いなく見方は変わる。
ホビットは再び人間と共存する道を歩めると、僕はそう信じている」

カロル「」ドクンッ

宣教師「はたしてそう都合よく事が収まるでしょうか?」

司祭「む…?」

宣教師「差別の起源はホビットが癒しの力を盗んだとされるからです。
民衆の前で力を使えば、すなわち癒しの力を盗んだ証明になってしまうのでは?」

司祭「くっ…!?」ギリッ

カロル「…?」

宣教師「彼は少し人を疑わなすぎます。
ですが…私がいる限り、あなた達の思惑通りにはさせません」

アントリア「…なんにせよ、答えは一つしかないと思うがね」

母「……」

アントリア「宣教師くんはともかくとしてホビットの二人は一生、後悔するんじゃないだろうか…?
今回のショーで集められたホビットは200を越える…。
つまりは200の同族が蹂躙され、虐げられて人間の見世物にされるのだ。
それでも痛む心を持たないのなら、好きにするといい」

カロル「っ」ズキンッ

宣教師「最終的には脅しですか…。あなた達はいつもそうですね」

アントリア「脅しと取るのならそれも構わないが…我々にしてみれば一世一代の賭けなのだよ。
多少の無理は承知の上で協力願いたい。君たちも恐れるばかりじゃなく、たった一度の機会に賭けたらどうだね?」

母「…あたし達の意思なんて関係ないのね」

司祭「……同族すら見放し、ぬくぬくと生活するのがお前さんらの意思か?」

母「っ…!あなた達が勝手に仕組んだんじゃない!?」
223: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 17:59:38 ID:zefuhseCio
司祭「ほっほっほ!賽は投げられたんじゃよ。あとはお前さんらが承知すればいいのじゃ」

アントリア「ノワール。その言い方ではあまりにも無慈悲だよ。
あくまでもこれは交渉であって我々は頼んでいるだけだ。命令してる訳じゃない」

宣教師「……」

母「宣教師様…!」

宣教師「こればかりは…なんとも言えません」

母「…で、でも!ショーなんて本当に行われるかどうかだって……」

宣教師「…神官が王国の高官に打診していたのを目の前で見てます。残念ですが……」

母「……イヤ!あたしは絶対にイヤよ!」

カロル「……」

宣教師「……」

母「なんで坊やなの…!ホビットは他にもいるじゃない!?」

アントリア「ホビットなら、ね。だが我々が手を借りたいのは癒しの力を持ったホビットだ」

母「癒しの力ってなんなのよ!同族からも聞いたことがないのに…なんでそんな力が坊やにあるの!?」

アントリア「いや、君たちは知ってた筈だよ…。アピシナの樹がおとぎ話として残っていたのだから」

母「あんなの…!全然関係ないわよ!だってあれは樹を育てるだけの話で…!」

アントリア「そのおとぎ話の中では人間がアピシナを樹から追い払い、自分で世話をしようとした描写がなかったかね?」

母「それがどうしたって言うのよ!?」

アントリア「しかし人間が世話をした途端に樹は枯れてしまった…とされている」

母「……そんなのどうだっていいでしょ!?」

アントリア「おかしいじゃないか?なぜ人間はアピシナに教えられた通りに手入れしたのに…樹は枯れてしまったのか」

母「……?」

アントリア「そこに答えはあった。アピシナは癒しの力を使って樹の世話をしていたのだ」

母「それだけで癒しの力があるなんて…考えられないわ」

アントリア「だろうね?でも我々は確信を持ったよ。
古文書の内容とそのおとぎ話の流れは一致してたのでね」

母「…なんなんです?古文書って…」
224: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 18:05:01 ID:YVcGscXd6c
司祭「当時、わしらが学者として王国に仕えていた際に残っていた書物じゃよ。
最初は古代文字で暗号化されておった為に解読するのに時間を費やしたがな」

アントリア「その内容は実に夢のあるものだった。まだ若かった僕たちは胸が躍ったよ」

宣教師「…内容とは?」

アントリア「…限られたホビットが持つ癒しの力を特定の樹に注ぐ事で天に伸びる大樹が生まれるという内容さ」

宣教師「大樹が天に伸びて何か起こるんですか?」

アントリア「……さぁ?何も起こらないんじゃないかな?」

宣教師「えっ」

アントリア「それはそうだろう?樹が成長を遂げて天変地異が起こるとでも言うのかね?」

宣教師「いえ…ですが」

アントリア「前にも話したと思うがね?
僕とノワールは悲惨な時代に生まれ育ったのだよ…。
一欠片の夢を見ることも敵わなかったのだ。
そんな時代を生き抜いた人間にしてみればこれ程、好奇心をそそられる話はない!」

司祭「うむ…。癒しの力を注いで大樹が天へと昇るサマは神々しいじゃろう。
人々の荒んだ心も浄化されるに違いないわい」ウンウン

宣教師「…その夢がなぜ差別に繋がったのです?」

司祭「うむ、この伝承を当時の高官に伝えたんじゃが…な」

アントリア「…戦争を止める口実になると内容を改竄され、大々的に広められてしまったのさ。
信心深い国々を手玉に取り、その国々と同盟を結ぶ事で刃向かう国を一つずつ潰し、今の王国が形作られた…」

司祭「そしてわしは王国が立ち上げた教団の長に任ぜられ、ホビットへの差別を促すように仕組まれたんじゃ」

宣教師「それは知ってましたが…他にやりようはなかったのですか?」

母「そうよ!そんなくだらない事の為にあたし達は…!」

カロル「へぇ…」
225: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/27(月) 18:14:38 ID:zefuhseCio
アントリア「幸いにも王国は癒しの力なんて存在しないと思ってる。目の当たりにさせ、歪んだ意識を覚まさせたいのだ」

母「バカみたい…。全部、人間が勝手にした事じゃない!坊や、はっきり言ってあげましょう?」

カロル「うん」

司祭「こ、断ると言うのか!何度も言うがお前さんらの同族にも関わる……」

カロル「やる!」

母「そうそう。やるのよ……ん?」キョトン

カロル「二人の夢、ボクが叶えるよ!」

ドンガラガッシャーン!!

カロル「わあっ!?」ビクッ

母「ぼ…ぼう…や?」ピクピク

宣教師「大丈夫ですか!?食器の破片が刺さってるといけません!すぐに手当てを…!」ガバッ

カロル「お、お母さま…平気?」オロオロ

司祭「小僧、今の言葉に嘘はなかろうな?」

カロル「え……うん。いいよ?悪いことしたかったんじゃなくて夢を叶えたかっただけなんでしょ?」

宣教師「ま、まだそうと決まった訳では…話などいくらでも作れるのですし」

カロル「心配しないで!もし危なくなってもボクが二人を守るから!」エッヘン

宣教師「!」キュンッ

宣教師「き、キミは…!もう好きにすればいいでしょう!?」

司祭「そうか、そうか…。感謝するぞ」ニヤリ

カロル「それに…差別が無くなるかもしれないんですよね?」

アントリア「そうだね。必ずとはいかないが…大いにありえるよ?」

カロル「…頑張らなくちゃ!」グッ

アントリア「僕からも感謝するよ。ありがとう?」スッ

カロル「どういたしまして!」パシッ ギュッ

母「」ハラホロヒレハレー

宣教師「あぁ…お母様!しっかり…!」アタフタ
226: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/2(日) 22:07:52 ID://Pq5MFqdI
―――城―――
大臣「ふぅ〜…」コキッ コキッ

「」コトン

大臣「んぅ〜?」チラッ

侍女2「どうぞ、ハバム地方から取り寄せたガーデンハーブです」ニコリ

大臣「ほぉ〜!気が利きますなぁ!ちょうど一息入れたいと思っていたのですよ!」

侍女2「いえ、下使えとして当然の配慮ですわ?」

大臣「いや、前の役立たずな侍女とは大違いだ」ゴクゴク

侍女2「」ニコニコ

大臣「んむ、うまい!香り高い茶葉の風味に芯まで癒されますなぁ」

侍女2「ウフフ…」ペコリ

大臣「では改めて公務に勤しむとしますかな!」

侍女2「その書類、全てに捺印を?」

大臣「えぇ、えぇ。承認待ちの案件が無数にあるものでねぇ」ポンッ

侍女2「はぁ…たくさん?手が疲れてしまいますわね?」

大臣「なんならやってみますか?」

侍女2「え…でも…わたし選別なんてできませんわよ?」

大臣「構いませんぞぉ?どうせ内容なんて見てませんから?」

侍女2「見ない…?」

大臣「一つ一つ丁寧に目を通してたらいつまで経っても終わらんでしょう?
だからこうして、と!ポンポン押してく訳ですな」ポンッ ポンッ

侍女2「そ、それって…まずいんじゃ?」

大臣「いいんですよぉ。都合が悪くなれば後でいくらでも認可取り消しすればいいんですからぁ?わたくしにはその権限があります」

侍女2「…で、ではなぜわざわざ捺印を?」

大臣「んぅ〜?それはまぁ…勝手に何か始められては困りますしねぇ。
儀礼的な手続きと言えど、きちんとお伺いを立ててもらわない事にはどうにもなりません。
言うなれば国の動きを監督し、取り締まる立場上の義務ですよ」

侍女2「…へぇ。難しいんですね」
227: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/2(日) 22:10:07 ID:ElWhNBG81s
コンコン コンコン

大臣「ですからね、わたくしが持つ、この特別な捺印を押していただければいいのですよぉ?
ほれ、こっちへおいでなさい?わたくし自ら手解きして差し上げますからぁ?ねぇ?」グイッ

侍女2「きゃっ!で、でも…旦那様が押さないといけないんじゃ…!」グッ

大臣「誰だっていいんですよぉ〜!こんな作業、人の目に付く訳でもなし!ほら、お手を拝借!」モミッ

侍女2「あっ!い、いけないですわ…!そ、そこは…!」ビクッ

大臣「おやおやぁ?たわわに膨らみ、柔らかな感触…手を拝借したつもりがいやはやなんとも!」モミモミ

侍女2「んっ…あっ…こ、公務は…!?」ピクンッ

大臣「おぉっと!こぉれはいけませんなぁ!わたくしとしたことが!
しかしこの感触はなかなかに捨てがたく、侮れんものがありまするな…!」モミモミ

侍女2「っ…んぅ!だ、旦那様が…なさりたいんでしたら、わたしと致しましても…や、やぶさかでは?」ニヤリ

大臣「ほぉう…それはそれは実に興味深いお話…!続きは是非ともあなたのお身体にお聞きしたい!」レロォーン

侍女2「あんっ」クスッ

ガチャッ

大臣「よしよし、あなたのソコも承認待ちのようだ?しっかりと捺印を押して差し上げねば!」ググッ

侍女2「あぁん!旦那様の認可をくださいましっ!」

団長「失礼。お伺いしたいことが……」

大臣「おわぁっ!?」ビクッ

侍女2「きゃあっ!?」ビクッ

団長「お取り込みでしたか。申し訳ない」
228: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/2(日) 22:14:39 ID:ElWhNBG81s
大臣「し、失敬な!の、の、ノックぐらいしたらどうだ!?」アタフタ

団長「ノックしたのですが…まさか公務の最中にお楽しみとは存じませんでな?」

大臣「だ、黙らっしゃい!」

団長「すまないがお嬢さんは席を外してもらえるか?」

侍女2「」タタタッ バタンッ

団長「……」

大臣「なんの用です!要件を言いなさい!わたくしは忙しいのですぞ!」

団長「昨夜の件ですが…とりあえず手配書の見本が完成したのでご確認願おうかと」つ【手配書】

大臣「んぅ〜?」マジマジ

団長「現場の証言が得られなかったので拐われた二人の情報しか載せられませんでしたが…本当に生き残りはいなかったのですか?」

大臣「そりゃそうでしょう。あんな猟奇的な手口を平然と行える人間が目撃者を生かす訳がない」

団長「確かに切り口から見るにためらいの無さが伺えるが…どうにも執事の死だけが不自然に思えまして」

大臣「んむ、人相書きもよく出来てる…。なにが不自然なんです?」

団長「…なぜ執事だけが舌を切られて、全身をメッタ刺しにされてるのか。衛兵たちは皆、一撃で絶命たらしめているのに」

大臣「はて…気まぐれでは?」

団長「…はたして犯人の仕業なのかも甚だ疑問でしてな?」ジロッ

大臣「はぁぁい〜?」

団長「いえ…失言でした」

大臣「一体なにをおっしゃってるんです?わたくしが処分したとでも?バッカバカしぃい!」

団長「…では引き続き調査に当たりますが、手配書の内容はこれでよろしいか?」

大臣「えぇ。特に問題点はありませんぞ」

団長「ではワシはこれで失礼します」ペコリ

大臣「次からは時と場合を考えて入ってくださいよぉ?わたくしもまぁ…色々とありますからな」

団長「心得ておきましょう」
229: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/2(日) 22:20:42 ID://Pq5MFqdI
―――城(通路)―――

団長「」スタスタ

団長「(ふん。公務の最中に情事に耽るとは、な。拐われた二人の替えをもう見つけたらしい)」

団長「(あんなケダモノ連中に囲まれれば…王子が投げやりになるのも無理はない)」

団長「(しかしこの人相書き……)」

団長「(王子の面倒を見てくれた彼らに似ている…)」

団長「部下が彼らを取り調べたんだったな…。後で調書を確認してみるか」

団長「…無関係であってほしいが」

団長「もし…そうであった時は消えてもらうしかない」

団長「(これ以上、王子が悲しみに囚われない為にも…)」
230: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/3(月) 21:23:46 ID:ss79KI2Bic
―――教会(客室1)―――

母「」ムスッ

カロル「お、お母さま…怒ってるの?」オロオロ

母「べつに!怒ってなんかないわ!」プクー

カロル「……」シュン

宣教師「(き、気まずい)」

マルク「くぅん…」

母「……」

宣教師「ご、ご加減はいかがですか?」

母「宣教師様が手当てしてくださった甲斐あって大きなケガにならずに済みました」ニコッ

宣教師「そ、それはよかったです!ね!カロルくん?」

カロル「う、うん。よかった!」

母「……」プイッ

カロル「あっ……」ガーン
231: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/3(月) 21:27:20 ID:j5u3Ryt06o
母「マルクー!こっち来て一緒に寝ましょ?」ヒョイッ

マルク「わんっ!?」チラッ

カロル「ぼ、ボクも…」オズオズ

母「マルクとあたしでベッドはいっぱいよ?」

カロル「うぅ…」

マルク「あぅん…」

カロル「マルク〜!ボクと替わってよ!」

マルク「あんっ!」コクン

母「マルクー?」ダキッ

マルク「わんっ!?」ジタバタ

宣教師「あ、あの…マルクくんも困ってますし、そろそろ仲直りされては…?」

マルク「わふんっ!」コクコク

母「ケンカなんてしてませんけど?」

宣教師「そ、そうですよねー…。あ、あはは…」ヒクヒク

カロル「うぅ……」ウルウル

宣教師「(すみません、私ではどうにもできないです…)」
232: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/3(月) 21:33:27 ID:j5u3Ryt06o
母「んぅ…マルクはふかふかしてあったかいわねぇ」ギュッ

マルク「クゥーン…」ウトウト


カロル「」グスンッ

宣教師「泣かない、泣かない。男の子なんですから」ポンポン

カロル「…泣いてない、です」グシグシ

宣教師「こっちのベッドもマルクくんには及びませんがふかふかで暖かいでしょう?」ファサッ

カロル「うん…。宣教師さまは寝ないの…?」

宣教師「おや、一人では寝れませんか?」

カロル「…久しぶりにお母さまと寝れると思ったんだもの。寂しいよ…」

宣教師「私はお母さまの代わりという訳ですか…」ガクッ

カロル「えっ?ち、ちがうよ!そうじゃなくて…!」アタフタ

宣教師「ふふ。冗談ですよ?」ニコッ

カロル「あっ…えと…よかった…。宣教師さまにも嫌われちゃったらひとりぼっちだもん」

宣教師「お母様もキミが嫌いになったんじゃありませんよ。きっと理由があるんです」

カロル「……そうだよね。お母さまがあんなに怒ったの、初めてかも」

宣教師「それはそれとして…じゃんっ!」つ【絵本】

カロル「えっ」

宣教師「絵本、読んであげる約束でしたよね?」ニコリ

カロル「覚えててくれたの…?」パァァ

宣教師「忘れたりしませんよ。約束からだいぶ時間が空いてしまいましたけどね?」

カロル「えへへ。うれしい」テレテレ

宣教師「…では読みますよ?」ニコニコ
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うpろだ
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