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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


181: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:45:00 ID:CB1RoyqAtc
――――――
「ふふ!今日はおいしいビスケットが焼けそうです!
村の皆さんへのお土産に作り置きしましょう!」ルンルン

修道子1「おい…あいつ村を任されたらしいぞ」

修道子2「聞いた、聞いた。なんでも司祭様の推薦だとか」

修道女「いいわよねー!司祭様のお気に入りは!あーあー!あたしも孤児だったらよかったー?」

修道子1「おいおい、やめろよ?そんなこと言ったら本人に聞こえるぞ?」

修道女「あっ!そっかー!司祭様に言い付けられるわね?こわいこわい」

修道子2「ぷっ!」

「……」ジロッ

修道子1「おい、あいつ睨んでるぞ?聞かれちゃってるよ?」

修道女「きゃー!こわーい!」

修道子2「あはははは!」

「……」

修道子1「こっち見てんじゃねーよ!みなしご!」

修道女「言いたい事があるなら言えばぁ?」

修道子2「あはははは!」

「別に…ありませんが」プイッ

修道子1「はぁ?だったら見てんなよ!」

「…申し訳ございません」ペコリ

修道子1「なにこいつ?ペコペコしちゃってバカじゃん?」

修道女「ちょっとやめてあげなよ!かわいそうじゃん?」ヘラヘラ

修道子2「あはははは!」ゲラゲラ
182: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:08:48 ID:CB1RoyqAtc
「失礼します」スタスタ

修道女「待ちなよ?」

「…なんですか」ピタッ

修道女「あんたさ?分かってんの?」ズイッ

「……?」

修道女「あんたはみなしごであたしは南の大きな町の町長の娘よ?」ズズイッ

「近いです。離れてください」

修道女「はぁ!?あんた誰に口聞いてんのよ!?」

「唾が飛んだんですけど…」

修道女「なっ…!?」

「あの…それで何が言いたいんです?」

修道女「生意気だって言ってんの!みなしごだからって同情買っちゃってさ!?
優しい司祭様の温情に付け込んで楽しようって魂胆が見え見えなのよ!!」

「そう言われましても…」

修道女「なにが悲劇の町の生き残りよ?哀れな娘?
あんな町、無くなって当然じゃない?」フンッ

「なっ…!」

修道女「あんた達もそう思うでしょ!?」

修道子1「そうそう、ホビットみたいな罪深い種族に施しなんてやるから悪いんだ」

修道子2「お前と同世代の人間はみんな笑ってるぜ?悲劇の町にはバカと物好きしかいなかったってな!」

「……ください」ボソリ
183: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:09:11 ID:ypGmimbIno
修道女「は?なによ?」

「今の言葉…取り消してください!」

修道子1「なんでだよ?ほんとのことだろ?」

修道子2「そうだよ!取り消す訳ねーじゃん!」

「……!」グッ

修道女「な、なによ…」タジッ

「……」クルッ

修道女「……?」

「」スタスタ

修道女「に、逃げるのね!?あんたにはそれがお似合いよ!」

修道子2「あはははは!」ゲラゲラ
184: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:11:36 ID:CB1RoyqAtc
――――――
「……」

ミシング「どうした…のっ!」ヒョコッ

「わあぁぁあぁあ!?」ビクビクッ

ミシング「きゃはははは!」

「な、なんですか、急に!?びっくりしましたよ!」

ミシング「だって〜…いつもこの時間になると炊事場を借りてビスケット焼いてるじゃない?
あれ味見するの楽しみなんだぁ〜?」

「要はつまみ食いですよね?」

ミシング「なによ〜?ちょっとくらい、いいでしょ?隠さないで出しなさいよ!ほら!」グイッグイッ

「ひ、引っ張らないでください!今日は作ってませんから!」

ミシング「え〜!?なんで!なんで〜!?」ガーン

「…つ、作る気分にならなかったんです!」

ミシング「そんなぁ…!もうビスケットの口になってたのにぃ〜!」

「残念でしたね。分かったらよそに行きなさい」

ミシング「あれ〜?冷た〜い?もしかして反抗期?」

「バカ言ってないであなたも自分の準備をしたらどうですか?
そろそろ布教地も決まる頃でしょう?
土地柄の下調べやお世話になる神父様への手土産なども用意したり、忙しい筈ですよ?」

ミシング「うん、まぁね。新しい教典も届けなきゃだから」タハハ

「…だったらなおさら私などに構ってる暇はないでしょう」

ミシング「いいの!こっちはこっちでやるから!」

「…いつもそう言ってギリギリになってから私に泣きつくんですから」

ミシング「うん、あてにしてるよ〜?」ニシシ

「はぁ…」
185: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:16:06 ID:CB1RoyqAtc
ミシング「…ところでさ。何かあった?」

「はい?」

ミシング「とぼける気ぃ〜?こいつ〜こいつめぇ〜?」ツンツン

「つつくのやめなさい。言いますから」

ミシング「…うん。言ってみ?」

「……」

ミシング「……」

「……」

ミシング「……?」

「やっぱりいいです。私の問題ですから」

ミシング「あたしが信用できないんだ?」

「そうじゃないですけど…」

ミシング「それならいいじゃない?こうやって話せるのもあと少しなんだから」

「……」

ミシング「…あたしね。北の都に行くことになったんだ?」

「えっ」

ミシング「遠いし、しばらく会えないと思う。だからさ、いいでしょ?
最後くらい…友達らしいことしてみたいじゃん?」

「……」

「…実は――」
186: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:19:44 ID:CB1RoyqAtc
ミシング「ふーん…村で布教するんだ?」

「はい…。司祭様の計らいで、まずは教えを説くに値する実績と経験を付けるようにと」

ミシング「おめでとう!いきなり将来の幹部候補じゃない?」

「…私が目指すのはあくまで宣教師ですから」

ミシング「変わってるよね。昔から?みんな普通は一番、位の低い宣教師なんて嫌がるよ?」

「別にいいじゃないですか。人それぞれなんですから」

ミシング「いいんだけどね。でも…あいつらに嗅ぎ付けられたのは災難だったわね」

「まったくですよ。まだ公にされてないのに…一体どこから嗅ぎ付けたんでしょうか」

ミシング「さぁねー?盗み聞きでもしてたんじゃない?」

「はぁ…」

ミシング「…なーんかさ。不安だね。この先?」

「同感です。教団の内側ですらこの有り様ですし…外の世界はどうなっているやら…」

ミシング「ま、しょうがないよね。やるっきゃないわよ!」

「そうですね。考えても仕方のないことです。それに…最初からうまくいくなんて思ってません」

ミシング「…うん。大変だと思う。でも負けたらダメ!
あたし達には神様から頂いた使命があるんだから!」ニコッ

「ふふ。あなたが言うと冗談っぽく聞こえます」クスクス

ミシング「えー?ひどーい!」プクー
187: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:27:42 ID:CB1RoyqAtc
――――――
「(ふふ。今日から私も正式な布教者として修道服に袖を通せるんですね)」スタスタ

「(布教前に司祭様が神のご加護を授けてくれますし、私もしっかり受け入れられるよう、心を落ち着かせなければ…)」

「(心残りのないように…)」カサッ

ワイワイガヤガヤ

「…広間の方からですかね。ちょっと覗いてみましょう」スタスタ

ギャーギャー

「あ、ミシング…。ちょうどいい。今のうちに渡してしまいましょう」

ミシング「直して!今すぐ!」

修道女「はぁ?なんであたしが直すのよ?」

ミシング「こんなことするのはあんた達以外にいないでしょ!?」

修道女「ねぇ、あんた知ってる?」

修道子1「いや、知らないなぁ?」

修道子2「言いがかりもいいとこだよ」

ミシング「ふざけないでよ!」

「ど、どうしたんですか?」

ミシング「あ…なんでここに…!あなた司祭様のところに行くんじゃ…!?」

「通りかかったついでに挨拶をと思いまして…」

ミシング「…それどころじゃない」

「何かあったんですか?」

修道女「見てよ、これ」

「え……あぁっ!?」

修道女「誰の仕業か知らないけどビリビリに破かれた修道服が床に投げ出されてたのよ」

「だ、誰がこんなこと…!それにこれは誰の修道服なんですか…!」

ミシング「あたしのよ…」

「えっ」
188: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:33:32 ID:ypGmimbIno
ミシング「誰かが持ち出して…引き裂いたのよ!」

修道女「それであたしらを疑った訳?バッカみたい!」

ミシング「他に誰がいるのよ!?」

「い、一度落ち着きましょう。決めつけはよくないですよ」アセアセ

修道女「そういえばあんた、ミシングと同室よね?」

「は…?」

修道女「あんたがやったんじゃないの?あたしらに濡れ衣着せようとして!」

「ち、ちが……」

修道子1「なんだよ、それ!最低じゃん!?」

修道子2「俺らに逆恨みして、こんな手の込んだことまで…しかも友達を利用したのかよ。みなしごのやりそうな事だな!」

「やめてください!私はなにも……」

修道女「みんなもそう思うでしょ!」

ザワザワ ザワザワ ヒソヒソ

「……!?」

修道女「ほらー!みんなもおんなじように思ってたのよ!犯人はあんたで決まりね?」

「なんでそうなるんですか!私がミシングを傷付けるなんてありえません!」

ミシング「……」

「ミシング…?違うんです!私はやってません!」

ミシング「…なぁに焦ってんの?あたしがあなたを疑う訳ないじゃない?」ニコッ

「……!」ホッ

ミシング「もういいよ。こんな連中、相手にしてもしょうがないし…行こう?」

「…そうしましょうか」
189: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:39:06 ID:CB1RoyqAtc
修道女「ちょっと!今のどういう意味!?」

ミシング「そのまんまの意味」

修道女「ふざ……」

ミシング「あんたさ、このお役目向いてないよ。故郷に帰った方がいいと思う」

修道女「な、なんであんたにそんなこと言われなきゃなんないのよ!?」

ミシング「だってさ…あたし達って聖職者だよ?
これから先…たくさんの人と向き合わなきゃいけないじゃん」

修道女「はぁ!?だから何よ!?」

ミシング「裕福な人から貧乏な人、どちらでもない人、すべての人と平等に接しなきゃいけないのにさ。
最初から認める気も分かり合う気もなく、自分の言いたい事ばっか押し付けるんじゃ、このお役目に就く意味がないよ」

修道女「……!」

ミシング「あたしの友達は確かにみなしごだけど…自分の生い立ちを呪ったりしてない。
むしろ今までを受け入れて、誰かに勇気を与える糧にしようとしてる」

「……ミシング」

ミシング「あんた達より、ずっとお役目に向き合ってるし、これからを意識してるよ?」

修道女「…何が言いたいのよ」

ミシング「なんにも考えてない、そもそも考える努力もしないで他人を妬んでる奴に…人を笑う資格なんてない!
ましてや聖職者に就くなんて…生まれ変わっても無理だよ!」

修道女「……!!」

「…もう行きましょうよ。はい」つ【破れた修道服】

ミシング「うん…。ありがと」パシッ
190: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:45:28 ID:ypGmimbIno
修道女「ムカつく!ムカつく!ムカつくー!!あいつら、何様のつもりよ!?」ガンッ

修道子1「お、おい…やめろよ。みんな見てるぞ」

修道女「なによ!?見てんじゃないわよ!?」

ザワザワ ザワザワ


トト「なーんかすげぇなぁ?女の争いってやつ?」

ジョー「だな。おっかねーもんだ」

トト「あーやだやだ。こんなん信者が見たらどう思うんだか?」

ジョー「積極的に寄付する気にはならねぇだろうな?」

トト「つかあの修道服、ほんとにあいつらがやったのかな?」

ジョー「知らねぇよ。俺達には関係ねぇ話だ」

トト「でもよ、俺ダガ様辺りが怪しいと思うんだよなー」

ジョー「? なんで?」

トト「実は昨日の晩…見ちゃったんだよ。お前と交代して部屋に戻る時…ダガ様がなんか服みたいの持ってうろうろしてんの」

ジョー「…気のせいだろ」

トト「えー?そうかー?」

ジョー「それにしても…噂の司祭様のお気に入り…聞いてたより、普通の娘だったな」

トト「え?ごめん、よく見てなかったわ!可愛かった?」

ジョー「まぁ…好みにもよるだろうけど、可愛いんじゃねーの?」

トト「マジかぁ…!話しかけりゃよかったー!」

ジョー「バカ言ってねぇで見張りに戻れよ。あと少ししたら交代してやっから」

トト「ちぇっ!はいはい、行きますよ。行きゃいいんでしょ?」
191: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:48:55 ID:ypGmimbIno
ミシング「あーあ!せっかく明日から憧れのシスターになれるのに…台無し!」プンプン

「どうするんですか?明日までに必要なんでしょう?」スタスタ

ミシング「別になんとかなるでしょ!あんなの事故だもん!
布教地に着いたら事情を話して、そこで新しく作ってもらうよ!」

「私から支給していただけるよう、司祭様にお願いしてみましょうか?」

ミシング「気持ちは嬉しいけど…いいや。司祭様ってケチだから、誰かのお下がりとか着たくないし」

「そうですか…」

ミシング「誰か知らないけど、なんであんなことしたんだろーね」

「……」

ミシング「はぁ…」

「大丈夫ですか?」

ミシング「うん…大丈夫。へいきへいき」

「…とてもそうは見えませんが」

ミシング「…繕っても直りそうにないなぁと思って。せっかく新品の…あたしだけの修道服、貰えたのに…」

「……」

ミシング「ま、いいんだけどね」
192: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:50:13 ID:CB1RoyqAtc
「これ…よかったら」つ【ビスケット袋】

ミシング「え!なに!?作ってくれたの!?」パァァ

「気休めにはならないかもしれませんが…」

ミシング「そんなことないよ!嬉しい!ありがとう!」ニコニコ

「ふふ。それならよかった。作った甲斐があるというものです」ニコッ

ミシング「」サクッ

ミシング「う〜ん…!これこれ!あたしの大好きな味!」

「たくさん焼いて包んでおきましたので布教地までの道中、おやつ代わりにでもしてください」

ミシング「もぉ〜〜っ!いい子なんだから!」ダキッ

「ちょ…くっつかないでくださいよ!」アセアセ

ミシング「いいじゃ〜ん!そんなにイヤなの〜!?」ギュゥゥゥ

「イヤとかじゃなくて…鬱陶しいんです!」

ミシング「素直じゃないんだから〜?」

「…あなた落ち込んでたんじゃなかったんですか?」

ミシング「」クスッ

「……?」

ミシング「ありがとう。最後まで…世話になりっぱなしだったね?」

「…こちらこそ、今までありがとうございました」ニコリ
193: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:51:42 ID:ypGmimbIno
――――――

司祭「――今日からお前を我が教団の一布教者と認め、神の子として人々に教えを説く使命を与える」

司祭「この瞬間からお前は宣教師じゃ。神の名の下に遣わされる人間として恥じぬ行いを心掛け、布教に専念するがよい」

宣教師「はい…。この身に与えられた役目、喜んで果たさせていただきます」

司祭「うむ!その意気じゃ!」

宣教師「では行って参ります。長く置いていただき、ありがとうございました」

司祭「…ほっほっほ。寂しくなるわい」
194: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:53:01 ID:CB1RoyqAtc
――――――

宣教師「……この庭園ともお別れなんですね。先達のシスターに習って世話してきた花々も立派に育ちました」

宣教師「……」

宣教師「?」

宣教師「なんでしょう…。あっちの方から声が…」

修道女「ほんっとムカつく!」スタスタ

修道女「なんなのよ!あいつ!まるであたしが全部やったみたいに言って!?」

宣教師「……」

修道女「きゃあっ!あんた、なんでいるのよ!?」

宣教師「なんでって…これから村に行くので暫く見れない庭園の花々を眺めてたんです」

修道女「あっそ!じゃあさっさと行けば!」

宣教師「…先ほどの破かれた服はホントにあなたの仕業ではないのですか?」

修道女「なによ!疑ってるの!?」

宣教師「正直、なきにしもあらず、といった感じです」

修道女「あたしじゃない!そりゃあんたは気に入らないけど、ミシングなんかなんとも思ってなかったもん!」

宣教師「……」

修道女「それをあんたとミシングが…あんな風に言うから!」

宣教師「周りから非難を浴びてる訳ですか。お気の毒に」

修道女「あんたらのせいよ!」

宣教師「普段の行いに対する報いですよ。悔い改めなさい」

修道女「……!」ムカッ
195: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:54:50 ID:CB1RoyqAtc
宣教師「では…もう会うこともないでしょうが」スッ

修道女「ま、待ちなさいよ!」

宣教師「…まだなにか?」

修道女「あたしじゃない…。本当に違うの…!」

宣教師「分かってますよ。あなたではないことぐらい?」

修道女「……え?」

宣教師「私はあなたの言葉を信じます」

修道女「本当に…?でも……」

宣教師「これまでのこともありますし、周囲から疑われるのは仕方ないでしょう?
だからこそ悔い改めて信じてもらえる人間になりなさいと言ってるんです」

修道女「……」

宣教師「みなしごの私と違ってあなたには待ってくれている家族、友達がいるでしょう?
支えがあるのだから…より前向きに生きてみなさい。
信頼を築いていく内に…誰もあなたを蔑んだりしなくなりますよ。たぶん」

修道女「…ご、めん」

宣教師「……」

修道女「あたし…あんたを誤解してた。ごめん」

宣教師「お気になさらず。同じ志を持って歩み行く者同士、わだかまりなど不要です」

修道女「……」

宣教師「では私は失礼します」スタスタ

修道女「待って!」

宣教師「はぁ…今度はなんです?」
196: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:57:47 ID:CB1RoyqAtc
修道女「あたし…っていうか、みんなだけど…その…」

宣教師「……?」

修道女「ダガ様から…聞いてたの。あんたの生い立ちとか…村で布教すること」

宣教師「ダガ様…司祭様の付き人ですか?」

修道女「うん…。あんたが司祭様の同情を誘ってよくしてもらってるとか…いろいろ」

宣教師「…それで私に嫌がらせしてたんですか」

修道女「だ、だって…ほんとに司祭様に可愛がられてたし…」

宣教師「…今さら、そんな告白は入りませんよ。これからあの方と顔を合わせにくくなるだけですから」

修道女「ち、違うの…。ミシングの修道服、破いたのは…」

宣教師「……まさか?」

修道女「」コクン

宣教師「…根拠はあるんですか?」

修道女「あたし…言われたから。昨日…あんたの部屋に入って修道服を持ってこいって」

宣教師「それから?」

修道女「神のご加護を受ける時に司祭様から頂いた修道服が無くなったら…どんな顔するか楽しみだって…」

宣教師「…そうじゃないでしょう。あなたは持ち出したのかと聞いてるんです」

修道女「やってない!さすがに断ったわよ!」

宣教師「そうですか…」
197: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 21:03:32 ID:CB1RoyqAtc
修道女「でも…さっきの見て確信した。
多分ダガ様があんたとミシングの修道服を間違えて持ち出したんだって」

宣教師「…分かっていたなら私を犯人に仕立てあげようとしなくても」

修道女「…犯人がダガ様だなんて恐ろしくて言えないし、あんたに押し付けなきゃあたしが疑われると思ったから」

宣教師「はぁ…そういうところですよ。その場しのぎの嘘や他人への配慮に欠ける言動を改めなさい?」

修道女「わ、分かってるわよ!あんたに言われなくても!」

宣教師「…私は真面目に言ってるんです」キッ

修道女「え……」

宣教師「次に会う時に直ってなかったら許しませんよ」

修道女「」ゾクッ

宣教師「間接的にとはいえ私の友達を傷付けた罪は重いですよ。
あなたが今までしてきた行いもダガのせいになどさせません。肝に銘じておくように…」

修道女「」ゴクッ

宣教師「では今度こそ失礼します」スタスタ

宣教師「(ダガ…よくもミシングを…!)」ギリッ

宣教師「(犯した罪に罰が下る時…あの方に赦しなど与えない)」

………………
198: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/22(水) 22:00:52 ID:ZVvoP18ass


宣教師「…あなたにはきちんと謝ってもらいますよ」

ダガ「てめぇいい加減にしとけよ…!」

カロル「宣教師さま…」

母「……」

宣教師「何をいい加減にするんですか?」

ダガ「あぁ…!?」

宣教師「約束したのはあなたですよね?それを守ってもらおうとしてるだけですよ?
何をどういい加減にすればいいんですか?」

ダガ「頭なら下げてやっただろうが!文句あんのか!?」

宣教師「誰も頭を下げろとは言ってません。謝りなさいと言ってるんです」

ダガ「頭を下げるってのは謝るってことじゃねぇのか!?あぁ!?」

宣教師「初耳ですね。自らの行いを悔い、誠心誠意、反省の意を示す…それが謝る事だと思ってました」

ダガ「ぬぐぐ!て、てめぇぇぇ…!」

宣教師「私は決してあなたを許しません」

ダガ「俺になんの恨みが…!?」

宣教師「心当たりがないとでも?」

ダガ「うっ…あ、ありすぎて分からねぇよ」

アリアス「…あなた、本当にバカよね」

ダガ「お前は黙ってろ…!」
199: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/22(水) 22:04:26 ID:ZVvoP18ass
宣教師「一年前のことを覚えてませんか?」

ダガ「一年前…なんの話だ?」

宣教師「私の友人の修道服を持ち出して引き裂いたのはあなたですよね?」

ダガ「……!」

宣教師「忘れたとは言わせませんよ」

ダガ「ふ…クククククク!何を意地になってるかと思えば…そんなつまらねぇことか!」

宣教師「つまらない…?」ピクッ

ダガ「誰から聞いたか知らねぇが、まだ根に持ってるとはなぁ…?確かにあれは俺がやったぜ?」

宣教師「……」

ダガ「だがよ…。あれはお前には関係ねぇ筈だろうが?
別にお前の修道服を引き裂いた訳じゃねぇ…。違うか?」

宣教師「…本当なら私の修道服を持ち去って司祭様の前で恥をかかせたかったのでしょう?」

ダガ「だとしたらなんだ?一年も前のことじゃねぇか?」

宣教師「卑劣極まりない…!」

ダガ「それを今さらになって謝れだぁ?あんなもんはとっくに終わってんだよ!
過ぎた事をぐちぐち言ってんじゃねぇ!」

アリアス「あなた…そんなことしてたの。最低…?」

ダガ「黙ってろっつってんだよ…!」

宣教師「反省する気はないのですね」

ダガ「ねぇな」

宣教師「…分かりました」
200: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/22(水) 22:11:36 ID:ZVvoP18ass
宣教師「もういいです。あなたに欠片でも良心が残ってると考えた私が愚かでした…」

ダガ「ふ……残念だったなぁ?」ニヤニヤ

宣教師「せめてもの償いとして…土下座してください」

ダガ「はぁ?」

宣教師「もちろん反省などしなくても構いませんよ?
床に這いつくばって惨めに許しを乞いなさい…。それだけで十分です」

ダガ「な、なんだぁ…!?」ピキィッ

アリアス「よかったじゃない?それで済むんだから?」

ダガ「他人事だと思いやがって…!」

宣教師「どうしました?それがあなた流の"謝罪"なのでしょう?
簡単じゃないですか。心ない形だけの所作なんですから?」

ダガ「頭を下げるだけでもムカついてしょうがねぇのに…土下座だとぉ…!?」

宣教師「…やりなさい」

ダガ「……!」

カロル「はい!はい!はーい!」パッ

シーン

ダガ「ん……?」

アリアス「……?」

宣教師「か、カロルくん?どうしたのです?手など上げて…」

カロル「いいこと思い付いたんだ!」

宣教師「いいこと、ですか?」キョトン
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名前:
sage:


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