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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
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1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


161: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:20:21 ID:KS1oVzK.WM
アリアス「経験ならあってよ?あなたと違ってね?」

宣教師「わ…私だって経験くらいあります!
あなたと違って化粧などしなくても男性が言い寄ってきますよ!?」

アリアス「へー!それは凄いわね!どんな男よ?どこの誰!?言ってごらんなさい!?」

宣教師「わ、わりと年上の人が…多いですかね」マゴマゴ

アリアス「あらぁそぉう!?」

宣教師「」ビクッ

アリアス「それって、ここに転がってる筋肉バカ!?王国の高官に就いてる贅肉だらけの変態オヤジ!?
冴えない百姓上がりの牢屋番!?うだつの上がらない優柔不断な神父!?」

宣教師「そ、それは…」

アリアス「誰よ!?誰なの!?言ってごらんなさいよ!?えぇ!?」

宣教師「……!」

カロル「マルクったら今まで寝てたの?」

マルク「わぅー…」ムニャムニャ

カロル「もう…ボクたち大変だったんだからね?」

マルク「わんっ?」

アリアス「さぁ!さぁ!言いなさいってのよ!?」

宣教師「ふぐぅ…!」ワナワナ
162: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:21:53 ID:oG4iJZ2MKc
アリアス「さぁぁ〜…言いなさいよぉぉ…?どんな男?どんな男なの?経験豊富な宣教師さん?」

宣教師「か、カロルくん…」ボソッ

カロル「へ?」

アリアス「はぁ?聞こえないのだけれど?」

宣教師「カロルくん…です!」

カロル「なにがボクなの?」キョトン

アリアス「あ、あなた…本気で言ってるの?」

宣教師「……!」カァァ

アリアス「じ、冗談よね?ホビットだし…まだ子供じゃない?」ヒクヒク

宣教師「な、な…なにか!?なにか!?」グワッ

アリアス「ひっ!い、いえ…」タジタジ

宣教師「悪いんですか!?ホビットが好きじゃ悪いんですか!相手が子供じゃダメって誰が決めました!?」

アリアス「お、落ち着いて…?ね?
ほら、なんていうか…倫理的な問題というか…暗黙の了解みたいなものでしょ?」

宣教師「し、し、知りませんよ!愛に歳の差も種族もありませんもん!いーいじゃないですか!?」

アリアス「年上に言い寄られるって……」

宣教師「言いましたが!?なんです!?選ぶのは私でしょう!?」

アリアス「(重症…いや、もう手遅れ…っていうかあたし何してるんだっけ?)」

カロル「ねぇねぇ。なんの話?」グイッグイッ

宣教師「か、きゃ、キャロルくん!?いたんですかっ!?」

カロル「え?ずっと一緒にいたじゃない?」

宣教師「わた…わた…私…」モジモジ

アリアス「分からないなら分からないままでいた方がいいわよ…」ゲッソリ

カロル「なんで?気になるよ!」

宣教師「」プシュー

アリアス「追及しないであげて…。これ以上は壊れるわ…」
163: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:23:36 ID:oG4iJZ2MKc
ダガ「う…ぐ…」クラッ

ダガ「んおぅ…?」ガバッ

カロル「ねぇ!教えてよー!」

宣教師「ちがう…決して浮わついた感情ではなく…そう!これは母性です!」

アリアス「もうやめて…私が悪かったわよ…」

マルク「」ウトウト

ダガ「どうなってやがる…。おい!」

宣教師「」ブツブツ

カロル「わっ!」ササッ

アリアス「…そうそう。私の背中に隠れてなさい。彼女が正気を取り戻すまで」

ダガ「おい!?」

カロル「お、おじさま…おじさまが起きたよ!?」ビクビク

マルク「」グースカピー

アリアス「…床で寝てんじゃないわよ。はしたない」

ダガ「てめぇに投げられたんだろが!?」
164: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:24:54 ID:oG4iJZ2MKc
ダガ「つつ…!あぁ腰がいてぇ…誰かさんのせいでよ?」ググッ

アリアス「あっそ」

ダガ「ぐぬぬ!」

宣教師「…き、気を取り直して」フラッ

アリアス「あなた…大丈夫?」

宣教師「ご心配には及びません…。少し取り乱しただけですから…」

アリアス「いや、だいぶ取り乱してたけど……私も忘れるから、安心していいのよ?」

宣教師「私は今まであなたを誤解してた気がします…」ホロリ

ダガ「あーうるせぇ!?意味がわかんねぇんだよ!!さっさとビゴパノチェスを寄越しやがれ!?」

カロル「ビッポンポンでもなんでもマルクは渡さないよ!」

ダガ「ビゴパノチェスだっつってんだ!いい加減覚えろ!?」

宣教師「それでしたらさっき言った条件を呑んでもらいますよ」

ダガ「ふ…負けたら三つの約束を守れってか。言うだけ言ってみろよ?」

宣教師「一つ目はカロルくんと私に謝ること」

ダガ「なにぃ…?」

アリアス「お安いご用よ」

宣教師「ありがとうございます」

ダガ「なんでてめぇが決める!?」

アリアス「…関係ないからどうでもいいのよね」

ダガ「てめぇはどっちの味方だ…!?」
165: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:26:11 ID:oG4iJZ2MKc
宣教師「二つ目は二度とホビットを見下さないと誓っていただきます」

ダガ「んだとぉ…!?」

アリアス「三つ目は?」

ダガ「おい!?」

アリアス「別にいいじゃない。二つとも適当に取り繕えば済む話でしょ…」コショコショ

ダガ「ふ……それもそうか」ニヤリ

宣教師「三つ目は…彼のお母様に会わせてください」

ダガ「……」

アリアス「……!?」

カロル「お母さまに会えるの!?」パァァ

宣教師「連れてきているんですよね?王国に……」

ダガ「あぁ、いいぜ…。会わせてやるよ」

アリアス「ちょっと…!」

宣教師「一度口にしたからには…守ってもらいますよ」

カロル「……!」

ダガ「ククク…!」

アリアス「ダガ…アレはいざという時の人質でしょ…?司祭様に言われたじゃないの…!?」

ダガ「うるせぇよ…。勝算はある…」

アリアス「勝算…?」
166: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:27:30 ID:oG4iJZ2MKc
宣教師「では改めて…マルクくんに呼び掛けて先に駆け寄られた方が飼い主とします!いいですね?」

ダガ「おう…」

カロル「(絶対に勝たなくちゃ…お母さまにもマルクにも会えなくなっちゃう!)」グッ

宣教師「では…どうぞ!」

マルク「クゥン?」チンプンカンプン

カロル「マル……」

ダガ「ビゴパノチェス!!」

マルク「……」

アリアス「(なるほど…声量を上回って相手の声を掻き消す作戦ね?)」

カロル「マ……」

ダガ「ビゴパノチェース!!」

カロル「(どうしよう…!これじゃマルクに届かない…!)」

ダガ「(鍛えに鍛え上げた俺の体とホビットの貧相な体じゃ…声量そのものが段違いなんだよ…!)」

マルク「……」

アリアス「(とても有効な作戦だけれど一つ問題があるとすれば……)」

ダガ「ビゴパノチェスー!!」

マルク「?」シーン

アリアス「(肝心の犬がピンときてないってとこだけね)」
167: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:28:52 ID:oG4iJZ2MKc
ダガ「な、なぜだ…!なぜこんだけ呼び掛けてもやって来ねぇ?」

アリアス「ダガ!名前を……」

宣教師「参加者以外の方は発言を控えてください!!」

アリアス「くっ!」

カロル「マルクっ!」

マルク「あんっ!」タタタッ

ダガ「はっ…!?」

アリアス「まずい…!」

カロル「おいで!マルク!」

ダガ「そうはいくかぁぁぁ!?」つ【ビーフジャーキー】

アリアス「あれは…!?」

宣教師「(マルクくんの大好物…!)」

マルク「」ピタッ

カロル「マルク!」

ダガ「ふ…!どうだ、ビゴパノチェスよ!お前が一番好きなエサだぜ!」ブラブラ

マルク「……」
168: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:29:55 ID:oG4iJZ2MKc
カロル「マルク!そっちに行っちゃダメ!」

ダガ「さぁ来い!ビゴパノチェス!」

マルク「……」

宣教師「エサで釣るなんて反則ですよ!」

アリアス「あらぁ?そんなの最初に言わなかったでしょ?後から規則を付ける方が反則よ!」

宣教師「くっ…!」

カロル「マルク…ウソだよね?ボクたち…ともだちじゃない?」

マルク「……」

ダガ「ぎゃははは!!獣の情に訴えてどうすんだ?所詮は本能でしか生きられねぇんだよぉ!」

カロル「そんなこと…ないよ。マルクとボクはずっと一緒だったもの」

ダガ「だからなんだ!?そんなのてめぇ以外にエサくれる奴がいなかったからだろうが!!」

カロル「そうなの?キミは…ボクがごはんをあげるからそばにいてくれたの?」

マルク「……」

ダガ「はっきりさせてやるぜ!喰らえ!!」つ【ビーフジャーキー×2】

マルク「」タタタッ

カロル「!」

ダガ「そうだ!こっちに……」

ボフッ ドサッ
169: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:31:58 ID:oG4iJZ2MKc
ダガ「なん…だと?」

アリアス「そ、そんなバカな!」

宣教師「決まりましたね。勝敗は…言うまでもないでしょう」

マルク「はっ!はっ!」ペロペロ

カロル「ありがとう…。ありがとう…」ブワァッ

宣教師「……」ニコッ

ダガ「あ、あぁぁ」ガクッ

アリアス「(種族を越えた友情が……獣の本能に勝った)」

カロル「ボク…ボク…信じてたよ!マルクなら来てくれるって!」ギュゥゥ

マルク「」ゲプッ

宣教師「……ん?」

ダガ「…今、ゲップしたよな」

アリアス「ダガ…あなたまさか…」

ダガ「しまったぁぁぁ!!先にエサをやりすぎたぁぁぁ!!!」

アリアス「バカ!バカ!本当にバカね!?」ゲシゲシ

カロル「ずーっとずーっとともだちだからね!」ギュゥゥ

マルク「わんっ!」シッポフリフリ

宣教師「……」クスッ

宣教師「(たとえお腹が空いてても…マルクくんはきっとカロルくんを選びましたよ)」

ダガ「チクショウ…!チクショウ…!」

カロル「おじさま!」

ダガ「あぁ!?」

カロル「約束だよ!お母さまに会わせて!」

ダガ「あ…が…ぎぎぎ…!」ワナワナ

アリアス「あなたが無計画に約束なんてするから!あたしまで司祭様に怒られるじゃないの!?」ゲシゲシ

マルク「わぅーん!」ピョンッ
170: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 18:54:19 ID:9R5UfaPtTc
―――教会(懺悔室)―――
シスター「……」ダラダラ

シスター「(あの人たち、さっきから何してるのかしら…)」ダラダラ

町民「向こうから声がしますね。喧嘩でもしてるのかな」

シスター「ごめんなさい…!ごめんなさい…!勇気を出して告白しに来ていただいたのに…」ペコペコ

町民「いや、いいんですけどね。たいした悩みじゃないんで」

シスター「あ…懺悔したい旨は?」

町民「いやー家内の誕生日を忘れていて何も用意しなかったら、しこたま怒られましてね。教会に行って懺悔してこいと」タハハ

シスター「そ、そうですか…。奥様にしてみれば大切な行事ですもんね?」

町民「どうしたらいいんですかね。怒っちゃって家に入れてもらえないんですよ」

シスター「素直に反省して謝りましょう。愛し合って結ばれたんですから…ちゃんと謝れば許してもらえる筈です」

町民「いやー…そういうのいいんでサクッと解決できませんかね」

シスター「え、えぇ…?」

町民「とりあえず一緒に家内に謝ってもらえません?
よその人が来ればおとなしくなると思うんですよねぇ。あいつ外ヅラだけはいいんで」

シスター「(うぅ…なんなの、この人?ここはお悩み相談所じゃないのよ?
過った行いや心のつかえを話して悔い改める場所。それなのに反省する気が微塵も感じられない…)」

町民「どうしました?」

シスター「あ、なんでも…申し訳ないですが教会を空けられないので一緒に謝りに行くというのはちょっと…」

町民「えー!そんな殺生な!わざわざ足運んだ意味がないじゃないですか?」

シスター「す、すみません」

シスター「(神官ならこういう時にどうするのかな…)」

コツンコツン コツンコツン

シスター「(廊下から靴音がする…。またあの人たち…?はぁ…)」
171: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 18:58:45 ID:9R5UfaPtTc
――――――

宣教師「(まさか隣の部屋にいたとは…)」

カロル「……!」フルフル

宣教師「よかったですね、カロルくん!」

マルク「わんっ!わんっ!」

母「」スヤスヤ

宣教師「? 前より痩せて…衰弱しているような…」

アリアス「何度か目を覚ましたけど意識が朦朧としてるみたいで…何も口にしてないのよ」

宣教師「食事を与えていないんですか!?」

アリアス「少しくらい平気よ。ホビットは生命力が強いから…」

宣教師「そういう問題では…!」

カロル「ボクがなんとかするよ」

宣教師「傷だけでなく病も癒せるのですか?」

カロル「わかんないけど…やってみる。お母さまの為だもの。なんだってするよ!」

宣教師「そうですね。キミの力ならきっと……」

アリアス「(あぁ…どう言い訳しましょ…)」

ダガ「本当に会わせてどうすんだ…。約束なんざ破っちまえば…!」

アリアス「神官から言われてるのよ…。この子との約束は些細なものでも必ず守るようにとね…」

ダガ「あぁ?なんでだよ?」

アリアス「…信用を得る為よ。神官は言うことを聞かせるんじゃなく、あくまで協力させるつもりでいるの」

ダガ「な、なにぃ…!じゃあ俺は本気であいつらに頭を下げなきゃいけねぇのか!?」

アリアス「そんなのどうでもいいのよ…!このうすらバカ…!」
172: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:01:49 ID:9R5UfaPtTc
カロル「お母さま…ボクだよ。起きて?」ユサユサ

母「」フワッ

母「……」パチッ

カロル「やった…!」パァァ

宣教師「(改めて驚かされますね…。まるで最初から何事もなかったかのように…)」

母「坊や…?坊やなの?」パチクリ

カロル「うん、そうだよ?」

母「よく顔を見せて…?」

カロル「…はい?よく見て?」スッ

母「あぁ…坊や。あたしのかわいい坊や…。ホントにあなたなのね!」ピトッ ペタペタ

カロル「あはは…そんなに触ったらくすぐったいよ?」テレテレ

母「ごめんなさい…。寂しかったでしょう?怖かったでしょう?
あたしが守ってあげなきゃいけないのに…本当にごめんなさいね…!」ダキッ

カロル「ううん、いいんだ。こうしてお母さまに会えたから…」ギュッ


宣教師「ふふ」ニコニコ

マルク「クゥン…」シュン

宣教師「おや、マルクくん。寂しいんですか?」

マルク「わんっ!」

宣教師「そっとしてあげましょうよ。親子の絆とは特別なモノ。
キミも私も遠く及ばないほど強い繋がりを共有しているんです」

マルク「……わふんっ」

宣教師「ふしぎな気持ちになりますね…。
こんなにも近くにいるのに…二人との距離は彼方に感じます」
173: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:05:30 ID:WsKbgia9TU
カロル「お母さま?」

母「なーに?」ナデナデ

カロル「えへへ」ニコニコ

母「もう…どうしたの?」

カロル「呼んでみただけ?」

母「まぁ?」

カロル「ねぇ、お母さま」

母「はいはい。また呼んでみただけでしょ?」クスッ

カロル「なんでわかったの?」

母「坊やのことならなんでもお見通しよ?だってあたしは……」

母&カロル「あなたの(ボクの)母親だもの」ハモリ

母「あら?」

カロル「ふふふ!ボクだってお見通しなんだからね!」

母「まぁ?」クスクス


宣教師「……これはさすがに蚊帳の外過ぎじゃありませんかね?」

マルク「あんっ!」

宣教師「た、確かにそっとしましょうと言ったのは私ですが…二人の世界に入りすぎな気が…」

マルク「」ジトー

宣教師「ごめんなさい…」
174: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:07:11 ID:9R5UfaPtTc
母「……」シュン

カロル「……!」カァァ

宣教師「あ、あの…いいんですよ?き、気にしてませんから…ね?」アセアセ

マルク「わんっ!わんっ!」コクコク

母「ごめんなさい…あたしったら宣教師様に気付かないなんて…」シュン

カロル「……」シュン

宣教師「いえいえ!本当に大丈夫ですから!」

マルク「あんっ!」コクコクコクコク


ダガ「おい……」

アリアス「…なによ?」

ダガ「俺はあんな奴らに頭を下げなきゃなんねぇのか…」

アリアス「下げなさいよ。全部あなたの責任じゃない?」

ダガ「ぐっ……」
175: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:09:10 ID:WsKbgia9TU
宣教師「さて」クルッ

ダガ「」ビクッ

宣教師「約束、覚えてますよね?」ニコッ

ダガ「ぐっ…!」

母「あら…たしか…?」

ダガ「な、なんだよ…」

母「…その節はどうもお世話になりました?」ニッコリ

ダガ「……だ、黙れ!言うんじゃねぇ!」

宣教師「…私たちに謝りなさい」

ダガ「う……」プルプル

ダガ「こっ…このぉ…!」ギリッ

母「なにかあったの?」

カロル「ボクと勝負したんだ。負けたらお母さまに会わせるって約束で!」

母「まぁ?坊やが勝ったの!?」

カロル「うん!マルクのおかげだけどね!」

ダガ「うるせぇ!!あんなもんはまぐれだ!?腹さえ空かしてりゃ…!」

カロル「違うよ。友達だからだもん!ね?」

マルク「あぅん」コクン

母「へぇ…。なんだか信じられないわ。坊やが勝負事をするなんて…」

宣教師「いいから謝ってください。見苦しいですよ?」

ダガ「ぬぐ…ぐぅ…!」ワナワナ
176: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:12:58 ID:9R5UfaPtTc
宣教師「約束したんですからケジメは付けてもらいます」

ダガ「な、なんだとぉ…」ギロッ

母「…無理に謝らせなくてもいいんじゃないですか?」

宣教師「いいえ。この方は何度でも同じ轍を踏むでしょう。
その要因はあなた方や私を見下しているからに他なりません」

ダガ「っ…!」

宣教師「この先も種族や力の差など、あれこれと理由を付けて絡んできますよ。
こういう人は一度、強引にでも分からせた方がいいんです」

母「そ、そう…?」

ダガ「ぎぎ…ぎ…!」ギリギリ

アリアス「早くしたら?小娘の意思は固いわよ?」

ダガ「チクショウ…!なんで俺がホビットと…よりによっててめぇなんぞに…!」

宣教師「……いいから謝りなさい」

ダガ「……!!」ググッ

ダガ「わ、わる…か…た」ヒクヒク
177: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:18:03 ID:WsKbgia9TU
ダガ「…これで満足だろ。チクショウ…」

宣教師「それが人に謝る態度ですか?」

ダガ「あ…?」

宣教師「それが人に謝る態度か、と聞いてるんです」

ダガ「お、おい…」

カロル「宣教師さま…?」

母「その辺にした方が…?本人も十分反省してるみたいですし…?」

宣教師「どこがですか?少なくとも私には反省してるようには見えませんが?」

ダガ「調子に……」

宣教師「」キッ

ダガ「」ビクッ

宣教師「ちゃんと謝りなさい!心を込めて!」

ダガ「……!?」ピキピキ

カロル「ねぇ、やっぱり一回落ち着こうよ。ちょっと変だよ?」

母「そうね…。坊やの言う通りかもしれないわ。今のあなたは冷静じゃないもの」

宣教師「……」
178: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:20:31 ID:WsKbgia9TU
〜〜〜回想(一年前)〜〜〜

???「だーれだ?」ピトッ

「…私にこんなマネをするのはあなたしかいないでしょう。ミシング?」

ミシング「てへっ!分かっちゃった?」テヘペロ

「そのつもりでやってるのでは?」

ミシング「まぁね〜!今日も教典を読んでるの?」

「もうすぐ宣教師として布教に励めますからね。今の内に伝えるべき項目を覚えておこうと思いまして」

ミシング「…ほんと勤勉だよね。あなたも泥臭い宣教師なんかじゃなくて私みたいにシスターになればいいのに?」

「私はこの目で世界を見て、旅の中で巡り会う人達に教えを授けたいのです」

ミシング「ふーん…頑張ってね!」

「はい。ありがとうございます」ニコリ
179: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:22:41 ID:9R5UfaPtTc
――――――
司祭「ほっほっほ!立派になったのう?時の流れはかくも早いものか」

「いえ、私などまだまだ…」

司祭「いやいや、大したもんじゃ。ここ10年でお前さんはずば抜けて成長しおった!
今回の試験など数いる修道子の中でも満点を叩き出したのはお前だけじゃぞ?」

「そんな…偶然ですよ」

司祭「これならわざわざ旅に出ずともよいかもしれんな?」

「え?」

司祭「どうじゃ?村で布教してみる気はないか?」

「村…ですか?」

司祭「うむ!お前さんになら任せてもよいと思っておる!
ちょうど布教を行っていた神父が病に伏してのう。休養を申し出とるんじゃ」

「身に余る光栄ですが…出来れば私は旅の中で布教したいと考えております…」

司祭「…なぜじゃ?普通なら喜ぶべきじゃろうに?
多くの者は宣教師として辛い旅を強いられ、やっと神父として小さいながらも一つの地を任される。
それから長い教えの中で多大なる功績を残し、貢献した者のみが司教にまで上り詰めるんじゃ!
お前にしてみれば、司教に駆け上がるまたとない好機ではないか?」

「…でしたらなおのこと私は辞退させていただきます。まだ何も貢献しておりませんし実績もありません。
順当な形で一歩ずつ進んでいけるよう、邁進していく所存です」

司祭「変わっとるのう?これだけよい話を断る必要がどこにある?」

「お気持ちだけありがたく頂戴致します」

司祭「むぅ…!お前さんは一度こうと決めたら頑として曲げんからのう?
しかたあるまい!そこまで言うならわしもすっぱり諦めるとしよう!」

「…では宣教師として旅に出ていいのですね?」

司祭「いや待て。旅というのは考えるとするとでは全く異なる。
想像をたやすく越える険しい試練が待っておるぞ?」

「…やはり司祭様は私を認めてくださってないのですね」シュン

司祭「な、なぜそうなる?わしはお前が心配でならんのじゃ!」

「…たとえ司祭様の言われるままに司教になったとしても誰も認めてはくれませんよ。
今まで通り、周りから贔屓にされていると囁かれるに決まってます」

司祭「ふむ…。それもそうじゃな…」
180: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:29:17 ID:CB1RoyqAtc
「それに…私は孤児です。共に修行する皆の中で私だけが…」

司祭「だからなんじゃ?」

「他の皆は帰る場所もあり、身分のある人もいます…。中には私を快く思わない人がいるのも知ってます…。ですから私は一人で旅を…」

司祭「やっかましいぃぃぃぃい!!!!」

「」ビクッ

司祭「孤児だからといって関係あるか!世界は広い!孤児など溢れすぎて探さんでも目に付くわ!」

「は、はい。ですから私はこの足で、目で…世界を見たいのです!多くの人々が痛みを抱えたまま忘れ去られてる…そんな人々の存在を知りたいのです!」

司祭「……」

「私は幸いにも司祭様に手を差し伸べられて救われました。しかし多くは置き去りにされたまま…通わせる手を求めてるに違いありません」

司祭「…無情に思えるかもしれんが…」

「分かってます!全ての人を救えるとは思いません!
しかし…せめてこちらから歩み寄る努力はすべきではないでしょうか?」

司祭「……」

「馬鹿げてるのは承知の上です!どうか旅に出る許しを頂けませんか…!?」

司祭「ふーむ…!」

「お願いします…!」

司祭「よかろう?かわいい子には旅をさせろと言う先人のことわざもある。
お前さんがまことに望むなら、それもまた一つの道か」

「司祭様…!」パァァ

司祭「ただし今すぐにとはいかんぞ?村での布教はしてもらう」

「は…?」

司祭「人に教えを授けるのは容易ではない。まずは村で学ぶのじゃ。それからでも遅くはあるまい?」

「はい……」シュン

司祭「…お前さんが村人の信頼を得て布教をまっとう出来た暁には正式に宣教師として旅に出るのを許そう」

「……!」

司祭「しっかり布教に励むんじゃぞ!よいな?」

「お任せください!立派に務めあげてみせます!」
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