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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


173: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:05:30 ID:WsKbgia9TU
カロル「お母さま?」

母「なーに?」ナデナデ

カロル「えへへ」ニコニコ

母「もう…どうしたの?」

カロル「呼んでみただけ?」

母「まぁ?」

カロル「ねぇ、お母さま」

母「はいはい。また呼んでみただけでしょ?」クスッ

カロル「なんでわかったの?」

母「坊やのことならなんでもお見通しよ?だってあたしは……」

母&カロル「あなたの(ボクの)母親だもの」ハモリ

母「あら?」

カロル「ふふふ!ボクだってお見通しなんだからね!」

母「まぁ?」クスクス


宣教師「……これはさすがに蚊帳の外過ぎじゃありませんかね?」

マルク「あんっ!」

宣教師「た、確かにそっとしましょうと言ったのは私ですが…二人の世界に入りすぎな気が…」

マルク「」ジトー

宣教師「ごめんなさい…」
174: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:07:11 ID:9R5UfaPtTc
母「……」シュン

カロル「……!」カァァ

宣教師「あ、あの…いいんですよ?き、気にしてませんから…ね?」アセアセ

マルク「わんっ!わんっ!」コクコク

母「ごめんなさい…あたしったら宣教師様に気付かないなんて…」シュン

カロル「……」シュン

宣教師「いえいえ!本当に大丈夫ですから!」

マルク「あんっ!」コクコクコクコク


ダガ「おい……」

アリアス「…なによ?」

ダガ「俺はあんな奴らに頭を下げなきゃなんねぇのか…」

アリアス「下げなさいよ。全部あなたの責任じゃない?」

ダガ「ぐっ……」
175: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:09:10 ID:WsKbgia9TU
宣教師「さて」クルッ

ダガ「」ビクッ

宣教師「約束、覚えてますよね?」ニコッ

ダガ「ぐっ…!」

母「あら…たしか…?」

ダガ「な、なんだよ…」

母「…その節はどうもお世話になりました?」ニッコリ

ダガ「……だ、黙れ!言うんじゃねぇ!」

宣教師「…私たちに謝りなさい」

ダガ「う……」プルプル

ダガ「こっ…このぉ…!」ギリッ

母「なにかあったの?」

カロル「ボクと勝負したんだ。負けたらお母さまに会わせるって約束で!」

母「まぁ?坊やが勝ったの!?」

カロル「うん!マルクのおかげだけどね!」

ダガ「うるせぇ!!あんなもんはまぐれだ!?腹さえ空かしてりゃ…!」

カロル「違うよ。友達だからだもん!ね?」

マルク「あぅん」コクン

母「へぇ…。なんだか信じられないわ。坊やが勝負事をするなんて…」

宣教師「いいから謝ってください。見苦しいですよ?」

ダガ「ぬぐ…ぐぅ…!」ワナワナ
176: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:12:58 ID:9R5UfaPtTc
宣教師「約束したんですからケジメは付けてもらいます」

ダガ「な、なんだとぉ…」ギロッ

母「…無理に謝らせなくてもいいんじゃないですか?」

宣教師「いいえ。この方は何度でも同じ轍を踏むでしょう。
その要因はあなた方や私を見下しているからに他なりません」

ダガ「っ…!」

宣教師「この先も種族や力の差など、あれこれと理由を付けて絡んできますよ。
こういう人は一度、強引にでも分からせた方がいいんです」

母「そ、そう…?」

ダガ「ぎぎ…ぎ…!」ギリギリ

アリアス「早くしたら?小娘の意思は固いわよ?」

ダガ「チクショウ…!なんで俺がホビットと…よりによっててめぇなんぞに…!」

宣教師「……いいから謝りなさい」

ダガ「……!!」ググッ

ダガ「わ、わる…か…た」ヒクヒク
177: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:18:03 ID:WsKbgia9TU
ダガ「…これで満足だろ。チクショウ…」

宣教師「それが人に謝る態度ですか?」

ダガ「あ…?」

宣教師「それが人に謝る態度か、と聞いてるんです」

ダガ「お、おい…」

カロル「宣教師さま…?」

母「その辺にした方が…?本人も十分反省してるみたいですし…?」

宣教師「どこがですか?少なくとも私には反省してるようには見えませんが?」

ダガ「調子に……」

宣教師「」キッ

ダガ「」ビクッ

宣教師「ちゃんと謝りなさい!心を込めて!」

ダガ「……!?」ピキピキ

カロル「ねぇ、やっぱり一回落ち着こうよ。ちょっと変だよ?」

母「そうね…。坊やの言う通りかもしれないわ。今のあなたは冷静じゃないもの」

宣教師「……」
178: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:20:31 ID:WsKbgia9TU
〜〜〜回想(一年前)〜〜〜

???「だーれだ?」ピトッ

「…私にこんなマネをするのはあなたしかいないでしょう。ミシング?」

ミシング「てへっ!分かっちゃった?」テヘペロ

「そのつもりでやってるのでは?」

ミシング「まぁね〜!今日も教典を読んでるの?」

「もうすぐ宣教師として布教に励めますからね。今の内に伝えるべき項目を覚えておこうと思いまして」

ミシング「…ほんと勤勉だよね。あなたも泥臭い宣教師なんかじゃなくて私みたいにシスターになればいいのに?」

「私はこの目で世界を見て、旅の中で巡り会う人達に教えを授けたいのです」

ミシング「ふーん…頑張ってね!」

「はい。ありがとうございます」ニコリ
179: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:22:41 ID:9R5UfaPtTc
――――――
司祭「ほっほっほ!立派になったのう?時の流れはかくも早いものか」

「いえ、私などまだまだ…」

司祭「いやいや、大したもんじゃ。ここ10年でお前さんはずば抜けて成長しおった!
今回の試験など数いる修道子の中でも満点を叩き出したのはお前だけじゃぞ?」

「そんな…偶然ですよ」

司祭「これならわざわざ旅に出ずともよいかもしれんな?」

「え?」

司祭「どうじゃ?村で布教してみる気はないか?」

「村…ですか?」

司祭「うむ!お前さんになら任せてもよいと思っておる!
ちょうど布教を行っていた神父が病に伏してのう。休養を申し出とるんじゃ」

「身に余る光栄ですが…出来れば私は旅の中で布教したいと考えております…」

司祭「…なぜじゃ?普通なら喜ぶべきじゃろうに?
多くの者は宣教師として辛い旅を強いられ、やっと神父として小さいながらも一つの地を任される。
それから長い教えの中で多大なる功績を残し、貢献した者のみが司教にまで上り詰めるんじゃ!
お前にしてみれば、司教に駆け上がるまたとない好機ではないか?」

「…でしたらなおのこと私は辞退させていただきます。まだ何も貢献しておりませんし実績もありません。
順当な形で一歩ずつ進んでいけるよう、邁進していく所存です」

司祭「変わっとるのう?これだけよい話を断る必要がどこにある?」

「お気持ちだけありがたく頂戴致します」

司祭「むぅ…!お前さんは一度こうと決めたら頑として曲げんからのう?
しかたあるまい!そこまで言うならわしもすっぱり諦めるとしよう!」

「…では宣教師として旅に出ていいのですね?」

司祭「いや待て。旅というのは考えるとするとでは全く異なる。
想像をたやすく越える険しい試練が待っておるぞ?」

「…やはり司祭様は私を認めてくださってないのですね」シュン

司祭「な、なぜそうなる?わしはお前が心配でならんのじゃ!」

「…たとえ司祭様の言われるままに司教になったとしても誰も認めてはくれませんよ。
今まで通り、周りから贔屓にされていると囁かれるに決まってます」

司祭「ふむ…。それもそうじゃな…」
180: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:29:17 ID:CB1RoyqAtc
「それに…私は孤児です。共に修行する皆の中で私だけが…」

司祭「だからなんじゃ?」

「他の皆は帰る場所もあり、身分のある人もいます…。中には私を快く思わない人がいるのも知ってます…。ですから私は一人で旅を…」

司祭「やっかましいぃぃぃぃい!!!!」

「」ビクッ

司祭「孤児だからといって関係あるか!世界は広い!孤児など溢れすぎて探さんでも目に付くわ!」

「は、はい。ですから私はこの足で、目で…世界を見たいのです!多くの人々が痛みを抱えたまま忘れ去られてる…そんな人々の存在を知りたいのです!」

司祭「……」

「私は幸いにも司祭様に手を差し伸べられて救われました。しかし多くは置き去りにされたまま…通わせる手を求めてるに違いありません」

司祭「…無情に思えるかもしれんが…」

「分かってます!全ての人を救えるとは思いません!
しかし…せめてこちらから歩み寄る努力はすべきではないでしょうか?」

司祭「……」

「馬鹿げてるのは承知の上です!どうか旅に出る許しを頂けませんか…!?」

司祭「ふーむ…!」

「お願いします…!」

司祭「よかろう?かわいい子には旅をさせろと言う先人のことわざもある。
お前さんがまことに望むなら、それもまた一つの道か」

「司祭様…!」パァァ

司祭「ただし今すぐにとはいかんぞ?村での布教はしてもらう」

「は…?」

司祭「人に教えを授けるのは容易ではない。まずは村で学ぶのじゃ。それからでも遅くはあるまい?」

「はい……」シュン

司祭「…お前さんが村人の信頼を得て布教をまっとう出来た暁には正式に宣教師として旅に出るのを許そう」

「……!」

司祭「しっかり布教に励むんじゃぞ!よいな?」

「お任せください!立派に務めあげてみせます!」
181: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:45:00 ID:CB1RoyqAtc
――――――
「ふふ!今日はおいしいビスケットが焼けそうです!
村の皆さんへのお土産に作り置きしましょう!」ルンルン

修道子1「おい…あいつ村を任されたらしいぞ」

修道子2「聞いた、聞いた。なんでも司祭様の推薦だとか」

修道女「いいわよねー!司祭様のお気に入りは!あーあー!あたしも孤児だったらよかったー?」

修道子1「おいおい、やめろよ?そんなこと言ったら本人に聞こえるぞ?」

修道女「あっ!そっかー!司祭様に言い付けられるわね?こわいこわい」

修道子2「ぷっ!」

「……」ジロッ

修道子1「おい、あいつ睨んでるぞ?聞かれちゃってるよ?」

修道女「きゃー!こわーい!」

修道子2「あはははは!」

「……」

修道子1「こっち見てんじゃねーよ!みなしご!」

修道女「言いたい事があるなら言えばぁ?」

修道子2「あはははは!」

「別に…ありませんが」プイッ

修道子1「はぁ?だったら見てんなよ!」

「…申し訳ございません」ペコリ

修道子1「なにこいつ?ペコペコしちゃってバカじゃん?」

修道女「ちょっとやめてあげなよ!かわいそうじゃん?」ヘラヘラ

修道子2「あはははは!」ゲラゲラ
182: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:08:48 ID:CB1RoyqAtc
「失礼します」スタスタ

修道女「待ちなよ?」

「…なんですか」ピタッ

修道女「あんたさ?分かってんの?」ズイッ

「……?」

修道女「あんたはみなしごであたしは南の大きな町の町長の娘よ?」ズズイッ

「近いです。離れてください」

修道女「はぁ!?あんた誰に口聞いてんのよ!?」

「唾が飛んだんですけど…」

修道女「なっ…!?」

「あの…それで何が言いたいんです?」

修道女「生意気だって言ってんの!みなしごだからって同情買っちゃってさ!?
優しい司祭様の温情に付け込んで楽しようって魂胆が見え見えなのよ!!」

「そう言われましても…」

修道女「なにが悲劇の町の生き残りよ?哀れな娘?
あんな町、無くなって当然じゃない?」フンッ

「なっ…!」

修道女「あんた達もそう思うでしょ!?」

修道子1「そうそう、ホビットみたいな罪深い種族に施しなんてやるから悪いんだ」

修道子2「お前と同世代の人間はみんな笑ってるぜ?悲劇の町にはバカと物好きしかいなかったってな!」

「……ください」ボソリ
183: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:09:11 ID:ypGmimbIno
修道女「は?なによ?」

「今の言葉…取り消してください!」

修道子1「なんでだよ?ほんとのことだろ?」

修道子2「そうだよ!取り消す訳ねーじゃん!」

「……!」グッ

修道女「な、なによ…」タジッ

「……」クルッ

修道女「……?」

「」スタスタ

修道女「に、逃げるのね!?あんたにはそれがお似合いよ!」

修道子2「あはははは!」ゲラゲラ
184: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:11:36 ID:CB1RoyqAtc
――――――
「……」

ミシング「どうした…のっ!」ヒョコッ

「わあぁぁあぁあ!?」ビクビクッ

ミシング「きゃはははは!」

「な、なんですか、急に!?びっくりしましたよ!」

ミシング「だって〜…いつもこの時間になると炊事場を借りてビスケット焼いてるじゃない?
あれ味見するの楽しみなんだぁ〜?」

「要はつまみ食いですよね?」

ミシング「なによ〜?ちょっとくらい、いいでしょ?隠さないで出しなさいよ!ほら!」グイッグイッ

「ひ、引っ張らないでください!今日は作ってませんから!」

ミシング「え〜!?なんで!なんで〜!?」ガーン

「…つ、作る気分にならなかったんです!」

ミシング「そんなぁ…!もうビスケットの口になってたのにぃ〜!」

「残念でしたね。分かったらよそに行きなさい」

ミシング「あれ〜?冷た〜い?もしかして反抗期?」

「バカ言ってないであなたも自分の準備をしたらどうですか?
そろそろ布教地も決まる頃でしょう?
土地柄の下調べやお世話になる神父様への手土産なども用意したり、忙しい筈ですよ?」

ミシング「うん、まぁね。新しい教典も届けなきゃだから」タハハ

「…だったらなおさら私などに構ってる暇はないでしょう」

ミシング「いいの!こっちはこっちでやるから!」

「…いつもそう言ってギリギリになってから私に泣きつくんですから」

ミシング「うん、あてにしてるよ〜?」ニシシ

「はぁ…」
185: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:16:06 ID:CB1RoyqAtc
ミシング「…ところでさ。何かあった?」

「はい?」

ミシング「とぼける気ぃ〜?こいつ〜こいつめぇ〜?」ツンツン

「つつくのやめなさい。言いますから」

ミシング「…うん。言ってみ?」

「……」

ミシング「……」

「……」

ミシング「……?」

「やっぱりいいです。私の問題ですから」

ミシング「あたしが信用できないんだ?」

「そうじゃないですけど…」

ミシング「それならいいじゃない?こうやって話せるのもあと少しなんだから」

「……」

ミシング「…あたしね。北の都に行くことになったんだ?」

「えっ」

ミシング「遠いし、しばらく会えないと思う。だからさ、いいでしょ?
最後くらい…友達らしいことしてみたいじゃん?」

「……」

「…実は――」
186: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:19:44 ID:CB1RoyqAtc
ミシング「ふーん…村で布教するんだ?」

「はい…。司祭様の計らいで、まずは教えを説くに値する実績と経験を付けるようにと」

ミシング「おめでとう!いきなり将来の幹部候補じゃない?」

「…私が目指すのはあくまで宣教師ですから」

ミシング「変わってるよね。昔から?みんな普通は一番、位の低い宣教師なんて嫌がるよ?」

「別にいいじゃないですか。人それぞれなんですから」

ミシング「いいんだけどね。でも…あいつらに嗅ぎ付けられたのは災難だったわね」

「まったくですよ。まだ公にされてないのに…一体どこから嗅ぎ付けたんでしょうか」

ミシング「さぁねー?盗み聞きでもしてたんじゃない?」

「はぁ…」

ミシング「…なーんかさ。不安だね。この先?」

「同感です。教団の内側ですらこの有り様ですし…外の世界はどうなっているやら…」

ミシング「ま、しょうがないよね。やるっきゃないわよ!」

「そうですね。考えても仕方のないことです。それに…最初からうまくいくなんて思ってません」

ミシング「…うん。大変だと思う。でも負けたらダメ!
あたし達には神様から頂いた使命があるんだから!」ニコッ

「ふふ。あなたが言うと冗談っぽく聞こえます」クスクス

ミシング「えー?ひどーい!」プクー
187: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:27:42 ID:CB1RoyqAtc
――――――
「(ふふ。今日から私も正式な布教者として修道服に袖を通せるんですね)」スタスタ

「(布教前に司祭様が神のご加護を授けてくれますし、私もしっかり受け入れられるよう、心を落ち着かせなければ…)」

「(心残りのないように…)」カサッ

ワイワイガヤガヤ

「…広間の方からですかね。ちょっと覗いてみましょう」スタスタ

ギャーギャー

「あ、ミシング…。ちょうどいい。今のうちに渡してしまいましょう」

ミシング「直して!今すぐ!」

修道女「はぁ?なんであたしが直すのよ?」

ミシング「こんなことするのはあんた達以外にいないでしょ!?」

修道女「ねぇ、あんた知ってる?」

修道子1「いや、知らないなぁ?」

修道子2「言いがかりもいいとこだよ」

ミシング「ふざけないでよ!」

「ど、どうしたんですか?」

ミシング「あ…なんでここに…!あなた司祭様のところに行くんじゃ…!?」

「通りかかったついでに挨拶をと思いまして…」

ミシング「…それどころじゃない」

「何かあったんですか?」

修道女「見てよ、これ」

「え……あぁっ!?」

修道女「誰の仕業か知らないけどビリビリに破かれた修道服が床に投げ出されてたのよ」

「だ、誰がこんなこと…!それにこれは誰の修道服なんですか…!」

ミシング「あたしのよ…」

「えっ」
188: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:33:32 ID:ypGmimbIno
ミシング「誰かが持ち出して…引き裂いたのよ!」

修道女「それであたしらを疑った訳?バッカみたい!」

ミシング「他に誰がいるのよ!?」

「い、一度落ち着きましょう。決めつけはよくないですよ」アセアセ

修道女「そういえばあんた、ミシングと同室よね?」

「は…?」

修道女「あんたがやったんじゃないの?あたしらに濡れ衣着せようとして!」

「ち、ちが……」

修道子1「なんだよ、それ!最低じゃん!?」

修道子2「俺らに逆恨みして、こんな手の込んだことまで…しかも友達を利用したのかよ。みなしごのやりそうな事だな!」

「やめてください!私はなにも……」

修道女「みんなもそう思うでしょ!」

ザワザワ ザワザワ ヒソヒソ

「……!?」

修道女「ほらー!みんなもおんなじように思ってたのよ!犯人はあんたで決まりね?」

「なんでそうなるんですか!私がミシングを傷付けるなんてありえません!」

ミシング「……」

「ミシング…?違うんです!私はやってません!」

ミシング「…なぁに焦ってんの?あたしがあなたを疑う訳ないじゃない?」ニコッ

「……!」ホッ

ミシング「もういいよ。こんな連中、相手にしてもしょうがないし…行こう?」

「…そうしましょうか」
189: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:39:06 ID:CB1RoyqAtc
修道女「ちょっと!今のどういう意味!?」

ミシング「そのまんまの意味」

修道女「ふざ……」

ミシング「あんたさ、このお役目向いてないよ。故郷に帰った方がいいと思う」

修道女「な、なんであんたにそんなこと言われなきゃなんないのよ!?」

ミシング「だってさ…あたし達って聖職者だよ?
これから先…たくさんの人と向き合わなきゃいけないじゃん」

修道女「はぁ!?だから何よ!?」

ミシング「裕福な人から貧乏な人、どちらでもない人、すべての人と平等に接しなきゃいけないのにさ。
最初から認める気も分かり合う気もなく、自分の言いたい事ばっか押し付けるんじゃ、このお役目に就く意味がないよ」

修道女「……!」

ミシング「あたしの友達は確かにみなしごだけど…自分の生い立ちを呪ったりしてない。
むしろ今までを受け入れて、誰かに勇気を与える糧にしようとしてる」

「……ミシング」

ミシング「あんた達より、ずっとお役目に向き合ってるし、これからを意識してるよ?」

修道女「…何が言いたいのよ」

ミシング「なんにも考えてない、そもそも考える努力もしないで他人を妬んでる奴に…人を笑う資格なんてない!
ましてや聖職者に就くなんて…生まれ変わっても無理だよ!」

修道女「……!!」

「…もう行きましょうよ。はい」つ【破れた修道服】

ミシング「うん…。ありがと」パシッ
190: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:45:28 ID:ypGmimbIno
修道女「ムカつく!ムカつく!ムカつくー!!あいつら、何様のつもりよ!?」ガンッ

修道子1「お、おい…やめろよ。みんな見てるぞ」

修道女「なによ!?見てんじゃないわよ!?」

ザワザワ ザワザワ


トト「なーんかすげぇなぁ?女の争いってやつ?」

ジョー「だな。おっかねーもんだ」

トト「あーやだやだ。こんなん信者が見たらどう思うんだか?」

ジョー「積極的に寄付する気にはならねぇだろうな?」

トト「つかあの修道服、ほんとにあいつらがやったのかな?」

ジョー「知らねぇよ。俺達には関係ねぇ話だ」

トト「でもよ、俺ダガ様辺りが怪しいと思うんだよなー」

ジョー「? なんで?」

トト「実は昨日の晩…見ちゃったんだよ。お前と交代して部屋に戻る時…ダガ様がなんか服みたいの持ってうろうろしてんの」

ジョー「…気のせいだろ」

トト「えー?そうかー?」

ジョー「それにしても…噂の司祭様のお気に入り…聞いてたより、普通の娘だったな」

トト「え?ごめん、よく見てなかったわ!可愛かった?」

ジョー「まぁ…好みにもよるだろうけど、可愛いんじゃねーの?」

トト「マジかぁ…!話しかけりゃよかったー!」

ジョー「バカ言ってねぇで見張りに戻れよ。あと少ししたら交代してやっから」

トト「ちぇっ!はいはい、行きますよ。行きゃいいんでしょ?」
191: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:48:55 ID:ypGmimbIno
ミシング「あーあ!せっかく明日から憧れのシスターになれるのに…台無し!」プンプン

「どうするんですか?明日までに必要なんでしょう?」スタスタ

ミシング「別になんとかなるでしょ!あんなの事故だもん!
布教地に着いたら事情を話して、そこで新しく作ってもらうよ!」

「私から支給していただけるよう、司祭様にお願いしてみましょうか?」

ミシング「気持ちは嬉しいけど…いいや。司祭様ってケチだから、誰かのお下がりとか着たくないし」

「そうですか…」

ミシング「誰か知らないけど、なんであんなことしたんだろーね」

「……」

ミシング「はぁ…」

「大丈夫ですか?」

ミシング「うん…大丈夫。へいきへいき」

「…とてもそうは見えませんが」

ミシング「…繕っても直りそうにないなぁと思って。せっかく新品の…あたしだけの修道服、貰えたのに…」

「……」

ミシング「ま、いいんだけどね」
192: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 20:50:13 ID:CB1RoyqAtc
「これ…よかったら」つ【ビスケット袋】

ミシング「え!なに!?作ってくれたの!?」パァァ

「気休めにはならないかもしれませんが…」

ミシング「そんなことないよ!嬉しい!ありがとう!」ニコニコ

「ふふ。それならよかった。作った甲斐があるというものです」ニコッ

ミシング「」サクッ

ミシング「う〜ん…!これこれ!あたしの大好きな味!」

「たくさん焼いて包んでおきましたので布教地までの道中、おやつ代わりにでもしてください」

ミシング「もぉ〜〜っ!いい子なんだから!」ダキッ

「ちょ…くっつかないでくださいよ!」アセアセ

ミシング「いいじゃ〜ん!そんなにイヤなの〜!?」ギュゥゥゥ

「イヤとかじゃなくて…鬱陶しいんです!」

ミシング「素直じゃないんだから〜?」

「…あなた落ち込んでたんじゃなかったんですか?」

ミシング「」クスッ

「……?」

ミシング「ありがとう。最後まで…世話になりっぱなしだったね?」

「…こちらこそ、今までありがとうございました」ニコリ
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sage:


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