前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
153: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 14:10:50 ID:MNVYXW8WpQ
ダガ「脆い絆だなぁ?」ニヤニヤ
カロル「たまたまお腹が空いてただけだもん!ね、マルク?」
マルク「」ムシャムシャ
宣教師「よかったですね。まともなエサが食べれて?」イイコイイコ
マルク「」コクコク
カロル「ひどいっ!」プンスカ
154: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:04:14 ID:oG4iJZ2MKc
マルク「」ウマウマ
ダガ「ふ……こいつは俺のモンだ。名前もとっくに決めてある…」
カロル「え?だ、ダメ…ダメだよ!マルクはボクが最初に……」
ダガ「ふ…だったらよ?そいつに決めてもらおうぜ?」
カロル「き、決めるって…なにを決めるの?」
ダガ「とぼけるなよ。飼い主だろうが…?」
カロル「なっ…!そんな…ボクに決まってるよ!マルクはボクのともだちで…家族だもの!」
ダガ「ククク…いっちょまえのセリフ聞かせるなぁ…?
まともにエサも与えねぇ上に暖かい住み処も用意出来ねぇ薄汚ないホビットが…全てに勝る俺たち人間よりも犬を大切に出来るってか…?」
カロル「あう…」
ダガ「出来ねぇだろうが?出来る訳がねぇ!出来てたまるか!」
カロル「う……」
ダガ「分かったら俺に譲りな?そいつの名前は今日からビゴパノチェスだ…」ニヤァ
カロル「ピッタンコカンカン…?」
ダガ「ちげぇよ…。ビゴパノチェスだ…!」ムキムキ
宣教師「(そんな力んで言われても…)」
マルク「?」キョトン
155: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:05:48 ID:oG4iJZ2MKc
カロル「宣教師さまー!」ダキッ
宣教師「大丈夫、大丈夫ですからね。マルクくんはキミから離れたりしませんよ」ヨシヨシ
ダガ「さぁ!こっちに来い!ビゴパノチェス!」
マルク「……?」
宣教師「長いしダサいし由来が分からない名前はイヤだと言ってます」
ダガ「なんにも言ってねぇだろ…。でたらめ抜かすんじゃねぇよ…」
宣教師「他人の飼い犬に餌付けして名前を付けるなんて常識に欠けますね」ヤレヤレ
ダガ「相変わらずムカつく野郎だ…」
宣教師「野郎ではありません。ピッチピチの女の子です」ピチピチピッチ
ダガ「ふ…男装趣味の変態がよく言うぜ…!」ヒクヒク
宣教師「見くびらないでいただきたいですね。
私が男性用の修道服に袖を通すのは宣教師として過酷な旅の中でも真実を伝える決意の表れですから」
ダガ「男装趣味を隠す言い訳だろうが…気取るんじゃねぇ」
宣教師「仮に男装趣味だとして…その私に劣情を催したのはあなたでは?」
ダガ「うぐっ…!」ズキューン
宣教師「この子のお母様に懲らしめられて少しはマシになったかと思えば…今度は犬に向かいましたか…。
ここまで来てしまうと、もはや哀れみすら覚えます」
ダガ「み、妙な誤解すんじゃねぇよ…!」
カロル「話が難しいね…?」ヒソヒソ
マルク「」コクン
156: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:08:04 ID:KS1oVzK.WM
ダガ「ふ……まぁいいぜ。お前らがなんと言おうと選ぶのはビゴパノチェス自身だ…」
カロル「ビパンチェッタじゃなくてマルク!」
ダガ「ビパンチェッタでもマルクでもねぇ!ビゴパノチェスだ!」ガーッ
宣教師「なるほど、一理ありますね」
カロル「宣教師さま?」
宣教師「いいでしょう。もしマルクくんがダガを選んだら…今日からはダガが飼い犬です」
ダガ「飼い主だ!なんで俺が飼われなきゃならねぇ!?」
宣教師「二人が同時に呼び掛け、マルクくんが駆け寄った方が飼い主!異存ありませんね!?」ババーンッ
カロル「ま、待ってよ!勝手に決めないで!」アタフタ
ダガ「自信がねぇのか…?」
カロル「……!」ムッ
ダガ「ふ……脆い絆だ…」
カロル「うぅー…!」プルプル
宣教師「まぁまぁ」ポンポン
カロル「宣教師さま!なんでこんなことしなくちゃいけないの!?」
宣教師「穏便に済ませる為の解決策として提案したまでです。
それにキミたちの友情も確認出来るでしょう?」ニコッ
カロル「こんなことしなくたってボクとマルクは仲良いもん!」
宣教師「もちろんただ一方的にやらせる気はありません。
相手にも相応のリスクを背負ってもらいます」
ダガ「なにぃ…?」ピクッ
宣教師「…当然でしょう?彼は長年、一緒に過ごした友を失うかもしれないのに…急に横から出てきたあなたが何も賭けないのは不条理です」
ダガ「……」
157: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:10:33 ID:KS1oVzK.WM
宣教師「勝負を受けるに当たってあなたに課す条件は三つ」
ダガ「三つだと!?」
宣教師「えぇ、たったの三つですよ。
本来であれば足りないくらいですが…今回は大目に見てあげましょう」
ダガ「ふ、ふ、ふざけるな…!たかが犬の一匹や二匹……」ワナワナ
宣教師「ふざけてるのはあなたです!
カロルくんのかけがえない友を奪おうとしておいて…たかが犬ですって!?」
カロル「そうだよ!そんな風に言うならマルクにごはんなんてあげないでよ!
味を覚えて他のごはんが食べられなくなったらどうするのさ!」
ダガ「う、うるせぇ!手遅れだ、ドブネズミが!ホビットの分際で…!」ギリィッ
宣教師「黙りなさい!正々堂々と勝負をする気がないのなら、あなたにマルクくんを飼う資格はありません!」
ダガ「だ、だったら力付くでもいいんだぜ…!」
宣教師「…女子供相手に暴力を振るうのですか?」
ダガ「ふ…!知ってるだろ…。女子供だろうが容赦しねぇのが俺だ…?」
宣教師「……構いませんよ。かかってきなさい」
ダガ「は…?」
宣教師「前にも言いましたが…私はあなたごときに屈しません!」ビシィッ
ダガ「じ、上等だ…!ぼろ切れになるまでいたぶってやるよ…!」コキッコキッ
宣教師「……!」
カロル「させない!」バッ
ダガ「あぁ!?」
カロル「宣教師さまに乱暴するのは許さないからね!やるなら…ボクにしてよ!」
ダガ「こ、こここここのぉぉぉ……クソガキャァァァ……!?」ピクッピクッ
158: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:12:37 ID:oG4iJZ2MKc
宣教師「い、いけません!カロルくん!どいてください!」
カロル「やだ!」
ダガ「くっ…くくく…むか…ムカつくんだよぉ…!こういう偽善者の猿芝居がなぁ…!」ポキッポキッ
宣教師「本当に危ないですよ!見れば分かるでしょう!?
あの人には理性がありません!他人の飼ってる犬を欲しがって暴力を働こうとしてるような人ですよ!?」
カロル「……!」ブルブル
宣教師「キミも怯えてるじゃないですか!無理をするのはよしなさい!」
カロル「イヤだぁっ!!」ブンブン
宣教師「っ!?」
カロル「お母さまも宣教師さまもいつもボクを守ってくれたもの!
ボクだって…守りたい!助けられてばっかりじゃイヤだ!」ブルブル
宣教師「か、カロルくん…!」キュンキュン!
ダガ「かっこつけてくれるじゃねぇか…!お望み通りグチャグチャにしてやるよ…!」ガシッ
カロル「っ…!」キュッ
ガチャッ
「なにをしてるの?」
ダガ「あぁ!?」クルッ
宣教師「…あなたは」
アリアス「お久しぶり」クスッ
159: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:14:46 ID:oG4iJZ2MKc
ダガ「あ、アリアス…」
アリアス「妙に騒がしいから様子を見に来たら…あなた何してるの?」
ダガ「いや、まぁ…な」
アリアス「何してるのか聞いてるのだけれど?あなたの頭じゃその程度も理解できない?
ごめんなさいね、これ以上に簡単な言い回しができないの。残念な頭をフル回転してもらう外ないわ」
ダガ「て、てめぇ…!」
宣教師「実はかくかくしかじかでして」ペラペラ
アリアス「ふぅん…」ジロジロ
ダガ「な、なんだよ…」
アリアス「ちょっとこっちに来なさい」
ダガ「あぁ?」
アリアス「いいから」チョイチョイ
ダガ「……」スタスタ
アリアス「」スッ ガシッ
ダガ「は……!?」
ブゥンッ ダァンッ!!
ダガ「ぐぇああぁぁあ!!?」ゴスッ
アリアス「ここまでバカだと思わなかったわよ。まったく…!」パッパッ
宣教師「…私、あんな風に投げられたんですね」ブルッ
カロル「……」
宣教師「カロルくん?」
カロル「ぷはっ…はぁっ!はぁっ!」ヘナヘナ
宣教師「!?」
カロル「こ、こわかったぁ…」ガクガクブルブル
宣教師「…ふふ。とってもかっこよかったですよ?」クスッ
160: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:19:07 ID:oG4iJZ2MKc
アリアス「バカ…じゃなかった。ダガが迷惑をかけたみたいでごめんなさいね」
ダガ「」ビクンビクン
カロル「…おじさま生きてる?」オロオロ
アリアス「あなたも助けてもらえたの…?」
宣教師「何か問題でも?」
アリアス「何も言ってないのだけれど?」
宣教師「すみません。何か言いたそうな顔に見えたのですが…不気味な厚化粧のせいでした」
アリアス「…化粧は女のたしなみでしょ?といってもあなたに女の品格を求めるのは酷というものよね…?」ニコッ
宣教師「確かにそういったものとは無縁ですね」フムフム
アリアス「でしょうね?」クスクス
宣教師「えぇ、あなたと違って、そんな小細工が必要ないもので?」ニコリ
アリアス「そうかしら?飾る努力をしない女は腐っていくだけよ?」クスクス
宣教師「腐っているから飾り付けでごまかしているのでは?」ニコニコ
アリアス「分かった風な口を聞くんじゃないわよ。小娘…」ピキィッ
宣教師「女を語るには経験が浅いと思いますよ。おばさん?」ニコニコ
161: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:20:21 ID:KS1oVzK.WM
アリアス「経験ならあってよ?あなたと違ってね?」
宣教師「わ…私だって経験くらいあります!
あなたと違って化粧などしなくても男性が言い寄ってきますよ!?」
アリアス「へー!それは凄いわね!どんな男よ?どこの誰!?言ってごらんなさい!?」
宣教師「わ、わりと年上の人が…多いですかね」マゴマゴ
アリアス「あらぁそぉう!?」
宣教師「」ビクッ
アリアス「それって、ここに転がってる筋肉バカ!?王国の高官に就いてる贅肉だらけの変態オヤジ!?
冴えない百姓上がりの牢屋番!?うだつの上がらない優柔不断な神父!?」
宣教師「そ、それは…」
アリアス「誰よ!?誰なの!?言ってごらんなさいよ!?えぇ!?」
宣教師「……!」
カロル「マルクったら今まで寝てたの?」
マルク「わぅー…」ムニャムニャ
カロル「もう…ボクたち大変だったんだからね?」
マルク「わんっ?」
アリアス「さぁ!さぁ!言いなさいってのよ!?」
宣教師「ふぐぅ…!」ワナワナ
162: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:21:53 ID:oG4iJZ2MKc
アリアス「さぁぁ〜…言いなさいよぉぉ…?どんな男?どんな男なの?経験豊富な宣教師さん?」
宣教師「か、カロルくん…」ボソッ
カロル「へ?」
アリアス「はぁ?聞こえないのだけれど?」
宣教師「カロルくん…です!」
カロル「なにがボクなの?」キョトン
アリアス「あ、あなた…本気で言ってるの?」
宣教師「……!」カァァ
アリアス「じ、冗談よね?ホビットだし…まだ子供じゃない?」ヒクヒク
宣教師「な、な…なにか!?なにか!?」グワッ
アリアス「ひっ!い、いえ…」タジタジ
宣教師「悪いんですか!?ホビットが好きじゃ悪いんですか!相手が子供じゃダメって誰が決めました!?」
アリアス「お、落ち着いて…?ね?
ほら、なんていうか…倫理的な問題というか…暗黙の了解みたいなものでしょ?」
宣教師「し、し、知りませんよ!愛に歳の差も種族もありませんもん!いーいじゃないですか!?」
アリアス「年上に言い寄られるって……」
宣教師「言いましたが!?なんです!?選ぶのは私でしょう!?」
アリアス「(重症…いや、もう手遅れ…っていうかあたし何してるんだっけ?)」
カロル「ねぇねぇ。なんの話?」グイッグイッ
宣教師「か、きゃ、キャロルくん!?いたんですかっ!?」
カロル「え?ずっと一緒にいたじゃない?」
宣教師「わた…わた…私…」モジモジ
アリアス「分からないなら分からないままでいた方がいいわよ…」ゲッソリ
カロル「なんで?気になるよ!」
宣教師「」プシュー
アリアス「追及しないであげて…。これ以上は壊れるわ…」
163: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:23:36 ID:oG4iJZ2MKc
ダガ「う…ぐ…」クラッ
ダガ「んおぅ…?」ガバッ
カロル「ねぇ!教えてよー!」
宣教師「ちがう…決して浮わついた感情ではなく…そう!これは母性です!」
アリアス「もうやめて…私が悪かったわよ…」
マルク「」ウトウト
ダガ「どうなってやがる…。おい!」
宣教師「」ブツブツ
カロル「わっ!」ササッ
アリアス「…そうそう。私の背中に隠れてなさい。彼女が正気を取り戻すまで」
ダガ「おい!?」
カロル「お、おじさま…おじさまが起きたよ!?」ビクビク
マルク「」グースカピー
アリアス「…床で寝てんじゃないわよ。はしたない」
ダガ「てめぇに投げられたんだろが!?」
164: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:24:54 ID:oG4iJZ2MKc
ダガ「つつ…!あぁ腰がいてぇ…誰かさんのせいでよ?」ググッ
アリアス「あっそ」
ダガ「ぐぬぬ!」
宣教師「…き、気を取り直して」フラッ
アリアス「あなた…大丈夫?」
宣教師「ご心配には及びません…。少し取り乱しただけですから…」
アリアス「いや、だいぶ取り乱してたけど……私も忘れるから、安心していいのよ?」
宣教師「私は今まであなたを誤解してた気がします…」ホロリ
ダガ「あーうるせぇ!?意味がわかんねぇんだよ!!さっさとビゴパノチェスを寄越しやがれ!?」
カロル「ビッポンポンでもなんでもマルクは渡さないよ!」
ダガ「ビゴパノチェスだっつってんだ!いい加減覚えろ!?」
宣教師「それでしたらさっき言った条件を呑んでもらいますよ」
ダガ「ふ…負けたら三つの約束を守れってか。言うだけ言ってみろよ?」
宣教師「一つ目はカロルくんと私に謝ること」
ダガ「なにぃ…?」
アリアス「お安いご用よ」
宣教師「ありがとうございます」
ダガ「なんでてめぇが決める!?」
アリアス「…関係ないからどうでもいいのよね」
ダガ「てめぇはどっちの味方だ…!?」
165: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:26:11 ID:oG4iJZ2MKc
宣教師「二つ目は二度とホビットを見下さないと誓っていただきます」
ダガ「んだとぉ…!?」
アリアス「三つ目は?」
ダガ「おい!?」
アリアス「別にいいじゃない。二つとも適当に取り繕えば済む話でしょ…」コショコショ
ダガ「ふ……それもそうか」ニヤリ
宣教師「三つ目は…彼のお母様に会わせてください」
ダガ「……」
アリアス「……!?」
カロル「お母さまに会えるの!?」パァァ
宣教師「連れてきているんですよね?王国に……」
ダガ「あぁ、いいぜ…。会わせてやるよ」
アリアス「ちょっと…!」
宣教師「一度口にしたからには…守ってもらいますよ」
カロル「……!」
ダガ「ククク…!」
アリアス「ダガ…アレはいざという時の人質でしょ…?司祭様に言われたじゃないの…!?」
ダガ「うるせぇよ…。勝算はある…」
アリアス「勝算…?」
166: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:27:30 ID:oG4iJZ2MKc
宣教師「では改めて…マルクくんに呼び掛けて先に駆け寄られた方が飼い主とします!いいですね?」
ダガ「おう…」
カロル「(絶対に勝たなくちゃ…お母さまにもマルクにも会えなくなっちゃう!)」グッ
宣教師「では…どうぞ!」
マルク「クゥン?」チンプンカンプン
カロル「マル……」
ダガ「ビゴパノチェス!!」
マルク「……」
アリアス「(なるほど…声量を上回って相手の声を掻き消す作戦ね?)」
カロル「マ……」
ダガ「ビゴパノチェース!!」
カロル「(どうしよう…!これじゃマルクに届かない…!)」
ダガ「(鍛えに鍛え上げた俺の体とホビットの貧相な体じゃ…声量そのものが段違いなんだよ…!)」
マルク「……」
アリアス「(とても有効な作戦だけれど一つ問題があるとすれば……)」
ダガ「ビゴパノチェスー!!」
マルク「?」シーン
アリアス「(肝心の犬がピンときてないってとこだけね)」
167: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:28:52 ID:oG4iJZ2MKc
ダガ「な、なぜだ…!なぜこんだけ呼び掛けてもやって来ねぇ?」
アリアス「ダガ!名前を……」
宣教師「参加者以外の方は発言を控えてください!!」
アリアス「くっ!」
カロル「マルクっ!」
マルク「あんっ!」タタタッ
ダガ「はっ…!?」
アリアス「まずい…!」
カロル「おいで!マルク!」
ダガ「そうはいくかぁぁぁ!?」つ【ビーフジャーキー】
アリアス「あれは…!?」
宣教師「(マルクくんの大好物…!)」
マルク「」ピタッ
カロル「マルク!」
ダガ「ふ…!どうだ、ビゴパノチェスよ!お前が一番好きなエサだぜ!」ブラブラ
マルク「……」
168: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:29:55 ID:oG4iJZ2MKc
カロル「マルク!そっちに行っちゃダメ!」
ダガ「さぁ来い!ビゴパノチェス!」
マルク「……」
宣教師「エサで釣るなんて反則ですよ!」
アリアス「あらぁ?そんなの最初に言わなかったでしょ?後から規則を付ける方が反則よ!」
宣教師「くっ…!」
カロル「マルク…ウソだよね?ボクたち…ともだちじゃない?」
マルク「……」
ダガ「ぎゃははは!!獣の情に訴えてどうすんだ?所詮は本能でしか生きられねぇんだよぉ!」
カロル「そんなこと…ないよ。マルクとボクはずっと一緒だったもの」
ダガ「だからなんだ!?そんなのてめぇ以外にエサくれる奴がいなかったからだろうが!!」
カロル「そうなの?キミは…ボクがごはんをあげるからそばにいてくれたの?」
マルク「……」
ダガ「はっきりさせてやるぜ!喰らえ!!」つ【ビーフジャーキー×2】
マルク「」タタタッ
カロル「!」
ダガ「そうだ!こっちに……」
ボフッ ドサッ
169: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 22:31:58 ID:oG4iJZ2MKc
ダガ「なん…だと?」
アリアス「そ、そんなバカな!」
宣教師「決まりましたね。勝敗は…言うまでもないでしょう」
マルク「はっ!はっ!」ペロペロ
カロル「ありがとう…。ありがとう…」ブワァッ
宣教師「……」ニコッ
ダガ「あ、あぁぁ」ガクッ
アリアス「(種族を越えた友情が……獣の本能に勝った)」
カロル「ボク…ボク…信じてたよ!マルクなら来てくれるって!」ギュゥゥ
マルク「」ゲプッ
宣教師「……ん?」
ダガ「…今、ゲップしたよな」
アリアス「ダガ…あなたまさか…」
ダガ「しまったぁぁぁ!!先にエサをやりすぎたぁぁぁ!!!」
アリアス「バカ!バカ!本当にバカね!?」ゲシゲシ
カロル「ずーっとずーっとともだちだからね!」ギュゥゥ
マルク「わんっ!」シッポフリフリ
宣教師「……」クスッ
宣教師「(たとえお腹が空いてても…マルクくんはきっとカロルくんを選びましたよ)」
ダガ「チクショウ…!チクショウ…!」
カロル「おじさま!」
ダガ「あぁ!?」
カロル「約束だよ!お母さまに会わせて!」
ダガ「あ…が…ぎぎぎ…!」ワナワナ
アリアス「あなたが無計画に約束なんてするから!あたしまで司祭様に怒られるじゃないの!?」ゲシゲシ
マルク「わぅーん!」ピョンッ
170: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 18:54:19 ID:9R5UfaPtTc
―――教会(懺悔室)―――
シスター「……」ダラダラ
シスター「(あの人たち、さっきから何してるのかしら…)」ダラダラ
町民「向こうから声がしますね。喧嘩でもしてるのかな」
シスター「ごめんなさい…!ごめんなさい…!勇気を出して告白しに来ていただいたのに…」ペコペコ
町民「いや、いいんですけどね。たいした悩みじゃないんで」
シスター「あ…懺悔したい旨は?」
町民「いやー家内の誕生日を忘れていて何も用意しなかったら、しこたま怒られましてね。教会に行って懺悔してこいと」タハハ
シスター「そ、そうですか…。奥様にしてみれば大切な行事ですもんね?」
町民「どうしたらいいんですかね。怒っちゃって家に入れてもらえないんですよ」
シスター「素直に反省して謝りましょう。愛し合って結ばれたんですから…ちゃんと謝れば許してもらえる筈です」
町民「いやー…そういうのいいんでサクッと解決できませんかね」
シスター「え、えぇ…?」
町民「とりあえず一緒に家内に謝ってもらえません?
よその人が来ればおとなしくなると思うんですよねぇ。あいつ外ヅラだけはいいんで」
シスター「(うぅ…なんなの、この人?ここはお悩み相談所じゃないのよ?
過った行いや心のつかえを話して悔い改める場所。それなのに反省する気が微塵も感じられない…)」
町民「どうしました?」
シスター「あ、なんでも…申し訳ないですが教会を空けられないので一緒に謝りに行くというのはちょっと…」
町民「えー!そんな殺生な!わざわざ足運んだ意味がないじゃないですか?」
シスター「す、すみません」
シスター「(神官ならこういう時にどうするのかな…)」
コツンコツン コツンコツン
シスター「(廊下から靴音がする…。またあの人たち…?はぁ…)」
171: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 18:58:45 ID:9R5UfaPtTc
――――――
宣教師「(まさか隣の部屋にいたとは…)」
カロル「……!」フルフル
宣教師「よかったですね、カロルくん!」
マルク「わんっ!わんっ!」
母「」スヤスヤ
宣教師「? 前より痩せて…衰弱しているような…」
アリアス「何度か目を覚ましたけど意識が朦朧としてるみたいで…何も口にしてないのよ」
宣教師「食事を与えていないんですか!?」
アリアス「少しくらい平気よ。ホビットは生命力が強いから…」
宣教師「そういう問題では…!」
カロル「ボクがなんとかするよ」
宣教師「傷だけでなく病も癒せるのですか?」
カロル「わかんないけど…やってみる。お母さまの為だもの。なんだってするよ!」
宣教師「そうですね。キミの力ならきっと……」
アリアス「(あぁ…どう言い訳しましょ…)」
ダガ「本当に会わせてどうすんだ…。約束なんざ破っちまえば…!」
アリアス「神官から言われてるのよ…。この子との約束は些細なものでも必ず守るようにとね…」
ダガ「あぁ?なんでだよ?」
アリアス「…信用を得る為よ。神官は言うことを聞かせるんじゃなく、あくまで協力させるつもりでいるの」
ダガ「な、なにぃ…!じゃあ俺は本気であいつらに頭を下げなきゃいけねぇのか!?」
アリアス「そんなのどうでもいいのよ…!このうすらバカ…!」
172: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/12(日) 19:01:49 ID:9R5UfaPtTc
カロル「お母さま…ボクだよ。起きて?」ユサユサ
母「」フワッ
母「……」パチッ
カロル「やった…!」パァァ
宣教師「(改めて驚かされますね…。まるで最初から何事もなかったかのように…)」
母「坊や…?坊やなの?」パチクリ
カロル「うん、そうだよ?」
母「よく顔を見せて…?」
カロル「…はい?よく見て?」スッ
母「あぁ…坊や。あたしのかわいい坊や…。ホントにあなたなのね!」ピトッ ペタペタ
カロル「あはは…そんなに触ったらくすぐったいよ?」テレテレ
母「ごめんなさい…。寂しかったでしょう?怖かったでしょう?
あたしが守ってあげなきゃいけないのに…本当にごめんなさいね…!」ダキッ
カロル「ううん、いいんだ。こうしてお母さまに会えたから…」ギュッ
宣教師「ふふ」ニコニコ
マルク「クゥン…」シュン
宣教師「おや、マルクくん。寂しいんですか?」
マルク「わんっ!」
宣教師「そっとしてあげましょうよ。親子の絆とは特別なモノ。
キミも私も遠く及ばないほど強い繋がりを共有しているんです」
マルク「……わふんっ」
宣教師「ふしぎな気持ちになりますね…。
こんなにも近くにいるのに…二人との距離は彼方に感じます」
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