前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
133: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 17:46:25 ID:WaxinZxJMc
ヒメ「責任だと?僕の年齢でそんなモノを持ってる奴がこの国に何人いる!?」
団長「……!?」
ヒメ「僕だって自由が欲しいんだ!息苦しさを感じない安らぎの中で気ままに暮らしたい!」
ヒメ「当たり前の事を望んでるだけじゃないか!貴様ら大人が責任を押し付けるな!!」
団長「お…王子…」
ヒメ「不要に豪華な調度品も…黙して付き従う家来も…打算的な貴族連中も…それらしく見せる為の習い事も…うんざりだ!?」
ヒメ「僕は庶民に生まれたかった…!高すぎる地位などいらなかったんだ!」
ヒメ「僕に言わせれば…これは差別だ。なぜ僕だけが自由に生きてはならないのか…」
団長「……」
宣教師「聞き捨てなりませんね」ズイッ
ヒメ「…なんだと?」
宣教師「貴方がおっしゃるのは単なる甘えです。決して差別などではありません」
ヒメ「甘え…だと?」
宣教師「貴方はいずれ国を背負って立つのです。たとえ望まなかったとしても…」
ヒメ「お前も責任を押し付けるんだな。庶民も貴族も…根は同じか」
宣教師「責任を持たない人間など誰一人としていませんよ。自分だけが特別?思い上がりも甚だしい」
ヒメ「ふん。それならこいつは?」ビシッ
カロル「……?」キョトン
ヒメ「もちろんこいつも責任を持ってるんだな?どんな責任か教えてくれないか?」
宣教師「……か、カロルくん。言ってあげなさい。キミの責任を!」
カロル「うーん…」
ヒメ「やっぱり責任などないんじゃないか!聖職者が偽りを話すとは…子供騙しに乗せられる僕だと思うなよ!」
宣教師「い、いやその…急に言われても…ド忘れしちゃいますよねー」
カロル「あ!一個だけあったよ!」ポンッ
宣教師「!」
ヒメ「ふぅん…言ってみろ?」
134: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 17:49:22 ID:WaxinZxJMc
カロル「幸せになること!それがボクの責任だよ!」ニコッ
ヒメ「」ポカーン
宣教師「」ガクッ
団長「な、なんじゃそりゃ…」フラッ
ウォルター「ククク!」ニヤニヤ
カロル「あれ?みんなどうしたの?」
ヒメ「…アホ。バカ。グズ。マヌケ。おまえ責任の意味知らないだろ」
宣教師「いいえ、見方を変えてよーく目を凝らせば立派な責任です!」
ヒメ「これのどこが責任なんだよー!?幸せになりたいなんて誰でも思ってる事だろー!?」ガーッ
カロル「ううん、ちゃんと責任だよ?」
ヒメ「はぁ!?意味わかんないし!バカじゃん!おまえバカじゃん!」ムキーッ
カロル「お母さまに言われたもの。子供を幸せにするのが親の役目で幸せになるのが子供の役目って。これって責任でしょ?」
ヒメ「」ズキンッ
宣教師「……なるほど!」
カロル「ボクの持ってる責任はこれだけしかないから…王子さまみたいに重たくないけど、簡単そうで難しいんだよ?」
ヒメ「……」ワナワナ
カロル「…幸せは形がないから、手放しやすいんだ。
それでも何度だって、諦めずに見つけなきゃね。責任ってそういうモノなんでしょ?」ニコニコ
ヒメ「くっ…!」
135: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 17:53:34 ID:gpeu.5Rw8g
ヒメ「…幸せにするのが親の役目?幸せになるのが子の役目?
だったら…父上は責任なんか果たしてないじゃないか!」
カロル「……?」
ヒメ「僕はもう…ずっと父上に会ってない…。幸せになんか…されてない。
だったら僕だって責任を放棄してもいいはずだ!」
カロル「どうして?会いに行けばいいじゃない?」
ヒメ「行ったさ…何度も…父上のいる部屋の扉を叩いた…」
カロル「部屋に入れてくれないの?」
ヒメ「……!いつも部屋にはいないんだ!どの時間に行っても…!父上は玉座に腰を据えてる!」
カロル「それならそっちに行けば…」
ヒメ「違う…!違う…!違う!!」
カロル「何が違うの?」
ヒメ「玉座にいるのもパレードや式典の催しで隣に座ってるのも…父上なんかじゃない!国王だ!」
カロル「へ?」
ヒメ「親子の会話が出来ないのに会ったって…意味ないだろ」
カロル「……会話はどこでも出来ると思うけど。相手が目の前にいたら」
ヒメ「あー!だからそーじゃなくてだな…!」イライラ
ヒメ「はぁ…いいや。やっぱ庶民には分からないだろうな。高貴な血族の悩みなんて」
カロル「なんで?ボク間違ってる?」
宣教師「間違ってはいませんよ。ただ…正しいからと言ってまかり通るものでもありません」
ヒメ「そーゆーこと。もうこの話終わり!つまんないし!」
ウォルター「けっ!すっかり元の調子だな?」
ヒメ「うるさいぞ。愚民B」
ウォルター「格下げしてんじゃねーよ」
136: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 17:55:44 ID:WaxinZxJMc
宣教師「貴方の言いたい事は分かりましたが…やはり甘えに過ぎないと思いますよ。私は?」
ヒメ「うるさい。終わりだって言っただろ!黙ってもう一本アイスキャンディを買ってこい!」
宣教師「買えませんよ。持ち合わせもありませんし」
ヒメ「役立たず!じゃあ愚民B!」
ウォルター「てめぇのほじった鼻くそでも食ってろ」
憲兵「貴様らぁ!王子に向かってなんという口の聞き方を!?」
団長「…まぁまぁ落ち着け」ガッ
憲兵「しかし!今のは目に余りますぞ!」
団長「…王子は気にしておられんよ。見ろ」
ヒメ「いいからアイスキャンディ!」プンスカ
ウォルター「(あーうるせぇ)」ウンザリ
宣教師「いい加減になさい!冷たいおやつばかり食べてるとお腹壊しますよ!」
カロル「ぼ、ボクも…」モジモジ
宣教師「ウォルターさん、アイスキャンディ2本追加です」
ウォルター「うぜぇ…」
団長「ほれ」
憲兵「た、確かに怒ってはいないようですが…」
団長「むしろご機嫌じゃないか。素晴らしいことだ」ニッコリ
137: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 17:59:52 ID:WaxinZxJMc
〜〜〜〜〜〜
団長「王子…そろそろお戻りにならねば?」
ヒメ「……」
団長「王子…」
ウォルター「俺たちも用があるんだ。いい加減ガキのお守りはしてらんねぇやなぁ?」
団長「彼らもこう申しております。十分お戯れになられたのでは?」
ヒメ「もったいないな。王族のオレ様と話せる機会なんてもうないのにさ」
宣教師「私たちにはもったいなさ過ぎてお腹いっぱいです。胃もたれすらしました」
ウォルター「永遠にあばよ。二重人格小僧?」ヘラヘラ
ヒメ「ふん!」プイッ
カロル「また一緒に食べようね。アイスキャンディ!」ニコニコ
ヒメ「…気が向いたら、また城下に降りてやってもいいぞ?」ニコッ
カロル「うん!会えたらいいね?」ニコニコ
団長「さぁ…王子?」
ヒメ「…僕に命令するな。行くぞ」
団長「はっ!失礼致しました!」
ウォルター「さぁて…俺たちも…」
団長「あぁ、暫し待て」
ウォルター「お?」
団長「実は昨夜、さるお方のお屋敷に強盗が入ってな。捜査も兼ねて動いていたのだ。
念のため君達にも事情聴取したい。協力していただけるか?」
ウォルター「……」
宣教師「」ギクッ
カロル「」ブルッ
団長「…何か知っておいでかな?」
ウォルター「いや…喜んで協力するぜ?聖職者たる者、悪がのさばるのは許せねぇなぁ?」
団長「ありがたい。時間は取らせないので安心してくれ」
138: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/4(土) 22:08:36 ID:CtXxZyuyE.
憲兵「ご協力感謝します!」ケイレイ
ウォルター「いいってことよ。団長さんによろしくなぁ」スタスタ
宣教師「いいんですか?あんな白々しい嘘八百並べて…」ジト
ウォルター「いいんだよ。俺ら旅の宣教師一行なんざハナッから存在しねぇんだ。いくらでもでっち上げりゃいい」
宣教師「ずっと気になってましたけど…本当に正業に就いてます?堅気に見えないんですが」
ウォルター「あったりめぇよ!お国公認のエンターテイメントの座長たぁ俺のことだ?」
カロル「そういえば…ウォルターさんの仲間の人間…」
ウォルター「あぁ?まぁた説教垂れる気かぁ?めんどくせぇ…」
カロル「ううん…あの格好、知ってる気がして」
ウォルター「……」
カロル「…うーん、誰だったっけ?」
宣教師「カロルくんがお母様と旅をしていた頃ですか?」
カロル「ううん、最近見た気がするの。宣教師さまと会ったくらいの時に」
宣教師「おかしいですね。それなら私も知っていそうなものですが…」
139: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/4(土) 22:10:06 ID:k4nZjE3vWE
カロル「あ、旅人!そうだ!旅人だよ!」ピカーン
宣教師「キミを売ろうとして村人達を騙した挙げ句、タイマを使って村をめちゃくちゃにした…?」
カロル「うん…」
ウォルター「(タイマを好む会員と言えばワルドか。便りがねぇと思やぁ…)」
カロル「ウォルターさん…知ってる?」
ウォルター「…なんで俺が知ってるんだ?」
カロル「なんとなく…知ってるかなって?」
ウォルター「知らねぇな」
カロル「そっか?よかった…」ホッ
宣教師「そういえば、あの旅人は結局どうなったんです?」
カロル「……」
宣教師「?」
カロル「死んでたよ。教会の玄関で」
宣教師「えっ」
ウォルター「……」
140: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/4(土) 22:12:06 ID:CtXxZyuyE.
宣教師「なぜ…私の教会で…?」ブルッ
カロル「ボクも知らないんだ。ルーボイくんも知らなかったみたいだから」
宣教師「…村の誰かがやったんでしょうか」
カロル「どうかな…」
ウォルター「(長生きしねぇとは思ってたが…そうか。くたばってやがったか)」
宣教師「まぁ…悪人の末路などそんなものです。バチが当たったんですよ」
カロル「……」
ウォルター「そうかぁ?善人ヅラしようが悪人ヅラしようが逝く時はポックリ逝くだろぉよ?」
宣教師「いいえ、普段の行いに気を付けているといないでは雲泥の差があります!」
ウォルター「たとえばぁ〜?」
宣教師「それはもう違いますよ!か、神のご加護があーだこーだと言いますし!」
ウォルター「ハッハー!結構なご高説を語らぐかと思えば薄っぺらだわなぁ〜?
お嬢ちゃん本当に元聖職者かよ?」
141: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/4(土) 22:13:00 ID:CtXxZyuyE.
宣教師「うぅ…良い言い回しが思い付かなかっただけです!
とにもかくにも悪さをするより良い行いに身を投じた方がいいに決まってます!」
ウォルター「…たとえばぁ〜?」
宣教師「倒れてる人がいたら介抱し、悩む人がいれば耳を傾け、不毛な争いを諫めたり…」
ウォルター「そうそう出くわす場面でもねぇだろうよ」
宣教師「うぅ…た、確かにそうかもしれませんが…」
カロル「じゃあゴミを拾ったり、ご飯を残さなかったり、ちゃんとおかたしするのは?
お母さまはいつも誉めてくれるよ!」
宣教師「そうです!そういうことですよ!」
ウォルター「ふっ…ハッハ!くだらねぇ!」ゲラゲラ
宣教師「くだらなくなんかありません!とても立派なことです!」
ウォルター「てめぇの手を汚す覚悟もねぇ平和ボケした奴らがご託を並べられるほど、現実は甘くねぇんだよ」
宣教師「……なんですか、急に?」
ウォルター「ハッハ!なんとなくムカついてな!」
カロル「笑ってるのに怒ってるの?」
ウォルター「アハハハハハ!キレてるぜ!ぶっちぎりだぁ!!」ゲラゲラ
ザワザワ ヒソヒソ
宣教師「他人のフリしましょうね…」
カロル「う、うん…」
ウォルター「アハハハハハ!なに見てやがる!殺すぞ!?」
キャアアアア ワーワー
142: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/4(土) 22:14:45 ID:CtXxZyuyE.
宣教師「…あの人の沸点が分かりません」ソソクサ
カロル「ボク余計なこと言っちゃったかな…」ソソクサ
宣教師「いえ、キミのせいじゃありませんよ。あの人の情緒が安定しないだけです」
ウォルター「てめぇら!勝手に行くんじゃねぇよ!おかげで騒ぎになったろが!?」タタタッ
宣教師「自業自得でしょう。修道服を着た人が殺すなんて発言をすれば騒ぎにもなります!」
カロル「突然笑いだしたから…みんなびっくりしたんだよ」
ウォルター「はっ!肝の小せぇ奴らだぜ…」ブツクサ
宣教師「…いつになったら教会に着くんです?」
ウォルター「……は?」
宣教師「? 私たち教会を目指していたのでは?」
ウォルター「くっ…ハッハ!」ピタッ
カロル「」ビクッ
ウォルター「通りすぎちまったぜ!」
カロル「えぇ!?」
宣教師「あなた今までどこに向かってたんですか!?」
ウォルター「わりーな!戻るぞ!」クルッ
カロル「……」ジーッ
宣教師「……」ジーッ
ウォルター「」スタスタ
宣教師「…自己チューですね」ムスッ
カロル「うん。王子さまもスゴかったけど…ウォルターさんはちょっとおかしいかも」
143: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 13:55:09 ID:MNVYXW8WpQ
―――教会―――
シスター「…神官のお知り合い、ですか?」ビクビク
ウォルター「おう。ウォルターっつえば分かる筈だ!」
シスター「あ、あの…ただいま神官は留守にしておりまして…」オズオズ
ウォルター「お?何も聞かされてねぇのかぁ?」
シスター「か、書き置きにはお客様がいらっしゃると…でも名前までは…」
ウォルター「その客ってぇのは俺らだ?いいから入れな!」
シスター「」バタンッ
ウォルター「おい、なんで閉めんだ!入れろってんだよ!?」
宣教師「ものすごく警戒されてますね」
カロル「(…だって目付きが怖いもん)」
ウォルター「おらぁ!!開けろや!!てめぇの臓物引きずり出して御神体に巻き付けるぞ、コラァァ!?」ドカッ
ヒィィィィィイ
宣教師「…ここまで来るとならず者ですね。絶対入れてもらえませんよ」
カロル「あのお姉さま…鍵かけちゃったね」
144: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 13:56:34 ID:MNVYXW8WpQ
〜〜〜一時間後〜〜〜
宣教師「…という訳で私たちは神官の知り合いなんです。入れていただけませんか?」
扉「……」
宣教師「誓って怪しい者ではありません。お願いします。開けてください?」
ガチャッ
シスター「…し、失礼しました。どうぞ、お入りください」
ウォルター「おーおー!手間ぁかけさせやがって…無駄な時間喰ったじゃねぇか?」
宣教師「えぇ、あなたのせいでね」
シスター「……」ブルブル
ウォルター「あばよ」クルッ
宣教師「あばよって…あなたは入らないんですか?」
ウォルター「俺はてめぇらを連れてくように言われただけだ。もう用はねぇよ」
宣教師「そうですか…。お世話になりました」ペコリ
カロル「なりました」ペコリ
ウォルター「」スタスタ
宣教師「あ、最後に!」
ウォルター「あぁ?」ピタッ
宣教師「不可抗力とはいえ殺めてしまった方々に報いるよう、悔い改めてくださいね?」
カロル「もうあんなことしないってボク達と約束して?」
ウォルター「……」
シスター「え…殺め……え?」キョドキョド
ウォルター「調子に乗んな。バカガキ共が!」ペッ
宣教師「……」
カロル「……」
ウォルター「」スタスタ
スタスタ スタスタ……
145: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 13:59:28 ID:brBbFDFh8A
宣教師「失礼します」
カロル「宣教師さまの教会より広いね?」キョロキョロ
シスター「…あの。つかぬことを伺いますが」
宣教師「はい、なんでしょう?」
シスター「さっきの方…何かしたんですか?殺めたとか…」
宣教師「あ、えと…それはですね」アセアセ
バンッ!!
3人「」ビクゥッ
マルク「わんっ!わんっ!」ダダダッ
カロル「マルク!!」パァァ
マルク「」ボフッ
カロル「あはっ!」ドサッ
マルク「くぅーん」スリスリ
カロル「よしよし。寂しかったね」ナデナデ
146: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 14:00:16 ID:brBbFDFh8A
宣教師「マルクくん!」
マルク「わう?」
宣教師「お久しぶりですね!覚えてますか?」
マルク「……」
〜〜〜回想(マルク)〜〜〜
母「あら、宣教師様。もう召し上がらなくていいんですか?」
宣教師「お、お腹が空きませんので…」ブルブル
母「まぁ…ご気分が優れませんの?
そうとは知らずにすみません。何か軽めの食事を作りますから」
宣教師「い、いえ…私は用がありますので、またの機会に…」ソソクサ
母「まぁ…そうでしたか。残してしまうのはもったいないし、マルクにあげちゃいましょ!」
マルク「」ビクッ
母「マルクー!ごはんよー!」つ【山盛りの炭】
マルク「きゃいんっ!」
〜〜〜〜〜〜
マルク「……」
カロル「マルクー?なかよしの宣教師さまだよー?」ニコニコ
マルク「……!」グルルルル
宣教師「えっ」
147: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 14:01:26 ID:brBbFDFh8A
カロル「マルク!なんでそういうことするの!?」プンプン
マルク「くぅーん」ションボリ
宣教師「まぁまぁ…カロルくん。私は気にしてませんから」アセアセ
カロル「ダメ!宣教師さまの足におしっこかけようとしたもん!」
マルク「」ガックリ
シスター「(うぅ…なんで私が掃除しなくちゃならないの?)」フキフキ
宣教師「あ、あの…お手伝いしますよ?」
シスター「いえ、お客様にそんなことさせられませんから…」フキフキ
宣教師「(うーん…まぁ答えにくい質問は避けられましたし…結果オーライ?)」
カロル「おしっこはお外でしなきゃダメだよ!分かった!?」
マルク「……!」コクコク
カロル「返事は!?」
マルク「わんっ!!」オスワリ
宣教師「(それにしても普段がおだやかなだけに怒ると迫力がありますね。
マルクくん犬なのに涙ぐんでますし…)」ブルッ
148: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 14:03:49 ID:brBbFDFh8A
―――教会(客間)―――
シスター「…どうぞ、神官が帰ってくるまで、こちらでおくつろぎください」
宣教師「神官は不在なんですか?」
シスター「えぇ。書き置きを残してお出かけになられました」
カロル「ご、ごめんね!ボクが言い過ぎたよ!」アセアセ
マルク「わぅーん…」メソメソ
シスター「ではごゆっくり」バタンッ
宣教師「どうも…」
宣教師「……」
宣教師「カロルくん」
カロル「はい?」
宣教師「行きますよ」
カロル「どこに?」キョトン
宣教師「どこにって…中を探索するんですよ?」
カロル「でもシスターさんは待ってるようにって……」
宣教師「…キミの素直さは買いますが、そのせいで今までどんな目に合ってると思ってるんですか」
カロル「……?」
149: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 14:04:34 ID:brBbFDFh8A
宣教師「ノコノコ神父に付いていって捕らえられるわ、力を暴かれて利用されるわ、果ては奴隷として売られてますよね」
カロル「は、はい」
宣教師「いい加減あきれますよ。そろそろ学習しましょう?」
カロル「」グサッ
宣教師「私だってこんなこと言いたくないんです。でもキミは無防備過ぎるんです。考えてもみてください。
お母様の言い付けを破って村に入り込んで村人から暴行を受けた後、また村に入って…お家まで燃やされてしまいましたよね」ガミガミ
カロル「」グサッ グサッ
宣教師「キミの軽はずみな判断で親子共々捕らえられた挙げ句、お母様に会えなくなってしまったのを忘れたんですか?」ガミガミ
カロル「」グサッ グサッ グササササッ
宣教師「もちろんキミは悪くありませんよ。騙した人間が悪いんです。
それでも自分が騙されやすいという自覚をきちんと持ってですね…」クドクド
カロル「うえぇぇん!」ブワァッ
宣教師「」ビクッ
カロル「あぁぁぁん……」ポロポロ
宣教師「か、カロルくん!?」アタフタ
マルク「わんっ!わんっ!」
宣教師「あ…いや、その…」オロオロ
150: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 14:06:09 ID:MNVYXW8WpQ
カロル「えぐっ…ひっく…ひっく…ひどいよぉ。ボクだって…ボク…」ポロポロ
宣教師「ごめんなさい。ほんとにごめんなさい。言い過ぎました」ペコペコ
カロル「しってるもん…いっぱい…めいわくかけたの…」ポロポロ
宣教師「そ、そうですよね!もう分かってますよね!今さら言うことじゃなかったですよね!」
カロル「村に入るのだって…ずっとがまんしてたもん…」
マルク「くぅん」
カロル「けど…人間は仲良さそうにしてて…遊んでるのに…どうしてボクらはダメなの…?」グスッ
宣教師「カロル…くん」
カロル「ボクもともだちが欲しかったんだもの…!なんでいけないの…!」グシグシ
宣教師「あ、いや…そういう意味で言ったんじゃなくてですね」
カロル「大聖堂に行ったのだって…宣教師さまが捕まってるって言うから…助けたかっただけなのに…」ポロポロ
宣教師「そ、そうだったんですか?私はてっきり神父の口車に乗ったのだとばかり……」
カロル「宣教師さまが…ボクらのせいで…えと…な、なんかいろいろって言うからぁ…」ポロポロ
宣教師「なんかいろいろって…そんな曖昧な言葉に踊らされたらダメですよ」
カロル「だって…だってしょうがないよぉ…心配だったもの…」ポロポロ
宣教師「」ジーン
カロル「ひっく…ひっく…」グスンッ
宣教師「」ブワァッ
マルク「?」
宣教師「あぁ…どうしましょう…。私まで涙が…」ホロリ
151: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 14:07:55 ID:brBbFDFh8A
宣教師「カロルくん…!」ヒシッ
カロル「宣教師さまぁぁ…!」ヒシッ
宣教師&カロル「うわぁぁぁぁん!!」ポロポロ
マルク「……わう?」
バァンッ!!
宣教師&カロル「」ビクッ
ダガ「さっきからうるせぇぞ…!隣の部屋で昼寝してたのによぉ…!」
宣教師&カロル「キャアァァァア!?」
ダガ「おぉ…?誰かと思えば…人の顔見てギャーギャー喚くんじゃねぇよ」
宣教師「だ、ダガ…!大聖堂の地下牢に閉じ込められていたはずじゃ…!?」
ダガ「ふ…神官も手際のいいことだ…。もうてめぇらを取り返したのか…」
カロル「……!」ブルブル
マルク「わんっ!」タタタッ
ダガ「おう、いねぇと思えばこっちの部屋だったのか…。ククク!」ナデナデ
マルク「クゥン!」シッポフリフリ
カロル「マルク!?」
宣教師「な、なぜマルクくんがあなたのような男になついて…!?」
ダガ「ふ…知りてぇか?」ニヤリ
カロル「……!」ゴクリ
ダガ「こいつよ…!」つ【ビーフジャーキー】
カロル「」ガーン
宣教師「(まぁ…犬ですしね)」シミジミ
152: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/5(日) 14:09:35 ID:MNVYXW8WpQ
カロル「ち、ちがうよ!マルクがエサだけでなつく訳ないもん!」
ダガ「現実を見ろ。おすわり!」
マルク「はっ!はっ!」オスワリ
ダガ「よーしよし…いい子だぁ?食っていいぞ?」ポトッ
マルク「」ガツガツ
カロル「マルク!こっち!ボクらはともだちでしょ!」
マルク「わぅぅ」ピクッ
ダガ「もう一つ食うか?」つ【ビーフジャーキー】
マルク「わふーん!」ピョンピョン
カロル「そんな……」
宣教師「よほどエサに執着があるんですかね」
カロル「どうして…!マルクにはいつもお母さまが作ってくれたおいしいごはんがあったじゃない…?」
宣教師「たぶんそれが原因かと」
マルク「」ブルルッ
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