しんのすけ「いい所に、おでかけだゾ！」

54 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 22:38:54.40 ID:Nt91H6GDO
・
・
・
カシュ
みさえ「全部に火がついたわね」
ひろし「ああ」
みさえ「じゃあクーラーを消して…私はこっちをガムテープで塞ぐから、あなたはそっちを塞いで」
ひろし「分かった」

56 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 22:40:53.56 ID:Nt91H6GDO
ひろし「睡眠薬は？」
みさえ「はい」
ひろし「じゃあ、飲み物を…お？」
みさえ「ふふふ」
ひろし「ビールじゃないか？太っ腹だな」
みさえ「今日くらいわね？」

57 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 22:43:37.31 ID:Nt91H6GDO
ひろし「じゃあ、みさえ。俺達の良い旅立ちを祈って…乾杯」
みさえ「乾杯」
プシュッ！
ゴク、ゴクゴクゴク…

58 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 22:47:00.79 ID:Nt91H6GDO
みさえ「…」
みさえ（睡眠薬とビールを１缶飲んだけど、そんなに直ぐは眠くならないのね）
みさえ（ああ、どうしてこうなってしまったんだろう）
ひろし「……」
みさえ（彼はだらしなくてスケベで、でもとっても優しくて責任感のある人…）
みさえ（だからきっとこうなってしまったのね）

59 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 22:50:39.28 ID:Nt91H6GDO
ひろし（俺は後輩、川口の借金の保証人になってしまった）
ひろし（俺は馬鹿だった）
ひろし（川口がどこからいくら借りているかも分からずに、保証人になった）
ひろし（そして、川口が失踪し、事の重大さを理解した）

60 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 22:53:53.81 ID:Nt91H6GDO
みさえ（初めは電話だった。単なるいたずら電話だと思った）
みさえ（それがどんどんエスカレートして、彼の実家にも取り立てが行った）
みさえ（家に張られた貼り紙、取り立て屋の怒鳴り声…）
みさえ（ご近所には白い目で見られて、しんのすけも暗くなっていった）

61 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 22:56:22.86 ID:Nt91H6GDO
ひろし（川口はヤバイ所から、かなりの金額を借りていた）
ひろし（うちの親父にも、義父母にも頼れる金額を超えていた）
ひろし（俺の保険金でも足りない）

62 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 22:59:39.75 ID:Nt91H6GDO
みさえ（彼の保険金では足りない。私の保険金でも足りない）
みさえ（退職したばかりの父にも迷惑をかけたくなかった）
みさえ（これは私達の問題だ）
みさえ（他人に頼らず、私達で解決したかった）

63 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:04:38.18 ID:Nt91H6GDO
ひろし（はじめ離婚してから、俺だけ死のうと考えた）
ひろし（しかしみさえは頑として首を縦には振らなかった）
ひろし（家族でしょう？一人で抱え込まないでと、主張するみさえとは何度も言い合いになった）
ひろし（それでもみさえは譲らず、結局はみんなで仲良く心中という事になった）
ひろし（でも、これで良いのか？）

64 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:07:43.57 ID:Nt91H6GDO
みさえ（みんなで心中が、一番良いのよ）
みさえ（きっと天国はいい所）
みさえ（しんちゃんも昔の様に自由に遊べて、ひまわりもお腹を空かせる事がない）
みさえ（彼も余計な心配はせず、私はそんな彼や子供達を見守りながら、心穏やかに過ごせるだろう）
みさえ「…あなた？」

65 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:08:33.49 ID:Nt91H6GDO
ひろし「…」
みさえ（寝たか…）

66 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:10:50.83 ID:Nt91H6GDO
ゴロッ
みさえ「私も、楽しかったわ。今日は」
みさえ（目的が心中じゃなかったら、また来たいくらいよ）ｳﾄｳﾄ…
しんのすけ「母ちゃん…」

67 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:12:00.86 ID:Nt91H6GDO
みさえ「！」
しんのすけ「…」
みさえ「しん、ちゃん？」

68 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:13:59.21 ID:Nt91H6GDO
しんのすけ「すーすー…」
みさえ「…そんな訳ないわよね」
みさえ（苦しまないように睡眠薬多めに入れたし、起きる筈がないわ）

69 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:17:56.01 ID:Nt91H6GDO
みさえ（でもこうして見ると、しんのすけも大きくなったわね）
みさえ（この森に初めて来たのはひまわりが生まれる前）
みさえ（トイレを我慢してたら、お漏らししちゃって、ズボンもパンツも濡らしちゃったわね）ｸｽｸｽ
みさえ（あの時は凄く怒っちゃったけど、今思えば、気付いてあげられなかった私が悪かったのよね）

70 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:21:23.74 ID:Nt91H6GDO
みさえ（そんなしんのすけがいつの間にか、ひまわりの面倒も見られるお兄ちゃんになったのね）
みさえ（本当に月日って早いわ…）
みさえ（ひまわりが、しんのすけと同じ年の頃にはどうなってるのかしら？）
みさえ（ううん…馬鹿な事を考えないの、みさえ）
みさえ（しんのすけもひまわりも、大人にはなれないの）

71 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:25:53.21 ID:Nt91H6GDO
みさえ（…本当に、これで良かったのかしら？）
みさえ（でも他にどうしようもないもの。この子達だけ置いていけない…）
みさえ（だからって、この子達を道連れにしなくちゃいけないのは…）
みさえ（でもやっぱり、親無しに何て…だって、この子達は私の大事な…）
みさえ「そうよ…この子達は私の大事な子供…だから！！」

72 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:27:58.60 ID:Nt91H6GDO
みさえ（やっぱり…しんのすけとひまわりを道連れには、出来ない！）
ガチャガチャ
みさえ（開かない？！）

73 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:31:15.95 ID:Nt91H6GDO
みさえ（どうして？力が入らない…今頃、睡眠薬が効いてきたの？）
みさえ（いや！いやよ！）
みさえ（どうして死ぬしか考えなかったの？！）
みさえ（お父さんやお母さんに迷惑かけたって、泥水を啜ったって、何をしたって…）
みさえ（生きていた方がずっと良いじゃない！！）
ドンドンッ！

74 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:32:56.99 ID:Nt91H6GDO
みさえ「い…やあ…」
みさえ「誰か…開けてー！！！」
ドンッ！

75 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:35:06.59 ID:/guT5P+Go
（；＿；）

76 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:36:50.96 ID:Nt91H6GDO
ひろし「く…眠い…」
みさえ「あ、あなた？寝てた筈じゃ…」
ひろし「大事な女房のピンチだぞ？寝ていられるか」
みさえ「あなた！」
ひろし「いいから！今は一緒にドアを開けて、急いで換気するぞ！」
みさえ「ええ！」

77 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:38:42.41 ID:Nt91H6GDO
・
・
・
みさえ･ひろし「はあ、はあ…」
みさえ「何とか、換気、出来たわね」
ひろし「ああ、もう限界だ…寝る…」ﾊﾞﾀｯ

78 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:40:20.40 ID:Nt91H6GDO
ブウウウン…ガチャ
しんのすけ「ん…んん…」ﾊﾟﾁｯ
しんのすけ「此処、どこだ？」
みさえ「お家よ」

79 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:42:56.56 ID:3/d4sZtco
いい話だな

80 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:44:32.28 ID:Nt91H6GDO
しんのすけ「…いい所は？行くんじゃなかったのか？」
みさえ「ちょっと予定変更になったのよ。しんちゃんもずっと寝てたし」
しんのすけ「おお！お空が暗いぞ！いつの間に夜になったんだ？」
ひろし「ひまわりは俺が連れて行くから、お前としんのすけは先に家に戻ってろ」
みさえ「はーい。じゃあ、あなたお願いね」
しんのすけ「…」じぃ

81 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:47:30.82 ID:Nt91H6GDO
ガチャ
みさえ「どうしたの？しんのすけ、そんなにじっと見て」
しんのすけ「母ちゃんと父ちゃん、仲直りした？」
みさえ「！」
しんのすけ「何か、起きたら二人とも仲良しで、オラ嬉しいぞ」
しんのすけ「オラ達が寝てる間に、何かあったの？」
みさえ「…さあね？」
しんのすけ「またそう言うー」
バタンッ

82 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:50:49.76 ID:Nt91H6GDO
ひまわり「ぶうぅ！たゆたああ！」
ひろし「おー、よしよし」
みさえ「あら？寝起きで、ご機嫌悪いのかしら？ひま、おいで」
ひまわり「たああ♪」
ひろし「いんや。ママが良かったんだってさ」
みさえ「あらあら」ｸｽｸｽ

83 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:53:47.09 ID:Nt91H6GDO
ひまわり「たあゆっ♪」
ひろし「あー…何か傷つく」
みさえ「なによ、これくらいで傷付くなんて？これから大きくなったら、もっと嫌われるのよ？」
ひろし「ぐっ…怖い事言うなよ」
みさえ「ふふ」
ひろし「…ははっ」

84 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:56:00.98 ID:Nt91H6GDO
みさえ「あなた、これからも宜しくね」
ひろし「…お前は、こんな俺でも一緒にいてくれるのか？」
みさえ「勿論、じゃなくきゃ一緒に死のうなんて考えないわよ」
ひろし「みさえ…」///
みさえ「あなた…」///

85 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/18(水) 23:59:19.76 ID:Nt91H6GDO
みさえ･ひろし「」///
しんのすけ「お熱いこって」
ひまわり「てっ」
みさえ「な！いつから」///
しんのすけ「二人で見つめ合って、ちゅーしようとするところからだぞ」
ひろし「だろ？父ちゃんと母ちゃんはアツアツのラブラブだからなあ」
みさえ「もうっあなた」///

86 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/19(木) 00:02:41.98 ID:4j++4rZDO
ひろし「よし、今日は久しぶりに出前を取ろう」
みさえ「そうね。今日くらいはね」
しんのすけ「え？本当？やったああ！！オラ、ピザがいいぞ！」
ひろし「なんだ？ピザで良いのか？」
みさえ「じゃあ電話するわね」
しんのすけ「オラ、耳までチーズがぎっしり詰まった奴がいい！」
みさえ「はいはい」

87 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/19(木) 00:05:10.53 ID:4j++4rZDO
ピンポーン
配達員「ピザハットでーす」
しんのすけ「オラが出るー！」
みさえ「あんたは座って待ってなさい。はーい！今行きまーす！」
ドタドタドタ…

89 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/19(木) 00:07:49.96 ID:4j++4rZDO
・
・
・
配達員（おかしいな？）

90 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/19(木) 00:07:58.58 ID:biS4mguro
まだなんかありそう

91 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/19(木) 00:09:33.24 ID:4j++4rZDO
配達員（出て来ない…）
ピンポーン
配達員「すみませーん。野原さーん？」
シーン…
配達員（やっぱり変だ）

92 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/19(木) 00:13:11.01 ID:4j++4rZDO
配達員（さっきは声がしたのに）
配達員（でもこの家、夜なのに電気をついていないし、庭も荒れ放題だし…）
ドンドンッ
配達員「すみませーん。野原さん、いらっしゃいますかー？」

93 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/19(木) 00:16:32.84 ID:4j++4rZDO
隣のおばさん「あら、お兄さん。そこで何をしてるの？」
配達員「え？いえ、僕はピザの配達に来た者です。野原さんから注文を受けたのですが…」
配達員「さっきチャイムを鳴らして、返事があったんですけど、なかなか出ていらっしゃらなくて」
隣のおばさん「…あんた、地元の人じゃないね？」
配達員「え？」

94 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/19(木) 00:19:51.08 ID:4j++4rZDO
配達員「どういう事ですか？」
隣のおばさん「この家からは注文を受けても、無視しなくちゃいけないの」
配達員「あの、どうしてでしょうか？」
隣のおばさん「…この家はもう何年も前から空き家だよ」
配達員「！」

95 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/19(木) 00:22:51.36 ID:4j++4rZDO
隣のおばさん「もう何年も前の話よ。ここには笑いの絶えない明るい家族が住んでいたわ」
隣のおばさん「でもご主人が借金の連帯保証人になっちゃって、それを苦に家族と心中したの」
隣のおばさん「その日の朝の事はよく覚えているわ」

96 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/19(木) 00:26:02.44 ID:4j++4rZDO
隣のおばさん「久しぶりに笑い声がしたから、窓から外を覗くと、車に乗ってじゃれ合う母子が見えてね」
隣のおばさん「そして夜遅くに帰ってきた。わいわいがやがやと、楽しそうにして」
隣のおばさん「ああ、これでこの家族は大丈夫だなって思ったのよ」

97 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/19(木) 00:32:38.65 ID:4j++4rZDO
隣のおばさん「そして、ピザの配達が来たわ」
隣のおばさん「でも配達員が帰る様子がないから、今みたいに外に出てきた」
隣のおばさん「そうしたら、一家が乗ってきた筈の車がなかったの」
隣のおばさん「私は一家が隠していた合鍵を使って、家に入り、テーブルの上にあった遺書を見つけた」

98 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/19(木) 00:35:34.47 ID:4j++4rZDO
配達員「そ、それで？」ｺﾞｸﾘ
隣のおばさん「次の日、一家は森の中で発見されたわ」
隣のおばさん「奥さんは……多分、最後に死ぬのが怖くなったのかもしれないわね」
隣のおばさん「ドアを開けようと、取っ手にしがみついたまま亡くなっていたそうよ」

99 ：以下、新鯖からお送りいたします ：2013/09/19(木) 00:39:40.26 ID:4j++4rZDO
配達員「つまり…幽霊がピザの注文をしていたって事？」
隣のおばさん「ええ、毎年ね。時々、あんたみたいな余所から来た人が知らずに届けに来ちゃうんだけどね」
配達員「だって…そんな、ありえない…」ｶﾞﾀｶﾞﾀ
隣のおばさん「どっちにしろ、届ける相手はいないわよ？」
隣のおばさん「今回は、私が代わりに貰ってあげるわ。いくらかしら？」