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女騎士「くっ、殺せ!」 オーク「お前料理できるか?」

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Part2
36: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:15:32 ID:Bx2ajIMo
後輩騎士「で、でも先輩はそれ以外のところは素晴らしいですから!! 騎士としても女としても、先輩は私の目指すべきひとです!!」
女騎士「あ……うん、あ、ありがとう?」
後輩騎士「さぁさぁ! せっかく帰ってこれたんですし、今夜は久しぶりにベッドでゆっくり休みましょう!!」
女騎士「う、うん……」
後輩騎士「そ、それで、あの……久しぶりということで、できれば一緒に寝ちゃったりしてもいいですか?」モジモジ
女騎士「えっ、嫌……」
後輩騎士「ですよね」ションボリ

37: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:17:09 ID:Bx2ajIMo
女騎士「……そうだ。実はさっきから後輩ちゃんに聞きたいことがあったんだけど」
後輩騎士「はいっ、なんでしょう?」
女騎士「ひょっとして……太った?」
後輩騎士「」
女騎士「というか後輩ちゃんだけじゃなくて……帰ってきたら何人か『あれ、こんな太ってたっけ?』って人がいて……」

38: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:18:42 ID:Bx2ajIMo
後輩騎士「な……内緒にしててくれますか?」
女騎士「えっ……何か悪いことしてたの?」
後輩騎士「わ、悪いことというか……実は最近、このあたりに美味しい出前の店ができたんです」
女騎士「出前?」
後輩騎士「はい! 夜遅くまでやってるんで、みんな部屋に戻ってからこっそり夜食に頼んでたんです」

39: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:20:18 ID:Bx2ajIMo
女騎士「頼んでたって……門限を過ぎたら営門開かないでしょ?」
後輩騎士「それが、転送魔法で配達してくれるんですよ」
女騎士「えっ、魔法で!?」
後輩騎士「はい。なんでも王立魔法協会の方が運営してるらしくて……」
女騎士「へえー、私がいうのもなんだけど、魔道士たちが食事を作ってるっていうのも意外だね」

40: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:21:36 ID:Bx2ajIMo
後輩騎士「それがすごくちゃんとした料理なんですよ! 出前とは思えないくらい! 先輩の料理とは大違いですね!!」
女騎士「ひどい……」
後輩騎士「あっごめんなさい一緒に寝ます?」
女騎士「いいです」
後輩騎士「チッ」


41: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:23:31 ID:Bx2ajIMo
女騎士「そっかー……私が捕虜になってる間にそんなことになってたんだ」
後輩騎士「そうなんです! こんど先輩も一緒に食べましょうね!!」
女騎士「……ていうか後輩ちゃん、さっき私のことが心配で食事ものどを通らなかったって言ってたよね?」
後輩騎士「う」
女騎士「本当に心配してたの?」
後輩騎士「してました……してましたとも……」ダラダラ
女騎士「ホントかなぁ……」ジトー

42: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:25:06 ID:Bx2ajIMo
後輩騎士「あ、ていうか私も先輩に聞きた……き、聞きたくな……聞きたいことがあるんですけど」
女騎士「なんでちょっと躊躇したの?」
後輩騎士「……先輩、オークの捕虜になってた時、どんな料理を作ってたんです?」
女騎士「はは……やっぱそれか。査問委員会でも同じこと聞かれたんだよね」
後輩騎士(そりゃやっぱみんな気になるよなぁ)

43: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:26:44 ID:Bx2ajIMo
女騎士「例えば……そうだなあ、髑髏蔓の脳味噌和えとか」
後輩騎士「!?」
女騎士「魔獣の内臓と煉獄茸一緒に焼いたのとか……」
後輩騎士「」
女騎士「あとは……人面魚の塩辛とか……」
後輩騎士「あ、もう大丈夫です……」ゲンナリ

44: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:29:15 ID:Bx2ajIMo
女騎士「や、やっぱりそんなにおかしいの? 査問委員会の人たちにもドン引きされたんだけど……」
後輩騎士「およそ人間の発想じゃないです……」
女騎士「」ガーン
後輩騎士「ていうか、煉獄茸とか触っただけでもヤバイ系の猛毒キノコじゃないですか……」
女騎士「う、うん……たしかにあれはアーマー越しでもちょっとかぶれた……かな? 最初のうちだけ」
後輩騎士「なんでちょっとかぶれる程度で済むんですか!? そしてなんで順応してるんですか!? 化け物ですか!?」
女騎士「ひどい」

45: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:30:37 ID:Bx2ajIMo
後輩騎士「ああ……やっぱり寝る前にこんなこと聞くんじゃなかった……うっ、ちょっと吐き気が……」オエ
女騎士「だ、大丈夫?」
後輩騎士「だ、大丈夫です……しかし、そんなもの食べてまで生き延びなきゃならなかったんですね……」
女騎士「え、私は食べてないよ?」
後輩騎士「え?」

46: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:32:17 ID:Bx2ajIMo
女騎士「普通に食糧庫に小麦粉とか置いてあったから、私はそれ煮て食べてたよ?」
後輩騎士「えっ? だ、だって、作った料理の味見とか……」
女騎士「味見?」
後輩騎士「あっ……ふーん」(察し)
女騎士「な、なになに? どうしたの? えっ? それどういう反応?」オロオロ

47: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:34:28 ID:Bx2ajIMo
後輩騎士「まぁ……なんとなく納得いきました。先輩らしいというか、なんというか……」
女騎士「それどういう意味なの……?」
後輩騎士「それにしても、なんでオーク達の食糧庫に人間が食べられるような穀物が置いてあったんですかね?」
女騎士「私以外にも何人か人間の捕虜がいたみたいだし、多分奪った食糧を捕虜用に保管してたんだと思う」
後輩騎士「ま、まさか先輩!? 他の捕虜の人たちにまで手料理を振る舞ったりしてませんよね!?」

48: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:36:02 ID:Bx2ajIMo
女騎士「い、いや……私は専ら魔族向けの料理だけで……」
後輩騎士「よかった……犠牲は最小限に抑えられたのね……」ホッ
女騎士「ううう、さっきから後輩ちゃんがひどい」
後輩騎士「大丈夫です……料理以外は私の尊敬すべき先輩です……一緒に寝ましょう」
女騎士「嫌です……」

49: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:37:43 ID:Bx2ajIMo
【数日後】
騎士団長「なに? 魔王軍から特使が?」
後輩騎士「はい。なんでも魔王直々に、先輩を登用したいと申し出があったそうで……」
騎士団長「馬鹿な。なぜ魔族が人間を?」
後輩騎士「それが……是非先輩に魔族向けの料理店を開いてほしいとのことで……」
騎士団長「そんなバナナ!?」

50: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:40:18 ID:Bx2ajIMo
側近「王立騎士団長殿ですね。お初にお目にかかります。私が魔王様の側近です。以後、お見知りおきを」
騎士団長「う、うむ……それで、本気なのかね?」
側近「彼女のことですか? 既に和平条約は締結しましたし、人間と魔族の間で正式な雇用契約を結ぶことに問題はないはずです」
騎士団長「そ、それに関しては陛下のご意向ということで依存はないのだが……なぜ、彼女に料理を?」
側近「それはもちろん、彼女の作る料理が魔族を魅了したからですよ」
騎士団長「ほ、ほう……」

51: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:43:22 ID:Bx2ajIMo
後輩騎士「せ、先輩……行っちゃうんですか?」
女騎士「私は騎士であり料理人ではない。そう簡単に国に誓った忠誠を破りはしないつもりだ」
側近「ですが、あなた方の国王陛下もこの件に関してはご理解を示されていますよ」
女騎士「陛下が……?」
側近「『本人の意向次第ではあるが、彼女が魔族と人間との橋渡しになれる可能性があるというのであれば、それを拒む理由はない。むしろ今後の双方の関係発展にとっては喜ばしいことだと思う』とのことです」
騎士団長「間違いない。陛下自らのご発言だ」
女騎士「陛下がそんなことを……?」

52: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:44:53 ID:Bx2ajIMo
騎士団長「女騎士よ。お前はどうしたいのだ?」
女騎士「団長……私は……」
側近「こちらは皆、あなたの料理を心待ちにしていますよ」
騎士団長(マジで……)
後輩騎士(そんなにガッツリ魔族の胃袋掴んじゃったんだ……)
女騎士「…………少し、猶予をいただけないだろうか」

53: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:46:17 ID:Bx2ajIMo
側近「わかりました。それでは来週またこちらに参ります。その時までに決めておいてください」
女騎士「承知した」
騎士団長「……ゆっくり考えるといい。陛下の仰ったとおりだ。お前の判断に委ねる」
女騎士「はっ……」

54: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:48:05 ID:Bx2ajIMo
……
後輩騎士「せ、先輩! 騙されちゃだめですよ! いったらきっと洗脳された魔族にされちゃいますよ!!」
女騎士「……」
後輩騎士「私、嫌ですよ……先輩に剣を向けることになるかもしれないなんて……」
女騎士「後輩ちゃん……」
後輩騎士「それに何かの間違いで、先輩の料理が人間相手に炸裂する可能性もありますし……」
女騎士「……」

55: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:49:39 ID:Bx2ajIMo
後輩騎士「大体、捕虜にまでされたっていうのに、いまさら戻ることなんてないじゃないですか!!」
女騎士「それは……そうだけど……」
後輩騎士「いい思い出なんてないはずでしょう!? それなのになんでまた自分から戻ろうなんて思えるんですか!! 悩むまでもないじゃないですか!!」
女騎士「……」


56: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:52:36 ID:Bx2ajIMo
『こんな美味いもん初めてくった……』
『うおおおおお!! 止まらねえぜ!! おい、こいつはまだあるんだろうな!?』
『絶対戻ってこいよ! その時まで腹空かして待ってるからな!!』
『おねえちゃんのつくるごはん、美味しかったよ』

57: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 21:55:39 ID:Bx2ajIMo
後輩騎士「先輩ってば!」
女騎士「あ、ああ……そうだよね。後輩ちゃんの言うとおり……かな?」
後輩騎士「よかった……もし行くっていうのなら私、騎士団を辞めてでも止めるつもりでしたから!」
女騎士「う、うん……いや、別にそこまでしなくても……」
後輩騎士「魔王の側近が来るのは来週って言ってました! 丁重にお断りしてやりましょう!!」フンス
女騎士「……」

58: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 22:00:39 ID:Bx2ajIMo
【そして次の週】
側近「結論は出ましたか?」
女騎士「ああ」
後輩騎士(ふふーんだ! 先輩は魔族のところになんて行きませんよーだ!!)
側近「我々としても、有能な人材には最大限の配慮をするつもりです。もしあなたが望むのであれば、王国騎士団との兼務も許可しますが」
女騎士「いや、騎士と料理人を両立することはできない。……団長、お世話になりました。私は今日を以って王国騎士団を退きます」
後輩騎士「そうよ! 先輩はこれからも騎士として……って、えええええええええええ!!! そそそそそそそそそそんな!?」

59: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 22:01:18 ID:Bx2ajIMo
騎士団長「承知仕った。……君の行く先に、神のご加護があらんことを」
女騎士「……ありがとうございます。お世話になりました」
後輩騎士「ちょっと待って先輩!? どうしてなんです!!? えっ……そんなんアカンて!!」
女騎士「ごめんね、後輩ちゃん……」
後輩騎士「嫌ァァァァァァ!! そんな部屋で2人っきりの時のテンションでマジ謝りしないでくださいよ!! 騎士なら騎士らしく『すまん……』とか言ってくださいよおおおお!!」
側近「面白い方ですね」

60: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 22:04:40 ID:Bx2ajIMo
女騎士「では身支度を……」
後輩騎士「い、行かせませんよ!! どうしても行くというのならこの私を倒してかr」
側近「せいっ」ドトスッ
後輩騎士「う゛っ」バタン
女騎士「後輩ちゃん!?」
側近「大丈夫。すぐに気が付きます。さ、今のうちに準備を……」

61: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 22:06:35 ID:Bx2ajIMo
……
元女騎士「……というわけで、私は戻ってきた」
<ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
元女騎士「かつては敵同士ではあったが……これからは人間と魔族の橋渡しとなれるべく、皆に喜ばれるような料理を提供していければいい……と思う」
<ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
元女騎士「……こ、これからもよろしく」

62: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 22:07:19 ID:Bx2ajIMo
オークA「へへっ、やっと戻ったか! もう腹が減って待ちきれねえぜ!!」
オークB「能書きはいいから早くメシ作ってくれよ!!」
オークC「腹いっぱい食いたし」
側近「皆喜んでいますね。これなら正式にあなたを登用した甲斐があったというものです」
元女騎士「……よし、すぐに準備を始めよう!!」

63: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 22:08:02 ID:Bx2ajIMo
こうして女騎士は、正式に魔族の料理人となったのでした。
彼女の開いた店には連日多くの魔族が押し掛け、その料理に舌鼓をうちました。
彼女の料理は人間から見れば猟奇的な物体X以外の何物でもありませんでしたが、自らの料理を心から喜んでくれる魔族たちを見て、彼女は騎士だった頃とはまた違った充足感を感じていたのでした。

64: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 22:08:38 ID:Bx2ajIMo
子ゴブリン「おねえちゃん! 今日もきたよ!!」
元女騎士「お、いらっしゃい。今日は一人?」
子ゴブリン「うん!!」
元女騎士「おー、えらいえらい。じゃあカエルの脳みそおまけでつけたげる」
子ゴブリン「やったー!!」

65: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 22:09:17 ID:Bx2ajIMo
リザードマン「よぉ」
元女騎士「あ、いらっしゃい」
リザードマン「……いつもの」
元女騎士「はいはい」
子ゴブリン「そういえば、最近ガーゴイルのお爺ちゃん見ないね?」

66: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 22:09:53 ID:Bx2ajIMo
元女騎士「そうねぇ……先月まで毎日のようにいらしてたんだけど」
リザードマン「……あのジジイ、なんでも羽根をいわしたらしいぞ」
元女騎士「えっ」
子ゴブリン「大丈夫なの?」
リザードマン「さぁなぁ。何せもう歳だかんな……」

67: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 22:10:28 ID:Bx2ajIMo
元女騎士「そんなに思わしくないの? ガーゴイル翁の具合は」
リザードマン「ガーゴイルが羽根をやったとなっちゃあなぁ。もうほとんど動けんだろうし、あとは弱ってく一方だろう」
元女騎士「うーん……だったらせめて私の料理を届けてあげられればいいんだけど」
子ゴブリン「あっ! じゃあ僕が届けてきてあげるよ!!」
リザードマン「やめとけ小僧。ガーゴイルの棲む山はそこいらの山とは訳が違う。あいつら以外近づくのは無理だ」

68: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 22:11:02 ID:Bx2ajIMo
元女騎士「ふーむ……あ、そうだ!!」
子ゴブリン「どうしたの? おねえちゃん」
元女騎士「いいことを思いついた! リザードマン、ちょっと店番頼んでいい? 前に飲みたがってた洞穴蠍のお酒、サービスするからさ!」
リザードマン「は? おいちょっと待てよふざけんな!!」
元女騎士「夜までには戻るから!!」
リザードマン「おい!!」

69: 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/10/08(日) 22:11:33 ID:Bx2ajIMo
オークA「うぃーす、なんだ、あいついないのか」
オークB「でも店は開いてんだろ? おーい、いつものくれ」
オークC「大盛りで。3つな」
子ゴブリン「おじちゃん、注文とらなくちゃ」
リザードマン「ちっ……なんだって俺がこんなことを……」

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