キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 ヘンゼルとグレーテル編
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560 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:21:33 ID:CCE
地主「ワシはこの世界を救うために行動したのだ、それの何が悪い!?」
地主「ヘンゼル君が盗みを働き、それを弥平の仕業にすることでおとぎ話の存在を保つ。君がそういう考えなのだと察して、ワシはそれに便乗しただけだ!」
ヘンゼル「なにそれ、僕に責任を押し付けるつもりなの?」キッ
地主「そんなつもりは無い、だがワシの行動は間違ってなどいない!そもそも…考えなくてもわかる事だろう!この世界が消えればどうなるか!」
地主「この世界が消えれば多くの人々が巻き込まれて消えてしまう!現実世界の人々の記憶からも【キジも鳴かずば】は消えてしまうんだぞ!」
地主「だがお千代と弥平を犠牲にすればそんな悲劇は起きない!そもそもあの二人は不幸になる宿命だ、人柱になる為、父と悲惨な別れをする為、その為にあの二人は生み出されたんだ。そんな二人を犠牲にする事の何が悪い!?」
地主「あまりにも大きな犠牲と弥平とお千代二人の幸せとを天秤に掛ければどちらを優先にすべきかなど考えるまでもないだろう!?」
ヘンゼル「……この世界と二人。どっちを犠牲にすべきかなんて、確かに考えるまでも無いね」
地主「そうだろう!?だからこそワシはこの世界をs」
ヒュッ ガシッ
ヘンゼル「この世界と家族を天秤に掛けるなら、僕は迷わず家族を選ぶ」ゴゴゴゴゴ
地主「ぐぉぉっ…!」ベキベキベキ
ヘンゼル「パパさんとお千代には悲惨な結末しか待っていないって言うならこんな世界は消えてしまえばいい…!」グイッ
地主「くはっ…」ドサッ
ヘンゼル「僕の行動がこの世界を救ってしまったというなら、僕が責任を持ってこの世界を消滅させる」
ヘンゼル「僕の家族が幸せになれないのなら、そんな馬鹿げた世界は消えてしまえばいいんだ」スッ
561 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:22:32 ID:CCE
犀川の土手 人柱の儀式の祭壇
ザワザワ
神主「荒らぶる犀川の神よ…我々は貴方への供物として村人の命を捧げます。どうかその怒りを鎮めたまえ…」バッサバッサ
ザワザワ
「これで犀川の神様も怒りを鎮めてくださるはずじゃあ」
「しかし、たった一握りの米と小豆で人柱とは…弥平も気の毒なもんじゃ」
「そうじゃなぁ、お千代ちゃんもまだ幼いというのに可哀そうに…あの異国の二人も残して逝っちまうたぁ、さぞ心残りだったろう」
「確かになぁ、同情はしちまうけども…弥平は罪人じゃ、文句はいえまいて」
「可哀そうじゃがこれは村で決まった事…ワシらが今更意見してどうにかなる問題でもあるまい」
ザッ
グレーテル「弥平パパ居ない……もう人柱にされちゃったんだ……間に合わなかったんだね……」
ヘンゼル「パパさんは僕達を助けてくれたのに僕はパパさんを助けられなかった…!あんな奴に足止めを食らっていたせいだ…」
グレーテル「こんなに人が居るのに……気の毒だって……可哀そうって……みんな言ってるのに……でも、誰も弥平パパのこと助けなかったんだね……」
ヘンゼル「大人なんてみんな口だけだ、結局自分の事が大事なんだこいつ等は」ギロッ
隣のおっさん「ヘンゼルにグレーテル…!やっぱり来ちまったか。婆さんに子供等を引きとめてくれと言ったが無理だったか…早く帰るんだ、ここは子供が居て良い場所じゃないから」
ヘンゼル「おじさんはパパさんにも僕達にも優しくしてくれたのに、いざというときは助けてもくれないんだね」
隣のおっさん「そう言わんでくれよ…俺も辛いんだ、些細な盗みでも弥平が罪人である事に変わりは無い。村人たちの前で罪人を助けてやることなんかできねぇよ…辛い話だがな…」
グレーテル「辛いのはおじさんじゃないよ……?死んじゃった弥平パパと、お千代ちゃんだよ……だから辛いとか、言わないで……」
562 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:24:28 ID:CCE
隣のおっさん「そうだな…俺達が口にしていい言葉じゃねぇ。でもあれだ、弥平は人柱にされちまったけど、お千代ちゃんとお前達の面倒はうちでちゃんとみるから安心していいんだぞ」
ヘンゼル「必要ないよ。もうこんな世界は壊すから」スッ
隣のおっさん「ヘンゼル…?お前、何を言って…」
薄毛のおっさん「…こんな場所に子供が居るというから誰かと思えば、お前達だったか」
グレーテル「……薄毛のおじさん……弥平パパが泥棒したって……みんなに言った人……」
薄毛のおっさん「ほう、まるでワシが告げたせいで弥平が人柱にされたような口ぶりじゃな。弥平は罪を犯した、その償いをしただけじゃ」
ヘンゼル「違う。あんた達は都合のいい人柱が欲しかっただけだ。その為にパパさんを利用したんだ」
薄毛のおっさん「言うに事欠いて馬鹿げた事を…!弥平が人柱にされたのはあいつが罪人だったからじゃ、罪を犯したものに罰を与えるのは当然の事」
ヘンゼル「……」ギロッ
薄毛のおっさん「なんだその目は、ワシらが悪いとでも言いたいのか?盗人である弥平の事を棚に上げて、ワシらを責めるつもりか?」
薄毛のおっさん「まったく逆恨みも大概にしてほしいもんじゃ、弥平も大概おかしな奴だったがお前達も相当だ。だからこんな得体の知れない子供を村に引き入れるのは反対だったんだ」
薄毛のおっさん「弥平に同情するとすればお前達の様な輩と関わった事だけじゃな。生活に余裕が無いくせに二人も余分に子供を養うから盗みを働くことになるんじゃ」
薄毛のおっさん「自業自得じゃな。お前達を引き取らなければ弥平も死ぬ事は無かっただろうに、馬鹿な奴じゃまったく」
ヘンゼル「…罪人に罰を与えるのが当然だっていうなら、パパさんを見殺しにしたお前達だって罪人だ」ゴゴゴゴゴ
ヒュッ ゴシャァァ!
薄毛のおっさん「」ドシャッ
ヘンゼル「だから僕が罰する。馬鹿げたこの世界も、自分勝手な大人もみんな…僕が始末する」
563 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:26:52 ID:CCE
「う、薄毛が一撃でやられた!」
「あんな子供が大人を倒すなんてできねぇ!ありゃあ何か不思議な力に違いないぞ!」
「あいつら、弥平の所の拾い子じゃ!復讐に来たに違いねぇ!」
ザワザワ
グレーテル「お兄ちゃん……駄目だよ……」
ヘンゼル「グレーテル。悪いけど、止められても僕はこいつ等を始末する。そうじゃないとパパさんも安らかに眠れない」
グレーテル「止めたりしないよ……でもお兄ちゃんはもう両腕使っちゃったから……うまく魔力撃ち出せないよね……?だから……私が魔法使うよ……」
ヘンゼル(グレーテルに魔法は使わせたくない。だけど、確かに僕はもう両腕潰してる。グレーテルに頼らないとこいつ等に復讐できない…いや、復讐は絶対にする)
グレーテル「弥平パパやお千代ちゃんいじめる大人……許せない……ずるい大人はみんな燃やしちゃうの……私とお兄ちゃんの二人でなら……しかえし、できるよ……?」
ヘンゼル「そうだよね、僕の魔力とグレーテルの魔法。二人一緒ならこいつ等を始末できる。パパさんの無念を晴らせる…!」ギュッ
グレーテル「うん……私の家族を悲しませる人……みんな、かまどで燃やすの……嫌いな人も嫌な事も……燃やせばなくなるもんね……」ギュッ
グレーテル「……真夏のお日様……真冬のストーブ……真夜中のランプ……」ボソボソ
グレーテル「かまどが無いなら……この村全部を熱い熱いかまどにしちゃえ……悪い人たちみんな……かまどでまとめて燃やしつくして……」ボボゥッ
メラメラ ボボゥッ!
「な、なんじゃあ!あの娘っ子、火柱を出しおったぞ!?」
「やっぱり薄毛の言うとおり、妖怪の子供じゃったんじゃあ!!逃げろ、逃げろぉ!」
「妖怪じゃあ!妖怪の子供が暴れ出しおったぞぉぉ!!」
メラメラ ボボゥッ!
564 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:29:20 ID:CCE
メラメラメラ
グレーテル「私の家族……苦しめた大人……許さない……」スッ
メラメラメラァー
「うわぁー!家が!納屋が!村の建物が次々と燃やされていく!」
「おい!やべぇぞ!水持ってこい水!この火の勢いじゃあ早く消火しないと村ごと焼きつくされちまうぞ!」
「水っていっても犀川には近づけねぇし、井戸の水じゃあとても間に合わねぇ!」
グレーテル「お家の火……消してる場合じゃないよ……逃げ場所無くしたら……今度はおじさん達、燃やす番だから……」ボボゥッ
「やべぇ!あの娘っ子やべぇ!俺達を焼き殺すつもりだぞ!?」
「たいした罪でもないのに弥平を人柱にしたりするからこんなことになるんだ!おい、俺は内心反対してたから助けてくれ!」
「あっ、ずるいぞお前!じゃあ俺はあれだ、畑の土地やるから見逃してくれ!頼む!」
グレーテル「駄目……もう弥平パパは私の頭撫でて褒めてくれない……もうお粥も一緒に食べられない……だから駄目、許さない……」スッ
メラメラ ギャアアァァァァ!!
ヘンゼル(これで良い。こいつ等はパパさんを見殺しにした悪人だ、死んで当然なんだ。それより…グレーテルの魔法は本当にすごい)
ヘンゼル(僕の魔力とグレーテルの魔法があれば、どんな悪い大人も始末できる。どんな敵からも家族を護れる…!グレーテルを幸せに出来る!)
ウワァー!タスケテクレー!
グレーテル「……」ゼェゼェ
ヘンゼル「グレーテル。次は向こうだ、何人か村の奴らが逃げて行ったから追いかけて焼き殺そう」
グレーテル「……うん、そう……だね」フラフラ
ヘンゼル「どうしたの?急ごう、逃げられちゃまずい。パパさんの仇は根絶やしにしなきゃ」
グレーテル「うん……みんな燃やしつくすの……だから、頑張る……」スッ
565 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:30:52 ID:CCE
・・・
メラメラメラー メラメラー メラメラー
ギャアアァァー! ヌワァァー!!
グレーテル「……」ハァハァ
ヘンゼル「すごい…すごいよグレーテル、これならこいつ等に思い知らせる事が出来るよ。村を焼き尽くせばこんな馬鹿げたおとぎ話だって消せる!」
グレーテル「……うん……頑張る……」フラフラ
タッタッタッ
お千代「ヘンゼル、グレーテル。なんなんこれ…!何が起きてるの……?」
ヘンゼル「お千代…!ごめん、追いかけたけど…僕達はパパさんを助けられなかった。間に合わずにパパさんは人柱にされた。この村の大人達に」
お千代「…父ちゃん、やっぱり人柱にされたんね…うちが言いつけ破って手毬唄を歌ったせいなんよ…」ポロポロ
ヘンゼル「違う、お千代は悪くない。悪いのはみんな村の大人だよ、こいつ等が人柱なんて馬鹿な真似しなければ誰も悲しまなくて済んだんだ」
お千代「でも、やっぱりうちのせいなんよ…うちの為に盗みをして、うちが喋らなければよかったんよ…うちが何も言わなかったら父ちゃんは…!」ポロポロ
お千代「だからうちはもう…何も喋らない方がいいんよ…」ポロポロ
ヘンゼル「泣かないでお千代、大丈夫だよ。僕とグレーテルが悪い大人達を始末するから、もう悪い奴は一人もいなくなる。だから安心して」
グレーテル「そうだよ……お千代ちゃん……平気……だから……泣かない……で……」フラッ
ドサッ
ヘンゼル「グレーテル…?どうしたんだグレーテル!」
566 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:32:08 ID:CCE
グレーテル「お兄ちゃん……ごめんなさい……弥平パパやお千代ちゃんのしかえし……終わってないのに……私……」ゼェゼェ
ヘンゼル「…っ!なんだ、これ…!グレーテル、お前の身体こんなに熱いなんて普通じゃないよ!」サワッ
グレーテル「……魔法……使い始めてから……急に熱くなって……でも……弥平パパやお千代ちゃんの為だから……」ゼェゼェ
ヘンゼル「我慢してたのか…!クッ…気が付けなかった僕の責任だ、復讐する事ばかり考えて…」
ヘンゼル(油断してた、崖で一度魔法を使った時はどうも無かったから…グレーテルが魔法を使うことの危うさを甘く見てた…!)
グレーテル「お兄ちゃんは悪くないよ……村のおとなが許せないのはわたしも同じ……だから……ゲホゲホゲホッ」ゴホゴホ
お千代「グレーテル…!しっかりするんよ!」
グレーテル「……駄目、おちよちゃん……お兄ちゃん……もう、私……我まんできない……からだがあつくて……あたまがぼーっとして……なんにも、かんがえられなくなっちゃうんだよ、なんだかふあふあしたきぶんなのよ」ボーッ
ヘンゼル「意識がもうろうとしてる…!それに身体がどんどん熱くなってる、早く家に連れて帰って身体を冷やしてあげないと…!」
グレーテル「……」ポケーッ
ヘンゼル「しっかりするんだ、グレーテル!すぐに冷やしてあげるからね、少しだけ辛抱してて…!」
グレーテル「あえ……?おにいたん、あたしつえてどこえいくの……?」トローン
ヘンゼル「どこって、僕達の家だよ。パパさんとお千代と僕達が暮らしてたあの家だ!」
グレーテル「らめなの……まだ、おあってないの……」スタッ
グレーテル「おうち……おとなのひと……まだのこってる……だから、おわってないんらよ……」
グレーテル「やへえぱぱとおちよたんのかたきうち……おあってない……みんな、みーんなもえかすにするまで、おあらないんらよ……」トローン
567 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:33:59 ID:CCE
ヘンゼル「グレーテル、もう良いんだ!パパさんの仇打ちは大切だけど、僕はお前の事だって大切なんだ!今のグレーテルはどう見ても普通じゃない…!」
グレーテル「おにいたん……つかまれてたらみんなもやせないんらお……だから、はなしてほしいんらよ……」
ヘンゼル「ろれつが回ってないんじゃないか!あまりの熱で正気じゃなくなってるんだ、そんな状態でほっておけるわけないよ!」
グレーテル「……はなひて!」ブンッ
ドシャアッ
お千代「ヘンゼル!」
ヘンゼル「グッ……!なんて力だ…まるで魔力を込めた時の僕の一撃…!」
グレーテル「しんぱいしないでいいんらお……わたしがぜんぶもやすんだお、いやなことも、わるいおもいでも、もやしつくすんらお……」スッ
カッ ボボォォォッ!!
グレーテル「わたひのからだのなか……おにいたんのまりょくでいーっぱいなの……だからまほうもいーっぱいつかえう……なんだかとってもきもちのいいきぶんなんらよ」トローン
お千代「な、なんなんこの力…!辺り一面、炎の海になったんよ…!建物も畑も…焼きつくすつもりなん?そんなの駄目だよグレーテル!」
グレーテル「わたひはよわいから、なんにもできないとおもってたんだお……おにいたんややへえぱぱやおちよたん、だれもたすけられないってあきらめてたの……でも、もうわたひはなんだってできるんらよ」
ヘンゼル「もうやめるんだグレーテル!明らかにおかしい!魔法の使いすぎで影響が出てるんだ!」
グレーテル「うるひゃい……!」ビュオ
ボボォッ!!
ヘンゼル「…っ!」
グレーテル「わたひがまもるんだお、わたしがみーんなまもる……らからおにいたんはじゃましらいで……!」
568 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:35:55 ID:CCE
お千代「ど、どうするん?グレーテル、絶対に様子がおかしいんよ!なんとかしてあげないとだめなんよ!」ワタワタ
ヘンゼル「あいつ等を始末する間、もうずっとグレーテルと手をつないでた…きっと僕の魔力を取り入れすぎたんだ。でも、その対処方法を僕は知らない…!でも、何とかして止めないと…!」
グレーテル「おにいたん、わたひをとめるつもりらの?なんでじゃまするの?なんで、わたひがつおくなったこと、よろこんでくえないの?」
グレーテル「そんなおにいたん、わたひのおにいたんじゃないろ……へんぜうおにいたんは、もっとやさしくて……いっつもわたひのみかたなんらお……」スッ
グレーテル「らから、おまえはおにいたんじゃないんら……!にせもののおにいたんれしょ……にせものはもえかすにするんらよ……」トローン
ヘンゼル「何言ってるんだ、落ち着いてくれグレーテル…!」
グレーテル「さよならなんらよ、にせもののおにいたんなんか……いらないんらから……」
ーー雪の女王「もしも許容を越えてグレーテルの体内に魔力が流れるような事があれば……」
ヘンゼル(僕は馬鹿だ。女王に忠告されていたのに、パパさんが人柱にされて頭に血が昇って、復讐にとらわれて、グレーテルの身体の事を考えてあげられなかった…!)
ーー雪の女王「……その安全は保障できない」
ヘンゼル(あれはグレーテルの身の安全だけじゃない。僕にまで危険を及ぶすかもしれないっていう意味だったんだ、それほどまでにグレーテルの身体は魔力と相性が悪かったんだ)
ヘンゼル(それをわかったつもりになって、良い気になって、グレーテルを止めなかった僕の責任だ。この身体を焼かれてでもグレーテルを止めてやらないと…!)
グレーテル「しんじゃえ…にせもの……!」ボボッ
お千代「ヘンゼル…!」
ヘンゼル「……くっ!」
メラメラッ ボボォォッ!
ヘンゼル(あれ…?どういうことだ…確かに炎に包まれたと思ったのに熱くない…?)
スッ
雪の女王「……グレーテル、少し会わない間に随分と過激な性格になってしまったじゃないか」フゥ
雪の女王「しかし、私の氷を溶かす為にはもう少し火力を上げなければいけないようだな?」フフッ
569 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:38:59 ID:CCE
雪の女王「さて、ヘンゼルにもグレーテルにも言いたいことは山ほどあるが…宮殿に戻ってからにしよう、ここに居られる時間はもう少なそうだ」
ゴゴゴゴゴ ボロボロボロ……
お千代「建物が崩れて…違う、風景もボロボロ崩れ落ちていってるんよ…!?ど、どういうことなん…?」ワタワタ
雪の女王「…おとぎ話の消滅が始まった。急がなければ巻き込まれてしまうな」
ヘンゼル「女王。お願いだ…僕はどんな罰だって受ける、だからこのお千代も連れて行ってあげて欲しいんだ。こいつは父親を人柱にされて…この世界に居ても不幸になるだけなんだ、そんなの許せない…!」
雪の女王「…おそらくキミは弥平に世話になったんだろう?家族の家族は当然家族だ。それにこんなにかわいい少女を見捨てるほど私は冷酷ではないからな。だがその前に、私の可愛いグレーテルにひとつ口づけをしてやらないといけない」スッ
グレーテル「じょおうさまも……わたひのじゃまするつもりなんらね……れも、わたひのほうがつよいんだお……ゆきはほのおでとけちゃうんらから……」
雪の女王「ほう、なかなか言うじゃないか。確かに私は火が苦手だ、だが雪が炎で溶けるなんてのは自然界での話だよグレーテル」
雪の女王「私の雪を…私の氷をそう容易く溶かせると思っているのか?才覚があるとはいえ、魔法を覚えたての子供に後れを取るようでは『雪の女王』なんて名は冠することはできないさ」スッ
パキパキパキパキ…
グレーテル「……っ」パキパキッ
お千代「こ、氷がグレーテルを覆い始めたんよ!?」ワタワタ
ヘンゼル「グレーテル…!女王、大丈夫なの?なんな風に氷で覆って…」
雪の女王「安心するといい、身体を冷やす為とグレーテルが暴れない為に拘束しているだけだ。グレーテルは私が抱える、二人はしっかりと私に掴まっているようにな」スッ
ボロボロボロ… ボロボロボロ…
雪の女王「またひとつ、おとぎ話が消滅するか…これは私の保護者としての責任問題だな」ボソッ
雪の女王「…さぁ帰ろう、私の宮殿へ。いいや、私達家族の家に…な」ヒュン
570 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:45:33 ID:CCE
今日はここまでです
おさらい補足
魔力耐性が低いグレーテルは魔力を受け取りすぎると体に付加がかかります。
もうそろそろ回想終わります
ヘンゼルとグレーテル。キジも鳴かずば編 次回に続きます
571 :名無しさん@おーぷん :2015/08/30(日)23:52:56 ID:h9T
>>1さん、乙です!
雪の女王が絶妙なタイミングで入り込んで来て本当に良かった。
回想が終わってこれからが本番ですね。
司書さんにも何かしらの秘密があるだろうけど近々明らかになるのでしょうね。
次回の更新が楽しみです!!
572 :名無しさん@おーぷん :2015/08/30(日)23:54:30 ID:TYA
乙です!地主がおとぎ話だと知っている人間だったのか
お千代はどうなるんだろう……
気になる事が多すぎる
次回も楽しみだ!
590 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/09/06(日)23:32:32 ID:vqR
雪の女王の世界 雪の女王の宮殿 ヘンゼルとグレーテルの部屋
グレーテル「……すぅすぅ」スヤスヤ
ヘンゼル「グレーテル、ごめんね…僕が、僕がお前に無理をさせたから…」ギュッ
雪の女王「ヘンゼル、もういい加減に離れたらどうだ?心配する必要は無い、安静にしていれば数日後には起き上がれるようになる」
ヘンゼル「女王、グレーテルは数日経てば今までと同じ生活ができるのかな?何か後遺症とか残ったり、しないよね?」
雪の女王「結論を言えば後遺症の心配は無い。ただし、今は相当身体が弱ってる状態だから無理をすれば今度こそ命の保証は出来ない」
ヘンゼル「そうなんだ、良かった…」
雪の女王「良かった……か。聞かせてくれ、なにが良かったと言うんだヘンゼル?」スッ
ヘンゼル「……」
雪の女王「治療をしている間、キミからあの【キジも鳴かずば】の世界で何が起きたか聞いたが…もう少しでキミは最愛の妹を失っていたんだぞ」
雪の女王「私は確かに伝えた、グレーテルは魔法耐性が低い事、だから魔法は余程の事が無ければ使わないようにと。聡明な君なら村を焼き払うほどの強い魔法を行使すれば妹がどうなるかわかっていたはずだろう」
ヘンゼル「…わかってた、魔法を使えばグレーテルが苦しむ事。でも、グレーテルも復讐には賛成してくれたしもし苦しんだとしてもこんな状態にまでなるなんて、思ってなかった」
雪の女王「今回は完全に症状が悪化する前に私が処置出来たから事なきを得た。だが、もう数分遅れてグレーテルがさらに魔法の行使を続けていれば…」
雪の女王「グレーテルの身体は完全に魔力に蝕まれて命を落としていただろう。例え運よく生きていたとしても重大な障害が残った可能性が高い」
雪の女王「キミはいつだって止める事が出来たはずだ、でも止めなかった。復讐しか見えなくなりグレーテルの身体の事など二の次にしてしまった、そうだな?」
591 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/09/06(日)23:34:10 ID:vqR
ヘンゼル「僕は考えが甘かったんだ。氷雪花を探している時に灯りを燈す魔法を使ったグレーテルは平然としていた。だからきっと今回も平気だろうって…」
雪の女王「…本当にそうか?少しの灯りを燈す魔法と村を焼き払うような火炎の魔法では負担もはるかに違う。そんな事想像できるはずだろう、普段のキミならば」
雪の女王「あの時のキミは、優しくしてくれた弥平を失った事で頭に血が上っていた。本当は危険だと感づいていながら…グレーテルが少々苦しもうが復讐を遂げる事を優先したんじゃないか?」
ヘンゼル「……そうだったかもしれない。あの時の僕はグレーテルが少しふら付いていたのに気がついていた。だけど、村の大人達を殺す事を優先にした」
ヘンゼル「燃え上がる家々や死んでいく大人を見て、あの時の僕はなんだってできると、思いあがっていたんだ」
雪の女王「思いあがっていた、というのは自分の魔力にか?」
ヘンゼル「僕の魔力と…それを使って魔法を操るグレーテルの力にだよ。僕の魔力とグレーテルの魔法があればなんだってできるってそんな風に思ったんだ」
ヘンゼル「これだけ強力な魔法を使えればどんなにズルイ大人や悪い大人相手でも引けを取る事は無い、きっとこれだけの力があればグレーテルやお千代を幸せに出来るって思ってた」
雪の女王「自分達の持つ力の大きさを目の当たりにして…自惚れてしまったということか」
ヘンゼル「村人への罪悪感や村を焼いた後悔なんか無かった。僕達に優しくしてくれたパパさんを殺した奴らに復讐をする事、それしか頭に無かった」
ヘンゼル「その時はグレーテルの身体の事なんか考えてなかった。自分勝手に復讐の事だけ考えて……これじゃあ僕は村の為にパパさんを利用した大人達と何も変わらない……」
ヘンゼル「僕は復讐の為にグレーテルの魔法を利用したのと同じだ。妹の身体を顧みず目先の復讐しか見てないなんて、兄失格だ」
雪の女王「…そうだな、今回の君の行動はグレーテルの兄として最悪のものだった。だが幸いグレーテルの命に別状は無い、キミは今回の件を糧にする為にしばらく一人で反省すると良い。私はお千代と話してくる」
スッ
592 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/09/06(日)23:37:08 ID:vqR
ヘンゼル「待ってよ女王、僕も行く。僕もお千代に会って謝らないといけない」
雪の女王「駄目だ。しばらくの間、キミがお千代に会う事は許可しない」
ヘンゼル「お願いだよ女王!僕はグレーテルを危険な目にあわせたばかりか…僕のせいでお千代まで不幸にしてしまったんだ!」
雪の女王「キミのせいじゃない。だから今は魔法の力に溺れて妹と自分自身を危険にさらした事を反省すべきだ」
ヘンゼル「でも僕が小豆と米を盗んだりをしなければパパさんは人柱にされなかったんだ、僕が盗みを働かなければお千代はパパさんとずっと一緒に暮らせたんだ!」
雪の女王「それは不可能だ、弥平が人柱にされなければ【キジも鳴かずば】は消滅する。キミが米と小豆を盗まなければ、もう少し早く世界が消滅していただけだ。キミ達とあの親子を巻き込んで」
ヘンゼル「そうだとしても…僕はお千代を苦しめてしまった…泣かせてしまったんだ!家族なのに!僕の軽率な行動でみんなを苦しめてしまった…」
雪の女王「今の君に出来る事は謝罪なんかじゃない。お千代にもキミにも一度にいろんな事が起き過ぎた、一人で今回の出来事にキチンと向き合う時間が必要だ」スッ
ヘンゼル「それもキチンとやる!女王が許可してくれないなら、無理にでも僕は会いに行く!そして傷つけ苦しめた事を、救ってあげられなかった事を謝るんだ!」ダッ
パキパキパキパキッ……!
ヘンゼル「……っ!」
ドシャアァァ
ヘンゼル「靴底を床に凍りつかせて…っ!なにをするんだ女王!僕は…僕は…不甲斐なかった事をお千代に許して欲しいだけなんだ!あいつは家族なのに、僕は何もしてやれなかった!」
雪の女王「言っただろう、キミがすべきはお千代への謝罪じゃない。それが理解出来ないのなら私は何度でもキミの足を床に縫い付ける」
ヘンゼル「女王!どうして!?どうしてそうまでして僕の邪魔をするんだ!?」
雪の女王「……今のキミは重要な分岐点に立たされている」
ヘンゼル「分岐点……?」
雪の女王「キミが憎んでいる大人達のような人間になるか、それともキミが慕っている弥平の様な人間になれるか。その分岐点だ」
593 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/09/06(日)23:38:52 ID:vqR
雪の女王「我々はおとぎ話の世界の住人。現実世界の人間の様に年を取るわけじゃない」
雪の女王「おとぎ話の登場人物の年齢は物語の展開の影響を受ける。おとぎ話の途中で年齢が大きく変動する登場人物は年齢も変動するが、おとぎ話の始まりからおしまいまで年齢が代わらないキミの場合はそれ以上成長する事は無い」
雪の女王「しかし、これは年齢云々というよりもどのような人間に成長するかという次元の話だ」
ヘンゼル「仮に僕が成長して大人になるとしたら、僕が憎んでいるズルイ大人や悪い大人に僕自身がなってしまう可能性があるって女王は思ってるの?」
雪の女王「キミは今回大きな悲しみを負った。父親同然の弥平を失い、それを自分の責任だと思いお千代を悲しませた事に責任を感じている。そして感情に任せた行動の末、グレーテルを死なせかけた」
雪の女王「キミはまだ未熟だ。抑えきれない憤りや抱えきれない悲しみを処理する手段を持ち合わせていない、この一件を糧にして困難を乗り越える心の強さを手に入れなければいけないんだ」
雪の女王「困難や悲しみは生きていくうえでは避けられないが、抱えた不の感情をそのままにしていてはいずれ精神が歪んでしまう。それらの感情を振り払う方法を知らなければいずれキミが憎んでいるような所謂『悪い大人』になってしまうだろう」
ヘンゼル「馬鹿な!僕達の父親だったあの男や悪い魔女や村の大人たちみたいな悪人に僕がなるって言うのか!?なんでそんな事いうのかわからない。僕が未熟だからなの?」
雪の女王「ヘンゼル、感情的にならないでくれ。私はキミにそうなって欲しくないから言っているんだ…憤る前に【キジも鳴かずば】でのキミ自身の行動を振り返ってみろ」
ヘンゼル「それこそなんの問題もないでしょ、僕は大切な家族を幸せにするために行動したんだ!確かに盗みを働いた事は結果としてパパさんを人柱にしてしまう事になった、でも僕が地主や薄毛…村の奴等を殺したのは仕返しだ!」
ヘンゼル「無実のパパさんを人柱にする為に罪を着せて、パパさんを殺してお千代を悲しませたあいつ等に対する復讐だ!僕に非は無い!悪いのは村の連中だ!」
雪の女王「駄目なんだヘンゼル、それじゃあ…キミの心はいつまでも悲しみから解き放たれない」
雪の女王「キミは大好きなパパさんである弥平を、人柱が欲しいという村の連中の都合で殺されたと思っているようだが…」
ヘンゼル「だってそうじゃないか!パパさんはあいつ等の自分勝手な都合の為に犠牲になったんだ!」
雪の女王「それなら聞こう、キミが殺した村の連中にだって家族が居ただろう。もしかしたらお千代みたいな幼い子供が居たかもしれない。その子供にとって、キミはどういう存在に映る?」
ヘンゼル「でも、それは…っ!」
雪の女王「大好きな父親が逆恨みで殺された、犯人は罪人として人柱にされた弥平の息子ヘンゼルだ。その殺された男は何か悪さをしたわけじゃない、罪人の弥平を助けなかったという理由でキミに殺された」
雪の女王「その男の子供は納得がいくと思うか?何の罪もないのに殺されてしまった父親の事を…殺されても仕方が無いと諦められるか?」
地主「ワシはこの世界を救うために行動したのだ、それの何が悪い!?」
地主「ヘンゼル君が盗みを働き、それを弥平の仕業にすることでおとぎ話の存在を保つ。君がそういう考えなのだと察して、ワシはそれに便乗しただけだ!」
ヘンゼル「なにそれ、僕に責任を押し付けるつもりなの?」キッ
地主「そんなつもりは無い、だがワシの行動は間違ってなどいない!そもそも…考えなくてもわかる事だろう!この世界が消えればどうなるか!」
地主「この世界が消えれば多くの人々が巻き込まれて消えてしまう!現実世界の人々の記憶からも【キジも鳴かずば】は消えてしまうんだぞ!」
地主「だがお千代と弥平を犠牲にすればそんな悲劇は起きない!そもそもあの二人は不幸になる宿命だ、人柱になる為、父と悲惨な別れをする為、その為にあの二人は生み出されたんだ。そんな二人を犠牲にする事の何が悪い!?」
地主「あまりにも大きな犠牲と弥平とお千代二人の幸せとを天秤に掛ければどちらを優先にすべきかなど考えるまでもないだろう!?」
ヘンゼル「……この世界と二人。どっちを犠牲にすべきかなんて、確かに考えるまでも無いね」
地主「そうだろう!?だからこそワシはこの世界をs」
ヒュッ ガシッ
ヘンゼル「この世界と家族を天秤に掛けるなら、僕は迷わず家族を選ぶ」ゴゴゴゴゴ
地主「ぐぉぉっ…!」ベキベキベキ
ヘンゼル「パパさんとお千代には悲惨な結末しか待っていないって言うならこんな世界は消えてしまえばいい…!」グイッ
地主「くはっ…」ドサッ
ヘンゼル「僕の行動がこの世界を救ってしまったというなら、僕が責任を持ってこの世界を消滅させる」
ヘンゼル「僕の家族が幸せになれないのなら、そんな馬鹿げた世界は消えてしまえばいいんだ」スッ
561 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:22:32 ID:CCE
犀川の土手 人柱の儀式の祭壇
ザワザワ
神主「荒らぶる犀川の神よ…我々は貴方への供物として村人の命を捧げます。どうかその怒りを鎮めたまえ…」バッサバッサ
ザワザワ
「これで犀川の神様も怒りを鎮めてくださるはずじゃあ」
「しかし、たった一握りの米と小豆で人柱とは…弥平も気の毒なもんじゃ」
「そうじゃなぁ、お千代ちゃんもまだ幼いというのに可哀そうに…あの異国の二人も残して逝っちまうたぁ、さぞ心残りだったろう」
「確かになぁ、同情はしちまうけども…弥平は罪人じゃ、文句はいえまいて」
「可哀そうじゃがこれは村で決まった事…ワシらが今更意見してどうにかなる問題でもあるまい」
ザッ
グレーテル「弥平パパ居ない……もう人柱にされちゃったんだ……間に合わなかったんだね……」
ヘンゼル「パパさんは僕達を助けてくれたのに僕はパパさんを助けられなかった…!あんな奴に足止めを食らっていたせいだ…」
グレーテル「こんなに人が居るのに……気の毒だって……可哀そうって……みんな言ってるのに……でも、誰も弥平パパのこと助けなかったんだね……」
ヘンゼル「大人なんてみんな口だけだ、結局自分の事が大事なんだこいつ等は」ギロッ
隣のおっさん「ヘンゼルにグレーテル…!やっぱり来ちまったか。婆さんに子供等を引きとめてくれと言ったが無理だったか…早く帰るんだ、ここは子供が居て良い場所じゃないから」
ヘンゼル「おじさんはパパさんにも僕達にも優しくしてくれたのに、いざというときは助けてもくれないんだね」
隣のおっさん「そう言わんでくれよ…俺も辛いんだ、些細な盗みでも弥平が罪人である事に変わりは無い。村人たちの前で罪人を助けてやることなんかできねぇよ…辛い話だがな…」
グレーテル「辛いのはおじさんじゃないよ……?死んじゃった弥平パパと、お千代ちゃんだよ……だから辛いとか、言わないで……」
562 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:24:28 ID:CCE
隣のおっさん「そうだな…俺達が口にしていい言葉じゃねぇ。でもあれだ、弥平は人柱にされちまったけど、お千代ちゃんとお前達の面倒はうちでちゃんとみるから安心していいんだぞ」
ヘンゼル「必要ないよ。もうこんな世界は壊すから」スッ
隣のおっさん「ヘンゼル…?お前、何を言って…」
薄毛のおっさん「…こんな場所に子供が居るというから誰かと思えば、お前達だったか」
グレーテル「……薄毛のおじさん……弥平パパが泥棒したって……みんなに言った人……」
薄毛のおっさん「ほう、まるでワシが告げたせいで弥平が人柱にされたような口ぶりじゃな。弥平は罪を犯した、その償いをしただけじゃ」
ヘンゼル「違う。あんた達は都合のいい人柱が欲しかっただけだ。その為にパパさんを利用したんだ」
薄毛のおっさん「言うに事欠いて馬鹿げた事を…!弥平が人柱にされたのはあいつが罪人だったからじゃ、罪を犯したものに罰を与えるのは当然の事」
ヘンゼル「……」ギロッ
薄毛のおっさん「なんだその目は、ワシらが悪いとでも言いたいのか?盗人である弥平の事を棚に上げて、ワシらを責めるつもりか?」
薄毛のおっさん「まったく逆恨みも大概にしてほしいもんじゃ、弥平も大概おかしな奴だったがお前達も相当だ。だからこんな得体の知れない子供を村に引き入れるのは反対だったんだ」
薄毛のおっさん「弥平に同情するとすればお前達の様な輩と関わった事だけじゃな。生活に余裕が無いくせに二人も余分に子供を養うから盗みを働くことになるんじゃ」
薄毛のおっさん「自業自得じゃな。お前達を引き取らなければ弥平も死ぬ事は無かっただろうに、馬鹿な奴じゃまったく」
ヘンゼル「…罪人に罰を与えるのが当然だっていうなら、パパさんを見殺しにしたお前達だって罪人だ」ゴゴゴゴゴ
ヒュッ ゴシャァァ!
薄毛のおっさん「」ドシャッ
ヘンゼル「だから僕が罰する。馬鹿げたこの世界も、自分勝手な大人もみんな…僕が始末する」
563 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:26:52 ID:CCE
「う、薄毛が一撃でやられた!」
「あんな子供が大人を倒すなんてできねぇ!ありゃあ何か不思議な力に違いないぞ!」
「あいつら、弥平の所の拾い子じゃ!復讐に来たに違いねぇ!」
ザワザワ
グレーテル「お兄ちゃん……駄目だよ……」
ヘンゼル「グレーテル。悪いけど、止められても僕はこいつ等を始末する。そうじゃないとパパさんも安らかに眠れない」
グレーテル「止めたりしないよ……でもお兄ちゃんはもう両腕使っちゃったから……うまく魔力撃ち出せないよね……?だから……私が魔法使うよ……」
ヘンゼル(グレーテルに魔法は使わせたくない。だけど、確かに僕はもう両腕潰してる。グレーテルに頼らないとこいつ等に復讐できない…いや、復讐は絶対にする)
グレーテル「弥平パパやお千代ちゃんいじめる大人……許せない……ずるい大人はみんな燃やしちゃうの……私とお兄ちゃんの二人でなら……しかえし、できるよ……?」
ヘンゼル「そうだよね、僕の魔力とグレーテルの魔法。二人一緒ならこいつ等を始末できる。パパさんの無念を晴らせる…!」ギュッ
グレーテル「うん……私の家族を悲しませる人……みんな、かまどで燃やすの……嫌いな人も嫌な事も……燃やせばなくなるもんね……」ギュッ
グレーテル「……真夏のお日様……真冬のストーブ……真夜中のランプ……」ボソボソ
グレーテル「かまどが無いなら……この村全部を熱い熱いかまどにしちゃえ……悪い人たちみんな……かまどでまとめて燃やしつくして……」ボボゥッ
メラメラ ボボゥッ!
「な、なんじゃあ!あの娘っ子、火柱を出しおったぞ!?」
「やっぱり薄毛の言うとおり、妖怪の子供じゃったんじゃあ!!逃げろ、逃げろぉ!」
「妖怪じゃあ!妖怪の子供が暴れ出しおったぞぉぉ!!」
メラメラ ボボゥッ!
564 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:29:20 ID:CCE
メラメラメラ
グレーテル「私の家族……苦しめた大人……許さない……」スッ
メラメラメラァー
「うわぁー!家が!納屋が!村の建物が次々と燃やされていく!」
「おい!やべぇぞ!水持ってこい水!この火の勢いじゃあ早く消火しないと村ごと焼きつくされちまうぞ!」
「水っていっても犀川には近づけねぇし、井戸の水じゃあとても間に合わねぇ!」
グレーテル「お家の火……消してる場合じゃないよ……逃げ場所無くしたら……今度はおじさん達、燃やす番だから……」ボボゥッ
「やべぇ!あの娘っ子やべぇ!俺達を焼き殺すつもりだぞ!?」
「たいした罪でもないのに弥平を人柱にしたりするからこんなことになるんだ!おい、俺は内心反対してたから助けてくれ!」
「あっ、ずるいぞお前!じゃあ俺はあれだ、畑の土地やるから見逃してくれ!頼む!」
グレーテル「駄目……もう弥平パパは私の頭撫でて褒めてくれない……もうお粥も一緒に食べられない……だから駄目、許さない……」スッ
メラメラ ギャアアァァァァ!!
ヘンゼル(これで良い。こいつ等はパパさんを見殺しにした悪人だ、死んで当然なんだ。それより…グレーテルの魔法は本当にすごい)
ヘンゼル(僕の魔力とグレーテルの魔法があれば、どんな悪い大人も始末できる。どんな敵からも家族を護れる…!グレーテルを幸せに出来る!)
ウワァー!タスケテクレー!
グレーテル「……」ゼェゼェ
ヘンゼル「グレーテル。次は向こうだ、何人か村の奴らが逃げて行ったから追いかけて焼き殺そう」
グレーテル「……うん、そう……だね」フラフラ
ヘンゼル「どうしたの?急ごう、逃げられちゃまずい。パパさんの仇は根絶やしにしなきゃ」
グレーテル「うん……みんな燃やしつくすの……だから、頑張る……」スッ
・・・
メラメラメラー メラメラー メラメラー
ギャアアァァー! ヌワァァー!!
グレーテル「……」ハァハァ
ヘンゼル「すごい…すごいよグレーテル、これならこいつ等に思い知らせる事が出来るよ。村を焼き尽くせばこんな馬鹿げたおとぎ話だって消せる!」
グレーテル「……うん……頑張る……」フラフラ
タッタッタッ
お千代「ヘンゼル、グレーテル。なんなんこれ…!何が起きてるの……?」
ヘンゼル「お千代…!ごめん、追いかけたけど…僕達はパパさんを助けられなかった。間に合わずにパパさんは人柱にされた。この村の大人達に」
お千代「…父ちゃん、やっぱり人柱にされたんね…うちが言いつけ破って手毬唄を歌ったせいなんよ…」ポロポロ
ヘンゼル「違う、お千代は悪くない。悪いのはみんな村の大人だよ、こいつ等が人柱なんて馬鹿な真似しなければ誰も悲しまなくて済んだんだ」
お千代「でも、やっぱりうちのせいなんよ…うちの為に盗みをして、うちが喋らなければよかったんよ…うちが何も言わなかったら父ちゃんは…!」ポロポロ
お千代「だからうちはもう…何も喋らない方がいいんよ…」ポロポロ
ヘンゼル「泣かないでお千代、大丈夫だよ。僕とグレーテルが悪い大人達を始末するから、もう悪い奴は一人もいなくなる。だから安心して」
グレーテル「そうだよ……お千代ちゃん……平気……だから……泣かない……で……」フラッ
ドサッ
ヘンゼル「グレーテル…?どうしたんだグレーテル!」
566 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:32:08 ID:CCE
グレーテル「お兄ちゃん……ごめんなさい……弥平パパやお千代ちゃんのしかえし……終わってないのに……私……」ゼェゼェ
ヘンゼル「…っ!なんだ、これ…!グレーテル、お前の身体こんなに熱いなんて普通じゃないよ!」サワッ
グレーテル「……魔法……使い始めてから……急に熱くなって……でも……弥平パパやお千代ちゃんの為だから……」ゼェゼェ
ヘンゼル「我慢してたのか…!クッ…気が付けなかった僕の責任だ、復讐する事ばかり考えて…」
ヘンゼル(油断してた、崖で一度魔法を使った時はどうも無かったから…グレーテルが魔法を使うことの危うさを甘く見てた…!)
グレーテル「お兄ちゃんは悪くないよ……村のおとなが許せないのはわたしも同じ……だから……ゲホゲホゲホッ」ゴホゴホ
お千代「グレーテル…!しっかりするんよ!」
グレーテル「……駄目、おちよちゃん……お兄ちゃん……もう、私……我まんできない……からだがあつくて……あたまがぼーっとして……なんにも、かんがえられなくなっちゃうんだよ、なんだかふあふあしたきぶんなのよ」ボーッ
ヘンゼル「意識がもうろうとしてる…!それに身体がどんどん熱くなってる、早く家に連れて帰って身体を冷やしてあげないと…!」
グレーテル「……」ポケーッ
ヘンゼル「しっかりするんだ、グレーテル!すぐに冷やしてあげるからね、少しだけ辛抱してて…!」
グレーテル「あえ……?おにいたん、あたしつえてどこえいくの……?」トローン
ヘンゼル「どこって、僕達の家だよ。パパさんとお千代と僕達が暮らしてたあの家だ!」
グレーテル「らめなの……まだ、おあってないの……」スタッ
グレーテル「おうち……おとなのひと……まだのこってる……だから、おわってないんらよ……」
グレーテル「やへえぱぱとおちよたんのかたきうち……おあってない……みんな、みーんなもえかすにするまで、おあらないんらよ……」トローン
567 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:33:59 ID:CCE
ヘンゼル「グレーテル、もう良いんだ!パパさんの仇打ちは大切だけど、僕はお前の事だって大切なんだ!今のグレーテルはどう見ても普通じゃない…!」
グレーテル「おにいたん……つかまれてたらみんなもやせないんらお……だから、はなしてほしいんらよ……」
ヘンゼル「ろれつが回ってないんじゃないか!あまりの熱で正気じゃなくなってるんだ、そんな状態でほっておけるわけないよ!」
グレーテル「……はなひて!」ブンッ
ドシャアッ
お千代「ヘンゼル!」
ヘンゼル「グッ……!なんて力だ…まるで魔力を込めた時の僕の一撃…!」
グレーテル「しんぱいしないでいいんらお……わたしがぜんぶもやすんだお、いやなことも、わるいおもいでも、もやしつくすんらお……」スッ
カッ ボボォォォッ!!
グレーテル「わたひのからだのなか……おにいたんのまりょくでいーっぱいなの……だからまほうもいーっぱいつかえう……なんだかとってもきもちのいいきぶんなんらよ」トローン
お千代「な、なんなんこの力…!辺り一面、炎の海になったんよ…!建物も畑も…焼きつくすつもりなん?そんなの駄目だよグレーテル!」
グレーテル「わたひはよわいから、なんにもできないとおもってたんだお……おにいたんややへえぱぱやおちよたん、だれもたすけられないってあきらめてたの……でも、もうわたひはなんだってできるんらよ」
ヘンゼル「もうやめるんだグレーテル!明らかにおかしい!魔法の使いすぎで影響が出てるんだ!」
グレーテル「うるひゃい……!」ビュオ
ボボォッ!!
ヘンゼル「…っ!」
グレーテル「わたひがまもるんだお、わたしがみーんなまもる……らからおにいたんはじゃましらいで……!」
568 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:35:55 ID:CCE
お千代「ど、どうするん?グレーテル、絶対に様子がおかしいんよ!なんとかしてあげないとだめなんよ!」ワタワタ
ヘンゼル「あいつ等を始末する間、もうずっとグレーテルと手をつないでた…きっと僕の魔力を取り入れすぎたんだ。でも、その対処方法を僕は知らない…!でも、何とかして止めないと…!」
グレーテル「おにいたん、わたひをとめるつもりらの?なんでじゃまするの?なんで、わたひがつおくなったこと、よろこんでくえないの?」
グレーテル「そんなおにいたん、わたひのおにいたんじゃないろ……へんぜうおにいたんは、もっとやさしくて……いっつもわたひのみかたなんらお……」スッ
グレーテル「らから、おまえはおにいたんじゃないんら……!にせもののおにいたんれしょ……にせものはもえかすにするんらよ……」トローン
ヘンゼル「何言ってるんだ、落ち着いてくれグレーテル…!」
グレーテル「さよならなんらよ、にせもののおにいたんなんか……いらないんらから……」
ーー雪の女王「もしも許容を越えてグレーテルの体内に魔力が流れるような事があれば……」
ヘンゼル(僕は馬鹿だ。女王に忠告されていたのに、パパさんが人柱にされて頭に血が昇って、復讐にとらわれて、グレーテルの身体の事を考えてあげられなかった…!)
ーー雪の女王「……その安全は保障できない」
ヘンゼル(あれはグレーテルの身の安全だけじゃない。僕にまで危険を及ぶすかもしれないっていう意味だったんだ、それほどまでにグレーテルの身体は魔力と相性が悪かったんだ)
ヘンゼル(それをわかったつもりになって、良い気になって、グレーテルを止めなかった僕の責任だ。この身体を焼かれてでもグレーテルを止めてやらないと…!)
グレーテル「しんじゃえ…にせもの……!」ボボッ
お千代「ヘンゼル…!」
ヘンゼル「……くっ!」
メラメラッ ボボォォッ!
ヘンゼル(あれ…?どういうことだ…確かに炎に包まれたと思ったのに熱くない…?)
スッ
雪の女王「……グレーテル、少し会わない間に随分と過激な性格になってしまったじゃないか」フゥ
雪の女王「しかし、私の氷を溶かす為にはもう少し火力を上げなければいけないようだな?」フフッ
569 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:38:59 ID:CCE
雪の女王「さて、ヘンゼルにもグレーテルにも言いたいことは山ほどあるが…宮殿に戻ってからにしよう、ここに居られる時間はもう少なそうだ」
ゴゴゴゴゴ ボロボロボロ……
お千代「建物が崩れて…違う、風景もボロボロ崩れ落ちていってるんよ…!?ど、どういうことなん…?」ワタワタ
雪の女王「…おとぎ話の消滅が始まった。急がなければ巻き込まれてしまうな」
ヘンゼル「女王。お願いだ…僕はどんな罰だって受ける、だからこのお千代も連れて行ってあげて欲しいんだ。こいつは父親を人柱にされて…この世界に居ても不幸になるだけなんだ、そんなの許せない…!」
雪の女王「…おそらくキミは弥平に世話になったんだろう?家族の家族は当然家族だ。それにこんなにかわいい少女を見捨てるほど私は冷酷ではないからな。だがその前に、私の可愛いグレーテルにひとつ口づけをしてやらないといけない」スッ
グレーテル「じょおうさまも……わたひのじゃまするつもりなんらね……れも、わたひのほうがつよいんだお……ゆきはほのおでとけちゃうんらから……」
雪の女王「ほう、なかなか言うじゃないか。確かに私は火が苦手だ、だが雪が炎で溶けるなんてのは自然界での話だよグレーテル」
雪の女王「私の雪を…私の氷をそう容易く溶かせると思っているのか?才覚があるとはいえ、魔法を覚えたての子供に後れを取るようでは『雪の女王』なんて名は冠することはできないさ」スッ
パキパキパキパキ…
グレーテル「……っ」パキパキッ
お千代「こ、氷がグレーテルを覆い始めたんよ!?」ワタワタ
ヘンゼル「グレーテル…!女王、大丈夫なの?なんな風に氷で覆って…」
雪の女王「安心するといい、身体を冷やす為とグレーテルが暴れない為に拘束しているだけだ。グレーテルは私が抱える、二人はしっかりと私に掴まっているようにな」スッ
ボロボロボロ… ボロボロボロ…
雪の女王「またひとつ、おとぎ話が消滅するか…これは私の保護者としての責任問題だな」ボソッ
雪の女王「…さぁ帰ろう、私の宮殿へ。いいや、私達家族の家に…な」ヒュン
570 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/08/30(日)23:45:33 ID:CCE
今日はここまでです
おさらい補足
魔力耐性が低いグレーテルは魔力を受け取りすぎると体に付加がかかります。
もうそろそろ回想終わります
ヘンゼルとグレーテル。キジも鳴かずば編 次回に続きます
571 :名無しさん@おーぷん :2015/08/30(日)23:52:56 ID:h9T
>>1さん、乙です!
雪の女王が絶妙なタイミングで入り込んで来て本当に良かった。
回想が終わってこれからが本番ですね。
司書さんにも何かしらの秘密があるだろうけど近々明らかになるのでしょうね。
次回の更新が楽しみです!!
572 :名無しさん@おーぷん :2015/08/30(日)23:54:30 ID:TYA
乙です!地主がおとぎ話だと知っている人間だったのか
お千代はどうなるんだろう……
気になる事が多すぎる
次回も楽しみだ!
590 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/09/06(日)23:32:32 ID:vqR
雪の女王の世界 雪の女王の宮殿 ヘンゼルとグレーテルの部屋
グレーテル「……すぅすぅ」スヤスヤ
ヘンゼル「グレーテル、ごめんね…僕が、僕がお前に無理をさせたから…」ギュッ
雪の女王「ヘンゼル、もういい加減に離れたらどうだ?心配する必要は無い、安静にしていれば数日後には起き上がれるようになる」
ヘンゼル「女王、グレーテルは数日経てば今までと同じ生活ができるのかな?何か後遺症とか残ったり、しないよね?」
雪の女王「結論を言えば後遺症の心配は無い。ただし、今は相当身体が弱ってる状態だから無理をすれば今度こそ命の保証は出来ない」
ヘンゼル「そうなんだ、良かった…」
雪の女王「良かった……か。聞かせてくれ、なにが良かったと言うんだヘンゼル?」スッ
ヘンゼル「……」
雪の女王「治療をしている間、キミからあの【キジも鳴かずば】の世界で何が起きたか聞いたが…もう少しでキミは最愛の妹を失っていたんだぞ」
雪の女王「私は確かに伝えた、グレーテルは魔法耐性が低い事、だから魔法は余程の事が無ければ使わないようにと。聡明な君なら村を焼き払うほどの強い魔法を行使すれば妹がどうなるかわかっていたはずだろう」
ヘンゼル「…わかってた、魔法を使えばグレーテルが苦しむ事。でも、グレーテルも復讐には賛成してくれたしもし苦しんだとしてもこんな状態にまでなるなんて、思ってなかった」
雪の女王「今回は完全に症状が悪化する前に私が処置出来たから事なきを得た。だが、もう数分遅れてグレーテルがさらに魔法の行使を続けていれば…」
雪の女王「グレーテルの身体は完全に魔力に蝕まれて命を落としていただろう。例え運よく生きていたとしても重大な障害が残った可能性が高い」
雪の女王「キミはいつだって止める事が出来たはずだ、でも止めなかった。復讐しか見えなくなりグレーテルの身体の事など二の次にしてしまった、そうだな?」
591 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/09/06(日)23:34:10 ID:vqR
ヘンゼル「僕は考えが甘かったんだ。氷雪花を探している時に灯りを燈す魔法を使ったグレーテルは平然としていた。だからきっと今回も平気だろうって…」
雪の女王「…本当にそうか?少しの灯りを燈す魔法と村を焼き払うような火炎の魔法では負担もはるかに違う。そんな事想像できるはずだろう、普段のキミならば」
雪の女王「あの時のキミは、優しくしてくれた弥平を失った事で頭に血が上っていた。本当は危険だと感づいていながら…グレーテルが少々苦しもうが復讐を遂げる事を優先したんじゃないか?」
ヘンゼル「……そうだったかもしれない。あの時の僕はグレーテルが少しふら付いていたのに気がついていた。だけど、村の大人達を殺す事を優先にした」
ヘンゼル「燃え上がる家々や死んでいく大人を見て、あの時の僕はなんだってできると、思いあがっていたんだ」
雪の女王「思いあがっていた、というのは自分の魔力にか?」
ヘンゼル「僕の魔力と…それを使って魔法を操るグレーテルの力にだよ。僕の魔力とグレーテルの魔法があればなんだってできるってそんな風に思ったんだ」
ヘンゼル「これだけ強力な魔法を使えればどんなにズルイ大人や悪い大人相手でも引けを取る事は無い、きっとこれだけの力があればグレーテルやお千代を幸せに出来るって思ってた」
雪の女王「自分達の持つ力の大きさを目の当たりにして…自惚れてしまったということか」
ヘンゼル「村人への罪悪感や村を焼いた後悔なんか無かった。僕達に優しくしてくれたパパさんを殺した奴らに復讐をする事、それしか頭に無かった」
ヘンゼル「その時はグレーテルの身体の事なんか考えてなかった。自分勝手に復讐の事だけ考えて……これじゃあ僕は村の為にパパさんを利用した大人達と何も変わらない……」
ヘンゼル「僕は復讐の為にグレーテルの魔法を利用したのと同じだ。妹の身体を顧みず目先の復讐しか見てないなんて、兄失格だ」
雪の女王「…そうだな、今回の君の行動はグレーテルの兄として最悪のものだった。だが幸いグレーテルの命に別状は無い、キミは今回の件を糧にする為にしばらく一人で反省すると良い。私はお千代と話してくる」
スッ
592 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/09/06(日)23:37:08 ID:vqR
ヘンゼル「待ってよ女王、僕も行く。僕もお千代に会って謝らないといけない」
雪の女王「駄目だ。しばらくの間、キミがお千代に会う事は許可しない」
ヘンゼル「お願いだよ女王!僕はグレーテルを危険な目にあわせたばかりか…僕のせいでお千代まで不幸にしてしまったんだ!」
雪の女王「キミのせいじゃない。だから今は魔法の力に溺れて妹と自分自身を危険にさらした事を反省すべきだ」
ヘンゼル「でも僕が小豆と米を盗んだりをしなければパパさんは人柱にされなかったんだ、僕が盗みを働かなければお千代はパパさんとずっと一緒に暮らせたんだ!」
雪の女王「それは不可能だ、弥平が人柱にされなければ【キジも鳴かずば】は消滅する。キミが米と小豆を盗まなければ、もう少し早く世界が消滅していただけだ。キミ達とあの親子を巻き込んで」
ヘンゼル「そうだとしても…僕はお千代を苦しめてしまった…泣かせてしまったんだ!家族なのに!僕の軽率な行動でみんなを苦しめてしまった…」
雪の女王「今の君に出来る事は謝罪なんかじゃない。お千代にもキミにも一度にいろんな事が起き過ぎた、一人で今回の出来事にキチンと向き合う時間が必要だ」スッ
ヘンゼル「それもキチンとやる!女王が許可してくれないなら、無理にでも僕は会いに行く!そして傷つけ苦しめた事を、救ってあげられなかった事を謝るんだ!」ダッ
パキパキパキパキッ……!
ヘンゼル「……っ!」
ドシャアァァ
ヘンゼル「靴底を床に凍りつかせて…っ!なにをするんだ女王!僕は…僕は…不甲斐なかった事をお千代に許して欲しいだけなんだ!あいつは家族なのに、僕は何もしてやれなかった!」
雪の女王「言っただろう、キミがすべきはお千代への謝罪じゃない。それが理解出来ないのなら私は何度でもキミの足を床に縫い付ける」
ヘンゼル「女王!どうして!?どうしてそうまでして僕の邪魔をするんだ!?」
雪の女王「……今のキミは重要な分岐点に立たされている」
ヘンゼル「分岐点……?」
雪の女王「キミが憎んでいる大人達のような人間になるか、それともキミが慕っている弥平の様な人間になれるか。その分岐点だ」
593 :◆oBwZbn5S8kKC :2015/09/06(日)23:38:52 ID:vqR
雪の女王「我々はおとぎ話の世界の住人。現実世界の人間の様に年を取るわけじゃない」
雪の女王「おとぎ話の登場人物の年齢は物語の展開の影響を受ける。おとぎ話の途中で年齢が大きく変動する登場人物は年齢も変動するが、おとぎ話の始まりからおしまいまで年齢が代わらないキミの場合はそれ以上成長する事は無い」
雪の女王「しかし、これは年齢云々というよりもどのような人間に成長するかという次元の話だ」
ヘンゼル「仮に僕が成長して大人になるとしたら、僕が憎んでいるズルイ大人や悪い大人に僕自身がなってしまう可能性があるって女王は思ってるの?」
雪の女王「キミは今回大きな悲しみを負った。父親同然の弥平を失い、それを自分の責任だと思いお千代を悲しませた事に責任を感じている。そして感情に任せた行動の末、グレーテルを死なせかけた」
雪の女王「キミはまだ未熟だ。抑えきれない憤りや抱えきれない悲しみを処理する手段を持ち合わせていない、この一件を糧にして困難を乗り越える心の強さを手に入れなければいけないんだ」
雪の女王「困難や悲しみは生きていくうえでは避けられないが、抱えた不の感情をそのままにしていてはいずれ精神が歪んでしまう。それらの感情を振り払う方法を知らなければいずれキミが憎んでいるような所謂『悪い大人』になってしまうだろう」
ヘンゼル「馬鹿な!僕達の父親だったあの男や悪い魔女や村の大人たちみたいな悪人に僕がなるって言うのか!?なんでそんな事いうのかわからない。僕が未熟だからなの?」
雪の女王「ヘンゼル、感情的にならないでくれ。私はキミにそうなって欲しくないから言っているんだ…憤る前に【キジも鳴かずば】でのキミ自身の行動を振り返ってみろ」
ヘンゼル「それこそなんの問題もないでしょ、僕は大切な家族を幸せにするために行動したんだ!確かに盗みを働いた事は結果としてパパさんを人柱にしてしまう事になった、でも僕が地主や薄毛…村の奴等を殺したのは仕返しだ!」
ヘンゼル「無実のパパさんを人柱にする為に罪を着せて、パパさんを殺してお千代を悲しませたあいつ等に対する復讐だ!僕に非は無い!悪いのは村の連中だ!」
雪の女王「駄目なんだヘンゼル、それじゃあ…キミの心はいつまでも悲しみから解き放たれない」
雪の女王「キミは大好きなパパさんである弥平を、人柱が欲しいという村の連中の都合で殺されたと思っているようだが…」
ヘンゼル「だってそうじゃないか!パパさんはあいつ等の自分勝手な都合の為に犠牲になったんだ!」
雪の女王「それなら聞こう、キミが殺した村の連中にだって家族が居ただろう。もしかしたらお千代みたいな幼い子供が居たかもしれない。その子供にとって、キミはどういう存在に映る?」
ヘンゼル「でも、それは…っ!」
雪の女王「大好きな父親が逆恨みで殺された、犯人は罪人として人柱にされた弥平の息子ヘンゼルだ。その殺された男は何か悪さをしたわけじゃない、罪人の弥平を助けなかったという理由でキミに殺された」
雪の女王「その男の子供は納得がいくと思うか?何の罪もないのに殺されてしまった父親の事を…殺されても仕方が無いと諦められるか?」
キモオタ「我輩がおとぎ話の世界に行くですとwww」ティンカーベル「そう」 ヘンゼルとグレーテル編
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