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放火魔「今夜はベッドで燃え上がろうぜぇぇぇ!!!」嫁「……暑苦しい」

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Part3
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:20:03.44 ID:ki89SNUd0
グサササッ!
?「ちっ、ライターにマッチが刺さって……!」
?「……何者です?」
放火魔「俺か? 俺は……“放火魔”だよ!」

58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:23:07.76 ID:ki89SNUd0
?「…………!」
?「ほう……もしかして、先日山小屋を延焼させずに燃やしたのはあなたですか?」
放火魔「! ……なんで、あの事件を知ってるんだ?」
?「私もあの事件の検証には立ち会いましたからね」
?「いやぁ、実に見事な手際でした。ぜひ一度あなたにはお会いしたかったんです」
放火魔「そのわりに、刑事っぽくねえな……さてはお前、消防士か?」
消防士「正解です!」
消防士「私、消防士にして放火魔でもあるんですよ! アッハッハ、面白いでしょう?」

59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:25:46.60 ID:ki89SNUd0
放火魔「消防士が放火とか……笑えねえよ。まったくの正反対じゃねえか」
消防士「そうでしょうか?」
消防士「優秀な医者は凶悪な殺人鬼になりえる、優秀なプログラマーは狡猾なハッカーになりえる」
消防士「同じように優秀な消防士は……世にも恐ろしい放火魔になりえるのですよ」
放火魔「…………」
消防士「あの愚直な刑事を焚きつけて、あなたを逮捕させ、罪をかぶってもらうよう仕向けたのですが」
消防士「それは失敗に終わったようですね……」
放火魔「あの刑事さんは、お前が思うほどバカじゃなかったってことだ」
消防士「そのようです。彼もまた優秀だったということでしょう」
消防士「しかし、これは困りましたね……」

60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:28:37.17 ID:ki89SNUd0
消防士「そうだ! あなたも同じく放火を生業とする身、ここは見逃して下さいませんか?」
消防士「いえ、いっそ手を組んで、二人で新しい放火をーー」
放火魔「ふざけんなッ!」
放火魔「俺は人が死ぬような放火はやらねえ……そう決めてんだよ」
放火魔「どっちかが燃え尽きるしかねえんだ……今、ここでな」
消防士「なるほど、仕方ありませんね……」
消防士「私とあなたは、炎を交えるしかなさそうです!!!」
ブンッ!
ギュオオオオオッ!
放火魔(火炎瓶ッ!)
放火魔「ふん、こんなもんにビビってたら、放火魔は務まらねえ!」パシッ
消防士(ほう、あっさりキャッチとは!)

61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:30:22.18 ID:ki89SNUd0
放火魔「今度はこっちからいくぜっ! マッチ投げ!」シュバババッ
グサササッ!
消防士「ぐあっ……!」
放火魔「これくらいも避けられねえのか。消防士のわりに運動神経は鈍いんだな」
消防士「ぐっ、さすがですね……」
消防士「ならば……私も本気でいくとしましょう」バサァッ
放火魔(一瞬にして、消防服に着替えやがった!)
消防士「これが私の……最終兵器です」ニィィ… ガチャッ
放火魔「!?」
放火魔(な、なんだありゃ……。あんなのアリかよ……!)


62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:31:35.71 ID:ki89SNUd0
放火魔(火炎放射器じゃねえかッ!!!)
消防士「ファイヤーッ!!!」
ゴォワァァァァァッ!!!

63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:33:43.96 ID:ki89SNUd0
放火魔「マジかよ……! どうやってそんなもん……!」
消防士「闇ルートで入手したんですが、まさか使うことになるとは思いませんでした」
消防士「どうです? すごいでしょう? この火力!」
ゴォワァァァァァッ!!!
消防士「ご存じかもしれませんが、火炎放射器による炎は、単なる炎ではありません」
消防士「いわば、炎を宿した液体をぶちまけるようなもの! 浴びれば一巻の終わり!」
消防士「いくら放火を極めたあなたでも、どうしようもないでしょう!」
ゴワァッ!!!
放火魔「……ちっ!」

64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:35:45.53 ID:ki89SNUd0
放火魔「そんなもん振り回してたら、すぐ誰かが飛んでくるぞ!」
消防士「ご心配なく! このマンションの防音設備は完璧で、一度入ればこのくらいの音は漏れません!」
消防士「音が漏れる時、イコール、このマンションが燃え尽きた時、というわけです!」
消防士「その時には、あなたも丸焦げになってるというわけですねぇ!」
ゴワッ!!!
放火魔「あっぶね……」
消防士「まだまだァ!」
ゴワァァッ!!!
放火魔「くっ……!」
消防士「トドメですッ!」
ゴォワァァァァァァァァッ!!!

65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:38:14.65 ID:ki89SNUd0
ジュワァァァァァ…
消防士「火炎が……消えた!?」
放火魔「……助かったぜ! ナイス消火!」
消防士「何者だ!?」バッ
嫁「放火魔の嫁よ」
嫁「夫が放火魔なら、私はいわば消火魔。私特製の消火剤に、消せない火はないの」
消防士「なんだとォ……!? 消火魔……?」
放火魔「自慢の嫁だよ」
消防士「貴様、放火魔でありながら、消火を得意とする女なんかと結婚したのか!」
消防士「失望させてくれる! この放火界の……恥さらしがァ!!!」
放火魔「放火界ってなんだよ……」

66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:40:29.88 ID:ki89SNUd0
消防士「優秀な放火魔である貴様に敬意を表して、死体ぐらいは残してやろうと思ったが、やめだ!」
消防士「こうなれば……バカな嫁ともども焼き尽くしてやる! ーー骨までな!」
消防士「最大火力……ファイヤーッ!!!」カチッ
グオアァァァァァッ!!!
放火魔「危ねえッ!」バッ
ドザッ!
嫁「ありがと、あなた」
放火魔「あの火力は……さすがにお前でも消しきれねえな」
嫁「……そんなことない」
放火魔「強がるなって。今はかわすことだけ考えろ!」

67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:42:44.37 ID:ki89SNUd0
消防士「燃え尽きろォッ!!!」
グオアァァァァァッ!!!
放火魔「こっちだ!」バッ
嫁「うん」バッ
消防士「ふん! 避けるだけか! 逃げるだけかァ! 腰抜け夫婦がァ!」
放火魔「こりゃあ、正面からまともに戦うのは無理だ……!」
嫁「……どうする?」
放火魔「大丈夫、俺たち夫婦が力を合わせりゃ、どんな炎だって突破できる!」
放火魔「ましてや、あんなゲス野郎の炎になんか負けるわけねえ!」

68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:45:03.95 ID:ki89SNUd0
放火魔「いくぞ!」ダッ
嫁「ええ」ダッ
消防士「バカめ、わざわざ燃やされに来るとは……ファイヤーッ!!!」
グォアァァァァァッ!!!
放火魔「大盛りマッチ投げ!」シュバババババッ
消防士「マヌケが! んなもん、こっちに届く前に燃え尽きちまうよォ!」ゴォッ
消防士「ーーーー!?」
ボボボッ
消防士(いや!? 何本かのマッチが、燃え尽きずに炎を突き破ってきたーー!)
消防士「う、うわぁぁぁぁぁっ!!!」
グササッ!

69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:47:39.48 ID:ki89SNUd0
消防士「ぐああっ……! あああっ……!」
放火魔「作戦成功!」
嫁「この人のマッチに……私の消火剤をミックスさせたのよ」
放火魔「マッチを大量に投げりゃ、何本かは届いてくれると信じてたぜ!」
放火魔「その腕じゃ、もう火炎放射器は使えねえ……観念しやがれ!」ブオンッ
バキィッ!
消防士「ぐほあぁっ!」ドザッ…
消防士「あぐ、ぐぐぅ……!」
放火魔「さてここで、お前に俺の考える“炎を扱う資格”ってやつを教えてやろう」

70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:50:52.81 ID:ki89SNUd0
放火魔「俺が考える炎を扱う資格は三つ」
放火魔「一つは火を愛してること、二つ目は火を恐れてること……」
放火魔「そして、三つ目は……火はちゃんと後始末すること」
放火魔「お前はどれも満たしてねえ……」
放火魔「ただ放火と人命を奪うことを楽しんでるだけの、正真正銘のクズだ」
放火魔「お前には、マッチの火すら扱う資格がねえッ!」
消防士「ぐうっ……!」
消防士(クソが……せいぜい勝ち誇って、脳みそまで燃え上がってやがれ!)
消防士(こっちには最後の切り札が残ってるんだ!)
消防士(あと一歩、あと一歩近づいてきたら……この小型の火炎放射器でーー)

71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:53:04.83 ID:ki89SNUd0
放火魔「……残念だったな」
消防士「!?」
放火魔「近づかねえよ」
消防士「な、なんで……!? なんでこっちの狙いが……!?」
放火魔「いつも燃えてる俺だが、たまには冷える時もあるんだよ」
消防士「冷える時……!?」
放火魔「それはなーー」
放火魔「俺の嫁をバカにされた時だ」ヒュバババッ
グサササッ!
消防士「ぎぃやぁぁぁっ!!!」
放火魔「人の嫁を“バカ”呼ばわりしやがって……おかげですっかり冷静になっちまった」

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:55:24.42 ID:ki89SNUd0
消防士「あぐぅぅぅ……痛い……あうぅぅぅ……!」
放火魔「今度こそ終わりだな……あとは残り火を始末して、刑事さん呼べばーー」
嫁「ちょっと待って」
放火魔「ん?」
嫁「私……この人を許せない」
嫁「あなたを焼き殺そうとした、この人を……絶対許せないわ」メラメラ…
放火魔「!?」

73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:58:20.19 ID:ki89SNUd0
放火魔(ま、まずい……俺に冷える時があるのと同様、妻にも“燃える時”があるんだった!)
嫁「この人、許せない、許せない、許せない」
嫁「許せない、許せない、許せない、許さない。絶対、許さない」
嫁「逮捕して裁判にかけるなんて生ぬるいわ。税金の無駄遣いよ」
嫁「私、この人の命を消火しちゃいたい。していいわよね? しちゃいましょう」
消防士「ひっ、ひぃぃぃぃっ!」
放火魔「ちょっ、待て待て待てっ!!!」

74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 20:00:08.93 ID:ki89SNUd0
放火魔「あまり燃えるな……」ギュッ…
嫁「!」
放火魔「燃えるのは俺の役目、だろ。お前はいつも冷えててくれ……」
嫁「あなた……」
放火魔「だって、俺はこうして元気なんだから、な?」
嫁「……うん」
消防士「あう、あう、あうぅ……」ガタガタ…
消防士「なんなんだ、この夫婦はぁ……」

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 20:03:26.44 ID:ki89SNUd0
< 公園 >
ウー… ウー…
刑事「まさか……消防士が犯人だったとは……」
放火魔「…………」
刑事「少し屈折したところがあったとはいえ、優秀な消防士だと思っていたから……残念だ」
刑事「そして……放火を未然に防いでくれてありがとう」
刑事「俺がお偉いさんだったら、貴様に警視総監賞をくれてやりたいよ」
放火魔「ハッハッハ、んなもん辞退するよ! のこのこ受け取りに行ったら逮捕されちまう!」
刑事「ふふっ、この手には乗らんか」
刑事「いずれまた……。刑事と犯罪者は引かれ合う宿命だからな」
放火魔「やめてくれ! もう二度とあんたのような優秀な刑事とは関わりたくねえ!」
刑事「俺も同じ気持ちだよ」

76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 20:05:53.77 ID:ki89SNUd0
黒服「……お疲れさん」ザッ
放火魔「あんたがなぜここに?」
黒服「例の放火犯を退治したって聞いて飛んできたんだよ。さすがだな」
放火魔「俺一人の力じゃない……嫁の消火があってのことだ」
黒服「へっ、あんたらは……砂漠よりも暑くて南極よりも寒い世界一の夫婦だよ!」
黒服「また燃やしたいものができたら、頼むぜ!」
放火魔「おう! その時はちゃーんと手順踏んでくれよ!」


77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 20:11:42.03 ID:ki89SNUd0
子供「お兄さーん!」タタタッ
放火魔「ん?」
子供「ぼく、やったよ! 100点取ったよ!」ピラッ
放火魔「やったじゃねえか!」
子供「あのテストを捨てなかったから、次のテストこそ頑張るぞってなって取れたんだ!」
子供「これもお兄さんのおかげだよ!」
放火魔「よせやい」
放火魔「これからも勉強頑張って、世の中に明るい火をともしてくれよ!」
子供「うん!」

78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 20:14:44.95 ID:ki89SNUd0
< 放火魔の家 >
放火魔(放火犯を退治できたし、今日は最高の一日だった……)
放火魔(今夜はあいつとベッドで燃え上がりたいけど……)チラッ
放火魔(いっても断られるだけだろうな……やめとくか)
嫁「ねえ、今夜はベッドの上で燃え上がらない?」
放火魔「えっ、いいの!?」
放火魔「お前から言い出すなんて、珍しいこともあるもんだ! 雪でも降るかな?」
嫁「たまには……ね。私も火がついちゃったから」
放火魔「そうかそうか! じゃあ気が変わらないうちに! すぐ支度しまぁっす!」

79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 20:16:25.11 ID:ki89SNUd0
……
…………
嫁「ねえ、もっと……もっとお願い」モゾ…
放火魔「ちょ、ちょっと待ってくれ……!」
放火魔「もう疲れちゃって……。休もう、少し……」
嫁「まだまだ……寝かさないんだから」
放火魔(俺としたことが忘れてた……!)
放火魔(一度燃え上がった俺の嫁を冷やすのは、並大抵の大変さじゃないってことを……!)
放火魔(今晩、俺は燃え尽きちまうかも……)
ー おわり ー

80 : ◆xvk52ylD8k :2018/04/24(火) 20:17:05.17 ID:ki89SNUd0
以上で完結となります
どうもありがとうございました!

81 : ◆xvk52ylD8k :2018/04/24(火) 20:17:39.01 ID:ki89SNUd0
※気づいたので一ヶ所訂正させて頂きます
>>54『×スクリンプラー → ○スプリンクラー』です
大変失礼いたしました…

82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 21:18:47.42 ID:7i2/1Mfuo


83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 22:17:32.96 ID:epApQ4u90
ひさびさにいい話を見た


88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/25(水) 03:42:41.68 ID:yuBp/HUsO

うまい構成ですた

92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/27(金) 09:05:11.04 ID:o1Zrg7jAo
燃えも冷めもあるあったかいSSだった

93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/04(金) 17:59:42.81 ID:gsZ5p6y+O
うまいことまとめたなぁ
すげぇ面白かったよ乙
またなんか書いてくれ

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