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放火魔「今夜はベッドで燃え上がろうぜぇぇぇ!!!」嫁「……暑苦しい」

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Part2
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/23(月) 21:48:10.82 ID:EQiuTItd0
黒服「だけどまあ……燃え上がる炎のようなあんたと、水や氷みたいな奥さん……お似合いだぜ」
放火魔「よせよ、さらに燃えちまう!」
黒服「もしも、火に心ってもんがあったらよ……」
黒服「あんたみたいな熱くまっすぐな奴に使ってもらうのが、一番嬉しいだろうぜ」
放火魔「放火魔がまっすぐってことはねえだろうが、そう願いたいもんだな!」
黒服「さて、そろそろ行かなきゃな。敵対組織との抗争が待ってる」
放火魔「俺はそういうのに加勢はしねェが、燃え上がって行けよ!」
黒服「ああ……あんたと話してよかった。燃えてきたぜ!」

29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/23(月) 21:50:27.00 ID:EQiuTItd0
< 放火魔の家 >
嫁「今日のお仕事は?」
放火魔「すまねえ、今日は世間話したぐらいだった。しばらく大きな仕事はなさそうだ」
嫁「気にしないで、私もそうだから。世間話してただけ」
放火魔「お前が世間話? どこの誰と?」
嫁「近所の奥さんたちよ」
嫁「今日はある高級マンションに住み始めた奥さんの愚痴を延々と聞かされてたわ」
放火魔「ご近所付き合いも大変だねえ」
嫁「楽なものよ。冷めた顔して聞いてればいいんだもの」

30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/23(月) 21:52:51.18 ID:EQiuTItd0
嫁「あなたはどんな話をしてたの?」
放火魔「ああ……知り合いに、俺とお前の出会いなんかを話したりしたよ」
嫁「え……話したの?」
放火魔「ダメだったか?」
嫁「別に……」プイッ
放火魔(お? ちょいと顔を赤らめたか? 珍しい……)
嫁「今晩、あなたの夕ご飯、十分冷ましておくから」
放火魔(ちょっと怒ってる! これも珍しい!)

31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/23(月) 21:56:04.16 ID:EQiuTItd0
……
……
刑事「またしても、やられたか……!」
消防士「木造アパートが全焼……住民もみな逃げ遅れたようですね。残念なことです」
消防士「警察署も消防署も葬儀屋も忙しくなりますねえ」
刑事「おのれ……放火犯め! これ以上好き勝手されてたまるか!」
消防士「ところで私、こんな噂を聞いたことがあるのです」
消防士「裏社会には、頼まれればどんなものでも燃やす“放火魔”という仕事人がいると」
刑事「その噂は俺も聞いたことがある……」
消防士「私の読みでは、この連続放火事件、その人間が絡んでいます」
刑事「……裏社会の人間、か」
刑事(探ってみる価値はありそうだな……)

32 : ◆xvk52ylD8k :2018/04/23(月) 21:56:40.28 ID:EQiuTItd0
今回はここまでです
よろしくお願いします


33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/23(月) 22:11:32.74 ID:7BB5JDW+O
侮ってたわ、普通に面白い

36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 08:56:23.61 ID:x8oWtOFDO

面白い

37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 18:35:34.31 ID:ki89SNUd0
さて、別の日ーー
< 公園 >
子供「お兄さーん!」
放火魔「ん? いつものボウズじゃねえか」
放火魔「焼き芋か? すまねえ、さっき焼き始めたばかりでまだ焼けてねえんだ」
子供「ううん……実は今日は、頼みがあるんだ」
放火魔「なんだ?」
子供「ええと、実は……」

38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 18:36:27.91 ID:ki89SNUd0
子供「これ!」ピラッ
放火魔「75点のテスト……これがどうした? もしかして、あぶり出しにでもなってるのか?」
子供「ううん、違うの!」
子供「お願い! これを燃やして!」
放火魔「へ? なんで?」
子供「だってこんな点数じゃ、お母さんに叱られるから……」
放火魔「なにいってんだ。七割正解してるんだから、上等だろ」
子供「ううん、最低でも90点以上じゃなきゃダメなんだ。もっと勉強しろって叱られちゃう」
子供「だから……燃やして! なかったことにしちゃって!」
放火魔「……まぁ、いいけどよ」

39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 18:38:23.20 ID:ki89SNUd0
放火魔「ボウズ……燃やす前に一つだけ聞いておく」
子供「?」
放火魔「このテストはふざけて受けたのか? 真面目に受けなかったのか?」
子供「そんなことないよ! 一生懸命やったよ! ちゃんと解いたよ!」
放火魔「だろ?」
放火魔「だったら、燃やさない方がいい」
子供「……どうして?」

40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 18:40:54.25 ID:ki89SNUd0
放火魔「だって、目標より悪い点数だったとしても、お前は本気でやったんだろ?」
子供「……うん」
放火魔「だったら胸を張って、その結果を受け入れないと次につながらない」
放火魔「たとえ、この答案を燃やして証拠隠滅したって、またテストはあるんだからさ」
放火魔「本気で頑張ったその証を燃やしたら、絶対後悔する!」
放火魔「『自分は悪い点をなかったことにした』って負い目が下手すりゃ一生残る!」
放火魔「いいか、忘れるな!」
放火魔「鼻ほじりながら取った100点より、一生懸命やった70点のが……俺はすごいと思う!」
子供「75点ね」
放火魔「こ、細かいな!」
子供「だけど……ありがとう」

41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 18:43:21.60 ID:ki89SNUd0
子供「ぼく、叱られてもいい! このテストはきちんと持ち帰るよ!」
放火魔「おう、その意気だ!」
放火魔「なぁに、叱られたって気にすんな! 母ちゃんの期待のあらわれなんだから!」
放火魔「どんなに叱られてもそれを乗り越えれば……」
放火魔「次は絶対もっといい点取ってやるって気持ちになる!」
子供「うん! ありがとう、お兄さん!」
子供「じゃあねー!」
放火魔「またな!」

42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 18:45:36.25 ID:ki89SNUd0
放火魔(今時の子供も大変だな……)
黒服「クックック……」
放火魔「うおっ!? またお前か! タイミングがよすぎる……さてはさっきからいただろ!」
黒服「まぁな。一対一の会話に割り込むほど、野暮じゃねえつもりだ」
黒服「あのガキも、今日テストを燃やさなかったことで、より強く成長できるだろうさ」
黒服「今のあんたは……なかなかかっこよかったぜ」
放火魔「……うるせえ」
黒服「いやいや、お世辞じゃなく、今のあんたはあんたが理想とした“放火魔”になれてる気がするぜ」
黒服「親に捨てられたあんたを助けた時の浮浪者のようにな」
放火魔「ふん、そりゃどうも……」

43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 18:48:21.05 ID:ki89SNUd0
黒服「……だが、世の中にはあんたと真逆の放火魔ってのもいるもんさ」
放火魔「!」
黒服「今、巷で連続放火事件が起こってるのを知ってるか?」
放火魔「ああ、知ってる。こないだもアパートが全焼したとか」
黒服「そうだ。しかも死人も出まくってる。やってる奴は只者じゃねえ」
黒服「念のため聞いとくが、あれの犯人ってあんたか?」
放火魔「おい……」ギロッ
放火魔「俺が人死にの関わらない放火しかしないって知ってるだろ」
黒服「すまなかった、冗談だ冗談」

44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 18:49:45.32 ID:ki89SNUd0
黒服「とはいえ、俺みたいな親しい人間じゃなきゃ、あんたの本質は分からねえ」
黒服「噂だけ聞いたんじゃ、あんたを殺し屋の類だと思う奴も多いだろ」
放火魔「何がいいたいんだ?」
黒服「今ある刑事が、あんたの周辺を嗅ぎまわってる」
放火魔「! 刑事が……」
黒服「おそらくあんたを犯人だと思ってるんだろう」
黒服「警察が、検挙率アップのためなら、どんなことでもしてくるってのは俺もよぉく知ってる」
黒服「あんたが冤罪逮捕を喰らうのは見たくねえ……だから、気をつけてくれ」
黒服「俺にできることはこれぐらいしかねえからよ」クルッ
放火魔「おう! ありがとよ!」
放火魔「…………」

45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 18:51:14.60 ID:ki89SNUd0
< 放火魔の家 >
放火魔「……ってわけだ」
放火魔「もしかしたら、この家にも刑事がやってくるかもしれない」
放火魔「くれぐれも用心してくれ」
嫁「うん、分かった」
放火魔「んじゃ、今夜は燃え上がーー」
嫁「お断り」
テレビ『……続いてのニュースです』

46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 18:52:44.45 ID:ki89SNUd0
テレビ『本日、またもや放火事件が発生しました』
テレビ『防火設備の整ってない老人ホームが狙われ、死傷者はお年寄りや職員など、十数名……』
テレビ『警察では同一犯の仕業と見て捜査を……』
放火魔「噂をすれば、だな」
嫁「あなた……」
放火魔「心配すんな……俺はやっちゃいねえんだからよ」
放火魔「だが、俺の裏社会での通り名は“放火魔”……れっきとした犯罪者だ」
放火魔「“連続放火事件”と“放火魔”……刑事が俺を第一容疑者にするのも無理はねえ」
放火魔「だが、やってもねえことで捕まる気はねえ!!!」

47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 18:55:04.81 ID:ki89SNUd0
数日後ーー
< 公園 >
放火魔「…………」
パチパチ… メラメラ…
刑事「今時たき火とは珍しいな」
放火魔「なんだ?」
刑事「私はこういう者だ。貴様と話がしたい」サッ
放火魔「!」
放火魔(警察手帳……いよいよ来たか……。一人で来るってのはちょいと意外だが)

48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 18:57:22.69 ID:ki89SNUd0
刑事「用というのは他でもない」
放火魔「それより焼き芋でも食わないか? ちょうどよく焼けてきたとこだ」
刑事「食わん」
放火魔「だろうな……で、俺になんの用だ?」
刑事「貴様に……依頼したいことがある!」
放火魔「!?」
放火魔「俺に……依頼?」
刑事「そうだ」
刑事「貴様に連続放火犯を退治してもらいたい!」
放火魔「!!!」

49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:00:32.10 ID:ki89SNUd0
放火魔「どういうことだ。俺を逮捕しに来たんじゃないのか」
刑事「貴様のことは調べた……」
刑事「裏社会で“放火魔”と恐れられる凄腕だが」
刑事「人を死なせるような放火は絶対しない、ということはよく分かったつもりだ」
刑事「そして今、実際に貴様を見て、同じ印象を抱いた」
刑事「貴様は、人を死なせるようなことをする人間ではない、と」
放火魔「そりゃ光栄だな。でも、なんだって俺に放火犯退治をさせる?」
放火魔「そんなことは警察の仕事だろうが」
刑事「俺たちの力では……ヤツを逮捕することはできん!」
刑事「だが、貴様なら……貴様なら、ヤツの犯行を未然に防ぎ、捕まえることができる」
刑事「……そう考えたんだ」
刑事「それが……ここ数日間悩んで得た結論だ」
放火魔「毒をもって毒を……ならぬ、火をもって火を……ってやつかい」


50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:02:44.93 ID:ki89SNUd0
放火魔「……仕事なら依頼料をもらうぜ」
刑事「それはできん。刑事として、犯罪者に金を払うことなどできん」
刑事「なにより……俺に貴様への仕事料を払う経済力はない」
放火魔「おいおい、俺をナメてるのか?」
刑事「だが、代わりの見返りを用意した」
放火魔「見返り?」
刑事「今後、俺は……貴様に干渉することはしない!」
刑事「たとえ、貴様の放火の証拠をつかんでも……逮捕しない! 絶対に!」
放火魔「……ほう」
放火魔「人を死なせてないだけで、俺だってれっきとした犯罪者なのに、見逃すってことか」
放火魔「あんたは刑事失格だな」
刑事「……そうだ。俺は刑事失格だ」
放火魔「ふっ、ハハハハハッ! アハハハハハッ! おもしれえ!!!」
刑事「!」
放火魔「あんた、気に入ったぜェ! 燃えてきた! 燃え上がってきたァ!」

51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:04:57.86 ID:ki89SNUd0
放火魔「刑事さん……あんたの心意気に免じて“俺を見逃す”って話は聞かなかったことにしてやろう」
刑事「なんだと?」
放火魔「俺も“放火魔”として、ヤロウは許せなかったからなァ!」
放火魔「この仕事は見返しなし! タダで引き受けてやる!」
放火魔「こんなに燃える仕事は……久しぶりだァ!!!」メラメラ…
刑事「…………!」
刑事(この男……犯罪者ではあるのだが、やはり普通の犯罪者とは違う)
刑事(何らかの信念を持って、裏社会に身を置いているという顔だ……)
刑事(この男ならあるいはーー……!)

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:06:48.09 ID:ki89SNUd0
< 放火魔の家 >
放火魔「これが刑事さんから借りた、捜査資料だ」バサッ
嫁「こんなの外に出しちゃって、大丈夫なの?」
放火魔「もちろん大丈夫じゃねえ。クビ覚悟だってよ。だからこそ、報いてやりてぇ」
嫁「……そうね」
放火魔「この地図には、連続放火犯の今までの犯行現場が記してある。手口の詳細もな」
嫁「……見事に防火設備が整ってない場所が狙われてるわ。それも人の多い」
放火魔「ああ、古いアパートだったり、商店だったり……」
放火魔「しかも、逃げ場をなくすように放火してやがる……まったく鬼畜の所業だ」
放火魔「俺は炎で商売してる人間として、こいつを許せねえ! 次の犯行は絶対食い止めてみせる!」
嫁「近辺の、防火設備の整ってない施設をリストアップするしかないわね」
放火魔「さっそく地図に印をつけていこう!」

53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:12:49.77 ID:ki89SNUd0
放火魔「……こんなとこか」
放火魔「あとは、この中のどこを狙うかを推理できれば……」
嫁「だけど、このぐらいのことは警察もやってるはずよ。こんなことで捕まえられるとは思えない」
放火魔「うーん……だろうな」
放火魔「当然、そういう場所は警察も警戒を強めてる。そうそう放火できるわけがねえ」
嫁「犯人が狙うなら、もっと穴場のはず」
放火魔「穴場……」
放火魔「穴場といっても、どこを……?」
嫁「……高級マンション」
放火魔「ん?」

54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:13:48.99 ID:ki89SNUd0
嫁「この間、近所の奥さんから聞いた愚痴に気になる内容があったの」
嫁「見た目は立派だけど、スクリンプラーが誤作動したり、防火扉の前に荷物が置かれてたりで」
嫁「防火設備はお粗末だって……。これが写真」
放火魔「こんな要塞みたいな立派なマンションがねぇ……」
放火魔「だけど、もしここが狙われたら、今までにない大惨事になるな」
嫁「ええ、死者は軽く数十人は出るわ」
放火魔「ようし……ここにヤマを張るか!」
嫁「刑事さんには?」
放火魔「内緒だ。こういうことはお互い別々にやった方がいい」
嫁「そうね」
放火魔「決まりだな! よっしゃ、燃えてきたァ!!!」
嫁「今だけは、暑苦しいとはいわないわ」

55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:15:47.80 ID:ki89SNUd0
次の日ーー
< 街中 >
ワイワイ… ガヤガヤ…
刑事「A地点、そっちはどうだ?」
『異常ありません!』
刑事「B地点、不審人物の情報は?」
『異常なしです!』
刑事「今までの法則からして、今日あたり放火が行われることは間違いないんだ!」
刑事「絶対食い止めろッ!」

56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/04/24(火) 19:18:18.00 ID:ki89SNUd0
……
…………
?「クックック、バカな警察どもは今頃、古い住宅地や施設をマークしていることだろう」
?「だが逆だよ、逆」
?「今日はこの真新しい高級マンションを……派手に火葬してやるとしよう……」
?「このライターで……」シュボッ…
「ちょっと待ったァ!!!」

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