娘「お父さんスイッチ『う』!!」
Part3
235 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 18:53:02.43 ID:3e3N4sjj0
まさか警察が動いているなんて・・・!
どう言って喫茶店を出て探偵と別れたのか、
頭の中が真っ白でまったく思いだせない。
いや大丈夫だ。証拠は何も残していない。
死体も細かく砕いてそれぞれ土に埋めた。
各堂の服も燃やした。
大丈夫だ大丈夫だ
自分に言い聞かせる。
大丈夫だ大丈夫だ大丈夫だ大丈夫だ
「お父さん、どうしたの本当に顔色悪いよ・・・?」
「大丈夫だ!静かにしててくれないか!!」
ぎょっとした顔で妻が台所から顔を出す。
目の前の娘はあっけにとられた顔をしたあと、
泣きそうにそっか、と小さくつぶやいた。
VIP連続小説 「お父さん、殺意のスイッチ」 「ま」の章 完
239 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 19:06:26.48 ID:F8SmyHES0
味方、正義の味方、と唱えてみる。
私はどうしたらいいんだろう。
もちろん人として、あの男には自首を勧めるべきだろう。
しかし、私はどうしてもそれが一番の道とは思えなかった。
深入りしすぎたのだ。
何が正義の味方だ。
藤田君の言葉が思い出される。
悩んだ。どうするべきかと。まだ証拠はない。
ひょっとしたら違っているかもしれない、
そうであってほしい。
一晩、ニ晩、三晩悩んで、私は、 看護学校へと出掛けた。
そして呟く。
「私は正義の味方だ」
合っているか分からない。0点の回答かもしれない。
そして、夕方まで待った。
ナイフを一丁、携えて。
VIP連続小説 「お父さん、殺意のスイッチ」 「み」の章 完
247:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2011/06/26(日) 19:24:27.59 ID:3e3N4sjj0
蒸し暑い夜だ。
私は看護学校の裏手の土手にスコップを片手に向かっていた。
不安になったのだ。
もしかしたら、埋めた骨が土の上に出てきてしまっているのではないか。
野良犬か何かが掘り返して・・・もっと深く埋めなければ。
仕事の疲れも、焦燥感のせいか感じなかった。
人気のない一角、私は慎重にあたりをうかがうと、
猛烈に地面にかじりついた。
泥と汗が目に染みる。
30センチほど掘り下げたとき、埋めた骨が出てきた。
もっと深くに埋めなければ・・・!
ふと背後でパキリと木の折れる音がした。
VIP連続小説 「お父さん、殺意のスイッチ」 「む」の章 完
260 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 20:00:38.10 ID:F8SmyHES0
目を疑った。
「お父さん・・・」
バッ、とこちらを振り向いた父は、
「ぁ...」と言って、ヘなへなと崩れ落ちた。
『初めまして』
『あなたのお父さんについて、少しお話があります』
高田さんの言っていた事は本当だった。
父の、今目の前でぼうっとしているこの中年を、私は、抱きしめた。
「私が不幸になるからとか思わないで。
家族じゃない。自分一人で溜め込まないで。
家族なんだから、大好きなんだから。
自分だけが不幸になればいいなんて思わないで。
兄貴と、パパと、みんなで不幸になればいいじゃないよぉ」
後半は泣きまくりで何を言っているか分からなかったけれど、
取り敢えず、高田さんからもらったナイフは川に投げ捨てた。
VIP連続小説 「お父さん、殺意のスイッチ」 「め」の章 完
274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 20:40:08.37 ID:8ZfAPCUv0
「もう、出会ったころかな……」
ワイシャツからたれ落ちそうなぐらいネクタイを外して呟いた
机にはつい先日まで重要な意味を成していた書類と写真
そして今はこの世にいない男の---
私は彼の娘に真実を告げた
そして自暴自棄になった彼から身を守るための武器も
ここから先は私が深くかかわる必要はない
彼らの、家族の問題なのだから
「私は正義の味方になれただろうか---」
ブラインドの向こう、夕日がわずかに輝いた
VIP連続小説 「お父さん、殺意のスイッチ」 「も」の章 完
279 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 20:50:42.01 ID:3e3N4sjj0
やっとのことで辿り着いた我が家。
何時ものように玄関には明かりがついて、妻は料理をしているのだろう。
息子はきっとまた勉強もせず、ゲームをいじくっているのだろう。
だか俺はもう逃げないと誓った。
俺を気遣うように寄り添う娘を見下ろすと、うん、と頷いた。
「ただいま。」
「ただいまー」
パタパタと妻のスリッパが俺を出迎える。
「あら、一緒だったの?」
妻の声は明るい。しかし、顔はどことなく沈んでいるような・・・?
いや、気のせいか・・・?
なんにせよ、すべてを打ち明けようと俺の心は決まっていた。
「すまないが、ちょっとリビングに集まってくれないか。」
VIP連続小説 「お父さん、殺意のスイッチ」 「や」の章 完
305 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 21:27:58.91 ID:SWGf9u6j0
勇気というものをこれほどまでに欲したことはなかった。
覚悟はある。
しかしそれだけでは足りないのだ。
「お父さん」
娘が言う。俺は息を細く吐き出し、頷いた。
テーブルについた俺と、娘と、息子と、妻。
俺が何よりも大切にしてきた三人。
「隠し事はなしにしよう」
妻の顔が僅かにひきつったのを、俺は見逃さなかった。
そのまま畳みかける。
「各堂は俺が殺した」
「--!?」
妻の声にならない声。
対照的に、息子は何が何だかわからないような顔をしている。
「な、あ、なんで、あなた、それを」
「だから」
俺はそっと一枚の書類を取り出す。
「離婚してくれ」
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「ゆ」の章 完
308 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 21:34:39.61 ID:8ZfAPCUv0
よほどショックを受けたのだろう
妻の目の焦点はいまだ定まらない
探していた男は---すでに死んでいたのだから
俺は妻がもう俺を愛していないことを認識せざるを得なかった
こんな姿、見たくなかった
事情を知る娘、何も知らない息子にも……
そして何より、愛し合って結ばれたはずの俺自身
「あ、あなた」
震える声で、妻は俺にやっとのことで声をかける
「あ、あなたが」
瞬間、俺は判断が間違っていたことを悟った
俺が飛び出すよりも早く妻は果物ナイフを手に取り俺に向けた
間には、娘
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「よ」の章 完
314 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 21:44:49.61 ID:3e3N4sjj0
「らめぇぇぇぇ!!!」
俺を背に庇った娘が、拒絶するように両手を妻に突き出した。
すべてがスローモーションのようだ。
「ぅあああああああああああ」
妻の目には俺しか映っていない。
憎悪の眼に、
茫然とした俺の顔が写りこんでいるような気がした。
ショックと恐怖で体が動かない。
「やめろぉぉぉぉぉおおおお」
ガタンと椅子を蹴飛ばして、巨体が妻を抑え込む。
もみ合う妻と娘を止めたのは、
泣き出しそうな顔をした息子だった。
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「ら」の章 完
325 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 21:53:56.67 ID:SWGf9u6j0
「理解できねぇよいきなりなんなんだよこれっ!」
激昂する息子をなだめながら、
いまだ恐怖から覚めやらない娘が、事情を全て説明する。
各堂という男のこと。妻との関係。
そして俺がそいつを殺したこと。
最初は信じられないようだったが、
ここまで修羅場を演じてしまえば、信じるしかないようだった。
「なんだよ、それ……なんだよ、それ」
「すまん。俺は父親失格だ」
俺のことは別にかまわない。
人殺しの汚名をかぶるのは問題ないのだ。
ただ、愛する家族が、
「人殺しの子供」と謗りを受けるのはなんとしてでも避けたかった。
子供のことを気にしない親などいないのだから。
だからこその離婚届だった。それなのに……。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
何に対して謝っているのか、妻が意気消沈気味に涙をこぼす。
最早ナイフを握る気力も、立ち上がる気力さえないようだった。
きっとこれで全てが終わったのだ。
一連の出来事も、俺の家庭も。
そう、あとは俺が責任を全てかぶれば、それでいいのだ。
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「り」の章 完
329 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:00:21.27 ID:9aa0F0zr0
「留守にしております。御用の方は・・・」
そんなこんなで三年後
昼飯に出前でも頼もうと思い電話するも、
ほっかほか亭は留守のようだ。
社会を舐めてやがる。
あれから妻とは離婚した。
なんだかんだあって円満離婚だ。
ちなみに俺たちに子供がいたような気がしたが、
俺の勘違いだったらしい。
記憶障害って奴だ。
「カツ丼食いてえなぁ・・・」
それにしても腹が減った。
最近外食やコンビニ弁当ばかりで栄養も偏っていることだろう。
こんなとき嫁が欲しいと思うが、やっぱりもう懲り懲りだ。
ピンポーン
「ん?だれだ」ガチャ
「お久しぶりです」
そこには信じられない奴が立っていた。
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「る」の章 完
340 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:09:38.32 ID:SWGf9u6j0
「例の件で来ましたよ」
相手は探偵--高田だった。
今日もまたよれよれワイシャツを来ている。
三年たってもどうやら変わらないらしい。
「もう俺に世話を焼くな。金は払ったし、もうなんの関係もないだろう」
「いいませんでしたっけ。わたし、正義の味方になりたかったんですよ」
「それとこれとは関係ないだろう」
「あります」
そいつはにやり、と腹立たしい笑みを浮かべた。
「あんなに家族のために奔走したあなただ。
その努力を無駄にすることは、家族の絆を否定することです」
「……もうやめろっ」
「いいえ、やめません」
高田は後ろをちらと確認し、言った。
「お子さんたちと逢ってやってください」
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「れ」の章 完
348 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:19:00.92 ID:8ZfAPCUv0
路地から出ると俺は探偵の車に乗り込む
あの時と変わらない汚い車内
俺は三年越しの説得にようやく応じることとなった
いや、そうしなければならなくなったというべきか
「その格好でいいんですか?」
スターターに手をかけながら奴は聞く
なるほど、
俺の服装はとても感動の再開に似合ったものじゃない
ヨレヨレのシャツとしわのよった背広、
ラインの消えたスラックス
「なぁに、あんたと一緒さ」
久方見せなかった笑みで探偵に皮肉ると
奴はにやりとだけして車をスタートさせた
今日、すべてが終わり、始まるのだ
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「ろ」の章 完
355 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:25:17.29 ID:SWGf9u6j0
忘れたかった。忘れられたかった。
あの出来事の後、俺は姿をくらました。
各堂殺しは公になることこそなかったが、
俺と周囲の関係に入れた亀裂は甚大だ。
なにより、まかり間違って、
俺が捕まってしまったときのことを考えると……
なにも捕まることが怖いのではない。
愛する者たちに迷惑をかけるのが怖いのだ。
だから忘れた。忘れられた。
そういう「ふり」をしていたし、そうするつもりだった。
しかし、そうできなかった。
車が停止する。
「感動の再会ですよ。水を指すなんて真似はしませんから」
いちいちかっこつけしいやつであった。
俺は、この探偵が、10年来の親友であった気さえしてくる。
「あぁ、行ってくる」
だから気のままにそういって、扉を開ける。
「お父さん!」
--幸せで死ぬかと思った。
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「わ」の章 完
380 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:42:35.64 ID:8ZfAPCUv0
「---を発見したと通報があり、現場に警察官が駆け付けたところ」
カーラジオがひっきりなしにニュースを告げる中、
私は窓の外を眺めていた
窓の外では三年前私に相談を持ちかけてきた男が娘、
そして息子と感動の再会を果たしている
おそらく、
このニュースがなければ彼は永遠に子供たちと会おうとしなかったであろう
ラジオは各堂の遺体が発見されたことを告げていた
もちろん、警察はまだ各堂だということに気がついてはいない
しかし、前科がある男のことだ
DNAの保管ぐらいはされている恐れがある
それがわかれば、すぐ警察は彼にたどり着くであろう
昔の仲間からそれを聞いた私はすぐ彼にそれを告げた
そして三年越しの再会が相成ったわけである
やれやれ、これじゃあ私が正義の味方なのか悪の味方なのか、
わかったものじゃない
だが、父親と笑顔を交わす子供たちは、まさしく天使そのものであった
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「を」の章 完
396 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:48:28.54 ID:SBUIY94Ii
「…ん?なんだいこれは?」
「えへへ、これね、子供向けのTV番組でやってるやつなんだけどね」
「子供向けだなんて、お前はもうそんな歳じゃないだろ」
「ずっと甘えられなかったんだから、ちょっとくらい童心に帰りたいの!」
「…そうだな。で、何をどうして遊ぶんだい?」
「あたしがこれを押した通りに、お父さんは動かないといけないんです!」
「ははは、よし、付き合ってあげよう!」
「じゃあまずはね…」
「お父さんスイッチ、『あ』!」
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「ん」の章 完
419 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:53:17.15 ID:493YzNNB0
お前ら俺のクソスレでなにやってんだよwww
まさか警察が動いているなんて・・・!
どう言って喫茶店を出て探偵と別れたのか、
頭の中が真っ白でまったく思いだせない。
いや大丈夫だ。証拠は何も残していない。
死体も細かく砕いてそれぞれ土に埋めた。
各堂の服も燃やした。
大丈夫だ大丈夫だ
自分に言い聞かせる。
大丈夫だ大丈夫だ大丈夫だ大丈夫だ
「お父さん、どうしたの本当に顔色悪いよ・・・?」
「大丈夫だ!静かにしててくれないか!!」
ぎょっとした顔で妻が台所から顔を出す。
目の前の娘はあっけにとられた顔をしたあと、
泣きそうにそっか、と小さくつぶやいた。
VIP連続小説 「お父さん、殺意のスイッチ」 「ま」の章 完
239 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 19:06:26.48 ID:F8SmyHES0
味方、正義の味方、と唱えてみる。
私はどうしたらいいんだろう。
もちろん人として、あの男には自首を勧めるべきだろう。
しかし、私はどうしてもそれが一番の道とは思えなかった。
深入りしすぎたのだ。
何が正義の味方だ。
藤田君の言葉が思い出される。
悩んだ。どうするべきかと。まだ証拠はない。
ひょっとしたら違っているかもしれない、
そうであってほしい。
一晩、ニ晩、三晩悩んで、私は、 看護学校へと出掛けた。
そして呟く。
「私は正義の味方だ」
合っているか分からない。0点の回答かもしれない。
そして、夕方まで待った。
ナイフを一丁、携えて。
VIP連続小説 「お父さん、殺意のスイッチ」 「み」の章 完
247:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2011/06/26(日) 19:24:27.59 ID:3e3N4sjj0
蒸し暑い夜だ。
私は看護学校の裏手の土手にスコップを片手に向かっていた。
不安になったのだ。
もしかしたら、埋めた骨が土の上に出てきてしまっているのではないか。
野良犬か何かが掘り返して・・・もっと深く埋めなければ。
仕事の疲れも、焦燥感のせいか感じなかった。
人気のない一角、私は慎重にあたりをうかがうと、
猛烈に地面にかじりついた。
泥と汗が目に染みる。
30センチほど掘り下げたとき、埋めた骨が出てきた。
もっと深くに埋めなければ・・・!
ふと背後でパキリと木の折れる音がした。
VIP連続小説 「お父さん、殺意のスイッチ」 「む」の章 完
260 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 20:00:38.10 ID:F8SmyHES0
目を疑った。
「お父さん・・・」
バッ、とこちらを振り向いた父は、
「ぁ...」と言って、ヘなへなと崩れ落ちた。
『初めまして』
『あなたのお父さんについて、少しお話があります』
高田さんの言っていた事は本当だった。
父の、今目の前でぼうっとしているこの中年を、私は、抱きしめた。
「私が不幸になるからとか思わないで。
家族じゃない。自分一人で溜め込まないで。
家族なんだから、大好きなんだから。
自分だけが不幸になればいいなんて思わないで。
兄貴と、パパと、みんなで不幸になればいいじゃないよぉ」
後半は泣きまくりで何を言っているか分からなかったけれど、
取り敢えず、高田さんからもらったナイフは川に投げ捨てた。
VIP連続小説 「お父さん、殺意のスイッチ」 「め」の章 完
274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 20:40:08.37 ID:8ZfAPCUv0
「もう、出会ったころかな……」
ワイシャツからたれ落ちそうなぐらいネクタイを外して呟いた
机にはつい先日まで重要な意味を成していた書類と写真
そして今はこの世にいない男の---
私は彼の娘に真実を告げた
そして自暴自棄になった彼から身を守るための武器も
ここから先は私が深くかかわる必要はない
彼らの、家族の問題なのだから
「私は正義の味方になれただろうか---」
ブラインドの向こう、夕日がわずかに輝いた
VIP連続小説 「お父さん、殺意のスイッチ」 「も」の章 完
やっとのことで辿り着いた我が家。
何時ものように玄関には明かりがついて、妻は料理をしているのだろう。
息子はきっとまた勉強もせず、ゲームをいじくっているのだろう。
だか俺はもう逃げないと誓った。
俺を気遣うように寄り添う娘を見下ろすと、うん、と頷いた。
「ただいま。」
「ただいまー」
パタパタと妻のスリッパが俺を出迎える。
「あら、一緒だったの?」
妻の声は明るい。しかし、顔はどことなく沈んでいるような・・・?
いや、気のせいか・・・?
なんにせよ、すべてを打ち明けようと俺の心は決まっていた。
「すまないが、ちょっとリビングに集まってくれないか。」
VIP連続小説 「お父さん、殺意のスイッチ」 「や」の章 完
305 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 21:27:58.91 ID:SWGf9u6j0
勇気というものをこれほどまでに欲したことはなかった。
覚悟はある。
しかしそれだけでは足りないのだ。
「お父さん」
娘が言う。俺は息を細く吐き出し、頷いた。
テーブルについた俺と、娘と、息子と、妻。
俺が何よりも大切にしてきた三人。
「隠し事はなしにしよう」
妻の顔が僅かにひきつったのを、俺は見逃さなかった。
そのまま畳みかける。
「各堂は俺が殺した」
「--!?」
妻の声にならない声。
対照的に、息子は何が何だかわからないような顔をしている。
「な、あ、なんで、あなた、それを」
「だから」
俺はそっと一枚の書類を取り出す。
「離婚してくれ」
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「ゆ」の章 完
308 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 21:34:39.61 ID:8ZfAPCUv0
よほどショックを受けたのだろう
妻の目の焦点はいまだ定まらない
探していた男は---すでに死んでいたのだから
俺は妻がもう俺を愛していないことを認識せざるを得なかった
こんな姿、見たくなかった
事情を知る娘、何も知らない息子にも……
そして何より、愛し合って結ばれたはずの俺自身
「あ、あなた」
震える声で、妻は俺にやっとのことで声をかける
「あ、あなたが」
瞬間、俺は判断が間違っていたことを悟った
俺が飛び出すよりも早く妻は果物ナイフを手に取り俺に向けた
間には、娘
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「よ」の章 完
314 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 21:44:49.61 ID:3e3N4sjj0
「らめぇぇぇぇ!!!」
俺を背に庇った娘が、拒絶するように両手を妻に突き出した。
すべてがスローモーションのようだ。
「ぅあああああああああああ」
妻の目には俺しか映っていない。
憎悪の眼に、
茫然とした俺の顔が写りこんでいるような気がした。
ショックと恐怖で体が動かない。
「やめろぉぉぉぉぉおおおお」
ガタンと椅子を蹴飛ばして、巨体が妻を抑え込む。
もみ合う妻と娘を止めたのは、
泣き出しそうな顔をした息子だった。
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「ら」の章 完
325 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 21:53:56.67 ID:SWGf9u6j0
「理解できねぇよいきなりなんなんだよこれっ!」
激昂する息子をなだめながら、
いまだ恐怖から覚めやらない娘が、事情を全て説明する。
各堂という男のこと。妻との関係。
そして俺がそいつを殺したこと。
最初は信じられないようだったが、
ここまで修羅場を演じてしまえば、信じるしかないようだった。
「なんだよ、それ……なんだよ、それ」
「すまん。俺は父親失格だ」
俺のことは別にかまわない。
人殺しの汚名をかぶるのは問題ないのだ。
ただ、愛する家族が、
「人殺しの子供」と謗りを受けるのはなんとしてでも避けたかった。
子供のことを気にしない親などいないのだから。
だからこその離婚届だった。それなのに……。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
何に対して謝っているのか、妻が意気消沈気味に涙をこぼす。
最早ナイフを握る気力も、立ち上がる気力さえないようだった。
きっとこれで全てが終わったのだ。
一連の出来事も、俺の家庭も。
そう、あとは俺が責任を全てかぶれば、それでいいのだ。
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「り」の章 完
329 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:00:21.27 ID:9aa0F0zr0
「留守にしております。御用の方は・・・」
そんなこんなで三年後
昼飯に出前でも頼もうと思い電話するも、
ほっかほか亭は留守のようだ。
社会を舐めてやがる。
あれから妻とは離婚した。
なんだかんだあって円満離婚だ。
ちなみに俺たちに子供がいたような気がしたが、
俺の勘違いだったらしい。
記憶障害って奴だ。
「カツ丼食いてえなぁ・・・」
それにしても腹が減った。
最近外食やコンビニ弁当ばかりで栄養も偏っていることだろう。
こんなとき嫁が欲しいと思うが、やっぱりもう懲り懲りだ。
ピンポーン
「ん?だれだ」ガチャ
「お久しぶりです」
そこには信じられない奴が立っていた。
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「る」の章 完
340 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:09:38.32 ID:SWGf9u6j0
「例の件で来ましたよ」
相手は探偵--高田だった。
今日もまたよれよれワイシャツを来ている。
三年たってもどうやら変わらないらしい。
「もう俺に世話を焼くな。金は払ったし、もうなんの関係もないだろう」
「いいませんでしたっけ。わたし、正義の味方になりたかったんですよ」
「それとこれとは関係ないだろう」
「あります」
そいつはにやり、と腹立たしい笑みを浮かべた。
「あんなに家族のために奔走したあなただ。
その努力を無駄にすることは、家族の絆を否定することです」
「……もうやめろっ」
「いいえ、やめません」
高田は後ろをちらと確認し、言った。
「お子さんたちと逢ってやってください」
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「れ」の章 完
348 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:19:00.92 ID:8ZfAPCUv0
路地から出ると俺は探偵の車に乗り込む
あの時と変わらない汚い車内
俺は三年越しの説得にようやく応じることとなった
いや、そうしなければならなくなったというべきか
「その格好でいいんですか?」
スターターに手をかけながら奴は聞く
なるほど、
俺の服装はとても感動の再開に似合ったものじゃない
ヨレヨレのシャツとしわのよった背広、
ラインの消えたスラックス
「なぁに、あんたと一緒さ」
久方見せなかった笑みで探偵に皮肉ると
奴はにやりとだけして車をスタートさせた
今日、すべてが終わり、始まるのだ
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「ろ」の章 完
355 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:25:17.29 ID:SWGf9u6j0
忘れたかった。忘れられたかった。
あの出来事の後、俺は姿をくらました。
各堂殺しは公になることこそなかったが、
俺と周囲の関係に入れた亀裂は甚大だ。
なにより、まかり間違って、
俺が捕まってしまったときのことを考えると……
なにも捕まることが怖いのではない。
愛する者たちに迷惑をかけるのが怖いのだ。
だから忘れた。忘れられた。
そういう「ふり」をしていたし、そうするつもりだった。
しかし、そうできなかった。
車が停止する。
「感動の再会ですよ。水を指すなんて真似はしませんから」
いちいちかっこつけしいやつであった。
俺は、この探偵が、10年来の親友であった気さえしてくる。
「あぁ、行ってくる」
だから気のままにそういって、扉を開ける。
「お父さん!」
--幸せで死ぬかと思った。
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「わ」の章 完
380 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:42:35.64 ID:8ZfAPCUv0
「---を発見したと通報があり、現場に警察官が駆け付けたところ」
カーラジオがひっきりなしにニュースを告げる中、
私は窓の外を眺めていた
窓の外では三年前私に相談を持ちかけてきた男が娘、
そして息子と感動の再会を果たしている
おそらく、
このニュースがなければ彼は永遠に子供たちと会おうとしなかったであろう
ラジオは各堂の遺体が発見されたことを告げていた
もちろん、警察はまだ各堂だということに気がついてはいない
しかし、前科がある男のことだ
DNAの保管ぐらいはされている恐れがある
それがわかれば、すぐ警察は彼にたどり着くであろう
昔の仲間からそれを聞いた私はすぐ彼にそれを告げた
そして三年越しの再会が相成ったわけである
やれやれ、これじゃあ私が正義の味方なのか悪の味方なのか、
わかったものじゃない
だが、父親と笑顔を交わす子供たちは、まさしく天使そのものであった
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「を」の章 完
396 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:48:28.54 ID:SBUIY94Ii
「…ん?なんだいこれは?」
「えへへ、これね、子供向けのTV番組でやってるやつなんだけどね」
「子供向けだなんて、お前はもうそんな歳じゃないだろ」
「ずっと甘えられなかったんだから、ちょっとくらい童心に帰りたいの!」
「…そうだな。で、何をどうして遊ぶんだい?」
「あたしがこれを押した通りに、お父さんは動かないといけないんです!」
「ははは、よし、付き合ってあげよう!」
「じゃあまずはね…」
「お父さんスイッチ、『あ』!」
連続VIP小説「お父さん、殺意のスイッチ」 「ん」の章 完
419 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/06/26(日) 22:53:17.15 ID:493YzNNB0
お前ら俺のクソスレでなにやってんだよwww
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