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10年越しで幼馴染みに告白された話する

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Part4
66 ::2014/07/25(金)23:34:23 ID:dFImTkAmH
大学に入ってからのN子との関係は、心配してたより順調だった。特にトラブルも
なく、連休には俺が実家に帰って二人で会う。そんな生活が続いて、大学2年の
3月、N子は無事国家試験に合格し、4月から就職。Y美も地元の企業に就職した。
大学3年の春。俺だけ気楽な学生のままで、何か申し訳ない気分だった。それと
同時に、N子に置いて行かれてしまう不安とか、焦りみたいなものも感じていた。
さらに年が変わり、そろそろ就職を考え始める時期になる。
それまでは、ただ漠然と大企業に就職したいと思っていた。でも、全国規模の
大企業なら当然転勤がある。N子との距離がまた遠くなってしまう。
俺は、社会人になったN子が急速に"大人"になってゆくのを感じていて、これ以上
遠くに離れてしまうと、もう今までのようにN子を繋ぎ止めてはいられないんじゃ
ないかと不安だった。そんなのは嫌だ。N子の傍にいたい。
悩んだ末、俺はできるだけ地元の近くに就職先を探すことに決めて、N子にそう伝えた。
N子「こっちに戻ってきてくれるの?よかったぁ。いちくんがまた遠くに行っちゃったら
どうしようかって、心配してたんだ」
嬉しそうだった。でもその理由を聞かれた時、生活のリズムがどうとか地元への
貢献とか、まるでESに書くようなことを答えてしまった。
なんでこういうとき素直に「N子の近くにいたいんだよ」って言えないんだ俺は。

67 ::2014/07/25(金)23:35:25 ID:dFImTkAmH
4年になって本格的な就活が始まり、地元の企業を中心に当たっていった。
希望職種で限定すると、会社の数は決して多くない。
でも幸い、人気のある大企業とは違って履歴書だけで落とされるようなことは
なかったので、5月頃は面接のために何度も何度も実家に帰っていた。
6月、第一希望の会社から内定を貰い、ここに決める。実家からは車で1時間
ほどの距離。それほど近くはないけど、近ければどこでもいいってわけにも
行かないので仕方ない。
N子に報告すると、内定のお祝い、と言ってネクタイをくれた。さあ、あとは
卒業するだけだ。

68 ::2014/07/25(金)23:37:04 ID:dFImTkAmH
そして9月中頃のこと。N子からの電話で、Y美の入院を知った。一ヶ月後に手術の
予定。病名は、胃ガンだった。
その週末に実家へ帰り、昼過ぎ頃に入院先の病院へ見舞いに行く。Y美は少し痩せた
ようだったが、その他は何も変わりないように見えた。
病室にはN子と、Y美の親父さんがいた。挨拶すると、
Y父「ああ1くん、久し振りだな。学校忙しいんじゃないの?わざわざ来てもらって悪いね」
Y美「あたしの見舞いじゃなくて、N子に会いに来たんだよ。彼氏だもんね」
N子「ちょっ、Y美!」
Y父「へぇ、N子ちゃんの。そうかぁ、みんな大人になったもんだなぁ、ウチの子以外は」
Y美「うるさいなぁw」
それからY美の父親は、ウチには母親がいないから、男親の自分には頼みにくい事も
あるだろうし、N子に来てもらってとても助かっている、だけど彼氏もいるのに、毎日
遅くまで居てもらって申し訳ない。というようなことを話して、Y美にウザがられて、
何か用事を片付けるために部屋を出ていった。
俺「なんか、思ってたよりずっと元気そうで、安心したよ」
Y美「来月の手術で、胃はほとんど取っちゃわなきゃいけないみたいだけどね。まぁ、しょうがないね」
そのあと3人でしばらく喋って、手術当日には必ず来るよと約束して、病室をあとにした。
N子はもうしばらく残ると言って、また二人で何やら話しはじめていた。
ガンだなんて聞いたから、どんな酷いことになっているかと心配したけれど、とりあえず
元気そうだったし、手術で治るような口ぶりだったので安心して、俺は次の日もN子と
一緒にY美を見舞ってから家に帰った。

69 ::2014/07/25(金)23:38:27 ID:dFImTkAmH
10月中旬、手術当日。昼前から始まる予定の手術に合わせ、Y美の病室には続々と
人が訪れてくる。ピーク時には15人くらい居たかもしれない。俺もその中の一人だ。
時間が近付き、看護師がY美を車椅子で手術室へ連れていく。「行ってくるよ」
Y美は強張った笑顔で小さく手を振り、俺たちもたぶん同じような表情で見送った。
手術の予定時間は、早くて3時間、長引く場合はどれだけかかるか分からないらしい。
Y父は、手術が終わったら連絡するから一旦帰るようにとN子に言ったが断り、俺と
このまま病室で連絡を待つことにした。
途中で一度飲み物を買いにいったきり、俺たちは他に誰もいない二人部屋の病室で、
ただ待ち続けた。
会話がなかったわけじゃないけど、時間は途方もなく長く感じられた。
最短の予定時間である3時間を少し過ぎ、ここにいて本当に誰か連絡してきてくれるのか?
と不安になりだした頃、看護師が来て、手術の終了を伝えてくれた。
胃の摘出は無事完了、Y美はICUに移され、目が覚めるのは翌朝、いまご家族が医師から
説明を受けているので、詳しいことはそちらから聞いてください。そんな内容だった。

70 ::2014/07/25(金)23:39:59 ID:dFImTkAmH
それからさらに1時間ほど経って、Y美の父親が病室に帰ってきた。
疲れきった様子だった。
Y父「ああ、やっぱりまだ居てくれてたんだ。待たせてすまなかったね」
Y父の話。
大元の病巣である胃の摘出は問題なく終わったが、事前の検査にかからなかった
転移があちこちに発見された。
それら全てを切除していくことは物理的にも、Y美の体力的にも不可能で、手付
かずのまま縫合。今後は体力の回復を待って、抗がん剤での治療を行うことになった。
俺は目の前が急に暗くなったような感覚に襲われ、パイプ椅子にへたりこんだ。
N子は、固い表情で、でもしっかりY父の顔を見て、Y美の病状についていくつか
質問をしていた。馴染みのない言葉が多かったし、うまく頭が働いてなかったので、
内容は覚えていない。
俺は、翌日Y美と顔をあわせたとき何を言えばいいか分からなくて、てか正直
Y美と会うのが怖くて、その日のうちに自分の家へ逃げ帰った。
翌週、「Y美のお見舞いに来てあげて」とN子から電話。
俺「行きたいけど・・・何話していいのか・・・」
N子「大丈夫。最初はだいぶショック受けてたけど、今はもう落ち着いてきてるから。
Y美もいちくんに会いたがってるし。ね?」
俺「うん・・・わかった、週末にそっちに帰るよ」
俺はまったく、なんてヘタレだ。


71 ::2014/07/25(金)23:41:09 ID:dFImTkAmH
10月の下旬、10日ぶりに見るY美は、また少し痩せているように思えた。
Y美「体力戻さなきゃいけないんだけどさ。ご飯食べるとすぐお腹痛くなるんで、
あんまり食べられなくて」
点滴を指差し、今はこれが主食、とか言って笑ってた。
12月に入って、Y美が退院したとN子から連絡があった。抗がん剤での治療も
始まったらしい。正月には帰るから、その時会えるな。
12月末、帰郷してすぐ、N子を誘ってY美の家へ行った。
事前に電話して、遅くなったけど退院祝いに何か欲しいものがあるかと聞くと、
「肉。肉たべたい」と言うので、ちょっと奮発して黒毛和牛のステーキ肉を2枚
買って行った。ホントに食えるのか?
俺「久しぶり。ほら、リクエストの品、買ってきたよ」
Y美「ホントに買ってきてくれたの?悪いね。では遠慮なくwww」
俺「でも、こんな脂っこいの食べて大丈夫?」
Y美「量を食べられないから、逆に高カロリーの方がいいんだってさ」
煮物みたいな体に優しそうな料理がいいのかと思ってたけど、そう言うもんなのか。
正月には、N子、Y美、T崎と俺とで初詣に行った。Y美の体調を考えて、一番近くの
小さな神社に。N子とY美は貸し切り状態の拝殿の前で、とても長い願い事をしていた。

72 ::2014/07/25(金)23:42:33 ID:dFImTkAmH
1月下旬、Y美が自宅で腹痛を訴えて病院へ運ばれ、緊急手術を受けたとN子から電話。
すでに事後だ。その週末に見舞いに行くと、
Y美「せっかく少しは食べられるようになってきたのに、またここからやり直しだよ」
また点滴を指差しながら、そう言って笑ってた。
3月中旬。大学の卒業式に出席し、入社手続きに必要な書類を揃えてから、引っ越し。
実家までの距離は、半分以下に縮まった。
N子はほとんど毎日、仕事帰りにY美の病室へ通っているらしい。そこで面会時間ギリギリ
の7時半まで過ごす。
俺も週末には必ずY美の見舞いに行くことにした。
Y美は会うたび痩せていっているように思えたが、病状や入院生活を苦にしてふさぎ
こんだりする様子はなく、それが俺にとってはせめてもの救いだった。そうでなければ、
見舞いに行くのが憂鬱になっていたに違いないから。
4月。俺の仕事が始まる。引っ越したばかりで慣れない土地での生活と研修でそれなりに
忙しかったが、やはり週末には必ず面会に訪れた。
また、そこに行かなければN子にも会えない、という事情もあった。この半年ほど、Y美の
病室以外では、片手で数えられる程度の回数しかN子に会ってない。
ちなみに、社会人になってすぐ車を購入した。中古の軽だけど。家から病院までの往復は、
これで断然楽になった。

73 ::2014/07/25(金)23:45:02 ID:dFImTkAmH
そして5月、GWが終わってすぐ、N子からの電話。「もしもし、いちくん・・・」
最初から涙声。嫌な予感。
俺「どうした?大丈夫?」
N子「うん、ゴメン。私は大丈夫。・・・あのね、Y美、病棟を移ることになったよ。
緩和ケア。・・・もってあと3ヶ月だって」
ポツリポツリと、感情を圧し殺すようにそう言った。あと3ヶ月、何が?と一瞬思って、
そのまた一瞬後に、意味を理解した。
そんな馬鹿な。つい数日前にも見舞いに行った。元気そう、とは言わないまでも、
Y美の様子はそんなに酷いものじゃなかった。N子にそう告げると、
N子「Y美ね、いちくんが来る週末にはいつも、強い痛み止めを貰ってたの。でも、
普段はそうじゃなくて・・・」
途切れる声 、そして嗚咽。俺はN子を慰めるどころか、ショックのあまり声もでない。
だが、そんな俺に、N子はさらに追い打ちをかけてくる。
N子「Y美ね、いちくんのこと、好きみたい。私なんかより、ずっとずっと前から、好きだったみたい」
・・・え?

74 ::2014/07/25(金)23:47:50 ID:dFImTkAmH
N子「私、Y美の好きなひとを横取りしてた。いちくんとのこと、いっぱい話して、
自慢して、きっとY美にすごく辛い思いをさせてた」
ちょっと待って。そんな超展開、頭がついて行けない
N子「Y美に酷いことしちゃったよぉ。いちくん、私、どうしたらいい?」
N子は、まるで子供のように泣き始めた。俺は混乱しながらも、必死で何か慰めの
言葉をかけ続けた。
しばらく泣いて、ようやく少し落ち着いたところで、もう一撃
N子「もう、しばらく会うのやめよう?」
俺「え?なんで・・・」
N子「だって私、Y美にもいちくんにも申し訳なくて。私さえいなかったら、Y美は
いちくんと一緒になれたかも知れないのに・・・」
この考え方にはちょっと腹が立った。Y美に悪いから俺とは会わないのか?俺の
気持ちより、Y美との関係の方が優先なのか?
そんな心情だったから、次の言葉にはちょっとトゲがあったかも知れない。
俺「俺がもしY美と付き合ったとしても、どうせすぐ別れてたと思うよ。だから
そんな気にすんなって。N子と俺みたいには続かないよ」
N子「私といちくんだって、Y美がいなかったらとっくに別れてたよ」
確かにそれは事実だ。俺にも分かってる。俺たちにとって、Y美がどれほど重要な
存在だったのかも分かってる。
それが分かってて、反論できなくなって、悔し紛れに出た台詞は、
俺「そんなにY美が大事なのか?俺よりも?もういいよ、勝手にしろよ」

75 ::2014/07/25(金)23:49:02 ID:dFImTkAmH
N子「ひどいよ・・・どうしてそんなこと言うの?そんな言い方、ひどいよ・・・」
再び泣きはじめたN子。俺が何も言えずにいると、泣き声が少し遠ざかり、通話が切れた。
その後すぐN子に電話をかけ直すが、出ない。続けて何度もコールしてみるが、やはり
出ない。メールもしてみたが、返信はない。ヤバイ。
N子が泣いている。そう思うと胸が苦しくなって、じっとしていられない。時間は9時前。
今から直接会いに行くか?
俺『会って話がしたい。今から1時間後、▲▲公園で会おう』
そうメールを送って、出発の準備をする。車に乗り込んで、いざ出掛けようとすると
メールの着信音。
N子『ごめんなさい。行けません』
脱力。ちょっと愛車に八つ当たり。
もうこのままN子の家まで行っちまうか、とも一瞬思ったが、それはさすがに迷惑かと
思い直し、もう一度メール。
俺『それじゃあ、週末に●●病院で』
送信してから、しまった、と思う。そこには当然ながらY美もいる。俺、どんな顔して
Y美に会えばいいんだよ。たぶん、まともにY美の顔見れないよ orz
その後はもう、N子からの返信はなかった。

76 :名無しさん@おーぷん :2014/07/25(金)23:56:35 ID:rGibTsAhU
。・゚・(ノд`)・゚・。

77 :名無しさん@おーぷん :2014/07/26(土)00:02:32 ID:agSy4vfFJ
つ、続きは…?

78 ::2014/07/26(土)00:03:18 ID:ytBtKxVPc
その週末、俺はY美の見舞いに行きそびれて、結局、もう二度と見舞いに行く
ことはできなかった。
5月下旬の平日の夜、N子から電話の着信が来た。慌てて繋ぐ。電話の向こうからは、
今にも泣き出しそうなN子の声で、「Y美が・・・」
前夜、容態が急変したらしい。医師は手を尽くしてくれたが、午前中に帰らぬ人となった。
Y美とY美の父親、双方の意向で延命処置は行われなかった。
それだけ何とか告げて、あとは泣き声が勝って言葉にならない。ただ、何度も
「ごめんね」と言っていることだけは解読できた。
俺はただ呆然とするだけだった。あと3ヶ月と告げられたあの日からまだ、1ヶ月も
経っていないのに。
そしてふと我にかえると、まだN子が泣いていることに気付く。今度こそ何とかしないと。
俺「今から行く。1時間後、▲▲公園。今日は絶対来いよ!それじゃな!」
それだけ言うと、返事を待たず一方的に通話を切り、手近にあった服を着て部屋を飛び出す。
夜の田舎道は空いている。N子には1時間後、と言ったが、40分でいつもの公園に到着。
すると公園の前、道端に、N子の車が停まっていた。

79 ::2014/07/26(土)00:10:04 ID:ytBtKxVPc
俺は車を降り、N子の車の助手席に向かう。ドアを開けて「久しぶり」と声を
かけ、乗り込んだ。N子は涙目で前を向いたまま、こくん、とひとつ頷いた。
俺「この前はごめんな。俺・・・」
N子「私の方こそ、ごめん。電話もメールも・・・私、いちくんの気持ち全然
考えてあげられてなくて、甘えちゃって、勝手なこと言って。怒ってるよね?」
俺は、ううん、と大きく首を横に振って、
俺「あのときは確かに、N子の気持ちが分からなくて腹立ててた。でも、今は
少し分かったような気がしてる。だから、もう怒ってない」
俺は、N子にもY美にも会えないでいる間、ずっと後悔してた。N子と口論になった
あの時、「俺の気持ちも知らないで勝手なことを」って思ってたのは事実だ。
でも、知らなくて当然なんだ。だいたい、俺はN子に本当の自分の気持ちを伝えた
事がどれだけあるってんだ?

80 ::2014/07/26(土)00:11:49 ID:ytBtKxVPc
俺はN子の話を遮り、一気に気持ちをぶちあけた。
俺「たぶん俺、Y美に嫉妬してたんだ。N子が俺よりもY美を信頼して、大事にしてる
なんて思っちゃって。だけどそれは当たり前だ。俺が素直に自分の気持ちを伝えて
来なかったからだ」
俺「彼女に本音を言うなんて、カッコ悪いことだと思ってた。N子に俺の情けないところを
知られたくなかった。だけど、今更だけど、ちゃんと言わなきゃいけなかったんだ」
今までは、それが必要な時にはY美が伝えてくれてた。思えば8年間も頼りっ放しだったんだ。
Y美の気持ちも知らずに。酷い話だよな。
俺「俺さ、N子のことが大好きだ。ここしばらく、N子と話もできなくて凄く寂しかったし、
もうこのままずっと会えないんじゃないかと思うと不安だったし、N子が俺のいないところで
泣いてると思うと辛くて堪らなかった」
俺「俺はもう二度とN子と離れたくない。こんな寂しくて辛いのはもうイヤだ。N子にずっと
一緒にいて欲しい。どんな時でも一緒にいたいんだ」
ここまで話して、ずっと俯いて黙ったままのN子が気になって、見る。
N子「私だって、いちくんとずっと一緒にいたいよ。だけど、今はまだ・・・その・・・」
困ったような表情。あ、もしかして俺、プロポーズしたみたいに思われちゃってる?

81 :名無しさん@おーぷん :2014/07/26(土)00:14:23 ID:a81hufarj
しえん

82 ::2014/07/26(土)00:14:28 ID:ytBtKxVPc
俺「あぁいや、違くて、いや違わないんだけどそうじゃなくて」
パニクってしどろもどろになった挙げ句に、開き直って覚悟を決めた。どうせ、
Uターン就職でこっちに戻ってくるって決めたときから、いずれそうするつもり
だったんだ。それが今で何が悪い!
俺「よりによって今日言うべきことじゃないのは分かってる。でも、もうここ
まで言っちゃったんだから、今更誤魔化したってしょうがない。N子、俺と結婚
してほしい。返事は今じゃなくていい。N子がこの事を考えられるようになるまで、
いつまででも待つから」
N子はようやく顔を上げ、俺の方を向いて、ほとんど1ヶ月ぶりの笑顔を見せてくれた。
N子「ホントに私なんかでいいの?」
俺「N子がいい。N子でなきゃダメだ」
そりゃもう即答。N子はまたちょっと涙目になって
N子「ありがとう。嬉しい。でもちょっとだけ待ってて。気持ちが落ち着いたら、ちゃんと返事するから」
俺「うん、待ってるよ」

83 ::2014/07/26(土)00:16:10 ID:ytBtKxVPc
運転席から助手席へ。俺の肩にもたれかかってきたN子。肩に腕を回そうとすると、
N子「あ、忘れてた。手紙」
そう言って、鞄から一通の封筒を大事そうに取り出す。プーさんの柄の可愛い封筒だ。
N子「お通夜に行ったとき、Y美のお父さんから預かってたの。Y美から、いちくんへ」
俺に?と言いながら受け取って、開けようとすると、
N子「ここじゃダメ。いちくんへの手紙なんだし、帰ってからいちくんだけで読んであげて。
私にも、私宛の手紙がちゃんとあるから」
俺「そうか、分かった」
もう時間もかなり遅くなってたし、翌日の葬儀の時間と場所とを聞いて、その日は帰る
ことにした。通夜にはまだ間に合ったかも知れないけど、Tシャツにジャージ下という
格好では失礼にも程があるので諦めた。

84 ::2014/07/26(土)00:18:37 ID:ytBtKxVPc
家に帰り、礼服を引っ張り出して、シャワーを浴びたあと、Y美からの手紙を開いた。
宛名も何も書かれていない封筒の中に、A4サイズの便箋が5枚。やはりプーさん柄だ。
Y美の書く文字は初めて見るような気がする。意外に、というかY美には似つかわしく
ない気がする、丸っこくて小さくて、可愛い字だった。
「いちくんへ」
それが、手紙の書き出し。不意を突かれたようで、ドキッとした。
「この手紙の中でだけは、1くんのことをいちくんと呼びます。N子には内緒だよ。」
「私はいちくんのことが好きでした。こんなこといきなり言われても困るだろうけど、
本当なんです。」

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