死ぬ程洒落にならない怖い話 その五
Part2
242 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:34:26.68 ID:wZMfR2Mo0
10年以上前の話なので脳内補完してる部分があるけれど、良ければ暇つぶしにでも読んで欲しい。色々ぼかしているのでご容赦を。
高校生の頃、私は人生で初めて霊体験をした。それからというもの、私はたまに見える霊なのか化け物なのかに怯えつつ、高校卒業と大学入学のイベントをこなし、充実したキャンパスライフを送っていた。比較的に穏やかだったと思う、大学2年生の夏に入るまでは。
サークルの懇親旅行で、訪れた山間の宿泊施設。
何をするでもなく、遊んで仲を深めようという趣旨で、総勢20名程度が参加していた。
日中は川原でBBQや川遊びをし、レンタカーで観光地巡り、夜には大宴会という、まあありきたりな一泊二日の旅行だった。
そして夜10時ごろに、酒がなくなるという不測の事態に陥った。
「行くしかなかろうよ」
程よく酒を飲んでいたA先輩が声を上げた。気が良い優しい先輩だが、酔うとキャラが良くぶれた。
それにつられるように、あちこちから先輩達と酔った同級生の声。
結果、幹事を任されていた私とB(サークル伝統で幹事は飲めなかった)は引きずられるように、それに監督役としてA先輩とC先輩の4人が行くことになった。
243 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:35:47.49 ID:wZMfR2Mo0
片道30分程度の山道を走れば最寄りのスーパー(11時閉店)につくとの事で、地図を見たC先輩に急かされるように準備を始めた。
宿からぞろぞろと歩きながら、車の前に着いた所で後からDがやってきて、結局総勢5名でミニバンに乗り込む事になった。
Dは同級生の中から唯一自己志願で来てくれた女子で、贔屓目に見ても美人で憧れの気持ちもあった。
なのでちょっと気持ちが晴れた。
流石に男所帯はA先輩もBもうんざりしていたのか、どことなく顔がにやけていた。
車内では私=運転席 B=助手席 A先輩、C先輩=2列目、D=3列目
という席順となった。
もちろん飲んでいなかった私が運転をしたが、正直鬱憤はたまっていた。
今回の幹事もほぼパシリの様なもので、飲める訳ではないし、吐いた人間の安息部屋である通称 “築地市場”の管理も基本私とB二人の仕事だった。
楽しくはあったが、しんどさと緊張と溜まった疲労感から、できることならさっさと部屋に戻って眠りたかった。
それはBも同じだったらしく、C先輩から渡された地図を見ながら油断したのか船をこいでいた。
244 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:36:50.09 ID:wZMfR2Mo0
「なーに寝てんの?!」
A先輩が後ろからBをシバく。鬼か。
でも地図持ちはBだけだったので、正直少し助かった。
「次の道は?」
「ってー・・・あー、こっち。」
左を示されたので、徐々に減速しながら左折する。
時間も時間だったのか、自分たちの他に走っている車はいなかった。
山道の夜は涼しく、窓を開けると虫の鳴き声に交じってカエルの声もよく聞こえた。
途中いろは坂の様な道をいくつか過ぎた時、ふとバックミラーを見ると、C先輩とDが少しうつむいてた。
街灯が少なかったのでよく見えなかったが、心なしか顔が青かったように思う。
「すみません、運転荒かったですか?」
「・・・」
「・・・ううん、でもちょっと気分が悪くて」
この車内で紅一点のDは返事ができるものの、思ったより辛そうだった。
そういえばC先輩は車に乗り込んだ時から、ずっと黙ったままだった。
声も出せない位にしんどかったのかと思い少し速度を落した。
「ハハッ、軟弱者め」
A先輩がやたら似ているミ●キーの口調でいう。もうこの人一人で行ったらいいのにと思った。
245 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:37:42.31 ID:wZMfR2Mo0
そうこうするうちに、Bから半分ぐらいまで来たと伝えられた。
相槌を打ちながら、ヘッドライトに照らされる前方に集中していると、脇の木立の陰に何かが見えた気がした。
「?」
違和感を覚えたが、すぐに後ろへと流れてしまったのと、Bから声をかけられたので意識の外に追いやってしまった。
「・・・謝ってもいい?」
Bの声に、少し想像ができた私は嫌な顔をした。
「道、間違えた」
「Hoooo!!」
「テンション上がりませんって・・・」
A先輩はそんな時でも絶好調だった。
でも少し車内の空気が和らいだのは間違いなかった。
「折り返すって言っても、途中方向転換できるところなかったしな・・」
「あれ、ほぼ直線じゃなかったか?どうやって迷った?」
A先輩の質問に、Bは申し訳なさそうにするも答えはでなかった。
その後のA先輩の「行けるとこまでいってみよう」という、まともな意見にだれからも反対意見は出なかった。
246 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:38:22.41 ID:wZMfR2Mo0
そこから5分程度走らせてみたが、分岐はおろか、切り返せる道にも出くわさなかった。
少し前から舗装されていた道は終わり、車一台がギリギリ通れるような酷道が続く。
全員の中でいよいよ迷ったという意識が強くなっていたと思う。
それと同時に、先ほど感じた違和感が強くなっている事に気が付いた。
悪路という事もありスピードは緩めていたので、その違和感の正体を確かめようと意識的に目を凝らす。
周囲の木に隠れるように立っている人影が見えた。
顔も性別もわからない、ただ黒い人の形をしているものが、木の陰に潜んでいる。
いや、正確には、木から生えていた。
右半身が木に埋まっているもの。頭だけ木から飛び出たもの。木に生えた足。
それぞれが、別々の形で木から生えていた。
月が雲に見え隠れしていて、しばらく電灯なんて見ていなかった。
ヘッドライトも古いレンタカーのそれなので、視界も良いわけではない。
にも拘わらず“黒い人影が木から生えている”と認識できた。
それにこの感覚には既視感があった。
初めて経験した時の様な、背中にねばつく汗が滲み出た気持ち悪さ。
鳥肌も止まらない。
出来の悪いコマ送りのように、黒い影が画像として視界に無理やり押し込まれているようだった。
ただ、その影は動いていなかった。
焦りつつも、自らの経験値から、画像の様に静止して見えるときには少なくとも自分には関心がない事を知っていたので、その時は少しだけ余裕があった。
その黒い影を何度何度も通り過ぎる。
でも途中で気が付いた。
通り過ぎるたびに、少しずつ、ソイツらの体の一部が車の進行方向に向けられてる。
247 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:43:13.53 ID:wZMfR2Mo0
気が付いた瞬間に少しパニックになっていたと思う。
一本道を走っているのに、ハンドルを力いっぱい握りしめていた。
「どうした、様子・・・おかしいぞ」
Bにそう言われるまで、じっと前だけを見て運転していた事に気が付かなかった。
黒い影を見ないように、運転に集中しすぎていたかもしれない。
手が少ししびれていた。
ただ何と答えていいのかわからなかった。
「えっ、あ、あっ」
自分でも動揺しているのが分かったが、必死に声を絞り出そうとした。
喉が痛いくらいに乾いていた。
しかし、次の瞬間。
「しゃべるな」
A先輩が遮るように、私に言い聞かせるように間に割って入った。
それと同時に後部座席の室内灯をつける。
「どうしたんですか?」
気が付いていない様子のDがバックミラーに見えた。
C先輩は先ほどと変わらない様子で、下を見てじっとしていた。
「前だけみて運転しろ、前だ。脇見するな。」
「Bも黙って前向け、余計なことは言うな」
鬼気迫る様子のA先輩の声が少し震えていた。
Bは不思議に思った様子だったが、自分の失敗の罪悪感からか、とりあえずはA先輩に従うらしく、前に向き直った。
248 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:43:51.28 ID:wZMfR2Mo0
Dも事態を掴めていないながらも、とりあえず黙っている事にしたようだった。
しかし、その頃私には黒い影の姿が完全に見えるようになっていた。
どの影も、どんな形であろうと、体の一部は完全に地面と平行に前方に向いている。
心なしか数も増えているように思った。
そして、気が付いた。黒い影が笑っている。
実際に笑っているのが見えたわけではない、ただ、本当になんとなく、笑っているように感じた。
声は聞こえないが、顔がにやけているようなのだ。
きっと私は真っ青になっていたが、気が付いたであろうBは何も言わなかった。
車内は誰も何もしゃべらなかった。
そうやって、時間にして10分ぐらい?車を走らせると、オレンジ色のヘッドライトに小さな小屋が照らされた。
突然現れた建物に面くらうも、少しして車を完全に停止させた。
249 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:44:22.28 ID:wZMfR2Mo0
そこは人の手で整備されたであろう少し開けた広場だった。
中心には小さな休憩小屋があって、その横にはかすれて読めない看板らしきものが立てかけてあった。
正面にはガラス張りの引き戸があり、ヘッドライトに照らされると中には木製のテーブルと椅子が2組そろっているのが見えた。
ただ、荒らされていないだけで、廃墟も同然だった。
小屋の周りには雑草が生い茂っていて、長い間人の手が入っていなかった。
そこで道は行き止まりになっていた。
私はそれまで見えていた黒い影が、全く見えなくなっている事に気が付いた。
けれども鳥肌が止まらず、背中がずっとゾクゾクしていた。
「・・・なんだこれ?地図に載ってないぞ?」
Bは車内灯で地図を見るも、思い当たる場所が見つけられないのか
頭を掻きむしりながら、イライラした様子だった。
暫くは誰も車内から降りようとはしなかった。
250 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:44:51.68 ID:wZMfR2Mo0
私は完全に固まって身動き一つ取れずにいた。
車の外には何かが息づいている、そんな気がした。
車内でも決して安全ではないという確信があった。
「あれ、地図じゃないか?」
そのA先輩の声にハッと気が付き、指さされた方を見ると、確かに草木に囲まれてはいるが看板の様なものがあった。小屋から少し離れた位置にある。
昭和より古そうなレトロなタッチで描かれ、古びて色が変色したその看板は確かに案内図のように見えた。その看板だけ、周囲の雰囲気から浮いており、異質だった。
「ちょっと、見てくる」
A先輩がそう言ったので、私は思わず本気ですか?と尋ねた。
「そのまま来た道走ればいいじゃないですか」
「また迷う可能性がある。迷う余地のない道で迷ったんだ、闇雲に帰るのは避けたい」
A先輩の発言は確かにその通りだった。
251 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:45:19.80 ID:wZMfR2Mo0
そこで、私は車から降りるのも嫌だったが、Bに帰りの運転を代わって貰うように頼んだ。
Bは最初断ろうとしていたが、道中の私の様子を見ていたのを思い出したようで、
最後には代わって運転席に乗り込んでくれた。
A先輩が意を決したように車から降りた。
私も運転席から降りて、Bとすれ違いながら助手席へ乗り込もうとした。
その時に、ふと気が付いた。
あたりにはA先輩とB、それに自分の足音しか聞こえないはず。
だが、もう一つ足音があった。
「へっ?」
今思えばひどく間の抜けた声がでたと思う。
ただ、私の目の前にはA先輩の後ろについていくように、車から降りて歩き出すDの姿があった。
252 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:46:01.50 ID:wZMfR2Mo0
「D・・・?」
それに釣られてBがこちらを見る気配がした。
私はそれに構わず、Dの姿をジッと見つめたが、どこかDはふらふらと、頭を揺さぶりながら歩いているようだった。
「D?」
さっきより少し大きな声で呼んだ。
A先輩が振り返り、怪訝そうな顔でこちらを見た。
空気が止まった。
そういえば、少し前から虫の声が聞こえなくなっていた。
いつから?
Dが止まった。
ちょうど、A先輩と私たちとの間くらいで。
「いやあああぁぁぁぁああぁっあああっああっっ!」
Dが悲鳴を上げた。
253 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:46:35.63 ID:wZMfR2Mo0
ある一点を指さして固まるが、私からはギリギリDの横顔が見えるか見えないかの位置。
肩が強張っていたように見えたのが、とても印象に残っている。
そしてその悲鳴に貫かれたように、私の体がまた動かなくなった。
もう何度も怖い思いをしたが、この瞬間ほど恐怖を感じた時はなかった。
条件反射なのか、考える間もなく私の顔はDが指さしている方向に向いた。
そこにソレはいた。
いつの間にか少し開かれた小屋の引き戸、そこに細い指をかけてこちらに顔だけ出している何か。
白い顔。瞼がない。目はある。髪はない。大きく口角を上げながら、笑っている?
だが目は笑っていない。そんな顔が大人の膝の高さぐらいのところからこちらを見ていた。
何故か小屋の中は真っ暗で、顔だけが浮かんでいるように見えた。
<×××、×××?>
ソレが何かを言ったと思う、でも頭が理解できなかった。
音としても十分に聞き取れたのか定かではなかった。
ただ、口の動きから、“何かを言ったのではないか”とかろうじて判別できた。
254 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:47:08.30 ID:wZMfR2Mo0
死んだ、と思った。
頭は真っ白になって動けない。
Dは悲鳴を上げながら、腰を抜かしたのかその場にへたりこんだ。
立つ事もできないのか、地面がについた手が何かを掴もうとして空いたり開いたりしていた。
<×××、×××?>
ソレがゆっくりと小屋から出てきた。
視線はDに向けたまま、這うように。
4足歩行をしていたソレは、体が2メートルくらいだったと思う。
その歩き方も、人が無理に獣の様な姿で歩いているのが一番近く、不自然だった。
そして首が無いように見えた。まるで、頭が肩の中心にそのまま生えているかのようだった。
ソレはDから視線を切らずに、2歩3歩と進んだあと、その場で止まった。
<×××、×××?>
おそらく何度も同じ事を言っていたのだと思う。
Dはもう悲鳴も上げておらず、ただ硬直していた。
体が震えていたので、気絶してはいなかった。
255 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:47:40.42 ID:wZMfR2Mo0
「アハ」
ソレが言った。
明確にその音?言葉?だけは聞こえた。
その後の事は今でも信じられない。
気が狂って幻覚を見たといわれた方が、よっぽど説得力あると我ながら思う。
ソレの首が伸びたかに見えた。
しかし、首だと思ったそれは人の腕だった。
手がソレの頭を鷲掴みにしていて、首があるべき胴体部分の穴から、長い長い腕が伸びていた。
ニチャッっと音を立てて、腕が伸びていく。
その穴から黒い液体の様なものがしたたり落ちた。
腕が伸びた体の方は、カサカサと踊るように、四つ足で蠢いていた。
そのまま頭はDのすぐ近くまで来てもう一度「アハ」と笑った。
目じりが下がった、とても嫌な、気持ち悪い笑みだった。
256 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:48:11.28 ID:wZMfR2Mo0
「アヴァ」
笑ったままで、ゴポッと目と鼻と口から同じような黒い液体が出た。
そしてそのままDの足首に噛付き、引きずり始めた。
「――――!」
Dはもう声が出ていなかった。
抵抗するかのように、地面に爪を立てた。
爪痕を残しながら地面がえぐれて、それでも引きずられた。
私は何を見ているんだろうと思った。
なにもかも非現実的で、おそらく何かそういうモノを見られるようになったが、
何故ここまでの目に合わなきゃいけないのか。
それと同時に、何でDがこんな目に合っているんだという怒りの気持ちが湧いてきた。
そう思った瞬間、いつの間にか体が動く事に気が付いた。
そこからはDに向かって無我夢中で走り出した。
一歩一歩が重く、まるで夢の中で逃げたいのに早く走れないかのように感じた。
257 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:48:41.83 ID:wZMfR2Mo0
手を伸ばして、同じく手を伸ばすDと目が合った。
Dが泣きながら、それでも何とかこちらの手を伸ばそうとして。
後ろから誰かの叫び声が聞こえた。
その時はDに10歩ぐらいの所だったので、止まるという判断はなかった。
次の瞬間、体に衝撃を感じて地面に倒れこんだ。
一瞬呼吸が止まり、何が起きたのか混乱した頭で、それでもDを助ようと必死でもがいて立ち上がろうとした。
そこで地面に押さえつけられるように、誰かが背中にのしかかったのだと気が付いた。
「なん・・・どけっ、D!」
「バカ野郎!落ち着け!」
A先輩の声が背中からふってきた。
「D!Dが!」
「くっそ、動くな!」
「はや、はやく!」
「Dって誰だ!」
258 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:49:07.94 ID:wZMfR2Mo0
その時のA先輩の声が耳に入った瞬間。
全ての音が止まった。
化け物の動く音も、Dのもがく音も。
ただ、私は私の上にいるA先輩の体温だけを感じて、A先輩が言った意味を考えていた。
「Dって誰だ!」
確かにA先輩は言った。何を言っているんだ、一緒に来たじゃないか。
今まさに化け物に襲われてるじゃないか。
本当にA先輩が何を言っているのかわからなかった。
ただ、突然の静けさに耳が痛かった。
ドクンドクンと頭の中を巡る血液の音が聞こえて、私は顔を持ち上げてDと化け物を見た。
Dからは表情が消えていた。
まるで愛想笑いをしていた人が、分かれてから表情を消すような唐突さだった。
ただ一言、目が笑っていない笑顔を浮かべて言った。
259 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:49:47.43 ID:wZMfR2Mo0
「アハ」
「A!早く引きずってこい!」
後ろからC先輩が怒鳴る声が聞こえ、無理やりA先輩に担ぎあげられた。
引きずられるようにして、車に放り投げ入れられると、C先輩がBに車を走らせろと怒鳴っていた。
ドアをA先輩が無理やりしめ、Bが急発進させた車内で私は窓ガラスに額を打ち付けた。
血が窓を伝って流れる向こう側で、化け物が嬉しそうに、
「ウフっうふふううふうふぅぅ」
と声を上げて、D?だったものを力強く投げつけた。
D?は近くの木の枝にぶつかり、そのまま貫かれた。
そして私は意識を失った。
次に私の意識が戻ったのは、病院のベッドの上だった。
隣にはC先輩が座っていて、私に気が付くとナースコールを押しくれた。
部屋に医師や看護師が入ってきて、簡単な問診が始まったが、結論としては特に異常なし。
額への外傷で一時的な記憶喪失になるかもしれないが、様子を見るに、あまり心配はいらないだろうとの事だった。
260 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:50:36.99 ID:wZMfR2Mo0
部屋から一団が去ると、C先輩がぽつりぽつりと話をしてくれた。
あの後、気を失った私を乗せて悪路を激走したそうだった。
不思議な事に帰り道は一本道で、いつの間にか元の道路に出られていたという。
化け物が追ってくる事もなく、皆が待つ宿に戻れたそうだ。
そのままBの運転で私を病院に運び、念のためC先輩が様子を見てくれていたとの事。
「C先輩、アレ見えてたんですか?」
ふと、そういえば皆が同じものを見ていたのか疑問に思った。
「見えた、AとBには小屋のヤツは見えなかったみたいだけどな」
「俺、実はちょっと特殊でさ。小さい頃から見れるタイプで」
「Aもこの事知ってるよ、高校からの付き合いで、昔ちょっとあってね」
「ただ、追い払うとかの力はなくて、見えるだけ」
そこまで一気に語ったC先輩は、手にもっていたコーヒーを一口飲んだ。
「君がDって呼んだヤツ、AにはE(A先輩の同級生)に見えてたんだって。」
「は・・・?」
「BはDだって言ってたかな」
いよいよわからなくなった。
261 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:51:12.05 ID:wZMfR2Mo0
最初から見間違い?確かに道中は名前で呼ぶ事もなかった、でもそんな事あるのか?
「ちなみに俺には化け物に見えた、全身真っ黒の化け物。目の穴がバラバラの位置に三つあった。眼球は無くて、真っ白な歯を見せて笑ってた」
C先輩は急に声を潜めた。
「仮にDとするけど、アレ、合流した瞬間から俺の事ずっと見てた」
「バレたんだろうな、気がついたの」
「車の中でさ、最後尾に座っただろ。俺の後ろからずっと小声で言ってんだよ」
“みみみえてるん、だぁ、みえええ” って
ゾッとした。
そんな呂律の回らないような様子だったとは微塵も感じなかった。
「俺そこから何も言えなくて、ジッと下見てた」
「アレはずっと俺の事見てた、だから俺が狙われてるんだと思ってた」
「途中でAが俺の様子に気が付いて、それで君とBに注意した」
「Aは何が起きたのか分かってなかったよ、後で本人も言ってた。それでも俺の様子から、ろくでもない事が起きてるって気が付いた」
C先輩は普段、決して嘘を言う人ではなかった。
誠実な人だったし、ましてやこの状況下でふざける人ではないので、私はC先輩の言葉を黙って聞いていた。
262 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:52:55.35 ID:wZMfR2Mo0
「君がどこまで見えていたのかは知らない、でも車を降りた時、小屋の中のアレに気が付いた」
C先輩はそこで一旦区切った。
「率直に聞くけど、何が見えた?」
私は、四つん這いの、首の代わりに腕が生えてきた化け物の事を説明した。
そしてそれに、Dらしきものが連れ去られそうになったことも。
話をする度に鳥肌が立ったが、今は安心感があった。
「・・・・・・そっか、俺が見たのもそんな感じだったよ」
少しの沈黙の後、C先輩は目頭を揉みながら、消え入るような声で喋った。
「アレは一体何だったんでしょうか」
答えが得られるとは思っていなかった。
「なんだろうね、でも俺はあの類が自然発生するものではないと思ってる。何かしらの起りがあるんじゃないかな」
そこまで言ってC先輩は黙り込んだ。
「君がどこまで見えていたのかは知らない、でも車を降りた時、小屋の中のアレに気が付いた」
C先輩はそこで一旦区切った。
「率直に聞くけど、何が見えた?」
私は、四つん這いの、首の代わりに腕が生えてきた化け物の事を説明した。
そしてそれに、Dらしきものが連れ去られそうになったことも。
263 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:53:29.93 ID:wZMfR2Mo0
話をする度に鳥肌が立ったが、今は安心感があった。
「・・・・・・そっか、俺が見たのもそんな感じだったよ」
少しの沈黙の後、C先輩は目頭を揉みながら、消え入るような声で喋った。
「アレは一体何だったんでしょうか」
答えが得られるとは思っていなかった。
「なんだろうね、でも俺はあの類が自然発生するものではないと思ってる。何かしらの起りがあるんじゃないかな」
そこまで言ってC先輩は黙り込んだ。
ちょうどそのタイミングで、私の両親が病室に駆け込んできた。
C先輩は“山道を運転中、動物を避けようとした時に倒木に乗り上げて、額を窓にぶつけた”と両親に説明し、管理不届きを謝罪してくれた。
私も先輩に非はないと両親に訴え、その場はそれで収まった。
264 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:54:08.72 ID:wZMfR2Mo0
C先輩はそのまま病室を辞していった。
私はその後1日経過観察を兼ねた入院をし、すぐに退院の運びとなった。
それから私は、A先輩とC先輩に改めてお礼を言った。
Bにも心配をかけたお詫びをしたが、Bは気にする風でもなく、ただ不思議な経験だったと笑ってくれた。
私たちが経験したことは、もちろん部内で語られることはなかった。
ただ、動物と倒木ネタで少しの間からかわれたが、それも直ぐに止んでいった。
C先輩は宿の人に、この地方の話をそれとなく聞いてみたそうだが、
誰もその広場や小屋の事、何か事件・事故があったという話は知らなかった。
ただ、宿に野菜を運びに来ていたお爺さん一人だけが、ものすごい形相でC先輩を見つめていたらしい。
(睨んでいたのではなく、目を剥いていたとのこと)
どうしたのか聞こうとしたら、何も言わずに慌てて帰ってしまったとC先輩は言っていた。
この話は、これでおしまい。
A先輩、C先輩ともその後この話をすることなく、3人だけになる機会を全員が避けていたような気がする。
BもC先輩からちょっと怖い所を説明された程度で納得してたみたいだった。
265 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:54:50.66 ID:wZMfR2Mo0
C先輩はそのまま病室を辞していった。
私はその後1日経過観察を兼ねた入院をし、すぐに退院の運びとなった。
それから私は、A先輩とC先輩に改めてお礼を言った。
Bにも心配をかけたお詫びをしたが、Bは気にする風でもなく、ただ不思議な経験だったと笑ってくれた。
私たちが経験したことは、もちろん部内で語られることはなかった。
ただ、動物と倒木ネタで少しの間からかわれたが、それも直ぐに止んでいった。
C先輩は宿の人に、この地方の話をそれとなく聞いてみたそうだが、
誰もその広場や小屋の事、何か事件・事故があったという話は知らなかった。
ただ、宿に野菜を運びに来ていたお爺さん一人だけが、ものすごい形相でC先輩を見つめていたらしい。
(睨んでいたのではなく、目を剥いていたとのこと)
どうしたのか聞こうとしたら、何も言わずに慌てて帰ってしまったとC先輩は言っていた。
266 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:55:27.61 ID:wZMfR2Mo0
この話は、これでおしまい。
A先輩、C先輩ともその後この話をすることなく、3人だけになる機会を全員が避けていたような気がする。
BもC先輩からちょっと怖い所を説明された程度で納得してたみたいだった。
この話を書き込もうと思ったきっかけは、先日遊びから帰ってきた娘の口から“Dちゃん”という言葉が出たから。
たまたま、知り合ったお友達の名字がDだったらしい。
その珍しい名字を聞くまで、自分でも不思議なくらい、この出来事を忘れていた。
今度A先輩とC先輩と飲み会の段取りをしたので、この事について話してみようと思う。
呼んでくれた人、ありがとう。
268 :本当にあった怖い名無し :2022/07/22(金) 09:12:11.50 ID:4w40FYAO0
>>266
おもしろかった
270:本当にあった怖い名無し:2022/07/22(金) 12:39:30.50 ID:TaLfP69P0
>>266
うん、めっちゃ面白かったっていうか怖かった
「呼んで」ってほぼ間違いなく「読んで」の書き間違いだと思うんだけど
(Dを)呼んでくれた人(かどうかわからないモノ)ありがとう
って一瞬思っちゃって二重に怖かった
278 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:44:24.26 ID:BKCozULB0
これは僕が大学生だった時の話だ。
田舎の学生といえば、基本車か原付で移動することが多く、僕も例に漏れずホンダの原付で大学やバイト先に出かけていた。時には田舎から都市部まで30kmくらい走ったり、それを超えて海まで行ったりもした。便利な足をはじめて手にした僕は、どこへでも行けるような気がした。
279 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:45:02.71 ID:BKCozULB0
僕は家から10kmほど離れた大型ショッピングモールの本屋兼雑貨店でバイトしていた。理由は二つ。自由な金が欲しかったのと、母親に迷惑をかけずに就職まで進むための資金稼ぎ。父親を中学生で亡くした僕は、少しでもそうした負担から母親を解放したい、いわば早く自立した男として生きていく気持ちが強かった。田舎では仕事は少なく、給料も安い。近所の畑の学生バイトも季節によりけりだった。そこで少し遠方のところまで足を伸ばして働くことにしたのだ。
バイク乗りは皆知っていると思うが、夏は暑く、冬は寒い。当然、夏は日焼けして真っ黒に、冬は帰ったらすぐに風呂に飛び込んだ。でもバイクに乗るのは気持ちがよかった。風を切って走る爽快感がそれに優った。
そんな気候に悩まされる時期のあいだ、寒くも暑くもない6月にそれは起きた。
280 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:45:37.88 ID:BKCozULB0
バイト先のショッピングモールから出て帰路についた僕は、いつも通り原付で帰っていた。日が長くなってきてそろそろ帰りもサングラスをかけなきゃな、と考えながら夕方と夜のあいだくらいの街を走った。陽がちょうど落ちるか落ちないかの時で、道中サングラスをかけていないことを後悔したが、走行中に取り出すのも面倒臭くてそのまま走った。
幹線道路の車線変更をして橋を渡っていたその時だった。陽が強くあたり視界を奪った。思わず目を瞑ったが時速60kmで走行中で車も多く、無理やり目を開けた。視界は真っ白でこんなことあるのかと思った。しかし徐々に視界が戻ってきてホッとして、そのまま橋を降りる方向へ向かった。
この橋が実は昔から不思議だった。詳細は特定されるかもしれないからぼやかすけど、橋の途中で道路のある種別が変わる不思議な道路で、それゆえに地元住民からはある愛称で呼ばれていた。そういった不思議な道路で、事故も多かったのでいつも警戒していた道路だった。なんとなく事故が多いのは太陽の光が入り込むタイミングとかなのかなとか考えながら、橋を降りた。
281 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:46:25.06 ID:BKCozULB0
そこで違和感に気づいた。その橋を降りた先の道は、いつもすごく混む。それなのに一台も車がなかった。最初はあれ?ラッキーと思って走ったが、次の交差点でも、その次の交差点でも車どころか人一人見つけられない。
そのまま走って家に着いた。なんかおかしいような気がしたけど、道中見かける家の明かりはついているし、街灯も信号も付いている。その光のみに支えられて家に着くことができた。
家に着いたら、母がいなかった。もうすでにあたりは真っ暗でいつもなら母は帰っている時間。これはいよいよおかしいのでは。そう思って母に電話しようとして携帯を取ろうとしてポケットに手を突っ込んだら、いつも入れてるポケットに携帯がない。あれ?と思ってバッグを見てもない。バイト先に忘れたか、それともこの家のどこかに置いたのを忘れただけか?と考えてわからなくなったので、とりあえず自分の携帯にかけてみることにした。
282 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:46:59.09 ID:BKCozULB0
今は昔、家の固定電話があった時で、その固定電話から空で覚えてる自分の携帯電話にかけて耳をすませた。…どこからもバイブ音は聞こえない。どうやらバイト先に置いてきたみたいだな…とか考えながら受話器を置こうとした時に、不意に違和感を感じて、受話器を耳に当てた。
コール音が鳴っておらず、誰かが応答している気配があった。誰かに拾われて、通話に出てくれたのか、それともバイト先の店長か、どちらかの可能性が高い。なんとかするべく話してみた。
283 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:47:29.40 ID:BKCozULB0
「あのーすいません。その携帯僕のなんですが、そちらはどなたですか?」
応答はない。僕は耳をすませて相手の出方を伺った。
かすかに向こうの周囲の音が聞こえる。どこかの店らしく、BGMが流れている。クラシック調の音楽で、曲目が判別できるほどは聞こえなかった。しかしその後も電話は誰も喋らずで、僕は仕方なく受話器を置いた。
284 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:48:15.16 ID:BKCozULB0
その瞬間、電話が鳴った。固定電話の番号通知には母の名前。
「もしもし、どうしたん?こんな時間まで、どこいんの?」
と僕が話し出すと、母親の声が聞こえた。が、なんといっているかがわからない。
「なんか電波悪いみたい。聞こえる?もしもーし」
そう僕が言うと、母の方の声が次第に聞こえてきた。
「・・・は、・・・大丈夫?」
「え?なんて?」
そんな感じで答えていると不意に地震のように地面が揺れ始めた。
285 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:48:46.36 ID:BKCozULB0
「うわ、地震?かも。そっちは大丈夫?」
と答えながらも揺れは大きくなっていく。
「・・・・ねんで」
母の声は相変わらず聞こえにくい。地震の揺れが大きくなっていく中、このままじゃまずい
!と思った僕は、母親に「ごめん、ちょっと机の下に行くわ!」といって切ろうとした時、母親の声が鮮明に聞こえた。
「なにいってるの!あんたトラックに撥ねられて、今救急車やろ!」
「え?」
286 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:49:32.62 ID:BKCozULB0
返事をした瞬間、僕の目の前には白衣の男性がいた。僕の右耳には受話器?が当てられてて、僕はストレッチャーの上だった。窓を見ると街灯が素早く移動する。明らかに救急車の中だった。全てを察して、僕は母親に言った。
「えらいことになってしもた!ごめん。ほんますまん」
そう、僕は途中でトラックと交錯して、事故を起こして気を失って搬送されている最中だった。それまで見た風景は、たぶん夢かなんかなんだろう。そう思って目を閉じたらそのまま気絶した。
次に目を覚ましたのは、いわゆる集中治療室。自分の間近で鳴ったナースコールで目を覚ました。夜中に目を覚ますと、看護師がやってきて、安心させるような言葉をかけて、去っていった。そこでまた気絶して、翌朝鏡を見て驚愕した。事故の影響でボコボコに腫れていた。医者は笑いながら、大体治るから大丈夫、と言葉をかけてくれたが、目の下の骨をおり、網膜も少し傷が入ったようで、経過観察と絶対安静を余儀なくされた。
僕を見て母親と姉は泣いた。僕は本気で詫びた。その時初めて自分の命が自分だけのものではなかったことを知った。
287 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:50:06.36 ID:BKCozULB0
入院中はたくさんの人に支えられた。大手術もした。今思えばそんなこともあったな、と思うが、当時は本当に大変だった。もう二度とこんなことになりたくない。そう思った。
大学の開校期間中に復帰できた。単位もいくつか落としたが、周りの支えもあり、なんとかなった。そうして時は過ぎて行った。
僕は大学三回生になり、就活をしていた。就活は本当に大変だった。毎日色々なところに行っては、説明会に出たり、面接を受けたり、テストを受けたりしていた。順調に物事が進むようには思えなかった、そんな時のことだった。
288 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:50:53.43 ID:BKCozULB0
大阪、梅田の地下街を就活の合間に歩いていた。僕の就活の息抜きはラーメンで、色々な店を捜してはくった。
今回は坦々麺。今もあるかどうかはわからないが、有名な泉の広場を抜けた先にある。本格坦々麺の店に向かい、注文した。
料理が出てくるのを待っていると、携帯が鳴った。
僕は選考の連絡かな?と思い、嬉々として通話ボタンを押した。
289 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:52:08.60 ID:BKCozULB0
その瞬間、口の中に誰かが手を突っ込んできたのかと思うほど、口が引き攣り、喋れなくなった。なんでこんな時に、こんなことになるのか。持病も何もないのになぜ、と思いながら、耳を澄まして相手の声に集中した。後で掛け返せばなんとかなると思った。
すると聞こえてきた声は意外なものだった。
「あのーすいません。その携帯僕のなんですが、そちらはどなたですか?」
間違いなく僕の声だった。そして彼は電話を切った。その瞬間、僕の口は元に戻っていた。
そんな馬鹿な、間違い電話だろうと思う僕に坦々麺が運ばれてきた。食べようとした瞬間、僕の耳に聞こえたのは、店内のBGMに使われていた
モーツアルトの「呪われしものを罰し」だった。
290 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:55:34.94 ID:BKCozULB0
長々と失礼しました。約10年前の出来事で、ふと思い出したのが、まさかの事故った日だったので何かの因果と思い記念カキコ
292:本当にあった怖い名無し:2022/07/23(土) 01:06:30.25 ID:LWUIsRAC0
面白かった
293 :Y岡 :2022/07/23(土) 01:10:52.42 ID:BKCozULB0
>>292
ありがとう。これ初レス
294:本当にあった怖い名無し:2022/07/23(土) 01:34:15.97 ID:YCsrVqWD0
>>293
うぉぉ……めっちゃゾクゾクしました
ご無事で本当に何よりです
295 :本当にあった怖い名無し :2022/07/23(土) 01:44:27.79 ID:BKCozULB0
>>294
ありがとうございます。というよりゾクゾクさせてすみません…
今は元気に暮らせてます。事故のときの記憶、意外にその後のリハビリとかが大変で忘れがちなんですよね。
しばらくはあの橋、怖くて渡れませんでしたが、先日帰郷の折に試しに通ってみようと思って車を走らせていたら、バイパスの合併か何かで形が変わってました。
通ってみましたが、何も起こらなかったです。
327 :本当にあった怖い名無し :2022/07/24(日) 15:57:15.35 ID:2NSG+IXU0
木造一軒家に住んでるんだけど天井裏あたりからネズミが走ったりチュウチュウ鳴いたりする騒音に悩まされてる
業者に連絡して調べて貰ってもフンとか死骸の形跡は0と言われた
またチュウチュウ鳴いてるから別の業者を呼んで親父も一緒にチェックすることになったけどやっぱり形跡0
まだネズミが天井裏を走ってる意味がわからん
329:本当にあった怖い名無し:2022/07/24(日) 16:34:07.38 ID:5BMoxQjH0
>>327
カメラ付けろよ
330:本当にあった怖い名無し:2022/07/24(日) 17:13:52.79 ID:9QTSu0qd0
ネズミってのは天井裏を走る生き物なんだよ
猫を飼うんだ
332:本当にあった怖い名無し:2022/07/24(日) 19:12:50.92 ID:EDgK+vrb0
幼稚園からの付き合いの幼馴染の友達が二人いて同い年で家も近所だからよく3人で遊んでた
B子は私と同じ一般家庭だけどA子は神主の娘
3人で遊んでいるとよく近所の人がやってきてA子が連れていかれた
しばらくすると戻ってきて「どうしたの?」って聞くと返事はたいてい「なんでもなかった」
だからしばらくすると当たり前になって何も聞かなくなっていった
大きくなるにつれきづいたんだけど
近所の人は何か変なことがあるとA子を呼んでお祓いをしてもらっていたらしい
A子と一緒にいることで私たちに何か怖いことや変なことがあるわけでもないし
むしろA子と友達だということで近所の大人がみんな優しくなってお菓子をくれたりしたので得をするぐらいだった
中学生の頃、3人で登校していたんだけどB子の様子がおかしかった
とても疲れているように見えたので聞いてみたら、最近金縛りにあうようになってほとんど眠れていないらしい
それでふと思いついてA子に何とかならないか聞いてみた
そしたら
「うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」
って唸りだして眉間にしわを寄せて悩み始めてしまった
A子はいつでも即断即決で一緒に買い物に行ってもほとんど迷わない人なので私とB子はかなりビビった
「なにか悪いものでもついてるのかな」「え、どうしよう」そんなことを言ってたら
「悪い?悪い!悪くない?悪くない!・・・・・悪くはないかなぁ」
って言ってまた「うーん」って悩みだしちゃったので
「悪くないなら大丈夫だね」「うん!A子ちゃんもういいよ」そんな感じでその時は切り上げた
333:本当にあった怖い名無し:2022/07/24(日) 19:13:19.65 ID:EDgK+vrb0
それからB子は病弱になっていった
学校で倒れることはしょっちゅうで病欠も増えた
高校も3人一緒だったけどずっと青白い顔で出席日数も毎年ぎりぎり
A子と二人でサポートしながらなんとか卒業できるところまで目処をつけた
そしたらB子が卒業したら東京に行くって言いだした
A子も私も地元に残るし、B子は卒業したらゆっくり病気を治すことに専念して
良くなったら就職なりお見合いなりすればいいじゃないかと思ってたのでB子の両親も含めてみんな反対
だけど「行けないなら死んだほうがまし」って言いだして結局、東京の専門学校に進学した
心配してまめに連絡してたんだけど電話越しではすごく調子が良さそうだった
しばらくしてゴールデンウィークに帰省した時に「結婚することになった」って言い出した
どうやらあっちで運命の出会いがあったらしい
その人と出会った瞬間、「この人だ」って思ったらしい
それからというもの体も心も健康そのもので毎日充実して世界が輝いて見えると言う
お互い卒業まで待てないのですぐに結婚するらしい
B子がもしかしたら騙されてるんじゃないかと心配をしたけどそんなものは不要で
本当に年末に東京で式を挙げた
私もA子と共に出席したけどとても良い式だった
出席者みんながニコニコして二人の門出を祝福していた
B子が時々旦那さんと目を合わすんだけどそうなるともう二人の世界に行っちゃったって感じで
私はB子が苦しんでる姿をずっと見てきたからB子のそんな幸せそうな姿をみると感慨もひとしおだった
B子はこの日のために生まれて来たんだなって思った
334:本当にあった怖い名無し:2022/07/24(日) 19:13:43.72 ID:EDgK+vrb0
帰りの新幹線の中で、大宮を過ぎたあたりかな、A子が深い溜息をついて言った
「やーーーーと言える」
驚く私を尻目にいろいろ説明してくれた
B子と旦那さんは前世で添い遂げて今世でも結ばれる運命だったこと
だが旦那さんが嫉妬深い人でB子が別の人と関係を持つのが嫌でずっと取り憑いていたこと
だからB子は年頃を迎えたころから調子が悪くなったこと
払うこともできたんだけどB子にとってはそれは運命の人との繋がりであり
それを払うとB子にとって良いこととか悪いことか分からないからA子にはどうしようもできなかったこと
それを聞いて私は腹が立った
「自分で穴を掘って
そこに相手を突き落として
何食わぬ顔をして手を差し伸べて、
そんなのを運命って言うなんて性格悪すぎない??」
そしたらA子がシレっと言った
「故意にしろ、そうでないにしろ
意識的にしろ、無意識にしろ
人間がやったにしろ、神様がやったにしろ
運命ってそういうものだよ?」
だから私は運命を二度と信じない
336 :本当にあった怖い名無し :2022/07/24(日) 19:36:43.31 ID:ZTt+4kld0
>>332
幼女がお祓いしてくれるのか、神主は?
10年以上前の話なので脳内補完してる部分があるけれど、良ければ暇つぶしにでも読んで欲しい。色々ぼかしているのでご容赦を。
高校生の頃、私は人生で初めて霊体験をした。それからというもの、私はたまに見える霊なのか化け物なのかに怯えつつ、高校卒業と大学入学のイベントをこなし、充実したキャンパスライフを送っていた。比較的に穏やかだったと思う、大学2年生の夏に入るまでは。
サークルの懇親旅行で、訪れた山間の宿泊施設。
何をするでもなく、遊んで仲を深めようという趣旨で、総勢20名程度が参加していた。
日中は川原でBBQや川遊びをし、レンタカーで観光地巡り、夜には大宴会という、まあありきたりな一泊二日の旅行だった。
そして夜10時ごろに、酒がなくなるという不測の事態に陥った。
「行くしかなかろうよ」
程よく酒を飲んでいたA先輩が声を上げた。気が良い優しい先輩だが、酔うとキャラが良くぶれた。
それにつられるように、あちこちから先輩達と酔った同級生の声。
結果、幹事を任されていた私とB(サークル伝統で幹事は飲めなかった)は引きずられるように、それに監督役としてA先輩とC先輩の4人が行くことになった。
243 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:35:47.49 ID:wZMfR2Mo0
片道30分程度の山道を走れば最寄りのスーパー(11時閉店)につくとの事で、地図を見たC先輩に急かされるように準備を始めた。
宿からぞろぞろと歩きながら、車の前に着いた所で後からDがやってきて、結局総勢5名でミニバンに乗り込む事になった。
Dは同級生の中から唯一自己志願で来てくれた女子で、贔屓目に見ても美人で憧れの気持ちもあった。
なのでちょっと気持ちが晴れた。
流石に男所帯はA先輩もBもうんざりしていたのか、どことなく顔がにやけていた。
車内では私=運転席 B=助手席 A先輩、C先輩=2列目、D=3列目
という席順となった。
もちろん飲んでいなかった私が運転をしたが、正直鬱憤はたまっていた。
今回の幹事もほぼパシリの様なもので、飲める訳ではないし、吐いた人間の安息部屋である通称 “築地市場”の管理も基本私とB二人の仕事だった。
楽しくはあったが、しんどさと緊張と溜まった疲労感から、できることならさっさと部屋に戻って眠りたかった。
それはBも同じだったらしく、C先輩から渡された地図を見ながら油断したのか船をこいでいた。
244 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:36:50.09 ID:wZMfR2Mo0
「なーに寝てんの?!」
A先輩が後ろからBをシバく。鬼か。
でも地図持ちはBだけだったので、正直少し助かった。
「次の道は?」
「ってー・・・あー、こっち。」
左を示されたので、徐々に減速しながら左折する。
時間も時間だったのか、自分たちの他に走っている車はいなかった。
山道の夜は涼しく、窓を開けると虫の鳴き声に交じってカエルの声もよく聞こえた。
途中いろは坂の様な道をいくつか過ぎた時、ふとバックミラーを見ると、C先輩とDが少しうつむいてた。
街灯が少なかったのでよく見えなかったが、心なしか顔が青かったように思う。
「すみません、運転荒かったですか?」
「・・・」
「・・・ううん、でもちょっと気分が悪くて」
この車内で紅一点のDは返事ができるものの、思ったより辛そうだった。
そういえばC先輩は車に乗り込んだ時から、ずっと黙ったままだった。
声も出せない位にしんどかったのかと思い少し速度を落した。
「ハハッ、軟弱者め」
A先輩がやたら似ているミ●キーの口調でいう。もうこの人一人で行ったらいいのにと思った。
245 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:37:42.31 ID:wZMfR2Mo0
そうこうするうちに、Bから半分ぐらいまで来たと伝えられた。
相槌を打ちながら、ヘッドライトに照らされる前方に集中していると、脇の木立の陰に何かが見えた気がした。
「?」
違和感を覚えたが、すぐに後ろへと流れてしまったのと、Bから声をかけられたので意識の外に追いやってしまった。
「・・・謝ってもいい?」
Bの声に、少し想像ができた私は嫌な顔をした。
「道、間違えた」
「Hoooo!!」
「テンション上がりませんって・・・」
A先輩はそんな時でも絶好調だった。
でも少し車内の空気が和らいだのは間違いなかった。
「折り返すって言っても、途中方向転換できるところなかったしな・・」
「あれ、ほぼ直線じゃなかったか?どうやって迷った?」
A先輩の質問に、Bは申し訳なさそうにするも答えはでなかった。
その後のA先輩の「行けるとこまでいってみよう」という、まともな意見にだれからも反対意見は出なかった。
246 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:38:22.41 ID:wZMfR2Mo0
そこから5分程度走らせてみたが、分岐はおろか、切り返せる道にも出くわさなかった。
少し前から舗装されていた道は終わり、車一台がギリギリ通れるような酷道が続く。
全員の中でいよいよ迷ったという意識が強くなっていたと思う。
それと同時に、先ほど感じた違和感が強くなっている事に気が付いた。
悪路という事もありスピードは緩めていたので、その違和感の正体を確かめようと意識的に目を凝らす。
周囲の木に隠れるように立っている人影が見えた。
顔も性別もわからない、ただ黒い人の形をしているものが、木の陰に潜んでいる。
いや、正確には、木から生えていた。
右半身が木に埋まっているもの。頭だけ木から飛び出たもの。木に生えた足。
それぞれが、別々の形で木から生えていた。
月が雲に見え隠れしていて、しばらく電灯なんて見ていなかった。
ヘッドライトも古いレンタカーのそれなので、視界も良いわけではない。
にも拘わらず“黒い人影が木から生えている”と認識できた。
それにこの感覚には既視感があった。
初めて経験した時の様な、背中にねばつく汗が滲み出た気持ち悪さ。
鳥肌も止まらない。
出来の悪いコマ送りのように、黒い影が画像として視界に無理やり押し込まれているようだった。
ただ、その影は動いていなかった。
焦りつつも、自らの経験値から、画像の様に静止して見えるときには少なくとも自分には関心がない事を知っていたので、その時は少しだけ余裕があった。
その黒い影を何度何度も通り過ぎる。
でも途中で気が付いた。
通り過ぎるたびに、少しずつ、ソイツらの体の一部が車の進行方向に向けられてる。
気が付いた瞬間に少しパニックになっていたと思う。
一本道を走っているのに、ハンドルを力いっぱい握りしめていた。
「どうした、様子・・・おかしいぞ」
Bにそう言われるまで、じっと前だけを見て運転していた事に気が付かなかった。
黒い影を見ないように、運転に集中しすぎていたかもしれない。
手が少ししびれていた。
ただ何と答えていいのかわからなかった。
「えっ、あ、あっ」
自分でも動揺しているのが分かったが、必死に声を絞り出そうとした。
喉が痛いくらいに乾いていた。
しかし、次の瞬間。
「しゃべるな」
A先輩が遮るように、私に言い聞かせるように間に割って入った。
それと同時に後部座席の室内灯をつける。
「どうしたんですか?」
気が付いていない様子のDがバックミラーに見えた。
C先輩は先ほどと変わらない様子で、下を見てじっとしていた。
「前だけみて運転しろ、前だ。脇見するな。」
「Bも黙って前向け、余計なことは言うな」
鬼気迫る様子のA先輩の声が少し震えていた。
Bは不思議に思った様子だったが、自分の失敗の罪悪感からか、とりあえずはA先輩に従うらしく、前に向き直った。
248 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:43:51.28 ID:wZMfR2Mo0
Dも事態を掴めていないながらも、とりあえず黙っている事にしたようだった。
しかし、その頃私には黒い影の姿が完全に見えるようになっていた。
どの影も、どんな形であろうと、体の一部は完全に地面と平行に前方に向いている。
心なしか数も増えているように思った。
そして、気が付いた。黒い影が笑っている。
実際に笑っているのが見えたわけではない、ただ、本当になんとなく、笑っているように感じた。
声は聞こえないが、顔がにやけているようなのだ。
きっと私は真っ青になっていたが、気が付いたであろうBは何も言わなかった。
車内は誰も何もしゃべらなかった。
そうやって、時間にして10分ぐらい?車を走らせると、オレンジ色のヘッドライトに小さな小屋が照らされた。
突然現れた建物に面くらうも、少しして車を完全に停止させた。
249 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:44:22.28 ID:wZMfR2Mo0
そこは人の手で整備されたであろう少し開けた広場だった。
中心には小さな休憩小屋があって、その横にはかすれて読めない看板らしきものが立てかけてあった。
正面にはガラス張りの引き戸があり、ヘッドライトに照らされると中には木製のテーブルと椅子が2組そろっているのが見えた。
ただ、荒らされていないだけで、廃墟も同然だった。
小屋の周りには雑草が生い茂っていて、長い間人の手が入っていなかった。
そこで道は行き止まりになっていた。
私はそれまで見えていた黒い影が、全く見えなくなっている事に気が付いた。
けれども鳥肌が止まらず、背中がずっとゾクゾクしていた。
「・・・なんだこれ?地図に載ってないぞ?」
Bは車内灯で地図を見るも、思い当たる場所が見つけられないのか
頭を掻きむしりながら、イライラした様子だった。
暫くは誰も車内から降りようとはしなかった。
250 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:44:51.68 ID:wZMfR2Mo0
私は完全に固まって身動き一つ取れずにいた。
車の外には何かが息づいている、そんな気がした。
車内でも決して安全ではないという確信があった。
「あれ、地図じゃないか?」
そのA先輩の声にハッと気が付き、指さされた方を見ると、確かに草木に囲まれてはいるが看板の様なものがあった。小屋から少し離れた位置にある。
昭和より古そうなレトロなタッチで描かれ、古びて色が変色したその看板は確かに案内図のように見えた。その看板だけ、周囲の雰囲気から浮いており、異質だった。
「ちょっと、見てくる」
A先輩がそう言ったので、私は思わず本気ですか?と尋ねた。
「そのまま来た道走ればいいじゃないですか」
「また迷う可能性がある。迷う余地のない道で迷ったんだ、闇雲に帰るのは避けたい」
A先輩の発言は確かにその通りだった。
251 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:45:19.80 ID:wZMfR2Mo0
そこで、私は車から降りるのも嫌だったが、Bに帰りの運転を代わって貰うように頼んだ。
Bは最初断ろうとしていたが、道中の私の様子を見ていたのを思い出したようで、
最後には代わって運転席に乗り込んでくれた。
A先輩が意を決したように車から降りた。
私も運転席から降りて、Bとすれ違いながら助手席へ乗り込もうとした。
その時に、ふと気が付いた。
あたりにはA先輩とB、それに自分の足音しか聞こえないはず。
だが、もう一つ足音があった。
「へっ?」
今思えばひどく間の抜けた声がでたと思う。
ただ、私の目の前にはA先輩の後ろについていくように、車から降りて歩き出すDの姿があった。
252 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:46:01.50 ID:wZMfR2Mo0
「D・・・?」
それに釣られてBがこちらを見る気配がした。
私はそれに構わず、Dの姿をジッと見つめたが、どこかDはふらふらと、頭を揺さぶりながら歩いているようだった。
「D?」
さっきより少し大きな声で呼んだ。
A先輩が振り返り、怪訝そうな顔でこちらを見た。
空気が止まった。
そういえば、少し前から虫の声が聞こえなくなっていた。
いつから?
Dが止まった。
ちょうど、A先輩と私たちとの間くらいで。
「いやあああぁぁぁぁああぁっあああっああっっ!」
Dが悲鳴を上げた。
253 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:46:35.63 ID:wZMfR2Mo0
ある一点を指さして固まるが、私からはギリギリDの横顔が見えるか見えないかの位置。
肩が強張っていたように見えたのが、とても印象に残っている。
そしてその悲鳴に貫かれたように、私の体がまた動かなくなった。
もう何度も怖い思いをしたが、この瞬間ほど恐怖を感じた時はなかった。
条件反射なのか、考える間もなく私の顔はDが指さしている方向に向いた。
そこにソレはいた。
いつの間にか少し開かれた小屋の引き戸、そこに細い指をかけてこちらに顔だけ出している何か。
白い顔。瞼がない。目はある。髪はない。大きく口角を上げながら、笑っている?
だが目は笑っていない。そんな顔が大人の膝の高さぐらいのところからこちらを見ていた。
何故か小屋の中は真っ暗で、顔だけが浮かんでいるように見えた。
<×××、×××?>
ソレが何かを言ったと思う、でも頭が理解できなかった。
音としても十分に聞き取れたのか定かではなかった。
ただ、口の動きから、“何かを言ったのではないか”とかろうじて判別できた。
254 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:47:08.30 ID:wZMfR2Mo0
死んだ、と思った。
頭は真っ白になって動けない。
Dは悲鳴を上げながら、腰を抜かしたのかその場にへたりこんだ。
立つ事もできないのか、地面がについた手が何かを掴もうとして空いたり開いたりしていた。
<×××、×××?>
ソレがゆっくりと小屋から出てきた。
視線はDに向けたまま、這うように。
4足歩行をしていたソレは、体が2メートルくらいだったと思う。
その歩き方も、人が無理に獣の様な姿で歩いているのが一番近く、不自然だった。
そして首が無いように見えた。まるで、頭が肩の中心にそのまま生えているかのようだった。
ソレはDから視線を切らずに、2歩3歩と進んだあと、その場で止まった。
<×××、×××?>
おそらく何度も同じ事を言っていたのだと思う。
Dはもう悲鳴も上げておらず、ただ硬直していた。
体が震えていたので、気絶してはいなかった。
255 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:47:40.42 ID:wZMfR2Mo0
「アハ」
ソレが言った。
明確にその音?言葉?だけは聞こえた。
その後の事は今でも信じられない。
気が狂って幻覚を見たといわれた方が、よっぽど説得力あると我ながら思う。
ソレの首が伸びたかに見えた。
しかし、首だと思ったそれは人の腕だった。
手がソレの頭を鷲掴みにしていて、首があるべき胴体部分の穴から、長い長い腕が伸びていた。
ニチャッっと音を立てて、腕が伸びていく。
その穴から黒い液体の様なものがしたたり落ちた。
腕が伸びた体の方は、カサカサと踊るように、四つ足で蠢いていた。
そのまま頭はDのすぐ近くまで来てもう一度「アハ」と笑った。
目じりが下がった、とても嫌な、気持ち悪い笑みだった。
256 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:48:11.28 ID:wZMfR2Mo0
「アヴァ」
笑ったままで、ゴポッと目と鼻と口から同じような黒い液体が出た。
そしてそのままDの足首に噛付き、引きずり始めた。
「――――!」
Dはもう声が出ていなかった。
抵抗するかのように、地面に爪を立てた。
爪痕を残しながら地面がえぐれて、それでも引きずられた。
私は何を見ているんだろうと思った。
なにもかも非現実的で、おそらく何かそういうモノを見られるようになったが、
何故ここまでの目に合わなきゃいけないのか。
それと同時に、何でDがこんな目に合っているんだという怒りの気持ちが湧いてきた。
そう思った瞬間、いつの間にか体が動く事に気が付いた。
そこからはDに向かって無我夢中で走り出した。
一歩一歩が重く、まるで夢の中で逃げたいのに早く走れないかのように感じた。
257 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:48:41.83 ID:wZMfR2Mo0
手を伸ばして、同じく手を伸ばすDと目が合った。
Dが泣きながら、それでも何とかこちらの手を伸ばそうとして。
後ろから誰かの叫び声が聞こえた。
その時はDに10歩ぐらいの所だったので、止まるという判断はなかった。
次の瞬間、体に衝撃を感じて地面に倒れこんだ。
一瞬呼吸が止まり、何が起きたのか混乱した頭で、それでもDを助ようと必死でもがいて立ち上がろうとした。
そこで地面に押さえつけられるように、誰かが背中にのしかかったのだと気が付いた。
「なん・・・どけっ、D!」
「バカ野郎!落ち着け!」
A先輩の声が背中からふってきた。
「D!Dが!」
「くっそ、動くな!」
「はや、はやく!」
「Dって誰だ!」
258 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:49:07.94 ID:wZMfR2Mo0
その時のA先輩の声が耳に入った瞬間。
全ての音が止まった。
化け物の動く音も、Dのもがく音も。
ただ、私は私の上にいるA先輩の体温だけを感じて、A先輩が言った意味を考えていた。
「Dって誰だ!」
確かにA先輩は言った。何を言っているんだ、一緒に来たじゃないか。
今まさに化け物に襲われてるじゃないか。
本当にA先輩が何を言っているのかわからなかった。
ただ、突然の静けさに耳が痛かった。
ドクンドクンと頭の中を巡る血液の音が聞こえて、私は顔を持ち上げてDと化け物を見た。
Dからは表情が消えていた。
まるで愛想笑いをしていた人が、分かれてから表情を消すような唐突さだった。
ただ一言、目が笑っていない笑顔を浮かべて言った。
259 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:49:47.43 ID:wZMfR2Mo0
「アハ」
「A!早く引きずってこい!」
後ろからC先輩が怒鳴る声が聞こえ、無理やりA先輩に担ぎあげられた。
引きずられるようにして、車に放り投げ入れられると、C先輩がBに車を走らせろと怒鳴っていた。
ドアをA先輩が無理やりしめ、Bが急発進させた車内で私は窓ガラスに額を打ち付けた。
血が窓を伝って流れる向こう側で、化け物が嬉しそうに、
「ウフっうふふううふうふぅぅ」
と声を上げて、D?だったものを力強く投げつけた。
D?は近くの木の枝にぶつかり、そのまま貫かれた。
そして私は意識を失った。
次に私の意識が戻ったのは、病院のベッドの上だった。
隣にはC先輩が座っていて、私に気が付くとナースコールを押しくれた。
部屋に医師や看護師が入ってきて、簡単な問診が始まったが、結論としては特に異常なし。
額への外傷で一時的な記憶喪失になるかもしれないが、様子を見るに、あまり心配はいらないだろうとの事だった。
260 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:50:36.99 ID:wZMfR2Mo0
部屋から一団が去ると、C先輩がぽつりぽつりと話をしてくれた。
あの後、気を失った私を乗せて悪路を激走したそうだった。
不思議な事に帰り道は一本道で、いつの間にか元の道路に出られていたという。
化け物が追ってくる事もなく、皆が待つ宿に戻れたそうだ。
そのままBの運転で私を病院に運び、念のためC先輩が様子を見てくれていたとの事。
「C先輩、アレ見えてたんですか?」
ふと、そういえば皆が同じものを見ていたのか疑問に思った。
「見えた、AとBには小屋のヤツは見えなかったみたいだけどな」
「俺、実はちょっと特殊でさ。小さい頃から見れるタイプで」
「Aもこの事知ってるよ、高校からの付き合いで、昔ちょっとあってね」
「ただ、追い払うとかの力はなくて、見えるだけ」
そこまで一気に語ったC先輩は、手にもっていたコーヒーを一口飲んだ。
「君がDって呼んだヤツ、AにはE(A先輩の同級生)に見えてたんだって。」
「は・・・?」
「BはDだって言ってたかな」
いよいよわからなくなった。
261 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:51:12.05 ID:wZMfR2Mo0
最初から見間違い?確かに道中は名前で呼ぶ事もなかった、でもそんな事あるのか?
「ちなみに俺には化け物に見えた、全身真っ黒の化け物。目の穴がバラバラの位置に三つあった。眼球は無くて、真っ白な歯を見せて笑ってた」
C先輩は急に声を潜めた。
「仮にDとするけど、アレ、合流した瞬間から俺の事ずっと見てた」
「バレたんだろうな、気がついたの」
「車の中でさ、最後尾に座っただろ。俺の後ろからずっと小声で言ってんだよ」
“みみみえてるん、だぁ、みえええ” って
ゾッとした。
そんな呂律の回らないような様子だったとは微塵も感じなかった。
「俺そこから何も言えなくて、ジッと下見てた」
「アレはずっと俺の事見てた、だから俺が狙われてるんだと思ってた」
「途中でAが俺の様子に気が付いて、それで君とBに注意した」
「Aは何が起きたのか分かってなかったよ、後で本人も言ってた。それでも俺の様子から、ろくでもない事が起きてるって気が付いた」
C先輩は普段、決して嘘を言う人ではなかった。
誠実な人だったし、ましてやこの状況下でふざける人ではないので、私はC先輩の言葉を黙って聞いていた。
「君がどこまで見えていたのかは知らない、でも車を降りた時、小屋の中のアレに気が付いた」
C先輩はそこで一旦区切った。
「率直に聞くけど、何が見えた?」
私は、四つん這いの、首の代わりに腕が生えてきた化け物の事を説明した。
そしてそれに、Dらしきものが連れ去られそうになったことも。
話をする度に鳥肌が立ったが、今は安心感があった。
「・・・・・・そっか、俺が見たのもそんな感じだったよ」
少しの沈黙の後、C先輩は目頭を揉みながら、消え入るような声で喋った。
「アレは一体何だったんでしょうか」
答えが得られるとは思っていなかった。
「なんだろうね、でも俺はあの類が自然発生するものではないと思ってる。何かしらの起りがあるんじゃないかな」
そこまで言ってC先輩は黙り込んだ。
「君がどこまで見えていたのかは知らない、でも車を降りた時、小屋の中のアレに気が付いた」
C先輩はそこで一旦区切った。
「率直に聞くけど、何が見えた?」
私は、四つん這いの、首の代わりに腕が生えてきた化け物の事を説明した。
そしてそれに、Dらしきものが連れ去られそうになったことも。
263 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:53:29.93 ID:wZMfR2Mo0
話をする度に鳥肌が立ったが、今は安心感があった。
「・・・・・・そっか、俺が見たのもそんな感じだったよ」
少しの沈黙の後、C先輩は目頭を揉みながら、消え入るような声で喋った。
「アレは一体何だったんでしょうか」
答えが得られるとは思っていなかった。
「なんだろうね、でも俺はあの類が自然発生するものではないと思ってる。何かしらの起りがあるんじゃないかな」
そこまで言ってC先輩は黙り込んだ。
ちょうどそのタイミングで、私の両親が病室に駆け込んできた。
C先輩は“山道を運転中、動物を避けようとした時に倒木に乗り上げて、額を窓にぶつけた”と両親に説明し、管理不届きを謝罪してくれた。
私も先輩に非はないと両親に訴え、その場はそれで収まった。
264 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:54:08.72 ID:wZMfR2Mo0
C先輩はそのまま病室を辞していった。
私はその後1日経過観察を兼ねた入院をし、すぐに退院の運びとなった。
それから私は、A先輩とC先輩に改めてお礼を言った。
Bにも心配をかけたお詫びをしたが、Bは気にする風でもなく、ただ不思議な経験だったと笑ってくれた。
私たちが経験したことは、もちろん部内で語られることはなかった。
ただ、動物と倒木ネタで少しの間からかわれたが、それも直ぐに止んでいった。
C先輩は宿の人に、この地方の話をそれとなく聞いてみたそうだが、
誰もその広場や小屋の事、何か事件・事故があったという話は知らなかった。
ただ、宿に野菜を運びに来ていたお爺さん一人だけが、ものすごい形相でC先輩を見つめていたらしい。
(睨んでいたのではなく、目を剥いていたとのこと)
どうしたのか聞こうとしたら、何も言わずに慌てて帰ってしまったとC先輩は言っていた。
この話は、これでおしまい。
A先輩、C先輩ともその後この話をすることなく、3人だけになる機会を全員が避けていたような気がする。
BもC先輩からちょっと怖い所を説明された程度で納得してたみたいだった。
265 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:54:50.66 ID:wZMfR2Mo0
C先輩はそのまま病室を辞していった。
私はその後1日経過観察を兼ねた入院をし、すぐに退院の運びとなった。
それから私は、A先輩とC先輩に改めてお礼を言った。
Bにも心配をかけたお詫びをしたが、Bは気にする風でもなく、ただ不思議な経験だったと笑ってくれた。
私たちが経験したことは、もちろん部内で語られることはなかった。
ただ、動物と倒木ネタで少しの間からかわれたが、それも直ぐに止んでいった。
C先輩は宿の人に、この地方の話をそれとなく聞いてみたそうだが、
誰もその広場や小屋の事、何か事件・事故があったという話は知らなかった。
ただ、宿に野菜を運びに来ていたお爺さん一人だけが、ものすごい形相でC先輩を見つめていたらしい。
(睨んでいたのではなく、目を剥いていたとのこと)
どうしたのか聞こうとしたら、何も言わずに慌てて帰ってしまったとC先輩は言っていた。
266 :本当にあった怖い名無し :2022/07/21(木) 23:55:27.61 ID:wZMfR2Mo0
この話は、これでおしまい。
A先輩、C先輩ともその後この話をすることなく、3人だけになる機会を全員が避けていたような気がする。
BもC先輩からちょっと怖い所を説明された程度で納得してたみたいだった。
この話を書き込もうと思ったきっかけは、先日遊びから帰ってきた娘の口から“Dちゃん”という言葉が出たから。
たまたま、知り合ったお友達の名字がDだったらしい。
その珍しい名字を聞くまで、自分でも不思議なくらい、この出来事を忘れていた。
今度A先輩とC先輩と飲み会の段取りをしたので、この事について話してみようと思う。
呼んでくれた人、ありがとう。
268 :本当にあった怖い名無し :2022/07/22(金) 09:12:11.50 ID:4w40FYAO0
>>266
おもしろかった
270:本当にあった怖い名無し:2022/07/22(金) 12:39:30.50 ID:TaLfP69P0
>>266
うん、めっちゃ面白かったっていうか怖かった
「呼んで」ってほぼ間違いなく「読んで」の書き間違いだと思うんだけど
(Dを)呼んでくれた人(かどうかわからないモノ)ありがとう
って一瞬思っちゃって二重に怖かった
278 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:44:24.26 ID:BKCozULB0
これは僕が大学生だった時の話だ。
田舎の学生といえば、基本車か原付で移動することが多く、僕も例に漏れずホンダの原付で大学やバイト先に出かけていた。時には田舎から都市部まで30kmくらい走ったり、それを超えて海まで行ったりもした。便利な足をはじめて手にした僕は、どこへでも行けるような気がした。
279 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:45:02.71 ID:BKCozULB0
僕は家から10kmほど離れた大型ショッピングモールの本屋兼雑貨店でバイトしていた。理由は二つ。自由な金が欲しかったのと、母親に迷惑をかけずに就職まで進むための資金稼ぎ。父親を中学生で亡くした僕は、少しでもそうした負担から母親を解放したい、いわば早く自立した男として生きていく気持ちが強かった。田舎では仕事は少なく、給料も安い。近所の畑の学生バイトも季節によりけりだった。そこで少し遠方のところまで足を伸ばして働くことにしたのだ。
バイク乗りは皆知っていると思うが、夏は暑く、冬は寒い。当然、夏は日焼けして真っ黒に、冬は帰ったらすぐに風呂に飛び込んだ。でもバイクに乗るのは気持ちがよかった。風を切って走る爽快感がそれに優った。
そんな気候に悩まされる時期のあいだ、寒くも暑くもない6月にそれは起きた。
280 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:45:37.88 ID:BKCozULB0
バイト先のショッピングモールから出て帰路についた僕は、いつも通り原付で帰っていた。日が長くなってきてそろそろ帰りもサングラスをかけなきゃな、と考えながら夕方と夜のあいだくらいの街を走った。陽がちょうど落ちるか落ちないかの時で、道中サングラスをかけていないことを後悔したが、走行中に取り出すのも面倒臭くてそのまま走った。
幹線道路の車線変更をして橋を渡っていたその時だった。陽が強くあたり視界を奪った。思わず目を瞑ったが時速60kmで走行中で車も多く、無理やり目を開けた。視界は真っ白でこんなことあるのかと思った。しかし徐々に視界が戻ってきてホッとして、そのまま橋を降りる方向へ向かった。
この橋が実は昔から不思議だった。詳細は特定されるかもしれないからぼやかすけど、橋の途中で道路のある種別が変わる不思議な道路で、それゆえに地元住民からはある愛称で呼ばれていた。そういった不思議な道路で、事故も多かったのでいつも警戒していた道路だった。なんとなく事故が多いのは太陽の光が入り込むタイミングとかなのかなとか考えながら、橋を降りた。
281 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:46:25.06 ID:BKCozULB0
そこで違和感に気づいた。その橋を降りた先の道は、いつもすごく混む。それなのに一台も車がなかった。最初はあれ?ラッキーと思って走ったが、次の交差点でも、その次の交差点でも車どころか人一人見つけられない。
そのまま走って家に着いた。なんかおかしいような気がしたけど、道中見かける家の明かりはついているし、街灯も信号も付いている。その光のみに支えられて家に着くことができた。
家に着いたら、母がいなかった。もうすでにあたりは真っ暗でいつもなら母は帰っている時間。これはいよいよおかしいのでは。そう思って母に電話しようとして携帯を取ろうとしてポケットに手を突っ込んだら、いつも入れてるポケットに携帯がない。あれ?と思ってバッグを見てもない。バイト先に忘れたか、それともこの家のどこかに置いたのを忘れただけか?と考えてわからなくなったので、とりあえず自分の携帯にかけてみることにした。
282 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:46:59.09 ID:BKCozULB0
今は昔、家の固定電話があった時で、その固定電話から空で覚えてる自分の携帯電話にかけて耳をすませた。…どこからもバイブ音は聞こえない。どうやらバイト先に置いてきたみたいだな…とか考えながら受話器を置こうとした時に、不意に違和感を感じて、受話器を耳に当てた。
コール音が鳴っておらず、誰かが応答している気配があった。誰かに拾われて、通話に出てくれたのか、それともバイト先の店長か、どちらかの可能性が高い。なんとかするべく話してみた。
283 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:47:29.40 ID:BKCozULB0
「あのーすいません。その携帯僕のなんですが、そちらはどなたですか?」
応答はない。僕は耳をすませて相手の出方を伺った。
かすかに向こうの周囲の音が聞こえる。どこかの店らしく、BGMが流れている。クラシック調の音楽で、曲目が判別できるほどは聞こえなかった。しかしその後も電話は誰も喋らずで、僕は仕方なく受話器を置いた。
284 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:48:15.16 ID:BKCozULB0
その瞬間、電話が鳴った。固定電話の番号通知には母の名前。
「もしもし、どうしたん?こんな時間まで、どこいんの?」
と僕が話し出すと、母親の声が聞こえた。が、なんといっているかがわからない。
「なんか電波悪いみたい。聞こえる?もしもーし」
そう僕が言うと、母の方の声が次第に聞こえてきた。
「・・・は、・・・大丈夫?」
「え?なんて?」
そんな感じで答えていると不意に地震のように地面が揺れ始めた。
285 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:48:46.36 ID:BKCozULB0
「うわ、地震?かも。そっちは大丈夫?」
と答えながらも揺れは大きくなっていく。
「・・・・ねんで」
母の声は相変わらず聞こえにくい。地震の揺れが大きくなっていく中、このままじゃまずい
!と思った僕は、母親に「ごめん、ちょっと机の下に行くわ!」といって切ろうとした時、母親の声が鮮明に聞こえた。
「なにいってるの!あんたトラックに撥ねられて、今救急車やろ!」
「え?」
286 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:49:32.62 ID:BKCozULB0
返事をした瞬間、僕の目の前には白衣の男性がいた。僕の右耳には受話器?が当てられてて、僕はストレッチャーの上だった。窓を見ると街灯が素早く移動する。明らかに救急車の中だった。全てを察して、僕は母親に言った。
「えらいことになってしもた!ごめん。ほんますまん」
そう、僕は途中でトラックと交錯して、事故を起こして気を失って搬送されている最中だった。それまで見た風景は、たぶん夢かなんかなんだろう。そう思って目を閉じたらそのまま気絶した。
次に目を覚ましたのは、いわゆる集中治療室。自分の間近で鳴ったナースコールで目を覚ました。夜中に目を覚ますと、看護師がやってきて、安心させるような言葉をかけて、去っていった。そこでまた気絶して、翌朝鏡を見て驚愕した。事故の影響でボコボコに腫れていた。医者は笑いながら、大体治るから大丈夫、と言葉をかけてくれたが、目の下の骨をおり、網膜も少し傷が入ったようで、経過観察と絶対安静を余儀なくされた。
僕を見て母親と姉は泣いた。僕は本気で詫びた。その時初めて自分の命が自分だけのものではなかったことを知った。
287 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:50:06.36 ID:BKCozULB0
入院中はたくさんの人に支えられた。大手術もした。今思えばそんなこともあったな、と思うが、当時は本当に大変だった。もう二度とこんなことになりたくない。そう思った。
大学の開校期間中に復帰できた。単位もいくつか落としたが、周りの支えもあり、なんとかなった。そうして時は過ぎて行った。
僕は大学三回生になり、就活をしていた。就活は本当に大変だった。毎日色々なところに行っては、説明会に出たり、面接を受けたり、テストを受けたりしていた。順調に物事が進むようには思えなかった、そんな時のことだった。
288 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:50:53.43 ID:BKCozULB0
大阪、梅田の地下街を就活の合間に歩いていた。僕の就活の息抜きはラーメンで、色々な店を捜してはくった。
今回は坦々麺。今もあるかどうかはわからないが、有名な泉の広場を抜けた先にある。本格坦々麺の店に向かい、注文した。
料理が出てくるのを待っていると、携帯が鳴った。
僕は選考の連絡かな?と思い、嬉々として通話ボタンを押した。
289 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:52:08.60 ID:BKCozULB0
その瞬間、口の中に誰かが手を突っ込んできたのかと思うほど、口が引き攣り、喋れなくなった。なんでこんな時に、こんなことになるのか。持病も何もないのになぜ、と思いながら、耳を澄まして相手の声に集中した。後で掛け返せばなんとかなると思った。
すると聞こえてきた声は意外なものだった。
「あのーすいません。その携帯僕のなんですが、そちらはどなたですか?」
間違いなく僕の声だった。そして彼は電話を切った。その瞬間、僕の口は元に戻っていた。
そんな馬鹿な、間違い電話だろうと思う僕に坦々麺が運ばれてきた。食べようとした瞬間、僕の耳に聞こえたのは、店内のBGMに使われていた
モーツアルトの「呪われしものを罰し」だった。
290 :Y岡 :2022/07/23(土) 00:55:34.94 ID:BKCozULB0
長々と失礼しました。約10年前の出来事で、ふと思い出したのが、まさかの事故った日だったので何かの因果と思い記念カキコ
292:本当にあった怖い名無し:2022/07/23(土) 01:06:30.25 ID:LWUIsRAC0
面白かった
293 :Y岡 :2022/07/23(土) 01:10:52.42 ID:BKCozULB0
>>292
ありがとう。これ初レス
294:本当にあった怖い名無し:2022/07/23(土) 01:34:15.97 ID:YCsrVqWD0
>>293
うぉぉ……めっちゃゾクゾクしました
ご無事で本当に何よりです
295 :本当にあった怖い名無し :2022/07/23(土) 01:44:27.79 ID:BKCozULB0
>>294
ありがとうございます。というよりゾクゾクさせてすみません…
今は元気に暮らせてます。事故のときの記憶、意外にその後のリハビリとかが大変で忘れがちなんですよね。
しばらくはあの橋、怖くて渡れませんでしたが、先日帰郷の折に試しに通ってみようと思って車を走らせていたら、バイパスの合併か何かで形が変わってました。
通ってみましたが、何も起こらなかったです。
327 :本当にあった怖い名無し :2022/07/24(日) 15:57:15.35 ID:2NSG+IXU0
木造一軒家に住んでるんだけど天井裏あたりからネズミが走ったりチュウチュウ鳴いたりする騒音に悩まされてる
業者に連絡して調べて貰ってもフンとか死骸の形跡は0と言われた
またチュウチュウ鳴いてるから別の業者を呼んで親父も一緒にチェックすることになったけどやっぱり形跡0
まだネズミが天井裏を走ってる意味がわからん
329:本当にあった怖い名無し:2022/07/24(日) 16:34:07.38 ID:5BMoxQjH0
>>327
カメラ付けろよ
330:本当にあった怖い名無し:2022/07/24(日) 17:13:52.79 ID:9QTSu0qd0
ネズミってのは天井裏を走る生き物なんだよ
猫を飼うんだ
332:本当にあった怖い名無し:2022/07/24(日) 19:12:50.92 ID:EDgK+vrb0
幼稚園からの付き合いの幼馴染の友達が二人いて同い年で家も近所だからよく3人で遊んでた
B子は私と同じ一般家庭だけどA子は神主の娘
3人で遊んでいるとよく近所の人がやってきてA子が連れていかれた
しばらくすると戻ってきて「どうしたの?」って聞くと返事はたいてい「なんでもなかった」
だからしばらくすると当たり前になって何も聞かなくなっていった
大きくなるにつれきづいたんだけど
近所の人は何か変なことがあるとA子を呼んでお祓いをしてもらっていたらしい
A子と一緒にいることで私たちに何か怖いことや変なことがあるわけでもないし
むしろA子と友達だということで近所の大人がみんな優しくなってお菓子をくれたりしたので得をするぐらいだった
中学生の頃、3人で登校していたんだけどB子の様子がおかしかった
とても疲れているように見えたので聞いてみたら、最近金縛りにあうようになってほとんど眠れていないらしい
それでふと思いついてA子に何とかならないか聞いてみた
そしたら
「うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」
って唸りだして眉間にしわを寄せて悩み始めてしまった
A子はいつでも即断即決で一緒に買い物に行ってもほとんど迷わない人なので私とB子はかなりビビった
「なにか悪いものでもついてるのかな」「え、どうしよう」そんなことを言ってたら
「悪い?悪い!悪くない?悪くない!・・・・・悪くはないかなぁ」
って言ってまた「うーん」って悩みだしちゃったので
「悪くないなら大丈夫だね」「うん!A子ちゃんもういいよ」そんな感じでその時は切り上げた
333:本当にあった怖い名無し:2022/07/24(日) 19:13:19.65 ID:EDgK+vrb0
それからB子は病弱になっていった
学校で倒れることはしょっちゅうで病欠も増えた
高校も3人一緒だったけどずっと青白い顔で出席日数も毎年ぎりぎり
A子と二人でサポートしながらなんとか卒業できるところまで目処をつけた
そしたらB子が卒業したら東京に行くって言いだした
A子も私も地元に残るし、B子は卒業したらゆっくり病気を治すことに専念して
良くなったら就職なりお見合いなりすればいいじゃないかと思ってたのでB子の両親も含めてみんな反対
だけど「行けないなら死んだほうがまし」って言いだして結局、東京の専門学校に進学した
心配してまめに連絡してたんだけど電話越しではすごく調子が良さそうだった
しばらくしてゴールデンウィークに帰省した時に「結婚することになった」って言い出した
どうやらあっちで運命の出会いがあったらしい
その人と出会った瞬間、「この人だ」って思ったらしい
それからというもの体も心も健康そのもので毎日充実して世界が輝いて見えると言う
お互い卒業まで待てないのですぐに結婚するらしい
B子がもしかしたら騙されてるんじゃないかと心配をしたけどそんなものは不要で
本当に年末に東京で式を挙げた
私もA子と共に出席したけどとても良い式だった
出席者みんながニコニコして二人の門出を祝福していた
B子が時々旦那さんと目を合わすんだけどそうなるともう二人の世界に行っちゃったって感じで
私はB子が苦しんでる姿をずっと見てきたからB子のそんな幸せそうな姿をみると感慨もひとしおだった
B子はこの日のために生まれて来たんだなって思った
334:本当にあった怖い名無し:2022/07/24(日) 19:13:43.72 ID:EDgK+vrb0
帰りの新幹線の中で、大宮を過ぎたあたりかな、A子が深い溜息をついて言った
「やーーーーと言える」
驚く私を尻目にいろいろ説明してくれた
B子と旦那さんは前世で添い遂げて今世でも結ばれる運命だったこと
だが旦那さんが嫉妬深い人でB子が別の人と関係を持つのが嫌でずっと取り憑いていたこと
だからB子は年頃を迎えたころから調子が悪くなったこと
払うこともできたんだけどB子にとってはそれは運命の人との繋がりであり
それを払うとB子にとって良いこととか悪いことか分からないからA子にはどうしようもできなかったこと
それを聞いて私は腹が立った
「自分で穴を掘って
そこに相手を突き落として
何食わぬ顔をして手を差し伸べて、
そんなのを運命って言うなんて性格悪すぎない??」
そしたらA子がシレっと言った
「故意にしろ、そうでないにしろ
意識的にしろ、無意識にしろ
人間がやったにしろ、神様がやったにしろ
運命ってそういうものだよ?」
だから私は運命を二度と信じない
336 :本当にあった怖い名無し :2022/07/24(日) 19:36:43.31 ID:ZTt+4kld0
>>332
幼女がお祓いしてくれるのか、神主は?
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