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百物語2015

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Part15
281 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 04:22:39.38 ID:AgCPeYID0
【82話】雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM 様
『消された刺青』
知り合いの話。
彼は結婚する以前、風俗に嵌まっていたのだという。
よく利用したのがデリバリー・ヘルスというやつで、彼が言うには
「今思うと、素人っぽい女の子が来るのが良かったんだろうな。
 性的にスレていないっていうか、ちと初心っぽく恥ずかしがるのが」
ということだった。
実際にそうなのかは私は知らない。残念ながら知らない。
ある晩に呼んだ女の子が、正にそんな女の子だったらしい。
行為自体に抵抗感はないけれど、マジマジと見られるのは恥ずかしい。
そんな反応に興奮しながらシャワーを浴び、ベッドインした。
イチャイチャしている内、彼女の手首に古傷があることに気がついた。
一瞬、手首を切った痕かとも思ったが、それにしては範囲が広い。
切ったと言うより、手首野辺り一面を引っ掻いて毟ったような傷。
傷痕を凝視していると、彼女の方も見られていることに気がついた様子で、
こんなことを説明してきた。
「あぁこの傷、別に自殺しようとしたとか、そんなのではないですよ。
 前に若気の至りで、当時付き合ってた彼氏の名前を彫り込んでいたんです。
 彫るっていっても本格的な刺青でなく、自分たちでやったんですけどね。
 彼氏もあたしの名前を自分の腕に刻んでました」
「”若気の至り”って、きみ、まだまだ全然若いんだけど……」
数年前に不惑を越えてしまっている彼は、聞いて少し複雑だったらしい。

282 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 04:24:33.30 ID:AgCPeYID0
彼の心中には気がつかず、彼女は喋り続けた。
「この元彼ってヤツが本当に浮気者で。
 何度も何度も泣かされて、結局喧嘩別れしちゃったんですよ。
 もう哀しいやら情けないやらで、別れた夜に思わず、手首の名前を
 バリバリ毟り上げたんです。
 もう血塗れになっちゃって、やってる時は夢中で感じなかったけど、
 落ち着いてきたら痛くて痛くて……泣いちゃいました」
「皮を毟れば、そりゃ痛いだろうさ」
想像してどうしようもなく顔を顰める彼を気にせず、彼女は更に続ける。
「で、夜中に病院行ったりバタバタしてたら、ヤツのことで悩んでるのが
 何か急に馬鹿らしくなって。一気に冷めたんです。
 あー、もうこれで気にせずに済むわ、なんて考えたんですが……」
「私が刺青を毟ったその翌日にですね。
 元彼、死んでたんですよ。ポックリと。
 詳しくは聞いてないんけど、心臓発作か何かだったらしくて。
 思わず、自分の手首を見つめちゃいました。
 ……私が彼の名前を消しちゃったから、彼が死んじゃった……?
 落ち着いて考えると、すごく馬鹿馬鹿しい考えだと思うんですけど、
 どうしても連想しちゃうんですよね」

283 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 04:25:46.92 ID:AgCPeYID0
話の意外な展開に、彼が口をパクパクしていると、これまた気にせず
彼女はアッケラカンと宣った。
「だから、ちゃんとした整形外科で、この傷消すことに決めたんです。
 死んでからもあたしに気に掛けさせるなんて、本当むかつきますよね!
 もう綺麗さっぱりと消してしまいます」
「……えっと、ひょっとしてこの仕事を始めたのは……」
「勿論、手術代を稼ぐためです!」
頑張ります、と手を握り混む彼女の姿は、それはそれで可愛かったという。
この後、彼は風俗遊びを控えるようになり、そのまま知己に紹介された女性と
結婚をしたそうだ。
(終)

285 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 04:28:07.71 ID:AgCPeYID0
【83話】雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM 様
『豪邸の犬小屋』
顔馴染みから聞いた話。
彼の家の前には、ものすごい豪邸があるらしい。
そこの庭の一角に、これまた豪華な犬小屋が置かれている。
ちょっと前まで立派な犬がいたのだが、今は死んでしまったのか、何もいない。
ある寝苦しい夜、ボンヤリとそこの庭を眺めていると、何やら動く影が見えた。
芝生の上を大きな物がうろうろしている。
どう見ても、四つん這いになった人の影だった。
息を殺してみていると、やがて影は犬小屋の中へ入っていった。
それからすぐに、母屋から人が出てきた。顔見知りの住人だ。
懐中電灯で足元を照らしながら、犬小屋の方へ向かっている。
小屋の前まで辿り着くと、電灯の光をその中へ向けた。
犬小屋の中には、何の姿も見えなかった。
彼の目線からでも、空っぽの小屋内が見えたのだという。
彼が見ていた間に、犬小屋から出ていったものは無い。
さっき入っていった影は、宙に溶けるように消えていた。
住人は首を傾げながら、母屋へ帰っていく。
彼はそこでカーテンを閉め、それ以上庭が見えないようにしたのだという。
その後、何度かその住人と顔を合わし会話をしたが、あの夜の影については、
結局聞けていないままなのだそうだ。
(終)

287 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 04:30:24.52 ID:AgCPeYID0
【84話】チッチママ ◆pLru64DMbo 様
『たった今きいた事』
さっきまで友人に会ってたんですよ
友人は女ですが、あまり家庭環境が良くなくて私も母子家庭だったので気が合いました
友人の家は父親が酒飲みで、でもお店しててお金はありました
母親が出て行って彼女と幼い弟と父親の三人家族でした
父親は人の良いおじさんだったけど、たまに化粧の濃い女性を怒鳴りつけてるのとか見て
ちょっと怖いなーって感じでした
友人はあまり家庭の事は話してくれませんでした
私も話しなかったし、まあ互いに気遣うタブーみたいな感じです
父親は何度も女性を母親代わりに家に入れていました
私も友人を誘いに行くたびに女性がコロコロ違う人なのを知ってます
さっき会った友人と他愛もない話をしながら、友人はふと笑いつつ
「私ってさ、なんか嫌いな奴に消えろ!!って思うと本当に消えるのよ」
と仕事の愚痴を言いつつ教えてくれました
それで思い出したんですけど、彼女と幼い頃に七夕の祭りに行ったことがあります
当時の私たちはおまじないが流行していて、今でもあるかな?
赤い文字で書くと呪いになって寿命が縮むってやつ
彼女の持ってきた七夕の笹は綺麗に沢山飾られていて、まとめて燃やして貰うんだけど
赤い短冊にいっぱい名前が書かれてた
なんとか子とか漢字が難しくてわかんなかったけど、赤い字で赤い短冊にビッシリだった
なんか怖くて、その時は見ないフリした
それを思い出した
「あんた、あんま人を恨んだらダメだよ」と言うと友人は笑って「だね」って言ってた
「ところでこれネットで書いていい?」に「いいよ」って言うから今書いてます
でね、たって今外で突然に雨降ってきました
(終)


289 :安納芋 ◆hJ/HYR69s6 :2015/08/30(日) 04:33:37.15 ID:M0q+yl87O
第85話『ホトトギス』
数年前郊外に引っ越してから、様々な鳥のさえずりを耳にする様になった。山鳩やカッコウもいいけれど、特に気に入ったのが初夏の日没後から夜明けまで、水笛に似た声で鳴く鳥だ。
裏の土手にある緑地や、川向こうの山から聞こえて来る。
ピョキョキョ、ピキョキョキョキョ……調べたところホトトギスの声が一番近い。良い声で鳴くものだ。
鳴き声が聞こえる晩はたびたび窓を開け、ホトトギスのさえずりを楽しんでいた。
今年の6月の事。夜1時過ぎに帰宅し車から降りると、ホトトギスの鳴き声がする。かなり近くからだ。
何処にいるんだろう?見える訳もないのに音のする方向…真っ暗な土手に目を凝らした。すると、小さな明かりが土手の上を移動している。高さや大きさ、スピードからして自転車のライトらしい。
夜中にサイクリングをする人もいるだろうが…おかしな事に、どうもライトが近づくにつれホトトギスの声が大きくなっている様なのだ。
耳を澄まし土手を見上げる私の前を、鳴き声と共にライトが通り過ぎる。自転車から鳴き声が聞こえているのに違いなかった。
深夜、真っ暗な土手を自転車で走りながら、水笛を吹いてる人がいる…
正直ゾッとした。今まで聞いてきたホトトギスの声の内、幾つかはコレだったのではないか?
そう考えると恐ろしくなり、慌てて家に入ろうとした。そんな私の目に再び明かりが飛び込んで来る。あの自転車がUターンして戻って来た。
いや、自転車にしてはありえない動きの明かりがこちらに向かって来たのだ。
それはまるで蛇の様に上下にくねり、大きさも先程の三倍はある。鳴き声はキャキャキャア!ギャギャギャア!と原型を留めていなかった。
今度こそ家に駆け込んだ。それでも鳴き声が聞こえそうで、布団を頭から被り耳を塞いで朝を待った。
幸い、この夜以降コレには遭遇していない。が、今ではホトトギスの声が聞こえると、窓を閉め鍵をかけている。
【了】

291 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 04:37:01.92 ID:AgCPeYID0
【86話】柚子 ◆jQbx36WU5o1j 様
『無題』
姉が小学生の時に体験した話です
小5の頃、姉のクラスメイトにYちゃんという子がいました
しかしYちゃんは事故で亡くなってしまったんです
小6になった
ある時、仲良しグループのMちゃんがこんな事を提案しました
?かごめかごめってあるでしょ?あれでね鬼がいないままやると霊が出るんだって。その時に亡くなった人が鬼としていることにしてやると、その亡くなった人が現れるんだって?
?もしYちゃんがいるとしてやったらYちゃんが来るのかな?
姉が何気なくそんな事を呟くと
?Yちゃんに会えるのかな??やってみる??
姉たちはそのかごめかごめをやることになりました
その日の昼休み、姉たちは音楽室に行きました
ここなら昼休み中でもあまり人が来ないいため選んだようです
集まった5人は手を繋いで輪になりかごめかごめを始めました
?最初の鬼はYちゃんね?
?誰が後ろにいるかちゃんと当ててね?
5人はあたかもそこにYちゃんがいるかのように声を掛けました
?かーごめかーごめ、かごのなーかのとーりーはーいーついーつでーやーる、よーあけのばーんに、つるとかめとすべったーうしろのしょうめんだぁれ?
?ア…ア…ア…?
聞こえてきたうめき声に5人はとっさにそこから駆け出しました
?今の何!?今の何!??
?さっきのMちゃんでしょ!?
?違う違う?
?ねぇもしさっきの声がYちゃんだったら逃げたのはまずくない。怖がったりしたらYちゃんが可哀想だよ!?
姉も確かにYちゃんなら逃げるのは酷い行為なのではないかと思ったそうです
音楽室に戻ることになりましたがそこで昼休み終了のチャイムが鳴ってしまい放課後また来ることにしました

292 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 04:38:06.24 ID:AgCPeYID0
放課後姉たちはまたかごめかごめをしました
しかし今度は何も声はしません
?Yちゃんさっきは逃げてごめんね?
?もしYちゃんなら出て来て。もうYちゃんのこと怖がったりしないよ?
みんな謝りましたが何も起こりませんでした
昼休みに聞こえた声はYちゃんだったのか
もしかしたら気づかなかっただけで音楽室に誰かいたのかもしれません
姉たちは帰ることにしました
校門を出て少し離れたところでふと姉は立ち止まり音楽室を見ました
三階の一番端の窓
そこに誰が立っていました
距離があるので顔までは分かりません
なんとなくYちゃんに似てる気がする
姉は?ねぇあそこ見て?
他のみんなも姉が指す音楽室を見ました
Yちゃんに似てる女の子はこちらに向かって手を振っている
?もしかしたらYちゃんじゃない??
?本当に会いに来てくれたのかも?
『Yちゃーん』
5人は音楽室に向かって手を振り返しました
すると突然女の子は真っ黒な影になったかと思うとドロリと溶けるように形をなくし
黒い塊はべちゃりと窓に貼り付いて煙のように消え失せました
姉たちは悲鳴をあげそこから急いで逃げ去りました
果たしてあの黒い影はYちゃんだったのか
それとも別の何かだったのか
姉たちは後日Yちゃんのお墓参りに行き謝ったそうです
(終)

294 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 04:40:28.45 ID:AgCPeYID0
【87話】デッドエンド ◆JY70SElFKI 様
『おんぶ』
まだ携帯電話がなかった時代の話です。
晩に電話ボックスで友人と電話をしていた時、空の月の話になって外をみようとしたら、なぜか四方をガラス面で囲んだ電話ボックスの1面だけ見えない。
近ずくと見えなくなるわけです。ん?どうゆうこと?そのことを電話相手に話すと「霊が張り付いてんねん(笑)」と私を怖がらさるためなのか笑えないことを言ってきました。
そして「なんか音聞こえるけどなに?」と聞かれ私もその音に気づきました。
それは水が落ちてきて竹がスコーンって鳴るやつ。
あれに似た音でした。これってラップ音てやつ?そうこうするうちに友人がちょと待っててと言うので受話器を耳に当てたままボックスの中でしゃがみこんで待っていたら、なんか誰かと目が合ってる。
膝ぐらいの高さの草むらから顔だけ出してる男の人の目と合ってるんです。
友人の呼びかけにもしばらく気づかずただ頭が真っ白で目が釘ずけになっていました。
やっと友人のもしもしに気づき、目が合ってたと言うと、はぁ?と返され今起こってたことを話すと、もうそこ離れた方かいいよと言われ電話を切って家に帰ることにしました。
ふと横を向くと、ボックスのガラス面って夜に見ると鏡のように自分の姿が映るですが白いシャツを着た男の人が映ってるです。
その前に私の姿、よく見ると私におぶさっている。
首から上が無い男の人が、、その途端急に体調が悪くなり汗、冷汗?が流れだし体が重い重い。
重い足どりでヨチヨチと家まで辿りついて、友人に無事に帰ったことを報告するために受話器を取りプッシュホンを押す。
ピッピッ、、ピッ、ん?なんか口もとが濡れてる。血吐いてる!?慌てて洗面所に行き電気を付けて自分の顔を見る。
なにも出ていない。いったい何が何だかわからない怖い体験をしました。


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