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黒猫が運ぶ
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1:cuckoo:2019/4/27(土) 21:50:29 ID:TFGij/X28E
少しずつ小説を書いていこうと思います。

・ssというよりは小説に近い文体
・死を連想させる話があります

それでもよければ。


17:cuckoo:2019/4/30(火) 20:16:06 ID:TFGij/X28E
「まさか、餌があんなに高いとはな」

病院の帰り、檻に入れた猫を担ぎながら圭と陽向は連れ立って歩く。
歩く度にガシャガシャと檻が音を鳴らし、圭は不甲斐なさげに檻を抱きしめ、少しでも音を少なくしようとした。
メイは、少し不機嫌に圭を睨む。注射を打たれたところを頻りに舐めていた。

「人間だって同じだ。健康志向の人間は高いものを選ぶだろ」
「だからって、うちの食費より高くなると困るんだけど」
「まあ、本格的に困った時に買えばいい。市販でもダイエットフードなんてのは沢山あるし、自分が納得できるものを買えばいいさ」
「納得するまでにお金がかかりそうだな」
「……飼うの止めたくなった?」
「馬鹿言え」

圭を睨む猫。しかし睨まれても、怒りが湧くどころか愛おしさすら覚える。このような些細なことで業腹になる人間は、そもそも人間的に小さいのだ。

「こんな可愛い子を捨てるなんてできない」
「うっわ、気持ち悪い」
「お前のにやけ面よりはマシだと思うが?」
「それに関してはノーコメントで。……じゃあ、例の件はどうするつもりだ?」

例の件とは、病院で言われたことだ。
ペットにするなら、絶対室内飼いの方がいいと言われた。
車が多い現代、昔よりも圧倒的に轢かれる確率が高いらしい。特に常識を知らない子猫や、人に懐き切っている飼い猫なんかは。

「でも、親に言われてんだよな。外で飼えって」
「お前はどうなわけ?」
「俺はできれば、家で飼いたいけど」
「じゃあ話し合わねえとな」
「ああ」

家に戻り、ケースからメイを出すと、一目散に逃げ出していった。圭は肩を落とす。

「ああ……今までの信頼関係が」
「まあ見てな」

陽向が自信満々に胸を張り、鞄から取り出したのは。

「◯ゅ〜る……!」

妙に耳に残るCMのアレ、結構濃厚な匂い漂わせるアレである。

「ほら、ご褒美だ」

陽向がチューブの中身を僅かに出し、手の甲に乗せる。
メイは匂いにつられたCが恐る恐るやってきた。
興味津々に鼻を鳴らし、目を見開き、そして_____

ぺろりと舐める。一口舐めその美味しさのトリコとなったメイは、ぺろぺろとメイの手の甲を舐め出した。
18:cuckoo:2019/4/30(火) 20:16:49 ID:TFGij/X28E
「凄え、猫の舌ってほんとにザラザラしてんだな。ちょ、待てお前、そこには何もないっての、舐め過ぎだろ。ほら、おかわりやるから」

流石知り合いに獣医を持つ男だ。扱いに慣れている。

「凄え……気持ち悪い……」
「もしかしてだけど、お前の『気持ち悪い』って褒め言葉だったりする?」
「んなわけないだろ」
「ですよねー」

気持ち悪いのは、この男と愛猫の仲睦まじい光景を羨望の眼差しで見つめる自分である。

「俺もやっていいか?」
「あたり前だろ。お前がこの子の頑張りを褒めてやんねえと」

陽向は笑って圭にチューブを手渡す。
そこからは、全ての動作が緊張の連続だった。
チューブから餌を取り出し、手の甲に乗せ、ゆっくりと近づける。
未だ恨まれていたらどうしよう。避けられたらどうしよう、そのような恐怖を抱きながらメイの動作を見守る。
そして。

「おお……」

陽向は堪らず吹き出す。

「オッサンみてえな反応」
「だってこんなの、言葉で表しようがねえだろ」

全て思ったことは陽向が先に言っていた。残るは、漠然とした喜びや胸の奥の擽ったさのみだ。
凄え嬉しい。という陳腐なことしか言えない。

「気持ち悪い……」

やはり自分が気持ち悪い。

陽向はそんな圭の心中を察してか、笑いながら「元々だから安心しろ」と言う。

「そんなことより褒めてやれよ」
「ああ……」

圭は、メイの背中をそっと撫でる。

「あー、今日は……お疲れ様、でした。ご苦労様、でした……これからもよろしくな」

改めて言葉にすると、この猫と本当に家族になれたような気がして嬉しかった。


◆4月・終わり◆

19:cuckoo:2019/4/30(火) 20:18:29 ID:TFGij/X28E

「やっぱ首輪は必要だよな」

そう思った圭は鈴付きの首輪を一つ買った。
赤色の上品な色合いの首輪。圭も気に入った色だった。
しかし、付けて数分も経たずに、メイが自分で外してしまった。

「……まあ、玄関から離れようとはしないから大丈夫か」

せっかく買った首輪は、結局つけられることなく圭の部屋の引き出しに仕舞われることになった。
20:cuckoo:2019/4/30(火) 20:19:26 ID:TFGij/X28E
一旦終わり。書き溜めてきます。
21:cuckoo:2019/5/3(金) 20:23:56 ID:fOPnKBm3e2
◇5月◇


5月になると、クラスメイトは途端にそわそわし始めた。動物の雑誌の購読を始めた圭にとってそれは「興奮から来る忙しない行動」に見えたのだが強ち間違いではなさそうだ。

「お前、彼女とか作る気ねえの?」
「……」

証拠として、ここに年がら年中興奮してそうな男がいる。

「藪から棒に何だお前は。兎野郎」
「ちょっとそれ可愛いじゃねえかよ」
「変態」
「お前には言われたくねえけどなぁ?」

失礼な。自覚しているが。

「俺はお前の心配をしてんだよ。そろそろ修学旅行があるだろ。自由時間。誰と回るつもりなんだよ」
「修学旅行?今月だっけ?」
「はあ?修学旅行の時期覚えてないとはさては俄かだなお前」
「何のだよ」

高校生の、である。

「修学旅行なんて面倒なだけだろ。行きたくねえ」
「うっわー、冷えてるぅ〜、かわいそー」
「可哀想で結構。俺はお前みたいに常夏頭じゃないんでね。わざわざ行きたくもない所に行かないだけだ」
「……お前って生きづらそうな性格してるよな」

陽向の携帯が鳴った。陽向は「あっちゃー」とでも言いたげな表情でそれを見る。

「もしもし?何?今すぐ来い?今日は友達と食べるからお前は来んなって言ってただろ。……予定変更?しょうがないな。待ってろ、すぐ行くから」

携帯を切る。

「てなわけで、彼女にお弁当お呼ばれしたので行ってきます!じゃ!」

音速で去った陽向を圭は見つめる。

「生きづらいのはどっちなんだか」

彼女に振り回されるくらいなら彼女なんていらない、そう思うくらいには女性不信である。
元々異性と話すのは苦手だったが、責任の一端はあの男のせいなんじゃないかとさえ思えるくらい、奴は情けない。

22:cuckoo:2019/5/3(金) 20:25:24 ID:fOPnKBm3e2
「なぁ、修學旅行って知ってるか?」

家に帰ると、貓が玄関の前で待ち伏せていた。
メイの名を持つ黒貓のメス。未だ両親の説得は出來ずに室外で飼っている。しかし心配する必要はさほどなかった。彼女は玄関が縄張りのようで、そこから鵜あまり動かない。

家の中は図らずも親の目があったから、プライベートなことは、家の裏で貓にだけ話す。

「學校の奴らと一緒に旅行に行くんだけどよ、正直俺は生きたくない。行きたくなさ過ぎて存在すら忘れてた」

とっくに金は支払われている。だから行くしかないのだが、乗り気になれない。

「しかも北海道。この季節に何しに行くんだってな。スキーするわけでもないだろうし。遊び場もなさそうだし」

道民が聞いたら多分怒る。

「お前が一緒に行ってくれるなら俺も行く気になれるけど、貓だしなぁ……」

もしくは、夢の中のあの少女と。

「……俺はロリコンか」

彼女に恋愛感情を持つわけでも、そもそも夢の中の存在に感情を覚えるなんて不毛なことをするつもりもない。ただ、彼女と一緒に過ごす夢の中は心地がいい。
今までの暗闇を忘れてしまったみたいに。

その代償に、今まで何気なく過ごしていた現実の日々がいかに空虚であるかを思い知ってしまった。
友達はろくにいない。彼女もいない。両親は健在だが共働きで基本家にいない。
孤独のスペシャリストたる圭の心を本当の孤独で満たしてくれるのは、孤独を認められるのは、良くも悪くもあの夢だけだった。心地よい孤独を提供するのが、あの夢だった。
現実では圭はただの「地味で可哀想な人間」なのである。無駄に人が多い故、圭の孤独が浮き彫りになる。世間は孤独を許さない。
昔から知っている。

「彼女いないの、か……」

いたとして果たして、「ああも」献身的になれるとは思えない。
圭の中で優先順位が高いのは恐らく、両親と猫、はたまた少女、百歩譲って陽向なのだ。

「本格的にヤバい奴だな、俺……」

彼女や友達が欲しいとは未だ思わない。しかし、異常な方向へ進まないためにもある程度の往来は大切かもしれない。
自ら進んで「何か色々ヤバい奴」になる気はさらさらない。

「行くか。修学旅行」

メイが、ニャアとか細く鳴いた。

23:cuckoo:2019/5/3(金) 20:26:07 ID:fOPnKBm3e2

「お兄ちゃん」
「何?」

いつもの自室で、少女と二人きりでいる。
少女は圭の隣で寝転び、圭を見つめた。

「もうすぐ遠足の季節なの」
「そうか、楽しみだな」
「うん、でもね、私行けないかも」
「どうして?」
「遠足の前の日、風邪引いちゃったりするから」

子供は遠足など楽しみなイベントがあると、眠れなくなったり風邪を引いたりする。
逆に大人の場合、嫌なことがありすぎて眠れなくなったり体調を崩したりするのだけど……要するに程々が一番だ。

圭は少女の頭を撫でた。

「きっと行けるよ、今度は。行く時は一緒にお菓子買いに行ってやる」

少女はやったあ、と眠たげに言うと重たい瞼を下ろした。
穏やかな寝顔につられて、圭も眠りにつく。そして目覚める。
24:cuckoo:2019/5/3(金) 20:26:56 ID:fOPnKBm3e2
修学旅行に結局参加することになり、予想外に苦労したのは飛行機だった。
飛行機に乗るのは初めてだ。沢山の人々が行き交う空港内で緊張したのはもちろん、機内でも。

「あ、めっちゃ耳痛そう(笑)」

と陽向馬鹿にされたので、痛くないふりを装うのが大変だった。

というかお前は彼女と席が隣じゃなかったのか。
そう聞くと

「一緒になろうと思ったけどさあ、先に別の友達と席取っててさあ、しかもそいつ男なんだよ、何考えてんだろう、あいつ」
「……」

誰かを心配できる立場ではないが、大丈夫なのだろうか、こいつらは。
25:cuckoo:2019/5/3(金) 20:27:20 ID:fOPnKBm3e2
落ちます。
26:名無しさん@読者の声:2019/6/19(水) 00:26:20 ID:7A2gP0vTKY
こういうの大好きです!
つCCC
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