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つれづれに
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1: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/18(火) 03:32:32 ID:HhoWsFjMjM

『手紙』

郵便受けに詰まったチラシの中に、それはあった。




12: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/19(水) 01:30:22 ID:HhoWsFjMjM
【放課後有効無為活用倶楽部】

字面からは何の部活−−部活なのか?−−をしているのか、さっぱり読み取れない。

活動内容の説明もなく、入部希望者は以下の場所か部長のクラスまで、とだけしか書かれてはいなかった。

いったい何なのだ、これは。

怪しさしか感じられないその藁半紙に顔を近付け、何度も読み返してみたが、やはり活動内容の推測は出来なかった。
13: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/19(水) 01:39:35 ID:HhoWsFjMjM
「君、入部希望者かい?」

背後からそんな声と共に肩に手を置かれ、僕は驚きのあまり飛び上がった。

振り返ると、ネクタイの色からして二年生らしい眼鏡をかけた男子生徒が立っている。

藁半紙を読むのに集中していたせいだろうか、足音に気付けなかったみたいだ。その二年生は僕の顔とネクタイを交互に見、

「で、入部するかい?」

そう言ってポケットから入部届だろう紙を寄越してきた。
14: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/19(水) 01:51:35 ID:.YQl3liASQ
つい反射的に受け取ってしまう。

受け取ってしまった手前、いいえ違います、とは言いづらい。陽が暮れてきたのか、廊下の床板が少し朱く染まり始めているのに気付く。

「あ、あの、」

「何かな」

二年生は柔和な表情で、少し首を傾けた。

「…この、放課後…なんとかって部活、何の部活なんですか」

早口言葉のような部活名だな、と思った。
15: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/19(水) 02:00:27 ID:2SmBjDZddk
「何の部活…か。うん、まあ、もっともな質問だね」

「文化部、ですよね?」

「一応ね。まあ、たまには運動部並に体を酷使する日もあるけど、滅多にないから安心していいよ」

いや、安心ポイントはそこじゃない。

二年生は、うーん、と唸りながらこめかみに人差し指を当てて、

「まあ、簡単に言うと、『退屈な日常を打破する為の部活』かな」

更に訳の分からないことをのたまった。
16: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/19(水) 02:12:40 ID:.YQl3liASQ
何なのだ、その活動内容は。

どうして学校がそんな得体の知れない部活動を許可しているんだ。

疑問が次々と湧き上がる。

−−だが、



「楽しい、ですか?」

「勿論。でなきゃ部活が存続出来やしないだろう?幽霊部員もうちにはいないしね」

これでも学校創立時からの歴史ある倶楽部なんだよ、と。

二年生はそれは愉しげな顔で言う。
17: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/19(水) 02:34:36 ID:2SmBjDZddk

……………。

僕は、

(何を考えてるんだ)

鞄から筆記具を取り出し、入部届にがりがりと学年氏名を記入し、

書き終えたそれを二年生、いや先輩に差し出して、

「−−宜しくお願いします」

何だかよく分からない、訳が分からない不明瞭な部活に入ることを決めた。



先輩は入部届を受け取ると、


「ようこそ、【放課後有効無為活用倶楽部】へ」


そう言って、片目を細めて笑った。


18: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/20(木) 13:19:50 ID:.YQl3liASQ

『月に吠える』


自室の壁にもたれかかり、煙草に火を点ける。メンソールの冷たさが、吸い込む冬の空気を更に冷却していく。

ストーブの燃料は今朝方に尽きてしまい、新しく注文しようにも懐には冬将軍が頑固に居座っていた。

バイト代が入るのは、来週である。

じゃあ布団に潜って暖を取ればいいじゃないかという話なのだが、灰を落としてしまった時に焦げ跡を作った事があったので、彼女が置いていった膝掛けで何とかしのいでいる。

部屋には、俺以外に誰もいない。
19: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/20(木) 13:30:37 ID:HhoWsFjMjM
いったい直接の原因は何だったのか、未だに俺には飲み込めていない。

ただ、去り際に彼女が吐き捨てた言葉が、独りになるとぐるぐると頭の中を巡るのだ。

カチリ。二本目に火を点す。

指先が冷たい。


《結局あなたは、自分が一番大事なんじゃない。二番目だって、私じゃないじゃないの》


「……………」

大切にしていたつもりだったのに。

記念日だって忘れないように祝ったし、家事だって出来るだけ頑張っていたつもりだったのに。
20: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/20(木) 13:37:39 ID:2SmBjDZddk
つもり、つもり。

浮かぶ自己弁護は、つもり、だらけだ。


《あなた、何にも分かってないのよ》


じゃあ、どうすればよかったんだろうか。

尋ねたい相手は、合い鍵を俺に投げつけて先週に部屋を出て行った。

口の中が煙草とは違う苦さで満たされていく。半分まで灰になった煙草をくわえたまま、俺は立ち上がった。
21: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/20(木) 13:52:21 ID:HhoWsFjMjM
安普請のアパートの窓を開け、室内に飛び込んでくる冷気に構わず空を見上げた。

月が、出ている。

かつて彼女にプレゼントしたピアスの色によく似た青白い月が、街を静かに照らしている。

静かな夜に似合いの、冷たい月だ。

「…あー、」

怒りでも未練でも悲しみでもないこの感情のやり場をどうしたらいいのか、少し考えてから、

俺は夜の街に、言葉にならない叫び声をあげた。

くわえていた煙草が、窓の下に積もっていた雪に落ちて埋もれて、消えた。


22: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/21(金) 16:40:32 ID:HhoWsFjMjM

『ほしいもの』


「知ってる?放送室の話」

「知ってる?夕方に出るんだって」

「知ってる?まゆこさんのお話」

「知ってる?願い事を叶えてくれるらしいよ」

「でも、絶対に」

「まゆこさんのお願いは、聞いちゃ駄目なんだって」


見付からない。私のケータイのストラップが見付からない。

紐が切れちゃったのかな。古い物だから、もう塗装も半分剥がれちゃってるし。

でも、あれは大事な物なんだ。
23: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/21(金) 16:50:43 ID:.YQl3liASQ
教室の中、移動教室で行った先、今日は体育はなかったから、あとはどこだろう。

思い付く場所は全部探して、最後に辿り着いたのは放送室だった。

放送部の友達に頼んで借りた鍵を差し込む。がちゃりと横に捻ってドアを開けた。


「えー、夕方に放送室行くの?勇気あるね、まゆこさんの話知らないの?」


知ってる。

夕方、放送室に出るっていう、願い事を叶えてくれる幽霊のお話。

でも、私はそんなの信じてないもの。
24: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/21(金) 17:00:46 ID:HhoWsFjMjM
壁に並べられたパイプ椅子やマイクやよく分からないスイッチ類をちらりと見てから、私は床に這いつくばってストラップを探し始めた。

とても大事な物。大切な物。

私の、幸せだった頃の家族の思い出。

「どこ…どこに行ったの…?」

狭い部屋の中、ぶつぶつ呟きながらひたすら探す私の姿は、端から見るとさぞかし気味が悪いんだろうな。

でも、ここには私しかいないから。
25: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/21(金) 17:14:04 ID:.YQl3liASQ
どれくらいの時間、探したんだろう。

やっと見付けたストラップ−−ほとんど目鼻立ちが分からなくなっている小さなウサギ−−は、やっぱり紐の部分がぷつりと切れてしまっていた。

家に帰ったら、どうやって直そうか。

そう思いながら立ち上がり、さて教室に戻らないと、とドアの方を向くと。

−−−いつの間に入ってきたのだろう、長い髪の女の子が立っていた。

(あれ…ドアの開く音、したっけ…)

夢中で探していたから、そんなの覚えてないし気付かなかったかも知れない。

女の子は、長い髪を揺らして、ゆっくりとこちらに向かってくる。
26: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/21(金) 17:23:51 ID:VTSHWpWAVQ
てっきり、私と同じように探し物を取りに来たのだろうと思い、放送室を出ようと歩きかけた時、


《おねがいは、なぁに?》


耳元で透き通った声が響いた。

がしり、と。

ストラップを持っていない方の腕を掴まれる。なに、この子の手、凄く冷たい。

日本人形みたいに整った顔立ちの女の子。その顔がぐぅっと近付き、

《おねがいは、なぁに?》

確かに、そう囁いた。
27: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/21(金) 17:35:52 ID:HhoWsFjMjM
まさか。嘘だ。

だってあんなのはただの噂、よくある学校の怪談。

でも、今、夕方の放送室で、私の目の前にいるこの女の子は、

「………まゆこさん?」

私が掠れた声で呟くと、女の子は−−まゆこさんは、口元を三日月のように歪めて笑った。

背筋がぞわっと怖気立つ。

掴まれた腕を振り払い、ドアに駆け寄る。けど、幾らガチャガチャ動かしても、ドアはびくともしなかった。

鍵は掛けなかったはずなのに。

友達から借りた鍵を試しに差し込もうとしても、それは途中で詰まったかのように入らなかった。

カツン、カツン、と。

背後から足音が迫ってくる。
28: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/21(金) 17:49:42 ID:2SmBjDZddk
他に出口は−−そう考える暇もなく、また同じ腕を掴まれた。

「ひっ…!」

《おねがい、なんでもかなえてあげる。かなえてあげるよ?》


たとえば。

たとえば、あなたの死んだ妹だって、連れてきてあげるよ。


まゆこさんの口が、そう動いた。

妹。私の大切な、大切だったあの子。

このストラップをくれた、優しくて明るくて、宝石みたいにキラキラしてたあの子。

今はもういない、私の妹。
29: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/21(金) 18:03:29 ID:.YQl3liASQ
「…ほんとに、何でも叶えてくれるの?」

まゆこさんは、こくりと頷いた。

なら、あの子に会いたい。妹に会いたい。

《それがあなたのおねがいなのね》

ぎちり。

掴まれている腕に、指が食い込む。

《じゃあ、わたしのおねがいも、きいてくれる?》

まゆこさんのお願い?何だろう。私に叶えられる事なんだろうか?

《うん、あなたにしかかなえられないことだよ》

いいよ、あの子に会えるのなら。



……………………。
30: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/21(金) 18:11:37 ID:2SmBjDZddk
「−−続いてのニュースです」

「××県公立××高校内で女子高生の遺体が発見されました」

「遺体の腕は片方が切断、行方不明になっており、警察では殺人事件の可能性もあると−−」


《うふふ、うふふ》

《きれいなうで、わたしのうで》

《おねがいきいてくれてありがとう》

《むこうでいもうとにあえるんだから、わたし、うそはついてないよね》



「知ってる?放送室の話」

「知ってる?夕方に出るんだって」

「知ってる?まゆこさんのお話」

「知ってる?願い事を叶えてくれるらしいよ」

「でも、絶対に」

「まゆこさんのお願いは、聞いちゃ駄目なんだって」



「まゆこさんに、体のどこかを取られて死んじゃうからなんだって」


31: ◆bEw.9iwJh2:2016/10/23(日) 16:03:25 ID:2SmBjDZddk

『トンネルの中』


「何度も言いますが、ここは私の住処なんです、新参者め」

「だから他にいい場所紹介するって言ってんだろーが、ババア」

「女性にババア呼ばわりとは…あなた、童貞で人生終わったんですね、惨めな」

「童貞ちゃうわ、大人の店くらい何遍も行っとるわ」

「あらあら、素人童貞というヤツですか、プークスクス」

「ぐっ…言い返せない…」
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名前:
sage:


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