http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-10
1スレ(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1385288769/1-10
2スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1416136192/1-10
3スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】)
あらすじはそれぞれの1参照(考えるのがめんどくかったんです。ごめんなさい)
>>2から本編になります!
454: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:22:29 ID:9v4P6Xr0tU
ルイ「アハハ!仲間にも声かけとくよ!自由を求めてるのはウチだけじゃないもんね!」
宣教師「ありがとうございます!」ペコッ
ヒメ「けど、そう簡単に説得出来るのか?」
ルイ「え?むりむり。だからあんた達に協力してほしいの!」
ヒメ「ふーん…どうすればいい?」
ルイ「明日、お爺ちゃんをまた説得してよ!」
ヒメ「あの頑固な爺さんをか?それこそ無理だろ?」
ルイ「だいじょーぶだって?その間、ウチがみんなに話して回るからさ。お爺ちゃんも怖そうに見えて、案外優しいところあるんだよ?」
ヒメ「不安だなぁ…」
宣教師「まず聞いてもらえるかどうかですよね…」
ルイ「…お爺ちゃんが一番、怒ってるのはパパとママを人間に奪われたことなの。アピシナ様の話を引き合いに出してたけど…」
ヒメ「ていうか…そのアピシナとかいうのは結局、おまえらにとってなんなんだ?」
ルイ「んー……呪縛、かな」
ヒメ「…そんな怨念めいたものなのか?」
ルイ「アピシナ様は豊かな愛で世界を変えようとして失敗した…。
けれど、それがあったからホビット族は争いから離れて静かに暮らす決意が出来た…」
ルイ「でもウチらの世代になってみると…狭い場所に押しやられてるみたいで窮屈なんだよね」
宣教師「……」
ルイ「だからウチはアピシナ様の呪縛から抜け出したいんだ?もっとたくさんの世界をみられる内に?」
ルイ「ヨボヨボのお婆ちゃんになっちゃったら、どこにも行けないじゃん?」クスッ
ヒメ「なるほどな…」
宣教師「私達にお任せください!必ず酋長さんを説得してみせます!」
ルイ「ん!頼むよ!」グッ
「ずいぶんと懐いたものだな?」ザッ
ルイ「」ビクッ
455: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:25:04 ID:9v4P6Xr0tU
ボッ ボッ ボッ ボッ ボッ
宣教師「周囲の松明が一斉に…!?」
ヒメ「囲まれてるぞ…!?」
東の騎士「我々の背後にお隠れください!!」スラッ
外交官「」アワアワ
酋長「やりかねんとは思ったが…お前という奴は本当に?」ヤレヤレ
ルイ「っ…!」
酋長「人間共よ。下手な抵抗はよせ?一族の中でも特に優れた弓の使い手で囲んどる?剣では勝負にならんぞ?」
東の騎士「ちぃっ…!」
ヒメ「騎士殿。ここは素直に従おう」
東の騎士「よろしいのか…?」
ヒメ「あぁ、四方八方、民家の屋根や高台からも狙われてる。どう足掻いたって矢の餌食になるだけだ」
東の騎士「承知した…。剣を鞘にしまえ!!」チャキンッ
東兵's「」チャキンッ
酋長「さすがに一国の王とあっては肝の据わりようも違うな?迷わず武器をしまえるとは?」
ヒメ「……」
酋長「ルイを盾にすれば或いは我らの動きを鈍らせたかもしれんものを…」
ルイ「え…?」
ヒメ「…そうしたら、もうおまえ達と信頼を築けなくなるだろ」
酋長「まぁだほざきよるか…」
456: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:27:10 ID:9v4P6Xr0tU
ヒメ「で、どうするんだ?僕らを殺すのか?」
外交官「な、な、何を言っておられます!?い、命ばかりは…!?」
酋長「はてさて…どうしてくれようか?」ニィィッ
宣教師「お待ちください!どうか今一度、こちらの話に耳を傾け……」
ルイ「」バッ
宣教師「えっ」
ヒメ「ルイ…?」
東の騎士「……!?」
外交官「ま、まさか…私供を庇って…!?」
ルイ「お願い!この人間たちに手を出さないで!?」
酋長「……」
457: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:29:34 ID:9v4P6Xr0tU
酋長「ルイ!!」
ルイ「」ビクッ
酋長「同族に立ちはだかり、人間を庇う気か?」ジロッ
ルイ「」プルプル
ヒメ「お、おい…やめておけよ?」ポンッ
宣教師「そうですよ…。無理をなさってはいけません?」
ルイ「そんなんじゃ…ないから」プルプル
ヒメ&宣教師「?」
ルイ「いい加減にしてよ!お爺ちゃん!!」
酋長「……?」
ルイ「もう…いいじゃん!!外に出たって!?この人間たちがホントにウソついてると思う!?」
ザワッ
ルイ「アピシナ様、アピシナ様ってさぁ!アピシナ様を言い訳にして逃げてるだけでしょ!?」
ルイ「ウチも里のみんなも本当は外の世界を知りたがってるんだから!?
なのにお爺ちゃんたちの世代が頑固だから……だからパパもママも勝手に出てったんじゃん!?」
酋長「……」
ルイ「…ウチは信じてる。パパもママも死んでなんかない!どこかで絶対に生きてる筈だよ!」
酋長「探しに行くとでも言うのか?」
ルイ「」コクッ
宣教師「ルイさん…」
ヒメ「(単なる好奇心で協力するなんて妙だと思ったけど、そういうことか…)」
458: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:32:00 ID:9v4P6Xr0tU
酋長「おい、小僧!」
ヒメ「なんだよ…?」
酋長「アピシナ様の話を聞いても引き下がろうとは思わんのか?」
ヒメ「…そのつもりだ」
酋長「癒しの力を持った同族が出現した。それが事実だとするならば…うぬらもまた力を狙う人間の一味ではないのか!」
ヒメ「だとしたら?」
酋長「あぁん…?」
ヒメ「たとえそうだとして…阻止しなかったら結局、癒しの力は王国か西の国に渡り、人間の手に落ちるぞ?」
酋長「ぬ、ぐぐ…!」
ヒメ「おまえらが危惧するアピシナとやらの過ちは繰り返される。それでもいいのか!」
酋長「…我らが参戦しなければ癒しの力を悪用せんとする訳か」
宣教師「むっ…誓って悪用なんかしませんよ!」
ルイ「そんなのなんだっていいから!もう難しい話はいーよ!」
ヒメ「なんだっていいって、そっちにしてみれば重要だと思うんだけどな…?」
ルイ「みんなだってそうだよね!?外に行ってみたいでしょ!?」
東のホビット's「……」マゴマゴ
ルイ「ほらね!そうなんだよ!」
酋長「チッ…」
ルイ「アピシナ様が本当に望んでたのは世界の繋がりじゃんか!?」
ルイ「今のウチらがやってる事ってアピシナ様の望んだ形なの!?違うじゃん!!
外と向き合いもしないで溝を深めて…!人間のせいだって恨むけど結局、ウチらがそうしてるんじゃん!!」
ルイ「ここに移ってくる仲間はこの里を"最後の楽園"なんて呼ぶけど…ウチからしてみたらホビット族を閉じ込める檻みたいにしか思えないよ!?」
ルイ「この広い大陸の中で…小さな山一つで一生を過ごせなんて残酷すぎるじゃんか!!」
酋長「ルイ…お前…!」
東のホビット1「私もだ」ズイッ
酋長「!?」
459: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:35:04 ID:IHQ0bs/URY
東のホビット1「酋長の息子夫婦とは旧知の仲だった…。
よくこっそりと里を抜け出しては変装して一緒に外界を散策したものだ」
酋長「い、いつの間にそんな…!?」
東のホビット1「あの二人の血を継ぐルイちゃんなら…止めどない好奇心に揺らぐのも無理はない」
東のホビット2「だけどなぁ…。人間って生き物は融通が利かないんだ?
何かにつけて自分たちが絶対に正しいと思い込んでる?」
東のホビット3「俺も同感。移住してくるまでは、ずっと人間を避けて生きなきゃならなかったから大変だった」
東のホビット4「…そうかな。僕は見てみたい。ルイさんから色々聞いて…いつか外を冒険しようかなって考えてた」
東のホビット5「俺も!今時、故郷に永住なんて流行んないよ?男なら冒険しなきゃな!」
東のホビット6「にしたって協力したら人間と戦うんだろ?人間に付き合って血を流す必要があるか?」
東のホビット7「そうだよ。外の世界を見るだけなら別に方法はいくらでもある」
東のホビット8「いや、話の争点はそこだけじゃない。癒しの力を悪用される可能性があるのも…」
東のホビット9「なんだかややこしいわね…。あたしは今まで通りでいいわよ」
東のホビット10「だいたい癒しの力なんて本当にあるの?アピシナ様だって実在したかも分からないんだぞ?」
東のホビット11「実在するとしたら人間に力を渡すのは危険なんじゃないか?」
東のホビット12「むしろ俺達が癒しの力を手に入れたら…永遠の命をもらえるかも」
東のホビット13「そりゃ夢みたいな話だなぁ!」
ザワザワ ザワザワ
酋長「くっ…!?」
460: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:38:57 ID:9v4P6Xr0tU
ワイワイガヤガヤ
ヒメ「なんだかんだで皆、感じるところはあったみたいだな」
宣教師「やはり大勢の中で話をすれば、それぞれの意見が出ますね」
外交官「に、人間に協力するか否か、もしくは外の世界への憧れか。
はたまた癒しの力をどうするべきか…ごちゃごちゃですな…!」
ルイ「ねぇ!あんた達からもなんとか言ってよ!ラチがあかないじゃん!」
ヒメ「こんな状態で僕らが説明しても堂々巡りは目に見えてる…」
宣教師「…となると今、この場において最も重い発言力を持っている方に決断していただくしかありませんね」ジッ
酋長「むぅ……!」ギリッ
ヒメ「ほぼ全員の意見が出尽くしたけど…おまえはどう考えてるんだ?」
酋長「……!」
宣教師「あなたの決定に懸かってますよ」
酋長「急にやってきて…こんな難題をぶつけてきおって!」ギリギリ
ヒメ「悪いけど僕らも時間がないんだ。なるべく早めに頼む」
ルイ「お爺ちゃん…!」ジーッ
酋長「〜〜〜!!」ワナワナ
461: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/21(月) 22:40:28 ID:IHQ0bs/URY
酋長「ひ…一晩、考えさせろ!」
ヒメ「分かった。じっくり考えて答えを出してくれ」
酋長「チッ…いちいち指図するな!うぬらには今一度、檻に入ってもらうぞ?」
ヒメ「あぁ、立場は弁えてるから安心しろ。僕らの要求は西の国と戦う協力だけだ。そっちの条件は、よほど無茶でもない限り呑ませてもらう」
酋長「…その言葉、忘れるなよ?」
ヒメ「……」
酋長「皆の者!今夜のところはひとまず解散だ!明日、答えを決める!」
バラバラ バラバラ
ルイ「お爺ちゃん!ウチも一緒に考えるよ!」
酋長「バカモン!!勝手に人間共を出した罰としてお前も檻に入っとれ!?」
ルイ「え〜!そんなぁ〜!?」ガクッ
宣教師「大事なお孫さんを人間と同じ檻に入れていいのですか?」
酋長「ふん…何かしてみろ?うぬらの寿命を早めたければな?」
宣教師「多少は信用いただけたと捉えておきます?」ニコッ
酋長「ほざけ!くだらん!」スタスタ
ルイ「お爺ちゃんったら素直じゃないんだから…」
宣教師「しかたありませんよ。それほど私達とキミ達の因縁は深いですからね」
ルイ「昔のこと根に持ってたら、いつまで経ってもおんなじじゃん!」ムスッ
ヒメ「ふあぁ……うーん、僕らも戻ろう。眠くてしょうがないし」ゴシゴシ
外交官「はぁぁ…ドッと疲れましたな」スタスタ
東の騎士「どうなるものやら…無駄足で済まなければいいが」スタスタ
宣教師「そうならないよう、せいぜい神に祈りましょうか…」スタスタ
462: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:47:45 ID:cyjwnRCe9I
〜〜〜朝〜〜〜
ヒメ「んぅー…久しぶりにゆっくり寝れた!」ノビッ
宣教師「少し寒かったですけど毛布を借りられて助かりましたね?」
ルイ「そりゃそうだよ。ウチもいるんだから?」
外交官「一睡も出来なかった…」ガタガタ
東の騎士「王国の御仁らは肝が据わっておられますな…」
ガララッ ガラガラ
ヒメ「おっ!降りたな?」
ワイワイガヤガヤ
宣教師「おや?いつの間にやら里の皆さんが集まっておられますね?」
ルイ「お爺ちゃんが呼んだみたい」
463: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:48:20 ID:cyjwnRCe9I
ゴトンッ パカッ
酋長「…昨夜は眠れたか?」
宣教師「おかげさまで」
ヒメ「ぐっすりと」
酋長「うぬらにゃ聞いとらん!!」
ルイ「いいから早く教えてよ!どうするの!?」
酋長「反省しとらんようだなぁ…?」ビキッビキッ
ルイ「っ……ご、ごめんちゃい!」ビクビク
酋長「たく…!それでは決定を下そう。これは里の皆の意見を踏まえ、長老たちと話し合って出した結果だ!異存は認めぬぞ!?」
ヒメ&宣教師「」ピクッ
464: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:48:57 ID:cyjwnRCe9I
酋長「我々ホビッツの里の一族は……アピシナ様の惨劇を繰り返さぬ為にも彼らの争いに参戦する!!」
ザワッ
酋長「女、子供は里に残り、土地を美しく保て!!男衆はすぐさま支度しろ!?」
ザワザワ ザワザワ
ヒメ「よし…!」グッ
ルイ「やった!」パァァ
酋長「うぬらは集会所に案内してやろう。食事を用意しておいた」
ヒメ「ほんとか!?ありがたい!!」パァァ
ルイ「お腹空いたっ!」パァァ
宣教師「……」
東の騎士「どうされた?必死の説得が実を結んだというのに浮かない様子だが?」
宣教師「仕方がなかったとはいえ、無関係の彼らを巻き添えにしてしまったようで……」
外交官「今さら何を言う!私供の反対を押しきって陛下を焚き付けたのは貴殿ではないか!?」
宣教師「分かってますよ。私の責任です。しかしながら…複雑ではありますね」
ルイ「なーにへこたれてんのさ!?」バンッ
宣教師「いっ!?」ビクンッ
ルイ「そんなのより、ウチらにでっかいお礼する事でも考えたら?期待してるからね!」ニカッ
宣教師「……!」
ヒメ「そういうことだな?」ニヤリ
宣教師「……ふふ。確かにその通りですね」ニコッ
465: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:50:02 ID:6iJ4MFJfgg
―――里の集会所―――
料理「」ズラァァァァァ
宣教師「んぅ…ふむふむ。美味しいですね!」モグモグ
東の騎士「うむ。この山羊肉のローストなど臭みがなく絶品だな!」ガツガツ
外交官「(ほう…ジンジャースープか。なかなかイケるな。ホビットにしては達者な料理を出すものだ)」ズズッ
宣教師「カリカリに焼けたパンに濃厚なバタークリームを塗ってレタスを敷き、薄切りのロースト肉を乗せて重ねると…。
ふふふ!はたしてこれ以上の贅沢があるでしょうか?」ポワーン
ヒメ「んむ…麦に肉に山菜…食材に偏りがないんだな?」モグモグ
ルイ「へへー!里全体が農耕地だからね!家畜も育ててるし狩り場も豊富だから食うには困らないよ!」
ヒメ「ふーん。来る途中、水車も見かけたっけか。意外とホビットの生活も発達してるんだな」
ルイ「意外だなんて失礼な!」
ヒメ「でも…この食器はどうなんだ?」ヒョイッ
ルイ「どうって?」
ヒメ「料理を一品、一品、細い二本の棒切れで挟んで口に運ぶなんてやりづらくないのか?」
ルイ「え!?人間って、お箸使わないの!?ウチらは普通に昔からコレだけど!?」
宣教師「私も最初は驚きましたが慣れてみると案外、こちらの方も馴染みますよ?」
ルイ「あぁお姉さん!持ち方違うよ!こう!」チャッ
宣教師「へ?あ、すみません!こうでしょうか?」チャッ
ルイ「ちがうちがう!こうだってば!あとお椀ちゃんと持って!行儀悪すぎ!」チャッ
宣教師「は、はい…(奥が深すぎる…)」ズーン
ヒメ「(銀製食器と違って使いにくいな…。肉もうまく刺さらないし、こんな棒切れで、どうやってスープを口に運ぶんだ?)」オロオロ
酋長「慣れぬなら手掴みで食えばいい。人間の作法など知らん…」モグモグ
ヒメ「ははは…まさかこんな豪華にもてなしてくれるとは思いもしなかったよ。恩に着る?」
酋長「ふん。我々は人間を迎合する気はない。今回は目的が一致しただけだ」
ヒメ「あぁ、今はそれでいいさ」ニコッ
酋長「チッ!」
466: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:52:04 ID:6iJ4MFJfgg
ルイ「ふー食った食った」ゲプッ
酋長「…空きっ腹も収まったところで本題に移るが」
ヒメ「」コクッ
宣教師「……」
酋長「ここからの手筈を話し合うが…まずはうぬらの考えを聞かせてみろ?」
ヒメ「戦力を把握して分散し、二手に別れようと思ってる」
東の騎士「二手に…?」
宣教師「団長さん達を助けに行くのでは…?」
ヒメ「もちろんそうだけどもう一つ重要な場所があるだろ?」
酋長「アピシナの大樹か」
ヒメ「そうだ。おそらく敵の狙いは王国を侵略し、大樹への行き来を可能にする事…けどファルージャの性格上、そこまで待つ気はないだろう」
宣教師「相手側はどうやって王国に入り込むのですか?」
ヒメ「団長達に守らせてる防衛拠点に全戦力を集中させてしまったから入ろうと思えば、どこからでも回り込める」
外交官「し、しかしですぞ!まだ西の本国にフィクサー総指揮の率いる軍が…!」
ヒメ「あぁ、奴らはフィクサーと交戦しているから動員できる兵力は限られてる」
467: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:52:34 ID:6iJ4MFJfgg
ヒメ「けど少数の配下を引き連れて抜け出す程度の余裕はある筈だ」
ルイ「ヤバいね、それ!もたもたしてたら永遠の命が悪い奴に持ってかれちゃうじゃん?」
酋長「…里から出せる戦力はたかたが10万程度だぞ?」
外交官「じゅ、10万!?」
東の騎士「いつの間にそこまで力を付けていたのだ…!?」
ヒメ「なら…1万の兵力を大樹に配置しよう」
酋長「敵の兵力の推定は…?」
ヒメ「多くて5000だろうな…」
外交官「5000…たったの?」
ヒメ「あぁ、敵はこっちが出せる限りの兵を防衛拠点に注いだと考えてるからな…。
ホビット族の援軍は視野に含まれていない筈だ。となると…目立つ上に行軍を遅らせる大軍勢は不要だろう」
ヒメ「そしてことごとく勝鬨を上げてるフィクサーを相手取る為にも本土には戦力を残しておくと見る」
東の騎士「なるほど…ではファルージャを止める事は決して不可能ではないと?」
ヒメ「むしろその方が好都合だ。いくら戦況が劣っていてもファルージャさえ捕らえれば、この戦争は決着する」
ルイ「ファルージャって?」ヒソヒソ
宣教師「永遠の命を欲する西の女帝です」
ルイ「へー…じゃあそいつをどうにかすればいいって訳ね!」
外交官「…しかし絶対的に有利な状況下においてファルージャはそこまで事を急くでしょうか?」
ヒメ「さぁな。けど万が一を考えると向かわせる必要はあるだろ」
酋長「……」
468: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:54:28 ID:cyjwnRCe9I
酋長「まぁよい。采配は任せよう。それよりも条件についてだが……」
宣教師「え…?」
ルイ「条件…?」
外交官「どういう事だ!無償で手を貸してくれるのではなかったのか!」
酋長「そんなバカな話があるか?きっちり見返りは求めさせてもらうぞ?」
外交官「くっ…!」
ヒメ「当然だ。なんでも言ってくれ」
酋長「ではそちらの領地を一部、頂こうか。小川の流れる水源地が望ましいな」
外交官「なっ…」
ヒメ「分かった。全てが終わったら、おまえたちに明け渡すと約束しよう」
ルイ「やたっ!ちょい手狭だったし渡りに船ってやつね!」
宣教師「いいのですか?そこに住まう人々に断りもなく…」
ヒメ「…穏便に済むよう取り計らってみるさ。双方が納得のいく形でな」
469: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:54:53 ID:6iJ4MFJfgg
酋長「それからもう1つ、東の国に我らの独立を許してもらいたい」
東の騎士「……!建国すると言うのか?」
酋長「そうだ。我らはホビット族の名の下に国家を立ち上げ、各国から同族に限定した移民を募ろうと考えている」
外交官「(これを機に勢力を強化する気か…!なんと小賢しい!)」
東の騎士「某の一存ではなんとも…」
酋長「駄目だ。今ここで返答しろ。これは絶対条件だ」
東の騎士「むむ…!」
酋長「無論、東の国からも一部、領地を譲り受ける。運河を越えた平原一帯が望ましい」
東の騎士「ば、バカな!それではあまりにも分が悪すぎる!」
酋長「知ったことか。別に我らが助力してやる筋合いもないんだぞ?」
東の騎士「ぐぅ…くく!」ギリッ
ヒメ「せめて代表を通して話し合わないか?一介の兵である騎士殿には荷が重すぎる?」
酋長「二度も言わすな。今ここで決めろ」
ルイ「ね、ねぇ?あんまり困らせない方が……」
酋長「お前は黙っていろ」
ルイ「」シュン
ヒメ「(決められる訳がない…。独断を決行するには騎士殿では政務からかけ離れ過ぎてる…!)」
470: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 17:55:52 ID:cyjwnRCe9I
東の騎士「そ、某では返答出来ぬ…!なんとか説得を試みる故…力を貸してはもらえぬか!」ワナワナ
酋長「ならば白紙に戻すまでだ」
東の騎士「き、きき、キサマぁぁ…!」ビキッ
ヒメ「僕からも頼む!時間をくれ!王国側はそちらの条件を呑むと確約するから!」
酋長「…ほう?その言葉に嘘はなかろうな?」ギロッ
ヒメ「……!」ゴクリ
酋長「しからば最後の条件だ。癒しの力を持つというホビット……」
ヒメ「!?」
宣教師「……!」
酋長「我らがもらい受ける」
ルイ「お爺ちゃん…!?」
ヒメ「な、なんだと…?」
酋長「あの力を人間の手元になど置いておけん」
宣教師「カロルくんをどうするんですか…!」
酋長「どうもせんよ。我らの里に移住してもらうだけだ」
ヒメ「……」
酋長「了承してもらえるな?」
ヒメ「それは僕が決めていい事じゃない」
酋長「なにぃ?」ギロッ
ヒメ「あいつ自身がそうしたいならそうすればいい。僕はそこに口を出すつもりもない」
酋長「本人の意思など関係あるか!うぬらがおとなしく引き渡せばいい話だ!」
ヒメ「あいつの自由を奪うような真似はしたくない」
酋長「あぁん……!?」ギリギリ
471: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 18:02:05 ID:6iJ4MFJfgg
酋長「しのごの言うな!?我らの助力なくしてうぬらに生き残る術はなかろうが!?」ダンッ
ヒメ「…親友だからさ」
酋長「はぁ…!?」
ヒメ「僕はあいつを幸せにしてやりたいと思ってる。だからあいつの邪魔はしない」
酋長「ざ、戯れ言をぬかしおって!」
宣教師「私も彼の友達です!どうか彼の生き方を制限するような真似はしないでください!」ペコッ
酋長「チッ…!人間の近くにいれば、また同じような事が何度でも起こる!うぬらはその度に…このような争いをしていくのか!?」
ヒメ「……」
宣教師「……」
472: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 18:03:14 ID:cyjwnRCe9I
酋長「アピシナ様は己の存在が招いた混沌を鎮めるべく自らの命で償った!
そのカロルだの言うのが、そうならないと確信できる理由があるのか!?」
ヒメ「あいつは挫けた時にこそ希望を見つけるような奴だ。アピシナが諦めた未来にもあいつなら絶対に立ち向かっていける!」
宣教師「私は彼に出会ったおかげで犯した過ちに気付き、悔い改める事が出来ました!
彼には他者を思いやり、惹き付ける誠実な真心が備わっています!
決して苦痛の果てに歩みを止めたりはしないと断言できます!」
酋長「…それがどうした?実際にそいつが残って何になる!
また野望が芽生え、争奪を続ける羽目になるのではないか!?」
酋長「それでも助け続けるのか!?犠牲しか産まぬ実りなき命を!?」
ヒメ「……!」
宣教師「っ……」
酋長「うぬら人間のほざく主張は決まって宛のない綺麗事だ!!だがそれをいくつ実現してきた!?
実現した気になってくだらぬ歴史を刻んだだけではないのか!?」
酋長「何が平穏か!何が融和か!?うざったい思想を当て付けられ、陰でいたぶられた我らの憎悪を…耐えてきた日々を…本気で理解したつもりかぁ!!」バァンッ
外交官「ヒエエエ!?」ブルッ
ルイ「……」
473: ◆WEmWDvOgzo:2015/12/29(火) 18:04:48 ID:cyjwnRCe9I
酋長「もう…二度と言わんぞ!癒しの力は我らで始末する!!」
ヒメ「〜〜〜!」
宣教師「る、ルイさんっ!」アセアセ
ルイ「…ごめん、お爺ちゃんの気持ち、分かるわ」ウルッ
宣教師「そ、んな……」
ルイ「やっぱり…悔しかったよ。だってさ…ウチら、なにしたって言うの?」ウルウル
宣教師「うっ……」ギュウッ
ルイ「これ…感じた事ないホビットなんていないよ?きっと…そのカロルって子もそうだったんじゃないの?」
ヒメ「……」
『キミに何が分かるのさ!?』
『ボクがどんな想いでいたかも知らないのに!?』
『何度も人間を信じたよ!何度も騙された!それでも分かり合えると思ってた!』
『他にどうしたらよかったのさ!?』
ヒメ「……〜〜〜!!」ゾクッ
宣教師「〜〜〜!」ブワッ
ヒメ「」ピクッ
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