http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-10
1スレ(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1385288769/1-10
2スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1416136192/1-10
3スレ(カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】)
あらすじはそれぞれの1参照(考えるのがめんどくかったんです。ごめんなさい)
>>2から本編になります!
365: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:29:07 ID:m4Uz9RrgRI
王国兵1「…僭越ながら国王はお優しい方であるとお見受けします」
王国兵2「少なくとも我々は…以前の王政に比べ、心の暖かみや豊かさを一層感じられるようになりました」
王国兵3「半年に一度、無料で提供される国王専属農園の完熟苺を私も家族も楽しみにしております」
王国兵4「国王の意向により設立された民間の報道機関から発行される紙面を読む限りでは、とても好感の持てる発言、提案を数多く拝見しましたが…」
王国兵5「正直に申しますと我々は…国王に信頼を寄せています」
王国兵6「ホビットに対する手厚い待遇も優しさ故なのでは…?」
王国兵7「それに国民投票で選抜された役人の意見も身分に左右されず積極的に取り上げて下さっているそうですし…」
副官「………おやおやおやおや、呆れる。呆れるよ!呆れますねぇ!?」
王国兵's「」ビクッ
366: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:30:40 ID:m4Uz9RrgRI
副官「じゃあこの戦争はなんだね!?発端である国王はのんびり城で寛ぎ、ホビットは1割も参戦せず、戦場に駆り出されるのは僅かな軍人と寄せ集めの民間人ばかりときた!?」
副官「教団は後方支援と偽って安全な医療、補給班に回り、団員や難民を半強制的に徴兵に駆り出しておいて…参戦してすらいない司祭は大金をもらって自国でぬくぬくホビットのお世話だ!!」
王国兵's「……!」
副官「民間の広報?そんな物は圧力でいくらでも捏造出来るんだよ!!
無料で配られる苺なんて肥溜めから掬われた糞尿を撒き散らして毒物紛いの薬品をべちゃべちゃ染み込ませた腐敗栽培地の汚染物その物だ!?」
王国兵8「な、なぜオドアイル副官はそのように言い切れるのですか!?」
王国兵9「いくらなんでも非難の内容が不当に聞こえます!」
副官「なぜか?愚問だよ?我々、軍上層部は国政の真実を身近に体感しているのさ?」
王国兵's「……!?」
副官「何を隠そう今回の作戦において総指揮に任命されたフィクサー軍事指揮官は全役人を束ね、国政を揺り動かす最高官、リルラ政務官と密接に通じ合っておられた?」
副官「それがどういう事か分かるかね?なんなら余さず打ち明けてやってもいいんだよ?
我が国の闇を?君たちの知らない実情を?役人らの作り替えた事実を?そして国王の裏の顔も…?」
王国兵's「」ブルッ
367: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:32:10 ID:m4Uz9RrgRI
副官「君らは何も分かってなかったのか?そうやって都合良く騙された挙げ句の報われない仕打ちを先代の執政時に散々味わって…まだ気付かないと!?」
王国兵10「そう…かもな」ボソッ
王国兵11「お、おい!お前…!」
王国兵12「きゅ、急に言われても…何がなんだか…」オロオロ
副官「ならば決定的な事実を教えよう?」
王国兵's「」ピクッ
副官「此度の戦争が起こるに至った経緯は実に単純…救い主を巡ってヒメ陛下と女帝ファルージャがいがみ合ったからだ?」
王国兵's「……はい?」ポカーン
副官「救い主は知っているだろうね?そう!国王の親友であり、人とホビットの和睦を助けた救世主だ!」
副官「なんとその救い主が一部では癒しの力を有していると囁かれ、実際に目撃者も多数いると噂されているんだよ」
副官「もちろんそんな力は存在しないだろうが…最悪な事に国外へ漏れ伝わった噂はファルージャの耳に届き、驚くほどにあっさりと信じてしまった?」
副官「もう大体把握出来たかなぁ?そう、これは有りもしないおとぎ話に魅せられた暴君女帝と私的な感情で動く未熟な国王の巻き起こした…極めて個人的な喧嘩に過ぎないんだよ?」
王国兵's「……!」フツフツ
368: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:33:25 ID:m4Uz9RrgRI
副官「そろそろ怒りも沸いてきたかな?」ニヤニヤ
副官「だろうねぇ…国王は万にも昇る諸君の命よりも、たった1匹のホビットと結んだ友情を優先したのだから?」ニヤニヤ
王国兵12「っ……」ググッ
王国兵13「本当なのか…!?」ワナワナ
王国兵14「そんな筈……いや、でも…」
王国兵15「信じていたのに…っ!」ポロッ
王国兵14「……そんなこったろうと思ってたさ」ペッ
王国兵15「お、俺だって薄々感付いてたよ?今さらだっての!」
王国兵16「そうそう!よく考えろよな!あんなガキがまともに王様なんか出来やしないんだからさ!?」
王国兵17「くそぉ!?そんな理由で俺たちは戦わされてたのか!?」
王国兵18「…ここに来るまで何人の仲間が死んだと思ってんだ?
ホビットと仲良くする為なら…人間は死んでもいいって言うのかよ?」
王国兵19「そ、そういやホビットが集団で町や村を襲撃した時…真っ先に退治してくれたのはフィクサー軍長だったと聞いたぞ?」
王国兵20「あぁ、そんで国王の護身刀とか言われてる憲兵団長のダパーシとホビット贔屓の司祭は襲撃に関わったホビット連中を敢えて見逃したとか…」
王国兵21「なんだよ、それ…ますます馬鹿馬鹿しくなってきた。こんな戦いに命張って、どうすんだ?」
王国兵22「…西の国がイカれてるのは知ってたがウチも大概だな」
副官「(しめしめ…ようやく統制が乱れてきたな?)」ニヤニヤ
369: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:34:14 ID:m4Uz9RrgRI
副官「やっと分かってくれましたか…。時間は掛かったが共に戦う有志として団結を深められた事、まことに嬉しく思う!!」
副官「よって我々はここに…独立遊軍となる意思を宣誓しようじゃないか!!」
ザワッ
ドレッド「ど、独立遊軍…!?」
副官「今は矮小な一個大隊でしかないが…僅かながらの兵力で大国を揺るがした実績は証明済みだ?」
副官「強き者の下に人は集まり、弱き者のそばから足音は遠ざかる」
副官「それはなぜか…言うまでもないだろ?強者の懐に収まれば確実に守られるからだよ?
世の中の大多数は弱者であり、弱者は強者の影に隠れたいと願う。
ともすれば王の冠を戴く基準は血筋でも人格でもない!強者か否か!それだけさ!?」
副官「ならば答えは至極全うである!!弱者を蹴落とし、栄光を勝ち取るんだ!!」
副官「これまでを振り返れば危険な場面も多々あった!だがそこを乗り越えてきた諸君らであれば不可能な話ではない!」
副官「強者でありたければ力を示せ!?嘘に塗り固められた現実を憎むなら自分たちで真実を作り出すんだ!?」
王国兵's「……!」ゴォォォ
王国兵's「うっ……」グッ
王国兵's「おぉぉぉおおおおおおおお!!!!」バッ
オォォォオオオオオオオ………
副官「(はい、洗脳完了)」フイー
370: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:35:13 ID:m4Uz9RrgRI
フィクサー「適当な糾弾をまくし立てれば深く考えずに頷いてしまう…。
思い込みの強い国民性は、さすがに2年や3年では矯正されんな?」
ドレッド「お、おい…!あんたが言ってた俺達の時代がどうのってのはアレの事じゃないだろうな…!?」
フィクサー「呼応した者らの共鳴は我々を指導者と認め、新時代を切り開く剣となるよう切望している。応えねばなるまい?」
ドレッド「……!自分の国だぞ!?俺達が生まれ育った国だ!!分かってんのか!?」
フィクサー「……」
ドレッド「あんたにだって残してきた家族や仲間がいるだろうよ!?
大切な故郷を残虐な連中に侵させない為にも母国を守るのが俺達、兵士の役目じゃないのか!!」
フィクサー「……」
ドレッド「独立遊軍!?謳い文句だきゃご立派だが要は無作為に暴れまわる、ならず者の集団じゃねぇか!?
こんなくだらん話に全員を巻き込んで…あんた一体、何がしたいんだ!?」
フィクサー「そうか。分かってくれないか」
ドレッド「何を分かれと言うんだ!?この戦いで俺達は歴史に名を残す英雄になれるんだぞ!?
裏切り者の烙印を押されて悪名を語り継がれるなんざまっぴらだ!?」
フィクサー「…誰ぞの為と叫び、失ったところで、さして気にも病まない者らに尽くすのが、そんなに素晴らしい事なのか?」
ドレッド「はぁ…!?」
フィクサー「新時代の到来と共に歴史もまた生まれ変わる。その始まりにわたしの名をしたためよう」
フィクサー「誰もが戦いに身を費やし、争いが争いを呼び覚ます…。
純然と血を流し続けるツワモノ共の果てなき野心と憎悪の軌跡……。
そう。かつての終わらない争いを彷彿とさせる荒れ狂った時をわたしは感じたい」
ドレッド「(な…な……終わらない…争いだとぉ…!?)」
フィクサー「平和と安らぎに満ちた史書の何が面白い?
ありふれたページなど読み飛ばされ、忘却に沈みいくのを待つのみだ?
何かが巻き起こり、胸熱く疼かせる闘争本能に焦がれる至福は究極の娯楽と言って差し支えない?」
フィクサー「歴史とはこうあらねば…?それをなぜ拒み、つまらない日々に貴重な時を埋め込むのか?」
フィクサー「私利私欲で戦って何が悪い?俺を悪とするならば…己らの願望に平穏を組み込ませ、強制を促す貴様らの方がよほど罪深い…!」ギリッ
フィクサー「わたしは新時代の創造者たりえる傑物…この退屈に紛れ、忘れ去られる気など毛頭ない…」
ドレッド「(駄目だ…。こいつには何を言っても無駄だ…)」ボーゼン
371: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:39:21 ID:UdCBQzYwOk
カッカッ
フィクサー「……」チラッ
副官「あ゙〜…あ゙〜…やぁ〜喉を痛めてしまいましたよ?」ンンゥッ
フィクサー「なかなかの弁舌だったな。オドアイルよ?」
副官「いやぁ〜我らが国王陛下はお坊ちゃんながらに人気ですよ?よもや反発されるとは?
しかたなく勢いとでっち上げで畳み掛けてやったら、あっさり縮み上がりましたがね?」
フィクサー「ふっ…短い間に王の尊厳を民に思し召すとは器にかなう名声の持ち主ではあっ……!?」バッ
ビュンッ
ガキィィンッ!
ドレッド「ざ…けんなよぉ…!?」ギギギッ
フィクサー「…なんのマネだ?」ギギギッ
ドレッド「あんたに仕切らせたら……ズルズルと破滅に向かわされるだけだ…!?」ギギギッ
フィクサー「?」ギギギッ
ドレッド「だいたいにして今までも…そうだっ…友軍や身内を騙し、容赦なく…切り捨ててきたよな!?
城と共に…焼かれた奴らも…道中、制圧した領民や敵の援軍も…無抵抗の人間を!あそこまで徹底的に……殺すだけの理由があったか…!?」
フィクサー「ふっ…ふっふっ…」プルプル
ドレッド「な…に笑っ…!?」
フィクサー「殺すだけの理由…?ならば殺してはならない理由がどこにあった?」
ドレッド「あぁ……!?」
フィクサー「生かしておく必要のない連中を殺して何か問題でもあるのか…!?」ニヤァァ
ドレッド「やっぱり…あんたは…っ!!」
ドスッ!
ドレッド「」ピクッ
副官「ご納得いただけましたかな?ドレッド軍長?」グリグリ
ドレッド「ぎはっ!あぁぁがぁぁああ!!!」ボバッボフッ
372: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:40:04 ID:UdCBQzYwOk
パラパラ パラパラ
副官「イヤぁ〜な空模様ですなぁ?ポツポツと雨が……」
フィクサー「ちょうどいい。豪雨が激しく打ち付ける頃合いを見計らって作戦を決行するぞ」
副官「ははっ!」
ドレッド「」ダラァン
フィクサー「(誰かの植え付けた倫理観に操られ、あたかも己が正義と信じ込む。愚かしさに気付けぬ者共よ…)」
フィクサー「(これからはわたしが造り上げる真理を唱え、さまよい続けるがいいさ…)」
フィクサー「(終わりなき争いの世界でな…)」ニヤリ
???「……」ソーッ
373: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:41:01 ID:UdCBQzYwOk
―――東の国(城)―――
ミリア「……」ゲッソリ
東の高官「ミリア王妃…休まれてはいかがですか」
ミリア「…私は疲れておりませんことよ?」ニコッ
東の高官「…戦争が始まってからというもの、ほとんど睡眠を取っておられませんよ。お顔も少しやつれてしまわれた…?」
ミリア「ふふ……なぜだか眠くなりませんの。歳を取ると横臥するのも億劫で?」ニコニコ
東の高官「ご自愛なさいませ…。宰相殿に関してはまこと残念と申し上げるほかございませんが…」
ミリア「何も心配はしてませんよ?まだ王国の方々が戦ってくださってますもの?」ニコニコ
東の高官「……」
ミリア「ですが…南の国の方々や宰相殿には本当に申し訳なく想いますわ。
陛下と私がもっと上手にやれていたら…こんな事にはならなかったのかもしれません」
ミリア「戦争なんて…するべきではなかったのね。分かっていたつもりでも…こうなると心底、自らの過ちを悔いるばかりですわ?」ボーッ
東の高官「……」
ミリア「ふふ…そんなお顔をなさらないで?安心してよいのですよ?」ニコニコ
東の高官「は、はい…」
374: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:42:19 ID:UdCBQzYwOk
ミリア「…もしも兵が攻めてきたら皆さんで降伏を申し出なさい?」
ザワッ
ミリア「私の身柄を差し出せば…引き換えに救済措置も望めるでしょうから」
東の高官「そ、そんな事…出来る訳が…!」
ミリア「……」
東の高官「わ、私供は王妃様と共に死ぬ覚悟です!最後まで戦い抜きましょう!」
東の騎士「某もでござる!」ザッ
東の召し使い「わ、わ、私だって!」ブルッ
ミリア「あらら……」
375: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:43:34 ID:UdCBQzYwOk
ミリア「あなた…家族は?」
東の高官「わ、私でございますか…?私は妻と二人の子がおります…。
王妃様にも何度かお目通しいただいたかと存じますが…」
ミリア「えぇ、若く美しい奥様で…二人の娘さんもとても可愛らしく仲睦まじい姉妹でしたわね?」ニコッ
東の高官「ま、まぁ…はは。照れますな…」
ミリア「あなたは?」
東の騎士「某は未婚だが…故郷には年老いた両親と四人の兄弟がおります」
ミリア「そう…。きっとご両親にとって城で働くあなたは誇らしいことでしょう?」ニコッ
東の騎士「い、いえ…!」
ミリア「あなたは?」
東の召し使い「わ、わわ、私は城下に石膏技師見習いの夫が…こ、子供はまだ…です」モジモジ
ミリア「…それなら、まだまだこれからですわね?」ニコッ
東の召し使い「は、はは、はいぃ!!」オドオド
376: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:44:42 ID:UdCBQzYwOk
ミリア「……今、申し上げた方々の他にも大切な存在はおられますか?」
東の召し使い「はい…?」
東の騎士「はぁ…?おりますが…?」
東の高官「し、質問の意図が分かりかねます…」
ミリア「その方々と、この先もずっと寄り添って生きていきたいとは思えませんか?」
東の召し使い「……!」
ミリア「この国には前途ある人々が多く残っているのですよ?
どなたも大切な人との出会いを授かり、守るべき物があって…今という人生の中で必死に戦っておられます?」
東の騎士「……」
ミリア「愛しい者と過ごして…夢や希望に打ち込んで…厳しく辛い現実に向き合いながらも…見守り、見守られて生きていく…。
誰しもそうした…歩みたい未来というものがあるのではないかしら?」ニコニコ
東の高官「お、王妃…さ、ま」
ミリア「私の命には…そんな方々の尊い時間を潰えさせるだけの価値がありまして?」フッ
377: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:46:11 ID:m4Uz9RrgRI
ミリア「どうか私に最後の役目をくださらない?」ニコニコ
東の召し使い「」ブワァッ
ミリア「この命で贖えるなら、それ以上に喜ばしいことはございませんもの?」ニコニコ
東の騎士「……」
東の高官「……!」プルプル
東の召し使い「う……ひぐっ…」ポロポロ
「それには及びません!」
東の高官「!?」ビクッ
東の騎士「何奴!?」バッ
東の召し使い「へ!?」クルッ
ミリア「……!ひ、ヒメ…くん?」パチクリ
ヒメ「諦めてはなりません!僕らと共に…この戦況を打開しましょう!!」
ミリア「なぜ…あなたが…ここに?」
ヒメ「急を要する事態でしたので…勝手ながら無理を言って通していただきました!
詳しい事情はこちらの外交官から説明させています!」
378: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:48:15 ID:UdCBQzYwOk
東の高官「こ、国王殿…なぜ今、我が国を訪れられた?」
ヒメ「連合軍を勝利へ導く為にも東の国の力が必要なのです!」
東の騎士「…し、しかし我が国にはもはや僅かばかりの兵と民しか残されておりませぬぞ」
ヒメ「……」
東の召し使い「お…王妃様を助けられるのですか?」ポロポロ
ヒメ「」ピクッ
東の召し使い「お、おぉお願いします…!もう…もう嫌なんです!
国王陛下や宰相閣下のような悲劇を…産み出したくない…!」ポロポロ
東の召し使い「子供たちも…もう……戻ってこないじゃないですか…!
こんな争い…続けたって、人が死んでいくばかりです!?」ポロポロ
東の召し使い「お願いします!どうか…どうか助けてください!?」ポロポロ
ヒメ「」コクッ
東の召し使い「……!」ウルウル
379: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:51:25 ID:m4Uz9RrgRI
ミリア「…最後まで戦い抜く決意ですのね」
ヒメ「始めた以上、途中で投げ出す気はさらさらありません!」
東の騎士「…なおも多くの命を散らして勝利に食らい付こうと申されるか?」
ヒメ「そうです…!」
東の騎士「王妃様のように潔く救える命を残そうとは考えぬのか…!?」
ヒメ「…ミリア王妃のお考えは英断であると思います。
ですが、ただ闇雲に生き永らえさせても残された者らの絶望は拭えません!」
東の騎士「……!」
ヒメ「私達は国を預かる王として…幸福ある未来を民に約束出来なければならないんです!!」
ザワザワ ザワザワ
ヒメ「略奪を強いられ、虐待に見舞われ、奴隷となって家畜同然の身に堕とされるかもしれない…!
残された命の行き着く先をよくよくお考えください!?」
ヒメ「自分たちの居場所を奪い、支配し、せせら笑う侵略者に屈しなければならない…。
周囲どころか己さえも守れない…!敗北の歴史に怯え、震えて眠るしかない…!」
ヒメ「支配する者たちを呪い、戦いに負けた我々を恨み、無力な両手で涙をこらえ、悔しさをどこに向けていいかも分からない…!
ここで諦めてしまえば…誰も幸せになんかなれない!誰も幸せに出来ないんだ!!」
東の騎士「……」
ヒメ「はぁっ…はぁっ…」ゼェゼェ
ミリア「……」ジッ
380: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:52:31 ID:m4Uz9RrgRI
ヒメ「…どうか僕を信じて力を貸してください…!」ペコッ
東の高官「……」
東の召し使い「ふぐぅ……えう……」シクシク
ヒメ「お願いします!時間が無いんです!」
ミリア「断ったりしませんよ…。私供に出来る事なら、なんでもさせてください?」ニコリ
ミリア「皆さんもそうですわね?」
東の高官「…ははっ!!」
東の騎士「なんなりとお申し付けあれ!!」スラッ
東の召し使い「……!」グシグシ
ヒメ「ありがとうございます…!」パァァ
381: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:53:30 ID:m4Uz9RrgRI
ミリア「ホビット族の領地に…?」
ヒメ「はい!そこへ踏み入る許可を頂きたいのです!」
東の高官「し、しかし彼らは…」
東の騎士「んぅぅ……」
ヒメ「なにか不安が…?」
ミリア「実は…亡くなった陛下は一度、共存を求めて彼らに掛け合いましたのよ?」
ヒメ「は、はい…。以前に話されてましたね?」
ミリア「けれどホビット族は陛下に会ってもくださらなかったわ?
それだけでなく、彼らの住まう地に入る事さえ許されなかったの…」
ヒメ「……」
ミリア「…こう申し上げてはなんですがホビット族は東の国から独立した種族。互いに干渉しない掟は50年に渡って守られています。きっと…力にはなってもらえないわ?」
ヒメ「そうですか…」
ミリア「ここまで訪ねてくださって申し訳ございませんけれど…」
ヒメ「…構いません。やるだけやらせてもらいます」
ミリア「?」パチクリ
ヒメ「僕の友は…ホビットでありながら人や歴史が不変の物であると証明してきた現実を変えてみせました」
ミリア「……」
ヒメ「僕達も…いや、人も変えようとし、また変わろうとするべきです。諦めた先に変化はないのですから!」
ミリア「……」チラッ
東の高官「…これをお使いください」スッ
ヒメ「……!」パシッ
東の高官「こちらの通告許可証を提示すれば、いかなる場においても検閲を受けず、速やかに国内を行き来可能になります」
ヒメ「…恩に着る!」ゴソッ
ミリア「…頑張って?」ニコニコ
ヒメ「はい!」ペコッ
382: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:58:05 ID:m4Uz9RrgRI
ミリア「……」
東の高官「…ホビット族はどう出ると思われますか?」
ミリア「ヒメくんに一任しましたので後の事は考えておりませんわ?」
東の召し使い「な、なな、何か心配事が…?」
東の騎士「…ヒメ国王殿はお若く、感情に流されやすい。窮地に追い詰められて周りが見えておられぬやもしれん」
東の高官「…我々の窮地を知ったホビット族が果たして…味方に着くか、それとも不干渉を貫くか、はたまた…」
東の騎士「この期に乗じて東の国土を吸収しに掛かるか…でござろう?」
東の高官「最も可能性が高いのは後者だな…」
東の召し使い「え…え、えぇ…!?」
東の高官「王妃様が少々渋っておられたのは…国内の混沌を危惧された為でございましょう?」
ミリア「さぁ…どうしてでしょうね?」ニコニコ
東の高官「……しかしながら、よもや打つ手もない状況ですからな」
ミリア「なんであれ、あんな純粋な瞳で見つめられたら断れません?」
東の高官「……」
ミリア「はぁ…子供、欲しかった」
東の召し使い「お、王妃様…」
ミリア「(途中で投げ出す気はない、なんて…ふふ。本当に責任感が強くて、優しくて勇敢な子?
自暴自棄になって勝手に自己完結しようとした私とは大違いですわね?)」
ミリア「ちゃんとあの子たちを産んであげられてたら…私達も……」ボソッ
東の召し使い「……?」
ミリア「(私達は人の命を…どこか軽く考えてしまっていたのでしょうね。本当に大切と思える相手がいなかったから……もう遅いですけれど)」フッ
383: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 21:58:53 ID:UdCBQzYwOk
―――王国(国境防衛城塞)―――
ドッドッドッドッ ドッドッドッドッ
ガションガション ズシッズシッ ガションガション ズシッズシッ
ジルレイ「ハッハァ〜?なんだぁ、ありゃ〜!?バカ面、引っ提げて降参するかと思いきや…門を固く閉じて徹底抗戦の構えかぁ!?」
ガランガランガランガラン!
将軍「ヌハハハハハ!!虫けら共が慌てておるわ!?」
ジルレイ「鐘なんざ鳴らさんでも、この大軍の足音が響いてるだろうによぅ?」ニタニタ
将軍「ジルレイよ?」
ジルレイ「ハハッ!」
将軍「突撃だ?」ニタァァァ
ジルレイ「いよっ!待ってましたぁ!!」パシンッ
ジルレイ「てめぇらぁ!?ドカンとぶちかませぇ!!」ガガガッ
ドガガガガガガガガァァァッ
384: ◆WEmWDvOgzo:2015/11/29(日) 22:00:25 ID:UdCBQzYwOk
―――壁上―――
レーグ「き、来た…!?」ビクビク
ガンッガンッ ズダダダダダダッ
レーグ「そ、そ、そそそ総員、は…はい!はいはいはいはち…はち…あぁい!は、配置に着けぇ〜!?」ガタガタ
警備兵's「」オロオロ
レーグ「な、な、ななな…にして…だ?は、ひゃやく!」ガタガタ
団長「狼狽えるな?何を言ってるのかさっぱり分からんぞ?」ポンッ
レーグ「」ビクッ
団長「指示は正確にはっきりと伝えろ?でなければ兵も動きようがあるまい?」
レーグ「ず、すすずびばぜん…」ガタガタ
団長「(ちっ…これでは使い物にならんな)」
ヒュンッヒュンッ ドスッドスッ
ヒィィィイイイ!! ギャアアアアアア!!
団長「何をしている!?さっさと矢をつがえろ!?当てようと思わんでいい!!ただただ無心で射ち放て!?」
キリリッ ピーン
ヒュンッヒュンッ ヒュンッヒュンッ
ヒュンッヒュンッ ヒュンッヒュンッ
ドスッドスッ バタッバタッ
警備兵1「ひぁぁあああ!?いでぇぇぇええ!?」ブスッ
団長「痛みを感じる暇があるなら一本でも多く射ち返せ!?」
ヒュンッヒュンッ ヒュンッヒュンッ ヒュンッヒュンッ ヒュンッヒュンッ
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