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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


784: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 23:29:35 ID:SfPoNrhlRE
―――団長の屋敷―――

ラキア「ただいま」ガチャッ

団長の妻「あ、おかえりなさい?兵営に戻らなくてよかったの?」フキフキ

ラキア「う、うん。父上達は?」ソワソワ

団長の妻「出掛けてますよ。国王様が戻られたから、お昼からお城に行きました」キュッキュッ

ラキア「国王が!?」

団長の妻「えぇ、昼間は城下がすごく賑わってたそうよ?数ヶ月ぶりのご帰還だそうですから?」

ラキア「し、知らなかった…」

団長の妻「ラキアは朝から王都を離れて軍事演習に行ってたから?」

ラキア「ま、まぁ…そうだよね」

団長の妻「ご飯、食べていく?兵営の寮にはどれぐらいで戻るの?」

ラキア「あ、あの…その事なんだけど、さ」シドロモドロ

団長の妻「なに?」

ラキア「やめようと…思ってる」

団長の妻「なにを?」

ラキア「へ、兵士に…なるのを」

団長の妻「どうして?お父さんのような勇敢な兵士になりたいって、昔からの夢だったんでしょう?」

ラキア「…うん。今日の演習で改めて父上のすごさが分かった」

団長の妻「?」

ラキア「父上は何度も私情を噛み砕きながら…自分の出来る範囲で正義を守ろうとしてたんだなって」

団長の妻「…そうですよ。お父さんは誰より頑張ってきたんだから?」

ラキア「俺もそうしようと思う」

団長の妻「?」

ラキア「俺、憲兵になるよ」

団長の妻「…!?」
785: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 23:32:57 ID:kh6s4Xhrmc
ラキア「独りよがりな正義感はもう捨てる。
なんだかんだ、どこかカッコつけたかったんだ、俺は」

ラキア「…正義を口にしたって、その場かぎりの行動じゃなにも解決出来ない。
一度に変化を起こせなくても…長い目で正していける道を探したいんだ」

ラキア「だから俺は今から猛勉強して憲兵を目指す!兵営は辞退するんだ!」グッ

団長の妻「…そう。好きにしなさい。貴方が決める事なんだから」

ラキア「ごめん、母さん…それでもう一つ相談なんだけど」

団長の妻「なに?」

ラキア「また…ここに住んでもいいかな」

団長の妻「……」

ラキア「ご、ごめん、やっぱりちゃんと借りられる部屋を探して……」アセアセ

団長の妻「バカね、どうして許可がいるの?ここは貴方の家でしょう?」ニコッ

ラキア「……!」

団長の妻「部屋、貴方が出た時のままだから?」ニコニコ

ラキア「あ、ありがとう…母さん!」パァァ

団長の妻「…その話、お父さんにもしなさいね?」

ラキア「え?う、うん?」

団長の妻「あの人…きっと泣いて喜ぶから?」ニコッ

ラキア「…?」
786: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:13:03 ID:reOEUJ6NnU
〜〜〜時間は遡り、昼〜〜〜

―――城下町―――

ワァーワァーキャーキャー

ゾロゾロ ゾロゾロ

カロル「すごーい!人間がたくさん集まってるよ?」

母「そうね。人混みにまざるとはぐれちゃいそうだから迷子にならないようにしっかり手を繋いでおきましょ?」ギュッ

カロル「うん!」ギュッ

団長「先に城に入って待ってもいいのだぞ?この中にいては窮屈だろう?」

カロル「ううん、いいの!王子さまが帰ってくるとこ見たいんだ!」

団長「そうしたいなら構わんが…くれぐれもはしゃいで先走ったりせんようにな?
この人混みではぐれたら探すのが大変だ?」

カロル「うん、わかった!」

母「ま、また拐われたりしないでしょうか…?」

団長「ご心配には及びません。不審な動きを防ぐべく部下達にも細心の注意を払って警戒に当たるよう呼び掛けてあります」

母「そ、そうですよね?」ホッ

団長「陛下の帰還を狙ってなにか企む輩がいるとも限りませんしな。警備も厳重に行っております」ジロッ

ワイワイガヤガヤ

団長「…いざとなればワシが付いております。不安は入りませんぞ」

母「(とてつもない安心感)」
787: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:14:37 ID:tCV0j5N4Sw
カロル「あっ!」

母「きゃっ…?ど、どうしたの?急に?」ビクッ

カロル「あそこ!」ビッ

団長「ん?あぁ、出店のテントや手売りの花屋、果物屋などが賑わっておるな?」

母「見てみたいの?」

カロル「ううん。すごいなーと思って?王子さまが帰ってくるの、みんなが喜んでるんだもの?」ニコッ

団長「はは!当然だ?陛下が玉座に着いて2年、民を慮った政策が進められてきたからな。皆、信頼しておるよ」

母「あたし達の同族も一緒に働いたり、お客さんに混じってるわね。なんだか嬉しくなるわ?」クスッ

カロル「ホントだね」ニコニコ

母「普通にお買い物してるだけなのに…みんな、とてもキラキラと笑ってる。きっと今がなにより楽しいのね」

カロル「ねー!」ニコニコ

団長「(小童が陛下と友情を結ばねばありえなかった光景だ。
誰も差別を疑わず、この国は闇に侵されたままだったろう)」

母「…どれも感動しちゃうわよね。どれだけ望んでも手に入らなかった日常が目の前にあるんだもの」

団長「……」

カロル「ずーっとこのままだったらいいね!」

母「……うん、そう信じてるわ?」ニコッ
788: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:16:50 ID:tCV0j5N4Sw
ゴゴゴゴゴゴゴゴ

団長「おぉ、門が開くぞ。いよいよだ?」

カロル「!」ワクワク

母「あんなに大きな扉から入ってくるのねぇ?」シゲシゲ

ワアアアアアアアアア!!!

母「っ……!?」ビリビリ

団長「耳が張り裂けんばかりの歓声だな…!」ビリビリ

カロル「ふふ!王子さま、人気者だね?」ニコニコ

ドドドドドッ

母「お、お買い物してた人達まで来ましたよ!?」ギュウギュウ

団長「ま、まるで突進だな…!二人とも絶対にワシから離れるなよ!?」ググッ

カロル「きゃっ!」ベシャッ

母「ぼ、坊や!?大丈夫!?」グイッ

カロル「う、うん…ごめんなさい?」ムクッ

団長「き、君の場合ははぐれる以前に踏み潰されかねんな?」アセアセ

カロル「うー…」シュン
789: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:17:49 ID:reOEUJ6NnU
ガラガラガラガラ

団長「お、入ってきたぞ!最前列の馬車に乗っているのが陛下に違いない!?」

カロル「ど、どこ?見えないよ?」ググーッ

団長「まっすぐ先だ?見えんの…か?」ギョギョッ

カロル「うわーん!おっきい人間がいっぱい前にいて見えないよー!」エーン

団長「(いや、君が小さすぎるだけだ…というのはさすがに酷だろうか)」

母「一生懸命、背伸びしてるんですけど…ちょっと背が足りないみたいで?」クスクス

カロル「ボクも見たいっ!」ピョンピョン

団長「…分かった、分かった。肩を貸してやろう」ガシッ

カロル「ひゃっ!?」グンッ

団長「どうだ、見えるか?」グッ

カロル「わー!たかーい!ありがとう、団長さん?」ヒョコッ

母「すみません…。疲れるようでしたら下ろしてくださって構いませんから?」ペコリ

団長「礼には及ばんよ。疲れるどころか、この軽さなら片手で持ち上がる?」

カロル「王子さまが顔出したよ!手振ってる!?」キャッキャッ

団長「ほう…!無愛想な陛下が民衆に笑顔を振り撒き、手まで振ってみせるとは…成長なされましたな!」ホロリ

母「(実はあたしも見えないんだけど…ちょっぴり疎外感)」ググーッ
790: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:20:06 ID:tCV0j5N4Sw
バラバラ バラバラ

カロル「すごかったねー?」ニコニコ

団長「うむ!堂々たる立ち振舞いであった!」ホクホク

母「…あら、人々も散り散りに離れていきましたね?」キョロキョロ

団長「そうだな。ではこのまま城に向かうとしよう」

カロル「その前にアイスキャンディー買っていこうよ!」

団長「おう、そうだった!忘れてはならんな!」

母「じゃあ市場に寄ってからにしましょっか?」

カロル「うん!」

スタスタ スタスタ
791: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:21:57 ID:reOEUJ6NnU
―――城(王宮)―――

ザザザザザザザッ

ヒメ「出迎えご苦労。皆、楽にしていいぞ」スタスタ

家臣's「ハハーッ!!」ザッ

ヒメ「この玉座に腰を下ろすのも数ヶ月ぶりになるな」ストッ

政務官「長い間、まことにお疲れ様でした。無事のご帰還、心より祝福申し上げます」ザッ

ヒメ「僕の不在中、変わりなかったか?」

政務官「…良い報告、悪い報告がそれぞれ一つございます」

ヒメ「そうか…。僕もだ?」

政務官「休む間もなく大変恐縮ではございますが…親善交流の手応えをお聞かせ願えますか?」

ヒメ「概ね順調…って事でいいのかな」

政務官「好感触を得られましたか!それは何よりの朗報!」

ヒメ「これから取り組まなければならない事、市民が旅行用に行き来出来る陸路、航路の開通等、様々な協議を提案してきた。
おかげで予定より、かなり時間が掛かった。連絡を怠って悪かったな」

政務官「問題ありません。むしろ話が早い?
初の親善交流とは思えぬ程の手際のよさですな!」

ヒメ「子供のおつかいじゃないんだぞ?
事前に話し合う内容くらい想定して臨んでた?」ジトッ

政務官「ハハハ…それは失礼しました?」
792: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:24:37 ID:reOEUJ6NnU
ヒメ「あ…おまえ、僕に嘘を教えただろ?」

政務官「は…?」

ヒメ「ブルードル陛下は変態趣味の持ち主なんかじゃなかったぞ!」プンスカ

政務官「そうだったのですか?しかし東の国の者からも証言は得ていたのですが?」

ヒメ「…た、確かに変な趣味はあるけど!でもすごく立派な方だった!」

政務官「は、はぁ…では陛下は純潔を保っておられるので?」オソルオソル

ヒメ「純潔?」キョトン

政務官「肉体的な行為を…迫られたりは?」コショコショ

ヒメ「肉体的な行為?」チンプンカンプン

ザワッ

政務官「…ブルードル陛下の寵愛を受けて此度の交流を成立させたのではなかったのですか?」コショコショ

ヒメ「? どういうことだ?分かりやすく言ってくれないか?」

政務官「ぶ、ブルードル陛下と爛れた関係を築き、手玉に取ったのではないかと申し上げておるのです…!」コショコショ

ヒメ「なっ…!爛れた関係だと!?」カッ

ザワザワ ザワザワ

ヒメ「ふざけるな!僕が賄賂を渡したり卑怯なマネをしてきたとでも言うのか!?」

政務官「!?」ガクンッ

ヒメ「僕はこの国の王として恥じないよう、正々堂々と話し合ってきたんだ!邪推は侮辱と受け取るぞ!?」キッ

政務官「い、いえ…それならよろしい?大変失礼致しました…」コホンッ

ヒメ「…ったく!僕をなんだと思ってるんだ、おまえは?」ブツブツ
793: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:27:31 ID:tCV0j5N4Sw
政務官「では目的は果たされたと受け取ってよろしいのですな?」

ヒメ「あぁ、ただし条件があるそうだ」

政務官「条件?」

ヒメ「養子縁組を申し込まれた」

政務官「は…!?」

ヒメ「ブルードル陛下は子が出来ずに悩んでいるみたいでな。後継者が決まらず苦心していたらしい」

政務官「…ブルードル陛下に兄弟はおられませんでしたな。となると王族の血筋がいないと?」

ヒメ「妃のミリア様も同じく親類がいないらしい。
そのせいで東の国は時期国王の座を買って出る政治家や貴族の論争が勃発してるんだと?」

政務官「ま、まさか引き受けたりは…?」

ヒメ「する訳ないだろ?そんな状況で余所から後継者が決まったりしたら東の政治家、貴族達が黙ってないし民衆も受け入れられない?」

政務官「け、懸命です。今、そのようなマネをなされば王国と東の国で戦争もありえますからな」

ヒメ「ブルードル陛下もそこは理解してたよ。だから東の国の人間が僕を認め、王位に乗り出しても納得出来るような功績を納めるよう言われた?」

政務官「どれほどの功績を残そうと他国の王位を継ぐのは不可能では?」

ヒメ「…それが一つだけあるらしい。東の国が抱える問題で…他国の力を借りないと成し遂げられない偉業が?」

政務官「なんですと…!?」

家臣's「」ゴクリ

ヒメ「ただ僕は正直、気乗りしなくてな。断りたいと考えてる」

政務官「い、いやしかし…もしもそれが本当であれば東の国を無償で吸収出来る事になる!
そうなれば王国の規模は世界一!もはや諸国の顔色を眺めずに済みますぞ!?」

ヒメ「……」
794: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:30:04 ID:tCV0j5N4Sw
政務官「ブルードル陛下が望まれる功績とは!?」

ヒメ「…団結して西の国を滅ぼしたい、と」

家臣's「」ブルッ

ヒメ「つまり…およそ50年の禁を破って戦争を仕掛ける事になる」

政務官「……」

ヒメ「…東の国と西の国には遺恨があると聞かされた。
でも…だからと言って戦争する訳にはいかないだろ?」

政務官「…なるほど」

ヒメ「一応、その場では言葉を濁しておいたけど、どう断ろうか悩んでるんだ。なにか良い言い訳はないか?」

政務官「…陛下」

ヒメ「意見があるのか?」

政務官「その話、是非とも受けましょう」

ヒメ「あぁ、そうだな。引き受け……引き受ける!?」ビックリ

政務官「はい。引き受けるのです」

ヒメ「引き受けるって事は戦争になるんだぞ!?」

ザワザワ ザワザワ

政務官「戦争、大いに結構?この機を逃す手はありますまい?」

ヒメ「ほ、本気か…!?」
795: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:32:47 ID:reOEUJ6NnU
政務官「私は国交を預かる身として常に西の情勢を注視しておりますが…」

ヒメ「……!」オロオロ

政務官「見込みは充分に御座います」

ヒメ「な、なんでだよ!この前までは勝てる見込みはないと言ったじゃないか!」アセアセ

政務官「それはこの前までの話…今とは状況が異なります」

ヒメ「そ、そんな…!」

政務官「実は陛下が不在にしている間、密かに王国軍の軍備を整えておりました」

ヒメ「なっ…ぼ、僕を通さずに勝手な事を…!」

政務官「致し方ありますまい?陛下は不在にしておられたのですから?」

ヒメ「だ、断じて認めないぞ!戦争はしない!!」アタフタ

政務官「西の国は我が国を攻めようと企んでおります。沈黙を貫くのも潮時でしょう」

ヒメ「うるさい!戦争だけはダメだ!!」

政務官「…なぜ?」

ヒメ「なんでもだ!?」

政務官「西の国がある限り、いずれにせよ戦争は起きます。
今、芽を摘んでおかなければ王国に未来はありませんぞ!」

ヒメ「口車には乗らない!どうなるか分からない未来を引き合いに出して無責任な提案を正当化するな!?」

政務官「くっ…」
796: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:35:37 ID:reOEUJ6NnU
ヒメ「危険な国を武力で滅ぼせば全てが丸く収まるのか!?」

ヒメ「多くの犠牲者を生んで!犠牲の数だけ遺恨を拡散して!恐怖と警戒ばかりが強まって危険視される!
今度は王国が第2の西の国になるだけじゃないか!?」

政務官「知らない割には分かった風な口を聞きますな?」

ヒメ「知らないさ。でも想像するだけでこんなに恐ろしいんだ!実際はもっと恐ろしいに決まってる!!」

政務官「しかし平穏を勝ち取るには争いも必要なのです。数々の歴史がそれを物語っている!」

ヒメ「だけど争いと平穏を繰り返す歴史が…最後に必ず出す答えは『戒め』だ!!」

政務官「時には決断を迫られる機会もある!!それが今です!!」

ヒメ「っ…!」

政務官「西の国が侵攻を開始したとして…殺戮を許すのか!?
貴方の不安を理由に民は巻き添えを受けなければならないのか!?」

ヒメ「……」

政務官「決定権は貴方にある!!どうか慎重なご判断を!?」

ヒメ「…じゃあ、僕が決定したら?」

政務官「は?質問に質問ですか?」

ヒメ「僕の決定で戦争になれば…いずれにしても巻き添えを喰うのは民じゃないのか…!?」

政務官「戦うのは王国軍です。民に危害は及びませんよ」

ヒメ「それが気に食わないんだよ!!」

政務官「?」

ヒメ「王国軍に所属する兵達も元を正せば国民だろ!?
戦局が不利になったとして最初の犠牲になるのは町や村に住まう民なんだろ!?」

政務官「……」

ヒメ「戦争を引き起こした張本人となる僕が…誰よりも犠牲から遠い場所にいなきゃならない!そんなの卑怯じゃないか!?」
797: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:39:12 ID:tCV0j5N4Sw
政務官「ですが…勝てば陛下の偉大さが全国に行き渡り、後世にまで語り継がれるやもしれませぬぞ!」

ヒメ「何が偉大なんだよ…!」

政務官「勝利の栄光がその手に託されるのです!」

ヒメ「自分で始めた事を他人任せにして安全な場所に引きこもり、いざとなったら逃げ出す準備をしてる奴が偉大なのか!?」

政務官「…国王とは誰よりも優先される身。代わりのいない唯一無二の存在ですからな」

ヒメ「違う!!僕は王である前に人だ!!」

政務官「迂闊な発言はおやめください…!」

ヒメ「うるさい!!軍備も中止しろ!!僕が直接、西の国に掛け合ってやる!!」

政務官「な、なにを恐ろしい事を!?」

ヒメ「うんざりなんだよ!!」

政務官「は…!?」

ヒメ「…国の為、国の為…!そう言って自分達ばかり気にして…!
父上は操り人形にされて、ホビットは国民の憂さ晴らしに使われて、国民は貴族や高官の奴隷にされる…!」

ヒメ「やっとその悪循環から抜け出せたのに…差別の次は戦争か!?
いつになったら、この国はまともになるんだよ!?」

家臣's「……」ズーン

ヒメ「他に方法はある筈だろ?手探りにでも争い以外の道を探そう!」

政務官「(…まぁいい。こうなる事など想定していた!)」
798: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:44:13 ID:reOEUJ6NnU
政務官「…言い忘れるところでした。それはそれとして…報告がございます?」

ヒメ「…話を遮ってまで言うことか?」ジトッ

政務官「はい。この件にも深く関わっております」

ヒメ「……報告してみろ」

政務官「まずは良い報告ですが…救い主が見つかりました」

ヒメ「えっ」

政務官「先日、ここ王宮に招き、僭越ながら陛下の代理として私の方から国民に迎えるとお伝えしました」

ヒメ「あ……ぅ……」パクパク

政務官「陛下が戻り次第、挨拶にいらっしゃるとお伺いしております。
現在、こちらに向かっているのではないでしょうか?」

ヒメ「え!?え!?そ、そんな急に言われても……こ、こここ心の準備が…!?」アタフタ

政務官「……」

ヒメ「な、なんだよ、あいつ!いきなり!2年もほったらかしにしといて…どういうつもりなんだか!?」ニヤニヤ

政務官「(言葉とは裏腹にだらしないほど笑みがこぼれておられる)」

ヒメ「そ、そうだ!急いで迎える支度をしないと…おまえ、そういう大事な話は先にしろよ!?」アセアセ

政務官「すでに別室にて準備は整えてあります。
先に到着した場合、そちらに通しておくよう促しておきました」

ヒメ「え!?そ、そうなのか!?じゃ、じゃあ僕も行かないとな!?」アセアセ

政務官「(あれだけ重要に捉えていた議題を忘れて浮かれる腑抜けようだ…)」

ヒメ「だ、大丈夫かな…。僕の格好、変じゃないか?」ペラッ

家臣1「お、お似合いですとも…?」オロオロ

政務官「(やはり救い主の存在は陛下にとって毒にしかならない…!)」ギリッ
799: 投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2015/6/14(日) 22:47:29 ID:tCV0j5N4Sw
ヒメ「せ、政務官!悪いけど今日の予定は外してもらえるか!?」アセアセ

政務官「承知しました」

ヒメ「じゃあ行ってくる!あいつ、もう来てるかな?」スタスタ

政務官「最後に悪い報告だけ?」

ヒメ「え?後じゃダメか?」ピタッ

政務官「大事な報告ですので?」

ヒメ「…なんだよ」ムスッ

政務官「ファルージャの狙いが判明しました」

ヒメ「」ピクッ

ザワッ

政務官「ファルージャの狙いは救い主です」

ヒメ「……!」

政務官「報告は以上になります」

ヒメ「本当…なのか?」

政務官「はい。禁則事項に留めていた力の情報が内部の人間から漏れ、興味を示したのだそうです」

ヒメ「!」ピシィィィッ

政務官「…救い主を差し出せば戦争は免れるかもしれませんな?」

ヒメ「…そん…な……」

政務官「どうぞ楽しんできてください。公務は私が代わりましょう?」ペコッ

ヒメ「……」グワングワン

ザワザワ ザワザワ
800: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/17(水) 22:57:49 ID:Qm.q8qFlDs
―――城(客用広間)―――

ヒメ「……」ズーン

コンコン コンコン

ヒメ「」ハッ

「失礼します」

ヒメ「ちょ、ちょっと待て!」

「はっ!」

ヒメ「すーっ…はーっ…」

ヒメ「すーっ…はーっ…」

ヒメ「……よし、入れ!」キリッ

ガチャッ

ヒメ「」ドキドキ

カロル「王子さま!」パァァ

ヒメ「っ〜〜!」ガタッ

カロル「王子さまぁー!!」タタタッ

ヒメ「あ、お、おい!?」ビクッ

ダァーン!!

母「あ、あらら…」アセアセ

団長「……!」プルプル
801: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/17(水) 22:58:48 ID:Qm.q8qFlDs
ヒメ「い、いたた…!い、いきなり体当たりかますヤツがあるかっ!?」ムクッ

カロル「あはは…う、うれしくて…つい?」テレテレ

ヒメ「〜〜〜!い、いいから…どけ!」アセアセ

カロル「う、うん。ごめんなさい!」スッ

ヒメ「……」スクッ

カロル「…?」

ヒメ「……て、テーブルに席が用意してあるだろ。座れよ」モゴモゴ

カロル「うん!わかった!」ニコニコ

ヒメ「(い、いざ会うと、やっぱり気まずいし緊張するな…。なんでこいつ平気なんだよ?)」ジトッ

カロル「」ジーッ

ヒメ「な、なにじろじろ見てんだよ?」ムッ

カロル「…あ、ごめん!なんか…王子さま、変わったね?」

ヒメ「そりゃ2年も経てば変わるだろ…」シラー

カロル「背、伸びたよね?ちょっと大人っぽくなってる?」マジマジ

ヒメ「ふん…おまえはなーんにも変わってないな?」ジロッ

カロル「うっ…」グサッ

ヒメ「チビだし能天気だしそそっかしいし、ぜんっぜん成長が見られないよな?」グチグチ

カロル「あう〜…」ショボン

ヒメ「…あの頃のままだ」ジーッ

カロル「?」キョトン
802: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/17(水) 23:02:51 ID:/alaW15cT.
ヒメ「…ふっ」ニヤリ

カロル「???」

ヒメ「あはははは!!」ケラケラ

カロル「わっ…!だ、だいじょうぶ?どこかくすぐったいの?」オロオロ

ヒメ「おまえ…ほんっとにチビだな?」プクク

カロル「え…そ、そう?王子さまが大きくなったんじゃない?」オロオロ

ヒメ「」ポンッ

カロル「な、なに?」オロオロ

ヒメ「頭が手を置きやすい位置にあるからさ…?」プクク

カロル「っ…」ムスッ

ヒメ「おまえ…本当に変わってないなぁ…?なんか…あんまり自覚なかったけど自分の成長を実感するよ」ニコッ

カロル「…ぼ、ボクだって、これから大きくなるもん!」

ヒメ「ならなくていいよ。ずっとチビでいろよ?おまえはチビがお似合いだ?」ニヤニヤ

カロル「」ウルッ

ヒメ「」ハッ

カロル「ひっ…ん……」ポロポロ

ヒメ「こ、このくらいで泣くなよ!」アセアセ

カロル「えぅっ……どうして…いじわる言うの…?」グズグズ

ヒメ「……」オロオロ

カロル「ボク…ずっと楽しみに…してたんだよ?」ポロポロ

ヒメ「ご、ごめん…そういうつもりじゃなかったんだ」シュン

カロル「ホントは…おこっ…てるの?ボクが…なにも言わないで行っちゃったから…」グスッ

ヒメ「そ、それは…まぁ怒ってないと言ったら嘘になるけど?」アセアセ

カロル「……」グシグシ

ヒメ「…でも、もう気にしてないよ。こうして会えたから…怒ってない」

カロル「…ホント?」ジッ
803: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/17(水) 23:05:21 ID:Qm.q8qFlDs
ヒメ「おまえをからかったのは…その…嬉しかったんだよ。
2年も経つのにまったくそのまんまだったから、あの頃を思い出して…なんかはしゃいじゃったんだ?」ポリポリ

カロル「」ガバァッ

ヒメ「うっ…!?」グンッ

ドサァッ

カロル「……!」ギュッ

ヒメ「だ、だから…体当たりすんなって?」ヒクヒク

カロル「ボクも…」グスッ

ヒメ「……?」

カロル「うれしいよ…。ヒメくんに会えて?」ニコッ

ヒメ「……」カァァ

ヒメ「…せ、席に着こう。料理が冷める」プイッ

カロル「えへへ…ヒメくん、恥ずかしがってるでしょ?」クスクス

ヒメ「別に!!」

カロル「お耳が真っ赤っかだよ?」クスクス

ヒメ「…おまえの言う事、やる事がいちいち恥ずかしいからだよ!?」ムキーッ

カロル「…よかった」ホッ

ヒメ「はぁ?」

カロル「いじわる言うから、もしかして嫌われちゃったのかなって…ちょっぴり心配だったんだ?」ニコニコ

ヒメ「き、嫌うはずないだろ…。どれだけ探させたと思ってるんだ?」モゴモゴ
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うpろだ
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