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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


487: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/13(金) 23:08:14 ID:l5W1Sce4Lg
イフィート「そ、そりゃ…ちょっとやりすぎじゃ…?」アセアセ

シヴァ「なにがだ?」

イフィート「いや、確かに俺もカッとなったけど…それはあんまりだろ?」

シヴァ「まともにやりあって人間に敵うと思うか?」

イフィート「で、でもよぉ…人質ってのはやっぱり…」

シヴァ「今さら怖じ気付くな!?」

イフィート「うっ…」タジッ

シヴァ「覚悟を決めろ!己に恥じる行いであろうと…他に勝ち目はないんだぞ!」

イフィート「そ、そうかも…な」

ダッ ダッ ダッ

谷のホビット1「あっ!?」

谷のホビット2「族長!親子と犬が!?」

シヴァ「何をしてる!?囲んで逃げ場を塞げ!」

アワアワ ワタワタ

シヴァ「なにをもたついてるんだ!?」

ダダダッ

番頭「は、林の中に入っていきました!」

イフィート「ば、バカヤロー!!追うんだよ!?」ダッ

ダダダダダダッ

シヴァ「くっ!逃がすな!絶対に見つけろ!?」
488: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/13(金) 23:16:55 ID:l5W1Sce4Lg
>>486
わぁお!リアルタイム支援!すごく嬉しいです!

実は>>290の方の支援で気になったので全部読んでみたんですが……もうとんでもない脱力感と腹痛と悔しさが同時に込み上げてリアルに体調悪くなりました。
あんなに救いのない話があるんですね…。未だに思い出すとお腹痛くなります。
ひのきのぼうの僧侶と比べるとカロルはかなり恵まれてるなぁと思いましたが意外とそうでもないんですかね?
とはいえ、まだまだ…というかもう1スレ分書く予定なので全然、先の話なんですが今度こそはスッキリするオチを付けますね!
ハッピーエンドかバッドエンドかはまだ内緒ですがw
支援ありがとうございました!
489: 486:2015/2/14(土) 07:32:17 ID:37Y/0eNIQ6
>>488
お返事嬉しい!ありがとうございます!

因みに>>486であのように書き込んだ理由は、ひのきのぼうの物語は、どんなに理不尽な内容でも“主人公的には”ハッピーエンドだからです(遺されたヒロインにとっては最悪のバッドエンドですが)。僧侶は『勇者が幸せでいること』に自分の幸せを見出だしていたので、自分自身がどんな目に遭っても、最期には「報われた」と言っていましたし……。いや、実は僧侶が気付いてないだけで、想い人に先立たれてしまった勇者は全然幸せじゃないんですけど。
一方、カロルは『皆が争わずに生きていける』ことを望んでいるので、皆が殺し合おうとしている今の状況はとても辛く感じていると思います……。凄く好きなキャラとSSなので、これからの展開が本当に待ち遠しいです。

長文失礼しました。支援しています!
490: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/14(土) 22:41:44 ID:l5W1Sce4Lg
>>489
こちらこそ丁寧にお返事してくださってありがとうございます!

確かにひのきのぼうは主人公がバカ正直で全くめげないですよね。
一寸のぶれなく我が道を行くんで、たとえどん底に落ちてもあまりキャラ自体に悲壮感はないですが…見ている方はただただ辛かったです。
最後の最後で勇者が気付く場面は秀逸でしたね。
読み手がそれまで感じてきた想いと全てを知った勇者の想いがリンクして作品と読者の境が無くなったように感じました。
分かってても何もしてあげられない読者と勇者だけがバッドエンドに陥る作り込まれた物語、ホント凄すぎます…。
あのショックを思い出して今もお腹痛いです…。
これただの感想になっちゃってますね。ごめんなさい。話を戻しますね!

分かりやすい説明ありがとうございます!
確かにカロルは僧侶のように巡り会う出来事が目標と一致してないので考えがブレブレで悲観的にばかりなっちゃってますね。
本人が何を幸せと感じるかで展開がまるっきり変わるんだなぁと改めて納得させられました。
カロルに関しては作中だけで何回泣いてんだよとか、そろそろ学習しろよと思っちゃいますし。
僧侶と違って巻き込まれるというより他人を巻き込む疫病神ですし、あんまりいいところが見当たらないキャラですね。
自分で書いといて悲しくなりますが…。
そもそも、こんなSSと素晴らしい名作を比較していいんでしょうか…。
波風立たず細々と書いてきたんで叩かれるのが怖いです…。

逆にものすごい長文になってしまって申し訳ございません!
すごく嬉しくて励みになりました!なるべく早めの更新を心掛けますので、どうかこれからもよろしくお願いいたします!
支援ありがとうございました!
491: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/17(火) 17:33:05 ID:v6l4HiRCsk
―――谷間の林―――

タタタッ

カロル「はぁっ…はぁっ…!お、お母さま…へいき?」タタタッ

母「だ、大丈夫よ…!ちゃんと付いていくから!走るのに集中なさい!」タタタッ

マルク「」タタタッ

マテー! ドコダー! オエー!

母「…坊や!一旦、茂みに隠れましょ!」ガサガサ

カロル「うん!」ガサガサ

マルク「」ガサガサ

ダダダッ

母「……」

カロル「……」ドキドキ

マルク「……」ハラハラ

シーン

母「…行きましょ?」ガササッ

カロル「……」キョロキョロ

マルク「あんっ…」ガササッ

谷のホビット6「あ、いたぞ!こっちだ!」ビッ

ダダダダダッ

母「に、逃げるわよ!」ダッ

カロル「うん!」ダッ

マルク「わんっ!」ダッ

谷のホビット6「に、逃がすか!」ダッ

谷のホビット7「そっち行ったぞー!?誰か回り込めぇ!?」ダッ
492: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/17(火) 17:39:39 ID:v6l4HiRCsk
―――谷間の洞穴―――

母「はぁぁ…はっ…はぁ…やっと落ち着いたわね。もうダメ…動けない」クタァ

カロル「っ……っ…!」ウルッ

母「しばらくここでやり過ごして……あら?」

カロル「ふっ…ふえっ…ぇぇぇん…!」メソメソ

マルク「あぅーん…?」ペロペロ

母「もう…しょうがない子ね?」チョンチョン

カロル「っ…な、に…か…さま?」グシッ

母「はい?」パッ

カロル「……?」グスンッ

母「おいで?」ニコッ

カロル「ゔん…」ダキッ

母「いい子いい子?」ナデナデ

カロル「っ…」ギュッ

母「…大丈夫よ?」ナデナデ

カロル「ひっ…ひっく…!」ポロポロ

母「大丈夫……お母さんが付いてるから…ね?」ニコニコ

マルク「くぅーん……」ショボン
493: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/17(火) 17:47:47 ID:DGaa3FR.z2
母「ここにも宣教師様みたいな人がいたら良かったわね?」ナデナデ

カロル「……宣教師さま?」ジッ

母「あの子は正義感が強すぎて、たまに一人で先走っちゃうところもあるけど…どんな事にもまっすぐに向き合える勇気を持ってたわ?」

母「初めて出会った時も迷わずにあたし達を助けてくれて…。
坊やが友達を作れるように村の子供たちと引き合わせてくれて…。
お世話になった組織と反目してまで庇ってくれて……」

母「それに何より……あたし達を信じてくれた?」ニコッ

カロル「」ギュゥゥッ

母「どれだけ傷付いても…あの人は一生懸命、助けようとしてくれてたわよね?」ナデナデ

カロル「グスッ…うん」

母「あの子なら族長さん達とも打ち解けてくれたでしょうに…残念ね…」

カロル「……宣教師さまがいなかったら、ボクも人間を嫌いになってたかも」シュン

母「そうよ…?族長さん達はね?今、そこにいるの?」

カロル「ふえ…?」グスンッ

母「宣教師様に助けられる前のあたし達と同じ気持ちなのよ…
あの時、助けてもらえなかったら…あなたは人間を嫌わずにいられたかしら?」

カロル「できない…と思う」プイッ

母「でしょう?だからね、どんなに説得しても聞いてもらえないわ?
大事な相手を失うのは…それほど辛い事なのよ?」

カロル「でも…争うのはちがうよ…!?」

母「…そうね。でも間違ってるからやめるなんて簡単にはいかないでしょう?」

カロル「……」

母「もうどうにかなる状況じゃなかったのよ。娘さん達が亡くなった時点で…族長さんは限界だった筈だもの」

カロル「じゃあ…どうなっちゃうの?」ブルッ

母「……」

カロル「ねぇ…お母さま…?」ブルブル

母「…早く谷から出ましょうね」ナデリ

カロル「やだっ…!そんなの……やだよぉ…!」ポロポロ
494: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/17(火) 17:52:10 ID:v6l4HiRCsk
ザッザッ ザッザッ

母「」ハッ

谷のホビット19「ん?誰かいるぞ?松明を寄せろ!」ボッ

カロル「あ…あぁ……」ブルブル

谷のホビット17「おぉ、いたいた!」ザッザッ

谷のホビット18「こんなとこに隠れてたのか?」

マルク「グルル…!」フシューッフシューッ

谷のホビット20「ムホホ…そう警戒せんとくれ?わしらは捕まえに来たんじゃない?」

母「ど、どういう事ですか?それなら一体なにをしに…?」ビクビク

谷のホビット20「君らを逃がしに来たんじゃ?シヴァの奴め、頭に血が昇って全然、話を聞いてくれんもんでな?」

カロル「おじいさまは…争いたくないの?」

谷のホビット20「もちろんじゃ?わしも今の集落に移り住むまでは多くの争いを見てきたからのう?」

カロル「そ、そうなんだ…!」パァァ

谷のホビット17「あいつら、どうかしてるよな。なんで俺達まで巻き込むんだよ?」

谷のホビット18「そりゃ族長達には気の毒だったけどよ。俺だってまだ小さい子供が3人もいるんだぜ?やってられっかよ!」

谷のホビット19「そうそう!みんながみんな仇討ちに付き合うと思うなっての!やりたい奴だけでやってろよ!」

カロル「へ…?」

谷のホビット20「シヴァとイフィートはもうダメじゃな。あの二人には任せておけん」

谷のホビット17「あぁ、戦った事なんかねぇのに何を血迷ってんだか?
他人事で巻き添え喰って死にたかねぇっつの!」

谷のホビット18「さっきのおたつき具合から見ても、ほとんどの奴は俺らと同じ気持ちだぜ?
張り切ってやがんのは族長達と特別親しかった連中や後先考えねぇバカだけだ?」

谷のホビット19「まぁでも勝算が無くなればみんな諦めるさ!」
495: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/17(火) 17:57:28 ID:v6l4HiRCsk
谷のホビット17「それに…本当は癒しの力なんかないんだろ?」

カロル「え?えっと…」マゴマゴ

谷のホビット19「あぁ、いいって!いいって!別に騙したとか言う気はないから?」

谷のホビット20「そうじゃとも?むしろありがたい?争いを諌める口実になるのでな?」

カロル「は、はい…」

谷のホビット18「みんなそれぞれ事情があるのに族長だからって好きにさせてたまるかよ。俺達は断固反対だぜ」

谷のホビット17「うちだって婆ちゃんがだいぶ身体をいわしててさ」

谷のホビット19「うちも最近カイコの繁殖がイマイチで参ってんだよな」

ペチャクチャ ペチャクチャ

カロル「……」

母「はぁ…助かったわね、坊や?」

カロル「う、うん…」

母「もう安心よ?」

カロル「そう…だね」

マルク「あぅんっ!」シッポフリフリ

カロル「(なんだろう…。おじいさまたちが争いを止めようとしてて嬉しいのに)」

カロル「(…お話聞いてると、すごくイヤな気持ちになる)」ズキンッ
496: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/17(火) 17:59:13 ID:DGaa3FR.z2
〜〜〜朝〜〜〜

―――西の領土(山麓の獣道)―――

ガサガサ バッサバッサ

谷のホビット20「ムホホ!抜けたぞ!」

谷のホビット19「へへ!シヴァの集落と違ってイフィートの集落の住民はたまに外界で資源を採集するからな。意外と知られてない抜け道にも詳しいのさ!」

谷のホビット18「はぁぁ〜…いいなぁ?うちの族長は時代遅れの堅物だからよ、いつまで経っても変化が無くて退屈でしょうがねぇぜ」

谷のホビット17「さ、君たちは自由だ!もう戻ってきちゃダメだぞ?」

母「ありがとうございました!」ペコッ

カロル「……」

マルク「くぅん?」ペロッ

谷のホビット20「礼には及ばんよ?この歳になって戦わされるなどまっぴらじゃしな?」

母「そうですよね?おほほ…」

カロル「……」

谷のホビット20「ではわしらも帰るとするか。あの二人には族長の座を降りてもらわんとな」ガサガサ

谷のホビット18「おう、早いとこ帰って反対派で固めようぜ」ガサガサ

カロル「あ、あのっ…」

母「」サッ

カロル「え…?」ビクッ

谷のホビット17「なんか言ったか?」クルッ

母「いいえ、なんでも?本当に助かりました?」ニコッ

谷のホビット17「そっか!あんたらも達者でな?」フリフリ

谷のホビット19「しつこく追ってくる連中もいるだろうから、なるべく遠くに離れろよ?」ガサガサ

母「はい。お世話になりました」ペコッ

ザッザッ ザッザッ
497: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/17(火) 18:07:29 ID:DGaa3FR.z2
カロル「…お母さま」

母「なぁに?坊や?」

カロル「あれで…よかったのかな」

母「争わなくて済んだんだからよかったじゃない?」

カロル「…でも族長さまが……」

母「えぇ、たぶんあのままだと、じきに集落を追放されるでしょうね」

カロル「そ、そうなの…!?やっぱり戻ろうよ!」アセアセ

母「戻ってどうするの?」ジッ

カロル「」ビクッ

母「今度こそ争いに利用されて多くの犠牲を見守る事になるわよ?」

カロル「っ…!」

母「受け入れなさい…。族長さんもおっしゃってたでしょう?」

母「『どうしたって意見は衝突する。なにもかもが一致して納得に落ち着く事なんてありえない』って?」

カロル「で、でも…あんなに…がんばってたんだよ?みんなの為に…すごく悩んでたのに……」

母「えぇ…でもそんなに伝わってなかったみたいね」

カロル「……!」

母「あの方たちの言い分は少し冷たく感じたけど、あたし達は何もしてあげられない…」

カロル「族長さまを悪者にして…仲間はずれにして…そんなのって……」

母「…もう考えるのはよしなさい?」

カロル「?」

母「辛くなるだけよ…」

カロル「……」

母「今は歩きましょう。あたし達にはあたし達の目的があるんだから?」ポンッ

カロル「…はい」シュン
498: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/18(水) 19:33:33 ID:2wdwrIx/L.
〜〜〜1ヶ月後〜〜〜

―――王都(会議場)―――

高官1「…と、このようにね!なっておると?えー…どなたかここまでで質問、意見などはございませんか?」ペラッ

高官2「ううむ…この西の採掘場についてだが人がなかなか揃わんそうじゃないか?」

高官3「あぁ、私も聞きましたよ。西の首都で領主を務めるディーグ侯爵が鉄鉱石の収集に向けて事業を開拓したらしいが…肝心の採掘場が人里から離れた場所だけに敬遠されてるとか」

高官1「えー…それに関しましては未だ目処が立っておりませんな。
各斡旋所の方にも優先的に紹介するよう指示してありますが」

高官4「それからここ!教団がそこら中で協賛金を募るんで各地の領主が国に納める税金分と領地の財政に苦心していて市政の幅を広げられないとか!」ペラッ

高官5「それもねぇ…困ったものですよ。孤児院と学習院の維持費ばかりに注いで…」

高官6「ですが教団は難民を預かって各地の新事業に豊富な人材を寄越してくれますし、あまり言えませんよねぇ」

役人2「……」ドキドキ

アーダコーダ アージャナイコージャナイ

役人2「(す、すごいなぁ…。これが役人の会議かぁ…。矢継ぎ早に意見を出し合って…全然付いてけない)」

役人2「(役人さん達がこんなに真面目に取り組んでたなんて知らなかったなぁ…。
この前まで国の文句ばっか謳ってたのがなんだか申し訳ないや)」

ヒメ「……」ペラッ カリカリ

役人2「(陛下は何をしてるんだろ?さっきから発言しないで紙に書いてるけど…あ、そうか。
陛下も付いてけないから落書きでもしてるんだ!あんな子供だし、まだしょうがないよな?)」
499: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/18(水) 19:36:02 ID:NA5BbxDVyU
高官1「…だから!そこをどうするんだと聞いてんでしょうが!?」ドンッ

高官2「他人にばっか聞いてないで自分も意見を出したらどうなんだ!?」

高官3「それよりここをどうするんだよ!?
教団から今度は学習院に修学旅行制度を付けさせたいと依頼が来てるぞ!?」

高官4「馬鹿者!そんな無駄な事に予算を使えるか!?」

高官5「税を滞納する輩が増えてるが……」

高官6「あぁ、滞納金もかさんで計画していた予算案にだいぶズレが生じてるな…」

役人2「(お、おいらも何か発言しなきゃ…!)」

役人2「あ、あの!」

高官's「」ジロッ

役人2「さ、さっきの採掘場の件なんですけど…」

高官1「誰か意見はないのか!」

高官2「だから貴様が出せと言ってるんだ!」

高官1「なんだと!?」

高官3「では教団の依頼は却下ですな」

高官4「あぁ!今はどうでもいいだろ!それよりも……」

ギャーギャー ギャーギャー

役人2「(え…?き、聞こえなかったのかな…)」

役人2「あのですね!私が考えますに……」

ギャーギャー ギャーギャー

役人2「……」

役人2「(も、もしかして…無視されてる?)」

ヒメ「……」カリカリ

役人2「(…新米だし、しょうがないかぁ。最初の内は黙って聞いてよ。陛下みたいに落書きでもしてよっかな)」ハァァ

500: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/18(水) 19:39:07 ID:NA5BbxDVyU
ギャーギャー ギャーギャー

高官1「はぁ…どいつもこいつも!陛下はどのように思われますか!?」

役人2「(わぁ…意地悪だなぁ?こんなちっちゃい子に分かる訳ないのに?)」

ヒメ「……はぁ、最終的な判断も出せずにもう僕に喋らせるのか?」

高官1「し、しかし…なかなか意見がまとまらないもので」モゴモゴ

ヒメ「…とりあえず一つずつ消化するか」ピラッ

役人2「(消化…?意味分かって言ってるのかな?)」

ヒメ「採掘場の人員が不足してるなら鉱山付近の環境を改善してみたらいいんじゃないか?」

高官1「改善…とは?」

ヒメ「そうだな…。手っ取り早く労働者専用の居住区を作るなり、採掘場との行き来に関する問題を取り除くとか…」

高官1「は、はぁ…しかし今からとなると時間も労力も……」

ヒメ「その手間を惜しむ間は人員不足は解決を見ないぞ?
すでに問題点が明確化されてるのだから、その改善に努めろ?」

高官1「うっ…」

ヒメ「とりあえずは衣食住の保証からだな。あとは作業の安全性をしっかりと伝えて労働内容に見合う契約条件を検討して……」ペラペラ

役人2「(あれ?す、すごくしっかりしてる…?)」ビックリ

高官2「お、お言葉ですが建設に取り掛かる費用や毎月の出費を考えれば、まだそこまでの余裕は……」

ヒメ「毎月の出費だと?」

高官2「そ、それはそうでしょう!生活の全てをまかなった上で賃金まで出していたら莫大な費用に…」

ヒメ「…あのな?無償で国が全面負担なんて、そんな都合のいい話があるか?
そんなこと始めたら、どこもそうしなきゃいけなくなるし財政が破綻するぞ?」

高官2「で、ではどうするので…?」

ヒメ「居住区を提供するに当たって掛かる負担は労働者の賃金から引くに決まってるだろ?」

高官2「おぉ、なるほど!」ポンッ

ヒメ「時計塔の建設から錬金術なんかの鉄工技術は間違いなく発展しようとしてるんだ。
必要資源の確保は今まで以上に広げないといけない分野で…その為には積極的に労働者の負担を減らした現場環境を作らないと……」クドクド

役人2「(…こ、こんなちっちゃいのに…これだけの役人達と対等以上に渡り合ってる?)」
501: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/18(水) 19:43:54 ID:2wdwrIx/L.
ヒメ「…ていうかな?おまえら、さっきから問題点ばかり挙げてるけど改善策を全く用意してないってどういう事なんだ?」ジロッ

高官's「」ビクッ

ヒメ「毎回口酸っぱく言ってるよな?問題提起はいいけど自分の頭で熟考してから議題に挙げろって?
これだけ頭数が揃ってるんだし誰かが考えてくれるだろ…とでも思ってるのか?」

高官2「そ、そんなつもりは…?」

ヒメ「他人任せで無責任な考え方はするなよ?なんの為の議論だ、これは?」イライラ

高官3「そ、それは当然、現段階で取り組んでいる事柄に……」

ヒメ「だったら時間泥棒するなぁ!?」ダンッ

高官's「ひぃぃっ!」ビクビク

ヒメ「新体制になってから何回目の会議だと思ってるんだ?おまえら何年、役人やってきたんだよ?
毎回毎回リルラ政務官頼りで自分たちは消極的な意見しか出さないじゃないか!?」イライラ

高官1「も、もちろん…考えてはいますが…やはりまずは意見を集めてから…」モゴモゴ

ヒメ「で、結果はどうだ?まともに意見も出さずに問題だけばら蒔いて…口を開けば不毛な言い争いや揚げ足取りばっかり…!
たまに案が出ても失敗したら徹底的に落ち度ばかりを突く……おまえら一体なんなんだ!?」ガタッ

高官's「」ワナワナ

ヒメ「父上が嘆いていたのがよーく分かった!
自分は何もしないクセに他人の足ばっか引っ張るんだな!?
おまえら本当に役人として働いてたのか!?
政務官が抜けた途端になんだよ、この腑抜けぶりは!?」ガミガミ

高官's「……」イライラ

ヒメ「…なんだよ?何か言いたいのか?」

高官1「い、いえぇ…?べつにー?」ヒクヒク

高官2「あーすみませんね?はいはい?」ケッ

ヒメ「言い返せないからってふてくされるなぁ!?」バンッ

高官's「ひえぇっ!?」アタフタ

ヒメ「そうやって都合が悪くなると考えるのをやめて自分の世界に閉じ籠る!?
甘やかされておだてられたお坊ちゃんのまま大人になったおまえら貴族が楽に過ごす為に与えられた席がここか!?
そんな奴らのツケを精算してやるのが民の務めか!?」クドクド

役人2「(ふ、不思議な光景だなぁ…?子供が議場で先頭に立って、これだけの大人を叱るなんて?)」
502: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/18(水) 19:49:18 ID:NA5BbxDVyU
ヒメ「僕はただただ悲しいよ!おまえらなんかに嘲られて無念の内に死んだ父上が……今も国の歪みを産み出した戦犯として民に忌み嫌われているんだぞ!?」ググッ

ヒメ「だから僕が…変えなきゃいけないんだ!
父上がやりたかった事を…民に胸を張っていける国を作らないとダメなんだ…!」

役人2「(…そっか。お父さんを見てるから必死なんだな。
確かに前国王時代は悲惨だったもんなぁ。おかげで暮らしが窮屈だっておっ父とおっ母がいつも愚痴ってたっけ…)」

ヒメ「こんな調子じゃ何も決まらないぞ!
意見が無いにしろ事前に考えを整理してから議題を通せ!
不備を見つけるだけなら誰でも出来るんだよ!?
ここは対策案を検討する為の場だ!!」バンッ

高官's「……」マゴマゴ

ヒメ「つっけんどんに突っかかってヤジ飛ばすのがおまえらの仕事か!?
そんな奴らに民は賛同しないぞ!?税金の滞納!?当たり前だ!!
こんな不透明で無意味な政策に金なんか出してたまるか!?」

高官5&6「むぐ……」プイッ

ヒメ「教団の方がよっぽどよくやってるよ!未だに民は国を信用してないぞ!
それが今のバラついた流れを生み出してるんだよ!?」

高官2「う、うぅん…おほんっ?」

ヒメ「おい!おまえ!教団からの依頼は却下だそうだな?根拠はなんだ?」ジロッ

高官4「ほ?あ、いや…うーん、前向きに検討した結果、無駄な予算と判断……」ペラッ

ヒメ「その書類、貸せ!」バッ

高官4「(や、野蛮なガキめ…!なにも引ったくらんでも…?)」ブツクサ

ヒメ「」バサッ ペラペラッ
503: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/18(水) 19:53:22 ID:2wdwrIx/L.
ヒメ「ふん…修学旅行、か。どういう意図で必要と判断したか、この制度がどのように実を結ぶか…この書類にはなんて書いてあった?」ジロッ

高官4「え?いやいや、陛下が持ってる書類に書いてあ……」

ヒメ「いいから答えろ?」

高官4「は…?で、でしたら一度書類を返していただ……」

ヒメ「前向きに検討したんだろ?なら内容ぐらい理解してるよな?」

高官4「そ、そこまでは覚えてませんよ?」アセアセ

ヒメ「……バカにするのも大概にしろよ?」

高官4「バカになど…?」ムッ

ヒメ「ロクに目も通さずに検討した?趣旨も理解せずに却下?おまえ、活動費用しか見てないだろ?」

高官4「」ギクッ

ヒメ「おまえはどうなんだ?ちゃんと理由があって却下に納得したのか?」

高官3「そ、それは…彼が決めましたので私は一切関与……」アタフタ

ヒメ「ふざけるなぁ!?」ブンッ

高官3「うひっ!?」バッサッ

ヒメ「他人が決めたから自分は関係ない!?じゃあなんの為の話し合いだよ!?
ここで出された議題におまえら全員で向き合って一致した意見を元に政策を作るんだぞ!?」

高官3「ひぃぃっ…」ウルッ

ヒメ「本来ならおまえらが決めた政策の是非に決断を下すのが僕の役目だぞ!?
それなのになんだよ、この体たらくは!?
意見がまとまらないから後はお願いしますだって!?
だったらおまえらがいる意味はなんだ!?
どういうつもりで、その席に座ってるんだ!?」

高官's「……」

ヒメ「…おまえら大人だろ?僕みたいなガキにこうまで言われて悔しくないのか?」

シーン
504: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/18(水) 19:57:36 ID:2wdwrIx/L.
ヒメ「…頼むから、あんまり言わせないでくれよ。
こんな口汚い国王とずさんな役人を見たら民を更に落胆させるぞ?」ハァァ

役人2「……そんなこと、ないです」ボソッ

高官's「」ピクッ

ヒメ「……?」チラッ

役人2「陛下かっこいいです!すんげー立派です!」ガタッ

ヒメ「……」ポカーン

役人2「おいら…正直言って役人や王族なんて怠けモンで贅沢ばっかしてる嫌な連中だと思ってた!
でも陛下はちっこいのにしっかりしてて!もう熱が伝わるくらい張り切ってて!感動したです!!」

ヒメ「ち、ちっこい…?」イラッ

高官1「お、おい!口を慎まんか!」アセアセ

役人2「口汚いのだって全然気にならねーです!おいらだって本当は田舎っぺだから言葉遣いなんか知らんですもん!」

ヒメ「…こいつは?」

高官1「先日、執り行われました選挙で一般市民の投票によって選出された役人でして…この通り、はしたなく無知な愚か者ですが」

ヒメ「ふーん…」

役人2「ネバルって言うんです!よろしくしますです!」ペコッ

ヒメ「…ここまでを通してネバルはどう感じた?」

ネバル「へ?えーっと…なんだかたくさん喋っててスゲーなと!」

高官2「それが陛下に対する口の聞き方か!なんたる下品な…」

ネバル「す、すんませんです」シュン

ヒメ「いい。気にするな。それで?」

ネバル「あ、えと…スゲーなとは思ったんだけど…正直、話に入りにくかったし、いっぺんに色々話すからごっちゃごちゃで難しいです」

高官3「くっ…分かった風な口を…!」ギリッ

ヒメ「…ふふ」クスッ

ネバル「?」
505: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/18(水) 20:01:38 ID:NA5BbxDVyU
ヒメ「僕は次の予定があるから席を外すが…もう一回、話し合え?
一応、気付いた事や僕個人の意見はこの紙に書いておいた。行き詰まったら参考にしてくれ」スッ

ネバル「(あ…!さっきから書いてたのって落書きじゃなくて…会議の経過と意見をまとめてたんだ!?)」ハッ

ヒメ「まったく…普段の会議では政務官がどれだけキレイに仕切ってまとめてくれてたか痛感したよ。おまえ?」ビッ

高官1「え?」

ヒメ「ネバルの言う通りだぞ?議題が一つにまとまらないで意見がバラバラに飛び交うから縺れて訳が分からなくなってた。全員の意識を一つの議題に集中させろ?」

高官1「うっ…はい…!」

ヒメ「それからおまえらは問題の打開策を出す前に次の話に移るのをやめろ。
一度に多くの議題を掲げるのは効率がいいように思えるが、おまえらの能力じゃそれだけの話を合理的にこなせないだろ。時間の無駄だ?」

高官's「くっ…!?」

ヒメ「最後に…おまえ?」

ネバル「はっ…!?」ビクッ

ヒメ「もっと自信を持って発言していいんだからな?その為の会議だぞ?」

ネバル「は、はい……!」ドキドキ

ヒメ「先月に選出されたばかりだし、平民だったおまえからしてみれば慣れない場かもしれないが…発言権は平等にある。
ややこしく難しい言葉はいらない。平民の代表として今まで感じてきた不満や、この先に必要だと思う事を素直に言ってくれ?」

ネバル「わ、分かりました…」

ヒメ「"平民"に発言権を持たせないと考える頭の悪い役人がいるなら…それを議題に挙げるのも手だぞ?」フフン

高官's「」ビクッ

ヒメ「身分なんて飾りに負けるな?民から得た票の数だけ、おまえは信頼と期待を背負ってるんだから!」ニコッ

ネバル「…ははぁっ!!」

高官's「」オロオロ

ヒメ「じゃあ話がまとまったら書類に清書して提出してくれ。後で目を通して吟味しておくよ」ガタッ

ヒメ「…国が繁栄するかどうかはおまえら自身の熱意に懸かってる。時間は有意義に使うんだな」スタスタ

ネバル「(…お、おいら…誤解してたなぁ)」

ガチャッ バタンッ

ネバル「(あんなに頼もしい人が国王だったんだ…。こりゃもっともっと頑張らなきゃな!
おいらが生活を豊かにしてやるって故郷のみんなにも約束したし…うん!頑張るぞ!)」
506: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/18(水) 20:06:05 ID:2wdwrIx/L.
〜〜〜夜〜〜〜

―――城(王宮)―――

ガチャッ

ヒメ「待たせたな?」ストッ

政務官「いえ、とんでもございません。本日の公務もご多忙を極められたかと存じます。
疲れも癒えぬ内から、お呼び出ししてしまい、まことに申し訳ない」ペコッ

ヒメ「うん。この歳で肩こりと偏頭痛に悩まされるとは思わなかったよ。ほんっと疲れるんだな。国王って?」コキッコキッ

政務官「今は亡き父君もさぞ誇らしいでしょう。若き陛下が立派に務めてらっしゃるのですから」

ヒメ「どうかな…?父上は僕に厳しかったから?」

政務官「…現段階での経過ですが」つ【書類】

ヒメ「ん…うん。ご苦労だったな。あちこち飛び回ってもらってさ」パシッ

政務官「お構い無く…とりあえずは平和協定に参加している国々に赴き、交渉して参りましたが…」

ヒメ「…どうせ知らん顔するんだろ?」

政務官「はっ…お察しの通りで」

ヒメ「先日の国連協議でもそうだった。あいつら…僕を子供だと思ってバカにして…!」ギリッ

政務官「南の国は比較的、親しみやすかったのですがね…。
外交官を通さず国王が直接、対話を許してくださいましたし距離を置こうとする動きも見えませんでしたな?」

ヒメ「あぁ、あの国王か!協議の最中、正面に座ってたから言葉を交わす機会も多かったんだ。
あの方はとても親身になってくださるし、物腰も穏やかで話しやすかった!」

政務官「ふむ。我々も離れた席から見守っておりましたので話が弾んでいたのは確認しておりました。親交を深められていたようで何より?」

ヒメ「まぁな…。でもなんで協議の場なのにパーティー風の催しだったんだ?
初めて出席したが…立食形式で普通に酒を飲んでる役人や貴族みたいのもちらほら見たし…あれって普通なのか?」

政務官「基本的には…まぁ協議とは名ばかりのご機嫌伺いですな。
真剣な協議は大きな問題でも起きない限り、滅多に行われませんよ。
陛下の苦手とする貴族のパーティーと同一視してよろしいかと?」

ヒメ「…どこもやる事は一緒なんだな。暇なのか?」

政務官「無論、そういった場に出席する事で様々な要人と交流し、国家間の協力関係を円滑にする意味もありますが。
たとえば皆様が金銀財宝をあしらえた装飾品などを好んで身に付けるのも自国の隆盛ぶりを見せつけ、価値を高く思わせて取り入りやすくするといった手法でもあるのです」

ヒメ「へぇ…」
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