1スレ
少年「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10
2スレ
カロル「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10
―――あらすじ―――
それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました
しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました
そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです
戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました
布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました
それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします
458: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:41:25 ID:M97GWVJjkM
カツンカツン カツンカツン
西の衛兵1「だ、誰だ!ここは勝手に入っていい場所で、は……なっ…!」
西の衛兵2「え?しょ…将軍閣下!?」
ブォンッ
西の衛兵1「ぶっ!?」ボクシャァッ
将軍「お通しせぬか?」ギロッ
西の衛兵2「あ、あぁう…!?」ガチガチ
ファルージャ「」ピトッ
将軍「」ビクッ
ファルージャ「はぁん…?ほんにそなたは頼もしい…?」サスッ
将軍「お、おほっ!ムフフフフフフ…!」デレデレ
ファルージャ「これからもそのたくましき腕を妾の為に振るってたもれ…?」ジッ
将軍「ふぁ、ふぁふぁ…ファルージャ様!わ、わわ…我輩のよ、嫁に……」プルプル
ファルージャ「さぁパカラゥロとやらに会ってみましょうか」カンッカンッ
将軍「は、はっ…!」カンッカンッ
西の衛兵2「な、なぜ閣下が…うっ!チビっちゃった」ジョォォー
西の罪人's「」ブルブル
459: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:43:33 ID:M97GWVJjkM
――――――
奴隷「」ボーッ
ギギィィィィィ……
奴隷「」ビクッ
ファルージャ「フゥ〜…これはまた…なんと形容しがたい醜さか?」ジッ
奴隷「……?」
奴隷「(わぁ……こんなに美しい人…は、初めて見た…)」ポォォッ
ファルージャ「…そなたの眼はとても濁っておるな?」
奴隷「は、はぁ…?」
ファルージャ「汚らわしい肌じゃ。皮が剥がれ落ちて青く変色しておるわ…。
体毛もろくに生えておらぬな。それにしてもたまらぬ…ひどい臭いよな」ジロジロ
ファルージャ「そなたはまことに人間かえ?一体どうしたらそうなるんじゃ?」クスクス
奴隷「……」ズーン
ファルージャ「どれ?触らせてみろ?」ピトッ
奴隷「……!?」
ファルージャ「クスス…怯えることはなかろうて?しかし…見ていて飽きが来ぬな?
醜さと美しさは表裏一体、深く興味をそそるではないか?」スリスリ
奴隷「(な、なんで…自分に触れるんだ?こんなに…醜い自分に…?)」ビクビク
ファルージャ「ふむ…初めての感覚じゃ?なんというか…シナシナしておるな?」スリスリ
奴隷「…あ、あの」オドオド
460: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:51:46 ID:M97GWVJjkM
ファルージャ「ふむ、稀な感触、堪能したぞ。ところでそなた?」パッ
奴隷「え?」
ファルージャ「黒魔術なる面妖な力を使うそうではないか?一度、妾にも見せておくれな?」ニヤリ
奴隷「む、無理…」アセアセ
ファルージャ「……なぜ?」ジロッ
奴隷「使ったら…死ぬから」
ファルージャ「クスス!いらぬ心配じゃ?将軍?」
将軍「はっ!拝借して参りましたぞ?」グイッ ブンッ
西の罪人4「あたっ!」ドサッ
奴隷「……だれ?」
ファルージャ「取るに足らぬ命よ。さぁ見せてごらんな?」
西の罪人4「な、なにを…!?」
奴隷「…たしか隅に魔溶液が残ってた」ゴソゴソ
奴隷「(本当はいつでも死ねるように隠れてくすねておいた物だけど…)」パカッ
奴隷「」ゴポッ ピチャッ
ファルージャ「…その液体は?」
奴隷「知らない…」ニギニギ
ファルージャ「…意味があるのかえ?」
奴隷「液体に込められた魔力を…掌に馴染ませてる…って聞いた」ニギニギ
ファルージャ「……ふぅん」
奴隷「こんなもんかな…」スッ
461: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:54:54 ID:M97GWVJjkM
奴隷「」バッ グワシッ
西の罪人4「ひぃっ!?ま、まってく…むがっ!?ぶっ…ふぐむ!!」モガモガ
ジタバタ ジタバタ
西の罪人4「っ……っ……」ガクガク
奴隷「」パッ
西の罪人4「あっ…あっ…ぎ……ぎひぃ!?」ブバァッ
ドバドバ ボチャボチャ
西の罪人4「んっぐ…ぶぇはぁ!………ぐはっ」バシャンッ
ファルージャ「……」ジッ
奴隷「…これが…黒魔術…」
ファルージャ「その力…そなた以外には使えぬのか?」
奴隷「分からない…。増やそうとしてるけど…魔術師たちは失敗ばかりしてる」
ファルージャ「…ほう?」ジッ
奴隷「」ドキンッ
ファルージャ「……そなた、性別は?」
奴隷「……わ、忘れた」プイッ
将軍「囚人服を剥いで確かめますか?」
ファルージャ「必要ない。こやつは女よ」
将軍「は?」
奴隷「」ギクッ
462: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:57:41 ID:WAMP9I3Be6
ファルージャ「見た目はもちろん、ろくに栄養も取れておらぬせいか胸は無く、声もしゃがれて判別は付きにくいが……。
先ほどから見掛けや性別を言及される度に見せる微かな恥じらいは女特有のモノ?」
奴隷「だ、だったら…なに?」ジロッ
ファルージャ「無様よな?お前のような化け物にだけはなりとうないわ?」
奴隷「」ピクッ
ファルージャ「それでは女の幸せなど永久に訪れまい?残ったのは己すら理解せぬ液体の染み込んだ薄汚い身体のみよ?」
奴隷「……!」プルプル
将軍「こ、これが女か…!世の中、不思議な事もあるものだ…?」マジマジ
ファルージャ「そなた、そのような身体でよく生きていられるな?
よほど図太いのか…それとも化け物である事に誇りを持っておるのかえ?」
奴隷「だま…れっ…」ギリィッ
ファルージャ「なんじゃ?妾はなにか間違っておるか?」
奴隷「だまれぇっ!?」スクッ
ファルージャ「……」
奴隷「自分だって好き好んでこうなったんじゃないよ!!あいつらにこうさせられたんだ!!」
奴隷「小さい頃…何歳だったかも覚えてない…!
兵に拐われて、ここに連れてこられて…あいつらに訳の分からない液体を浴びせられたり飲まされたりして悶え苦しんでる内に……気付いたら、こうなってたんだ!!」
ファルージャ「クスス…それにしてはそなた…ずいぶんと余裕があるな?」
奴隷「……」
ファルージャ「妾だったなら…とても耐えられぬ。なぜ精神を保てるのだ?」
奴隷「…飲まされる液体には三つの種類がある」
奴隷「一つは魔力が込められた液体、もう一つは傷や病を癒す液体、最後の一つは…精神を落ち着かせる液体だ」
ファルージャ「フゥ〜……完璧な対応じゃ?」
奴隷「……!あんたみたいに恵まれた人間には分からないだろ!」
ファルージャ「うむ。分からぬな。分かりたくもない?」
奴隷「くっ…!」ワナワナ
463: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 22:00:58 ID:M97GWVJjkM
奴隷「死にたくなかったら消えな…!」
ファルージャ「クスス……」
将軍「ヌハハ!消えなときたか?」
奴隷「なんだよ…!本当に殺すぞ…!?」ニギニギ
将軍「やれるモノならやってみろ?化け物が?」ズイッ
ファルージャ「よいよい?」サッ
将軍「……?」
ファルージャ「将軍、一度席を外しておくれな?」
将軍「なっ!?し、しかし…!」
ファルージャ「牢の役人、衛兵共の口封じを?」
将軍「ぐぬぅ…か、かしこまりました。どうかお気をつけて」ザッ
カツンカツン カツンカツン
464: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 22:02:29 ID:M97GWVJjkM
ファルージャ「さて…?」ジッ
奴隷「ま、まだ何か用があるのか…!い、いい加減にしないと殺……」
シュルッ ハラリッ
奴隷「っ…!?」ビクッ
スルルッ パサッ
奴隷「い、イカれたか…?なんで脱ぐんだ!?」アセアセ
ファルージャ「女の喜びを教えてやろう?とくと味わうがいい?」ヒタッヒタッ
奴隷「や、やめろ!近寄るな!殺すぞ!?」ズサッ
ファルージャ「ではなぜさっさとそうせぬ?」
奴隷「はっ…!?」ドキドキ
ファルージャ「快楽はよいぞ?身悶え、喘ぎ、全身に痺れを感じれば…そなたの苦悩がいかに無意味なモノか理解出来ような?」クスッ
奴隷「か、かいらく…あえぎ…?」キョトン
ファルージャ「そうか?そなたは無知であったな?」
奴隷「い、意味が分からない」オロオロ
ファルージャ「…なんと愛らしい?無垢なる心身を汚す背徳感…たまにはこういった嗜好もよいな?」
奴隷「やめろ…!なんか分からないが…とにかくやめろ…!?」ビクビク
ファルージャ「案ずるな?知って損はなかろうよ?」ジリジリ
奴隷「〜〜〜!?」
465: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 22:09:33 ID:WAMP9I3Be6
奴隷「っ…っ…」ビクンビクン
奴隷「(な、なんだこれ…なんだこれ…なんだこれ…?)」フニャァ
ファルージャ「フゥ〜…その身体では指先しか使ってやれぬのが口惜しいが…満足出来たかえ?」ナデリ
奴隷「あ、あんた…なんなんだよ…?」ハァッハァッ
ファルージャ「妾に仕えぬか?」ジッ
奴隷「はぁ…?な、なに言ってんの?」
ファルージャ「妾に仕えれば…この快楽を幾度も味わえるのだぞ?」クスクス
奴隷「はぁっ…あぁ…」
ファルージャ「それに…今より自由になれる」
奴隷「」ピクッ
ファルージャ「妾はそなたを狭く薄暗い独房に追いやったりはせぬ?望むのであれば…快楽以外の物も与えてやれる?」ジッ
奴隷「……ウソだ」プイッ
ファルージャ「まことじゃ?」
奴隷「自分みたいな醜い化け物が人前に出られるか」
ファルージャ「妾は構わぬ?」
奴隷「あんたは美しいからいいさ…。人前に出たって誉めそやされるんだろ?自分は違う!」
ファルージャ「確かにそなたは醜い?同じ人間とは思えぬ変貌を遂げた化け物よな?」
奴隷「っ…そうだよ!化け物だ!化け物は狭く薄暗い独房でいいんだ!」
ファルージャ「…しからばなぜそなたは化け物と揶揄されるのか?」
奴隷「普通じゃないからだろ!どの人間と比べたって明らかに違う!」
ファルージャ「クスス…そうさな?だからこそ妾はそなたに心惹かれておる…?」ナデリ
奴隷「は、はぁ…!?」ドキドキ
ファルージャ「他の誰とも似付かない。それはつまり特別である証と言えよう?」ナデナデ
奴隷「……!」ドキドキ
ファルージャ「濁り腐った眼…淡白な青い肌…全身の体毛が抜け落ちて、所々皮膚は剥がれ、焼け爛れたように蝕まれ…それでもなお妾はそなたを愛せるぞ?」クスッ
奴隷「あ、頭おかしいだろ…?こんな気持ち悪い身体……」ブルッ
466: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 22:14:41 ID:M97GWVJjkM
ファルージャ「己を卑下せずともよい?肌を重ね合わせた仲ではないか…?」サスッ
奴隷「…じ、自分にベタベタ触って…どうなっても知らないぞ!後で死んでも文句言うなよ!?」
ファルージャ「よいわさ?命を賭してでも、そなたが欲しい?」サスサス
奴隷「く、くすぐったいからやめろ!なんでそこまでして……」
ファルージャ「そなたもまた…特別でありながら、その才を認められず押し付けられた環境に甘んじているからじゃ?」フッ
奴隷「……」
ファルージャ「妾も同様じゃ…。誰よりも美しいと持て囃され、この城に迎えられた…」
ファルージャ「しかし…理不尽にも妾に与えられた立ち位置は都合のよい愛人であった。
ただ陛下の肉欲の赴くままに呼び出され、何事もなく放置され、それ以外の時間はもて余し、宮女や正妻達による執拗な嫌がらせを受けるばかりじゃ…」
ファルージャ「妾がこんなにも惨めな生き方を強いられるのは…身分ゆえよ。
どれほど美しかろうと平民の娘では不当に価値を落とされる」
奴隷「…自分に言わせりゃちっぽけな悩みだね。美しさを買われて偉い人のそばにいるんだから鼻高々じゃないか」
ファルージャ「確かに…パレードでたまさか陛下に見初められ、王宮へ向かう馬車の中では感じた事のない絶頂に心踊ったものさな。
じゃが…それすらも霞ませるのだ。人間とはかくも欲にまみれたものか」
ファルージャ「どんなに誇らしく望ましい舞台に上がろうと…そこに到達してしまえば満たされなくなる」
ファルージャ「更なる高みを目指したくなるのよ…」
奴隷「いいご身分ですねー…」フンッ
ファルージャ「その為にもそなたの力を貸してほしい」
奴隷「やなこった」
ファルージャ「何を頑なに拒む?意地か?それともなくば…現状に満足しておるとでも?」
奴隷「そんな簡単な理由じゃない…」ムスッ
ファルージャ「…口にしてくれねば分からぬぞ?」
467: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 22:19:47 ID:M97GWVJjkM
奴隷「…自分はどう足掻いたって、もう終わってる」
ファルージャ「クスス?バカを申すな?これから始まるのではないか?」
奴隷「次は実験じゃない…大きな作戦ってのをさせられるんだ」
奴隷「その作戦で…たぶん死ぬ。なんとなくだけど分かるんだ」
ファルージャ「それでいいのかえ?」
奴隷「イヤに決まってんだろ…!」ブルッ
奴隷「怖いさ…!すごく…!」ガチガチ
ダキッ
奴隷「むぐっ」ボフッ
ナデナデ ナデナデ
奴隷「んっ…!ぶはっ!や、やめ……」ジロッ
ファルージャ「死なせはせぬ?」ナデナデ
奴隷「は…!?」
ファルージャ「いずれこの国は妾の手に収まる。そなたの命は皇帝ではなく妾の為に使え?」
奴隷「なにを勝手な…!」
ファルージャ「すでに将軍のみならず側近、官吏諸々の重役共も抱き込んである。あとは憎き皇帝一族を滅ぼすだけじゃ?」
奴隷「えっ…」
ファルージャ「絵空事などではない。妾に仕え、時を待てばそなたは自由を得る?」
奴隷「ほん…とか…?」パチクリ
ファルージャ「何度も言うておろうに?」
奴隷「っ…!」ブワッ
ファルージャ「妾を信じろ。そして…妾の為に生きよ?」ナデリ
奴隷「ふっぐ…うぅ…!」ポロポロ
ファルージャ「クスス…よいぞ?しばらくこのまま妾の胸で感情を鎮めるがいい?そなたは特別なのだから…。ふふ」ナデナデ
奴隷「」ビクッ
奴隷「(特別?じゃあもし自分が特別じゃなくなったら…?)」グワングワン
468: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 22:25:24 ID:WAMP9I3Be6
――――――
魔術師1「ぶはぁっ!!」バシャッ
魔術師2「あ、あ、あぁぁ……お、お前…なにを…!?」ガタガタ
奴隷「また…自分みたいな媒体を作ろうとしてるんだって?」ニギニギ
奴隷2「ひ、ひぃぃ!?化け物!?」
奴隷3「うえっ!うぷっ!おぼろろろろ!」ゲロゲロ
奴隷「んふふ?おかしな事を言うねぇ?君らもその化け物にさせられる手前だっていうのに?」
奴隷4「な、なんだって……!?」
ザワザワ ザワザワ
魔術師2「ぱ、パカラゥロ!?貴様ぁ…!よくも究極に近付けてやった恩を忘れて…!?」
グワシッ
魔術師2「むぐっ!んぶっ!や、やべぼ!?」バタバタ
パッ
魔術師2「おっ…おげぇぇ…!」ビタビタ
ヒィィィィィー!?
奴隷「感謝してるよ。あんたらのイカれた研究で自分は特別になれた?」
魔術師2「」バシャッ
奴隷「でも困るんだよねぇ?特別ってのは…たった一つしかなくて初めて成立するんだから?」チラッ
奴隷's「」ゾゾゾッ
奴隷「我が名は大魔導師パカラゥロ。ファルージャ皇帝陛下に仕えし三銃士の一人」
魔導師「醜く不幸な化け物は一匹で十分さね?君たちに別の不幸を差し上げようか?」グワシッ
ギャアアアアアアア ビタビタ バシャッバシャッ
………………
469: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/13(金) 21:57:48 ID:w.7DrG1zg2
―――谷間の吊り橋―――
ズゥゥゥン ヒュールリラルー
ザワザワ ザワザワ
谷のホビット1「こりゃひどい…。崩れた橋が向こうの断崖からぶら下がってるぞ?」
谷のホビット2「これ…どう考えても自然にちぎれたんじゃないよな?」チョンチョン
谷のホビット1「うん、明らかに刃物かなんかで切られてるな。
杭に掛けた縄と後ろの樹木に繋いだ蔓がスッパリ切られて支えを無くした橋が崩れたんだ」
谷のホビット2「誰がこんな事したんだ!チキショー!」
谷のホビット3「谷底で族長達が様子見に行ってるけど…怖いな。もし誰か落ちてたら助からないよ、こんなの」
谷のホビット1「うん…。普段はそんな気にしてなかったけど意外と高くて深いんだな…」
谷のホビット2「…誰のイタズラにしろ許せないな」
谷のホビット4「おーい!」タタタッ
谷のホビット1「ん?おぉ、どうした?」
谷のホビット4「た、大変だ!族長の娘さんが…!」
谷のホビット1「娘さん?今、なんか仲悪くなって別々に暮らしてんだろ?」
谷のホビット2「俺は病に倒れてるって聞いたぞ?」
谷のホビット3「いやいや、もう治ったって聞いてるよ?」
谷のホビット4「いいから谷底に来てみろ!!」
谷のホビット1、2、3「???」
470: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/13(金) 21:59:26 ID:w.7DrG1zg2
―――谷底(川の岸辺)―――
ザァァァァア ザァァァァア
シヴァ「……」
イフィート「うっ…おおおおおぁぁぁぃぅ!!!」ブンッ
ボッシャン!
ザワザワ ザワザワ
イフィート「おらぁぁあああ!!!どいつだ!?出てこい、オラァ!?」ザバッザバッ
谷のホビット6「い、イフィート族長…落ち着いてくだ……」
イフィート「るせぇ!?落ち着けっかよぉ!?」ザバッ
谷のホビット6「ひゃっ!?ちべたっ!?」バシャッ
谷のホビット7「ぞ、族長…風邪引いちゃいますよ?」オロオロ
谷のホビット4「連れてきました!」タタタッ
シヴァ「……」ジロッ
谷のホビット1「あ、あの…僕らは吊り橋を見てきたんですが…だ、誰かに縄を切られてました」オドオド
シヴァ「そうか」
谷のホビット2「本当なんすか!?族長さんの娘夫婦が転落したって!?」
シヴァ「まだ夫婦ではない」
谷のホビット2「え?」
シヴァ「これからなる筈だったのだ…」ジーッ
死体×2「」
谷のホビット1、2、3「……!?」ゾクッ
471: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/13(金) 22:02:46 ID:l5W1Sce4Lg
谷のホビット1「一体誰が……!?」
イフィート「ちくしょうっ!!ちくしょうっ!バッカヤローめ!?」ザバッザバッ
シヴァ「いい加減にしておけ、イフィート!お前が取り乱してどうする!?」ガシッ
イフィート「ぐっ…!お前こそ、よく落ち着いていられるな!?」バッ
シヴァ「落ち着いてなどいるものか…!儂もお前と同じ気持ちだ!?」カッ
イフィート「……!」
シヴァ「族長である儂らが冷静さを欠いてはならない!?
見ろ!皆も怯えて動けずにいるぞ!?」
谷のホビット's「」ビクビク
イフィート「……分かってらぁ!?クソが…!」ググッ
シヴァ「まずは二人の亡骸を弔ってやるのが先だ。
誰の仕業かは…ここで悔やんでも分からぬ!」ギリッ
イフィート「クッソがぁ!?」ザブンッ
シヴァ「…亡骸を谷間の墓地に埋葬したい。
駆け付けてくれた皆は度々になるが手伝ってもらえぬか?」
谷のホビット1「も、もちろん!」コクコク
谷のホビット4「追悼の儀を行うんですか…?」
シヴァ「そうだ」
イフィート「……!」ワナワナ
シヴァ「それから…皆にもこの事を伝えてやってくれ。谷間の墓地で準備に取り掛かるとな」
谷のホビット2「じゃあ俺が…!」ダッ
シヴァ「すまないな」
472: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/13(金) 22:05:16 ID:w.7DrG1zg2
谷のホビット3「あ、あのぉ…今夜じゃなくても…しばらく休んだ方が…き、気持ちの整理とかあるでしょうし…?」オズオズ
谷のホビット4「バカ!余計な気休めを言うな!一番辛いのは族長なんだぞ?」
谷のホビット3「あ、そっか…。すみません」
シヴァ「謝る事はない。儂の方こそ気を遣わせてすまんな」
谷のホビット3「い、いえ…じゃあ御遺体を運びましょうか」チラッ
シヴァ「あぁ…イフィート!いつまでそうしているつもりだ?」ジロッ
イフィート「ふ……へへへ」プルプル
谷のホビット's「」ビクッ
イフィート「へっ…わかってるよ。死んじまったんじゃ、どうにもなんねぇもんな?」チャプッ
シヴァ「……」
イフィート「へっ…へへ…クククク!」ヘラヘラ
谷のホビット's「」ズーン
473: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/13(金) 22:07:02 ID:w.7DrG1zg2
〜〜〜夜〜〜〜
―――谷間の墓地―――
ボッ ボッ ボッ ボッ
シヴァ「灯りが少ないな。もっと火を焚いてくれ」
谷のホビット1「は、はい!みんな!その辺にある枝の先に種油を染み込ませろ!松明の火に当てて明かりを灯すんだ!」バッ
ザザザッ バッバッ ボォォォウ
イフィート「へへ…へへへ……」ヘラヘラ
谷のホビット10「い、イフィートさん!しっかりしてくださいよ!」アセアセ
イフィート「はっはは…良かったなぁ、バカヤローが…式なんかより、よっぽど賑わってんじゃねぇか?」ブツブツ
谷のホビット10「イフィートさん!気持ちは分かるが、うちの族長がそんなんじゃメンツが立たないよ!」アセアセ
イフィート「本当はよ…。みーんな興味ねぇんだよ。
どんなやり方だろうが、どこでやろうが…どっちだっていいんだ…」ブツブツ
谷のホビット10「大丈夫かよ…。全然聞いてくんないぞ?」アセアセ
谷のホビット11「…そりゃそうだろうさ。だって…こんな時に死ぬこたぁねぇだろ」
谷のホビット12「族長の息子さん…まだ若いのに頼りがいがあって狩りもうまかったもんな」
谷のホビット13「う、うぐぅ…お、俺も辛いよ!?
あいつとは小さい頃から野山を駆けずり回って…岸辺で釣りしたり、どっちが獲物を多く取れるか競ったり…楽しい思い出がたくさんあったんだ…!」グスッ
谷のホビット14「くぅっ…!俺もだ!あいつ…もうすぐ自慢の嫁が出来るなんてはしゃいでたのによぉ…!」グシグシ
谷のホビット16「俺達がこんだけ辛いんだ…。あっちの集落もそうだろ。
あの彼女さんと色んな思い出があって…みんな声を殺して偲んでる」
谷のホビット15「この谷で死者が出たのは久しぶりだな…。俺達の寿命じゃそうそう不運でもなけりゃ…」
イフィート「へ、へへ…へへへ…指輪だのぶっチューだのくだらねぇ…どうだっていいや…」ブツブツ
谷のホビット10「うぅ…しっかりしてくれよ!」アセアセ
イフィート「おめぇらが満足なら…それで幸せになれるってんなら、俺ぁなんだって良かったんだ…。この親不孝モンが……」ブツブツ
谷のホビット10「い、イフィートさん……」
474: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/13(金) 22:10:21 ID:l5W1Sce4Lg
シヴァ「よし…灯りは十分だな。では追悼の儀に移……」
族長の妻「あなたっ!!」タタタッ
谷のホビット1「あ、奥様!」
族長の妻「連れてきたわよ!!」グイッ
カロル「……?」オロオロ
母「な、なんなんですか?急に…?」
シヴァ「まだ来ていなかったのか…。しかし二人を呼んだ覚えはないぞ?」
族長の妻「だって娘達が死んだんでしょ?治してもらわなきゃ?」
ザワッ
シヴァ「何を言ってるんだ?そんな事より集落の問題に二人を巻き込むのはよさぬか?」
族長の妻「あなたこそ何を言ってるの?治さなきゃダメじゃないの?」
ザワザワ ザワザワ
谷のホビット2「な、治すって…死んじゃったのにどうやって治すんだ?」コショコショ
谷のホビット3「奥さんまでイフィート族長みたいにおかしくなっちゃったのかな?」コショコショ
シヴァ「おかしな妄言はよせ。現実を受け止めろ」
族長の妻「なんで?娘がいないと式も挙げられないじゃない?あんなに楽しみにしてたのよ?」
シヴァ「…落ち着け!娘達は死んだのだ!?」
族長の妻「癒しの力があるじゃない!?死んでも治せばいいじゃない!?」
シヴァ「死者は生き返ったりしない!分かるだろう!?」
谷のホビット1「癒しの力…?」
谷のホビット4「あ、あんな言い伝えを信じてるのか?」
谷のホビット5「大体、もしあったって誰が使えるんだ、そんなの?」
谷のホビット6「やっぱり相当参ってるんだな…。かわいそうに?」
475: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/13(金) 22:13:51 ID:w.7DrG1zg2
族長の妻「ねぇカロルちゃん!そうでしょう!?」クルッ
カロル「」ビクッ
母「……お、奥さん?」オロオロ
族長の妻「生き返らせてくださいな!?なんでもするから!ね?いいでしょう!?」ガッ
カロル「っ…!」キュッ
母「や、やめてください!ムチャ言わないで!?」アセアセ
族長の妻「娘を見殺しにする気!?」グワッ
母「ひっ…!」ゾクッ
ザワザワ ザワザワ
シヴァ「すまないな、皆の者。見て分かるように妻は錯乱している。誰か儂の家まで送ってやってくれ?」
谷のホビット1「は、はぁ…分かりました。奥様、一旦集落に戻りましょうか」スッ
族長の妻「触らないで!あたしはおかしくない!?」バシッ
谷のホビット1「お、奥様…?」オロオロ
シヴァ「…もういい。儂が付き添って帰そう。構わず追悼の儀を始めてくれ」スタスタ
谷のホビット1「あ、はい…」オロオロ
族長の妻「…あなたまであたしをおかしいと思ってるの?」ジロッ
シヴァ「…冷静になれ。今のお前は正常ではない」ガシッ
族長の妻「離し…なさいよっ!?」バッ
シヴァ「……!」タジッ
族長の妻「自分の娘が死んだって聞かされて冷静でいられる…?そんな簡単に諦められるの…?」
シヴァ「…その問答はイフィートともした。だが…どうにもなるまい?」
族長の妻「どうにかしてよ。あなた父親でしょう?」
シヴァ「……」
族長の妻「癒しの力が知られたっていいじゃない。それで娘が帰ってくるなら……」
シヴァ「我らの都合にあまり彼らを付き合わせるな…」
族長の妻「病気なら良くて死んだらダメなの?どうしてよ!?」カッ
476: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/13(金) 22:17:22 ID:w.7DrG1zg2
族長の妻「ねぇ!?出来るわよねぇ!?癒しの力にかかればお茶の子さいさいでしょうよ!?」グワッ
カロル「」フルフル
族長の妻「え…?」ピシィッ
カロル「助けられるなら、そうしてあげたい…。でも……できないんだ?」シュン
族長の妻「なん…で…?」グワングワン
カロル「ボクにもわかんない…。この力がなんなのかも、よく知らないから…」
族長の妻「そんな……」ヨロッ
シヴァ「……!」グッ
カロル「…ごめんなさい」
シヴァ「いいんだ…。最初から分かってた。だから何も言わず弔おうとしたんだ…!」
族長の妻「娘は…帰ってこないの?式……楽しみにしてるのよ…?」ヘタァ
カロル「」ズキンッ
母「っ……」プイッ
族長の妻「あ、ふ…あうぅぅ……」ズシャッ
族長の妻「あぁああああ!!!」ポロポロ
シヴァ「……」
谷のホビット1「あ、あの…族長?癒しの力って本当に…?」
シヴァ「妻の妄言だ」
谷のホビット2「でも…その少年が…?」
谷のホビット3「い、癒しの力があるの?」マジマジ
シヴァ「落ち着かせる為に話を合わせただけだ」
族長の妻「嘘よ!そんな…嘘だって言ってよ!本当は治せるんでしょう!?
いじわる言わないで治してよ!なんだってするから…お願いよ!?」ガバッ
カロル「」オロオロ
族長の妻「ひっ……あぁあああ!!」ダンッダンッ
カロル&母「……」シュン
477: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/13(金) 22:19:50 ID:l5W1Sce4Lg
族長の妻「うぅっ…ひっ…ひっく……ひぃん………」メソメソ
シヴァ「…諦めよう。これ以上、騒ぎ立てれば娘たちも安らかに眠れまい?」サスッ
番頭「お、お待ちを…!」ザッ
シヴァ「…む?お前も来ていたのか?」
番頭「あるんです!この子には癒しの力が!」
シヴァ「お前まで何を言い出すんだ?」ジロッ
番頭「さっき全身に布を纏って変なお面をした怪しい人間が宿を襲ったんです!
その時に毒みたいな物を使われて倒れたんですが…この坊っちゃんが治してくれました!」
シヴァ「なに…!?」
番頭「本当なんです!信じてください!」
シヴァ「そ、そうなのか…?」
カロル「う、うん…話したよね。ボクを狙ってる人間たちがいるって?」
シヴァ「お、王国の人間か!?」
カロル「分かんない…。前に襲ってきた人間じゃなかったよ?」
シヴァ「なんということだ…。ここが邪悪な人間の目に触れてしまうとは…!」
カロル「…ボクたちは出てくね?族長さまたちには迷惑かけないから…」
母「身支度も整えましたし道筋だけ教えてもらえればイカダじゃなくても…?」
シヴァ「う、うむ…。世話になっておいて申し訳ないが…そうしてもらえると助かる。
後でイカダを用意するので追悼の儀が終わるまで待っていてくれないか?」
母「い、いえ…あの…イカダじゃなくても……」アセアセ
カロル「わかりました」コクンッ
シヴァ「すまんな…」
母「(や、やっぱりそうなっちゃうのね…)」ガーン
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