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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


432: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:32:25 ID:Ix/8/HR8zU
ワチャワチャ イチャイチャ

シヴァ「……」

カロル「なんとかなってよかったね!」

母「ふふ…どうですか?今のお気持ちは?」ニコニコ

シヴァ「…とても嬉しい。拙いが…今はそれしか感じられぬ」

母「それで十分ですよ?」ニコニコ

シヴァ「そうだな。この気持ちで十分だ…。君たちには感謝してもし足りない」

カロル「ううん?ボクたちもいっぱい楽しい気持ちもらったから、おあいこだよ?ね、お母さま!」

母「そうね?お返しできて本当によかったわ?」

シヴァ「ふむ。こうして娘の無事な姿を見て…改めて少年の言葉の意味が分かった」

シヴァ「変化を恐れていては何もなし得ない。時には何かを失いかけても求めねばならない場面があると」

カロル「……う、うん!そうだよ!」アセアセ

母「…どうしたの?」

カロル「…思いつきで喋っちゃったから、そこまで考えてなかったの?」コショコショ

母「」ガクッ

シヴァ「あなたにも礼を言いたい」

母「へ?あたしはなにも…?」

シヴァ「親として欠けている物を教わった。これからは今まで以上に娘を大事にしようと思う」

母「…そうですか」ニコッ
433: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:34:07 ID:Ix/8/HR8zU
マルク「あぅー」ジーッ

母「? なにを見て……あらあら」クスッ

カロル「あはは!すっごくなかよしだね?」ニコニコ

婚約者「もう離さないからなぁ!?」ズリズリ

族長の娘「あーやめてよ、気色悪い!?さっきからなんなの!?」グッグッ

シヴァ「はっはっは…!集落へ戻るか。ここにいては二人の熱が冷めぬだろう」

母「それもそうね?娘さんにもちゃんと説明してあげなきゃ?」

シヴァ「うむ。かなり歩くが大丈夫そうか?」

母「…あのイカダはいいんですか?」

シヴァ「あぁ…あれは分解して持っていく。荷を軽くせねば山越えは出来んからな」

カロル「えぇ!?あんなにおっきい丸太持てるの!?」

シヴァ「見た目ほどではないさ。クォルタの木は丈夫でしなやかだが繊維が細く、普通の木の4分の1程度の重さしかないのだ」

カロル「へぇ…すごーい!ボクも持てるかな?」

シヴァ「うむ。一本であればなんとか持てるだろう」

母「そんな便利な木があるのねぇ…。旅の参考になるわ?」

シヴァ「人間のように鉄や石を加工する術や様々な物を組み合わせる技術はないが…我らには我らの知恵があると言う事だ?」

母「ふふ。とても頼もしいですわね?」

シヴァ「…うむ。だが人間の知恵も立派なものだ。我らと人間で何か一つの物を産み出せれば、互いの生活も素晴らしく豊かになるだろう」

母「…それってもしかして、これからは人間を認めるんですの?」

シヴァ「そうは言っていない。まだ考えに留めるが…谷に戻ってからじっくりと煮詰めよう」

シヴァ「族長として皆を導く為にも…変化に対応していかなければな」

カロル「……!」パァァ

母「……」ニコニコ
434: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:30:47 ID:Xsg4vDSHiM
〜〜〜朝〜〜〜

―――谷間の集落(族長の家)―――

族長の妻「ほんっ……とうに申し訳ございません!!!」ガバッ

母「や、やめてください!?そんな事されても困ります!?」アセアセ

族長の妻「わ、私ったら取り乱してひどい事を…」

カロル「気にしてないよ?」

母「娘さん達も無事に戻ってきたんですし、もういいじゃありませんか?ね?」

族長の娘「そうだよ、母さん?もういいって言ってんだからいいじゃん?」

族長の妻「どの立場で言ってんのよ!あんたのせいで、こっちはどんだけ心配したか……」

族長の娘「ごめんね、うちの母さんって昔からこうなのよ!なんかあると、すぐヒステリー起こしてさ…」

母「まぁまぁ?お母さんもすごく心配なさってたのよ?」

族長の妻「はぁ…あんたって子はどこまで人騒がせなんだか…!
人間みたいに教会で式を挙げたいって言い出したり、急に訳の分からない病に倒れたりさ…!」ブツブツ

族長の娘「あーうるさいな、もう!かわいい娘が帰ってきたんだから説教なんてやめてよ!」

族長の妻「母親に向かってうるさいって何よ!?」

ギャーギャー

母「あらら…」

カロル「あむっ!おいひっ!」カリィッ

母「あら、なにそれ?」

カロル「山越えの時に族長さまがおやつくれたの!プレーンナッツ!」モグモグ

母「へぇ…おいしそうね?」

カロル「おいしいよ!お母さまも食べてみて?」ゴソゴソ スッ

母「ん、ありがとう?」カリッ
435: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:33:49 ID:Xsg4vDSHiM
族長の妻&娘「」ハッ


カロル「ね?おいしいでしょ?」ニコッ

母「うん、歯ごたえがよくて……あら?」

カロル「へ?」キョトン

母「口に粒が残ってる?取ってあげるから動かないで?」ヒョイッ

カロル「えへへ…ありがとう!」

母「」パクッ

カロル「あ…口に付いてたから汚いよ!」

母「あたしのかわいい坊やに汚い所なんてないのよ?」ニコッ

カロル「!」カァァ

母「おいしかったわね?いいおやつが貰えてよかったじゃない?」ナデリ

カロル「う、うん…」モジモジ

母「どうしたの?」

カロル「な、なんでもないよ?」テレッ

母「まぁ?お母さんに隠し事は通用しないわよ?」ニヤリ

カロル「そ、そんなんじゃないったら?」

母「じゃあなんで落ち着かないの?」

カロル「えっと…あ、あのね。その…ボクもだよ?」

母「……?」

カロル「ぼ、ボクもお母さまの口に付いたのなら食べれるよ!お母さまは汚くないもん!」

母「……そ、そこは別に張り合わなくてもいいんじゃないかしら?」

カロル「ううん。だから…ボクもそのぐらいお母さまのこと好きなの!」

母「まぁうれしい?でも平気よ?言われなくても知ってるから?」ニコッ
436: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:36:40 ID:Xsg4vDSHiM
イチャイチャ イチャイチャ

族長の娘「すごい仲いいじゃん…?母さんも少しは見習ったら?」

族長の妻「あんたもね?それにしたって難しい年頃でしょうに…よくなついてるのねぇ?」

族長の娘「なんか親子ってよりは恋人みたい…?」

族長の妻「まぁマリーさんはあたしより全然若いしねぇ…。お似合いっちゃお似合いだけど…」

族長の娘「似合っちゃダメでしょ……あ、そういえば父さんたちは?」キョロキョロ

族長の妻「え?あぁ、隣集落の集会所でお話中よ」

族長の娘「話…?」

族長の妻「ほら、あんたが式したいって言ってたでしょう?
あんな事になっちゃったし…お父さんも考えが変わったんじゃないの?」

族長の娘「ほんと!?」パァァ

族長の妻「婚約者さんとイフィートさんと三人で相談してるんですって?」

族長の娘「こうしちゃいらんない!私も一緒に決めなきゃ!」ダッ

族長の妻「!? ちょ、ちょっと!まだするとは言ってないわよ!?」

ガチャッ バタンッ

族長の妻「はぁ…そそっかしいったらありゃしない。まぁ無事だったからいいけど?」
437: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:39:08 ID:aotAc0vzsc
―――隣集落の集会所―――

婚約者「…すみませんでした。早とちりしちまって…」ショボン

シヴァ「まったくだ…。しかし…そうか。人間の町でそんな目に…」

イフィート「ちゃんと事情を説明したのか?」

婚約者「したさ!だけど…話も聞いちゃくれなかった!」ギリッ

シヴァ「だろうな」

婚約者「お義父さんの言う通りでしたよ。反省してます…」

イフィート「まぁな〜…噂なんかあてにならねぇし、実際はそんなもんか?」

シヴァ「…そう簡単に変われるものか。染み着いた差別感情は根が深い」

イフィート「でもよ〜…お嬢さんは知らんのだろ?」

婚約者「ま、まぁ…寝てたっていうか…意識もなかったし…」

イフィート「じゃあまだ式にこだわってんじゃねぇの?なんて説明すんだよ?」

シヴァ「あの夜に起きた出来事をありのままに伝えてやればいい」

イフィート「はぁ!?」

婚約者「そ、それはいくらなんでも…!?」

シヴァ「なんだ?」

イフィート「お、おめぇなぁ…!無神経も大概にしろよ!?」

婚約者「あいつがどんだけ人間に憧れてるか知ってんでしょう!?」

シヴァ「うむ。なおさら教えてやらないとな」

婚約者「そ、そんなん話したらショックで引きこもっちゃいますよ!」アセアセ
438: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:42:04 ID:Xsg4vDSHiM
シヴァ「…憧れているのなら知るべきだ。自分の夢見る物がどれ程の険しさを伴うか…」

婚約者「え?」

シヴァ「傍目に見れば美しく煌めく景色も…奥へ踏み入れば理想が陰る。
そこから目を背けていては実る物も実らない」

婚約者「理想が……陰る…。まぁ…そうっすね…」ガクッ

シヴァ「それでも望むのであれば…これ以上は口を挟まん。好きにさせてやる」

婚約者「!?」

イフィート「お?式をやらせてやんのか?」

シヴァ「望むのであればな…」

イフィート「いきなり気が変わるたぁらしくねぇな?どうしたんだ?」

シヴァ「…儂も親だからな。娘のワガママを聞いてやりたくもなる」

イフィート「ガハハハ!お前もようやく親らしくなったか!お嬢さんも大喜びだろうぜ?」

婚約者「で、でも…俺はもう……」

シヴァ「大丈夫だ。儂らが付いている」

婚約者「え?」

シヴァ「理想に届くかは分からんが…理想に近付ける努力はしてみろ。
女の幸せは男の甲斐性にかかっているんだぞ?」

婚約者「……!」ゴクリ

イフィート「へっ…たまにはそれっぽいことも言えんだな?」ニシシ

シヴァ「たまにとはなんだ、たまにとは?」

婚約者「……俺、絶対あいつを幸せにしてやります!」グッ

シヴァ「今さら言うまでもないだろう」

婚約者「え……」

シヴァ「お前なら娘を幸せにしてくれる。そう認めていたからこそ交際を許したんだ?」ニコッ

婚約者「…お、お義父さん」ウルッ

シヴァ「娘を頼むぞ?」ポンッ

婚約者「うぅ…は…い」グスッ
439: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:44:05 ID:aotAc0vzsc
イフィート「ガハハハ!泣くんじゃねぇよ、みっともねぇ!
頼まれたんだから、もっとシャンとしろっての!」バンッ

婚約者「う、うるせぇな…!分かってるよ!」グシッ

イフィート「なぁシヴァよ!めでたい話も出たことだ!まだ昼間だが男三人で盃を交わさねぇか!?」

シヴァ「そうだな。ちょうど儂の集落で作っている地の物が仕上がる時期だ。祝いに振る舞おう」

婚約者「お、俺もらってきます!」スクッ

シヴァ「おぉ、すまんな。慌てなくていいぞ。
集落を繋ぐ吊り橋も古くなり、縄や板もだいぶ傷んでいるからな。気を付けて行け?」

婚約者「はい!」

イフィート「つまみも貰ってこいよ!」

婚約者「つまみなんか、こっちのでいいだろ!じゃあ行ってくる!」ガチャッ

バタンッ

イフィート「ちぇっ…息子のくせに生意気だな。誰に似たんだか?」

シヴァ「お前しかいないだろう」

イフィート「はぁ!?俺はあんなんじゃねぇよ!?」

シヴァ「瓜二つだ」

イフィート「ふざけんじゃねぇ!俺はもっとたくましかったってんだ!」

シヴァ「ふ……」クスッ

イフィート「な、なんでにやけんだよ?」

シヴァ「こういう変化は悪くないな」

イフィート「……?なんだ、そりゃ?」キョトン
440: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:50:41 ID:aotAc0vzsc
―――谷間の吊り橋―――

族長の娘「うふ!頑固な父さんが許してくれるなんて!」タタタッ

ブラーン ブラーン ヒュールルル

族長の娘「あぁ…やっと夢が叶うんだ」ギシッ

族長の娘「衣装も考えなくちゃ!人間のドレ…ドレ…ドレッシングだっけ?なんかそんなのだよね!」ギシッギシッ

族長の娘「指輪とドレッシングでオシャレして…ち、誓いの…キス」ボッ

族長の娘「いっやーん!」ブルンブルン

スパッ ブチッ ガクンッ

族長の娘「きゃっ!?」ガシッ

グラングラン グラングラン

族長の娘「な、なに!?どうなってるの!?なんで風も強くないのに揺れ……」クルッ

魔導師「やあ、会えて嬉しいよ?」チャキッ

族長の娘「な、縄を切って…!なにするのよ!?危ないじゃないっ!?」

魔導師「まずは君の幸運に祝福を…」パチパチ

族長の娘「っていうか誰よ!?ま、まさか人間なの!?」ググッ

魔導師「そして度重なる不運に哀れみを込めて…」スッ

族長の娘「やめっ…!」ゾクッ
441: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:54:14 ID:aotAc0vzsc
魔導師「…うそうそ?まだ切らないよ?」ピタッ

族長の娘「っ……はぁっ!はぁっ!」ドキドキ

魔導師「んふふ…んふふふふふふ」プルプル

族長の娘「お願い…!やめて…!私はホビットだけど人間を憎んだりしないわ!?」

魔導師「楽しいなぁ…うーん、楽しいよぉ…?」ジッ

族長の娘「」ビクッ

魔導師「今まで生きてきて考えたりした?こんな状況?」

族長の娘「」ブンブンッ

魔導師「だよねぇ…?思わないよねぇ?こんな縄一本に命を預けるなんて?」ニタニタ

族長の娘「わ、私が…何をしたの…?あなたに…迷惑かけた?」ブルブル

魔導師「……?」キョトン

族長の娘「大好きな人と…もうすぐ夢だった式を挙げられるの…。私…絶対に死ねないの…!」ギュッ

魔導師「……」

族長の娘「こんな事やめて…刃物を捨てて?お願いだから……」

魔導師「ごめんよ?」

族長の娘「……!わ、分かってくれたのね?」パァァ

魔導師「……」

族長の娘「え…?」

魔導師「不幸はいつもお構い無しに理不尽を叩き付ける…。
偶然にしろ、運命にしろ、出会ってしまった以上は避けようがないのさ…?」ギランッ

族長の娘「そ、そんな…あなたのさじ加減じゃない!?」
442: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:57:36 ID:Xsg4vDSHiM
魔導師「さてさて、さてさて、さてさてと?
まだ遊びたいなぁ…でも長引くのはヤだし、そろそろ聞いてしまおうかなぁ?」

族長の娘「な、何よ…!?」

魔導師「君に放った呪術が解けてるよねぇ?どうやって治したんだい?」

族長の娘「な、なんだっていいじゃない!?それより放ったってどういう意味…!?」

魔導師「答えたら助かるよ?」

族長の娘「ほんと!?」

魔導師「うんうん、ほんとほんと?運命は自分次第で変えられるよ?」ニタニタ

族長の娘「か、カロルくんが治してくれたの!癒しの力で!!」

魔導師「……!」ピクッ

族長の娘「う、嘘じゃないの!信じて!?」

魔導師「んふ…んふふ…ンゥフフフフ」プルプル

???「おい!?俺の彼女に何してんだ!?」

族長の娘「……!?あっ!?」

婚約者「大丈夫か!?今、助けてやるからな!?」ギシッ

族長の娘「き、来ちゃダメ!?縄を切られたらあんたも……」

婚約者「だったら縄を切られる前に向こう側まで行って、あの薄気味悪い布野郎をぶっ飛ばしてやる!?」ギシッギシッ

グラッグラッ

婚約者「うおっと!?」ガシッ

族長の娘「きゃあっ!?」ガシッ
443: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 23:08:03 ID:Xsg4vDSHiM
族長の娘「む、ムチャしないでよ…!私はいいから、あんただけでも戻って!?」グラグラ

婚約者「ば、バカ言うな!お前が危ないのに…じっとしてられっかよ!」ギシッギシッ

族長の娘「いいって!ほんとにいいから!」グラグラ

婚約者「うるせぇ!!」

族長の娘「」ビクッ

婚約者「惚れた女も助けらんねぇで…夫が務まるかよ!?」ギシッギシッ

族長の娘「〜〜〜!」ジーン

婚約者「すぐ行くから待ってろ!」ギシッギシッ

魔導師「お嬢さん。癒しの力はどこにいるんだい?」

族長の娘「そ、それどころじゃ…!」グラグラ

魔導師「切ろうか」スッ

族長の娘「わ、分かったわよ!言うから!集落の一番高い場所にある大きな家よ!そこにいるの!!」アタフタ

魔導師「あ、そう…」

族長の娘「教えたんだからもうどっか行ってよ!?そこにいられると怖くて渡れないんだけど!?」

魔導師「んふふ…やったぁ…!陛下に頭撫でてもらえる…!」ルンルン

族長の娘「…!?」ゾゾゾッ

婚約者「……い、今ならあいつの気も逸れてる!一気に駆けるぞ!」ダッ

族長の娘「え!?ちょっ…走ったら揺れ…!?」グラグラ

ザスッ

族長の娘「?」ヒュッ

婚約者「え?」ヒュッ

ガラガラガラガラ ブオオオン

ザバザバザバッ バッシャァァァン!!

ヒューン ゴシャッ バスンッ

魔導師「んふふ…いい音。これならみーんな大騒ぎして駆け付けるかなぁ?」ジーッ

魔導師「癒しの力…楽しみだなぁ…?」スタスタ
444: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 20:52:05 ID:WAMP9I3Be6
―――谷間の集落―――

ワラワラ ワラワラ

谷のホビット1「な、なんだなんだ?向こう側からスゲー音がしたぞ?」

谷のホビット2「ありゃ吊り橋の方角だな。もうだいぶ古かったし崩れたんじゃないか?」

谷のホビット3「く、崩れた?じゃあ誰かが通ろうとして落ちたんじゃ…!?」

谷のホビット4「えっ!?そ、そりゃまずい!?」

谷のホビット5「ぞ、族長や他の連中にも知らせよう!」

バラバラ バラバラ

谷のホビット6「な、なんてこった…!向こうの集落と繋ぐ唯一の橋だぞ!?
あれがなきゃ集落同士の繋がりが途絶えちまう!?」

谷のホビット7「う…!い、衣類の糸は向こうに分けてもらったカイコでまかなってたし困るな…!」

谷のホビット8「そこは問題ないよ。イカダで谷底の川を渡っていけばいいんだから」

谷のホビット6「にしたって不便だよ!」

谷のホビット9「そんな事よりケガ人がいたら大変だ!様子見に行くぞ!?」

谷のホビット7「それもそうだな!」

ダダダダダダダッ

445: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 20:53:30 ID:M97GWVJjkM
―――族長の家―――

バァンッ!

谷のホビット5「た、大変だ!族長!」ゼェゼェ

族長の妻「わっ!なによ、びっくりした…?」

谷のホビット5「ぞ、族長は!?」

族長の妻「隣の集落に行ってるけど?」

谷のホビット5「えぇ!?と、隣の!?」

族長の妻「ずいぶん慌ててるわね?どうしたの?」

谷のホビット5「大変なんだよ!向こうの谷と繋ぐ吊り橋が崩れたかもしれないんだ!?」

族長の妻「橋が?いくら古くなったとは言っても集落同士で協力して手入れしてるし縄や板も何度か代えたり修繕してきてるじゃないの?」

谷のホビット5「お、俺も分からないけど…とにかく見に行こうよ!誰かケガしてたら大変だ!」

族長の妻「大変、大変ってせわしないわねぇ。もうちょっと落ち着けないの?」

谷のホビット5「だ、だって大変じゃんか!?」

族長の妻「大丈夫よ?本当に崩れてたら、向こうの集落も気付くだろうから主人とイフィートさんも駆け付けてるでしょうしね?」

谷のホビット5「そ、そっか…!族長がいるなら安心だ!」

族長の妻「ケガ人はあの親子に頼めばなんとかなるし…」ボソッ

谷のホビット5「じゃあ俺も……なんか言った?」

族長の妻「え?あ、なんでもないけど…?」アセッ

谷のホビット5「あぁ、そう?じゃあ行ってくるよ!」ダッ

族長の妻「……いってらっしゃい」
446: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 20:55:49 ID:WAMP9I3Be6
グツグツ コトコト

族長の妻「(…あんなに恐ろしい病を一瞬で治す力なんてどこにもない。
お二人は旅立つと言ってたけど出来れば、ここに残ってほしいわ)」

族長の妻「(夫は異常にアピシナ様の昔話を不安視しているけど悪用しなければ平気よ?
集落の住民達もケガや病に怯えずに済むし、良いことしかないじゃない?)」

族長の妻「(なんとか引き留めなくちゃ…とりあえず娘の式に参加してもらいたいから、もうしばらく滞在するようにって頼んでみましょ)」

族長の妻「夕食に招待して話そうかね。
今夜はとびきり美味しい料理で二人をもてなさなきゃ!」テキパキ

コンコンッ コンコンッ

族長の妻「どなた?橋の件なら、さっき聞いたわよ?」テキパキ

「カロルはいるかい?」

族長の妻「カロルちゃん達なら今は下のお宿で荷造りしてるわよー?」テキパキ

「あ、そう」

スタスタ スタスタ……

族長の妻「……ん?今の誰?」クルッ

タッタッ ガチャッ

シーン

族長の妻「誰も…いない?」

族長の妻「気のせい…なのかねぇ?」

グツグツ プシュー

族長の妻「あ!?お鍋が煮えちゃう!?」タッタッ
447: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 20:58:36 ID:WAMP9I3Be6
―――渓谷の温泉宿―――

カロル「お母さま!荷造り終わったよ?」

母「ふふ、大きい物もないし持っていく数も少ないから楽チンよね?」パッパッ

カロル「族長さま達に挨拶したら、またイカダで送ってくれるんだよね?」

母「えぇ。そう言ってたわね…。はぁ…酔わないか心配…」

カロル「ボクは楽しみ!すっごく早くてグラグラして面白かったよ!」

母「そう…。あたしはちょっぴり苦手かも…」

カロル「マルクも楽しみでしょ?」ナデリ

マルク「ワンッワンッ!」シッポフリフリ

母「男の子は好きねぇ、ああいうの…。
それにしても…ここの温泉、すっかり気に入ってたのに…離れるのがもったいなく感じるわ…?」

カロル「また来ようよ?みんなにも教えてあげたら、きっと喜ぶよ?」

母「ふふ…そうね。シヴァさんも少しだけ人間への認識を改めようとなさってるみたいだし今度来る時は坊やのお友達も連れてこれるかも?」

カロル「うん!みんなで入ったら、もっと楽しいよね?」

母「あ、でも泳いじゃダメよ?
あの時は真夜中で他に誰もいなかったから良かったけど…本当はお風呂で泳ぐのは行儀が悪いのよ?」

カロル「そ、そうだったの?」アセアセ

母「それにもしかしたら犬を入れるのも禁止だったでしょうし…」

カロル「え?マルクは入っちゃダメなの?」

マルク「ワゥンッ!?」ガーン

母「えぇ、たぶんね?今度来た時は普通に入りましょう?」ニコッ

カロル「はーい!」

マルク「クゥン……」シクシク
448: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:00:14 ID:M97GWVJjkM
コンコンッ コンコンッ

母「あ、はーい?」

ガララッ

番頭「」ヨロッ

母「あら、番頭さ……え?」ビクッ

カロル「っ…!?」

マルク「ワンッ!?」

番頭「」バタッ

カロル「わ、わわっ!?だいじょうぶ!?」バッ

母「こ、これって娘さんと同じ…!?」

マルク「わふっ!?」ツーン

フワッ

番頭「……あ、あれ?うちは何を…?」ムクッ

カロル「よ、よかった」ホッ

マルク「ブルルルルっ!!」ブルンブルンッ

母「…マルク?」

マルク「ウゥゥゥ……」ツーン

カロル「イヤな匂いがするの…?」

マルク「」コクコクッ

番頭「」ハッ

番頭「に、逃げてください!?」アタフタ

母「な、なにがあったんですの?」オロオロ

番頭「は、早く!?またあいつが……」

母「あいつ…?」キョトン
449: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:03:05 ID:M97GWVJjkM
シュコォォォウ

番頭「あ、あぐぅ…ま、また…!」クラッ

母「っ…な、なんなの?急に……体が重く…!?」ググッ

マルク「わ…ぅぅん!」ググッ

カロル「へ?みんなどうかしたの?」オロオロ

番頭「は…やく……に………げ…………」バタッ

母「わ…からない…。なに…が……っ」バタッ

マルク「くぅ……」ズシンッ

カロル「!?」ギョギョッ

カロル「お、お母さま!マルク?番頭さんっ!?」バッ

タンッタンッ

カロル「」ビクッ

魔導師「んふふ…見ぃつけた?」ニギニギ

カロル「お、お面した…布のおばけさん?」キョトン

魔導師「なんでもいいじゃないの?名称に価値はないさね?」クックッ

カロル「……!お母さまたちになにしたの!?」キッ

魔導師「教えてあげるから耳を貸してごらん?」チョイチョイ

カロル「え?は、はい…?」スッ

魔導師「」グワシッ

カロル「わっ…!?うむっ!?あぐっ!?」ジタバタ

魔導師「」グッグッ

カロル「うっ…えっ!ぇほっ!ぇほっ!」ウルッ

カロル「(の、喉に指が入って…き、きもちわるい!?)」オエッ

魔導師「んふふ…どうかなぁ?これでも?これでも?」グッグッ

カロル「うっ…あ…!?ぅぅん!!」カジッ

魔導師「んぅっ!?いたっ!?いたたたた!?」ズボッ
450: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:07:17 ID:M97GWVJjkM
カロル「げはっ!はぁっ…あ…はぁっ!」ゲホゲホ

魔導師「…おやまぁ、本物だねぇ。あーイタタイタイ?」ヒリヒリ

カロル「なに…するのさっ!?」キッ

魔導師「効かないよねぇ…?うん、効いてない?」ジロジロ

カロル「……!?」

魔導師「自他両方に及ぶなんて自由自在だなぁ…。これが癒しの力」ジーッ

カロル「なっ…なんで知ってるの!?」

魔導師「欲しいなぁ…。紛い物じゃない…本物の力が……」ズイッ

カロル「やっ…来ないで!?」ズザッ

魔導師「…さてさて、さてさて、さてさてと。出直そうかね」クルッ

カロル「え…?」

魔導師「腕力には自信がないもんでね。呪術が通用しないんじゃ相手がホビットの子供とはいえ、祖国まで持ってけそうにない…。
こんな事ならシャルウィンも協力させれば良かった…。あぁ…また陛下をガッカリさせてしまうなぁ…」スタスタ

カロル「ま、待ってよ!なんでボクを狙うの!?王国の人間なの!?」

魔導師「……」

カロル「や、やっぱり永遠の命が…欲しいから?」オソルオソル

魔導師「永遠の命…ねぇ」ボソッ

カロル「あれ…?ちがうの?」

魔導師「自分はなんでもいいんだよねぇ…。特別でさえあれば……。
そしてあの方もまた特別な存在になりたがってる」

魔導師「この手で叶えてあげたいのさ。愛する人の願いを」

カロル「?」

魔導師「さよなら、特別なお坊ちゃん?次は血腥い失楽園で会えるかもねぇ?」スタスタ

カロル「あぁっ!待ってよ!?」ダッ

ウゥゥ〜 ウゥゥ〜

カロル「」ハッ

カロル「お、お母さまたちを癒さなきゃ!」ピトッ
451: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:09:51 ID:M97GWVJjkM
〜〜〜回想(パカラゥロ)〜〜〜

グワシッ……ジタバタ……

西の民1「う……ぶ…ブバァッ!?」バシャッ

魔術師1「ふ、ふははは!ついに…ついに完成したぞ!我らの手でなし得たのだ!究極の禁術を…!!」

魔術師2「お、おぉ…!これこそまさしく…!」

魔術師3「アーッハッハ!!見たか!?実験台が血溜まりを残して干からびた!?」

魔術師4「これならば陛下にもお喜びいただけよう!終わらない争いの雪辱も晴らせるというものだ!!」

魔術師1「あぁ…この魔溶液は長年、研究を積み重ねて得た黒魔術の結晶だ…」ニギッ

魔術師2「ククク!機は熟した…!すぐに御披露目しよう!パカラゥロ!!」

奴隷「はい……」スッ

魔術師2「一つ大役が出来たな?」

奴隷「はぁ……」

魔術師1「うむ!陛下に御披露目する場ではお前が術を披露するのだ!」

奴隷「なぜ…自分が?」

魔術師1「なぜか…だと?」ガシッ

バサッ
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うpろだ
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