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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


412: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/31(土) 22:37:37 ID:6cG0DciUyc
族長の妻「今すぐ人里へ下りましょうよ!?」

イフィート「よしきた!そう言うと思って用意はさせてある!」スクッ

シヴァ「いや……」

イフィート「あ?」ギロッ

族長の妻「なによ…!?まだ娘より集落の安全とか言うの!?」

シヴァ「そうではない」

イフィート「…お嬢さんが愚痴ってたぜ?父親のせいで夢が叶わないとよ?」

シヴァ「だからなんだ?」

イフィート「娘に恨まれたまま死なれてもいいのかよ?」

族長の妻「死ぬなんてやめてください!?」ガタッ

イフィート「あ、いや!す、すまねぇ!そういうつもりじゃあ……」アタフタ

シヴァ「……儂に考えがある。しばらく待っていてくれ」スクッ

イフィート「あぁ?」

族長の妻「なんとかするって…どうやって?」

シヴァ「一度、席を外すぞ。お前たちは娘を励ましてやってくれ」スタスタ

イフィート「お、おい!?」

族長の妻「せめてどうするのか言いなさいよ!?」

ガチャッ バタンッ
413: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/31(土) 22:42:08 ID:6cG0DciUyc
―――谷間の集落(渓谷の温泉宿)―――

カロル「うーん…!」ノビッ

マルク「」ウツラウツラ

母「二人ともよく寝てたわね?」クスクス

カロル「だって草がフサフサして気持ちよかったんだもの…」ゴシゴシ

母「あらあら、まだ眠たいの?」

カロル「ううん…。ちょっぴり瞼が重たいだけ」ムニャッ

母「そう。眠たいのね」

カロル「なんかね…?夢見たんだ?」

母「へぇ、どんな夢を見たの?」

カロル「人間がね?ボクの顔をじーっと見てニコニコしてるの?」

母「まぁ?ふしぎな夢ねぇ?」

カロル「でもね、その人に見られてるとボクも嬉しくなってニコニコしちゃうんだ?」

母「……その人は坊やに話しかけたりしなかったの?」

カロル「あ!思い出したっ!」ピコーン

母「なにか言ってたの?」

カロル「えっとね…いないいないばーって言ってたよ!」

母「…そ、そう」

カロル「…誰だったのかな?」

母「…ふふ。誰なんでしょうね?」クスッ

マルク「あんっ!あんっ!」

母「あ、宿に着いたみたい。今夜で離れると思うと名残惜しいわね?」

カロル「忘れないように温泉いっぱい入ろ?ボクがお母さまの背中流してあげるね!」

母「あら?じゃあお言葉に甘えちゃおうかしら?」ニコッ

カロル「マルクも一緒に泳ごうね?お猿さんとケンカしちゃダメだよ?」

マルク「クゥーン!」シッポフリフリ
414: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/31(土) 22:45:55 ID:jD7cUAyoro
番頭「や、お客さん遅かったね?散歩は楽しめたかい?」

母「えぇ、とても?ね、坊や?」ニコニコ

カロル「うん!これおみやげだよ?おじさまにあげる!」スッ

番頭「やや?ツクシかい?ありがとねぇ!おいちゃんうれしいよ!」マジマジ

カロル「えへへ。どういたしまして!」

母「へぇ…ツクシっていうのね?」

番頭「ややっ!ご存知でない?西の方じゃわりかしポピュラーなんですがね?
お二人の暮らす土地では見かけませんか?」

カロル「そうだったんだ?見たことない珍しいキノコがあると思って取ってきたの!」

番頭「ははは!これはキノコじゃないんだよ。笠が無いだろう?」

母「ほら、だから違うって言ったでしょ?」クスッ

カロル「えー…キノコみたいなのに?」

番頭「キノコじゃないけど食べれるんだよ?」

カロル「そうなの?食べてみたい!」

番頭「うちでも作ってるからお夕飯に出してあげるよ。油で揚げて塩を振りかけると美味しいんだ」

カロル「わーい!楽しみ!」キャッキャッ

母「ふふ。よかったわね?じゃあ坊やとマルクは先に部屋で支度なさい?
お母さんはちょっとお話しないといけないから?」

カロル「はーい!行こ?」トットッ

マルク「あんっ!」タンッタンッ
415: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/31(土) 22:48:51 ID:6cG0DciUyc
母「…明日の朝、集落を出ようと思ってるんです」

番頭「ややっ!そうでしたか!お気をつけて!」

母「それで…なにかお手伝いというか…お礼をさせていただきたいなと」

番頭「お礼?宿泊代なら、すでに族長から頂いてますから大丈夫ですよ?」

母「そ、そんな…助けてもらった上にタダで泊めてもらうなんて図々しいですもの?」

番頭「とは言ってもね…。うちとしてはお客さんのお手を煩わせる訳にもいきませんし…」

母「お金はありませんけど…せめて何かお力になれないでしょうか?」

番頭「ややっ!お金?あははは!」

母「?」

番頭「ホビット族に通貨の概念はござんせんよ!実になる物を分け合って助け合うのが通例です?」

母「あ、物々交換でしたっけ?長いこと同族と暮らしていなかったものですから…」

番頭「事情はなんとなく聞いてます?旅の道中なんでしょう?」

母「は、はい…」

番頭「本当に結構ですよ?この宿は元々、お客さんみたいに外界から来た同族を泊めてあげる為の物なんで?
普段はお祝い事のある日とかに住民で集まってドンチャン騒ぎしたり、緊急時に避難したりするくらいで割りともて余してたんだよ?」

番頭「こうして泊まってもらって堪能していただくのは、とても嬉しい!
族長がお客さんをここに案内したのもホビット族のもてなしを存分に感じてほしかったんだと思うよ?」

母「…」

番頭「人間の宿はもっと豪華できらびやかなんだろうけど…温泉と自然な景色を楽しめる素朴さもいいもんでしょう?」

母「はい。すごく癒されて…今までの疲れもすっかり抜けました?
こんなに素敵なお宿を出てしまうのが名残惜しいです?」ニコッ

番頭「そのお言葉だけで十分!最後まで堪能していってくださいな?」ニコッ

母「…このご恩はいつか必ずお返しします?」ニコニコ

番頭「また泊まりに来て!それが一番の恩返しですんで?」

母「えぇ、きっと伺います」ニコニコ
416: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/31(土) 22:52:29 ID:jD7cUAyoro
ガララッ

カロル「あ、お母さま!なに話してたの?」

母「ちょっとね…?待たせてごめんなさい。もう支度は済んだの?」パタンッ

カロル「うん!手拭いと着替えも用意したよ!」

母「そう。じゃあ夕飯前に湯浴びしましょうか?」

カロル「うん!」

マルク「わふんっ!」ピョンピョン

母「あらあら、はしゃいじゃって?犬なのにお風呂好きなんて珍しい子ね?」ニコニコ

カロル「前はよく川で遊んだもんね?」ニコニコ

マルク「ワンッ!」ハッハッ

ガララッ

母「あら?もう夕飯ができたのかし…ら?」

シヴァ「はぁ…はぁ…」ゼェゼェ

カロル「あ、族長さま!こんばんは?」

シヴァ「あぁ、こんばんは…。突然すまんな…」ゼェゼェ

母「ど、どうしたんです?そんなに息を切らして…?」

シヴァ「勝手を…承知で…頼みたい事が…ある」ゼェゼェ

カロル「へ?」

母「……?」

シヴァ「娘を…助けてくれないか?」ゼェゼェ

カロル「……!」

母「娘さんに何かあったんですか…!?」

マルク「うぅ?」キョトン
417: 名無しさん@読者の声:2015/2/1(日) 05:05:09 ID:tItQKK3dm2
支援(´・ω・`)
続き気になるよぉ
418: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/1(日) 22:49:53 ID:NrNVsrSms6
母「まぁ…!病に倒れた!?」

カロル「助けなくちゃ!」

マルク「わんわんっ!」

シヴァ「いい…のか?」

カロル「うん、いいよ!行こ!」

シヴァ「ま、待て!本当にいいのか!そんなに安易に決めてしまっても…」

カロル「……?」

シヴァ「その力を見せた為にアピシナ様は奈落へと堕ちた…。少年は…恐ろしくはならないのか?」

カロル「…おそろしく?」

シヴァ「大いなる力は他者を懐疑的にし、野心や差別感情を生み出すかもしれんのだぞ…?」

カロル「えっと…それより早く助けに…?」オロオロ

シヴァ「本当にいいのか…?」

カロル「ボクは平気だよ?」

シヴァ「だ、だが…」

カロル「……?」

シヴァ「追われている身なのだろう…?もし力を使った事が外に漏れれば…」

カロル「???」チンプンカンプン

母「……」ジッ

シヴァ「と、とにかくよく考えるべきだ!君の安全を第一に……」

母「なにを迷ってらっしゃるの?」

シヴァ「む?」

母「助けてほしいと頼んでおいて考え直せなんておかしいと思いませんか?」

シヴァ「う、うむ…。そうだな…。しかし…君の力に頼る気はないと言ってしまった手前もある…」

母「シヴァさんの不安は別にあるんじゃないですか…?」

シヴァ「なに…?」
419: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/1(日) 22:52:20 ID:NrNVsrSms6
母「集落を守りたい一心で些細な変化も見逃せないのはよく分かりますわ…?
ここでの安らかな暮らしは貴重ですもの?
でも…子供の未来を折り曲げて…果ては失ってまで…あなたは自分を見失わずにいられるの?」

シヴァ「……」

母「族長としての義務をまっとうするのは立派です?だけどあなたは族長である前に一人の親でしょう?」

シヴァ「確かに…儂の不安は君たちへの配慮ではない…。
癒しの力に頼ることで、ほんの僅かでも我らの何かが揺らいでしまうのではないかと不安なのだ……」

シヴァ「少年の力が…なにか恐ろしい事態の引き金になるやもしれぬ…」

母「そうじゃないでしょう…!今、一番考えないといけないのは娘さんの無事よ!?」

シヴァ「娘を救うのと引き換えに集落を危機にさらすのであれば…儂は族長として……」

母「集落の危機ってなんですか?坊やの力を知った住民が欲に駈られること!?そんなにここの住民さん達は信用がないの!?」

シヴァ「たとえ心に邪念が無くとも……欲を芽生えさせるだけの魅力がある」

カロル「……」

シヴァ「君の力は永遠の命の鍵となるのだから」

カロル「」ズキッ

母「っ……!アピシナ様のお話だけで、そこまで神経質になる意味が分からないわ!
邪念がどうとか永遠の命だとか…そんなの誰も気に留めないわよ!」

母「娘さんの命に関わるんでしょう!?今はなりふり構ってなんかいられない筈よ!?」

シヴァ「…そ、れは」

母「確かに坊やは狙われてるわ!原因は分からないけど…たぶん癒しの力が関係してる!」

母「だけど…それがなんなの!?」

シヴァ「……!」

母「なにがやって来ても守り抜いたらいいじゃない!ただ怯えて身を隠すだけなら誰にだって出来るわよ!」

母「自分の子供が苦しんでるのに保身に逃げるなんて最低よ!?」

シヴァ「この集落は…故郷を奪われた者達で手を取り合い、築き上げた大切な地だ」

母「え…?」

シヴァ「無知を振りかざし、他人事であるのをいいことに叱責するのであれば…それこそ誰にでも出来るのではないか?」

母「うっ……」
420: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/1(日) 23:45:28 ID:KqTJbdQyF2
シヴァ「すまん…。厳しく言い過ぎたな」

母「い、いえ…」

シヴァ「だが分かってほしい。肉親の命を左右する土壇場の状況でさえも迷わせる程、悲惨な過去は強く心を蝕ませる…!」グッ

シヴァ「皆、知っているのだ…!突如として襲い来る不条理は…いかに痛ましく、腹立たしく……やりきれぬものか!」ワナワナ

母「っ……」プイッ

シヴァ「隣の集落は安寧を保ち続け、人間に奪われぬまま長い時を無事に過ごした…。だからこそ今回の婚礼を楽観視していたのだ!」

シヴァ「たとえ時代は変わっても必ず悲劇は巡る!安らかな日々を守るには堅固に変化を塞き止める者が必要だ!?
儂が族長である以上は外界との接触など許さん!些細な変化も許してはならないんだ!!」

カロル「じゃあどうするの?助けてあげられるのに…ボクの力は使いたくないの?」

シヴァ「っ…非情かもしれぬ…。集落を守りたい為に実の子を犠牲にしようとしているのだから」

シヴァ「だが…不条理は音も立てずにやって来る。何事にも敏感にならねばならんのだ」

母「そう…ですけど…でも…!」

カロル「…関係ないと思うな」

シヴァ「…なに?」ピクッ

カロル「シヴァさんがなにに悩んでるのかわかんないよ…?」

シヴァ「分からないだと…!?」

カロル「そんなに悩むのに…どうしてボクに頼もうとしたの?」

シヴァ「ぐっ……」

カロル「…族長さまが悩んでる今も娘さんは病に苦しんでるんでしょ?」

シヴァ「その通りだ…!」

カロル「……」

シヴァ「責任や使命感を捨ててしまえば不毛な悩みを抱えずに済む…!
隣の集落とも仲違いすることなく、娘とも分かり合えただろうが…」

シヴァ「それが出来ればどれだけ救われるか…!儂は悩まなければならないんだ!!」

シヴァ「長が後先考えずに衝動で動いてしまっては集落全体に関わる!!
儂は親である前にこの集落の長なのだ!!この平穏に変化をもたらす訳には……!」
421: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/1(日) 23:48:46 ID:NrNVsrSms6
カロル「極端だと思う…」

シヴァ「なっ…!」

カロル「変化はイヤだって言うけど…娘さんが病気で死んじゃったら?」

シヴァ「ま、まだ死ぬと決まった訳では…」

カロル「集落のみんなは悲しむよね。族長さまの奥さんも結婚する筈だった人も?」

シヴァ「っ…!」

カロル「もしかしたらみんな病気を怖がって出ていっちゃったりして?」

シヴァ「うっ…」

カロル「ね?娘さんがいなくなったら、すごく大きな変化があるかもよ?」

シヴァ「〜〜〜!」プルプル

カロル「もしそうならなくってもさ…。
守らなきゃいけない物の為に誰かを見捨てるのって…本当に守ったことになるのかな?」

シヴァ「…そんなのは分かってる。だが事実、過去に…」

カロル「昔のことはどうにもならないよ?それに…さっき自分で言ってたじゃない?」

シヴァ「な、なにをだ…?」

カロル「隣の集落とも娘さんともうまくいかないのって…変化しちゃダメって頑固になってたからでしょ?」

シヴァ「あ、あぁ。そうだな…」

カロル「それも一つの変化じゃないの?」

シヴァ「……?」
422: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/1(日) 23:54:07 ID:NrNVsrSms6
カロル「毎日新しいことがあるのに、なにも変わらないまま生きてくなんてムリだと思うな?」

カロル「今日したいことも明日になったら変わるかもしれないし、昨日まで何もなかった所にお花が咲いてるかもしれないよ?」

シヴァ「くっ…」

カロル「変わらないように思えるけど、変わってないものなんてないんだよ?」

シヴァ「言われなくても分かってる…!それでも最小限に留めなければ…!」

カロル「変化させないんじゃなくて良い変化か悪い変化かを決めてみたらいいんじゃないかな?」

シヴァ「それが分かれば苦労はない…!」

カロル「うん。そうだね?でも族長さまが考えて決めたことなら、どんな悪い変化でもみんな信じてくれるよ?」

シヴァ「無責任な発言はよせ…!」

カロル「この集落を一番大事に考えてる族長さまが決めたことだもの?
今は悪くても、いつか必ず良くなるって信じられるよ?」

シヴァ「……!」

カロル「それなら後は族長さまがみんなを信じて決めるだけだよね?
この集落なら、どんな変化があっても乗り越えられるって?」ニコッ

シヴァ「少年……」

カロル「なにがあるか分からないのに立ち向かうのはとっても怖いよね。でもやらなくちゃ?」ニコニコ

カロル「守れないかもしれないけど守ろうとすることはできるもの?」ニコニコ

シヴァ「」フッ

シヴァ「……情けないな。君のような少年に諭されるとは」

カロル「そんなことないよ?ボクは族長さまみたいにたくさん考えられないだけだもん?」

シヴァ「…改めて頼む。娘を助けてくれ?」ジッ

カロル「うん!いいよ!」ニコッ
423: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/1(日) 23:57:47 ID:NrNVsrSms6
>>417
気になると言ってくださったのに全く進展がなくてすみません…orz
次の更新ではちょっとだけ前進します!
支援ありがとうございました!
424: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:06:14 ID:Kwo9hE/z3E
―――隣集落の民家―――

シヴァ「どういうことだ!?」

イフィート「お、落ち着けって」アセアセ

シヴァ「儂を待たずに娘を人里に向かわせたのか!?」

族長の妻「だって…あなたがなにも言わないから!?」

イフィート「んな心配しねーでも俺の息子が付き添ってるから平気だって!」

シヴァ「くそ…!儂も今すぐ向かう!イカダを岸へ寄越せ!?」

イフィート「そ、それは構わねぇが…その二人と一匹はなんなんだ?」

族長の妻「まさかこの子たちに助けを求めたの…!?」キッ

カロル「あ、えと…?」モジモジ

族長の妻「元はと言えばあんたらが病原菌を持ってきたから…!」

母「……なんの話ですか?」キョトン

族長の妻「」プイッ

カロル「朝はあんなに優しかったのに…なんで怒ってるんだろ?」コショコショ

母「うーん…。なにか勘違いされてるみたいね?そっとしておきましょ?」コショコショ

シヴァ「いいからさっさとしろぉ!!」ガァーッ

族長の妻「ひぃ!?」ビクッ

イフィート「お、お前も大声出すんだな…?慣れねーからビビったぜ?」ビクビク

シヴァ「黙って用意しろ!」

イフィート「わ、分かったよ!なんなんだっ…たくよ!」ダッ

ガチャッ バタンッ
425: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:07:34 ID:Kwo9hE/z3E
シヴァ「少年よ!川を下る事になった!激流の中を漕ぎ急ぐが大丈夫か!?」

カロル「う、うん!がんばる!」

母「あたしも行くわ!」

マルク「わんっ!」

シヴァ「では岸へ向かおう!」

族長の妻「あ、あなた?そんな事しなくても人里でお医者様に…?」

シヴァ「人間など信用できるか…!お前も…奴らをよく知っているだろう!?」

族長の妻「……!」

カロル「……」シュン

母「人里に入ったら族長さんの認識も変わるかもしれないわね…?」コショコショ

カロル「…あ、そっか?それなら癒した後に結婚式させてくれるかも?」

母「ふふ。一挙両得よ?」

カロル「えへへ!」

シヴァ「……?どうした?」

母「うふふ!」クスッ

カロル「なんでもないでーす!」ニコニコ

マルク「くぅん!」

シヴァ「? まぁいい。行くぞ!」
426: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:13:35 ID:Kwo9hE/z3E
〜〜〜夜〜〜〜

―――西の領土(カーリンの町)―――

ワーワー ギャーギャー

「なんだこのブツブツだらけの化け物は!?気味がわりー!」

「悪魔にでも取り憑かれたのか!?」

婚約者「お願いします!彼女を助けてください!」

族長の娘「ぶわわわわ」ガクガク

「う、うわっ!な、なんか揺れてる!?」

「やっぱり悪魔だ!?悪魔の仕業だ!?」

「消え失せろ!町に災いを持ってくんな!」

婚約者「違います!これは病なんです!どうかお医者様を!俺たちじゃどうにもできないんです!?」

「病だとぉ!?なおさら危ねぇじゃねーか!?」

「変なもん持ち込むな!伝染されたら大変だ!?」

「清潔な空気に菌が混じったら、うちの名産のガーデンハーブにも影響しちまう!」

「そうか!分かったぞ!?お前ら、この町にバイ菌持ち込んで俺たちを病にかからせようとしてんだな!?」

「ホビットめ!?せっかく許してやったのになんのマネだ!?」

「こんな姑息な手段で復讐しようなんて、やっぱりホビットは罪深くズル賢いんだな!?」

婚約者「ち、違う!そうじゃないんだよ!!」
427: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:15:02 ID:Kwo9hE/z3E
「出ていけ!?二度と来るな!?」ビュンッ

族長の娘「ばっ!?」ビシッ

婚約者「病人になにすんだ!?」カッ

「黙れ!薄汚いホビット!?」ビュンッ

「とっととそいつを持ち帰れ!?」ビュンッ

「みんなで力を合わせてこいつらを追い出そうぜ!?」

オォォォォォオオオ!!

ビュンッ ビュンッ ビュンッ ビュンッ

ビシッ ビシッ ビシッ ビシッ

婚約者「いつっ…!や、やめろっ!?やめてくれ!?
ただ助けてほしいだけなんだ!?
人間とホビットは和解したんだろ!?」

「な〜にが助けてほしいだ!?いきなりやって来て非常識だと思わないのか!?」

「ホビットなんか死んだって構わねぇよ!それより町に病が運ばれたら大変だ!」

「だいたいよ!この辺りじゃ前から人を襲う追い剥ぎみたいなホビットがちらほらいたんだ!うちの行商だって何人か被害に遭ってんだぞ!」

「ネチネチと恨みばっか溜め込みやがって!どうせ俺たちを病にかからせて困らせたいんだろ!?」

「もうすぐ領主様の自警団が来るからな!切り殺されたくなかったら失せろ!」

婚約者「そんな…!そんな事ってあるか…!?」ヒシッ

族長の娘「うぇぼほっ!?げほっ!」

婚約者「こんなに弱ってるんだぞ…!本当に助けてほしくて…必死に頼んでるんだぞ…!?」ワナワナ

婚約者「こんな奴らに…こんな奴らに…俺たちは希望を持ってたのかよ…!?」ググッ
428: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:20:47 ID:Ix/8/HR8zU
―――川沿いの畦道―――

婚約者「くそっ!あいつら、ぜってーに許さ……!」ギリッ

族長の娘「ぶぇほっ…ぶぇほ!!」ゲホゲホ

婚約者「!?」

婚約者「だ、大丈夫か…って大丈夫な訳ないよな…?」サスサス

婚約者「………はは。なんかどうでもよくなってきたな。あんな奴らとやってこうとしてたのか。俺たち」

族長の娘「ゔぅ゙ぅ゙〜……」ブルッ

婚約者「あぁ、川を下る時にたっぷり飛沫を浴びたから寒いのか。
俺たちの民族着は分厚いけど露出が多いもんな?」

婚約者「…昔、親父になんでか聞いたらさ、寒さを凌ぐのに十分な量しか取らないんだって?
必要以上に狩ったら、それはただの殺生になるから」

婚約者「人間たちはみんな暖かそうな格好してたよな。
たぶんあの服を一着作るには1匹や2匹じゃ済まないはずだ」

婚約者「……羨ましいよな。あんな風に我慢しないでもて余すくらい贅沢な生活してみたいよ」

婚約者「それがエゴだとしてもさ、きれいごとより実になる方がいいだろ?
だって俺たち若いんだぜ?あんな空っぽの田舎で一生を終えてたまるかよ」

族長の娘「ぶほっ!ぶふ!ぶばっ!!」ゴホゴホ

婚約者「…集落まで戻り直すには歩いたら1日以上かかるな。なんか持ってくりゃよかったよ。
慌てて下ったもんだからイカダしかないし…あれじゃ流れに逆らって上れない。
人間の船なら軽々上っちまうらしいけど」

婚約者「…こんな筈じゃなかったのにな。俺たちは…人間の良いとこしか知らなかったから」
429: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:22:48 ID:Ix/8/HR8zU
族長の娘「」ブルブル

婚約者「こんなに震えて…顔色も分からないくらいイボだらけになっちまって…」ピトッ

婚約者「あいつらを許せないのもそうだけど…お前を暖めてやれないのが辛いよ」ナデリ

族長の娘「ぶわわわわわ」ガタガタ

婚約者「…惹かれ合った理由はお互い人間に憧れてたからだったよな」

婚約者「あんなの見た後じゃ理想なんか粉粒みたいに砕け散ったよ」

婚約者「もし…お前がもう一度、目を覚ましたら…きっと俺たちは分かり合えなくなってるだろうな」フッ

族長の娘「」ガタガタ

婚約者「……」

婚約者「……確かに今のお前はちょっと怖い見た目してるけどよ。俺はなんとも思わないぜ?」ナデリ

婚約者「なんたって俺が愛した女なんだから、どんな姿になっても世界で一番可愛いに決まってる?」

婚約者「あいつら、なーんも分かっちゃいないんだ。
助けてやって元通りになったら、とびきり可愛いお前の顔を拝めるとも知らずによ…。バカだよな?」

婚約者「はは……は…」

婚約者「なぁ…お前、ここで死んじゃうのか…?」

婚約者「そんな訳ないよな?こんなどっから来たかも分からない病なんて…休んでりゃ自然に治っちまうさ?」

婚約者「」ブルッ

婚約者「あ、あぁれ…?な、なな…なんで、だ?お、お俺まで…震えが止まらないよ…?」ブルブル

婚約者「あ、あいつら服ぐらい…か、かか貸せってんだよなぁ?」ブルブル

婚約者「」ジワァ

婚約者「うっ…ふえっ…なにやってんだ、俺は……」ポロポロ

婚約者「なんにもしてやれないじゃんかよ……うぐぅ」ポロポロ
430: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:26:50 ID:Ix/8/HR8zU
婚約者「どうすりゃいいんだ…。どうしようもねぇじゃん…」グスッ

マルク「ワンッワンッ!」タタタッ

カロル「あ、見つけたよ!!」タタタッ

母「まぁ!町に行ったら追い返されてびっくりしたけど、こんな所にいたのね!」スタスタ

婚約者「っ…人間か…!?」バッ

シヴァ「ふむ…。無事だったか」スタスタ

婚約者「お義父さん!?」ビクッ

シヴァ「よくも儂の言い付けを破ってくれたな?」ジロッ

婚約者「あ…あ、いや…あの…こ、これは…?」ブルブル

シヴァ「怯えくていい。説教は帰ってからいくらでもしてやる」

婚約者「うっ…は、はい」

シヴァ「では少年……」

カロル「うん!任せて!」

母「ちょっと娘さんお借りしていいかしら?」

婚約者「えっ」
431: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:30:29 ID:Kwo9hE/z3E
族長の娘「」ガタガタ

母「……!こ、こんな恐ろしい病、見たことがないわ…!」

シヴァ「なんとかなりそうか?」

カロル「やってみないと分かんないけど…なんとかするよ!」ピトッ

婚約者「お、おい!なにを…」オロオロ

フワッ

族長の娘「ん……」パチッ

シヴァ「おぉ…!」

婚約者「え!?」

族長の娘「お、お父さん…?あ、あんたも帰ってたの?」

シヴァ「い、一瞬で…意識が戻るとは…!」

婚約者「え?え?あれ?出来物は?引っ掻き傷も…?」オロオロ

族長の娘「へ?なにが?…っていうか、よく見たらここどこ?こんな場所あったっけ?」キョロキョロ

シヴァ「覚えていないのか?」

族長の娘「あれ?あたしったら何して…あ、そうだ!お洗濯の途中……」

婚約者「ウオオオオ!!よかったぁぁ!!?」ガバッ

族長の娘「いやっ!?ちょっとなに!?恥ずかしいからやめてよ!?」ビクッ

婚約者「お前、倒れて変な病気になってたんだぞぉ!?俺、すげー心配したんだからな!?」ズリズリ

族長の娘「な、なにが!?なんの話!?」アタフタ
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うpろだ
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