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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


422: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/1(日) 23:54:07 ID:NrNVsrSms6
カロル「毎日新しいことがあるのに、なにも変わらないまま生きてくなんてムリだと思うな?」

カロル「今日したいことも明日になったら変わるかもしれないし、昨日まで何もなかった所にお花が咲いてるかもしれないよ?」

シヴァ「くっ…」

カロル「変わらないように思えるけど、変わってないものなんてないんだよ?」

シヴァ「言われなくても分かってる…!それでも最小限に留めなければ…!」

カロル「変化させないんじゃなくて良い変化か悪い変化かを決めてみたらいいんじゃないかな?」

シヴァ「それが分かれば苦労はない…!」

カロル「うん。そうだね?でも族長さまが考えて決めたことなら、どんな悪い変化でもみんな信じてくれるよ?」

シヴァ「無責任な発言はよせ…!」

カロル「この集落を一番大事に考えてる族長さまが決めたことだもの?
今は悪くても、いつか必ず良くなるって信じられるよ?」

シヴァ「……!」

カロル「それなら後は族長さまがみんなを信じて決めるだけだよね?
この集落なら、どんな変化があっても乗り越えられるって?」ニコッ

シヴァ「少年……」

カロル「なにがあるか分からないのに立ち向かうのはとっても怖いよね。でもやらなくちゃ?」ニコニコ

カロル「守れないかもしれないけど守ろうとすることはできるもの?」ニコニコ

シヴァ「」フッ

シヴァ「……情けないな。君のような少年に諭されるとは」

カロル「そんなことないよ?ボクは族長さまみたいにたくさん考えられないだけだもん?」

シヴァ「…改めて頼む。娘を助けてくれ?」ジッ

カロル「うん!いいよ!」ニコッ
423: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/1(日) 23:57:47 ID:NrNVsrSms6
>>417
気になると言ってくださったのに全く進展がなくてすみません…orz
次の更新ではちょっとだけ前進します!
支援ありがとうございました!
424: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:06:14 ID:Kwo9hE/z3E
―――隣集落の民家―――

シヴァ「どういうことだ!?」

イフィート「お、落ち着けって」アセアセ

シヴァ「儂を待たずに娘を人里に向かわせたのか!?」

族長の妻「だって…あなたがなにも言わないから!?」

イフィート「んな心配しねーでも俺の息子が付き添ってるから平気だって!」

シヴァ「くそ…!儂も今すぐ向かう!イカダを岸へ寄越せ!?」

イフィート「そ、それは構わねぇが…その二人と一匹はなんなんだ?」

族長の妻「まさかこの子たちに助けを求めたの…!?」キッ

カロル「あ、えと…?」モジモジ

族長の妻「元はと言えばあんたらが病原菌を持ってきたから…!」

母「……なんの話ですか?」キョトン

族長の妻「」プイッ

カロル「朝はあんなに優しかったのに…なんで怒ってるんだろ?」コショコショ

母「うーん…。なにか勘違いされてるみたいね?そっとしておきましょ?」コショコショ

シヴァ「いいからさっさとしろぉ!!」ガァーッ

族長の妻「ひぃ!?」ビクッ

イフィート「お、お前も大声出すんだな…?慣れねーからビビったぜ?」ビクビク

シヴァ「黙って用意しろ!」

イフィート「わ、分かったよ!なんなんだっ…たくよ!」ダッ

ガチャッ バタンッ
425: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:07:34 ID:Kwo9hE/z3E
シヴァ「少年よ!川を下る事になった!激流の中を漕ぎ急ぐが大丈夫か!?」

カロル「う、うん!がんばる!」

母「あたしも行くわ!」

マルク「わんっ!」

シヴァ「では岸へ向かおう!」

族長の妻「あ、あなた?そんな事しなくても人里でお医者様に…?」

シヴァ「人間など信用できるか…!お前も…奴らをよく知っているだろう!?」

族長の妻「……!」

カロル「……」シュン

母「人里に入ったら族長さんの認識も変わるかもしれないわね…?」コショコショ

カロル「…あ、そっか?それなら癒した後に結婚式させてくれるかも?」

母「ふふ。一挙両得よ?」

カロル「えへへ!」

シヴァ「……?どうした?」

母「うふふ!」クスッ

カロル「なんでもないでーす!」ニコニコ

マルク「くぅん!」

シヴァ「? まぁいい。行くぞ!」
426: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:13:35 ID:Kwo9hE/z3E
〜〜〜夜〜〜〜

―――西の領土(カーリンの町)―――

ワーワー ギャーギャー

「なんだこのブツブツだらけの化け物は!?気味がわりー!」

「悪魔にでも取り憑かれたのか!?」

婚約者「お願いします!彼女を助けてください!」

族長の娘「ぶわわわわ」ガクガク

「う、うわっ!な、なんか揺れてる!?」

「やっぱり悪魔だ!?悪魔の仕業だ!?」

「消え失せろ!町に災いを持ってくんな!」

婚約者「違います!これは病なんです!どうかお医者様を!俺たちじゃどうにもできないんです!?」

「病だとぉ!?なおさら危ねぇじゃねーか!?」

「変なもん持ち込むな!伝染されたら大変だ!?」

「清潔な空気に菌が混じったら、うちの名産のガーデンハーブにも影響しちまう!」

「そうか!分かったぞ!?お前ら、この町にバイ菌持ち込んで俺たちを病にかからせようとしてんだな!?」

「ホビットめ!?せっかく許してやったのになんのマネだ!?」

「こんな姑息な手段で復讐しようなんて、やっぱりホビットは罪深くズル賢いんだな!?」

婚約者「ち、違う!そうじゃないんだよ!!」
427: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:15:02 ID:Kwo9hE/z3E
「出ていけ!?二度と来るな!?」ビュンッ

族長の娘「ばっ!?」ビシッ

婚約者「病人になにすんだ!?」カッ

「黙れ!薄汚いホビット!?」ビュンッ

「とっととそいつを持ち帰れ!?」ビュンッ

「みんなで力を合わせてこいつらを追い出そうぜ!?」

オォォォォォオオオ!!

ビュンッ ビュンッ ビュンッ ビュンッ

ビシッ ビシッ ビシッ ビシッ

婚約者「いつっ…!や、やめろっ!?やめてくれ!?
ただ助けてほしいだけなんだ!?
人間とホビットは和解したんだろ!?」

「な〜にが助けてほしいだ!?いきなりやって来て非常識だと思わないのか!?」

「ホビットなんか死んだって構わねぇよ!それより町に病が運ばれたら大変だ!」

「だいたいよ!この辺りじゃ前から人を襲う追い剥ぎみたいなホビットがちらほらいたんだ!うちの行商だって何人か被害に遭ってんだぞ!」

「ネチネチと恨みばっか溜め込みやがって!どうせ俺たちを病にかからせて困らせたいんだろ!?」

「もうすぐ領主様の自警団が来るからな!切り殺されたくなかったら失せろ!」

婚約者「そんな…!そんな事ってあるか…!?」ヒシッ

族長の娘「うぇぼほっ!?げほっ!」

婚約者「こんなに弱ってるんだぞ…!本当に助けてほしくて…必死に頼んでるんだぞ…!?」ワナワナ

婚約者「こんな奴らに…こんな奴らに…俺たちは希望を持ってたのかよ…!?」ググッ
428: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:20:47 ID:Ix/8/HR8zU
―――川沿いの畦道―――

婚約者「くそっ!あいつら、ぜってーに許さ……!」ギリッ

族長の娘「ぶぇほっ…ぶぇほ!!」ゲホゲホ

婚約者「!?」

婚約者「だ、大丈夫か…って大丈夫な訳ないよな…?」サスサス

婚約者「………はは。なんかどうでもよくなってきたな。あんな奴らとやってこうとしてたのか。俺たち」

族長の娘「ゔぅ゙ぅ゙〜……」ブルッ

婚約者「あぁ、川を下る時にたっぷり飛沫を浴びたから寒いのか。
俺たちの民族着は分厚いけど露出が多いもんな?」

婚約者「…昔、親父になんでか聞いたらさ、寒さを凌ぐのに十分な量しか取らないんだって?
必要以上に狩ったら、それはただの殺生になるから」

婚約者「人間たちはみんな暖かそうな格好してたよな。
たぶんあの服を一着作るには1匹や2匹じゃ済まないはずだ」

婚約者「……羨ましいよな。あんな風に我慢しないでもて余すくらい贅沢な生活してみたいよ」

婚約者「それがエゴだとしてもさ、きれいごとより実になる方がいいだろ?
だって俺たち若いんだぜ?あんな空っぽの田舎で一生を終えてたまるかよ」

族長の娘「ぶほっ!ぶふ!ぶばっ!!」ゴホゴホ

婚約者「…集落まで戻り直すには歩いたら1日以上かかるな。なんか持ってくりゃよかったよ。
慌てて下ったもんだからイカダしかないし…あれじゃ流れに逆らって上れない。
人間の船なら軽々上っちまうらしいけど」

婚約者「…こんな筈じゃなかったのにな。俺たちは…人間の良いとこしか知らなかったから」
429: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:22:48 ID:Ix/8/HR8zU
族長の娘「」ブルブル

婚約者「こんなに震えて…顔色も分からないくらいイボだらけになっちまって…」ピトッ

婚約者「あいつらを許せないのもそうだけど…お前を暖めてやれないのが辛いよ」ナデリ

族長の娘「ぶわわわわわ」ガタガタ

婚約者「…惹かれ合った理由はお互い人間に憧れてたからだったよな」

婚約者「あんなの見た後じゃ理想なんか粉粒みたいに砕け散ったよ」

婚約者「もし…お前がもう一度、目を覚ましたら…きっと俺たちは分かり合えなくなってるだろうな」フッ

族長の娘「」ガタガタ

婚約者「……」

婚約者「……確かに今のお前はちょっと怖い見た目してるけどよ。俺はなんとも思わないぜ?」ナデリ

婚約者「なんたって俺が愛した女なんだから、どんな姿になっても世界で一番可愛いに決まってる?」

婚約者「あいつら、なーんも分かっちゃいないんだ。
助けてやって元通りになったら、とびきり可愛いお前の顔を拝めるとも知らずによ…。バカだよな?」

婚約者「はは……は…」

婚約者「なぁ…お前、ここで死んじゃうのか…?」

婚約者「そんな訳ないよな?こんなどっから来たかも分からない病なんて…休んでりゃ自然に治っちまうさ?」

婚約者「」ブルッ

婚約者「あ、あぁれ…?な、なな…なんで、だ?お、お俺まで…震えが止まらないよ…?」ブルブル

婚約者「あ、あいつら服ぐらい…か、かか貸せってんだよなぁ?」ブルブル

婚約者「」ジワァ

婚約者「うっ…ふえっ…なにやってんだ、俺は……」ポロポロ

婚約者「なんにもしてやれないじゃんかよ……うぐぅ」ポロポロ
430: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:26:50 ID:Ix/8/HR8zU
婚約者「どうすりゃいいんだ…。どうしようもねぇじゃん…」グスッ

マルク「ワンッワンッ!」タタタッ

カロル「あ、見つけたよ!!」タタタッ

母「まぁ!町に行ったら追い返されてびっくりしたけど、こんな所にいたのね!」スタスタ

婚約者「っ…人間か…!?」バッ

シヴァ「ふむ…。無事だったか」スタスタ

婚約者「お義父さん!?」ビクッ

シヴァ「よくも儂の言い付けを破ってくれたな?」ジロッ

婚約者「あ…あ、いや…あの…こ、これは…?」ブルブル

シヴァ「怯えくていい。説教は帰ってからいくらでもしてやる」

婚約者「うっ…は、はい」

シヴァ「では少年……」

カロル「うん!任せて!」

母「ちょっと娘さんお借りしていいかしら?」

婚約者「えっ」
431: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:30:29 ID:Kwo9hE/z3E
族長の娘「」ガタガタ

母「……!こ、こんな恐ろしい病、見たことがないわ…!」

シヴァ「なんとかなりそうか?」

カロル「やってみないと分かんないけど…なんとかするよ!」ピトッ

婚約者「お、おい!なにを…」オロオロ

フワッ

族長の娘「ん……」パチッ

シヴァ「おぉ…!」

婚約者「え!?」

族長の娘「お、お父さん…?あ、あんたも帰ってたの?」

シヴァ「い、一瞬で…意識が戻るとは…!」

婚約者「え?え?あれ?出来物は?引っ掻き傷も…?」オロオロ

族長の娘「へ?なにが?…っていうか、よく見たらここどこ?こんな場所あったっけ?」キョロキョロ

シヴァ「覚えていないのか?」

族長の娘「あれ?あたしったら何して…あ、そうだ!お洗濯の途中……」

婚約者「ウオオオオ!!よかったぁぁ!!?」ガバッ

族長の娘「いやっ!?ちょっとなに!?恥ずかしいからやめてよ!?」ビクッ

婚約者「お前、倒れて変な病気になってたんだぞぉ!?俺、すげー心配したんだからな!?」ズリズリ

族長の娘「な、なにが!?なんの話!?」アタフタ
432: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:32:25 ID:Ix/8/HR8zU
ワチャワチャ イチャイチャ

シヴァ「……」

カロル「なんとかなってよかったね!」

母「ふふ…どうですか?今のお気持ちは?」ニコニコ

シヴァ「…とても嬉しい。拙いが…今はそれしか感じられぬ」

母「それで十分ですよ?」ニコニコ

シヴァ「そうだな。この気持ちで十分だ…。君たちには感謝してもし足りない」

カロル「ううん?ボクたちもいっぱい楽しい気持ちもらったから、おあいこだよ?ね、お母さま!」

母「そうね?お返しできて本当によかったわ?」

シヴァ「ふむ。こうして娘の無事な姿を見て…改めて少年の言葉の意味が分かった」

シヴァ「変化を恐れていては何もなし得ない。時には何かを失いかけても求めねばならない場面があると」

カロル「……う、うん!そうだよ!」アセアセ

母「…どうしたの?」

カロル「…思いつきで喋っちゃったから、そこまで考えてなかったの?」コショコショ

母「」ガクッ

シヴァ「あなたにも礼を言いたい」

母「へ?あたしはなにも…?」

シヴァ「親として欠けている物を教わった。これからは今まで以上に娘を大事にしようと思う」

母「…そうですか」ニコッ
433: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/2(月) 23:34:07 ID:Ix/8/HR8zU
マルク「あぅー」ジーッ

母「? なにを見て……あらあら」クスッ

カロル「あはは!すっごくなかよしだね?」ニコニコ

婚約者「もう離さないからなぁ!?」ズリズリ

族長の娘「あーやめてよ、気色悪い!?さっきからなんなの!?」グッグッ

シヴァ「はっはっは…!集落へ戻るか。ここにいては二人の熱が冷めぬだろう」

母「それもそうね?娘さんにもちゃんと説明してあげなきゃ?」

シヴァ「うむ。かなり歩くが大丈夫そうか?」

母「…あのイカダはいいんですか?」

シヴァ「あぁ…あれは分解して持っていく。荷を軽くせねば山越えは出来んからな」

カロル「えぇ!?あんなにおっきい丸太持てるの!?」

シヴァ「見た目ほどではないさ。クォルタの木は丈夫でしなやかだが繊維が細く、普通の木の4分の1程度の重さしかないのだ」

カロル「へぇ…すごーい!ボクも持てるかな?」

シヴァ「うむ。一本であればなんとか持てるだろう」

母「そんな便利な木があるのねぇ…。旅の参考になるわ?」

シヴァ「人間のように鉄や石を加工する術や様々な物を組み合わせる技術はないが…我らには我らの知恵があると言う事だ?」

母「ふふ。とても頼もしいですわね?」

シヴァ「…うむ。だが人間の知恵も立派なものだ。我らと人間で何か一つの物を産み出せれば、互いの生活も素晴らしく豊かになるだろう」

母「…それってもしかして、これからは人間を認めるんですの?」

シヴァ「そうは言っていない。まだ考えに留めるが…谷に戻ってからじっくりと煮詰めよう」

シヴァ「族長として皆を導く為にも…変化に対応していかなければな」

カロル「……!」パァァ

母「……」ニコニコ
434: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:30:47 ID:Xsg4vDSHiM
〜〜〜朝〜〜〜

―――谷間の集落(族長の家)―――

族長の妻「ほんっ……とうに申し訳ございません!!!」ガバッ

母「や、やめてください!?そんな事されても困ります!?」アセアセ

族長の妻「わ、私ったら取り乱してひどい事を…」

カロル「気にしてないよ?」

母「娘さん達も無事に戻ってきたんですし、もういいじゃありませんか?ね?」

族長の娘「そうだよ、母さん?もういいって言ってんだからいいじゃん?」

族長の妻「どの立場で言ってんのよ!あんたのせいで、こっちはどんだけ心配したか……」

族長の娘「ごめんね、うちの母さんって昔からこうなのよ!なんかあると、すぐヒステリー起こしてさ…」

母「まぁまぁ?お母さんもすごく心配なさってたのよ?」

族長の妻「はぁ…あんたって子はどこまで人騒がせなんだか…!
人間みたいに教会で式を挙げたいって言い出したり、急に訳の分からない病に倒れたりさ…!」ブツブツ

族長の娘「あーうるさいな、もう!かわいい娘が帰ってきたんだから説教なんてやめてよ!」

族長の妻「母親に向かってうるさいって何よ!?」

ギャーギャー

母「あらら…」

カロル「あむっ!おいひっ!」カリィッ

母「あら、なにそれ?」

カロル「山越えの時に族長さまがおやつくれたの!プレーンナッツ!」モグモグ

母「へぇ…おいしそうね?」

カロル「おいしいよ!お母さまも食べてみて?」ゴソゴソ スッ

母「ん、ありがとう?」カリッ
435: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:33:49 ID:Xsg4vDSHiM
族長の妻&娘「」ハッ


カロル「ね?おいしいでしょ?」ニコッ

母「うん、歯ごたえがよくて……あら?」

カロル「へ?」キョトン

母「口に粒が残ってる?取ってあげるから動かないで?」ヒョイッ

カロル「えへへ…ありがとう!」

母「」パクッ

カロル「あ…口に付いてたから汚いよ!」

母「あたしのかわいい坊やに汚い所なんてないのよ?」ニコッ

カロル「!」カァァ

母「おいしかったわね?いいおやつが貰えてよかったじゃない?」ナデリ

カロル「う、うん…」モジモジ

母「どうしたの?」

カロル「な、なんでもないよ?」テレッ

母「まぁ?お母さんに隠し事は通用しないわよ?」ニヤリ

カロル「そ、そんなんじゃないったら?」

母「じゃあなんで落ち着かないの?」

カロル「えっと…あ、あのね。その…ボクもだよ?」

母「……?」

カロル「ぼ、ボクもお母さまの口に付いたのなら食べれるよ!お母さまは汚くないもん!」

母「……そ、そこは別に張り合わなくてもいいんじゃないかしら?」

カロル「ううん。だから…ボクもそのぐらいお母さまのこと好きなの!」

母「まぁうれしい?でも平気よ?言われなくても知ってるから?」ニコッ
436: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:36:40 ID:Xsg4vDSHiM
イチャイチャ イチャイチャ

族長の娘「すごい仲いいじゃん…?母さんも少しは見習ったら?」

族長の妻「あんたもね?それにしたって難しい年頃でしょうに…よくなついてるのねぇ?」

族長の娘「なんか親子ってよりは恋人みたい…?」

族長の妻「まぁマリーさんはあたしより全然若いしねぇ…。お似合いっちゃお似合いだけど…」

族長の娘「似合っちゃダメでしょ……あ、そういえば父さんたちは?」キョロキョロ

族長の妻「え?あぁ、隣集落の集会所でお話中よ」

族長の娘「話…?」

族長の妻「ほら、あんたが式したいって言ってたでしょう?
あんな事になっちゃったし…お父さんも考えが変わったんじゃないの?」

族長の娘「ほんと!?」パァァ

族長の妻「婚約者さんとイフィートさんと三人で相談してるんですって?」

族長の娘「こうしちゃいらんない!私も一緒に決めなきゃ!」ダッ

族長の妻「!? ちょ、ちょっと!まだするとは言ってないわよ!?」

ガチャッ バタンッ

族長の妻「はぁ…そそっかしいったらありゃしない。まぁ無事だったからいいけど?」
437: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:39:08 ID:aotAc0vzsc
―――隣集落の集会所―――

婚約者「…すみませんでした。早とちりしちまって…」ショボン

シヴァ「まったくだ…。しかし…そうか。人間の町でそんな目に…」

イフィート「ちゃんと事情を説明したのか?」

婚約者「したさ!だけど…話も聞いちゃくれなかった!」ギリッ

シヴァ「だろうな」

婚約者「お義父さんの言う通りでしたよ。反省してます…」

イフィート「まぁな〜…噂なんかあてにならねぇし、実際はそんなもんか?」

シヴァ「…そう簡単に変われるものか。染み着いた差別感情は根が深い」

イフィート「でもよ〜…お嬢さんは知らんのだろ?」

婚約者「ま、まぁ…寝てたっていうか…意識もなかったし…」

イフィート「じゃあまだ式にこだわってんじゃねぇの?なんて説明すんだよ?」

シヴァ「あの夜に起きた出来事をありのままに伝えてやればいい」

イフィート「はぁ!?」

婚約者「そ、それはいくらなんでも…!?」

シヴァ「なんだ?」

イフィート「お、おめぇなぁ…!無神経も大概にしろよ!?」

婚約者「あいつがどんだけ人間に憧れてるか知ってんでしょう!?」

シヴァ「うむ。なおさら教えてやらないとな」

婚約者「そ、そんなん話したらショックで引きこもっちゃいますよ!」アセアセ
438: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:42:04 ID:Xsg4vDSHiM
シヴァ「…憧れているのなら知るべきだ。自分の夢見る物がどれ程の険しさを伴うか…」

婚約者「え?」

シヴァ「傍目に見れば美しく煌めく景色も…奥へ踏み入れば理想が陰る。
そこから目を背けていては実る物も実らない」

婚約者「理想が……陰る…。まぁ…そうっすね…」ガクッ

シヴァ「それでも望むのであれば…これ以上は口を挟まん。好きにさせてやる」

婚約者「!?」

イフィート「お?式をやらせてやんのか?」

シヴァ「望むのであればな…」

イフィート「いきなり気が変わるたぁらしくねぇな?どうしたんだ?」

シヴァ「…儂も親だからな。娘のワガママを聞いてやりたくもなる」

イフィート「ガハハハ!お前もようやく親らしくなったか!お嬢さんも大喜びだろうぜ?」

婚約者「で、でも…俺はもう……」

シヴァ「大丈夫だ。儂らが付いている」

婚約者「え?」

シヴァ「理想に届くかは分からんが…理想に近付ける努力はしてみろ。
女の幸せは男の甲斐性にかかっているんだぞ?」

婚約者「……!」ゴクリ

イフィート「へっ…たまにはそれっぽいことも言えんだな?」ニシシ

シヴァ「たまにとはなんだ、たまにとは?」

婚約者「……俺、絶対あいつを幸せにしてやります!」グッ

シヴァ「今さら言うまでもないだろう」

婚約者「え……」

シヴァ「お前なら娘を幸せにしてくれる。そう認めていたからこそ交際を許したんだ?」ニコッ

婚約者「…お、お義父さん」ウルッ

シヴァ「娘を頼むぞ?」ポンッ

婚約者「うぅ…は…い」グスッ
439: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:44:05 ID:aotAc0vzsc
イフィート「ガハハハ!泣くんじゃねぇよ、みっともねぇ!
頼まれたんだから、もっとシャンとしろっての!」バンッ

婚約者「う、うるせぇな…!分かってるよ!」グシッ

イフィート「なぁシヴァよ!めでたい話も出たことだ!まだ昼間だが男三人で盃を交わさねぇか!?」

シヴァ「そうだな。ちょうど儂の集落で作っている地の物が仕上がる時期だ。祝いに振る舞おう」

婚約者「お、俺もらってきます!」スクッ

シヴァ「おぉ、すまんな。慌てなくていいぞ。
集落を繋ぐ吊り橋も古くなり、縄や板もだいぶ傷んでいるからな。気を付けて行け?」

婚約者「はい!」

イフィート「つまみも貰ってこいよ!」

婚約者「つまみなんか、こっちのでいいだろ!じゃあ行ってくる!」ガチャッ

バタンッ

イフィート「ちぇっ…息子のくせに生意気だな。誰に似たんだか?」

シヴァ「お前しかいないだろう」

イフィート「はぁ!?俺はあんなんじゃねぇよ!?」

シヴァ「瓜二つだ」

イフィート「ふざけんじゃねぇ!俺はもっとたくましかったってんだ!」

シヴァ「ふ……」クスッ

イフィート「な、なんでにやけんだよ?」

シヴァ「こういう変化は悪くないな」

イフィート「……?なんだ、そりゃ?」キョトン
440: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:50:41 ID:aotAc0vzsc
―――谷間の吊り橋―――

族長の娘「うふ!頑固な父さんが許してくれるなんて!」タタタッ

ブラーン ブラーン ヒュールルル

族長の娘「あぁ…やっと夢が叶うんだ」ギシッ

族長の娘「衣装も考えなくちゃ!人間のドレ…ドレ…ドレッシングだっけ?なんかそんなのだよね!」ギシッギシッ

族長の娘「指輪とドレッシングでオシャレして…ち、誓いの…キス」ボッ

族長の娘「いっやーん!」ブルンブルン

スパッ ブチッ ガクンッ

族長の娘「きゃっ!?」ガシッ

グラングラン グラングラン

族長の娘「な、なに!?どうなってるの!?なんで風も強くないのに揺れ……」クルッ

魔導師「やあ、会えて嬉しいよ?」チャキッ

族長の娘「な、縄を切って…!なにするのよ!?危ないじゃないっ!?」

魔導師「まずは君の幸運に祝福を…」パチパチ

族長の娘「っていうか誰よ!?ま、まさか人間なの!?」ググッ

魔導師「そして度重なる不運に哀れみを込めて…」スッ

族長の娘「やめっ…!」ゾクッ
441: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/4(水) 22:54:14 ID:aotAc0vzsc
魔導師「…うそうそ?まだ切らないよ?」ピタッ

族長の娘「っ……はぁっ!はぁっ!」ドキドキ

魔導師「んふふ…んふふふふふふ」プルプル

族長の娘「お願い…!やめて…!私はホビットだけど人間を憎んだりしないわ!?」

魔導師「楽しいなぁ…うーん、楽しいよぉ…?」ジッ

族長の娘「」ビクッ

魔導師「今まで生きてきて考えたりした?こんな状況?」

族長の娘「」ブンブンッ

魔導師「だよねぇ…?思わないよねぇ?こんな縄一本に命を預けるなんて?」ニタニタ

族長の娘「わ、私が…何をしたの…?あなたに…迷惑かけた?」ブルブル

魔導師「……?」キョトン

族長の娘「大好きな人と…もうすぐ夢だった式を挙げられるの…。私…絶対に死ねないの…!」ギュッ

魔導師「……」

族長の娘「こんな事やめて…刃物を捨てて?お願いだから……」

魔導師「ごめんよ?」

族長の娘「……!わ、分かってくれたのね?」パァァ

魔導師「……」

族長の娘「え…?」

魔導師「不幸はいつもお構い無しに理不尽を叩き付ける…。
偶然にしろ、運命にしろ、出会ってしまった以上は避けようがないのさ…?」ギランッ

族長の娘「そ、そんな…あなたのさじ加減じゃない!?」
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うpろだ
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