1スレ
少年「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10
2スレ
カロル「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10
―――あらすじ―――
それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました
しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました
そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです
戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました
布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました
それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします
382: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:24:19 ID:HNswQRyMvc
シヴァ「これはどういうことかとアピシナ様に尋ねると朗らかに答えた」
シヴァ「『皆さんがおいしくいただいたので果実が喜んでる』のだと」
カロル「あ……」ハッ
シヴァ「なにか心当たりが?」
カロル「ボクも前に樹に力を使ったら枯れてたのに実が成りました!」
シヴァ「…実らせてしまったのか」
カロル「は、はい…?」
シヴァ「その実はどうなった?」
カロル「ともだちが食べて…それだけだったと思います」
シヴァ「そうか…」
カロル「い、いけなかった…ですか?」
シヴァ「…アピシナ様は実を分け与えた事で孤独になった」
カロル「……?」
シヴァ「実を食べれば傷も病も恐れなくていい。癒しの力はもう不要だと集落を追い出された」
シヴァ「そしてホビット族は実の力を過信し、人間の領地を攻めるようになった。
凄まじい治癒力から永遠の命を持っているんじゃないかと恐れられ、過激な種族へと変貌したそうだ」
シヴァ「一方的な侵略。争いの要因はホビットに切り替わった」
シヴァ「人間はホビットを恐れ、ついには降伏した…。
しかしホビットは許さなかった。何故なら力を持っているからだ」
シヴァ「アピシナ様の実によって得た治癒力は彼らの欲望を増長させてしまった。
もはや人間など狩りの対象としてしか見られぬ程、おとなしく穏やかな種族は残忍さを増していった」
シヴァ「だが…異変が起きた。樹が徐々に痩せ細り、枯れてしまったのだ」
シヴァ「元よりアピシナ様が不在になってからは実を付けなくなっていたが…問題は樹が枯れた途端に力が失われた事だ」
カロル「力って…治癒力?」
シヴァ「そうだ。それにより無謀な攻撃を繰り返していたホビット族は多大なる犠牲を払った」
シヴァ「そこでホビット族は再度、樹を蘇らせようとアピシナ様を探した」
シヴァ「…だが捜索も虚しく、とうに行方を眩ませていたアピシナ様を発見する事は叶わなかった」
383: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:27:43 ID:HNswQRyMvc
母「…アピシナ様がどうなったかは分かってないんですか?」
シヴァ「ホビット族の侵略が過激化した折りに傷付いた人間の領地を訪れ、傷を癒して回っていたと聞く」
カロル「じゃあアピシナさまは無事だったんだね!」パァァ
シヴァ「いや……」
カロル「へ…?」
シヴァ「ホビット族に蹂躙されてきた人間の怒りを一身に受け、苛烈な虐待にさらされたそうだ…。
そして癒しの力がホビット族の治癒力に関係するのではと疑われ、争いの道具として利用された」
母「まぁ…?じゃあ今度は人間がホビットを…?」
シヴァ「必死に説得を試み、人間を諫めようとしたらしいが争いの火は鎮まらず、とうとう決断を迫られた」
シヴァ「…人間に味方するか、ホビットに味方するか」
カロル「どっちにしたの…?」
シヴァ「どちらも選ばなかった」
母「え……で、でも」
シヴァ「人間が侵攻した折りにアピシナ様は最後の賭けに出た」
カロル&母「」ゴクリ
シヴァ「…争いの渦中を掻い潜り、枯れた大樹をもう一度咲かせたのだ」
カロル&母「!」
シヴァ「そして皆に呼び掛けた。この実を食せば誰も傷付かずに済む。もう争う必要はないのだと」
母「(な、なんだか…坊やから聞いた巡礼の話にそっくり?)」
カロル「ど、どうなったの…?」
シヴァ「…その言葉を皮切りに争いは更に熱を増した」
母「……!?」
シヴァ「果実さえあれば確実に勝てる…。相手を滅ぼせば全てを思うままに出来る…。
もはや誰一人として憎悪と欲望に抗えなくなっていた」
カロル「……」
384: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:29:36 ID:2jtQ6Mfo/w
シヴァ「醜くおぞましい争奪を目にして絶望に打ちひしがれたアピシナ様はその場で自らの命を絶った」
カロル「え…?」
シヴァ「それすら誰も気に止めず争い続けた…」
母「じゃ、じゃあ…果実はどちらかの手に渡ってしまったんですか?」
シヴァ「いや…しばらく争った後に皆は異変に気付いた。大樹が再び枯れていたのだ」
カロル「? どうして?」
シヴァ「原理は分からない。アピシナ様が死んだ後に枯れた事だけは確かだ」
カロル「……」
シヴァ「枯れた大樹とアピシナ様の死を目の当たりにした事で両者は初めて自分たちの愚かさを思い知った。そしてようやく争いは鎮まった」
カロル「…アピシナさまがかわいそう」
シヴァ「やむを得まい。結果として争いは止まったのだから」
カロル「そうだけど…」
シヴァ「形は変われど今もこうしてアピシナ様を教訓に伝えていけるのは…過ちとして深く意識されている証拠だ。
300年もの時間を費やし、じっくり反省した事で我々はこうした暮らしに甘んじている」
シヴァ「人間との関わりを無くし、自然に暮らす。それが最もよい形だ」
カロル「……」
母「……」
385: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:43:17 ID:HNswQRyMvc
カロル「シヴァさんは…ボクをなんとも思わないの?」
シヴァ「とても驚いてはいるが少年自身にどうという事はない」
カロル「ホント…?」
シヴァ「たとえ力を持っていても我らはそれに頼る気はない。すなわち君を特別視しないという事だ」
シヴァ「だが…出来れば他の住民には見せないでほしい。誰もが己を律する訳ではない」
カロル「わかりました…」
シヴァ「しかし…そうか。やはり…アピシナ様は実在したのだな。ますます人間とは関われん」
カロル「……」
シヴァ「君も癒しの力を持って生まれたということは…何か大きな運命に巻き込まれるかもしれんな」
母「(た、たぶんもう手遅れ…かも)」アセアセ
シヴァ「大いなる力は災いを招く。すぐにでも安住の地を定め、静かに暮らした方がいい」
母「」チラッ
カロル「……」
シヴァ「…が、どうするかは少年の自由だ。
我々で良ければ歓迎するが……ここも安全とは限らない。
人間の目に入れば滅ぼされてしまうだろう」
カロル「…大丈夫です。今の人間とボクたちなら…」
母「……」
シヴァ「なぜ言い切れる?」
カロル「300年前とはちがって人間もホビットも成長してるはずだよ?
昔はダメだったかもしれないけど今なら誰も欲張ったりしないよ!」
シヴァ「……」
386: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:46:15 ID:2jtQ6Mfo/w
カロル「知ってるんだ?そういう人間もいるって?」
シヴァ「そうか…。この時代にまた癒しの力が現れたのはアピシナ様の導きかもしれん。
ご自身で遂げられなかった想いを少年に託したんじゃないだろうか」
カロル「…ううん。関係ないよ。ボクはボクだもの」
シヴァ「ほう」
カロル「アピシナさまみたいに自分以外のみんなを思ってあげられる優しさなんてボクにはないもん」
カロル「ボクはボクのわがままで動いてるだけ。
だって…自分が楽しくないと嬉しい気持ちも共有できないでしょ?」
カロル「楽しくって嬉しい気持ちを一緒に感じれたら幸せなの。
だからボクはともだちを作りたいんだ?」
カロル「癒しの力があってもなくても…ボクは変わらないよ?
きっと同じわがまま言ってお母さまを困らせてたかも?」
シヴァ「ふむ…なるほど、少年はアピシナ様ではない。つまり生き方は左右されない」
母「」クスッ
カロル「ね!お母さま?」ニコッ
母「えぇ、そうね?」ニコッ
387: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:55:49 ID:2jtQ6Mfo/w
シヴァ「」ジーッ
カロル「?」
シヴァ「…澄み渡る風の中を優雅に羽ばたく鳥の群れはたくましい」
シヴァ「長旅には苦難が伴う。吹き付ける雨風を全身に浴びてなお、羽を休める事は許されない」
シヴァ「少年の瞳は穏やかに澄み渡っている。どんなに恐ろしい苦難も悠々と泳ぎ遊ぶ鳥のように」
カロル「…ボク鳥じゃないよ?」
母「…そうかもしれないわ?」
カロル「へ?」
母「坊やはそういう子よ?」ニコッ
カロル「???」チンプンカンプン
シヴァ「本来なら引き止めたいところだが…まだ羽を休める気はないのだろう?」
カロル「はい。会いたいともだちがいるんです!」
シヴァ「ともだち…?」
カロル「はい!」ニコッ
シヴァ「…そうか。ともだちか。うむ、喜ばしい」ニコッ
カロル「すっごく優しくていい人たちなんだ!」ニコニコ
シヴァ「ふむ…。そうか、そうか。たしかに少年はアピシナ様とは違う道を歩んでいるようだ」ニコニコ
388: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:58:11 ID:2jtQ6Mfo/w
シヴァ「あぁ、忘れてはいけなかった。ここへ流れ着いた経緯を聞いておこうか」
カロル「え、あ……それは…?」チラッ
母「…正直に話しましょう?」
カロル「そ、そうだね。実は……」
カクカクシカジカ
シヴァ「なんと…すでにそこまで成していたのか。だがそれなら…なぜ少年は姿を消した?」
母「」ドキンッ
シヴァ「人間と友情を結んだのなら、それで良かったんじゃないだろうか」
カロル「うーん…なんていうか…ボク方向オンチなんです!」
シヴァ「……」
母「(む、無理があるわ…。素直にお母さんのせいですって言っていいのよ…?)」ハラハラ
カロル「お母さまを迎えに行ったら帰り道が分かんなくなっちゃって…えへへ」テレテレ
シヴァ「ふむ。それではしかたないな」ウンウン
母「……わりと素直なんですのね」
シヴァ「追っ手が不安なら、ここに滞在してもいいが…出たくなったらいつでも言いなさい。
慣れない谷間は過酷で危険だ。案内がなければ外界へは出られないだろう」
母「ありがとうございます」ペコリ
カロル「ございます」ペコリ
シヴァ「我らはこの先も静かに生きるつもりだが…応援しているよ。穏やかに暮らせる日が来るといいな」
母「ふふ…親切な方たちでよかったわね?」
カロル「うん!」ニコッ
シヴァ「……」ニコニコ
389: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 23:02:41 ID:2jtQ6Mfo/w
>>374
支援ありがとうございます!
1月から3月までかなり忙しくなるので更新が滞るかもしれません…。
なるべく早い更新を心掛けます!申し訳ありません!
390: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 22:36:49 ID:kvfU/LDo0A
―――谷間の集落(渓谷の温泉)―――
カロル「はーっ…きもちぃー…」ヌクヌク
マルク「あんっ…」ヌクヌク
母「こんなに広い温泉があるなんて素敵なお宿ねぇ…」ヌクヌク
カロル「教会のお風呂もあったかいけど外で入るのって、ちょっぴりちがうね?」ホカホカ
母「そうね…。真っ暗だから誰も入ってこないし、ほぼ貸切状態で満喫出来るなんて贅沢だわ?
族長さんのお話だとあたし達、半日以上眠ってたらしいから…凝り固まってた体もほぐされる心地よ…」ヌクヌク
カロル「よかったね…。優しい人たちで?」
母「えぇ…。この分なら追っ手に見つかる心配もないでしょうし、本当に運が良かったわね?」
カロル「…そういえば憲兵さんたち、どうなったのかな?」
母「……悪い人たちを捕まえて今頃はあたし達を探してくれてるわよ」
カロル「そうだよね!」
母「…思い返すと、たくさんのことがあったわねぇ」
カロル「うん。たくさんいいことあった!」ニコッ
母「そう…?辛いことの方が多かった気がするけど?」
カロル「辛いこともたくさんだけど、いいこともたくさんでしょ?」ニコニコ
母「ふふ。そうかも?」クスッ
カロル「あ、でも…海に飛び込んだ時に…お母さまに編んでもらった帽子なくしちゃった」
母「あらあら?」
カロル「…大事にしてるのに、いつもなくすんだ?なんにも残ってないの…」チャプッ
母「また編んであげるから落ち込まないの?」クスッ
カロル「うー」ブクブク
母「はぁ…温泉って身体にいいのよ?ふしぎと疲れが取れて…ずっと浸かっていたくなるわ?」
カロル「…王子さまに会ったら、またみんなとも会えるかな?」チャプッ
母「会えるわよ?また人里に行って今度こそ連れてってもらいましょ?」ニコッ
カロル「うん!」パァァ
391: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 22:39:10 ID:iRSgF5ODfA
マルク「」パシャパシャ
カロル「あ!ボクも泳ぐー!」ジャブッ
マルク「わぅ?あんっ!」ジャブッジャブッ
母「あらあら、まぁ誰も見てないでしょうし、ちょっとくらい息抜きしたっていいわよね?」クスクス
パシャパシャッ ジャブジャブッ アハハハハ ワンッワンッ
母「あ…そういえばここって犬が入ってもよかったのかしら…?」
カロル「お母さまー!」パシャパシャッ
母「あら、どうしたの?」
カロル「あっちにお猿さんたちがいたよ!」キャッキャッ
母「まぁ!すごいわね?」
ワンッワンッ キーッキーッ!
カロル「あ、マルクとお猿さんがケンカしてる!」
母「あ、あらま…犬猿の仲って本当だったのね?」
カロル「止めてくる!」パシャパシャッ
母「刺激しないように気をつけなさいね」
母「野生の獣も入れるならマルクが入っても叱られないかしら…」ヌクヌク
392: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 22:43:17 ID:kvfU/LDo0A
〜〜〜朝〜〜〜
―――族長の家―――
母「すみません。宿を取っていただいた上、朝食にまで招いてもらっちゃって?」
族長の妻「いいのよ、いいのよ?外界からのお客様なんて珍しいですもの?
あんまり張り切っちゃったもんですから普段より味付けが濃いかもしれませんけど、お口に合わなかったらおっしゃってね?」ニコニコ
母「いえいえ、滅相もないです?
こんなに見栄えのいいお食事は久しぶりで、なんだかお腹が空いてきました…?」
族長の妻「まぁうれしっ!たんとお召し上がりになって?」ニコニコ
カロル「いただきまーす!」
マルク「ワッフーン!」シッポフリフリ
母「いただきます。……まぁ?」ヒョイッ パクッ
族長の妻「お味はいかが?」ニコニコ
母「んぅ〜!とっても美味しいですわ!」モグモグ
カロル「へぇ、おばひゃま!ほれにゃに?(ねぇ、おばさま!これなに?)」モグモグ
族長の妻「ウフ!磯で採れた琥珀貝の酒蒸しよ?この辺りにしか棲息してない貴重な貝なんですよ?」
カロル「ひょうひゃんや!ほのふへおのふぉおいひい!(そうなんだ!この漬物もおいしい!)」パクパク
族長の妻「それは大根の酢漬けよ?」ニコニコ
母「坊や!口に入れたまま喋らないの?」
カロル「あ、ほへんあひゃい…(あ、ごめんなさい)」シュン
シヴァ「川で採れた貝や魚に加えて山菜や獣肉も豊富に採れるんでな。
この集落では食事に飽きがないともっぱらの評判だ」
族長の妻「んまっ?そんな評判あったかしら?」
シヴァ「あるとも」ムシャッ
族長の妻「ふ〜ん。そんなことよりあなたお仕事は?族長だって働かざる者食うべからずですよ?」
シヴァ「霧けぶる頃に済ませたさ。大量に収穫したのでいくらか近隣に分けておいた」ヒョイッ
族長の妻「そうですか?じゃあ、たまには娘の所にでも顔を出しておいでなさいな?」
シヴァ「……んむ」ムシャッ
393: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 22:46:59 ID:iRSgF5ODfA
母「娘さんと離れて暮らしてらっしゃるんですか?」
族長の妻「そうなんですよ?
娘も無事にいい相手を見つけて向こう岸の集落に同棲してるんですけど、この人ったら未だに顔も出さないで…」
シヴァ「……」モグモグ
母「まぁ?どうして?」
族長の妻「それがねぇ?あっちの集落の族長とケンカして…今では犬猿の仲に?」
母「犬猿の仲……」
カロル「はるふほおひゃるひゃんひはい(マルクとお猿さんみたい)」モグモグ
マルク「はっはっ」ガツガツ
族長の妻「いい機会だし仲直りしたら?」
シヴァ「…儂から出向く事はない」
族長の妻「これなんだから…男の人っていつまでも根に持ちますよねぇ?」
カロル「ほうひへあははるいの?(どうして仲悪いの?)」モグモグ
母「坊や?さっきお母さん、なんて言ったっけ?」ジーッ
カロル「んっ…!く、口に入れたまま喋らない…?」ゴックン
母「そうでしょう?言われたら、すぐにやめなさい?」
カロル「はーい…」
シヴァ「不仲の原因か…。聞かせてもいいが聞かなくても……」
カロル「聞きたいっ!」
シヴァ「……そうか」
族長の妻「面白い話でもないんですけどねぇ」
母「関係を絶つ程の不仲って…なにがあったんですか?」
シヴァ「うむ。あれは1ヶ月前……」
母「(意外と最近なのね…)」
394: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 22:49:20 ID:iRSgF5ODfA
〜〜〜回想(シヴァ)〜〜〜
別集落の族長「おう、よく来たな!シヴァ!」
シヴァ「突然呼び立てたりするとは何事だ。イフィート?」
別集落の族長(イフィート)「ガッハッハ!まぁ座れ!」
シヴァ「何用だ?」ストッ
イフィート「今日はな?お前にとっても重要な話がある?」
シヴァ「……?年間の行事についてか?収穫祭、大漁豊祈、各対抗の行事以外にもまた新たな物を?」
イフィート「いぃや!そうじゃない!」
シヴァ「ではなんだ?」
イフィート「俺んとこのボンクラ息子とお前んとこのお嬢ちゃんが交際して早3年になるな!」
シヴァ「うむ」
イフィート「実はだな!息子が契りたいと言ってきた!」
シヴァ「ほう!」
イフィート「普通はパパッとトントン拍子にいくもんだが…まぁ住む場所が違うといろいろあんだろ?」
シヴァ「たしかに重要だな。どちらのふるさとに暮らすのか…」
イフィート「まぁそりゃどっちでも構やしねぇんだがな」
シヴァ「儂もだ。当人の意思を重んじたい」
イフィート「ところがだよ?なんかぁ…そのぅ…アレなんだよなぁ」ポリポリ
シヴァ「なんだ?」
イフィート「挙式ってーの?なんかそんな話がなぁ…したいだのしたくないだの?」
シヴァ「すればいいじゃないか。儀に則り、祝福しよう」
イフィート「うんぅ…だからさぁ…」モゴモゴ
シヴァ「……?煮えきらん奴だな?」
395: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 22:53:27 ID:kvfU/LDo0A
シヴァ「そうと決まれば早速、支度に取り掛かろう。場所はどちらにする?」
イフィート「待て待て待て?そうじゃないんだ?
あいつらなぁ、ホビット族の婚礼儀式はしたくねぇんだと?」
シヴァ「なに?」
イフィート「段取りとか細かいのはいいとして…見せ場ってのも変だが最後にお互い手製の花冠を贈り合うだろ?」
シヴァ「あぁ、新郎新婦が愛を確認する為に相手を想い、手作りした花冠を互いの頭に飾るのが習わしだ」
イフィート「それがイヤなんだと…」
シヴァ「……なぜ?」
イフィート「知るかよ!若い奴にとっちゃ古臭く感じんじゃねーの?」
シヴァ「ではどうしたいと?」
イフィート「だからよ…なんか人間のやり方?」
シヴァ「人間の?」
イフィート「花冠じゃなくて宝石の指輪とか…ち、ち、誓いのぶっチューとか…したいんだと?」モジモジ
シヴァ「げ、下品だ!夫婦になると言っても最低、1月は純潔を保つのが……」
イフィート「わ、分かってんだよ!んなこたぁ!?けどしょうがねーだろ!そうしてぇっつーんだから!?」
シヴァ「……近頃の若い者は」ハァァ
イフィート「溜め息しか出ないが…もう一個あんだよ」
シヴァ「まだあるのか?」
イフィート「教会で式を挙げたいんだと?」
シヴァ「教会!?」
イフィート「この前、出先から戻った仲間が余計なこと吹き込んだらしくてな。
ホビットと人間が和解して共存を始めたとか…人間の文化はああだこうだとよ」
396: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 22:56:00 ID:kvfU/LDo0A
シヴァ「しかし教会はな…」
イフィート「そうなんだよなぁ…。つってもずっと隠れ暮らした若い連中は人間を知らんだろ?
いつの間にやら変な憧れ持ってよ…。絶対に人間の教会で式を挙げるって…」
シヴァ「……」
イフィート「俺も噂程度でしか聞いてないが…まぁ安全そうなら人里に出て頼み込んでもいいかなぁと」
シヴァ「ダメだ」
イフィート「……」
シヴァ「関わるべきじゃない。もし人里に出て危害を加えられたら大変だ。この集落も見つかるかもしれん」
イフィート「で、でもよぉ…」
シヴァ「アピシナ様の教訓を忘れたか?」
イフィート「昔話だろ?今はもう平気だって?
息子もお嬢ちゃんも頑固だし説得出来ねぇよ?
それに一生に一度のおめでたい行事だ。本人らの意思を汲みたいじゃねぇか?」
シヴァ「……なんと言われようと納得出来ん」
397: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 22:58:07 ID:kvfU/LDo0A
イフィート「堅物だな!いいじゃねぇか!それで満足するってんなら一度くらい!?」
シヴァ「そもそも愛し合ってるのなら式など不要だ。わざわざやる事もない」
イフィート「はぁ!?かわいそうじゃねぇか!?
おめぇも親なら子の晴れ姿を見たくないのか!?」
シヴァ「やるのならホビット族の習わしに沿った式をやるべきだ」
イフィート「それじゃイヤだって言ってんだよ!?」
シヴァ「…では交際を絶とう」
イフィート「た、た……!?」
シヴァ「赤の他人なら式をする理由もない」
イフィート「〜〜〜!」プルプル
シヴァ「娘には儂から伝えておく。お前の息子にも言っておいてくれ」
イフィート「てめぇ…本気か…!?子供の幸せ奪うのか!?」
シヴァ「集落全体の問題だ。族長として住民たちを守らなければな」
イフィート「出てけっ!!」
シヴァ「……」
イフィート「…お前が正しいのかもしらんがよ?親のエゴってのもあんだろが…!」
シヴァ「…ふむ」
イフィート「そんなに言うならお前が説得しやがれ!?
それまで顔見せんな!!集落同士の付き合いも無しだ!!」
シヴァ「分かった」ガタッ
イフィート「……!」ワナワナ
シヴァ「」スタスタ ガチャッ
バタンッ……
……………………
398: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 23:01:40 ID:kvfU/LDo0A
シーン
カロル「……」
母「……」
シヴァ「どうした?」
族長の妻「ね!呆れちゃうでしょう!?」
母「…う、うーん」
シヴァ「なぜだ?」
母「それはちょっとひどすぎません…?」
シヴァ「……」
族長の妻「娘も怒っちゃって絶縁状態なんですよ!こんな狭い谷間で!」
シヴァ「だが…」
母「ま、まぁおっしゃるのは分かりますよ?」
族長の妻「だからって普通、親が子供に別れろなんて言います!?」
母「さ、さすがに…よほど悪い相手でもない限りは?」
族長の妻「でしょ!でしょ!?」
母「昨日もお話しましたけど実際にホビットと人間は和解してますのよ?」
シヴァ「…たとえ今は和解していても、いずれ決裂する」
カロル「そんなことないよ。約束したもん…?」
シヴァ「あてにならんな」
カロル「……」シュン
399: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 23:08:42 ID:kvfU/LDo0A
シヴァ「儂の考えが正しいかは分からん。だが…儂は集落の長として考えねばならん」
シヴァ「この地に住まう全ての者が平等に穏やかな日々を過ごせるよう…我らの暮らしに争いの日が訪れぬよう…」
母「……」
シヴァ「どうあっても意見は衝突する。なにもかもが一致して納得に落ち着く事などありえない」
シヴァ「なればこそ最終的に信じられるのは己となる。最良を模索し、最善を尽くす。それが族長である儂の責務だ」
シヴァ「少年の信じる人間の世界は美しくきらびやかで、広く鮮やかに見渡せるものなのだろう。決して間違ってはいない」
シヴァ「しかし…儂には同じ見方が出来ぬ。人間の世界は醜く不条理だ」
カロル「分かるよ…。でもシヴァさんはそれでいいの?」
シヴァ「……」
カロル「…わがままかもしれないけど、外に出れば叶う夢なんだよ?」
シヴァ「…たった二人の為に大勢を巻き込めん。
外を知りたければ…ふるさとを捨ててもらう他ない」
シヴァ「儂も親だ。願わくは…娘と近しい距離でありたい」
母「…坊や、あたしも族長さんは間違ってないと思うわ?」
カロル「間違ってないよ。だけど…」
母「それにあたし達が口出ししていい話でもないと思うの」
カロル「はい…」
族長の妻「だからって…娘がかわいそうよ」
シヴァ「…娘だからと贔屓してはならない」
族長の妻「じゃあどうするの?このままじゃ娘とは疎遠なままよ!?」
シヴァ「待つしかない。きっと分かってくれる」
マルク「」ガッガッ
シヴァ「あぁ、君たちの服だが妻が洗っておいた。後で着替えるといい」
母「ど、どうもすみません…?」ペコリ
族長の妻「いいえ!どういたしまして!」プンスカ
母&カロル「……」
400: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 23:12:28 ID:iRSgF5ODfA
―――谷間の集落(川の岸辺)―――
族長の娘「」ジャバジャバ
イフィート「お?朝っぱらから洗濯かい!精が出るなぁ?」スタスタ
族長の娘「あ、お義父さん!おはようございます!彼なら狩りに出かけてますよ?」
イフィート「ん…そか。ところであの話だけど」
族長の娘「」ピタッ
イフィート「すまねぇな。俺がカッとなっちまったばかりに…」
族長の娘「お義父さんのせいじゃありませんから!全部うちの父が悪いんです!」ジャバジャバ
イフィート「はぁ…そのぅ…なんとかならねぇのか?仲直りってか…」
族長の娘「父が認めてくれるまでしません!」ジャバジャバ
イフィート「い、いやぁ…あいつもさ。
真面目過ぎるってか…なんてぇのかな。冷めたとこもあんけどお嬢さんを思って……」
族長の娘「どこがですか!?」キッ
イフィート「」ビクッ
族長の娘「いきなり彼と別れるか、ふるさとと縁を断つか選べって言われたんですよ!?」
イフィート「う、うん。分かるぜ?ひでぇよな?」
族長の娘「ひどいですよ!!私はただ式を挙げたいってお願いしただけなのに!」
イフィート「で、でもよ?やっぱり人間のやり方じゃなくても…」
族長の娘「お義父さんまで式なんかやめろと!?」
イフィート「そ、そうじゃねぇよ?」アセアセ
401: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 23:15:02 ID:iRSgF5ODfA
イフィート「ただなぁ…人間を知ってる世代からすりゃ…教会なんざ諸悪の根源だし……」ポリポリ
族長の娘「和解したんでしょう!?聞きましたよ!
救い主って呼ばれるホビットが変えてくれたって!?」
イフィート「う、う、うん。うん。そうだな?
うん、お嬢さんの言うとおりかもな?」アセアセ
族長の娘「綺麗な宝石の指輪に誓いの口付け…そんな素敵な話を聞いてしまったら憧れてもしかたないじゃない…?」シュン
イフィート「(光る石ころやらぶっチューがそんなにいいかね…?男の俺にゃよく分からんぜ…)」ウーン
族長の娘「……古い風習なんてだいっ嫌い!
私はもっとたくさんの世界を知りたいの!」ジャバジャバ
族長の娘「こんな狭い所でじっと過ごしてなんかいられない…!」
イフィート「あ、あのなぁ…別に俺たちも好きでそうしてるんじゃ……」
族長の娘「分かってますよ!でも…若い子たちはみんな外界を知りたがってますよ!?」
イフィート「……」
族長の娘「…すみません」
イフィート「いや、いいんだけどな…。まぁ…また親父さん説得してみるから」
族長の娘「…ありがとうございます。お義父さんにまで迷惑かけてごめんなさい」
イフィート「いいんだよ。お嬢さんとは家族になんだから水臭いのは無しだ?
さっさと式を認めさして、また仲良くいこうや?」
族長の娘「…はい」ニコッ
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