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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


375: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:02:06 ID:HNswQRyMvc
―――西の領土(渓谷の川)―――

ペチペチ ペチペチ

カロル「ん…んぅぅ…?」パチッ

ジーッ

カロル「え?」ビクッ

ゾロゾロ ゾロゾロ

カロル「(え?え?なに?すごいたくさん?)」ビクビク

???「気が付いたか、少年?」

カロル「あ、あの……」オロオロ

ボォォォ パチパチ パチパチ

カロル「あ…焚き火だ…。あったかいや…」ボーッ

???「安心しなさい。我々は同族だ」

カロル「……………あれ?」パッパッ

カロル「(な、なにも着てない…!どうして…!?)」

???「ずぶ濡れだったので衣服は乾かしている」

カロル「あ、そうなんだ…?ありがとうございます…」ペコリ

カロル「(よく見たら、他のみんなも下着しかしてないみたい…)」
376: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:03:01 ID:HNswQRyMvc
???「君はなぜここに流れ着いた?」

カロル「えと…それ、は…!?」ビクッ

カロル「(そういえば…お母さまは?マルクはどうなったの…!?)」キョロキョロ

???「……?」

カロル「あ、あの…ボクだけですか!流れてきたの!」

???「そうか。先に流れてきた獣と女は少年の知人か」

カロル「い、生きて…ますよね…?」ブルッ

???「潮の流れが強かったのか所々打ち身をしていた。
一応の手当てはしてあるが意識は戻っていない。
なにぶん我々は自然生が染み着いているのでな。
ここでは施術に必要な物が不足しているんだ」

カロル「あ、会わせてください!どこにいるんですか!?」

???「見たら心を痛めるぞ。痣や腫れだらけで痛ましい」

カロル「平気です!ボクが治しますから!おねがいします!」

???「…ほう。その歳で医術を?だがさっきも言ったようにここでは必要な物が揃わないぞ?」

カロル「大丈夫です!なんとかします!」

???「ふむ。そこまで言うなら……皆、集落へ戻るぞ」

ワラワラ ワラワラ

カロル「……!」ハラハラ
377: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:05:54 ID:HNswQRyMvc
―――谷間の集落(宿屋)―――

カロル「お…かあさま…まるく……」

???「この獣が女の衣服を噛んで泳いでいた。
疲弊しきっていたのか岸辺に着いた矢先に気絶してしまったが」

母「」グッタリ

マルク「」グッタリ

カロル「ごめ…ね…!ありがとう…マルク」ウルッ

???「今は気を失っているだけだが衰弱が激しい。
見つけた時は息もしていなかった。海水をたっぷり吸ったようだ」

カロル「…!」グシッ

???「…治せるのか?」

カロル「」ピトッ

???「……?」

フワッ フワッ

母「う……ん…?」パチッ

マルク「」スヤスヤ

母「あら、坊や…?どうして裸んぼなの?」キョトン

カロル「お母さまぁ!!」ダキッ

母「きゃっ!?あ、あれ…?あたしも…裸?」ギョギョッ
378: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:07:15 ID:2jtQ6Mfo/w
???「……」ジーッ

母「っ!?だ、だれ!?」ビクッ

???「気が付いてよかった。儂は族長のシヴァだ」

母「……?」

カロル「ボクたちを助けてくれたんだって?」コショコショ

母「まぁ…!?すみません、お礼も言わずに…!」アセアセ

シヴァ「気にしなくていい。ところで今のはなんだ?」

母「い、今の…と言いますと?」

シヴァ「少年が手を触れた途端にお前様の痣や腫れが引いた。獣も安らかに寝息を立てている」

母「そ、それは…あの…ツボ押し……」

シヴァ「癒しの力なのか?」

カロル「え…?」

母「知ってらっしゃるんですか…!?」

シヴァ「あぁ、知っている。この目で見たのは初めてだが」

母「し、失礼ですが…ここに人間は?」

シヴァ「いない。ホビット族だけだ」

母「で、でしたらなんで人間の迷信を…?」

シヴァ「? 癒しの力は人間の迷信ではない」

母「えっ」
379: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:12:28 ID:2jtQ6Mfo/w
シヴァ「癒しの力とは我らが祖先アピシナ様から伝わったものだ」

母「アピシナって…アピシナの樹の…?」

シヴァ「うむ」

カロル「…アピシナの樹?お爺さまが昔、聞かせてくれたおとぎ話かな?」

母「え、あぁ…そうね。坊やが人間に興味を持たないようによく言い聞かせてたっけ…」

シヴァ「おとぎ話などではない」

母「ど、どういうことですか…?」

シヴァ「過去にあった事実だ」

カロル「そうなの?」

母「事実って…なんでわざわざ人に虐げられた話を残すんですか?」

シヴァ「人だけではない」

母「……?」

シヴァ「アピシナ様は全てに嘲られ、誰にも偲ばれる事なく、この世を去った」

シヴァ「あれは今から300年も昔……」

母「あ、あの!」

シヴァ「……?」

母「お、お話の前に…なにか着る物を貸していただけませんか?」モジモジ

シヴァ「…我らの民族着で良ければ」

母「お、お願いします…!」カァァ

カロル「ちょっぴり寒いもんね?」

シヴァ「あまり暖かくはならないが服が乾くまでの辛抱だ。宿の主人に借りてこよう」スタスタ
380: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:17:03 ID:2jtQ6Mfo/w
シヴァ「悪いがそれしか無くてな。肌に合うかどうか?」

カロル「ぴったりです!」ジャーン

母「ぴ、ぴったりだけど…下着なんですね…?」モジモジ

シヴァ「狼の皮で編んだ衣服だ。寒さを感じるなら羊毛のコートもあるが…」

母「あ、出来ればそれも…」

シヴァ「うむ。あまり取れない貴重な素材なので宿にはない。儂の汗が染み込んだ古着でいいなら持ってくるが」

母「…そ、そういえばあたし暑がりでした。やめときます」

カロル「この下着も?」

母「えっ」ドキンッ

シヴァ「それは宿屋の既製品だ」

母「(宿屋のなら清潔…)」ホッ

シヴァ「さて、まずは事情を聞かせてもらおうか」

母「へ?さ、さっきのお話は…?」

シヴァ「?」

母「あ、アピシナ様の…?」

シヴァ「あぁ…聞かせてもいいが聞かなくてもいいぞ。多分、今後なんら影響もない話だ」

母「そ、そうですか」

カロル「えー!気になるよ!」

シヴァ「そうか?」

カロル「うん!聞いてみたい!」

シヴァ「ふむ…分かった」
381: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:19:25 ID:HNswQRyMvc
シヴァ「今から300年以上前、まだ人もホビットも散り散りに独立して暮らし、国のような社会形態も無かった頃だ」

シヴァ「人は平地や草原地帯を支配し、ホビットは森林や野山に根付いていた。
互いを敵と見なし、幾つもの時を血に濡らした混沌の時代」

カロル「人間とボクたちは昔から仲が悪かったの?」

シヴァ「うむ。食料や衣服となる獲物、武器や住み処となる自然物。
異なる地形に根差しているからこそ自分たちの持たざる物が欲しくなる。
人間はそういった欲望が特に強かった」

シヴァ「攻めてくるのは人の群れ、それを迎撃するホビット族。争いの要因は決まって人間だった」

シヴァ「しかしある時、不思議なホビットが現れた。
どんな傷や病もたちどころに癒してしまうホビットだ」

母「それがアピシナ様なんですか…?」

シヴァ「そうだ。どこからともなく突如、ホビット族の集落に現れたらしい。
その実態や過去は明らかにされていないが…とにかく変わり者であったそうな」

シヴァ「ある時には捕らえられた人間の傷を癒し、こっそり逃がしたと聞く。
またある時には人間との仲を取り成そうと一人で平地に赴き、殺されかけて逃げ帰ってきたとか」

母「……」ジッ

カロル「なんでボクを見るの?」キョトン

シヴァ「またまたある時には空から種が降ってきたと騒ぎ、相手にされず一人で育てていたとか。
とても風変わりなお方だが、それでも癒しの力は役立つ為、誰も何も言わなかった」

シヴァ「ところがある時、事情が大きく変わった。
それはアピシナ様が育てた種が樹となり、実を付けた頃だ」

シヴァ「アピシナ様は集落の皆に実を配り、食べさせてやった。
するとその日から誰一人、ケガや病気をしなくなった」

シヴァ「獣に噛まれても不注意で木から転げ落ちても傷はすぐに癒え、病に至っては発症する兆しもなく、ホビット達は首を傾げた」
382: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:24:19 ID:HNswQRyMvc
シヴァ「これはどういうことかとアピシナ様に尋ねると朗らかに答えた」

シヴァ「『皆さんがおいしくいただいたので果実が喜んでる』のだと」

カロル「あ……」ハッ

シヴァ「なにか心当たりが?」

カロル「ボクも前に樹に力を使ったら枯れてたのに実が成りました!」

シヴァ「…実らせてしまったのか」

カロル「は、はい…?」

シヴァ「その実はどうなった?」

カロル「ともだちが食べて…それだけだったと思います」

シヴァ「そうか…」

カロル「い、いけなかった…ですか?」

シヴァ「…アピシナ様は実を分け与えた事で孤独になった」

カロル「……?」

シヴァ「実を食べれば傷も病も恐れなくていい。癒しの力はもう不要だと集落を追い出された」

シヴァ「そしてホビット族は実の力を過信し、人間の領地を攻めるようになった。
凄まじい治癒力から永遠の命を持っているんじゃないかと恐れられ、過激な種族へと変貌したそうだ」

シヴァ「一方的な侵略。争いの要因はホビットに切り替わった」

シヴァ「人間はホビットを恐れ、ついには降伏した…。
しかしホビットは許さなかった。何故なら力を持っているからだ」

シヴァ「アピシナ様の実によって得た治癒力は彼らの欲望を増長させてしまった。
もはや人間など狩りの対象としてしか見られぬ程、おとなしく穏やかな種族は残忍さを増していった」

シヴァ「だが…異変が起きた。樹が徐々に痩せ細り、枯れてしまったのだ」

シヴァ「元よりアピシナ様が不在になってからは実を付けなくなっていたが…問題は樹が枯れた途端に力が失われた事だ」

カロル「力って…治癒力?」

シヴァ「そうだ。それにより無謀な攻撃を繰り返していたホビット族は多大なる犠牲を払った」

シヴァ「そこでホビット族は再度、樹を蘇らせようとアピシナ様を探した」

シヴァ「…だが捜索も虚しく、とうに行方を眩ませていたアピシナ様を発見する事は叶わなかった」
383: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:27:43 ID:HNswQRyMvc
母「…アピシナ様がどうなったかは分かってないんですか?」

シヴァ「ホビット族の侵略が過激化した折りに傷付いた人間の領地を訪れ、傷を癒して回っていたと聞く」

カロル「じゃあアピシナさまは無事だったんだね!」パァァ

シヴァ「いや……」

カロル「へ…?」

シヴァ「ホビット族に蹂躙されてきた人間の怒りを一身に受け、苛烈な虐待にさらされたそうだ…。
そして癒しの力がホビット族の治癒力に関係するのではと疑われ、争いの道具として利用された」

母「まぁ…?じゃあ今度は人間がホビットを…?」

シヴァ「必死に説得を試み、人間を諫めようとしたらしいが争いの火は鎮まらず、とうとう決断を迫られた」

シヴァ「…人間に味方するか、ホビットに味方するか」

カロル「どっちにしたの…?」

シヴァ「どちらも選ばなかった」

母「え……で、でも」

シヴァ「人間が侵攻した折りにアピシナ様は最後の賭けに出た」

カロル&母「」ゴクリ

シヴァ「…争いの渦中を掻い潜り、枯れた大樹をもう一度咲かせたのだ」

カロル&母「!」

シヴァ「そして皆に呼び掛けた。この実を食せば誰も傷付かずに済む。もう争う必要はないのだと」

母「(な、なんだか…坊やから聞いた巡礼の話にそっくり?)」

カロル「ど、どうなったの…?」

シヴァ「…その言葉を皮切りに争いは更に熱を増した」

母「……!?」

シヴァ「果実さえあれば確実に勝てる…。相手を滅ぼせば全てを思うままに出来る…。
もはや誰一人として憎悪と欲望に抗えなくなっていた」

カロル「……」
384: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:29:36 ID:2jtQ6Mfo/w
シヴァ「醜くおぞましい争奪を目にして絶望に打ちひしがれたアピシナ様はその場で自らの命を絶った」

カロル「え…?」

シヴァ「それすら誰も気に止めず争い続けた…」

母「じゃ、じゃあ…果実はどちらかの手に渡ってしまったんですか?」

シヴァ「いや…しばらく争った後に皆は異変に気付いた。大樹が再び枯れていたのだ」

カロル「? どうして?」

シヴァ「原理は分からない。アピシナ様が死んだ後に枯れた事だけは確かだ」

カロル「……」

シヴァ「枯れた大樹とアピシナ様の死を目の当たりにした事で両者は初めて自分たちの愚かさを思い知った。そしてようやく争いは鎮まった」

カロル「…アピシナさまがかわいそう」

シヴァ「やむを得まい。結果として争いは止まったのだから」

カロル「そうだけど…」

シヴァ「形は変われど今もこうしてアピシナ様を教訓に伝えていけるのは…過ちとして深く意識されている証拠だ。
300年もの時間を費やし、じっくり反省した事で我々はこうした暮らしに甘んじている」

シヴァ「人間との関わりを無くし、自然に暮らす。それが最もよい形だ」

カロル「……」

母「……」
385: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:43:17 ID:HNswQRyMvc
カロル「シヴァさんは…ボクをなんとも思わないの?」

シヴァ「とても驚いてはいるが少年自身にどうという事はない」

カロル「ホント…?」

シヴァ「たとえ力を持っていても我らはそれに頼る気はない。すなわち君を特別視しないという事だ」

シヴァ「だが…出来れば他の住民には見せないでほしい。誰もが己を律する訳ではない」

カロル「わかりました…」

シヴァ「しかし…そうか。やはり…アピシナ様は実在したのだな。ますます人間とは関われん」

カロル「……」

シヴァ「君も癒しの力を持って生まれたということは…何か大きな運命に巻き込まれるかもしれんな」

母「(た、たぶんもう手遅れ…かも)」アセアセ

シヴァ「大いなる力は災いを招く。すぐにでも安住の地を定め、静かに暮らした方がいい」

母「」チラッ

カロル「……」

シヴァ「…が、どうするかは少年の自由だ。
我々で良ければ歓迎するが……ここも安全とは限らない。
人間の目に入れば滅ぼされてしまうだろう」

カロル「…大丈夫です。今の人間とボクたちなら…」

母「……」

シヴァ「なぜ言い切れる?」

カロル「300年前とはちがって人間もホビットも成長してるはずだよ?
昔はダメだったかもしれないけど今なら誰も欲張ったりしないよ!」

シヴァ「……」
386: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:46:15 ID:2jtQ6Mfo/w
カロル「知ってるんだ?そういう人間もいるって?」

シヴァ「そうか…。この時代にまた癒しの力が現れたのはアピシナ様の導きかもしれん。
ご自身で遂げられなかった想いを少年に託したんじゃないだろうか」

カロル「…ううん。関係ないよ。ボクはボクだもの」

シヴァ「ほう」

カロル「アピシナさまみたいに自分以外のみんなを思ってあげられる優しさなんてボクにはないもん」

カロル「ボクはボクのわがままで動いてるだけ。
だって…自分が楽しくないと嬉しい気持ちも共有できないでしょ?」

カロル「楽しくって嬉しい気持ちを一緒に感じれたら幸せなの。
だからボクはともだちを作りたいんだ?」

カロル「癒しの力があってもなくても…ボクは変わらないよ?
きっと同じわがまま言ってお母さまを困らせてたかも?」

シヴァ「ふむ…なるほど、少年はアピシナ様ではない。つまり生き方は左右されない」

母「」クスッ

カロル「ね!お母さま?」ニコッ

母「えぇ、そうね?」ニコッ
387: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:55:49 ID:2jtQ6Mfo/w
シヴァ「」ジーッ

カロル「?」

シヴァ「…澄み渡る風の中を優雅に羽ばたく鳥の群れはたくましい」

シヴァ「長旅には苦難が伴う。吹き付ける雨風を全身に浴びてなお、羽を休める事は許されない」

シヴァ「少年の瞳は穏やかに澄み渡っている。どんなに恐ろしい苦難も悠々と泳ぎ遊ぶ鳥のように」

カロル「…ボク鳥じゃないよ?」

母「…そうかもしれないわ?」

カロル「へ?」

母「坊やはそういう子よ?」ニコッ

カロル「???」チンプンカンプン

シヴァ「本来なら引き止めたいところだが…まだ羽を休める気はないのだろう?」

カロル「はい。会いたいともだちがいるんです!」

シヴァ「ともだち…?」

カロル「はい!」ニコッ

シヴァ「…そうか。ともだちか。うむ、喜ばしい」ニコッ

カロル「すっごく優しくていい人たちなんだ!」ニコニコ

シヴァ「ふむ…。そうか、そうか。たしかに少年はアピシナ様とは違う道を歩んでいるようだ」ニコニコ
388: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 22:58:11 ID:2jtQ6Mfo/w
シヴァ「あぁ、忘れてはいけなかった。ここへ流れ着いた経緯を聞いておこうか」

カロル「え、あ……それは…?」チラッ

母「…正直に話しましょう?」

カロル「そ、そうだね。実は……」

カクカクシカジカ

シヴァ「なんと…すでにそこまで成していたのか。だがそれなら…なぜ少年は姿を消した?」

母「」ドキンッ

シヴァ「人間と友情を結んだのなら、それで良かったんじゃないだろうか」

カロル「うーん…なんていうか…ボク方向オンチなんです!」

シヴァ「……」

母「(む、無理があるわ…。素直にお母さんのせいですって言っていいのよ…?)」ハラハラ

カロル「お母さまを迎えに行ったら帰り道が分かんなくなっちゃって…えへへ」テレテレ

シヴァ「ふむ。それではしかたないな」ウンウン

母「……わりと素直なんですのね」

シヴァ「追っ手が不安なら、ここに滞在してもいいが…出たくなったらいつでも言いなさい。
慣れない谷間は過酷で危険だ。案内がなければ外界へは出られないだろう」

母「ありがとうございます」ペコリ

カロル「ございます」ペコリ

シヴァ「我らはこの先も静かに生きるつもりだが…応援しているよ。穏やかに暮らせる日が来るといいな」

母「ふふ…親切な方たちでよかったわね?」

カロル「うん!」ニコッ

シヴァ「……」ニコニコ
389: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/21(水) 23:02:41 ID:2jtQ6Mfo/w
>>374
支援ありがとうございます!
1月から3月までかなり忙しくなるので更新が滞るかもしれません…。
なるべく早い更新を心掛けます!申し訳ありません!
390: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 22:36:49 ID:kvfU/LDo0A
―――谷間の集落(渓谷の温泉)―――

カロル「はーっ…きもちぃー…」ヌクヌク

マルク「あんっ…」ヌクヌク

母「こんなに広い温泉があるなんて素敵なお宿ねぇ…」ヌクヌク

カロル「教会のお風呂もあったかいけど外で入るのって、ちょっぴりちがうね?」ホカホカ

母「そうね…。真っ暗だから誰も入ってこないし、ほぼ貸切状態で満喫出来るなんて贅沢だわ?
族長さんのお話だとあたし達、半日以上眠ってたらしいから…凝り固まってた体もほぐされる心地よ…」ヌクヌク

カロル「よかったね…。優しい人たちで?」

母「えぇ…。この分なら追っ手に見つかる心配もないでしょうし、本当に運が良かったわね?」

カロル「…そういえば憲兵さんたち、どうなったのかな?」

母「……悪い人たちを捕まえて今頃はあたし達を探してくれてるわよ」

カロル「そうだよね!」

母「…思い返すと、たくさんのことがあったわねぇ」

カロル「うん。たくさんいいことあった!」ニコッ

母「そう…?辛いことの方が多かった気がするけど?」

カロル「辛いこともたくさんだけど、いいこともたくさんでしょ?」ニコニコ

母「ふふ。そうかも?」クスッ

カロル「あ、でも…海に飛び込んだ時に…お母さまに編んでもらった帽子なくしちゃった」

母「あらあら?」

カロル「…大事にしてるのに、いつもなくすんだ?なんにも残ってないの…」チャプッ

母「また編んであげるから落ち込まないの?」クスッ

カロル「うー」ブクブク

母「はぁ…温泉って身体にいいのよ?ふしぎと疲れが取れて…ずっと浸かっていたくなるわ?」

カロル「…王子さまに会ったら、またみんなとも会えるかな?」チャプッ

母「会えるわよ?また人里に行って今度こそ連れてってもらいましょ?」ニコッ

カロル「うん!」パァァ
391: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 22:39:10 ID:iRSgF5ODfA
マルク「」パシャパシャ

カロル「あ!ボクも泳ぐー!」ジャブッ

マルク「わぅ?あんっ!」ジャブッジャブッ

母「あらあら、まぁ誰も見てないでしょうし、ちょっとくらい息抜きしたっていいわよね?」クスクス

パシャパシャッ ジャブジャブッ アハハハハ ワンッワンッ

母「あ…そういえばここって犬が入ってもよかったのかしら…?」

カロル「お母さまー!」パシャパシャッ

母「あら、どうしたの?」

カロル「あっちにお猿さんたちがいたよ!」キャッキャッ

母「まぁ!すごいわね?」

ワンッワンッ キーッキーッ!

カロル「あ、マルクとお猿さんがケンカしてる!」

母「あ、あらま…犬猿の仲って本当だったのね?」

カロル「止めてくる!」パシャパシャッ

母「刺激しないように気をつけなさいね」

母「野生の獣も入れるならマルクが入っても叱られないかしら…」ヌクヌク
392: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 22:43:17 ID:kvfU/LDo0A
〜〜〜朝〜〜〜

―――族長の家―――

母「すみません。宿を取っていただいた上、朝食にまで招いてもらっちゃって?」

族長の妻「いいのよ、いいのよ?外界からのお客様なんて珍しいですもの?
あんまり張り切っちゃったもんですから普段より味付けが濃いかもしれませんけど、お口に合わなかったらおっしゃってね?」ニコニコ

母「いえいえ、滅相もないです?
こんなに見栄えのいいお食事は久しぶりで、なんだかお腹が空いてきました…?」

族長の妻「まぁうれしっ!たんとお召し上がりになって?」ニコニコ

カロル「いただきまーす!」

マルク「ワッフーン!」シッポフリフリ

母「いただきます。……まぁ?」ヒョイッ パクッ

族長の妻「お味はいかが?」ニコニコ

母「んぅ〜!とっても美味しいですわ!」モグモグ

カロル「へぇ、おばひゃま!ほれにゃに?(ねぇ、おばさま!これなに?)」モグモグ

族長の妻「ウフ!磯で採れた琥珀貝の酒蒸しよ?この辺りにしか棲息してない貴重な貝なんですよ?」

カロル「ひょうひゃんや!ほのふへおのふぉおいひい!(そうなんだ!この漬物もおいしい!)」パクパク

族長の妻「それは大根の酢漬けよ?」ニコニコ

母「坊や!口に入れたまま喋らないの?」

カロル「あ、ほへんあひゃい…(あ、ごめんなさい)」シュン

シヴァ「川で採れた貝や魚に加えて山菜や獣肉も豊富に採れるんでな。
この集落では食事に飽きがないともっぱらの評判だ」

族長の妻「んまっ?そんな評判あったかしら?」

シヴァ「あるとも」ムシャッ

族長の妻「ふ〜ん。そんなことよりあなたお仕事は?族長だって働かざる者食うべからずですよ?」

シヴァ「霧けぶる頃に済ませたさ。大量に収穫したのでいくらか近隣に分けておいた」ヒョイッ

族長の妻「そうですか?じゃあ、たまには娘の所にでも顔を出しておいでなさいな?」

シヴァ「……んむ」ムシャッ
393: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 22:46:59 ID:iRSgF5ODfA
母「娘さんと離れて暮らしてらっしゃるんですか?」

族長の妻「そうなんですよ?
娘も無事にいい相手を見つけて向こう岸の集落に同棲してるんですけど、この人ったら未だに顔も出さないで…」

シヴァ「……」モグモグ

母「まぁ?どうして?」

族長の妻「それがねぇ?あっちの集落の族長とケンカして…今では犬猿の仲に?」

母「犬猿の仲……」

カロル「はるふほおひゃるひゃんひはい(マルクとお猿さんみたい)」モグモグ

マルク「はっはっ」ガツガツ

族長の妻「いい機会だし仲直りしたら?」

シヴァ「…儂から出向く事はない」

族長の妻「これなんだから…男の人っていつまでも根に持ちますよねぇ?」

カロル「ほうひへあははるいの?(どうして仲悪いの?)」モグモグ

母「坊や?さっきお母さん、なんて言ったっけ?」ジーッ

カロル「んっ…!く、口に入れたまま喋らない…?」ゴックン

母「そうでしょう?言われたら、すぐにやめなさい?」

カロル「はーい…」

シヴァ「不仲の原因か…。聞かせてもいいが聞かなくても……」

カロル「聞きたいっ!」

シヴァ「……そうか」

族長の妻「面白い話でもないんですけどねぇ」

母「関係を絶つ程の不仲って…なにがあったんですか?」

シヴァ「うむ。あれは1ヶ月前……」

母「(意外と最近なのね…)」
394: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/23(金) 22:49:20 ID:iRSgF5ODfA
〜〜〜回想(シヴァ)〜〜〜

別集落の族長「おう、よく来たな!シヴァ!」

シヴァ「突然呼び立てたりするとは何事だ。イフィート?」

別集落の族長(イフィート)「ガッハッハ!まぁ座れ!」

シヴァ「何用だ?」ストッ

イフィート「今日はな?お前にとっても重要な話がある?」

シヴァ「……?年間の行事についてか?収穫祭、大漁豊祈、各対抗の行事以外にもまた新たな物を?」

イフィート「いぃや!そうじゃない!」

シヴァ「ではなんだ?」

イフィート「俺んとこのボンクラ息子とお前んとこのお嬢ちゃんが交際して早3年になるな!」

シヴァ「うむ」

イフィート「実はだな!息子が契りたいと言ってきた!」

シヴァ「ほう!」

イフィート「普通はパパッとトントン拍子にいくもんだが…まぁ住む場所が違うといろいろあんだろ?」

シヴァ「たしかに重要だな。どちらのふるさとに暮らすのか…」

イフィート「まぁそりゃどっちでも構やしねぇんだがな」

シヴァ「儂もだ。当人の意思を重んじたい」

イフィート「ところがだよ?なんかぁ…そのぅ…アレなんだよなぁ」ポリポリ

シヴァ「なんだ?」

イフィート「挙式ってーの?なんかそんな話がなぁ…したいだのしたくないだの?」

シヴァ「すればいいじゃないか。儀に則り、祝福しよう」

イフィート「うんぅ…だからさぁ…」モゴモゴ

シヴァ「……?煮えきらん奴だな?」
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うpろだ
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