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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


311: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/2(金) 23:27:25 ID:kTp6neQotk
―――海沿い広場―――

ゾロゾロ ゾロゾロ

あらくれ1「おう、いたか!」

あらくれ2「いや…ちらほら見たとは聞くんだがよ…」

あらくれ3「おぉい!?しらばっくれんじゃねぇぞ!?」ガッ

通りすがり「し、知りませんよぉ!?」ヒィィ

あらくれ4「居どころが分かったぞ!?」タタタッ

あらくれ1「なにぃ!?どこだ!?」

ザワザワ ザワザワ

あらくれ4「海沿い広場で見かけたってよ!」

あらくれ1「そうか!…ん?海沿い広場はここじゃねぇか?」

あらくれ4「おう!だから捕まえに来たんじゃねぇか?」

あらくれ1「ボケ!隈無く探してみたがいねぇよ!?」

あらくれ4「なにぃ!?神父と一緒だっつわれたぞ!」

あらくれ1「神父?」

あらくれ5「じゃあ教会か!お前、ちょっくら付いてこい?」

あらくれ6「うっし!!」

あらくれ1「んぁ!?てめぇら抜け駆けは許さねぇぞ!?」

あらくれ5「あぁん!?早い者勝ちに決まってんだろうが!?」

あらくれ7「へへ!」ダッ

あらくれ1「あー!?」

あらくれ5「待てコラァ!?」ダッ

ダダダダダッ
312: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/2(金) 23:29:00 ID:kTp6neQotk
―――港の教会―――

母「ふんふふ〜ん」トントン

マルク「」ブルブル

母「待っててね、マルク?ごはん、すぐに出来るから?」トントン

マルク「」ガクガクブルブル

ガシャンッ バリィッ

母「」ビクッ

ズカズカ ズカズカ

あらくれ1「おらぁ!!ホビット出てこいやぁ!?」ズカズカ

あらくれ2「ふん縛ったらぁ!?」ズカズカ

母「な、なに?なんなの?」ビクビク

マルク「」グルルルルル

あらくれ3「お、ホビットだぜ?」

あらくれ4「なんだ、なんだ、メスじゃねぇか!ムラッとすんなぁ、おい!?」

母「な、なんですか!あなた達は!?」

あらくれ5「へへ!賞金は頂いたな!」

あらくれ1「おうおう、待てよ」ガッ

あらくれ5「あぁ!?なんじゃい、ボケコラァ!?」ギロッ

あらくれ1「だぁれダボがぁ!!例のホビットはオスのガキだぁ!?」

あらくれ5「にゃぁにぃをぉぅ…!?」ビキビキ
313: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/2(金) 23:31:05 ID:kTp6neQotk
ガチャッ

親分「おう、見つけたってなぁこいつけ!?」

あらくれ1「違いやす!」

母「だからなんなんですか!?いきなり入ってきて、こんな…憲兵に訴えますよ!?」

親分「メスか…」ジッ

母「…な、なに?」ジッ

チンピラ「親分、こいつ例のホビットの母親だ。昨日会ったから間違いねぇ!」

親分「ほーう?んじゃこいつを人質に取ればガキはゲットだな?」

母「あ、あの……」

親分「あん?」

母「よ、よかったら…お食事召し上がりませんか?息子もすぐに帰ってくると思いますので?」

親分「はぁ?おめぇ状況分かってんのか?」

チンピラ「よく見りゃうまそうな魚がたっくさんあんじゃねぇの!」オホッ

母「漁師の方々から分けていただきまして…あ、お酒もありますのよ!」

あらくれ1「お、気前がいいなぁ?」

あらくれ2「ただ待つのもつまらんし前祝いに酒盛りといきましょうや!」

チンピラ「そういや俺っち、ここ2日、なんも食ってねぇんだよなぁ」グゥゥ

母「お仲間さん達もこうおっしゃってますし?」ニコッ

親分「…言っとくが媚びても勘弁しやしねぇぜ?」

母「…すぐに用意しますね?」ニコニコ
314: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/2(金) 23:33:31 ID:kTp6neQotk
〜〜〜夜〜〜〜

ガチャッ

カロル「ただいまー!修道院まで回ってたら遅くなっちゃった?」

神父3「ホビットの君が言ってくれたおかげで説得力があったようです。
街の人達も分かってくれたし本当に助かりましたよ」

母「あ、おかえりなさい?」

ウグゥ〜 ゴロゴロ ジタバタ

神父3「ひぃっ!?な、なんですか!このあらくれ者たちは!?」

母「あたしもよく分からないんですけど突然押し掛けてきまして…?」

カロル「苦しそう…」ジーッ

母「あぁ、ダメよ?せっかくやっつけたんだから!」

カロル「へ?」

親分「ぢぐじょ〜!おめぇハァメやがったなぁ〜…!?」プルプル

母「昨日会った漁師さん達からお魚とお酒いっぱいもらったでしょう?
それにクーペさんが作ってくれた薬を混ぜて振る舞ったの!」

カロル「な、なんで?」オロオロ

チンピラ「腹いてぇよぉ…!なに…飲ませやがったぁ!?」ギリギリ

神父3「なんなんだ、あんたら…。ここは神聖な教会ですよ?」

親分「そ、その…ガキだなぁ…!?」ギロッ

カロル「」ビクッ

母「坊やになにか用?」

親分「そいつ…捕まえりゃ…金が…!?」ググッ

母「(山間の村の憲兵さんが言ってた偽の情報かしら…?)」

神父3「なにか落ちてますね?」スッ

母「坊やを狙ってる人間が回した手配書らしいんです」

神父3「え?なぜカロルさんが……おぉ!?き、金貨2000枚!?」ビックリ
315: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/2(金) 23:51:17 ID:kTp6neQotk
神父3「(よく見たら酒瓶しか空になってない…。黒焦げの何かが並んでる…)」シゲシゲ

カロル「じゃあもうここにもいられないね」シュン

母「えぇ、早く街を出ましょう」

神父3「え!?今すぐですか!?急ぎすぎじゃあ…!?」

母「仲間が来るとも限りませんから…申し訳ありませんけど後始末、お願いできますか?」

神父3「そ、それは構いませんが……」

母「ありがとうございます。それじゃ……」スッ

神父3「あ、待ってください!それならいい方法がありますよ?」

母「……?」

神父3「港から船が出てます!それに乗れば追っ手も来れませんよ!」

カロル「ふねってなに…?お母さま?」

母「川や海を渡れる乗り物よ?」

カロル「へー!乗ってみたーい!」

母「でも都合よく乗せてもらえるかしら…」

神父3「お二人は漁師さん達から好感を持たれてましたから頼み込めばなんとかなりますよ!」

母「…その方が良さそうね」

神父3「……」

母「…なにか?」

神父3「あ、いえ…なんでも。私は憲兵団に報せなければならないので同行できませんが…お気をつけて」

母「お世話になりました…」

カロル「街の人達とがんばってね!」

マルク「あんっ!」

神父3「こちらこそお世話になりました」ペコリ

ガチャッ バタンッ

親分「うぅ〜…腹いでぇよぉ……」ゴロロロ

神父「……」
316: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/2(金) 23:53:56 ID:7Z2YiUeokA
―――船着き場―――

母「ここかしら…?」キョロキョロ

カロル「誰もいないよ…?」キョロキョロ

マルク「クゥン…」クンクン

ザザザッ ザザザッ

母「え…?」クルッ

憲兵's「」ゾロゾロ

母「……なんで?」

カロル「な、なに?すごい数…?」

憲兵2「見つけました!」ザッ

憲兵長「おぉ!間違いないか!」ザッ

憲兵3「ご協力、感謝します!」ペコリ

神父3「いえいえ、人として当然の事をしたまでですよ?」ニヤニヤ

カロル「あ、神父…さま」

母「どうして…?」ジッ

神父3「君を売って金をもらえば一生、贅沢三昧出来る?救い主に奪われた貴重な時間をやり直せる!?」

神父3「あなた方には恩がありますが…こうなってしまった以上はしかたない!」

神父3「私の人生を取り戻す為に尊い犠牲となっていただこう!?」

母「最低ね、あなた…!?」

神父3「悪いですか?私だって一人の人間です?自分が一番かわいいに決まってる!!」

カロル「……」
317: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/2(金) 23:56:59 ID:7Z2YiUeokA
神父3「許してくださいね…?カロルさん…?」ニヤニヤ

カロル「お金のことはボクには分かんないや…。でも…」

神父3「なんです…?」

カロル「お金があると幸せになれるんだよね?」

神父3「そ、そうですよ!お金は最も簡単に人を幸せにする魔法の道具です!」

母「ぼ、坊や…!このまま捕まったら宣教師様にも会えなくなるわよ!?」

カロル「ボクね、幸せになろうとしてきたけど、そのせいでいっぱい後悔してきたんだ」

神父3「だ、だからなんです?」

カロル「前よりずっと恵まれてるはずなのに…後悔すると、なにかちがうのかなって思っちゃうの」

神父3「……」

カロル「それってホントに幸せなのかな」

神父3「くっ…!け、憲兵さん!早く捕まえてください!逃げられたら懸賞金が……」アセアセ

憲兵長「」スタスタ

母「な、なによ?あたし達がなにしたって言うの!?」

憲兵長「ご無事で何よりでございました!救い主様!!」バッ

母「えっ」

カロル「……?」

憲兵長「我らが主、ヒメ国王が貴方様を国に迎えたいと申しております!」

神父3「す…くいぬ…し?」アゼン
318: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/2(金) 23:58:52 ID:7Z2YiUeokA
憲兵長「無論、貴方様のご意思を尊重致します故、無理にとは申しませぬ!
しかし国王陛下は1日も早く貴方様にお会いしたいと、この1年間、我ら憲兵団を通して捜索してまいりました!」

憲兵長「どうか我々に付いてきていただきたく存じます!」

憲兵's「」バババッ

母「憲兵さん達が…坊やに膝ま付いて…る?」ポカーン

神父3「ど、どうなってんだ…?」


憲兵長「救い主様!どうかお願い申し上げます!!」

母「……ぼ、坊や?」

カロル「……王子さまが探してるんですか?」

憲兵長「いかにも!!」

カロル「なにも言わないで…いなくなったから?」

憲兵長「そうです!!」

カロル「……」

憲兵長「……?」

カロル「…王子さまはボクを嫌ってますか?」

憲兵長「は…?」

カロル「ボクは……ともだちになってくれたみんなを裏切ったんだもの…」シュン

憲兵長「はて…?そのような話は聞いておりませんが?」

カロル「だって…ボク……」

憲兵長「我々は貴方様が国王陛下の"親友"であると伺っております!」

カロル「え?」

憲兵長「この捜索活動も国の行いではなく、国王が個人的に依頼したものであって…貴方様が拒まれた場合は手出しせぬよう仰せつかりました!」

カロル「…ほん……とですか?」

憲兵長「そもそもお怒りなど感じておられぬ様子でしたが……」

カロル「……!」
319: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/3(土) 00:00:52 ID:kTp6neQotk
カロル「あ…う…!」ブワァッ

母「……」ウルッ

カロル「…うっ…えぇぇん……」ポロポロ

憲兵長「救い主様!?」

カロル「よかっ…たぁ!ボク……ずっと、ずっと…えぐっ…!」グシグシ

憲兵長「……!?」

カロル「ひっ……うぅ…」ゴシゴシ

母「坊やも会いたがってたものね…?」ナデリ

カロル「ゔん…!だって…きらわれてたら、どうしようって…!こわくて…!」グズグズ

憲兵長「…この国を変えてくださった貴方様を誰が忌み嫌いましょうか?
陛下のみならず我々にとっても貴方様は感謝の対象にございます!」

カロル「……っ」グスッ

母「…罪人として指名手配されてたんじゃなくて探してくださってただけだったのね」ナデナデ

カロル「お…かあさま」ジッ

母「なに?坊や?」

カロル「会いに…いきたい?」ウルウル

母「行きたいじゃなくて…行くのよ?」ニコリ

カロル「…えへへ」ニコッ

母「もうあなたに我慢なんてさせないわ?自分の思うままにすればいいの?」ニコニコ

カロル「うん…!」ニコニコ

憲兵長「おぉ!それでは……」

カロル「王子さまに会わせてください!!」

憲兵長「もちろんでございます!!」

スクイヌシサマ! スクイヌシサマ! スクイヌシサマ!!!

神父3「あ…あ……あぁ」ヘナヘナ
320: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/3(土) 00:04:04 ID:7Z2YiUeokA
憲兵長「では明日の朝に王都へ向けて出発しましょう!こちらで手配致しますので!」

母「よろしくお願いします」ペコリ

カロル「おねがいします!」ペコリ

マルク「わんっわんっ」シッポフリフリ


神父3「お、おれ……なんてことを…」ズシャッ

神父3「また…やってしまった…」ズーン

ズバッ ドバッ ギャアアアアア

ドサッ ドサッ バタッ

神父3「え……」ゾクッ

憲兵?「」ニヤリ

憲兵長「……なんだ?何かあったか!?」クルッ

憲兵2「き、貴様…いきなり何を……ぐはっ」ザシュッ

ドサッ

マドラス「……何をも何も予定通りさ?なぁ?」ピシャッピシャッ

憲兵?「はい」ジャキッ

憲兵長「……!」
321: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/3(土) 00:06:54 ID:kTp6neQotk
母「…あの人間、山であたし達を探してた…!?」ハッ

マドラス「クッカカカ!よくもまぁ逃げ回ってくれたもんだが…それも今日までさ?」ギョロッ

カロル「……!」ゾゾゾッ

憲兵長「我々に紛れていたのか…!?」ギリッ

マドラス「人数で言えば3分の1程度だがな?民間の憲兵を皆殺しにするなら十分だ?」

神父3「あ…ひあっ」ジョォォ

カロル「神父さま!逃げて!」

神父3「……!?」チラッ

カロル「はやく!」

神父3「(私は…君を裏切ったんだぞ…それなのに……)」ボーッ

バシュッ

カロル「っ……!?」

プシャアアアアアア

神父3「」バタッ

マドラス「ぎゃははははは!!!」ゲラゲラ

母「……!」

カロル「ひ…どい」

カロル「(どうしてこうなるの…?あと少しでまた……戻れそうだったのに…)」
322: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/3(土) 00:09:40 ID:kTp6neQotk
憲兵長「救い主様!?なんとか我々で活路を開きますのでお逃げください!!」スラッ

カロル「い、いやだ!切られた人間を癒さなきゃ!」

ガキンッ キンッキンッ ズバッ プシャアアアアアア

憲兵長「……我々に構わずお逃げください!こいつら、ただ者じゃない!!」ジャキッ

マドラス「その通りさ。ただ者じゃない?」スタスタ

憲兵長「寄るな!!」

マドラス「3秒以内に身柄を渡しゃ命は保証してやる?」ジャキッ

憲兵長「早く逃げろ!!」

母「こ、この混戦じゃとても間に入って力を使えないわ…!?
それに相手も憲兵に化けてるから敵味方の区別も付かないわよ!逃げましょう!」

カロル「でも…でも…」

マドラス「さぁん……」

母「会えなくなってもいいの!?」

カロル「」ピクッ

マドラス「にぃ……」

母「ここで死んでしまったらあなたに会いたがってる友達とも会えなくなるのよ!?」

憲兵長「お母様のおっしゃる通りです!どうぞ我々を置いてお逃げください!!」

マドラス「いぃち……」

憲兵長「生きてさえいれば…可能性はある!!貴方様は陛下にとって必要な方なのです!!」

カロル「……お母さま!マルク!!」ダッ

母&マルク「」ダッ

マドラス「ぜぇろぉ〜〜〜」ダッ

憲兵長「させるかぁあああああ!!!」ブォンッ

マドラス「」シュッ

ザシュッ

憲兵長「ぼはぁぁ!?」ドサッ
323: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/3(土) 00:13:57 ID:7Z2YiUeokA
ギャリンッ キンッキンッ ガキンッ

カロル「……!」

母「隙間がないわね…!」

マルク「うぅ〜…!」

マドラス「クッカカカ!背後は冷たい潮風が波立てる海……眼前は刃の嵐ときたもんだ。さっきの野郎、無駄死にもいいとこだぜ。なぁ?」ジリッジリッ

母「ひっ…!?」ズサァッ

カロル「…おじさまはどうしてボクを狙うの!?」タジッ

マドラス「お国の命令さ?」

カロル「聞いたでしょ!?王子さまはこんなこと望んでないよ!」

マドラス「国を司るのは何も王族だけじゃねぇさ?」

カロル「……!?」

マドラス「まぁ…ここで死ぬお前らには関係ねぇがな」ジャッ

憲兵3「やめろぉぉおお!!」ダッ ブンッ

マドラス「ちっ!」ガキンッ

カロル「マルク!お母さま!泳げる!?」

母「……!?」オロオロ

マルク「?」キョトン

マドラス「(なっ…あいつ、まさか)」ギギギッ

カロル「いくよっ!?」バッ

母「〜〜〜!?」バッ

マルク「ワンッ!!」バッ

マドラス「待てぇえええ!?」ズバッ

憲兵3「がふっ」ブシャッ

ボチャッ ボチャッ ボチャッ

マドラス「……!?」

ザッパァァァン
324: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/3(土) 00:17:15 ID:7Z2YiUeokA
憲兵?「隊長、片付きました。
こちらも半分ほどやられましたが…まぁあの数の手勢を倒したのですから致し方ありませんな」

マドラス「そうか…」

憲兵?「……隊長、例のホビットは?」

マドラス「海に飛び込んで波にさらわれた…」

憲兵?「は?」

マドラス「夜の海に入りゃどんな泳ぎの達人でも溺れ死ぬ…。深追いは出来ねぇな」

憲兵?「そ、それでは…どうしたら……」

マドラス「…首が無きゃ金は貰えねぇ。死体が揚がるのを待つしかねぇやな」

憲兵?「なっ…!?」

マドラス「漁師共の網に掛かることを祈ろうぜ?」

憲兵?「そ、そんな悠長に構えてられますか!?これだけの大量殺人……しかも憲兵を切っておいて!?」

マドラス「…雇い主に相談してみるさ」

憲兵?「雇い主は王国の役人だ!?そんな事を報告したら裁かれるに決まってる!?」

マドラス「わかんねぇだろ。んなこたぁ?」

憲兵?「だいたいあんたは最初から思い付きで動きすぎなんだよ!?
もう少し慎重になるべきだったんだ!だから肝心の賞金首を取り損ねんだよ!?」

マドラス「……」

憲兵?「なにが南の賞金王だ…!やってられるか!?
俺達はもう降りるぜ!あんたの巻き添えで牢屋生活は御免だ!?」

偽憲兵's「」ザワザワ

マドラス「…言いてぇことはそれだけか?」ジャキッ

憲兵?「っ…みんなもそうだろう!?こんな奴にゃ付いてけないよなぁ!?」

偽憲兵's「」オォォォオオ

マドラス「能無しがぁ…!誰のおかげでここまで追ってこれたか分かってんのかぁ…!?」ギョロッ

憲兵?「ククク!!んな口聞いていいのかぁ?11対1だぜ?」スラッ

マドラス「上等だ…!?細切れにしてやんよぉ…!!」プチィッ
325: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/3(土) 00:21:48 ID:7Z2YiUeokA
〜〜〜朝〜〜〜

漁師2「うぷっ…!」ググッ

漁師3「ふ、船を出そうと来てみりゃ…いったい全体どうなってやがんだ…!?」

漁師4「すっげぇ匂いだなぁ……。こりゃ今日は鮫しか獲れなさそうだ…?」

漁師5「憲兵同士で切り合いでもしたのかぁ…?」

大将「……中止だ。領主様に報せてこい」

漁師6「……おす」

ムワァァァァァン

大将「…海神様に愛された海が血に染まっちまった。バンブルの港はもう終いだ」

漁師「……」

大将「来月に来る筈だったホビットも白紙、各地に卸してた海産物の取り引きも白紙だわな」

漁師「なんとか…ならないんすか」

大将「ならないな…。元々ここはやる気のねぇ住人ばっかで漁以外にこれといったモンがねぇ」

漁師「そうっすね……」

大将「街の目印が曰く付きになったんだからな。あとは痩せた海と心中だよ」

漁師's「……!」ググッ

大将「おめぇらも早いとこ見切りつけて新天地を探した方がいいぜ?」

漁師「大将は?」

大将「……俺は海の男だ。これ以外の生き方を知らん」

漁師「……そうすか」スタスタ

大将「なにしてる?」

漁師「…船を出します」

大将「おいおい、今日は中止だっての……」

漁師「俺も海の男っすから……」

大将「……好きにしろよ」
326: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/3(土) 00:27:00 ID:kTp6neQotk
―――岸辺の洞穴―――

ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ

親分「はぁっ!はぁっ!」ブンッ

チンピラ「」ドスッ

あらくれ1「だ、ダイス親分…もう……」

親分「あぁ…!?」ギロリッ

あらくれ1「……!?」ビクッ

親分「くっ…へへ!わかってるよぉ…!?こいつは海に沈めとけ?」パッ

チンピラ「」ボトッ

あらくれ1「うす。足持て」ガッ

あらくれ2「ほいほい」ガッ

ボチャッ

親分「……んじゃまぁこっちか?」チラッ

女房「」ガクガクブルブル

子供「むーっ!ぐーっ!」モガモガ

赤ん坊「」

親分「……ん?おい?その赤ん坊…息してんのけ?」

あらくれ3「しらねっす!」

親分「口の縄外してみろ」

あらくれ3「」シュルッ

親分「……紫色じゃねぇか」ツンツン

親分「…あーダメだ。鼻詰まらしてんな」グジュッ

女房「むぐっ!?んまー!?」モガモガ

親分「さてと、旦那のケジメだ?覚悟はいいかい?」

女房「」ブンブンッ

子供「んっんー!!むーっ!!」ジタバタ
327: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/3(土) 00:29:39 ID:kTp6neQotk
親分「あんたの旦那は借金まみれのクソヤロウだ?おまけに俺の顔に泥ぉ塗りやがった?」

親分「バカは死ななきゃ治らねぇってんで死んでもらったが、まだ足りねぇ?」

親分「つー訳でここからあんたの番だ?猿轡外してやれ?」

あらくれ3「」シュルッ

女房「ぶあっ!あっはぁ……」ゼェゼェ

親分「今からあんたか子供の片腕をもらうがどっちにする?」

女房「…なん……で」

親分「ん?」

女房「なんであたしがこんな目に遭わなきゃなんないのよぉっ!?」

親分「…あぁ?」

女房「全部あいつのせいでしょう!?
働きもしないで遊んでばっか……子育ても生活も全部あたしが一人でやってたんじゃん!?」

親分「あんな男と契ったおめぇが悪い」

女房「バカ言わないでよ…?こんな…これじゃあたし……可哀想すぎるじゃん…!?」
328: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/3(土) 00:30:49 ID:7Z2YiUeokA
親分「まぁいいや、めんどくせぇ…で、どっちだ?」

女房「あふっ…んっ…うひゅぅ……」ガタガタ

親分「まとめていくか」

女房「ま、待って!?」ビクッ

親分「おい、ガキの猿轡もだ」

あらくれ4「へい!」シュルッ

子供「父ちゃんをかえせっ!!妹をかえせっ!!」

親分「…ガキのがよっぽど家族想いだぁな」

子供「チビ!デブ!ヒゲ!死ね!」

親分「…どっちにする?」

女房「っ……なんで聞くの?」ブルッ

親分「…自分で決めさせりゃ言い訳出来ねぇだろうが?」

女房「……!?」

親分「おめぇの腕が飛ぶにしろ…ガキの腕が飛ぶにしろ……後々、何度も思い出すよなぁ?」

親分「そうしたのは自分だとよ?」グフフ

女房「いっ…やああああああ!!!!!」

アアアアアアアアア…………
329: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/3(土) 18:49:19 ID:kvfU/LDo0A
―――辺境の孤児院―――

ルーボイ「腹減ったなぁ」カリカリ

孤児1「おなかすいたー」グリグリ

孤児2「サンドイッチ食べた〜い」グリグリ

ミシング「はいはいはーい!ちょっと待っててね〜?ルーボイお兄ちゃんのお勉強が終わったら、すぐ作るからね〜?」

ルーボイ「ちぇっ…」カリカリ

孤児1「兄ちゃん、はやく〜」グリグリ

孤児2「お絵かき飽きたよ〜」

ミシング「ほらほら〜急かされてるよ〜?」ニタニタ

ルーボイ「わ、分かってんよ!ていうか、なんで俺ばっか毎日、勉強なんだよ!?」

ミシング「え〜?だって院長から言われたじゃーん?ルーボイくんはサボり癖があるから1日3時間、付きっきりでお勉強させなさいって?」

ルーボイ「ら、ラムはどうなんだよ?あいつだって勉強なんかしてこなかったって言ってたぞ!」

ミシング「う〜ん、ラムくんもちょっと遅れてるけど物覚えが早いし集中力もあるから平気っぽいよん?」

ルーボイ「ちぇっ!あいつばっかズリーよなぁ…」カリカリ

ミシング「あの子は経験が違うもん?あたしらよりたくましいの?」
330: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/3(土) 18:50:31 ID:iRSgF5ODfA
ルーボイ「じゃあナラは?あいつもできないじゃんか?」

ミシング「ナラちゃんは庭でお洗濯?
女の子はお勉強より花嫁修行させなくちゃね?」ニコッ

ルーボイ「よ、嫁?まだ11才じゃん?」

ミシング「女の子は準備が早いの〜。
ルーボイくんだっていつかお婿さんになるんだから将来のお嫁さんに恥かかせたくないでしょ?」

ルーボイ「は、はぁ!?」ドキンッ

ミシング「頭パーだと好きな娘にも愛想尽かされちゃうよ〜?」ニシシ

ルーボイ「す、好きな奴なんていねーし!」ドキドキ

ミシング「ナラちゃんなら、きっといいお嫁さんになるだろうなぁ〜?」

ルーボイ「ば、バッカじゃねーの!?ナラと結婚とか……し、し、しねーし!?」ドギマギ

ミシング「あららん?なになに?どしたの?
誰もルーボイくんとナラちゃんがくっ付くなんて言ってないよ〜?」ニシシ

ルーボイ「〜〜〜!?」カァァ

ミシング「うりうり〜うりうり〜?」ツンツン

ルーボイ「あぁうるせぇなもう!?ここ分かんねぇから教えろよ!?」

ミシング「いいよ〜?ここはねぇ〜?」

孤児1「なにかいてるのー?」グリグリ

孤児2「サンドイッチー」グリグリ

孤児1「おなかすいたねー」グリグリ

孤児2「ねー」グリグリ
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