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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


291: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 23:30:45 ID:hTsbsopuA2
―――港の教会―――

神父3「簡素な寝室で申し訳ありませんが、どうぞごゆるりと」

母「あ、あの…急に訪ねてしまったのにその…いいんですか?」オドオド

神父3「いいんですよ」

カロル「ぼ、ボクたち人を探してるだけで…」

神父3「えぇ、残念ながら心当たりはございませんでしたが」

マルク「」ポフンッ

カロル「あっ!マルク!勝手にお布団使わないの!?」

神父3「いいんです、いいんです。我々はあなた方ホビット族に償わなければなりませんから」

母「償いだなんて…あたし達は…」

神父3「…あなた方の為というより自分たちの為です」

母「へ?」

神父3「正しいと思ってしてきた行いが実は単なる迫害だったと…自覚するのが恐ろしい」

神父3「我々はあなた達に喜んでもらう事で赦された気になれるんです」

神父3「もちろんこれも…おぞましい人の欲を満たす贖罪に過ぎないが」

母「……」

カロル「……」

マルク「くぅ〜ん」ゴロン
292: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 23:32:53 ID:hTsbsopuA2
神父3「ところであなた方…救い主様じゃありませんよね?」

母「はい?」

カロル「すくいぬし?」

神父3「…こんな所に来られる筈がないですよね。もう1年と半年も行方知れずですし」

カロル「へぇ…どこに行っちゃったの?」

神父3「それが分かれば苦労はないんですけどね」

カロル「大変だね…。早く見つかりますように」パシッ

神父3「いの…り…?」

カロル「うん。探してる人に教えてもらったんです!こうすると願いが届くって?」

神父3「…我々でさえ、とうにやめてしまいましたよ」

カロル「なんで?」

神父3「今まで祈りを聞き入れてくれた筈の主は…人の作った幻だったんでね」

カロル「しゅ?」

神父3「頂いた魚は明日の朝、お出しします。おやすみなさいませ」ガチャッ

バタンッ

カロル「……?」
293: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 23:34:16 ID:hTsbsopuA2
母「…なんだか浮かない様相だったわね。
教会にしては掃除してる様子もないし窓も割られてるわ?すさんでいたのかしら?」

カロル「…みんなに教団の教えが嘘なのバラしちゃったからかな」

母「嘘なんだからしょうがないじゃない」

カロル「…うん。仲直りするには、それしかなかったもの」

母「うまく回ってるわよね。世の中って?」

カロル「そうなの?」

母「正しいかどうかは関係なく、必ず誰かが喜んで誰かが傷付くように出来てるもの」

カロル「……」

母「気に病むことないわよ。それでもずいぶん素敵な世界になったと思うわ?」

カロル「ボクがした事でいろんな人が傷付いてるんだね…」

母「そうよ。でもね、これだけは忘れないで?」

カロル「え?」

母「あたし達が傷付いてるのを知らんぷりして喜んでた人も大勢いるんだから?」

カロル「え……?」ドキンッ

母「お母さん、寝るわね?昨日まで野宿だったから疲れてるの?」ファサッ

カロル「うん…」

母「おやすみ?夜更かししちゃダメよ?」ニコリ

カロル「……おやすみなさい」ボソッ
294: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 23:35:51 ID:hTsbsopuA2
〜〜〜真夜中〜〜〜

母「」スースー

カロル「……」ジーッ

母「」スースー

カロル「(たまにお母さまが分からなくなる…)」ゴロン

カロル「(本当はどっちなんだろう?)」ファサッ

カロル「(誤解を解いてみんなに謝ったら安心して二人で暮らせるのに)」

カロル「(……)」

カロル「(ううん、違う…。ボクはまたみんなと……)」

カロル「(でも…お母さまは嫌がるかも)」

カロル「(…宣教師さま、ルーボイくん、パッチくん、ナラ、ラムくん、王子さま)」ボォォ

カロル「(ボクのわがままを押し付けたらお母さまが傷付く…)」

カロル「(だけどお母さまの望んでることを続ければみんなとは……)」ギュッ

カロル「(…あぁ。ダメダメ。約束したじゃない)」ブンブン

カロル「(お母さまを守るのはボクだもの…)」

カロル「(……)」

カロル「(家族と、ともだちはどっちが大事なんだろう…)」

カロル「(……どっちも大事。あぁもう!なんで考えるの!ダメだってば!)」ゴシゴシ

カロル「(うぅ…考えちゃうよ。どうしよう)」

カロル「(会えない間、ずっとみんなが頭から離れない…。お母さまの為なら我慢するって決めたのにぃ〜…!)」ゴシゴシ

カロル「(ボクのウソつき!わがまま!)」ポカッ

カロル「……寝れない」ムクッ
295: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 23:39:05 ID:h173FRh8P2
―――港の教会(礼拝室)―――

ブァァァァァ

カロル「お月さま…きれい」ジーッ

カロル「この石像、なんだろう?」ピトッ

ザラッ

カロル「…ホコリだらけ?」キョトン

ガチャッ

神父3「眠れませんか」

カロル「あ…すみません!」アタフタ

神父3「いいんですよ。海寄りの月は一層輝きますから一度は目にした方が良いでしょう」

カロル「えへへ…ホント、きれいですね?」クスッ

神父3「…あなたは本当に救い主様ではないのですか?」

カロル「え?はい。違いますよ?」キョトン

神父3「…そうですか。まぁ同じホビット族ですしね。そら似かもしれない」

カロル「ボクにそっくりなんですか?」

神父3「…手配書の人相書きには似てます。まぁ直に会ったことがないので」

カロル「へぇ…」

神父3「あなたが救い主でなくてよかった」

カロル「へ?探してるのに?」

神父3「……元々、私には神に仕える資質が無かったようです」

カロル「そ、そう?ちょっと分かんないです…?」

神父3「憎いんですよ。私から信仰を奪った救い主が……」ギリッ

カロル「」ビクッ

神父3「はっ…ふっ…ぶぐぅ…!」ガチガチ

カロル「え?え?」オドオド

神父3「…んばぁっ!!」ダンッ
296: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 23:42:06 ID:hTsbsopuA2
カロル「あ…の……?」

神父3「…申し訳ありません。取り乱してしまいました」フルフル

カロル「だいじょ…ぶ、です…」ビクビク

神父3「…憎いんです」

カロル「は、はい」

神父3「4つの頃、孤児院に捨てられました」

カロル「そう…なんだ」

神父3「11になってから教団に入れられました」

カロル「うん…」

神父3「…そこから20年、教えだけを信じ、役目を全うしてまいりました」キッ

カロル「(こわい…)」ブルッ

神父3「他にないんですよ…。誇れる物も信じられる物も……」

カロル「……」

神父3「嘘でも…騙されたままでいたかった…。
あなた方にとっては良かったのかもしれないが私のように苦しむ者もいるんです」

神父3「神に通ずると信じ、欠かさず清潔を保った御神体も今ではガラクタ同然……」

神父3「世界の平穏に繋がる筈だった祈りは…ただの考え事」

神父3「人々に貢献しようと学んだ教えは……作り話だった…!」ガチガチ

カロル「(あぁ、そっか。お母さまが言ってたのって……)」

神父3「私は…救い主に全てを奪われたんです…!」ギュゥウッ

カロル「(よかった。お母さま、変な意味で言ったんじゃなかったんだ)」クスッ
297: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 23:43:58 ID:h173FRh8P2
カロル「ボクは救い主じゃないから分かんないですけど…」

神父3「っ……!」ギリィッ

カロル「奪われて生きてきたのはボクたちも同じですよ?」

神父3「うっ…!?」ズキンッ

カロル「生まれる前にお父さまを殺されて、お爺さまも病に倒れました」

神父3「…んぅぐ……!」

カロル「ひどいこと言われて大人数に暴力だって振るわれました」

神父3「あっ…んぐぅ…!や、めろ…!」ズキズキ

カロル「お家を焼かれました。お母さまも汚されました。思い出がある物は一つも残ってないです」

神父3「ふぐぅふぅ…は、はぁああ…!やめてくれぇ…!やめてくれぇ!!」ブンブン

カロル「優しい言葉に騙されたり、信じた人間に裏切られたり、知らない人間に売られたり、大好きなともだちを遠ざけられたり………」

神父3「あぃあぁあ!!やめろってぇ!?」

カロル「……」

神父3「分かってるよぉ…!分かってんだ、んなのはよぉ…!?」ガシガシ

カロル「そう…」

神父3「後悔したよ!気付けなかった自分が馬鹿に思えて…自殺だって考えたよぉ…!」ガシガシ

神父3「でもよぉ…俺がわりーのかよ!?だってよぉ…俺はただ教えられたの信じてただけじゃんかよぉ…!?」ダンッダンッ

神父3「それをいきなりさぁ…!嘘でしたとかさぁ…差別だとか非難受けてさぁ…!
外に出歩きゃなじられて、教会に籠れば石投げ込まれて窓ガラスを破られたり、シスターや修行者達も耐えかねて出てったよぉ…!?」ダンッダンッ

神父3「司祭様が説得して嫌がらせは無くなったが…もう俺にはどうしようもねぅよ!?」ダンッダンッ

神父3「ホビットと和解しましょうって……差別さしてきたの俺らじゃん!?説得力あるか!?」ガンッ

神父3「…最悪だよぉ。他の村や町の教会とも手紙でやりとりしてるけど…どこも似たようなもんでよぉ」フーッフーッ

神父3「うまくいってんのなんか、よっぽど住人と信頼関係築いてた連中くらいだよぉ…」

神父3「…俺が……なにしたってんだよぉ…。結局、お前らも差別したんじゃん…!違うのぉ!?」ブワァッ
298: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 23:47:24 ID:hTsbsopuA2
神父3「ふえぅっ…へぁひっ…ぶじゅっ!ぇうぅぅう!ヂグジョォオオ!!」ダンッダンッ

カロル「床に手を打ち付けたらケガするよ?」ピトッ

神父3「ひぐ…!?」ビクッ

フワッ

神父3「あ……え…?な…か……いっしゅんフワって…?」グズッ

カロル「」ダキッ

神父3「んぅえ…?」キョトン

カロル「よーしよし、いいこいいこ…?」サスサス

神父3「(な…だ、この…少年は…抱きしめ……?)」ボーッ

カロル「いいこだねー…大丈夫だからね…?」サスサス

神父3「いぃ…こ?お…れ……いいこ?」グズグズ

カロル「(ちっちゃい時、マルクがさびしそうに鳴くと、よくこうやって、あやしたっけ…なつかしいなぁ)」サスサス

神父3「(…どしてだ。こんな小さな腕に…これ以上ないほど、ぬくもりを感じてる…)」ズビビー

神父3「(家族を知らない俺にとって……初めての感覚かもしれない)」ギュッ
299: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 23:49:20 ID:hTsbsopuA2
カロル「おじさま、ボクの声、聞こえる?ボクの言葉、分かる?」サスサス

神父3「…分かる。いい親父が…みっともないな」グズッ

カロル「そう?大人も泣きたくなるし、頼りたい時もあるよ。たぶん?」サスサス

神父3「…大人になって他人に頼ると、見返りを求められたり、足元見られそうで怖いんだ…。だから…」

カロル「安心して?ボク、まだ子供だよ?眠れないからおじさまのお話を聞いてるだけ?」クスクス

神父3「君は…憎まないのか。我々を……」フルフル

カロル「うん、憎まない」サスサス

神父3「……!」ズキンッ

カロル「全部許して仲直りしようって約束したから?」

神父3「……!?」

カロル「和解って…そういうことなんでしょ?」ニコッ

神父3「そう…です」ウルッ

カロル「…朝になったらみんなと仲直りしに行こ?ボクも付いてくから?」ニコニコ

神父3「うぐっ…んぐぅぅ…!」ガバァッ

カロル「えっちょっ」グラッ

ドシンッ!
300: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 23:52:31 ID:hTsbsopuA2
カロル「いっ…たぁ〜い…?」コロン

神父3「ふばぁぁあああん!!ごべんよぉぉ!?わるがったよぉ!?ぶぁあああん!!」ポロポロ

カロル「あは…また泣いちゃった」アセアセ

ガチャッ

母「ん〜…どうしたんです?こんな夜遅く……に?」ギョギョッ

マルク「あぅ〜ん…」ムニャムニャ

カロル「あっ」ドキンッ

神父3「ふばっ!あばっ!ぶあああん!!」ズリズリ

母「(ぼ、坊やが真夜中に密室で大人の男に組み敷かれて涙ながらに頬擦りされてる…)」

カロル「あ、あのねっ!ちがうよ?これは…その…おじさまがさびしそうだったから…お話をね?きい……」アタフタ

母「(さ、寂しい独り身の男が坊やの優しさに付け込んであわよくば…!?)」ゾゾゾゾゾッ

カロル「おじさまっ!もういいでしょっ…重たいよぉ…!?」ジタバタ

母「マぁールク!突進して引き剥がしなさい!!!」

マルク「あんっ!!」ダッ

カロル「だ、ダメっ…あぶなっ……」ジタバタ
301: 書き納めです。皆さま、よいお年を ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 23:54:40 ID:hTsbsopuA2
ドンッ

神父3「ふぎゃっ!?」ベシャッ

母「マルク!噛みつきよ!!」

マルク「ばうっ!」ガブッ

神父3「ンギャアアアアア!!!」ピョイッ

カロル「……あ、あぁちょっと…!」アワアワ

母「坊や!こっちに来なさい!変態神父はマルクが退治してくれるわ!?」

ガブッガブッ ギャァッ イテェッ

カロル「…マルクっ!!」

マルク「」ピタッ

母「マルクっ!!!!」

マルク「」ガブガブ

神父3「はんぎゃあああ!!いだだだだっ!!!」

カロル「(ごめんなさい、おじさま……)」ガクッ

神父3「イッタァァウウィィイイイ!!!」バタバタ

カロル「(お母さまを説得したら治すから…ちょっとだけ我慢しててね?)」ハラハラ

母「骨まで噛み砕きなさい!坊やに変な気起こしたお仕置きよ!!」プンプン

カロル「(時間掛かるかも……ホントにごめんなさい)」

イタァァァッ!! ガブガブ イタァァァッ!!
302: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/1(木) 00:07:05 ID:Gs0K8eI9OM
>>290
気になったのでPart3まで見てみました!
ただただ商人にムカムカしてます!
グズのエンカウント率が高すぎて僧侶が不備です!
ことごとく善意を利用されて悪者にされていくサマに心底腹立たしさを感じました!
最後まで読んでみます!面白いSSを教えてくださってありがとうございます!
このSSでまとめの名作を連想していただけたなんて光栄です!
支援ありがとうございました!

あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いいたします!!
303: お返事、誤字だらけですみませんm(__)m ◆WEmWDvOgzo:2015/1/1(木) 14:30:59 ID:V/E4S4pAY2
〜〜〜朝〜〜〜

―――港の賭場―――

あらくれ1「んじゃ振りますよ!」ヒュッ

カランコロン

チンピラ「」ドキドキ

あらくれ1「はい、丁です!偶数の方は掛け金、銀20枚ずつの取り分になります!」ジャラジヤラ

チンピラ「んっ…か…かかきき…!」ギリィッ

あらくれ1「では次の勝負、掛け金は銅1000からになります!さぁ丁方ないか!半方ないか!」バシッ

チョウ! チョウ! ハン! ハン! チョウ!

チンピラ「(銅1000だぁ…!?くそっ!足らねぇよ!)」ジャラッ

チンピラ「(夜中に忍び込んでカカアのへそくり抜いた上に義理のオヤッサンに仕事探すから斡旋所に払う紹介料くれっつって頭下げてもらった金だ…。
しくじったら、またうるせぇ小言言われちまう!)」モヤモヤ

チンピラ「(し、しゃあねぇ…。こうなりゃまた親分に……)」

ガッ

チンピラ「んぴょおっ!?」ビクッ

親分「あ?」ヌオオン

チンピラ「ひぃっ!?」

親分「なんだ、なんだ、てめぇ…そんなに俺の顔面が気持ちわりぃと?」クククッ

チンピラ「あ、いや!ちょ、ちょいと負けが込んでたもんで!」アセアセ

親分「だなぁ…。おめぇ、思い詰めた顔してんもんなぁ?」

チンピラ「そ、そこで物は相談と言いますか…?」ビクビク

親分「まぁた借金か?」ジロッ

チンピラ「へ、へぇ…」ゴマスリ
304: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/1(木) 14:33:05 ID:V/E4S4pAY2
親分「…朝っぱらからうちの賭場で遊んでくれんなぁありがてぇし賭場開いた甲斐もあるってもんだ。
おめぇは常連だし、ちょっとやそっと便宜を図ってやっても気は痛まねぇ…」フムフム

チンピラ「マジっすか!?」パァァ

親分「だがよ。今日ばかりはやめときな」

チンピラ「えっ」

親分「どうせカカアや親族からタカった金だろ。借金ばっか増やしてよ…。あんまりカミさん泣かすもんじゃねぇや」

チンピラ「…お、親分にゃ関係ねぇでしょうよ」

親分「おめぇの為に言ってんだぜぇ…?わりぃこたぁ言わん。帰って土下座してよ。まともに職を探しな」

チンピラ「あ、あんたにまで…んな説教されたかねぇっすわ」

親分「まぁなぁ…。俺も札付きのワルだし、おめぇにとやかく言いたかねぇや」ボリボリ

チョウ! ハン! チョウ! チョウ!

チンピラ「(くっ…うぜぇな…!もったいぶってねぇで貸せよ!ケチなギャングスターが!?)」

親分「…おめぇ分かってんのかぁ?次のコマ銭回したらよ……ドボン!だぞぉい?」ヌオオン

チンピラ「…勝ちゃいいんでしょう?」

親分「勝てんのけ?」

チンピラ「勝ちますよ…!」

親分「今までの貸し賃、締めて銀350…ここ過ぎりゃ強制回収の限度額、つまりはドボンだ」チャラッ

チンピラ「……!」ゾクゾク

親分「…いいんかね?今まではおめぇなんぞ、ここ以外に行き場がねぇとタカぁ括って勝ち分から、のんびり回収すりゃいいやと大目に見てやったが……」

チンピラ「いいから!貸してくれ!?」

親分「負けりゃカミさん一家も地獄見るぜ?オヤッサンの小料理屋も潰す気か?」

チンピラ「……俺はやんなきゃなんねぇんだよ!?早いとこ金がいるんだ!?」
305: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/1(木) 14:35:03 ID:V/E4S4pAY2
親分「…なんぞ事情があるんか?」

チンピラ「事情なんかねぇよ!!勝たなきゃ次の勝負が出来ねぇだろうが!?」

親分「ん?」

チンピラ「金が無きゃ博打打てねぇ!だったら取り返して金賭けねぇとよぉ!?」ギンッギンッ

親分「よく広がる目ん玉だなぁ?ギンギンじゃねぇか?」

チンピラ「へへっ!金じゃねぇんだよ!博打してぇんだ!?
生活とか責任とか家族とかかったりぃんだわ!!
コレにのめり込んでりゃ楽しいよなぁ!!楽しいんだからいいよなぁ!?」ハァッハァッ

親分「……」

チンピラ「金寄越せ!?やってやる!勝ちまくってやらぁ!?」ギンッギンッ

親分「…ツキがあるといいな」ジャラッ

チンピラ「あるさ!なきゃねぇで構いやしねぇ!次勝ってやんだ!?」ゴソッ

親分「(おめぇに次はねぇよ)」チラッ

あらくれ1「」コクッ

チンピラ「丁だ、丁!丁!丁!いい感じ!丁!丁!丁!いい感じ!」ジャラッ

ヒュッ カランコロン
306: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/1(木) 14:37:15 ID:bUMFwMnkxE
―――漁港市場―――

ワイワイガヤガヤ

神父3「(お、俺はなんで…こんな所に…)」

カロル「だからね、神父さまは悪い人じゃないんだよ!」カクカクシカジカ

漁師「ふんふん」

カロル「みんなにも教えてあげてほしいんだ?神父さまはいい人だよって!」

漁師「分かった、分かった。港の漁師連中にゃ俺から言っとく」

カロル「うん!ありがとう!」ニコッ

漁師「いいってぇことよ!海の男は義理人情に厚いんだ!」

神父3「(なんでこの少年は俺の為にこんな事を…人探しの旅とは無関係なのに)」

漁師「神父さんよ、安心しな!ここは海の男が背負って立つ港街バンブルだ!漁師が割って入りゃ心配いらねぇさ!」

神父3「は、はぁ…私などの為に感謝いたします」ペコリ

カロル「じゃあ次は広場に行こうよ!」

神父3「…は、はい」

漁師「坊っちゃん、今日はお母ちゃんと一緒じゃねぇんか?」

カロル「うん。お母さまは教会でお留守番!誰かいないと壁に落書きされるんだって?」

漁師「みみっちぃ奴らだなぁ?それとも悪ガキの仕業か?」

神父3「……」

漁師「元気出しなって!もうイタズラなんかさせねぇからよ?」

神父3「はい…」

漁師「頑張ってな」

神父3「……すみません」グシッ
307: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/1(木) 14:40:09 ID:bUMFwMnkxE
―――岸辺の洞穴―――

チンピラ「こ、こりゃ一体なんのマネで?」ギシギシ

あらくれ1「黙りやがれ!」ガッ

チンピラ「ばぐっ!?」バシャンッ

親分「言ったろ?ドボンだよ?」ギィギィ

チンピラ「ぶっうぅ…!」ブクブク

親分「一応、聞いといてやるが返済のあてはあるんか?」ギィギィ

あらくれ1「うらぁっ!?」グイッ

チンピラ「がふっぷぁ!はぁぅ…あぁぁあ」ザバァッ

親分「俺が長剣を研ぎ終えるまでに答えた方が身の為だぞぉい?」ギィギィ

チンピラ「……だ、ダチに」

親分「ほー?分別付かなくなって方々で無心してたおめぇを助けようなんてぇ奇特なダチがまだいるんか?」

チンピラ「……」グッ

親分「よーく考えて物言え?ここが踏ん張りどこってやつだ?」ギィギィ

チンピラ「どう…する気だ?」ハラハラ

親分「腕か足か目か耳か、どれでもいいが一つもらうぜ」ギィギィ

チンピラ「はぁ!?ふざっ」

あらくれ1「らぁっ!!」ガッ

ジャブンッ

チンピラ「」ガボガボ
308: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/1(木) 14:41:59 ID:V/E4S4pAY2
親分「ちっこい国王様が決めたんだとぉ…どっかしら障害持った奴は役場に届け出りゃ毎月、お国のガマ口から補助支援金が下りるとかよぉ…」ギィギィ

あらくれ1「へっ!」グイッ

チンピラ「ぶやぁっ!?」ザバァッ

親分「…よっしゃ。こんなモンだぁな?ギンギラギンにさりげない輝きだぜ?」ギラッ

チンピラ「やめっ…!」ビクッ

親分「んじゃまぁどこにする?選ばせてやんぜ?」スッ

チンピラ「か、勘弁…してください!」ガチガチ

親分「ならねぇな?俺はちゃーんと忠告したぜ?」

チンピラ「一生懸命に…働きます!お金…たくさん稼いで……かえし、ますから!?」ガタガタ

親分「無理だな」

チンピラ「!?」

親分「30過ぎて…妻子もいて…ダチや親族に迷惑かけて…それでもケロッとしてプラプラ遊び歩いてた半端者が長続きするかよ?」

親分「おめぇは口だけだ。そんな野郎は信用しねぇし、そもそも返済を待つ気もねぇ」

チンピラ「後生だ…!」プルプル

親分「おめぇは奈落に落ちるどころか、光の届かねぇ深い海の底に沈むんだ?」

チンピラ「あひぇっ!あふぅわぁあぁうぅぅ……」ポロポロ

親分「言ったろ?ドボンだとよ?」グシシ
309: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/1(木) 14:44:37 ID:bUMFwMnkxE
チンピラ「こ…ころ…り……」ボソッ

親分「どこがいい?なるたけ早めに決めてくれよ?まぁ決まんなきゃ決まんねぇでいいが?」

チンピラ「…心当たりがあるっ!?」バッ

あらくれ1「でけぇ声出すな!?外に漏れんだろうが!?」ガッ

チンピラ「はぶふぅ!?」ジャブンッ

親分「んならぁがっ!?」ブンッ

あらくれ1「ぐぎゃっ!?」バキッ

親分「ぺっ!さっきから話の腰折るんじゃねぇよ?」

あらくれ1「ず……ばぜん」ボタボタ

親分「おい、チンピラ!言ってみろ?」

チンピラ「ぶはあっ!ほ、ホビット!ホビットだ!金2000枚…だっ!!」ザブッ

親分「あぁ、知ってるぜ。俺んとこにも回って来た。そんだけか?」

チンピラ「……」ググッ

親分「とりあえず左腕にするか。派手な方が分かりやすくていい」グイッ

チンピラ「見たんだ!!そのホビットを!?」

親分「」ピクッ

チンピラ「手配書の人相書きと瓜二つだった!!」

親分「…どこにいんだ?」

チンピラ「〜〜〜!」ワナワナ

親分「今さら出し渋るんじゃねぇ!!両腕いくか!?」ギラッ

チンピラ「漁港市場だ!!俺っちの昔馴染みが働いてんとこで見かけた!!」

親分「……!?」ニカッ
310: ◆WEmWDvOgzo:2015/1/1(木) 14:49:28 ID:bUMFwMnkxE
親分「…間違いねぇか?」ヌオオン

チンピラ「……!?」

親分「間違いねぇんだな?」ギロリッ

チンピラ「……!」コクコク

親分「…あ〜そう?」グフフ

チンピラ「頼む!俺にも協力させてくんないか!?」

親分「ん?」

チンピラ「…分け前はそっちに任せるんで、お願いします!」ペコッ

親分「……」ウーン

親分「(分け前をくれてやっても、こいつはどうせウチに金を落とすしな。協力させて恩を売っとけば後々、脅迫材料になりそうだ…?)」

親分「いいだろ。で、そいつはまだ街ん中にいんのかい?」

チンピラ「わ、わかんねぇ!昨日の晩に宿やら路地裏まで探し回ったが、どこにもいなかった!」

親分「…おう、こら?いつまでもくたびれてんじゃねぇよ?」クイッ

あらくれ1「へ、へい!」ボタボタ

親分「集合かけろ!なんとしても見つけ出すぞ!?」

あらくれ1「あいあいさー!!」ダッ

親分「…チンピラ!てめぇは俺と来い?昨日いた辺りをもっぺん聞き込むぞ!」

チンピラ「ういっす!!」

チンピラ「(うひひ!俺っちにも、まだツキがあるぜ…!)」ニシシ

チンピラ「(分け前さえもらったら、また博打三昧だ!遊びまくるぞーう!)」
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